説明

網状体

【課題】優れた機械的強度及び軽量性を有している網状体を提供する。
【解決手段】網状体1は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる帯状体1aを多数本、所定間隔毎に並設してなる帯状体列1Aと、この帯状体列1Aの帯状体1aに交差する方向に多数の帯状体1bを所定間隔毎に並設してなる帯状体列1Bとからなり、これらの帯状体列1A、1Bの帯状体1a、1bの交差部を一体化することにより多数の通孔1cが設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的強度及び軽量性を有している網状体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、強度などが要求される包装用資材、農業用資材、土木資材などの用途において帯状体を用いた網状体が用いられている。この網状体を構成している帯状体として、特許文献1には、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合体20〜100重量%と熱可組成樹脂80〜0重量%とからなる第1成分がヤ−ンの表面層及び裏面層を形成し、この第1成分より20℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分がヤ−ンの中間層を形成した複合フラットヤーンが提案されている。
【0003】
上記複合フラットヤーンを用いて高強度の網状体を得るためには、複合フラットヤーンの厚みを厚くすることが考えられるが、ダイから押出された原反シートが厚いと、原反シートを所定幅に切断する際に裂けや割れが発生し、更に、複合フラットヤーンの強度を上げるための延伸工程においても、充分な延伸強度が得られる以前に、フラットヤーンに切断や折れが発生してしまい、複合フラットヤーンの厚みを厚くすることは難しい。
【0004】
従って、網状体中における複合フラットヤーンの単位面積当りの本数を増加させることによって対応しているものの、網状体の強度を充分に向上させることができないといった問題点の他に、網状体の軽量性が損なわれ、輸送時や包装用資材用途にあっては輸送コストの増大を招き、二酸化炭素の排出量も増加するなど地球環境保護に対する観点からも改善が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−247764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた機械的強度及び軽量性を有している網状体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の網状体を図面を参照しつつ説明する。網状体を構成している帯状体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸した後に一軸延伸して製造された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる。引抜延伸に用いられる原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレートなどが挙げられ、耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0008】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎると、シート作成時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、引抜延伸の延伸倍率を大きくすることが困難となることがあるので、0.6〜1.0が好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、JIS K7367−1に準拠して測定されたものをいう。
【0009】
原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みは特に限定されないが、0.5〜4mmが好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが0.5mm未満では、延伸後のシート厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際しての強度が十分な大きさとならないことがあり、4mmを超えると延伸が困難となることがあるからである。
【0010】
非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが原反として用いられることが好ましく、その結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0011】
引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低温であると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、或いは、硬すぎて裂けて引き抜くことができないことがあるので、引抜延伸する前に予め(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上に予熱することが好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121−1987に準拠して測定されたものをいう。
【0012】
上記引抜延伸する際の一対の引抜ロールの温度は、低温すぎると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度が低下して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、高温すぎると、引抜延伸の際の摩擦熱などにより樹脂温度が上昇して分子配向が緩和するので、(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上で且つ(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+20)℃未満であることが好ましい。
【0013】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引き抜く際に、一対のロールをこれらの対向面が共に引抜方向となるように回転させることで引抜延伸の際の抵抗を低減して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの波うちの発生を抑えることができ好ましい。
【0014】
本発明においては、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸している。
【0015】
特に、引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートのポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和されて機械的強度が低下するという欠点を有している。
【0016】
そこで、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、好ましくは、一対の引抜ロールの温度より高い温度で一軸延伸することにより配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない機械的強度に優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを得ることができる。
【0017】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。なお、ロール延伸法とは、一対のロールを所定間隔を存して配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を所定間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟持させ、一方のロール対の回転速度と、他方のロール対の回転速度とを相違させ、且つ、下流側のロール対の回転速度を上流側のロール対の回転速度より速くすることにより、加熱状態の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに引張力を加えて延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引っ張る方法であり一軸方向のみに強く分子配向させることができる。なお、ロール対間の速度比が延伸倍率となる。
【0018】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する際の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低いと、必要な一軸延伸の延伸倍率が得られないことがあり、高いと、引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピーク温度の立ち上がり温度以上で且つ融解ピークの立ち上がり温度以下が好ましい。
【0019】
なお、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、延伸ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は120〜230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0020】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおいて、引抜延伸の延伸倍率と、一軸延伸の延伸倍率との合計の延伸倍率は、低いと、網状体の機械的強度が低下し、高いと、帯状体が延伸方向に沿って割れやすくなるので、2.5〜8倍が好ましい。
【0021】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおける一軸延伸方向の引抜延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、帯状体の機械的強度が低下することがあり、高いと、帯状体が延伸方向に沿って割れやすくなるので、3〜7倍が好ましく、4〜6倍がより好ましい。なお、引抜延伸の延伸倍率は、延伸後のシートの長さを延伸前のシートの長さで除したものをいう。
【0022】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、帯状体の機械的強度が低下することがあり、高いと、帯状体が延伸方向に沿って割れやすくなるので、1.01〜1.2倍が好ましく、1.03〜1.1倍がより好ましい。
【0023】
又、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、低いと、帯状体の機械的強度が低下し、高いと、帯状体が割れやすくなるので、20〜50%が好ましく、30〜45%がより好ましい。なお、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0024】
更に、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、その機械的強度を向上させるために熱固定されるのが好ましい。
【0025】
一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定温度は、一軸延伸時の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度(一軸延伸温度)より低いと、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まず機械的強度が向上しないので、一軸延伸温度以上が好ましいが、原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度より高くなると、熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの機械的強度が低下するので、一軸延伸温度以上で且つ原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度以下がより好ましい。
【0026】
又、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷がかかっていると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸され、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートがフリーの状態では延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに収縮が生じるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷はかかっていないが熱により収縮しないように固定した状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないことが好ましい。例えば、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両端をピンチロールなどで負荷がかからないように保持した状態で、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定を行なうのが好ましい。なお、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの加熱は、熱風、ヒーターなどで行うのが好ましい。
【0027】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、10秒〜5分が好ましい。
【0028】
上述のようにして得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを所定幅、好ましくは一定幅に切断することによって長尺状の帯状体を得ることができる。なお、帯状体の長さ方向と、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの引抜延伸方向とが合致するように切断する。
【0029】
この帯状体を原料として形成された網状体1としては、例えば、図1又は図2に示したように、帯状体1a、1a・・・を多数本、所定間隔毎に並設してなる帯状体列1Aと、この帯状体列1Aの帯状体1aに斜行又は直交する方向に、多数の帯状体1b、1b・・・を所定間隔毎に並設してなる帯状体列1Bとからなり、これらの帯状体列1A、1Bの帯状体1a、1bの交差部を熱融着や接着剤などの公知の手段でもって一体化することにより多数の通孔1cが設けられてなるものや、このようにして得られた網状体の一面に、図3又は図4に示すように、多数本の帯状体1d、1d・・・を小間隔ごとに並設してなる帯状体列1Dを、網状体を形成している上記2列の帯状体列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、帯状体列1A(1B)の帯状体1a(1b)と、帯状体列1Dの帯状体1dとの交差部を接着剤或いは熱融着により一体化させて多数の通孔1cを設けるように形成してなる網状体を挙げることができる。
【0030】
又、上記網状体1の他に、図5に示したような網状体2であってもよい。具体的には、この網状体2は、多数の太幅網部2a、2a・・・を所定間隔毎に並設してなる太幅網部列2Aと、互いに隣接する太幅網部2a、2a同士を該太幅網部2a、2aに対して斜行した状態に連結している細幅網部2b、2b・・・を多数、太幅網部2a、2a・・・に交差する方向(太幅網部2aの長さ方向)に所定間隔毎に並設してなる細幅網部列2Bとからなり、太幅網部2aと細幅網部2bとで囲まれた部分によって通孔2Cが形成されてなる網状体を2枚、第一網状体21、第二網状体22とし、これら第一、第二網状体21、22をそれらの太幅網部2a、2a同士が互いに直交又は斜行した状態に積層一体化されてなる。
【0031】
上記網状体2の製造方法としては、図6及び図7に示したように、上述のようにして製造された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シート4、4を二枚用意し、各延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シート4に一定長さのスリット4a、4a・・・を多数本、その長さ方向を引抜延伸方向に合致させ且つ引抜延伸方向に隣接するスリット4a、4a同士を互いに一部が重なり合った状態に形成してスリット列4Aを形成し、このスリット列4Aを延伸方向に直交する方向に所定間隔毎に形成する。なお、スリット4a、4a・・・は、一のスリット4aに注目した時、スリット4aの一端側にて重なり合っているスリット4a’と、スリット4aの他端側にて重なり合っているスリット4a”とは、スリット4aを挟んで互いに反対側となるように形成されている。
【0032】
次に、各延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シート4をその延伸方向に直交する方向(幅方向)に引っ張ってスリット4a、4a・・・をその幅方向に拡張した状態として、スリット列4A、4A間のフィルム部分を太幅網部2aとし、スリット4a、4a間のフィルム部分を細幅網部2bとした第一、第二網状体21、22を形成し、これらの第一、第二網状体21、22の太幅網部2a、2a同士が互いに斜行又は直交した状態に重ね合わせて、第一、第二網状体21、22同士を任意の箇所にて熱融着又は接着剤を介して積層一体化させることによって網状体2を製造することができる。
【0033】
更に、上記網状体3としては、図8に示すように、上記帯状体を経糸31及び緯糸32として平織りし、経糸31と緯糸32との交差部を接着剤或いは熱融着により一体化させると共に、これらの経糸31と緯糸32とで囲まれた隙間によって多数の通孔33、33・・・を設けてなる網状体や、このようにして得られた網状体の一面に、図9に示すように、網状体の経糸31及び緯糸32と斜行する方向に、多数本の帯状体34a、34a・・を小間隔ごとに並設してなる帯状体列34を重ね合わせ、網状体の経糸31及び緯糸32と、重ね合わせた帯状体列34の帯状体34a、34a・・・との交差部を接着剤或いは熱融着により一体化させて形成した多数の通孔を設けてなる網状体が挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の網状体は、これを構成している帯状体が延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートから形成されて優れた機械的強度を有していることから、単位面積当りの帯状体の本数を増加させることなく充分な機械的強度を有し、更に、帯状体の厚みを薄くしても充分な機械的強度を保持することができる。よって、本発明の網状体は、優れた機械的強度及び軽量性を有しており、包装用資材、農業用資材、土木資材などの用途の他に、合成樹脂シートと積層一体化して複合シートとした上で所望形状に成形することによって自動車の外板用途にも展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の網状体を示した平面図である。
【図2】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【図3】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【図4】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【図5】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【図6】図5の網状体の分解斜視図である。
【図7】図5の網状体の原料となる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを示した斜視図である。
【図8】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【図9】本発明の網状体の他の一例を示した平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名「NEH2070」、極限粘度:0.88)を押出機に供給して溶融混練しTダイから押出すことによって厚さ2mmで且つ幅600mmの非晶状態のポリエチレンテレフタレートシートを得た。なお、ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は2.5%であった。
【0038】
なお、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は76.7℃、ポリエチレンテレフタレートを昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られた示差走査熱量曲線において、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は139.8℃で、融解ピークの立ち上がり温度は234℃であった。
【0039】
一対の直径が500mmの引抜ロールを用意し、この引抜ロールをその対向面間の距離(隙間)が0.7mmとなるように配設した。そして、ポリエチレンテレフタレートシートAに温風を吹き付けて60℃に予熱した後、このポリエチレンテレフタレートシートAを65℃に保持された引抜ロール間に通して6m/分の速度で引き抜いて引抜延伸を行って延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。延伸ポリエチレンテレフタレートシートの延伸倍率は5.5倍であった。なお、引抜ロールは、これら引抜ロールの対向面が共に引抜方向となるように回転速度1.32m/分にて回転していた。
【0040】
次に、190℃に保持された熱風槽内に、一対のロールを0.5mmの間隔を存して上下に配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を10mの間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸ポリエチレンテレフタレートシートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟持させ、上流(入口)側のロール対の回転速度を6m/分、下流(出口)側のロール対の回転速度を6.3m/分とし、加熱状態の延伸ポリエチレンテレフタレートシートに引張力を加えて延伸ポリエチレンテレフタレートシートを上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸した。なお、一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は、37%であった。
【0041】
上記一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートシートをその幅方向に1.5mm毎に切断して長尺状の帯状体を得た。なお、帯状体の長さ方向と延伸ポリエチレンエテフタレートシートの引抜延伸方向とが合致するように切断した。
【0042】
そして、上記帯状体を用いて、帯状体1a、1a・・・を多数本、10mm毎に並設してなる帯状体列1Aと、この帯状体列1Aの帯状体1aに45°の角度でもって斜交した状態で積層され且つ多数の帯状体1b、1b・・・を10mm毎に並設してなる帯状体列1Bと、この帯状体列1A、1Bの帯状体1a、1bの双方に45°の角度でもって斜交して上記帯状体列1Bの帯状体1bに積層され且つ多数の帯状体1d、1d・・・を10mm毎に並設してなる帯状体列1Dとからなり、これらの帯状体列1A、1B、1Dの帯状体1a、1b、1dの交差部のそれぞれを水分散ポリエステル系樹脂接着剤によって積層一体化することにより多数の通孔1cが設けられてなる図4に示した網状体1を得た。
【符号の説明】
【0043】
1A 帯状体列
1B 帯状体列
1D 帯状体列
1a 帯状体
1b 帯状体
1c 通孔
1d 帯状体
1 網状体
2A 太幅網部列
2B 細幅網部列
2C 通孔
2a 太幅網部
2b 細幅網部
2 網状体
3 網状体
4A スリット列
4a,4a’,4a”スリット
4 延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シート
21 第一網状体
22 第二網状体
31 経糸
32 緯糸
33 通孔
34 帯状体列
34a 帯状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる帯状体を多数本、所定間隔毎に並設してなる帯状体列と、この帯状体列の帯状体に交差する方向に多数の帯状体を所定間隔毎に並設してなる帯状体列とからなり、これらの帯状体列の帯状体の交差部を一体化することにより多数の通孔が設けられてなることを特徴とする網状体。
【請求項2】
多数の太幅網部を所定間隔毎に並設してなる太幅網部列と、互いに隣接する太幅網部同士を該太幅網部に対して斜行した状態に連結している細幅網部を多数、所定間隔毎に並設してなる細幅網部列とからなり、且つ、太幅網部と細幅網部とで囲まれた部分によって通孔が形成されてなる第一、第二網状体をそれらの太幅網部同士が互いに交差した状態に積層一体化されてなり、上記第一、第二網状体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにその引抜延伸方向に長いスリットを形成して上記引抜延伸方向に直交する方向に引っ張って拡張させてなることを特徴とする網状体。
【請求項3】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる帯状体を経糸及び緯糸として織成し、帯状体間に多数の通孔が形成されていることを特徴とする網状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−174201(P2011−174201A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39041(P2010−39041)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】