説明

緑化用植栽ルーバー

【課題】羽根板により植物の生育が阻害されず、また植物が羽根板に強固に固定され容易に脱落することのない緑化用植栽ルーバーを提供する。
【解決手段】植栽マット2が羽根板1の上面に取り付けられることで、羽根板の縁による日陰等により植栽マットに取り付けられた蘚苔類植物等の植物の生育が阻害されることがなく、また接着手段や締結手段により羽根板の上面に強固に固定されることで、植栽マットと共に植物が容易に脱落することがないようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱間に隙間を開けて複数の羽根板を設け、その羽根板に植物が取り付けられていることで日除けと緑化とを同時に行うことができる緑化用植栽ルーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日除けと緑化とを同時に行うことができる緑化用植栽ルーバーとしては、例えば支柱同士の間に複数の羽根板を隙間をあけて取り付けたルーバーにおいて、開口容器状に形成される前記羽根板の内部に植物が植え付けられ、該羽根板の内部に対する給排水が行われ、前記羽根板の内部に、前記植物が植え付けられた基盤マットが備えられ、前記植物がコケである植栽ルーバーが開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−34347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の緑化用植栽ルーバーでは、開口容器状に形成された羽根板の内部に植物を植え付けることから、容器の縁による日陰ができて植物の生育に支障が出る恐れがあった。また羽根板に備えられた基盤マットは羽根板に強固に固定されたものではなく、基盤マットが強風等によって脱落する恐れのあるものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、羽根板により植物の生育が阻害されず、また植物が羽根板に強固に固定され容易に脱落することのない緑化用植栽ルーバーを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる緑化用植栽ルーバーは、支柱間に上下方向に間隔をおいて羽根板が設けられ、該羽根板に二体の繊維集合体間に蘚苔類植物を挟んだ植栽マットが取り付けられた植栽ルーバーであって、該植栽マットが前記羽根板の上面に接着手段、締結手段のいずれか一方若しくは両方を用いて取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わる緑化用植栽ルーバーによれば、植栽マットが羽根板の上面に取り付けられることで、羽根板の縁による日陰等により植物の生育が阻害されることがなく、また接着手段や締結手段により羽根板の上面に強固に固定されることで、植物が容易に脱落することをなくすることができる。
【0008】
また前記植栽マットは、繊維太さが0.1〜50デニール、目付量が30〜600g/m2、繊維長さが30〜100mmとなされていれば、締結手段や接着手段による固定がより強固なものとなり好ましい。
【0009】
また前記羽根板は、断面形状が板状、閉塞された箱状、又は飛行機翼状となされていれば、軽量で風圧に対する高い強度を備えさせることができるようになり好ましい。
【0010】
また前記羽根板は、断面に中空部を備えたものであって、該中空部に挿通された導水管により前記植栽マットへの灌水が可能となされていれば、灌水のための手段が目立つことなく設置でき、植栽ルーバーとしての美観を向上させることに繋がり好ましい。
【0011】
また前記羽根板は、回動軸により下方から支持され、該回動軸により水平方向の角度が自在に変更可能となされたものであって、前記回動軸に挿通された導水管により前記植栽マットへの灌水が可能となされていれば、こちらも灌水のための手段が目立つことなく設置でき、植栽ルーバーとしての美観を向上させることに繋がり好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わる緑化用植栽ルーバーによれば、植栽マットが羽根板の上面に取り付けられることで、羽根板の縁による日陰等により植物の生育が阻害されることがなく、また接着手段や締結手段により羽根板の上面に強固に固定されることで、植物が容易に脱落することをなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、実施の一形態を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図である。緑化用植栽ルーバー10は、間隔をおいて立設された支柱3間に回動軸4が回動自在に設けられ、回動軸4の上に羽根板1が取り付けられ、更に羽根板1の上に植栽マット2が取り付けられて形成されている。羽根板1は回動軸4の上に設けられていることで、図2に示す如く水平方向の角度が回動軸4の回動に伴って自在に変更可能となされている。
【0015】
図3は、羽根板1及び植栽マット2の詳細を示す縦断面図であり、(a)は全体を示す断面図、(b)は側端付近の詳細を示す断面図である。羽根板1は金属製の板状体であり、羽根板1の上に植栽マット2が取り付けられている。植栽マット2は、スナゴケである蘚苔類植物21が不織布である上部繊維集合体22及び下部繊維集合体23により上下から挟まれ、下部繊維集合体23の下方には、蘚苔類植物21を挟持する繊維集合体より繊維密度の小さい不織布である排水層24が設けられている。上部繊維集合体22の上面には、人工芝層25が一体に設けられている。また植栽マット2は、接着剤層である接着手段51により羽根板1の上面に取り付けられ、更に補助的にL字アングルである押さえ板6が設けられている。
【0016】
接着手段51は、羽根板1の上面に接着されると共に、植栽マット2の下面に浸透して硬化することで植栽マット2を羽根板1に強固に固着させるものであるが、この場合、接着手段が適用される植栽マット2を形成する排水層24が、繊維太さ0.1〜50デニール、目付量30〜600g/m2、繊維長さ30〜100mmとなされていることで、接着手段51が排水層24の繊維の間に適度に入り込み接着強度が高められる。これらの範囲から外れて繊維が粗になると、接着手段との接着面積が不足することで植栽マット2が外れやすくなり、繊維が密になると、繊維の間に接着手段51が入り込みにくくなって接着が表層近くに頼ることとなり、こちらも植栽マット2が外れやすくなる。
【0017】
上部繊維集合体22上に、一体に人工芝層25が設けられていることで、蘚苔類植物21の生育が不十分な状態や、降雨が少なく蘚苔類植物21が仮死状態であっても、植栽マット2の上面を植物状に彩った状態として緑化用植栽ルーバー10としての外観を損なうのを防ぐことができる。
【0018】
また下部繊維集合体23の下方に排水層24が設けられていることで、降雨等により植栽マット2に水分が滞留することなく速やかに排水され、蘚苔類植物21が腐敗することを防止できる。更に植栽マット2の取り付けに、補助的に押さえ板6を用いることで、はく離の起点となりやすい植栽マット2の端部を押さえて植栽マット2がはく離して脱落する恐れを小さくできる。
【0019】
上部繊維集合体22、下部繊維集合体23及び排水層24は、軽量で腐敗の恐れのない合成繊維を用いて形成した不織布を用いるのが好ましく、ポリエステル繊維等を用いた不織布が好適である。また植栽マット21については、上部繊維集合体22と下部繊維集合体23との間に蘚苔類植物21を挟んで、ニードルパンチ等の機械的絡合手段によって繊維集合体同士を部分的に絡ませて一体化したものが、工程が簡便で、蘚苔類植物21の挟持が確実なものとなり好ましい。また機械的絡合手段においては、排水層24も同時に絡合して下部繊維集合体23に部分的に絡ませて一体化するようにしてもよい。
【0020】
また植栽マット2の羽根板1への取り付けは、図4に示す如く、例えば(a)のように接着手段51のみを用いて羽根板1に取り付けるようにしてもよく、(b)のようにタッピングビス等の締結手段52を用いて取り付けてもよい。また締結手段52の締結の際には、適宜ワッシャー等を用いてもよい。締結手段52を用いる場合でも、締結手段により固定される排水層24は繊維太さ0.1〜50デニール、目付量30〜600g/m2、繊維長さ30〜100mmであるのが好ましく、この範囲より粗である場合、締結手段52が繊維の隙間から脱落する恐れがあり、またこの範囲より密な場合、締結手段52の挿通が困難となり、作業性が悪化することとなる。また締結手段52を用いる場合には、更に上部繊維集合体22及び下部繊維集合体23に挿通した上で羽根板1に締結させるようにしてもよい。
【0021】
上記の如く羽根板1は板状となされることで、風を面上で逃がして風荷重がかかりにくくなされているが、図5に示す如き形状として更に風荷重への対抗力を高めてもよい。例えば(a)のように、羽根板1を上板11、下板12及び側板13により閉塞された箱状として中空部15を設け、更に内部にリブ14を設けることで、断面二次モーメントが極めて高められて風荷重への対抗力が大きくなされる。また(b)に示す如く、湾曲した上板11及び下板12の間に中空部15を設けて飛行機翼状となされることで、上板11及び下板12の上下方で風を円滑に流すことができ、風荷重を低減して対抗力を高めることができる。また中空部15が設けられることで羽根板1の軽量化及び使用材料の低減も図ることができる。
【0022】
また図6は、本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、変形の一例を示すもので、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。最上段の羽根板1について、羽根板1の上面の、幅方向の両側端に略等間隔で20cm程の長さの防鳥針8が上方に向けて取り付けられている。防鳥針8は羽根板1の長さ方向全体に亘って取り付けられていることで、鳥が羽根板1にとまるのを阻止して鳥糞害対策とすることができる。
【0023】
図7は、本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、灌水の一例を示す説明図である。導水管7は、一方の支柱3の上端から支柱3内に挿通され、支柱3内から最上段の羽根板1が取り付けられた回動軸4内に通され、回動軸4内から植栽マット2に灌水がなされる。導水管7は回動軸4の左右方向に挿通された後、他方の支柱3内に挿通され、下方に導通された後、一段下の回動軸4内に挿通されて同様に植栽マット2に灌水を行う。この機構を最下段の羽根板1の回動軸4まで繰り返すことで、灌水の手段が外部から殆ど視認されることがなくなり、緑化用植栽ルーバー10としての美観を高めることができる。導水管7への水の送入はポンプP及びバルブBにより制御され、最下段まで灌水された後の余剰水は再びポンプPに送り込まれて再利用されるようになされている。
【0024】
また、回動軸4内に挿通させる方法に限らず、図5の(a)及び(b)に示した如き中空部15が設けられた羽根板1を用いれば、その中空部15に導水管7を挿通させることで、回動軸4に挿通させた場合と同様に灌水に係わる手段が殆ど視認されることがなく、緑化用植栽ルーバー10としての美観を高めることに繋がる。
【0025】
また余剰水の灌水において、図5の(a)に示したような形状の羽根板1で、側方に流れた余剰水を側板13により受けて、下板12の傾斜を利用して回動軸4内の導水管7に戻すようにしてもよい。
【0026】
図8は、導水管7による植栽マット2への灌水構造の一例を示す縦断面図である。回動軸4内に挿通された導水管7から上方に湧水管71が延設され、導水管7内の水が水圧により湧水管71内を上昇するようになされているが、植栽マット2には、排水層24に替えて、下部繊維集合体23と同程度の繊維密度となされた保水層26が設けられており、湧水管71の出口が羽根板1を貫通して保水層26に達していることで、湧水管71より滲み出された水は保水層26に供給され、繊維間での毛細管現象により保水層26に行き渡ることで、保水層26から下部繊維集合体23を通じて蘚苔類植物21への灌水が行われるようになされている。
【0027】
また図9は、導水管7による植栽マット2への灌水構造の、他の例を示す縦断面図である。植栽マット2の排水層24に替えて保水層26を設けておき、羽根板1の中空部15に導水管7を挿通させる。羽根板1の上板11下面には、導水管7からの水が供給可能となされた横導管72が設けられ、横導管72から羽根板1の上板11に略等間隔で穿設された貫通孔16を通って横導管72からの水が滲み出るようになされていることで、貫通孔16から滲み出た水が保水層26に供給されて植栽マット2への灌水がなされる。横導管72と、上板11に略等間隔で穿設された貫通孔16とにより、植栽マット2への灌水が均一に近い量で行われるため、灌水量の不均一による蘚苔類植物21の生育不良や腐敗の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、実施の一形態を示す説明図である。
【図2】羽根板の水平方向への回動を示す側断面図である。
【図3】羽根板及び植栽マットの詳細を示す縦断面図である。
【図4】植栽マットの固定方法の例を示す縦断面図である。
【図5】羽根板の断面形状の、他の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、変形の一例を示す説明図である。
【図7】本発明に係わる緑化用植栽ルーバーの、灌水の方法の一例を示す説明図である。
【図8】導水管による植栽マットへの灌水の一例を示す縦断面図である。
【図9】導水管による植栽マットへの灌水の、他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 羽根板
15 中空部
2 植栽マット
21 蘚苔類植物
22、23 繊維集合体
3 支柱
4 回動軸
51 接着手段
52 締結手段
10 緑化用植栽ルーバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱間に上下方向に間隔をおいて羽根板が設けられ、該羽根板に二体の繊維集合体間に蘚苔類植物を挟んだ植栽マットが取り付けられた植栽ルーバーであって、該植栽マットが前記羽根板の上面に接着手段、締結手段のいずれか一方若しくは両方を用いて取り付けられていることを特徴とする緑化用植栽ルーバー。
【請求項2】
前記植栽マットは、繊維太さが0.1〜50デニール、目付量が30〜600g/m、繊維長さが30〜100mmとなされていることを特徴とする請求項1に記載の緑化用植栽ルーバー。
【請求項3】
前記羽根板は、断面形状が板状、閉塞された箱状、又は飛行機翼状となされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化用植栽ルーバー。
【請求項4】
前記羽根板は、断面に中空部を備えたものであって、該中空部に挿通された導水管により前記植栽マットへの灌水が可能となされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用植栽ルーバー。
【請求項5】
前記羽根板は、回動軸により下方から支持され、該回動軸により水平方向の角度が自在に変更可能となされたものであって、前記回動軸に挿通された導水管により前記植栽マットへの灌水が可能となされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用植栽ルーバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−222031(P2007−222031A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44276(P2006−44276)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(398055761)丸中ゴム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】