説明

線型部材及び配線材料

【課題】縺れの発生が少なく、発生した場合もすぐに解消できる線型部材を提供する。線型部材とは、例えば、電線・電源コード・糸・紐などをいう。
【解決手段】線型部材が等間隔もしくは非等間隔に異なる弾性率を有する少なくとも2種の部分によって形成されている。第1の部分は他の部分に対して幅が大きく弾性率が高くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線形の部材、特に電源コード・イヤホンなどの配線部材に関している。
【背景技術】
【0002】
最近機器の精密化・小型化に伴いそれらの機器を互いに結ぶ配線もより微細で複雑になってきている。このため、これらの配線が縺れる、あるいは互いに絡まる場合が増えてきている。例えばコンピューターとその周辺機器の配線・小型モバイルオーデオ機器のイヤホンなどに特にこのような現象が見られる。
【0003】
この様な現象を回避する手段として、特殊な構造を有するケースを用いる方法(特開2005−116325、特開2005−086417、特開平11−317995)が開示されている。ケースを用いない方法としては、収納時両耳のイヤホンをフックで固定する方法(特開平9−84169)イヤホンのコードをループ状にする方法(特開2002−58090)ケーブルの中に形状記憶合金を用いる方法(特開平09−330619)をあげることができる。しかしながら、これらの方法ではケースを必要とする、形状記憶合金など高価な材料を必要とする。イヤホンにしか応用できず、効果も限定的であるなどの問題があった。
【特許文献1】特開2005−116325
【特許文献2】特開2005−086417
【特許文献3】特開平11−317995
【特許文献4】特開平9−84169
【特許文献5】特開2002−58090
【特許文献6】特開平09−330619
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線形部材のうち、イヤホンのケーブルなどはそれ自体で絡まり、また結び目を作るなどのため、1本だけでもしばしば“縺れ”現象が発生する。また、複数の配線部材が共存する場合はそれらの配線同士が互いに絡まりあうために“縺れ”現象が発生する。
【0005】
本発明者はこの“縺れ”現象を発生させないため、この“縺れ”現象がどのように発生するのかを分析した。その結果この“縺れ”現象は線形部材がほぼランダムに近い方向に移動することが原因であることに気づいた。
【0006】
例えば線形の部材が一方向にのみ移動すれば“縺れ”現象は発生しない。すなわち、線状の構造物を曲がらない剛直な棒状の構造物にすれば“縺れ”現象は発生しない。しかしながら、配線等の用途には線状部材のフレキシビリティーは不可欠であり、曲がらない剛直な棒状の構造物を用いることは大多数の場合不適当である。
【0007】
発明者は線状部材の移動に柔軟性を持たせる一方、移動に一定の方向性を持たせることができれば“縺れ”現象の防止が有効になるのではないかと考えた。
【0008】
流動性がある一方で移動に方向性がある状態として、液晶状態とくに高分子液晶状態がある。この場合、高分子液晶の分子1つが線状部材1本に相当する。
【0009】
高分子液晶状態とは、線状高分子が流動性を持ちつつ分子の移動は方向性のある状態である。高分子液晶状態は結晶状態と液体状態の中間状態である。今、液体状態・液晶状態・結晶状態における線状高分子と、線状部材のアナロジーを考えてみる。尚、このようなアナロジー自体がいわば発明であり、このようなアナロジーが当業者間で一般的であり自明であるということはなく、全く本発明者の独自なものである。
【0010】
本アナロジーにおいて、線状高分子の液体状態は線状部材がランダムに存在している状態に相当する。いわば配線等の線状部材が縺れ絡まった状態である。結晶状態は線状の構造物が流動性を失った状態であり、線状部材が棒状となり流動性を失い規則正しく並んだ状態をさす。高分子液晶状態は、線状部材が流動性があるが移動に方向性のある状態で線状の線状部材が縺れることなく存在する状態であり、本発明の目的とする状態である。
【0011】
以上のように考え、線状部材で高分子液晶状態に相当する状態を実現させるための方法を考えた。高分子液晶には主鎖型高分子と側鎖型高分子がある。主鎖型高分子とは、線状の高分子が芳香環の如き剛直な部位とアルキル基の如き柔軟な部位が交互に配列して構成されているものである。側鎖型高分子とは、直線状の主鎖に液晶となりうる構造の部位がペンダント状にぶら下がった構造のものである。
【0012】
本発明者は、線状部材に主鎖型高分子の如き構造を持たせることにより、線型部材に高分子液晶と類以の状態、すなわち縺れにくい状態が実現すると考え本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、等間隔または非等間隔に異なる弾性率を有する少なくとも2種類の部分によって形成されていることを特徴とする線形部材である。
【0014】
本発明における線型部材とは特に限定されるものではなく、ひも・ロープ・糸・毛糸・組みひも・編ひも・織ひも・細幅レース地・紙ひも・ビニールテープ・ロープ・ワイヤーロープ・鎖・電線・ゴム線・特殊被覆電線・裸線・プラッチク線・巻き線・ケーブル・通信ケーブル・動力ケーブルなどをあげることができる。等間隔または非等間隔とは2つ以上の部分が等しい長さで配設されていてもよく、異なる部材部材ごとに異なる長さで配設されていてもよく、または全くランダムに配設されていてもよいという意味である。弾性率とは一般的に変形量に対する応力の比をいう。線型の部分の弾性率であるので、その部分の曲がりにくさを意味する。異なる弾性率を有する少なくとも2種類の部分は、異なる均一な材料から形成されてもいいし、複数の材料から形成されていてもいい。また、均一な線型部材の上に等間隔もしくは、非等間隔に同一のもしくは異なる材料を被覆することによってもこのような線型部材を得ることができる。例えば均一な1本の線型部材に等間隔にコーティング剤をコーティングする等の処理でこのような構造を達成することができる。弾性率が高く曲がりにくい部分の比率が高いほどもつれにくくなるが、フレキシビリティーは失われる。反対に弾性率が低く曲がりやすい部分の比率が高いほどフレキシビィティーが高くなるがもつれやすさが増加する。このため、用途に応じてこの比率を変化させることで最適の性能を選択することが可能となる。
【0015】
本発明の第2の発明は、等間隔あるいは非等間隔に弾性率の異なる材料により被覆された配線部材である。
【0016】
配線部材とは特に限定されることはないが、電気機器のケーブル・電源ケーブル・コンピューター及び周辺機器を接続する各種のケーブル・モバイルオーデオ機器のケーブルなどを例として挙げることができる。弾性率の異なる材料で被服されたとは、当該配線材料の電線を同一の高分子材料で被服してもよく、異なる高分子材料で被服してもよく、または均一に被服したケーブル上に同一のもしくは異なる種類の材料で、さらに被服することによっても本発明の配線材料を実現することができる。
【0017】
均一の材料で被服された配線部材の場合の場合は、等間隔あるいは非等間隔に被服材料の厚みを変えることでこのような構造を実現することができる。均一に被服したケーブル上に同一のもしくは異なる種類の材料でさらに被服する場合は、同一材料で均−に被服した配線部材上にテープなどの他の部材を巻きつけること等で実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、あらゆる形態の線型部材につき、“縺れ”現象の発生を防止し、縺れ現象にともなう問題を解消することが可能となる。また、本発明には収納ケースの如き特別な付属物は必要としない。また、高価な部材を必要とすることも無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下具体的な例により本発明を説明するが、本発明がこれらの実施例に限られるものではないことは言うまでもない。
【実施例】
(実施例1)
【0020】
図2に示した長さ160cm(15cmの枝あり)電線の幅1mmのイヤホンを用い、電線部すべてに渡って図1の如くに3.0cm間隔に1.5cm幅のセロハンテープ6cmを幅が約2mmになるように巻いた。
【0021】
上記の方法によって作成した電線はテープを巻いた箇所は剛直で、通常の扱いでは曲がることはない。しかし、テープを巻いていない箇所は曲がるため電線全体の柔軟性はおおむね変わらず通常の使用に差し支えることはない。
【0022】
この様な処理を施したイヤホンについて、“縺れ”の現象を評価した。当該イヤホンを丸め故意に縺れた状態を作るため、両手で絡み合わせた。この操作を1分間続けた。その後、イヤホンを解く操作を行ない要した時間を測定した。この操作を10回行った。表1に結果を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
本結果を下記比較例1の結果と比べてみると以下の特徴を示している。
(1)全体的に時間が短い。すなわち時間の平均値が短い
(2)時間のばらつきが少ない。すなわち時間の分散が少ない
【0025】
以上の結果は次の様に解釈できる。電線の移動方向が制限されるため、縺れの発生が抑制されている。特に、結び目の発生が防止されている。下記の比較例に見られるように、縺れを解くのにもっとも時間のとられる操作は結び目の解消である。特に複数の結び目が生じ、かつ、それらが相互に関連していた場合、数分程度の時間を要した。また、下記比較例の場合に比べて時間の分散が少ないのは、通常の場合特に時間が掛かるのは結び目ができてそれを解消する場合であり、結び目ができているか否か、またはできている結び目の数により時間は大きく変わる。それに対して、本発明の場合結び目を作らないため“縺れ”現象を解消するために必要な時間はほぼ一定している。
【0026】
比較のために、以下の実験を行った。本発明の一例としてあげた、セロハンテープをまかない、同じイヤホンを実施例1と同様の方法で“縺れ”現象を発生させた。この状態で、実施例と同様の操作でこの“縺れ”現象を解消する操作を行った。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
結び目を形成した場合、特に時間が長くなった。
【0029】
表1,2の時間差は例えば山手線の1区間に相当し、この時間差で縺れが解消できるか否かは使用者にとって大きな差である。
【0030】
本実施例においてはもっとも簡便な方法である、セロテープを電線に巻く方法を採用したが、本発明がこの方法に限定されないことは言うまでもない。他の方法を特にあげれば、熱収縮チューブを利用する方法、被覆形成時に周期的あるいは非周期的に被覆の厚みを変化させる方法、弾性率の高い材料を周期的もしくは非周期的にまく方法などを挙げることができる。本方法によれば、電線だけではなくイヤホン、電源ケーブル、糸その他の線状部材が縺れる現象を解消することが可能となる。
(実施例2)
【0031】
イヤホンのように1本の電線ではなく、コンピューターと周辺機器の電源コードがコンセントにつながれている場合のように配線が集まっている場合、本発明の方法は特に有効である。従来の場合、数本の配線の各々が任意の方向に移動するため“縺れ”現象が進行する。本発明によれば、各々の配線の移動は直線的でそれぞれの配線が絡まることがないのである。
【0032】
コンピュータ・プリンタ・スキャナ・照明機器の電源コードが1本のコンセントにつながっているケースについて、本発明の効果を検討した。上記4本の電源コードに、実施例1と同様の方法でセロハンテープをまき、4本の電源コードを1分間両手で絡みつかせる操作を行った。その後、電源コードを1本1本、束からはずしたところ簡単にはずれ、すべての絡みつきを解消するのに30秒以内で行うことができた。
【0033】
実施例2と同じ組み合わせでセロテープによる処理をしない通常の配線に対して1分間から見合わせる操作を行ったところ縺れを解消するのに3分以上を要した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1つの実施形態の構造を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態を説明するために用いはイヤホンの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1、2、3、4...電線部にセロハンテープを巻いて幅2mmにした部分。5,6,7...幅1mmの電線部 8...イヤホンのプラグ 9、10、11...イヤホンを構成する電線 12,13...イヤホンを構成する小型スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等間隔または非等間隔に異なる弾性率を有する少なくとも2種類の部分によって形成されていることを特徴とする線形部材。
【請求項2】
等間隔または非等間隔に異なる弾性率を有する少なくとも2種類の材料により被服されていることを特徴とする配線部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−313714(P2006−313714A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164721(P2005−164721)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(505208123)
【Fターム(参考)】