説明

絶縁膜

【課題】半導体素デバイスなどにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、適当な均一な厚さを有する膜が形成可能な、しかも誘電率、ヤング率等の膜特性に優れた絶縁膜を提供する。
【解決手段】基板上に、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物と重合開始剤とを含有する膜構造を形成した後、紫外線照射により前記膜を硬化することによって形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜に関し、さらに詳しくは、半導体素子などにおける絶縁膜で、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能な、しかも、絶縁特性などに優れた半導体デバイスの絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁膜や光学用途に使用される膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
しかし、無機材料の膜の中で最も低い誘電率を示すCVD−SiO2膜でも、比誘電率は約4程度である。また、低誘電率CVD膜として最近検討されているSiOF膜の比誘電率は約3.3〜3.5であるが、この膜は吸湿性が高く、使用しているうちに誘電率が上昇するという問題がある。
【0004】
かかる状況下、絶縁性、耐熱性、耐久性に優れた絶縁膜材料として、オルガノポリシロキサンに高沸点溶剤や熱分解性化合物を添加して空孔を形成し、誘電率を下げる方法が知られている。しかしながら、上記のような多孔質膜では、多孔化することにより誘電率特性が下がっても、機械強度が低下すること、吸湿による誘電率増加がおこることなどが問題になっていた。また、互いに連結した空孔が形成されるため、配線に用いられた銅が、絶縁膜中に拡散することなどが問題となっていた。
一方、有機ポリマーに低分子のカゴ型化合物を添加した溶液を塗布することによって、低屈折率、低密度の膜を得る試みも公知である(特許文献1参照)。しかし、カゴ型化合物単量体を添加する方法では、屈折率、誘電率の低下効果が不十分であるばかりでなく、塗布面状悪化や焼成時の膜減りが大きいなどの問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−334881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、上記問題点を解決するための絶縁膜に関し、さらに詳しくは、半導体素デバイスなどにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、適当な均一な厚さを有する膜が形成可能な、しかも誘電率、ヤング率等の膜特性に優れた絶縁膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題が下記の手段により解決されることを見出した。
(1)基板上に、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物と重合開始剤とを含有する膜構造を形成した後、紫外線照射により前記膜を硬化することによって形成されたことを特徴とする半導体デバイスの絶縁膜。
(2)前記重合開始剤がアゾ化合物であることを特徴とする前記(1)に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
(3)前記膜構造膜中の未反応のカゴ型シルセスキオキサン化合物が15質量%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
(4)前記膜構造にさらに熱分解温度が300℃以上である熱分解性有機化合物を含むことを特徴とする前記(1)に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
(5)紫外線照射の際にさらに膜を450℃以下の温度で加熱しながら硬化することを特徴とする前記(4)に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体デバイスなどにおける層間絶縁膜や光学デバイスにおける低屈折率膜として使用するのに適した、膜質の均一性に優れ、低い誘電率、ヤング率等の膜特性に優れた膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の絶縁膜は、基板上に、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物と重合開始剤とを含有する膜構造を形成した後、紫外線照射により前記膜を硬化することによって形成された半導体デバイスの絶縁膜である。
【0010】
本発明の絶縁膜には、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物を使用する。
2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物(以下、化合物(I)とも称する)とは、例えば、m個のRSi(O0.5)3ユニット(mは8〜16の整数を表し、Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表し、Rのうち、少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基である)を有し、各ユニットが、各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結しカゴ構造を形成している化合物(以下、化合物(I‘)とも称する)等が挙げられる。
誘電率低下効果の点から、例えば化合物(I‘)におけるmは8、10、12、14、16が好ましく、入手性の観点から、8、10、12が、より好ましい。
【0011】
ここでカゴ構造とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。
Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表すが、非加水分解性基とは室温で1当量の中
性水と1時間接触させた場合に95%以上残存する基であり、この条件で99%以上残存していることが好ましい。
Rのうち、少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基である。Rの非加水分解性基の例としては、アルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、ビニル基、エチニル基、アリル基、シリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)等があげられる。
【0012】
Rで表される基のうち、少なくとも2つが、ビニル基またはエチニル基を含む基であるが、少なくとも2つがビニル基であることが好ましい。Rで表される基がビニル基またはエチニル基を含む場合には、ビニル基またはエチニル基は、直接もしくは2価の連結基を介して、Rが結合するケイ素原子に結合することが好ましい。2価の連結基としては、−[C(R11)(R12)]−、−CO−、−O−、−N(R13)−、−S−、−O−Si(R14)(R15)−、およびこれらを任意に組み合わせてできる2価の連結基が挙げられる。(R11〜R15はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、またはフェニル基を表し、kは1〜6の整数を表す。)、なかでも、−[C(R11)(R12)]−、−O−、−O−Si(R14)(R15)−またはこれらを任意に組み合わせてできる2価の連結基が好ましい。
化合物(I)において、ビニル基またはエチニル基はRが結合するケイ素原子に直接結合することが好ましい。
化合物(I)におけるRのうち、少なくとも2つのビニル基が、Rが結合するケイ素原子に直接結合することがさらに好ましく、化合物(I)におけるRの少なくとも半数がビニル基であることが、より好ましく、Rが全てビニル基であることが特に好ましい。
【0013】
化合物(I)の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
化合物(I)は、市販のものを使用してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
【0019】
本発明の化合物(I)におけるRが下記一般式(II)で表される基である場合も好ましく、この場合、下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物を反応させることで合成できる。
【0020】
(R13−Si−O− (II)
〔MO-Si(O0.5)3m (III)
(R13−Si−Cl (IV)
【0021】
一般式(III)でされる化合物は、たとえば、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36, No.7, 743-745等に記載の方法に従って合成できる。
これらの式中、R1はそれぞれ独立に非加水分解性基を表すが、R1で表される非加水分解性基の具体例としては、アルキル基、アリール基、ビニル基、エチニル基等があげられる。mおよびR1は、化合物(I‘)および一般式(II)におけるものと同意である。
Mは金属原子(例えばNa、K、Cu、Ni、Mn)またはオニウムカチオン(例えばテトラメチルアンモニウム)を表す。なお、Mが多価の金属原子である場合は、複数の−O−Si(O0.5)3が多価の金属原子Mに結合した形態を意味する。
【0022】
一般式(III)で表される化合物と、一般式(IV)で表される化合物との反応は、例えば、溶媒中に、一般式(III)で表される化合物と、一般式(III)で表される化合物中に含まれるSi−OM基数の1〜100倍モルの一般式(IV)で表される化合物を添加し、撹拌しながら、通常0〜180℃、10分〜20時間行う。
溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶剤が好ましい。
一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を反応させる際には、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基を添加しても良い。
【0023】
本発明の絶縁膜を形成するための組成物(以下、単に「絶縁膜形成用組成物」とも称する)には、複数の異なった化合物(I)の重合物が含まれていても良い。その場合、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体であってもよいし、ホモポリマーの混合物であってもよい。絶縁膜形成用組成物が、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体を含む場合、m=8、10、および12から選ばれる2種以上の化合物(I‘)の混合物の共重合体であることが好ましい。
前記絶縁膜形成用組成物に含まれる化合物(I)を重合させた高分子化合物は、化合物(I)以外の化合物との共重合物であってもよい。その場合に用いられる化合物としては、重合性炭素−炭素不飽和結合またはSiH基を複数有する化合物が好ましい。好ましい化合物の例としては、ビニルシラン類、ビニルシロキサン類、フェニルアセチレン類、[(HSiO0.5]等が挙げられる。
前記絶縁膜形成用組成物は、化合物(I)を重合させた高分子化合物と重合開始剤とを有機溶剤に溶解した溶液である。
絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分のうち、化合物(I)同士が反応した重合物の合計が70質量%以上であることが好ましいが、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが、さらに好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。
固形分中のこれらの含量が大きいほど、密度、屈折率および誘電率の低い膜を形成することができる。
ここで言う固形分とは組成分に含まれる全成分から、揮発性の成分を除いた成分である。揮発性成分には、低分子量化合物に分解した後、揮発する成分も含まれる。揮発性の成分の例としては、水、有機溶剤、空孔形成用熱分解性ポリマー、熱離脱性置換基等が挙げられる。
絶縁膜形成用組成物の固形分に含まれる、化合物(I)同士が反応した重合物以外の成分としては、化合物(I)、化合物(I)の反応物を含む共重合物中に含まれる化合物(I)の反応物以外の成分、不揮発性の添加物などが挙げられる。
【0024】
塗布面状がよく、焼成時の膜減りが小さい膜を形成するために、絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分中の未反応の化合物(I)が少ないことが好ましい。
固形分中の化合物(I)は15質量%以下であるが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが、最も好ましい。
絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分のGPCチャートから化合物(I)単量体を除いた部分のMwが3万〜21万であることが好ましいが、4万〜18万であることが、より好ましく、5万〜16万であることが最も好ましい。
有機溶剤に対する溶解性、フィルターろ過性、および塗布膜面状の観点から本発明のポリマーは分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
【0025】
絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分中では、化合物(I)のビニル基またはエチニル基のうち、10〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、20〜80モル%が未反応で残存していることが好ましく、30〜70モル%が未反応で残存していることが最も好ましい。
また、絶縁膜形成用組成物中の、化合物(I)の反応物には、重合開始剤、添加剤または重合溶媒が0.1〜40質量%結合していてもよいが、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が、より好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。
これらについては、組成物のNMRスペクトル等から定量することができる。
【0026】
絶縁膜形成用組成物を製造するための方法としては、化合物(I)の反応物は炭素−炭素不飽和結合同士の重合反応を用いて製造されることが好ましい。
特に、化合物(I)を溶媒に溶解させ、重合開始剤を添加してビニル基またはエチニル基を反応させることが特に好ましい。
重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
重合反応終了時に残存している化合物(I)は添加量の25%質量以下が好ましく、20%質量以下がより好ましく、15質量%以下が最も好ましい。重合時にこの条件を満たせば、塗布面状がよく、焼成時の膜減りが小さい膜形成用組成物を収率よく製造することができる。
重合反応終了時のポリマーの重量平均分子量(Mw)が3万〜16万であることがより好ましく、4万〜14万であることがさらに好ましく、5万〜12万であることが最も好ましい。
重合反応終了時のポリマーのZ+1平均分子量(MZ+1)は9万〜70万であることが好ましく、12万〜55万であることがよりいっそう好ましく、15万〜40万であることが、最も好ましい。
重合反応終了時のポリマーには、分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
重合時に、これらの分子量条件を満たすと、有機溶剤に可溶で、フィルターろ過性がよく、低密度、低誘電率の膜を形成できる膜形成用組成物を製造することができる。
【0027】
上記の分子量条件を満たすために、重合時の反応中の化合物(I)の濃度は12質量%以下であることが好ましい。化合物(I)の濃度は10質量%以下であることがより好ま
しく、さらに好ましくは8質量%以下であり、最も好ましくは6質量%以下である。
反応時の生産性の観点では、重合時の化合物(I)の濃度が高いほど有利である。その意味では、重合時の化合物(I)の濃度は0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
【0028】
また、化合物(I)を重合させた後、ろ過や遠心分離処理により高分子量成分を除く、カラムクロマトグラフィーを用いて精製する、などの方法で処理することも、絶縁膜形成用組成物を製造する方法として好ましい。
特に、重合反応によって生成した固形物に再沈澱処理を行い、低分子量成分および残存する化合物(I)を除去することにより、Mnを大きくし、残存する化合物(I)量を減少させることが絶縁膜形成用組成物を製造する方法として好ましい。
【0029】
化合物(I)の重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤の存在下で重合することが出来る。
重合開始剤としては特に有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
【0030】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、キシネオデカノエート、アルケマ吉冨社より市販されているルペロックス11等が好ましく用いられる。
【0031】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、V−601、V−401等のアゾエステル化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、等が好ましく用いられる。
【0032】
重合開始剤としては、試薬自体の安全性および重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでもポリマー中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が最も好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であれば、重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。
本発明の重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
【0033】
重合反応で使用する溶媒は、化合物(I)が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。
例えば水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤、ハロゲン系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はエステル系溶剤であり、中でも、酢酸メチル、酢
酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエートであり、特に好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチルである。
これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温でき、反応終了後に有機溶媒を留去できるために、有機溶媒の沸点は75℃以上140℃以下であることが好ましい。重合開始剤の添加方法としては一括添加、分割添加、連続添加等が挙げられるが、少ない重合開始剤添加量で高分子量化でき、膜強度の点からも有利であるので、分割添加および連続添加が好ましい。
【0034】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜170℃、特に好ましくは70℃〜140℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0035】
絶縁膜形成用組成物を製造する際には、化合物(I)の重合反応を行った反応液をそのまま絶縁膜形成用組成物として用いても良いが、反応溶媒を留去し、濃縮して用いることが好ましい。また、再沈殿処理を行った後に用いることが好ましい。
濃縮する方法としては、ロータリーエバポレーター、蒸留装置または重合反応を行った反応装置などを用いて、反応液を加熱および/または減圧することによって行うことが好ましい。濃縮時の反応液の温度は、一般的には0℃〜180℃であり、10℃〜140℃が好ましく、20℃〜100℃が、より好ましく、30℃〜60℃が最も好ましい。濃縮時の圧力は、一般的に、0.133Pa〜100kPaであり、好ましくはは1.33Pa〜13.3kPaであり、より好ましくは、1.33Pa〜1.33kPaである。
反応液を濃縮する際は、反応液中の固形分含量が10質量%以上になるようになるまで濃縮することが好ましく、30%質量以上になるまで濃縮することがより好ましく、50%質量以上になるまで濃縮することが最も好ましい。
【0036】
本発明において絶縁膜形成用組成物には、重合開始剤が含んでよく、その場合の重合開始剤の例としては特に有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ‐n‐プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオ
キサイド、t−ブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ‐(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ‐3,5,5、−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ‐メチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジー(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ‐t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル-2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス‐(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α‐クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ‐t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ‐イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、アルケマ吉冨社より市販されているルペロックス11等が好ましく用いられる。
【0037】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、V−601等のアゾエステル化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ-2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−〔(1−シアノ-1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル-N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス〔2−メチル-N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド〕、2,2−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2−アゾビス(N−ブチルー2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル-2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン〕ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン‐2−イル〕プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−〔2−イミダゾリン‐2−イル
〕プロパン〕、2,2−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ‐2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられる。
【0038】
重合開始剤としては、試薬自体の安全性および重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでもポリマー中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が最も好ましい。
【0039】
更に、絶縁膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0040】
本発明にいかなる界面活性剤を使用してもよいが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0041】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、いかなるシリコン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。
【0043】
本発明において、前記各成分を適当な溶剤に溶解させて、支持体上に塗布して使用する。使用できる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0044】
絶縁膜形成用組成物を適当な溶剤に溶解させて得られる溶液も絶縁膜形成用組成物の範囲に含まれる。本発明の溶液中の全固形分濃度は、好ましくは、1〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が1〜30質量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、塗布液の保存安定性もより優れるものである。
【0045】
また、絶縁膜形成用組成物は、さらに熱分解温度が300℃以上である熱分解性有機化合物を含んでいても良い。この熱分解性有機化合物としては、後に詳述する空孔形成因子
や熱硬化を促進する化合物等が挙げられる。
【0046】
絶縁膜形成用組成物には膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤の空孔形成因子としては特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用塗布液で使用される溶剤との溶解性、本発明重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。
【0047】
空孔形成剤としてはポリマーも使用することができる。空孔形成剤として使用できるポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)またはポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)およびポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエンおよびポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、およびアミンキャップドアルキレンオキシド、その他、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン等であってもよい。
【0048】
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。
【0049】
またこの空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、200〜50000であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、特に好ましくは400〜5000である。
空孔形成剤の添加量は膜を形成する重合体に対して、質量%で好ましくは0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1%〜20%である。
また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいても良く、その分解温度は好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃であると良い。分解性基の含有率は膜を形成する重合体に対して、モル%で0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%である。
【0050】
本発明の膜形成用組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分等を除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.001〜0.2μmが好ましく、孔径0.005〜0.05μmがより好ましく、孔径孔径0.005〜0.03μmが最も好ましい。フィルターの材質はPTFE、ポリエチレン、ナイロンが好ましく、ポリエチレンおよびナイロンが、より好ましい。
本発明の膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルムなどの基板に塗布した後、溶剤を必要に応じて加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法,スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは,スピンコーティング法によるものである。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
絶縁膜を形成する際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。
【0051】
本発明の重合体は基板上に塗布した後に紫外線を照射することで重合体中に残存するビ
ニル基またはエチニル基の重合反応を起こして硬膜する。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0052】
加熱処理と高エネルギー線処理照射を、同時に。または順次行うことにより硬膜してもよい。加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。加熱処理は数回に分けて行っても良い。
【0053】
より具体的には、絶縁膜形成用組成物を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属配線を有する基板)上に塗布し、予備熱処理を行うことにより溶媒を乾燥させ、次いで紫外線照射を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
【0054】
本発明の膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMPでの剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0055】
本発明の絶縁膜は、他の含Si絶縁膜または有機膜と積層構造を形成させて用いてもよい。炭化水素系の膜と積層して用いることが好ましい。
【0056】
本発明の膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0057】
本発明の膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては,市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製,荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0058】
本発明の膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。また、光学装置用の表面保護膜、反射防止膜、位相差膜としても用いることができる。
【0059】
この方法により、誘電率の低い絶縁膜、すなわち、比誘電率が2.5以下、好ましくは
2.3以下の絶縁膜を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0061】
〔合成例1〕
例示化合物(I−d)(アルドリッチ社製)1gを酢酸ブチル80gに加えた。窒素気流中で、加熱還流しながら(内温127℃)、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)を5mgを酢酸ブチル4mlで希釈した液を2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却し、液重量2gまで減圧濃縮し、メタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物をろ取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、攪拌しながら水1.8mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、メタノール10mlを加えた。固形分をろ取、乾燥し固形分0.49gを得た。固形分をGPCで分析すると、例示化合物(I−d)より分子量が大きい成分は、Mw=15.8万、Mz+1=31万、Mn=8.9万であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−d)は3質量%以下であった。分子量300万以上の成分は含まれなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合してできたアルキル基由来のプロトンピークと、残存したビニル基由来のプロトンピークが48:52の積分比率で観察され、ビニル基同士が重合していることがわかった。
この組成物0.3gにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート5mlを加えて40℃で3時間攪拌したところ、均一に溶解した。これを0.2μm孔径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過して、絶縁膜形成用組成物を得た。
残存する単量体の重量および添加剤の重量より、組成物中の固形分のうち、単量体のビニル基同士が反応した重合物が70質量%以上であることは明らかである。
【0062】
〔合成例2〕
例示化合物(I−d)(アルドリッチ社製)1gを酢酸ブチル26.4gに加えた。窒素気流中で、加熱還流しながら(内温127℃)、重合開始剤として和光純薬工業製V−601(10時間半減温度66℃)を1.8mgを酢酸ブチル2mlで希釈した液を2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却し、液重量2gまで減圧濃縮し、メタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物をろ取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、攪拌しながら水5mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、メタノール10mlを加えた。固形分をろ取、乾燥し、固形分0.60gを得た。固形分をGPCで分析すると、化合物(I−d)より分子量が大きい部分は、Mn=3.1万、Mw=11.8万、Mz+1=27万、であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−d)は3質量%以下であった。分子量300万以上の成分は含まれなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合してできたアルキル基由来のプロトンピークと、残存したビニル基由来のプロトンピークが42:58の積分比率で観察され、ビニル基同士が重合していることがわかった。
この組成物0.3gにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート5mlを加えて40℃で3時間攪拌したところ、均一に溶解した。これを0.2μm孔径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過して、絶縁膜形成用組成物Bを得た。
残存する単量体の重量および添加剤の重量より、組成物中の固形分のうち、単量体のビニル基同士が反応した重合物が70質量%以上であることは明らかである。
【0063】
〔実施例1〕
上記合成例で作製した組成物A〜Bに下記添加物IからVIをA〜Bの固形分に対する濃度比で33%添加し添加し得られた溶液をスピンコート法で4インチシリコンウエハ上に塗布後、ホットプレート上で110℃で1分間、基板を乾燥し、さらに下記(1)〜(5)のいずれかのプロセスにより、塗膜を作製した(膜厚300nm)。
【0064】
(添加物)
I.WAKO社製ソルビタンモノオレート
II.WAKO社製ポリエチレングリコールモノステアレート
III.WAKO社製ポリオキシエチレンラウリルエーテル
IV.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート
V.BASF社製Pluronic PE6400
VI.BASF社製Pluronic PE1740
【0065】
(塗膜作製プロセス)
(1)窒素雰囲気のクリーンオーブン中で350℃で45分間加熱。
(2)350℃に加熱されたホットプレート上で窒素雰囲気下にてウシオ電機製バリア放電ランプを使用し、222nmの紫外光を30分間照射。
(3)350℃に加熱されたホットプレート上で窒素雰囲気下にてウシオ電機製バリア放電ランプを使用し、222nmの紫外光を30分間照射した後で、さらに窒素雰囲気のクリーンオーブン中で400℃で45分間加熱。
(4)350℃に加熱されたホットプレート上で窒素雰囲気下にてウシオ電機製バリア放電ランプを使用し、172nmの紫外光を10分間照射
(5)350℃に加熱されたホットプレート上で窒素雰囲気下にてウシオ電機製バリア放電ランプを使用し、172nmの紫外光を10分間照射した後で、さらに窒素雰囲気のクリーンオーブン中で400℃で45分間加熱。
【0066】
誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローブを用いて測定した(測定温度25℃)。膜減り率および屈折率はウーラム社製分光エリプソメーター(VASE)を用いて測定した。機械強度はナノインデンターにより評価した。光の透過度は石英基板上に各膜を形成し、評価し、波長300nmから600nmの範囲での3%以上の吸光ピークが見つかった場合に×、吸収が見られない場合を○とした。結果を表1〜2に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表1〜2に示した結果から、本発明を用いると、電気的特性が良好で、かつ光学的に透明な膜を形成できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物と重合開始剤とを含有する膜構造を形成した後、紫外線照射により前記膜を硬化することによって形成されたことを特徴とする半導体デバイスの絶縁膜。
【請求項2】
前記重合開始剤がアゾ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
【請求項3】
前記膜構造膜中の未反応のカゴ型シルセスキオキサン化合物が15質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
【請求項4】
前記膜構造にさらに熱分解温度が300℃以上である熱分解性有機化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの絶縁膜。
【請求項5】
紫外線照射の際にさらに膜を450℃以下の温度で加熱しながら硬化することを特徴とする請求項4に記載の半導体デバイスの絶縁膜。

【公開番号】特開2009−88256(P2009−88256A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256205(P2007−256205)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】