説明

緑色発光材料

本発明は、M3―x―yIIxSi6―xAl12:Euの形の改良された緑色発光材料に関する。ここで、Mは、アルカリ土類金属であり、MIIは希土類金属又はランタンである。この材料は、低温度焼結ステップを使用しているセラミックとして作られることができ、より良好で更に均一のセラミック体をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置のための新規な発光性材料を目的としており、特に、LEDのための新規な発光性材料の分野を目的としている。
【背景技術】
【0002】
母材としてのアルミン酸塩、ケイ酸塩及びリン酸塩(例えば、アパタイト)を有する蛍光体であって、前記母材に活性材料として加えられる遷移金属又は希土類元素を備えている蛍光体が、よく知られている。青色LEDが、特に、近年、実用的になるにつれて、このような蛍光体材料との組み合わせにおけるこのような青色LEDを利用している白色光源の開発が、精力的に追求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に、緑色発光材料は、興味の中心にあり、幾つかの材料は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第20090033201A1号において提案されている。
【0004】
しかしながら、広範囲のアプリケーションにおいて使用可能であると共に、特に、最適化された発光効率及び演色を備える蛍光ウォームホワイトpcLEDの作製を可能にする発光材料に対する継続的な要求が、依然として存在する。
【0005】
本発明の目的は、広範囲のアプリケーションにおいて使用可能であると共に、特に、最適化された発光効率及び演色性を有する蛍光体ウォームホワイトpcLEDsの作製を可能にする材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明の請求項1に記載の材料によって解決される。従って、材料M3―x―yIISi6―xAl12:Euが提供され、これにより、Mは、Ca、Sr、Ba又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
− MIIは、La、Ce、Pr、Nd又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
− x、yは、互いから独立に0以上かつ1以下である。
【0007】
語「M3―x―yIIxSi6―xAl12:Eu」によって、特に及び/又は付加的に、本質的にこの組成を有する何らの材料が、意味されている又は含まれていることに留意されたい。
【0008】
この目的は、本発明の請求項1に記載の材料によって解決される。従って、材料M3―x―yIIxSi6―xAl12:Euが提供され、これにより、
− Mは、Ca、Sr、Ba又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
− MIIは、La、Ce、Pr、Nd又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
− x、yは、互いから独立に0以上かつ1以下である。
【0009】
語「M3―x―yIIxSi6―xAl12:Eu」によって、特に及び/又は付加的に、本質的にこの組成を有する何らの材料が、意味されている又は含まれていることに留意されたい。
【0010】
「本質的に」という語は、特に、95%以上、好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の重量パーセントを意味する。
【0011】
このような材料は、本発明における広範囲の用途が、
− 発光材料としての材料を使用して、改善された照明フィーチャ(特に熱安定性)を示しているLEDが、造られることができる。
− 前記材料は、当該分野で知られている多くの他の同様の材料よりも低温で作られることができ、バルク技術を使用して生成されることができる。
− 前記材料は、特に、バックライト用途に適している飽和した緑色の色点を有することが分かっている。
− 前記材料は、似ている商業的に入手可能な安価な出発化合物(例えば、簡単な炭酸塩、窒化物及び酸化物)により高い質において生成されることができる。
という有利な点の少なくとも1つを有するように示されている。
【0012】
本発明の好ましい実施例によれば、xは、0.002以上かつ0.3以下であり、好ましくは0.005以上かつ0.2以下である。このことが、多くの用途に有利であることが分かっており、xが低過ぎる場合には、幾つかのアプリケーションに関して、材料のより簡単な生産可能性(以下も参照)による有利な点が幾らか低減されることが分かり、他方、xがあまりにも高い場合、当該材料は、幾つかの用途に関して「ガラス質」であることが分かっている。
【0013】
本発明の好ましい実施例によれば、yは、0.03以上かつ0.3以下であり、好ましくは、0.06以上かつ0.2以下である。
【0014】
好ましい実施例によれば、MにおけるBaの成分は、80%(モル/モル)以上であり、更に好ましくは90%以上である。
【0015】
好ましい実施例によれば、MIIのLaの成分は、80%(モル/モル)以上であり、更に好ましくは90%以上である。
【0016】
本発明は、更に、発光性材料としての本発明の材料の使用に関する。
【0017】
本発明は、更に、上述の少なくとも1つの材料を有する発光性材料(特にLED)に関する。
【0018】
本発明の好ましい実施例によれば、前記少なくとも1つの材料が、少なくとも1つのセラミック材料として少なくとも部分的に提供される。
【0019】
本発明の意味における「セラミック材料」は、特に、制御された量の孔を有する又は孔を有さない複合材料、又は結晶質若しくは多結晶小型材料を意味している又は含んでいる。
【0020】
本発明の意味における語「多結晶材料」は、特に、各領域の直径が0.5μmよりも大きく異なる結晶方位を有する80パーセントより大きい単結晶領域から成る90パーセントよりも大きいボリューム密度の主成分を有する材料を意味する及び/又は含んでいる。前記単結晶領域は、アモルファス又はガラス質の材料によって、又は付加的な結晶の構成要素によって接続されることができる。
【0021】
好ましい実施例によれば、前記セラミック材料は、理論密度の90%以上かつ100%以下の密度を有する。このことは、少なくとも1つのセラミック材料の発光及び光学特性が向上されることができるので、本発明における広範囲な用途に関して有利であるように示されている。
【0022】
更に好ましくは、前記セラミック材料は、前記理論的密度の97%以上かつ100%以下の密度、更に好ましくは98%以上かつ100%以上の密度、より更に好ましくは98.5%以上かつ100%以下の密度、最も好ましくは99.0%以上かつ100%以下の密度を有する。
【0023】
本発明の好ましい実施例によれば、前記セラミック材料のガラス相の割合は2%以下であり、更に好ましくは0.5%以上かつ1%以下である。実際に、このようなガラス相の割合を有する材料が改良された特性を示すことが分かっており、このことは、本発明に関して有利であり望ましい。
【0024】
本発明の意味における「ガラス相」という語は、特に、非結晶粒界相を意味し、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって検出されることができる。
【0025】
本発明は、更に、1000℃以上かつ1400℃以下の温度における焼結ステップを有する本発明によるセラミック材料を生成する方法に関する。
【0026】
驚くべきことに、このような低い温度は、(おそらく当該材料の特別な組成により)均一な結晶セラミック本体に到達するのに十分であることが分かっている。このことは、前記材料の生産の過程における多くのアプリケーションのために、幾つかの前駆体材料が「フラックスエイド」として振る舞うことができるという事実を少なくとも部分的に形成するように信じられているが、最終的に、これらは全体として前記材料内に組み込まれる。
【0027】
好ましくは、この焼結ステップは、温度で1100℃以上から1325℃以下の温度において実施される。
【0028】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明によるセラミック材料を生成する方法は、
(a)緑色発光の透明なセラミック材料のための前駆体材料の混合。
(b)揮発性材料(例えば、CO。この場合、炭酸塩が使用される)を取り除くための、好ましくは、1000℃以上かつ1350℃以下の温度における前記前駆体材料の任意の焼成。
(c)任意の研削及び洗浄。
(d)オプションとしての第1の加圧成形ステップであって、好ましくは、3000バール以上かつ5000のバール以下における、好ましくは、望ましい形状及び/又は冷間等方加圧ステップにおけるモールドによる適切な圧粉器具を使用する一軸加圧成形ステップ。
(e)1000℃以上かつ1400℃以下の焼結ステップであって、10−7mbar以上かつ10mbar以下の圧力を有する不活性又は減圧雰囲気(reducing atmosphere)における焼結ステップ。
(f)任意の熱間加圧成形ステップであって、好ましくは、好ましくは30バール以上2500バール以下及び好ましくは1000℃以上から1400℃以下における熱間等方加圧成形ステップ、並びに/又は好ましくは100バール以上2500バール以下及び好ましくは1000℃以上から1300℃以下の温度における一軸加圧成形ステップであり、ステップ(f)又はステップ(f)の一部は、ステップ(e)の前又は後にオプションとして実施されることができるステップ、
(g)不活性雰囲気における又は水素を含んでいる雰囲気における800℃以上かつ1400℃以下での任意のポストアニールのステップ、
を有する。
【0029】
本発明による材料及び/又は発光装置は、幅広い種類のシステム及び/又はアプリケーションにおいて有用であり得て、特に、
− オフィス照明システム、
− 家庭用アプリケーションシステム、
− 店舗照明システム、
− 家庭用照明システム、
− アクセント照明システム、
− スポット照明システム、
− 劇場照明システム、
− 光ファイバアプリケーションシステム、
− 投影システム、
− 自己照明(self-lit)表示システム、
− ピクセル化された表示システム、
− 分割型表示システム、
− 警告標識システム、
− 医学的な照明アプリケーションシステム、
− インジケータ標識システム、
− 装飾的な照明システム、
− ポータブルシステム、
− 自動車用途、及び
− 温室照明システム、
の1つ以上において有用であり得る。
【0030】
上述した構成要素、請求項に記載の構成要素及び記載される実施例における本発明によって使用されるべき構成要素は、関連する分野において知られている選択基準が、限定を伴わずに利用されることができるように、これらの大きさ、形状、材料の選択及び技術的な概念に関して如何なる特別な例外にも影響されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の例Iによるセラミック材料のX線回折パターンを示している。
【図2】本発明の例IIによるセラミック材料の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図3】本発明の例IIIによるセラミック材料の発光スペクトルを示している。
【図4】本発明の例IIIによるセラミック材料の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の更なる詳細、フィーチャ、特性及び目的の有利な点は、従属請求項、添付図面及び対応する図及び例に関する以下の記載において開示されている。例示的な様式において、本発明による材料の幾つかの実施例及び例を示している。
【0033】
本発明は、単に説明の形式において、本発明の幾つかの材料を示している以下の実施例I乃至IIIによって更に理解されるであろう。
【0034】
例I:
図1は、以下の仕方によって作られたBa2.88La0.12Si5.88Al0.1212:Eu(2%)=Ba0.12La0.12Si5.88Al0.1212:Eu0.06を示している。
【0035】
Baに対して4モル%のLa/Alを占めている予め混合されたサブミクロンのLa及びAl(1:1)の適切な量は、サブミクロンのBaSi:Eu(2%)及びBaSi:Eu(2%)の化学量論の混合物に加えられた。イソプロパノールにおけるボールミリングの後、この懸濁液は、ろ過され、乾燥された。得られた粉末混合物は、ディスク形プレフォーム内に加圧成形され、1275℃における減圧雰囲気(N/H)においてモリブデンのるつぼ内で焼結された。焼結の後、前記セラミックは、500バールのガス圧において純粋な窒素内で1225℃においてアニールされることによって失透された。失透の間、ガラス相が試料表面上に蓄積し、この後の機械加工ステップ(グラインディング、研磨)において取り除かれることができる。
【0036】
図1は、完成されたセラミック(Cu―Kα放射)のX線回折パターンを示している。高い相純度のために、光散乱は、主に、層をなした化合物の粒子からなる多結晶セラミックが光学的に異方性であるという事実から生じる。最も重要なことは、500nmよりも高い波長において、付加的な散乱及び残りの吸収において得られる残留Siが、検出されないことにある。
【0037】
例II:
図2は、例Iの方法と同様の様式において作られたBa2.94La0.06Si5.94Al0.0612:Eu(2%)=Ba2.88La0.06Si5.94Al0.0612:Eu0.06を示している。
【0038】
図2は、破断表面の走査型電子顕微鏡写真を示している。観察された粒子の大きさは、1か乃至8μmまで変化する。全ての粒子は、当該セラミック本体の範囲内でランダムに配向される。
【0039】
例III
図3及び4は、例Iの方法と同様の様式によって作られたBa2.99La0.01Si5.99Al0.0112:Eu(2%)=Ba2.93La0.01Si5.99Al0.0112:Eu0.06を示している。
【0040】
図3は、522nmにおける発光最大値及び61nmのFWHMを有する430nmの励起に関する実施例IIIの発光スペクトルを示している。
【0041】
図4は、研磨されたセラミックの走査型電子顕微鏡写真を示している。観察された粒子の大きさは、1から4μmまで変化する。全ての粒子は、セラミック本体内でランダムに配向される。
【0042】
上述の実施例における要素及びフィーチャの特定の組み合わせは、単に例示的なものであり、これらの教示の、本明細書及び参照によって組み込まれる特許/出願における他の教示との交換及び置換も、明白に考察される。当業者が認識するように、本願明細書に記載されているものの変化、変形及び他の実施化は、添付請求項に記載の本発明の精神及び範囲を逸脱することなく当業者に見出されることができる。従って、前述の記載は、単に一例であって、限定を意図しているものではない。「有する」という語は、請求項に記載されていない構成要素又はステップの存在を排除するものではない。単数形の構成要素は、複数のこのような構成要素を排除するものではない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように使用されることができないと示すものではない。本発明の範囲は、添付請求項及びこれらに均等なものに規定されている。更に、本明細書及び添付請求項において使用されている符号は、添付請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
が、Ca、Sr、Ba又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
IIは、La、Ce、Pr、Nd又はこれらの混合物を有するグループから選択され、
x、yは、互いから独立に、0よりも大きく、かつ、1以下である、
3―x―yIISi6―xAl12:Eu
【請求項2】
xが0.002以上かつ0.3以下である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
yが0.005以上かつ0.3以下である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
内のBaの成分が80%(モル/モル)以上である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の材料。
【請求項5】
II内のLaの成分が80%(モル/モル)以上である請求項1乃至4の何れか一項に記載の材料。
【請求項6】
発光性材料としての請求項1乃至5の何れか一項に記載の材料の使用。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の少なくとも1つの材料を有する発光装置。
【請求項8】
少なくとも1つの材料がセラミック材料として提供される、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
1000℃以上かつ1400℃以下の温度における焼結ステップを有する、セラミック材料としての請求項1乃至5の何れか一項に記載の材料を生成する方法。
【請求項10】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の材料、請求項7又は8に記載の発光装置、及び/又は請求項6に記載の使用を有するシステムであって、
− オフィス照明システム、
− 家庭用アプリケーションシステム、
− 店舗照明システム、
− 家庭用照明システム、
− アクセント照明システム、
− スポット照明システム、
− 劇場照明システム、
− 光ファイバアプリケーションシステム、
− 投影システム、
− 自己照明表示システム、
− ピクセル化された表示システム、
− 分割型表示システム、
− 警告標識システム、
− 医学的な照明アプリケーションシステム、
− インジケータ標識システム、
− 装飾的な照明システム、
− ポータブルシステム、
− 自動車用途、及び
− 温室照明システム、
の用途の1つ以上において使用されるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532079(P2012−532079A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516961(P2012−516961)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052940
【国際公開番号】WO2011/001359
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】