説明

緑色変換材料組成物、緑色変換膜及び緑色変換膜用蛍光色素

【課題】 耐久性に優れ、光源を連続点灯した際の色変換膜の劣化を抑制できる緑色変換材料組成物を提供する。
【解決手段】 (A)下記式(1)で表されるメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体と、(B)下記式(2)又は(3)で表される蛍光色素と、(C)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーと、を含有する緑色変換材料組成物。
【化1】


[式中、Rは、(i)置換もしくは無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、又は(ii)−CH−Ar(Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜20の芳香族環)であり、m及びnは、それぞれ1以上の整数である。]
【化2】


[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色変換材料組成物、緑色変換膜及び緑色変換膜用蛍光色素に関する。さらに詳しくは、光源を連続点灯した際の色変換膜の劣化を低減でき、発色の経時劣化の小さい緑色変換材料組成物、緑色変換膜及び緑色変換膜用蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
色変換膜は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略記する。)等の光源が発する光を、より長波長の光に変換し、発光するものであり、光源と組み合わせて使用され、各種表示装置を形成する。
【0003】
色変換材料組成物としては、例えば、特許文献1に、ビニルピリジン誘導体やアミノスチレン誘導体等の塩基性樹脂を用いた色変換材料組成物が開示されている。
また、特許文献2には、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体を用いた色変換材料組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、エポキシ化合物と、アクリル酸又はメタアクリル酸との反応物を、多塩基酸カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られた不飽和基含有化合物と、蛍光色素及び蛍光性顔料から選ばれる少なくとも1種の蛍光体を含有する色変換材料組成物に関する開示がされている。
【0004】
しかしながら、これらの色変換材料組成物は、特に、ローダミン系色素を含有する色変換膜に有機EL素子の青色発光を照射し続けたときに、ローダミン系色素からの発光強度が著しく早く劣化してしまうこと、組成物によっては、ローダミンがロイコ体に変性してしまい、所望の発光が得られないこと、及びローダミンと反応して組成物の増粘を招き、色変換膜の加工性を損なうという問題があった。
【0005】
この課題に対し、本発明者らは特許文献4に、特定の構造を有するメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体からなるバインダー樹脂(A成分)と、少なくとも1種類の蛍光色素(B成分)と、光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマー(C成分)とを含有する色変換材料組成物を開示している。この組成物を用いることにより、色変換膜の劣化の低減、組成物の粘度上昇の抑制及びローダミンの変性を防止することができる。
【0006】
しかしながら、緑色変換膜については、より耐久性があり、連続かつ長期間使用しても安定した発色をする色変換膜が要求されている。
【特許文献1】特開平9−208944号公報
【特許文献2】特開平9−106888号公報
【特許文献3】特開2000−119645号公報
【特許文献4】特開2003−64135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、より耐久性に優れ、光源を連続点灯した際の色変換膜の劣化を抑制できる緑色変換材料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した特許文献4の色変換材料組成物について、さらに研究を重ねた結果、特定構造を有する蛍光色素が、緑色の色素として特に耐光性に優れていることを見出した。そして、この蛍光色素を配合した緑色変換材料組成物は、きわめて高性能で耐光性のよいことを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の緑色変換材料組成物、緑色変換膜及び緑色変換膜用蛍光色素が提供される。
【0009】
1.(A)下記式(1)で表されるメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体と、(B)下記式(2)又は(3)で表される蛍光色素と、(C)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーと、を含有する緑色変換材料組成物。
【化4】

[式中、Rは、(i)置換もしくは無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、又は(ii)−CH−Ar(Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜20の芳香族環)であり、m及びnは、それぞれ1以上の整数である。]
【化5】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]
【0010】
2.前記(A)成分が、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体又はメタクリル酸ベンジル−メタクリル酸共重合体である1に記載の緑色変換材料組成物。
3.前記(C)成分が、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレートである1又は2に記載の緑色変換材料組成物。
4.前記緑色変換材料組成物全量に対して、(A)成分を45重量%〜65重量%、(B)成分を0.3重量%〜5重量%含み、さらに、(C)成分を前記(A)成分100重量部に対し、10〜200重量部含有する1〜3のいずれかに記載の緑色変換材料組成物。
5.上記1〜4のいずれかに記載の緑色変換材料組成物からなる緑色変換膜。
【0011】
6.下記式(2)又は(3)で表される緑色変換膜用蛍光色素。
【化6】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]
【発明の効果】
【0012】
本発明の緑色変換材料組成物では、耐光性に優れた特定の蛍光色素を使用するので、光源を連続点灯しても劣化しにくく、長時間安定した発光を得ることができる。従って、フルカラーディスプレイ等の緑色画素として使用することにより、色の経時変化の少ない安定した画像を表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の緑色変換材料組成物は、以下の成分(A)〜(C)を含む。
(A)下記式(1)で表されるメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体
(B)下記式(2)又は(3)で表される蛍光色素
(C)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマー
【0014】
【化7】

[式中、Rは、(i)置換もしくは無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、又は(ii)−CH−Ar(Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜20の芳香族環)であり、m及びnは、それぞれ1以上の整数である。]
【0015】
【化8】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]
【0016】
以下、各成分について説明する。
(A)メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体
本発明で使用する上記式(1)で表されるメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体のうち、Rは、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ヒドロキシエチル基又はベンジル基であることが好ましい。特に、Rがメチル基又はベンジル基である、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体又はメタクリル酸ベンジル−メタクリル酸共重合体が好ましい。
本発明で使用するメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体は、特に制限はなく、一般に入手可能なもの又は常法により重合したものを使用できる。
尚、(A)成分の共重合体は、1種のみを単独で使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000の範囲であることが好ましく、特に、10,000〜50,000であることが好ましい。5,000未満では、緑色変換材料組成物から形成される色変換膜の強度が低くなるおそれがある。一方、100,000を超えると、色変換材料組成物の粘度が高くなり、色変換膜を形成したときに厚みムラが生じるおそれがある。
【0018】
A成分の共重合体比q=m/(m+n)は、0.4〜0.9の範囲であると好ましく、0.6〜0.8の範囲であるとさらに好ましい。qが0.4未満であると、色変換材料組成物から形成される色変換膜のパターニングの精度が低下し、0.9を超えるとフォトリソグラフィーできない場合がある。
【0019】
(A)成分は、緑色変換材料組成物全量に対して、45〜65重量%含有されることが好ましく、50〜60重量%であるとさらに好ましい。45重量%未満では、硬化前の膜のタック性に問題を生じるおそれがあり、65重量%を超えると、膜の現像性に問題を生じるおそれがある。
【0020】
(B)蛍光色素
本発明で使用する蛍光色素は、下記式(2)又は(3)で表される。
【化9】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]
【0021】
上記式(2)又は(3)の化合物は、耐光性が優れており、光源の光を連続照射しても色変換膜の劣化が小さい。従って、緑色変換膜用(緑色変換材料組成物用)の蛍光色素としてきわめて適している。
及びRとして好ましいアルキル基には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基が挙げられる。特に、R又はRの一方が、直鎖状アルキル基であり、他方が分岐状又は環状のアルキル基であることが好ましい。これにより、色素の溶解性と耐久性とのバランスを向上できる。
【0022】
上記式(2)及び(3)の化合物は、工業的に製造され、市販されているものを問題なく使用できる。
【0023】
(B)成分は、緑色変換材料組成物全量に対して、0.1〜10重量%含有されることが好ましく、0.2〜5重量%であるとさらに好ましい。濃度が0.1重量%未満では、形成した色変換膜が充分に色変換できないおそれがあり、10重量%を超えると、濃度消光により色変換効率が低下したり、高精細なパターニングができなくなる場合がある。
また、含有する蛍光色素が少ないほど、光源の青色光を連続照射したときの発光の劣化度合いは小さい。そのため、最もよく蛍光を発する濃度範囲のうち最低の濃度とすることが好ましい。
【0024】
(C)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマー
(C)成分は、水酸基を有する光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーであると好ましい。
例えば、水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等がある。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びグリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの化合物は、1種又は2種以上併用して使用できる。
【0025】
これらのうち、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はトリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。
本発明で使用するエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーは、一般に市販されているもの又は常法により合成したものを使用できる。
(C)成分は、(A)成分100重量部に対して、10〜200重量部含有すると好ましく、30〜150重量部含有するとさらに好ましい。(C)成分の量が10重量部未満であると形成した色変換膜が耐溶剤性に劣る場合があり、200重量部を越えるとプレキュア後のタック性に問題を生じるおそれがある。
【0026】
本発明の緑色変換材料組成物は、上記のA〜C成分に加え、さらにエポキシ基を有する化合物(D成分)を、組成物全量に対して、0.1〜15重量%含有すると好ましく、0.5〜7重量%含有するとさらに好ましい。D成分としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等を好適に使用することができ、C成分の光重合の後に熱を加えることで、光架橋物とD成分のエポキシ樹脂がさらに架橋し、膜の架橋密度を上げることができる。
【0027】
本発明の緑色変換材料組成物は、必要に応じて光重合開始剤又は増感剤を加えることができる。この光重合開始剤又は増感剤は、(A)成分の光硬化反応に用いられるだけでなく、必要に応じて配合される(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマー等の光重合性不飽和化合物の重合開始剤としても用いられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、イオウ化合物、アントラキノン類、有機過酸化物及びチオール類等が好適に使用される。
【0028】
アセトフェノン類としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−t−ブチルアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げらる。
【0029】
ベンゾインエーテル類としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
イオウ化合物としてはベンジルメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
アントラキノン類としては2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等が挙げられる。
【0030】
有機過酸化物としては、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド等が挙げられる。
チオール類としては、2−メルカプトベンゾオキサゾールや2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
これらの光重合開始剤や増感剤は、その1種のみを単独で使用できるが、2種以上を組合わせて使用することもできる。
【0031】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上記の化合物と組合わせて使用すると光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得る化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミン等の第3級アミンを挙げることができる。
【0032】
光重合開始剤や増感剤の使用量は、特に制限はなく、通常は、(C)成分100重量部に対して、10重量部以下が好適に使用される。10重量部を超えると、光が内部に達し難いため、未硬化部が生じてしまい、これによる物性の低下、例えば、基板と樹脂との密着性が悪くなったり、色素の蛍光性が低下というような問題を生じるおそれがある。
【0033】
また、本発明において、蛍光色素の蛍光収率を向上させるために誘電率が大きい樹脂を配合することも可能である。具体例としては、メラニン樹脂,フェノール樹脂,アルキッド樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリアミド樹脂のオリゴマー又はポリマー、ポリビニルアルコール,ポリビニルヒドリン,ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシルメチルセルロース、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂及びベンゾグアナミン樹脂等の透明樹脂が挙げられる。これらの中でも、特にメラニン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が好適に使用できる。
【0034】
これらの樹脂は、本発明の組成物及びその硬化物の性質を損なわない範囲で使用すればよく、その使用量は特に制限されないが、通常は、(A)成分100重量部に対して、200重量部以下であることが好ましい。使用量が200重量部を越えると、プレキュア後のタック性に問題を生じるおそれがある。特に好ましくは100重量部以下である。
【0035】
本発明の色変換材料組成物には、さらに必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を配合することができる。
硬化促進剤としては、例えば、過安息香酸誘導体,過酢酸,ベンゾフェノン類等があり、熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン,ハイドロキノンモノメチルエーテル,ピロガロール,t−ブチルカテコール,フェノチアジン等があり、可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート,ジオクチルフタレート,トリクレジル等があり、充填剤としては、例えば、グラスファイバー,シリカ,マイカ,アルミナ等があり、また、消泡剤やレベリング剤として、例えば、シリコン系,フッ素系,アクリル系の化合物等が好適に使用される。
【0036】
色変換膜の製造方法により、緑色変換材料組成物を形成する上述の各種添加成分は、溶剤に溶解させることがある。溶剤としては、例えば、ケトン類、セロソルブ類又はラクトン類等が使用され、具体的には、ケトン類としてはメチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等が挙げられ、セロソルブ類としてはメチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ及びセロソルブアセテート等が挙げられ、ラクトン類としてはγ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0037】
本発明の緑色変換材料組成物は、上述した特定の蛍光色素を使用することによって、きわめて色変換効率が高く、耐光性のよい緑色変換材料組成物となる。
【0038】
続いて、本発明の緑色変換膜について説明する。
本発明の緑色変換膜は、光源からの光を吸収し、より長波長の光である緑色を発光するものであり、上述した緑色変換材料組成物を用いて製膜したものである。製膜する方法としては、組成物を硬化させたり、フォトリソグラフィー法等により形成する方法がある。特にフォトリソグラフィー法により形成することが好ましい。
本発明の緑色変換膜の製造方法の一例を以下に説明する。
【0039】
まず、上記感光性の色変換材料組成物を溶液にして基板表面に塗布する。次に、プレキュアにより溶媒を乾燥させ(プリベーク)、得られる皮膜の上にフォトマスクをあて、活性光線を照射して露光部を硬化させる。その後、弱アルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行うことによりパターンを形成する。パターン形成後、後乾燥としてポストベークを行ない、緑色変換膜を作製する。
【0040】
本発明の緑色変換材料組成物の溶液を塗布する基板としては、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であり、平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス基板やポリマー板が使用される。
ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス,バリウム・ストロンチウム含有ガラス,鉛ガラス,アルミノケイ酸ガラス,ホウケイ酸ガラス,バリウムホウケイ酸ガラス及び石英等が挙げられる。
また、ポリマー板としては、ポリカーボネート,アクリル,ポリエチレンテレフタレート,ポリエーテルサルファイド及びポリスルフォン等が挙げられる。
【0041】
色変換料組成物の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸浸法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等、何れの方法も使用できる。これらの方法により、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。
【0042】
プリベークは、オーブン、ホットプレート等によって加熱することにより行なわれる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は、使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、80〜150℃の温度で1〜30分間行なわれる。また、プリベーク後に行なわれる露光は、露光機により行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光機及び露光照射条件は適宜選択することができるが、照射する光は、例えば、可視光線、紫外線、X線及び電子線等が使用できる。照射量は、特に制限されないが、例えば、1〜3000mJ/cmの範囲で選択される。
【0043】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行なわれ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液等が使用できる。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を1〜3重量%含有する弱アルカリ水溶液を用いて10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0044】
このようにして現像した後、通常は、80〜220℃、10〜120分の条件で熱処理(ポストベーク)が行なわれる。このポストベークは、パターニングされた色変換膜と基板との密着性を高めるために行なわれる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することにより行なわれる。本発明のパターニングされた色変換膜は、以上の各工程を経て、所謂フォトリソグラフィー法により形成される。
【0045】
本発明の色変換膜の膜厚は、光源からの入射光を所望の波長に変換するのに必要な膜厚を適宜選ぶ必要があるが、通常は1〜100μmの範囲で選ばれる。特に1〜20μmの膜厚が好適である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例1
ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(A成分)の合成
ベンジルメタクリレート15g、メタクリル酸2.5g、アゾビスイソブチロニトリル0.12gをトルエン30gに溶解し、窒素ガスで置換した。80℃で2時間加熱撹拌し、ついで100℃で1時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残留物をメタノールに注いで沈殿させ、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(A成分)を得た(収率95%)。重量平均分子量は25,000、共重合体比qは、NMR測定により決定したところ0.76であった。
【0047】
緑色変換材料組成物
上記で合成したベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体1.9g、B成分として、下記式(2−A)のクマリン系蛍光色素33mg、C成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM−309)1.4g、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)30mg、熱重合開始剤(日本化薬社製、カヤキュアDETX−S)3.3mgを、5.0gのシクロヘキサノンに溶解し、緑色変換材料組成物の溶液を得た。
【0048】
【化10】

【0049】
緑色変換膜の作製
上記の溶液1mlをスピンコーターによって、50mm×50mmのガラス基板上に塗布した。このときの条件は、回転数を1000rpm、処理時間を10秒とした。
この塗布膜を、120℃のホットプレートを用いて乾燥させた後、365nmの紫外光を300mJ/cm照射して硬化させた。その後、オーブンを使用して、後硬化(200℃で1時間)させることにより、ガラス基板上に緑色変換膜を作製した。
実施例1及び後述する比較例1の配合を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2
メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(A成分)の合成メチルメタクリレート10g、メタクリル酸2.5g、アゾビスイソブチロニトリル0.12gをトルエン30gに溶解し、窒素ガスで置換した。80℃で2時間加熱撹拌し、ついで100℃で1時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残留物をメタノールに注いで沈殿させ、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(A成分)を得た(収率95%)。重量平均分子量は20,000、共重合体比qは、NMR測定により決定したところ0.78であった。
【0052】
緑色変換材料組成物
上記で合成したメチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体1.9g、B成分として、下記式(2−B)のクマリン系蛍光色素33mg、C成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM−305)1.4g、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)30mg、熱重合開始剤(日本化薬社製、カヤキュアDETX−S)3.3mgを、5.0gのシクロヘキサノンに溶解し、緑色変換材料組成物の溶液を得た。
この溶液から、実施例1と同様にして緑色変換膜を作製した。
【0053】
【化11】

【0054】
比較例1
B成分にクマリン6(Aldrich社製)を、C成分にジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM−400)を使用した他は、実施例1と同様にして緑色変換膜を作製した。
【0055】
各例で作製した緑色変換膜について、以下の評価を行なった。
(1)色変換効率
図1に色変換効率の測定方法を示す。
実施例及び比較例で作製した色変換膜2を形成したガラス基板3の色変換膜2側に、別途作製した470nmにピーク波長を有する青色有機EL素子1を重ね合わせて青色光を照射し、ガラス基板3の色変換膜2の反対面側に設置したカラーフィルタ4を通して得られる透過光のスペクトルを、分光輝度計5(ミノルタ製、CS−1000)を用いて2度視野で測定した(図1(a)参照)。
青色有機EL素子1の発光スペクトル(図1(b)参照)と比較し、下式により色変換膜の色変換効率を定義した。
(色変換効率)=(色変換膜及びカラーフィルタを通して得られる透過光の輝度)×100/(青色有機EL素子の輝度)
(2)色度
分光輝度計(ミノルタ製、CS−1000)で測定した。
【0056】
色変換効率及び色度について、初期の値と青色光を1000時間連続照射した後の値を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
評価結果から、実施例1及び2の緑色変換膜は、試験前後における色度の変化が、比較例1の変換膜よりも小さく、長時間連続駆動しても色の経時変化が小さいことが確認できた。
【0059】
合成例
式(2−A)に示す色素の合成
(1)中間体(A)の合成
【化12】

【0060】
1−アミノ−2−ナフトチオール10g(57.1mmol)、マロノニトリル7.5g(114mmol)を、200mlのナスフラスコに投入し、さらに酢酸50mlを加え、100℃にて3時間加熱撹拌した。
この反応液に、水、ジクロロメタンを加え振り混ぜた。有機層を集め、硫酸マグネシウム上で乾燥した後、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、中間体(A)を9.8g(収率77%)を得た。
【0061】
(2)中間体(B)の合成
【化13】

【0062】
無水ジメチルホルムアミド(DMF)30mlをナスフラスコに取り、氷浴で冷却した。その後、オキシ塩化リン12.3mlを滴下し、室温で30分撹拌した。再び氷浴で冷却後、3−シクロヘキシルメチルアミノフェノール18.8g(67.9mmol)の無水DMF溶液を滴下し、70℃で3時間加熱撹拌した。
この反応液を室温まで放冷後、冷却した2%NaOH水溶液100mlをゆっくり加えた。酢酸エチルで抽出し、有機層を1%HClで2回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、中間体(B)13.6g(収率66%)を得た。
【0063】
(3)式(2−A)に示す色素の合成
【化14】

【0064】
中間体(A)(2.2g,9.8mmol)、及び中間体(B)(3.2g,10.1mmol)を100mlナスフラスコに取り、エタノールを加え溶解させた。
ピペリジンを3滴加え、80℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、3N塩酸1mlを加えた。その後、50℃で1時間加熱撹拌した。
反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(2−A)の化合物を橙色結晶として得た(4.6g、収率90%)。
図2に、得られた橙色結晶のNMRスペクトルを示す。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の緑色変換材料組成物から得られる緑色変換膜は、光源を連続点灯しても、色変換膜の劣化が抑制されるので、発光色の経時変化が小さい。このため、本発明の緑色変換膜は、有機EL素子や発光ダイオード素子等の光源と組み合わせて、フルカラー表示装置を形成する色変換膜として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】色変換効率の測定方法を示す模式図である。
【図2】得られた橙色結晶のNMRスペクトルである。
【符号の説明】
【0067】
1 青色有機EL発光素子
2 色変換膜
3 ガラス基板
4 カラーフィルタ
5 分光輝度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体と、
(B)下記式(2)又は(3)で表される蛍光色素と、
(C)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーと、を含有する緑色変換材料組成物。
【化1】

[式中、Rは、(i)置換もしくは無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、又は(ii)−CH−Ar(Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜20の芳香族環)であり、m及びnは、それぞれ1以上の整数である。]
【化2】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]
【請求項2】
前記(A)成分が、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体又はメタクリル酸ベンジル−メタクリル酸共重合体である請求項1に記載の緑色変換材料組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレートである請求項1又は2に記載の緑色変換材料組成物。
【請求項4】
前記緑色変換材料組成物全量に対して、(A)成分を45重量%〜65重量%、(B)成分を0.3重量%〜5重量%含み、さらに、(C)成分を前記(A)成分100重量部に対し、10〜200重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の緑色変換材料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の緑色変換材料組成物からなる緑色変換膜。
【請求項6】
下記式(2)又は(3)で表される緑色変換膜用蛍光色素。
【化3】

[式中、R及びRは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を示す。]


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−104350(P2006−104350A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293856(P2004−293856)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】