説明

継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具、及び継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法

【課題】継手部材への鉄筋の挿入長さを規定することができる継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具、及び継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法を提供する。
【解決手段】基準部材18は、第1鉄筋12又は第2鉄筋14へ着脱自在に装着され、位置合せ部20は、継手部材16の連結位置を規定する。よって、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋を連結する継手部材内の鉄筋挿入長さを規定する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具、及び継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋を継手部材に挿入して連結する場合、十分な連結強度を得るために、継手部材への鉄筋の挿入長さを所定値以上にしなければならない。特許文献1には、ねじ鉄筋の端部に装着し、継手に対するねじ鉄筋の螺合深さを確認する治具が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−36517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、継手部材への鉄筋の挿入長さを規定することができる継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具、及び継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、端面を向き合わせて配置した第1鉄筋と第2鉄筋とが挿入された状態で連結される継手部材への前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との挿入長さを規定する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具において、前記第1鉄筋、前記第2鉄筋又は前記継手部材へ着脱自在に装着される基準部材と、前記基準部材に設けられ前記継手部材の連結位置を規定する位置合せ部と、を有する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具である。
【0006】
請求項1に記載の発明では、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具が、基準部材と位置合せ部とを有している。基準部材は、第1鉄筋、第2鉄筋又は継手部材へ着脱自在に装着され、位置合せ部は、基準部材に設けられ継手部材の連結位置を規定する。
よって、位置合せ部によって継手部材の連結位置を規定することにより、継手部材への第1鉄筋と第2鉄筋との挿入長さを規定できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記基準部材は、前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ着脱自在に装着される管部材であり、前記位置合せ部は、前記管部材に設けられ前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋の端部に合せる照準部である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、基準部材を管部材とし、位置合せ部を照準部としている。
よって、照準部を第1鉄筋及び第2鉄筋の端部に合せることにより、継手部材の連結位置を規定することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、端面を向き合わせて配置した第1鉄筋と第2鉄筋とが挿入された状態で連結される継手部材への前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との挿入長さを規定する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法において、前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ管部材を着脱自在に装着する管部材装着工程と、前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ装着した前記管部材を移動させて、前記管部材に設けられた照準部を前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋の端部に合せる管部材移動工程と、を有する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法が、管部材装着工程と、管部材移動工程とを有している。管部材装着工程では、第1鉄筋又は第2鉄筋へ管部材を着脱自在に装着し、管部材移動工程では、管部材を移動させて照準部を第1鉄筋及び第2鉄筋の端部に合せる。
よって、管部材移動工程により移動した管部材を基準にして継手部材の連結位置を規定でき、これにより、継手部材への第1鉄筋と第2鉄筋との挿入長さを規定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、継手部材への鉄筋の挿入長さを規定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る管理治具を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る柱部材と梁部材との接合手順を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る管理治具の効果を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る管理治具を示す説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る管理治具を示す説明図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る管理治具を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る鉄筋の突出長さを確認する方法を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る鉄筋の突出長さを確認する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1(a)の斜視図には、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具(以下、「管理治具」とする)10が第1鉄筋12へ取り付けられる前の状態が示され、図1(b)の斜視図には、管理治具10が第1鉄筋12へ取り付けられた状態が示されている。
【0015】
図2(e)の側面図に示すように、管理治具10は、第1鉄筋12と第2鉄筋14とが挿入された状態で連結される継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定する。第1鉄筋12と第2鉄筋14とは、端面を向き合わせて配置され、同径の異形鉄筋によって構成されている。継手部材16は、第1鉄筋12及び第2鉄筋14を差し込むことにより挿入可能な差し込み式の機械式継手によって構成されている。
【0016】
図1(b)に示すように、管理治具10は、基準部材としての円筒状の管部材18と、管部材18の材軸方向(以下、「方向Y」とする)における管部材18の端部に設けられた位置合せ部としての円筒状の照準部20とによって構成されている。図1(b)の状態で、第1鉄筋12、第2鉄筋14、管部材18及び照準部20の材軸は略一致している。
【0017】
管部材18は、鋼製であり、照準部20は、図1(b)の状態において、照準部20の外側から照準部20を通して第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部が目視できるように、アクリルガラス等の透明な材料によって形成されている。管部材18と照準部20との内径は、略等しく、第1鉄筋12(第2鉄筋14)の外径よりも僅かに(例えば、3mm程度)大きくなっている。
【0018】
図1(a)に示すように、管部材18は、管部材18を縦割りに略二等分した円弧状の外周部材22A、22Bによって構成され、照準部20は、照準部20を縦割りに略二等分した円弧状の透明部材24A、24Bによって構成されている。方向Yにおける外周部材22A、22Bの両端部の内周面には、帯状のゴムシート26が貼られている。
【0019】
外周部材22A及び透明部材24Aと、外周部材22B及び透明部材24Bとの円周方向の一方端部同士は、ヒンジ28によって回転可能に連結されている。これにより、第1鉄筋12に外周部材22Aを添えた状態で、ヒンジ28を回転中心にして外周部材22Aに対し外周部材22Bを回転させ、さらに、各ゴムシート26を第1鉄筋12へ押し付けるようにして、外周部材22A、22Bにより第1鉄筋12を挟み込む。
【0020】
そして、外周部材22Aの円周方向の他方端部に設けられた爪部30を、外周部材22Bの円周方向の他方端部に設けられた溝部32に引っ掛けてロックする。これにより、ゴムシート26が第1鉄筋12に押し付けられて密着した状態が保持され、第1鉄筋12へ管部材18が装着される。すなわち、第1鉄筋12へ管理治具10が取り付けられる。透明部材24Aは外周部材22Aと、透明部材24Bは外周部材22Bと一体になって動く。なお、ゴムシート26を第1鉄筋12へ押し付ける力は、第1鉄筋12へ装着された状態の管部材18を手の力で方向Yへ移動できるように、ゴムシート26の厚さや材質を選定して設定する。
【0021】
管部材18は、爪部30を溝部32から外しロックを解除することにより、第1鉄筋12から取り外すことができる。すなわち、管部材18は、第1鉄筋12へ着脱自在に装着することができる。
【0022】
次に、管理治具10を用いた、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法について説明する。
【0023】
継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法は、図2(a)〜(e)の側面図の順に示す、プレキャストコンクリート製の柱部材34とプレキャストコンクリート製の梁部材36との接合手順における、管部材装着工程及び管部材移動工程によって行われる。
【0024】
まず、図2(a)に示すように、柱部材34の接合面38から突出する第2鉄筋14に、継手部材16をセットする(継手部材準備工程)。継手部材16は、継手部材16の中空部に第2鉄筋14が挿入された状態で接合面38側へ寄せてセットする。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、梁部材36の接合面40と、柱部材34の接合面38とが対向するように、梁部材36を配置する(梁部材配置工程)。このとき、第1鉄筋12と第2鉄筋14とは、略水平に配置され、端面同士が隙間をあけて向き合っている。
【0026】
次に、第1鉄筋12へ管部材18を着脱自在に装着する(管部材装着工程)。
次に、図2(c)に示すように、第1鉄筋12へ装着した状態の管部材18を方向Yへ移動させて、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に照準部20を合せる(管部材移動工程)。すなわち、照準部20の外側から照準部20を通して第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部が見えるように管部材18を移動させる。
【0027】
次に、管部材18を基準にして(管部材18の端部に位置する)第1鉄筋12又は第2鉄筋14の部位にマジック・インキ、テープ等によってマーク42を付ける(継手部材位置規定工程)。
【0028】
次に、図2(d)に示すように、第1鉄筋12から管部材10を取り外した後、図2(e)に示すように、マーク42を基準にして(マーク42と、継手部材16の端部とを合わせるようにして)継手部材16を移動させる(継手部材移動工程)。これにより、継手部材16を所定の連結位置に配置することができる。すなわち、管部材移動工程により配置された管部材18を基準にして継手部材16の連結位置を規定することができ、これによって、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
【0029】
最後に、接合面38と接合面40との間の接合部44にコンクリートを打設し硬化させて、柱部材34と梁部材36との接合を完了させる(打設工程)。
なお、施工品質管理のための検査写真を撮影する場合には、例えば、図2(c)、(e)の状況を撮影すればよい。
【0030】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
図2(c)に示すように、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に照準部20を合わせることにより継手部材16の連結位置を規定することができ、これによって、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
具体的には、図1(b)に示すように、方向Yにおける管部材18の長さをa、方向Yにおける照準部20の長さをb、継手部材16に第1鉄筋12をそれ以上挿入してしまうと継手部材16への第2鉄筋14の挿入長さがaよりも小さくなってしまう長さをc(不図示)、第1鉄筋12の端面と第2鉄筋14の端面との間の長さをtとし、a+b=c+tとなるように管理治具10を構成すれば、管部材移動工程を行なうことによって、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さがaより長くなるように規定できる。
【0032】
よって、例えば、継手部材16と第1鉄筋12(第2鉄筋14)との連結において必要とする連結強度を得ることが可能な、継手部材16への第1鉄筋12(第2鉄筋14)の許容最小挿入長さをaとすれば、管部材移動工程を行なうことによって、第1鉄筋12と第2鉄筋14とが確実に連結できるように、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
なお、これは一例であり、管部材18及び照準部20の方向Yにおける長さa、bは、適宜決めればよい。例えば、先の許容最小挿入長さよりもaを長くしてもよい。
【0033】
また、管理治具10は、着脱自在に第1鉄筋12又は第2鉄筋14へ装着される管部材18により、第1鉄筋12又は第2鉄筋14へ自由に取り付けたり、取り外したりできるので、メジャーや棒状のゲージ等を鉄筋に添えて継手部材の連結位置を規定する方法に比べて、短時間で容易に継手部材の連結位置を規定することができ、一人で行うことができる。また、継手部材の連結位置を規定する作業の人為的ミスを防ぐことができる。特に、継手部材による連結箇所が多数に及ぶ建物の施工においては、多数の継手部材の連結位置を短時間で確実に規定しなければならないので、管理治具10の使用が有効となる。
【0034】
また、管理治具10を第1鉄筋12又は第2鉄筋14へ取り付けた状態で、施工管理記録用の検査写真を一人で撮影することができる。すなわち、継手部材16の連結位置を規定すると同時に、写真撮影による品質検査も行なうことができる。また、複数の第1鉄筋12又は第2鉄筋14に管理治具10をそれぞれ取り付けて一度に写真撮影できる。
【0035】
また、照準部20を第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に合せた状況と、管部材18を基準にして第1鉄筋12の部位にマークが付けられた状況とを目視にて同時に確認できる。すなわち、目視又は写真撮影によって、継手部材16の連結位置が規定されていることを瞬時に確認することができる。
【0036】
また、図3(a)〜(c)の断面図に示すように、装着する鉄筋用の管理治具であるかを鉄筋の径の大きさに基づいて識別することができる。図3(a)、(c)は、装着する鉄筋46、60用の管理治具10でない場合の例であり、図3(b)は、装着する第1鉄筋12用の管理治具10である場合の例である。

【0037】
また、使用する鉄筋の最外径に合わせて管部材18の内径等のサイズを設定すれば、検査時に鉄筋径の確認を行なうことができる。すなわち、管部材18を鉄筋に装着した際に管部材18と鉄筋との間の隙間が大きい場合、鉄筋径が小さいことがわかるので、誤った鉄筋が使用されるのを防ぐことができる。
【0038】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、第1鉄筋12へ管部材18を装着する例を示したが、第2鉄筋14へ管部材18を装着するようにしてもよい。
【0039】
また、第1の実施形態では、管部材18を鋼製とした例を示したが、管部材18はどのような材料によって形成してもよい。例えば、管部材18をアクリル樹脂製、木製としてもよい。また、管部材は、継手部材の連結位置を規定でき、写真撮影ができる程度に鉄筋へ装着できれば、どのような方法で装着してもよい。例えば、管部材を、円筒部材を縦割りにした円弧形状の磁性を有する部材としてもよいし、円筒部材の材軸方向にスリットを形成した優弧形状の弾性部材としてもよい。
【0040】
また、第1の実施形態では、照準部20をアクリルガラス等の透明な材料によって形成した例を示したが、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に合せられるものであればよく、例えば、照準部20を半透明な材料によって形成してもよいし、覗き窓によって照準部を構成するようにしてもよい。
【0041】
また、第1の実施形態では、方向Yにおける外周部材22A、22Bの両端部の内周面にゴムシート26を貼った例を示したが、ゴムシート26は、第1鉄筋12へ押し付けられる弾性部材であればよく、例えば、スポンジやゴムチューブ等としてもよい。
【0042】
また、第1の実施形態では、第1鉄筋12へ装着した状態の管部材18を方向Yへ移動させる例を示したが、第1鉄筋12へ管部材18を仮装着した状態(各ゴムシート26を第1鉄筋12へ軽く押し付けるようにして、外周部材22A、22Bにより第1鉄筋12を軽く挟み込んだ状態)で方向Yへ移動させ、その後、第1鉄筋12へ管部材18を完全に装着するようにしてもよい。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態とその作用及び効果について説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0044】
図4(a)、(b)の側面図に示すように、第2の実施形態の管理治具48は、基準部材としての棒部材50の略中央に、位置合せ部としての目印領域52が設けられている。棒部材50の左右には、装着機構54、56が棒部材50に沿って移動可能に設けられている。装着機構54、56は、つまみネジ58の締め付けによって棒部材50に固定される。
【0045】
棒部材50は、第1鉄筋12の外周面に装着機構54を取り外し可能に取り付け、継手部材16の外周面に装着機構56を取り外し可能に取り付けることによって、第1鉄筋12及び継手部材16へ着脱自在に装着される。
【0046】
管理治具48では、図4(b)に示すように、棒部材50の材軸方向における、目印領域52の左端部から装着機構54の左端部までの長さL、目印領域52の長さLが、第1の実施形態の管部材18の長さa、照準部20の長さbにそれぞれ相当する。
【0047】
管理治具48を用いた、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法は、まず、図4(a)に示すように、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に目印領域52を合せるようにして、第1鉄筋12及び継手部材16へ棒部材50を装着し、図4(b)に示すように、装着機構54の左端部に位置する第1鉄筋12の部位にマーク42を付ける。
【0048】
次に、第1鉄筋12から棒部材50を取り外した後、マーク42を基準にして継手部材16を移動させる。よって、継手部材16の連結位置を規定することができ、これにより、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
【0049】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
なお、第2の実施形態では、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に目印領域52を合せるようにして、第1鉄筋12及び継手部材16へ棒部材50を装着する例を示したが、第1鉄筋12及び継手部材16へ棒部材50を装着した後に、第1鉄筋12及び継手部材16に沿って装着機構54、56と一体に棒部材50を移動させて、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端部に目印領域52を合せるようにしてもよい。
【0050】
次に、本発明の第3の実施形態とその作用及び効果について説明する。第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0051】
図5(a)の側面図に示すように、第3の実施形態の管理治具62は、基準部材としての紐64に、位置合せ部としての目印領域66が設けられている。紐64の一方端部は、継手部材16の端面に着脱自在に装着されている。紐64の他方端部は、継手部材16の内側から、継手部材16の端部に形成された貫通孔68を通って継手部材16の外側へ延びている。目印領域66は、図5(c)の側面図に示すように、継手部材16が所定の連結位置に配置されたときに、紐64を引っ張った状態で貫通孔68に位置するように紐64に設けられている。
【0052】
管理治具62を用いた、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法は、まず、図5(b)の側面図に示すように、第1鉄筋12の端面に紐64を接触させた状態で、紐64の他方端部を軽く引っ張りながら継手部材16を第1鉄筋12側(左側)へ移動させ、目印領域66が貫通孔68に入り込んでしばらくした(例えば、継手部材16が第1鉄筋12側へ3cm程度移動した)ところで、継手部材16の移動を止める。
【0053】
次に、貫通孔68から目印領域66が現れるまで紐64の他方端部を引っ張り、継手部材16を所定の連結位置に移動させる。よって、継手部材16の連結位置を規定することができ、これにより、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
【0054】
以上、本発明の第3の実施形態について説明した。
なお、第3の実施形態では、第1鉄筋12の端面に紐64を接触させた状態で継手部材16を第1鉄筋12側へ移動させる例を示したが、例えば、第1鉄筋12の端面に接触する紐64の部分を帯状にする、第1鉄筋12の端面に紐64をガイドする溝を形成する等の第1鉄筋12の端面から紐64が外れない工夫を施してもよい。
また、第3の実施形態では、紐64の一方端部を継手部材16端面に着脱自在に装着する例を示したが、紐64の一方端部を第1鉄筋12の端面に着脱自在に装着してもよい。
【0055】
次に、本発明の第4の実施形態とその作用及び効果について説明する。第4の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0056】
図6(a)の側断面図に示すように、第4の実施形態の管理治具70は、基準部材としてのゲージ棒72、74の一方端部に、位置合せ部としての目印領域76、78が設けられている。ゲージ棒72、74の他方端部は、接着剤等によって第1鉄筋12、第2鉄筋14の端部に固定された鋼製のキャップ部材80、82に着脱自在に装着されている。目印領域76、78は、継手部材16が所定の連結位置に配置されたときに、継手部材16の端部に位置するようにゲージ棒72、74に設けられている。
【0057】
管理治具70を用いた、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法は、継手部材16を移動させ、継手部材16の端部が目印領域76、78に合ったところで継手部材16の移動を止めて、キャップ部材80、82からゲージ棒72、74を外す。よって、継手部材16の連結位置を規定することができ、これにより、継手部材16への第1鉄筋12と第2鉄筋14との挿入長さを規定できる。
【0058】
図6(b)、(c)の側断面図には、管理治具70の変形例が示されている。図6(b)の管理治具84では、第1鉄筋12及び第2鉄筋14の端面に、バネ86によりキャップ部材80、82を押し付けることによって、キャップ部材80、82を第1鉄筋12及び第2鉄筋14に固定している。図6(c)の管理部材88では、キャップ部材80にゲージ棒74を着脱自在に装着し、キャップ部材82にゲージ棒72を着脱自在に装着している。
【0059】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明した。
【0060】
なお、第1〜第4の実施形態では、プレキャストコンクリート製の柱部材34とプレキャストコンクリート製の梁部材36との接合へ管理治具10、48、62、70、84、88を適用した例を示したが、管理治具10、48、62、70、84、88は、梁部材同士、柱部材同士の接合等さまざまな部材の接合に際して適用することができる。
また、柱部材34及び梁部材36のどちらか一方を現場打ちコンクリートによって形成してもよい。
【0061】
また、第1〜第4の実施形態では、継手部材16を、第1鉄筋12及び第2鉄筋14を差し込むことにより挿入可能な差し込み式の機械式継手によって構成した例を示したが、第1及び第2の実施形態において、ねじ節鉄筋によって第1鉄筋12及び第2鉄筋14を構成し、継手部材16を、第1鉄筋12及び第2鉄筋14を捩じ込むことにより挿入可能な捩じ込み式の機械式継手によって構成してもよい。
【0062】
また、第1〜第4の実施形態で示した、継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法は、継手部材16により連結される全ての第1鉄筋12及び第2鉄筋14に対して行なってもよいが、梁部材36の接合面40から突出する全ての第1鉄筋12の突出長さが略等しくなっており、柱部材34の接合面38から突出する全ての第2鉄筋14の突出長さが略等しくなっている場合には、1つの第1鉄筋12又は第2鉄筋14に対して継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法により継手部材16を配置し、この継手部材16に合わせて残りの継手部材16を配置してもよい。
【0063】
また、第1及び第2の実施形態では、第1鉄筋12のマーク42を基準にして継手部材16を移動させる例を示したが、第1鉄筋12にマークを付けずに、1つの第1鉄筋12又は第2鉄筋14に管理治具10を取り付けて、残りの第1鉄筋12又は第2鉄筋14に設けられている継手部材16をこの管理治具10を基準にして移動させてもよい。
【0064】
また、第1〜第4の実施形態で示した、梁部材36の接合面40から突出する第1鉄筋12、及び柱部材34の接合面38から突出する第2鉄筋14の突出長さを、図7(a)〜(d)の側断面図に示す方法により検査治具90を用いて確認してもよい。
【0065】
検査治具90は、円筒状の部材であり、内部に突出部材92が収容されている。また、突出部材92には、第1表示部94が設けられている。検査治具90の各寸法は、図7(d)に示すように、長さdを鉄筋の許容最大突出長さとし、長さeを鉄筋の許容最小突出長さよりも少し長くする。また、突出部材92の長さfを、検査治具90の全長から長さeを引いた長さにする。
【0066】
第2鉄筋14の突出長さが所定の長さであることを確認する場合には、図7(a)に示すように、確認対象となる第2鉄筋14が検査治具90の中空部96に挿入されるようにして、検査治具90を第2鉄筋14にセットする。そして、検査治具90の末端面98を柱部材34の接合面38に当てた状態で、第1表示部94が検査治具94の先端面100から突出するか否かによって、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さであるかどうかを判断する。
【0067】
第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲内にある場合には、図7(b)に示すように、検査治具90の先端面100から第1表示部94が突出する。また、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲よりも小さい場合には、図7(c)に示すように、検査治具90の先端面100から第1表示部94が突出しない。また、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲よりも大きい場合には、図7(d)に示すように、検査治具90の末端面98を柱部材34の接合面38に当てることができない。
【0068】
図8(a)〜(c)の側断面図には、図7(a)〜(d)の方法の変形例が示されている。ここでは、検査治具102を用いて、梁部材36の接合面40から突出する第1鉄筋12、及び柱部材34の接合面38から突出する第2鉄筋14の突出長さを確認する。
検査治具102は、円筒状の部材であり、内部に突出部材104が収容されている。また、突出部材104には、第2表示部106と第3表示部108とが設けられている。
【0069】
検査治具102では、検査治具102の末端面110を柱部材34の接合面38に当てた状態で、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲内にある場合に、検査治具102の先端面112から第2表示部106が突出し(図8(a))、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲よりも小さい場合に、検査治具102の先端面112から第2表示部106及び第3表示部108が突出せず(図8(b))、第2鉄筋14の突出長さが所定の長さの許容範囲よりも大きい場合に、検査治具102の先端面112から第2表示部106及び第3表示部108が突出する(図8(c))ように、各部を構成する。
【0070】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
10、48、62、70、84、88 管理治具(継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具)
12 第1鉄筋
14 第2鉄筋
16 継手部材
18 管部材(基準部材)
20 照準部(位置合せ部)
50 棒部材(基準部材)
52、66、76、78 目印領域(位置合せ部)
64 紐(基準部材)
72、74 ゲージ棒(基準部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を向き合わせて配置した第1鉄筋と第2鉄筋とが挿入された状態で連結される継手部材への前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との挿入長さを規定する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具において、
前記第1鉄筋、前記第2鉄筋又は前記継手部材へ着脱自在に装着される基準部材と、
前記基準部材に設けられ前記継手部材の連結位置を規定する位置合せ部と、
を有する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具。
【請求項2】
前記基準部材は、前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ着脱自在に装着される管部材であり、
前記位置合せ部は、前記管部材に設けられ前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋の端部に合せる照準部である
請求項1に記載の継手部材内の鉄筋挿入長さ管理治具。
【請求項3】
端面を向き合わせて配置した第1鉄筋と第2鉄筋とが挿入された状態で連結される継手部材への前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との挿入長さを規定する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法において、
前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ管部材を着脱自在に装着する管部材装着工程と、
前記第1鉄筋又は前記第2鉄筋へ装着した前記管部材を移動させて、前記管部材に設けられた照準部を前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋の端部に合せる管部材移動工程と、
を有する継手部材内の鉄筋挿入長さ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−57366(P2012−57366A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201944(P2010−201944)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】