説明

綿を含む廃棄材料から回収された綿

【課題】衣料品の縫製過程における裁断屑や端切れ、及び古着などが毎年大量に発生しているが、セルロース系高分子と合成高分子等との簡便な選別技術が無いため、これらの加工品を有効にリサイクルする上で大きな問題になっている。
【解決手段】綿を含む廃棄材料から回収された綿であって、イオウ元素含有量が500ppm以下重合度DPが50〜500で、酸素雰囲気下、250℃で30分間保持した時の減量率1.5wt%以下、平均粒径0.01〜30μmであることを特徴とする綿を含む廃棄材料から回収された綿である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿を含む廃棄材料から回収された耐熱性・成形性に優れた綿に関する。
【背景技術】
【0002】
綿は現在、衣料品の原料として広く大量に用いられている。しかしながら、綿は単独で用いられるばかりではなく、合成高分子などと一緒に加工品とされることが多い。例えば綿とポリエステル等の混紡織・編物などとして広く利用されている。これらの衣料品の縫製過程における裁断屑や端切れ、及び古着などが毎年大量に発生しているが、セルロース系高分子と合成高分子等との簡便な選別技術が無いため、これらの加工品を有効にリサイクルする上で大きな問題になっている。
【0003】
現在これらの加工品の多くの場合、最終的には細かく裁断した後に土中への埋め立てや焼却処分などがなされているが、より効果的な綿のリサイクルにより高度の利用が可能となれば持続的な社会の発展に必要な、省資源、省エネルギー、地球温暖化防止技術となる。一方、本発明者らは、綿を含む廃棄材料を酸で加水分解処理することで綿が粒子化し、繊維形状を保つPETと形態差を利用して分離・回収できることを見出している(特許文献1,2)。また回収された綿は、粒子化され、非常に結晶性が高く、かつ高い弾性率を有することから繊維補強材料、或いはアセテート等のセルロース誘導体として有効に利用できる可能性がある。更に加水分解処理された綿は、DP(重合度)が数百オーダーまで低下するので、発酵用原料としての利用可能性もある。
しかしながら得られた回収綿は耐熱性が低く、溶融樹脂とのコンポジット工程において熱分解が起こり補強用材料としての特徴を発揮できないという問題があった。更に回収綿の粒径によっては、溶融樹脂に均一に分散されず目的とするコンポジットの物性が得られない、また発酵用原料として利用するときに発酵速度を制御できないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2006-316191号公報
【特許文献2】特開2006-233194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、綿を含む廃棄材料から回収された耐熱性、成形性に優れた綿を提供することにある。また本発明の別の目的は、回収綿を廃棄材料から効率的に分離・回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定濃度のHCl水溶液で加水分解処理することにより、耐熱性に優れ、粒径が一定範囲に制御された綿を効率的に分離・回収できることを実験的に見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は綿を含む廃棄材料から回収された綿であって、酸素雰囲気下、250℃で30分間保持した時の減量率1.5wt%以下で、平均粒径0.01〜30μmであることを特徴とする綿を含む廃棄材料から回収された綿である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回収綿は、繊維補強用材料、発酵原料、誘導体原料に有効に利用することができる。また効果的な綿のリサイクルにより高度の利用が可能となれば持続的な社会の発展に必要な、省資源、省エネルギー、地球温暖化防止技術と多いに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の対象となる綿を含む廃棄材料とは、綿混率が10〜80wt%の非加工品や加工品が包含される。
非加工品としては、綿を含む植物などが例示される。加工品としては、綿を含む繊維製品や紙製品が考えられるが、これらに限定されるものではなく綿を含む成形品であればよい。本発明で好ましく用いられる加工品は、綿とポリエステルの混紡繊維、及び/又は混紡繊維製品である。
繊維補強材料は、ナイロンやポリ乳酸等の溶融樹脂とコンポジットを形成するために押し出し機内で長時間高温状態にさらされている。そのため、回収綿が繊維補強材料としての特性を発揮するためには、上記の条件下でも、分解ガスの発生や重合度の低下、弾性率の低下が起こらないことが必要である。
本発明の回収綿の硫黄元素含有量は500ppm以下であることが必要である。硫黄元素含
有量が500ppmを超えると回収綿の耐熱性や弾性率が低下し、繊維補強材料として利用す
ることができない。好ましくは300ppm以下で、更に好ましくは50ppm以下である。
本発明の回収締の重合度DPは50〜500である。回収綿の重合度DPが50を下回ると耐
熱性が著しく低下する。また酸加水分解法で500をこえることは困難である。繊維補強材
料としての特性向上という観点から、好ましくは重合度DPが100〜300である。
【0009】
本発明の綿を含む廃棄材料から回収された綿は酸素雰囲気下、250℃で30分間保持した
時の減量率が1.5wt%以下である必要がある。本発明の回収綿は、酸素雰囲気下、250℃で30分間保持した時の減量率が1.5wt%以下であり、押し出し機内での熱分解が起きない。
減量率が1.5wt%をこえる回収綿を繊維補強材料として利用すると、成形工程で、熱分解が起こり、分解ガスの発生、重合度の低下、弾性率の低下などが起こり繊維補強材料としての特性を発揮することができない。好ましくは、減量率1.3wt%以下で、さらに好ましくは1.0wt%以下である。
また本発明の回収綿は、平均粒径0.01〜30μmである必要がある。回収綿の平均粒径が30μmをこえると、コンポジット成形工程において溶融樹脂と混ざりにくく、回収綿が均一に分散されたコンポジットが得られない。更に発酵用原料として利用しても、発酵速度を制御できない。繊維補強材料としての回収綿の溶融樹脂中における分散性向上の観点から、好ましくは、平均粒径0.01〜25μm、更に好ましくは0.01〜15μmである。
本発明の回収綿は、綿の含有量が90wt%以上であることが、補強繊維材料としての特性を発揮するためには好ましい。なお10%未満であってかつ回収綿の耐熱性を阻害しない範囲であればPETや金属くず等の不純物を含有していても良い。好ましくは95wt%以上で、更に好ましくは99wt%以上である。
【0010】
綿を含む廃棄材料から綿を分離・回収する方法についてステップごとに説明する。
(a) 綿を含む廃棄材料を1〜100mm角に裁断する工程
投入する廃棄材料はロータリーカッターなどによる粉砕機で1〜100mm角に裁断する。100mm角をこえると加水分解された綿を機械的に分離することが困難である。また1mm角未満では切断粉砕機に何度も繰り返してかける必要があり、作業効率が悪くなる。好ましくは、2〜50mm角で、より好ましくは5〜30mm角に裁断する。
(b) 0.05〜1wt%のHCl水溶液に(a)で得られた裁断物を0.1〜40wt%で投入する工程
(a)で得られた裁断物を、HCl水溶液で処理する必要がある。このHCl水溶液による加水分解の工程を経てないと、例え請求項3の(g)の工程を行ったとしても請求項1記載の平均粒径0.01〜30μmの条件を満たすことはできない。
【0011】
綿の加水分解反応は、H2SO4水溶液中でも進行するが、H2SO4水溶液処理で回収された綿は耐熱性が著しく低下し、繊維補強用材料或いはセルロース誘導体原料として有効に利用することができない。処理に用いるHCl水溶液の濃度は0.05〜1wt%である。処理濃度が0.05wt%未満のHCl水溶液である場合、加水分解が進行せず、綿の回収率が著しく低下する。一方、1wt%をこえるHCl水溶液である場合、回収された綿の耐熱性が低下すると同時に、綿が水溶性のセルビオースまで分解が進行し、回収率が低下する。好ましくは0.1〜1wt%、更に好ましくは0.3〜0.6wt%のHCl水溶液を用いる。
また処理濃度は0.1〜40wt%である。処理濃度が0.1wt%未満であると、生産効率が著しく低下する。40wt%をこえると加水分解処理が部分的にしか行われず、分離・回収効率が低下する。好ましくは1〜30wt%、更に好ましくは5〜20wt%である。
【0012】
(c) 100〜150℃で10分〜4時間処理する工程
廃棄材料をHCl水溶液に投入してから、100〜150℃で、10分〜4時間処理する。なお、ここでの処理温度100〜150℃とは反応槽内の温度をいう。また処理時間は、処理温度に達したところから、カウントする。処理温度が100℃もしくは処理時間が10分未満であると、加水分解が進行せず回収率が下がり、また回収綿の粒径が30μmをこえる。処理温度が150℃をこえる、もしくは4時間をこえると、回収綿の耐熱性が低下し、また水溶性のセルビオースまで分解が進行し、その結果、回収率が低下する。好ましくは、処理温度が110〜145℃で、処理時間が30分〜3時間で、更に好ましくは120〜140℃で、40分〜2時間である。
【0013】
(d) 80℃以下まで冷却後、溶液中のpHを6.5〜8.2になるまで中和し、1〜20wt%のスラリー濃度になるように水を投入する工程
処理した後の廃棄材料を80℃以下まで冷却後、溶液中のpHが6.5〜8.2になるまで中和する必要がある。pH6.5〜8.2の範囲に中和することで綿の加水分解の進行を停止させて、回収綿の耐熱性、粒径を一定範囲にコントロールできる。好ましくは、pHが6.8〜8.0で、更に好ましくは、pHが6.9〜7.5である。中和剤としては、特に限定はないがKOH、NaOH、NaHCO3、アンモニア等が挙げられる。また中和した後、1〜20wt%のスラリー濃度になるように水を投入する。20wt%をこえるスラリー濃度であれば、水量が少なすぎて、攪拌による分離効率が悪くなり、回収率が低下する。1wt%未満のスラリー濃度では、大量の水を使用し水かさが増えるため、作業効率、攪拌効率ともに下がる。好ましくは1〜15wt%で、更に好ましくは4〜10wt%のスラリー濃度になるように水を投入する。
【0014】
(e) 二軸の攪拌翼を有する反応機で、50〜500rpmで10分〜5時間攪拌し、圧搾する工程
綿を分離・回収するために残留物を二軸の攪拌翼を有する反応機で、50〜500rpmで1
0分〜5時間攪拌した後、圧搾することが適当である。圧搾することで廃棄材料に付着している回収綿を分離し、その後、ろ過操作を行うことで回収綿を得ることができる。もし50rpm以下の回転や圧搾をしない場合、廃棄材料に付着した粒子状の回収綿を分離できず、回収率が下がってしまう。好ましくは200〜400rpmで、更に好ましくは250〜350rpmで10分〜5時間攪拌し、(d)及び(f)の工程を2〜5回繰り返すことである。
(f) (e)で回収した綿繊維を105〜120℃で10分〜5時間で乾燥する工程
回収した綿繊維は、水等の溶媒を含んでいるために、105〜120℃で10分〜5時間で加熱乾燥することが必要である。105℃未満であれば、水を完全に除去できず回収綿の貯蔵中に腐敗が進む。120℃をこえても、乾燥時間に変化はなく、エネルギーがかかるだけで不経済である。
【0015】
(g) (f)で得られた回収綿を粉砕する工程
(f)で得られた回収綿を更に微粒子化するという観点で、回収綿を粉砕することが好ましい。粉砕機にかけることで0.01〜1μmの均一な微粒子が得られる。
本発明の回収綿は、繊維補強用材料、発酵原料、誘導体原料に有効に利用することができる。また効果的な綿のリサイクルにより高度の利用が可能となれば持続的な社会の発展
に必要な、省資源、省エネルギー、地球温暖化防止技術と多いに寄与するものである。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を挙げて本発明より詳細に説明するが、いうまでもなく本発明は実施例などにより何ら限定されるものでない。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)回収綿の回収率
回収率は、廃棄材料に含まれている綿の割合をa、回収量をb、投入した廃棄材料の重量w0とした時の回収率yを次式により求めた。
y=b/(a×w0)×100
(2)回収綿の平均粒径の測定
ベックマンコールター社製のレーザー回折-散乱法平均粒径測定装置(機種:LSI3320)を用い、回収綿を水に懸濁させて流し、測定した。
(3)回収綿の硫黄元素含有量の測定
得られた回収綿を発光分析装置(ICP)を用いて硫黄の分析を行い、硫黄元素含有量を求めた。
【0017】
(4)回収綿の重合度の測定
重合度DPは銅エチレンジアミン法を用いてLAUDA社製の動粘土測定装置(PROLINE PVL24)を用いて液の流下速度を測定した。
セルロースを溶解させた銅エチレンジアミン溶液の流下時間(t(秒))と無添加同溶液の流下時間(t0(秒))から、相対粘度ηrを求める。
ηr = t/t0
次に、それぞれの濃度における比粘度ηspを以下の式より求める。
ηsp r−1
比粘度を次式に挿入して固有粘度[η]を求める。
[η]=ηsp/100×c×(1+0.28×ηsp) (c:試料濃度)
以下の式より粘度平均重合度DPを求めた。
DP = 175×[η]
分析試料は以下のようにして調整した。セルロース1gに純水20mlを加え30分間攪拌した後、銅エチレンジアミン溶液(1M銅、2Mエチレンジアミン)20ml加え、30分間攪拌して、分析試料とした(非特許文献1)。
非特許文献1 木材化学, ユニ出版, p.40, (1983)
【0018】
(5)回収綿の耐熱性の測定
エスアイアイナノテクノロジー社製のTG/DTA(機種:TMA/SS120U)を用いて、空気200ml/minを流しながら、室温から50℃/minで250℃まで昇温して、250℃で30分間ホールドした時の質量減量率を評価した。
(6)回収綿の含有率の測定
回収綿1gをヘキサフロロイソプロピルアルコール(HFIP)100mlと混合し、室温で1時間攪拌してから、一晩放置した。溶液をろ過した後、沈殿物を150mlのHFIPで洗浄してから、メタノール150mlで再度洗浄した。残綿を105℃で2時間乾燥させた後、デシケーター内に30分間放置し、室温にした。この時の綿の回収量をw1、処理前の量をw2とした時、次式により回収綿の含有率xを求める。
x=(w2−w1)/w2×100
(7)3点曲げ剛性、破断強度の測定
射出成形品を23℃、50%相対湿度、24時間の状態調節し、JIS K 7203に準拠して3点曲げ剛性と破断強度を測定した。
(8)射出成形品を目視にて観察し、繊維の凝集体の有無における均一性を評価した。
【0019】
〔実施例1〕
綿を31wt%含む綿/PET混の廃棄材料を切断粉砕機で50mm角に粉砕して、テフロン(登録商標)コーティングを施したオートクレーブに粉砕した廃棄材料1.0g投入し、0.4wt%のHCl水溶液100mlを加えた。密栓してから、130℃に温度設定し、室温から10℃/minで昇温して、130℃になったところから1時間カウントした。その後、室温まで冷却し、溶液中のpHが7.2になるまで0.5wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、純水を100ml加えた。この後、廃棄材料を取り出し、二軸の攪拌翼を有する反応機で300rpmで一時間攪拌した後、1メッシュの金網でろ過し、更に圧搾してから水洗する。ここで網上に残っている残渣がPETで、水と共に洗い落ちたのが回収綿である。この圧搾、水洗の一連の操作を5回繰り返してPETにからみついた回収綿を完全に洗い流した。回収綿を105℃で4時間かけて乾燥させた後、粉砕機を用いて粉砕した。回収量は306mgで回収率は99%だった。得られた回収綿の物性を表1に示す。なお得られた回収綿は、本発明の範囲に相当するものであった。
【0020】
〔実施例2〕
実施例1の回収綿を、ホソカワミクロン社製の粉砕機(機種:ACMパルペライザ)を用いて、3回微粉砕を行った。得られた回収綿の平均粒径を表1に記す。なお得られた回収綿は、本発明の範囲に相当するものだった。
〔実施例3〜10〕
実施例1の綿を含む廃棄材料を用いて、表1に示した条件で、回収綿を得た。得られた回収綿の回収率及び物性は表1に記す。いずれの回収綿も本発明の範囲に相当するものであった。
【0021】
〔比較例1、2〕
実施例1の綿を含む廃棄材料と硫酸を用いてそれぞれ表1の条件で、回収綿を得ようとした。得られた回収綿の回収率及び物性は表1に記す。回収綿は得られたものの、高温処理後の質量減量率、硫黄元素含有量が高く本発明の範囲をはずれるものだった。
〔比較例3〜6〕
実施例1の綿を含む廃棄材料を、それぞれ表1の条件で、回収綿を得ようとした。得られた回収綿の回収率および物性は表1に記す。回収綿は得られたものの、重合度DPはいずれの例も本発明の範囲をはずれており、さらに、平均粒径又は質量減量率のいずれかが本発明の範囲をはずれるものだった。
【0022】
〔実施例11〕
脂肪族ポリエステル90gと実施例1で得られた回収綿30gを二軸押し出し機にて混練し、180℃にて押し出した。得られた組成物でダンベルを成形し、得られた成形品について評価を行った。評価の結果、3点曲げ剛性は6630MPa、破断強度は58MPa、繊維の分散状態は均一だった。
〔比較例7〕
回収綿を用いない以外は、実施例11と同様に成形及び評価を行った。評価の結果、3点曲げ剛性は870MPa、破断強度は49MPaであり、実施例11と比べて3点曲げ剛性、破断強度共に劣る結果となった。
【0023】
〔比較例8〕
比較例1で得られた回収綿を用いた以外は、実施例11と同様に成形及び評価を行った。評価の結果、3点曲げ剛性は4040MPa、破断強度は47MPa、繊維の分散状態は均一であり、実施例11と比べて3点曲げ剛性、破断強度共に劣る結果となった。
〔比較例9〕
比較例4で得られた回収綿を用いた以外は、実施例11と同様に成形及び評価を行った。。評価の結果、3点曲げ剛性は5920MPa、破断強度は55MPaと実施例11と比べて3点曲げ剛性
、破断強度は共に大差がなかったものの、繊維の分散状態が不均一だった。
【0024】
〔実施例12〕
二軸の攪拌翼を有する反応機に回収綿1.0gを、ピリジン10ml及び無水酢酸5mlとともに反応容器に入れて、25℃で約48時間、アセチル化反応を行った。これにメタノールを200ml加えた後、沈殿物をろ過し、このようにして得られた生成物をメタノール100mlで洗浄し、乾燥させることによりアセチルセルロース1.6g(置換度2.9)を得た。
【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の回収綿は、コンポジット、発酵原料、誘導体原料に有効に利用することができる。また効果的な綿のリサイクルにより高度の利用が可能となれば持続的な社会の発展に必要な、省資源、省エネルギー、地球温暖化防止技術と多いに寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿を含む廃棄材料から回収された綿であって、イオウ元素含有量が500ppm以下、重合度DPが50〜500で、酸素雰囲気下、250℃で30分間保持した時の減量率1.5wt%以下、平均粒径0.01〜30μmであることを特徴とする綿を含む廃棄材料から回収された綿。
【請求項2】
下記(a)〜(f)の工程を含むことを特徴とする綿を含む廃棄材料から請求項1記載の綿を分離・回収する方法。
(a) 綿を含む廃棄材料を1〜100mm角に裁断する工程
(b) 0.05〜1wt%のHCl水溶液に(a)で得られた裁断物を0.1〜40wt%で投入する工程
(c) 100〜150℃で10分〜4時間処理する工程
(d) 80℃以下まで冷却後、溶液中のpHを6.5〜8.2になるまで中和し、1〜20wt%のスラリー濃度になるように水を投入する工程
(e) 二軸の攪拌翼を有する反応機で、50〜500rpmで10分〜5時間攪拌し、圧搾する工程
(f) (e)で回収した綿繊維を105〜120℃で10分〜5時間で乾燥する工程
【請求項3】
綿を含む廃棄材料から綿を分離・回収する方法において、更に(g)を含むことを特徴とする請求項2記載の綿を含む廃棄材料から綿を分離・回収する方法
(g) (f)で得られた回収綿を粉砕する工程
【請求項4】
請求項1記載の回収綿を0.5〜50wt%含有することを特徴とするコンポジット
【請求項5】
請求項1記載の回収綿を50〜100wt%含有する発酵用原料
【請求項6】
請求項1記載の回収綿を原料とするセルロース誘導体

【公開番号】特開2009−40837(P2009−40837A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205438(P2007−205438)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】