線形光学表面構造を用いた導波モード共鳴フィルターバイオセンサー
【課題】生体分子の相互作用を検出するための方法および構成物を提供する。
【解決手段】ラベルの使用を必要とせず、ハイスループット方式にて実行することができる。狭周波数帯フィルタとして有用な光学装置を提供する。バイオセンサーは、高屈折率を有する材料を含む1次元格子層、1次元格子層を支持する低屈折率材料層、および低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。1次元格子の断面周期は共鳴格子効果の波長より短い。バイオセンサーは、低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造、低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層、および低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率材料の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【解決手段】ラベルの使用を必要とせず、ハイスループット方式にて実行することができる。狭周波数帯フィルタとして有用な光学装置を提供する。バイオセンサーは、高屈折率を有する材料を含む1次元格子層、1次元格子層を支持する低屈折率材料層、および低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。1次元格子の断面周期は共鳴格子効果の波長より短い。バイオセンサーは、低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造、低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層、および低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率材料の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の相互作用を検出するための構成物および方法に関連する。検出は、ラベルを使用することなく起こり、ハイスループット方式により行われる。本発明は、また光学装置にも関連する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの配列決定の完了に伴い、分子生物学の次の大きな課題の一つは、DNAによりエンコードされる多くのタンパク質標的物が、他のタンパク質、小分子薬候補物質、並びに酵素および阻害因子の大きな宿主、とどのように相互作用するかを理解することになるであろう。例えば、Pandey & Mann,「遺伝子およびゲノム研究のためのプロテオミクス」 Nature, 405, p. 837-846, 2000; Leigh Anderson et al., 「プレテオミクス:基礎および応用生物学における応用」 Current Opinion in Biotechnology, 11, p. 408-412, 2000; Patterson, 「プレテオミクス:タンパク質化学の工業化」 Current Opinion in Biotechnology, 11, p. 413-418, 2000; MacBeath & Schreiber, 「ハイスループット機能決定のためのミクロアレイとしてのタンパク質のプリント」Science, 289, p. 1760-1763, 2000; De Wildtet al., 「抗体−抗原相互作用のハイスループットスクリーニングのための抗体アレイ」 Nature Biotechnology, 18, p. 989-994, 2000を参照のこと。この目的のため、多くの異なる生体分子の相互作用を高感度で同時に定量する能力を有する手段の、医薬の発見、プロテオミクス、および診断への応用が見出されるであろう。さらに、これらの手段として広範囲な使用を見出すためには、これらは簡単に使用でき、所有して操作するのに高価でなく、例えばポリヌクレオチド、ペプチド、小タンパク質、抗体、および細胞全体でさえ含みうる広範囲の分析物に適用できなければならない。
【0003】
オリゴヌクレオチド、抗体−抗原相互作用、ホルモン−レセプター相互作用、および酵素−基質相互作用を含む種々の生体分子複合体を検出するために、バイオセンサーが開発されてきた。一般的に、バイオセンサーは、2つの部品:高特異的認識素子および分子認識事象を定量可能なシグナルに変換する変換器、からなる。シグナル変換は、蛍光、干渉分光法((Jenison et al., 「光学被覆シリコン上での核酸標的の干渉に基づく検出」Nature Biotechnology, 19, p. 62-65; Lin et al., 「多孔性シリコン基材光学干渉計バイオセンサー」 Science, 278, p. 840-843, 1997)、および重力測定法(A. Cunningham, Bioanalytical Sensors, John Wiley & Sons (1998))を含む、多くの方法によりなされてきた。
【0004】
光学に基づく変換方法として、蛍光化合物による分析物のラベル化を必要としない直接方法は、容易にラベル化されない小分子やタンパク質の相互作用を研究するために相対的なアッセイの簡便性と能力のために注目される。直接光学方法には、表面プラスモン共鳴(SPR)(Jordan & Corn, 「化学的に修飾された金表面への静電生体高分子の吸着の表面プラスモン共鳴イメージング測定」 Anal. Chem., 69:1449-1456 (1997)、 格子カプラー(Morhard et al.,「光学回折による細胞検出のためのミクロパターンにおける抗体の固定化」 Sensors and Actuators B, 70, p. 232-242, 2000)、偏光解析法(Jin et al., 「生体分子相互作用の視覚化のためのイメージング偏光解析法に基づくバイオセンサーの概念」 Analytical Biochemistry, 232, p. 69-72, 1995)、エバネッセント波装置(Huber et al., 「直接光学免疫検出(感度と選択性)」Sensors and Actuators B, 6, p. 122-126, 1992)、および反射計(Brecht & Gauglitz, 「光学プローブおよび変換器」 Biosensors and Bioelectronics, 10, p. 923-936, 1995)が含まれる。これらの検出方法の理論的に予測される検出限界は、診断的に同等な濃度範囲に低下させて可能となることが、決定され、実験的に確認されてきた。しかし、現在のところ、これらの方法は、ハイスループット生体分子相互作用分析に最もしばしば用いられるミクロタイタープレートに基づく、またはミクロアレイに基づく基盤に容易に適合できる形態で、いずれの型のラベルをも用いずに高感度アッセイを実行できる市販のハイスループット装置を依然得る必要がある。従って、この分野では、これらの目的を達成できる構成物および方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出するための構成物および方法を提供することである。これおよび本発明の他の目的は、1またはそれ以上の以下に記載される態様により提供される。
【0006】
本発明の1つの態様は、バイオセンサーを提供する。バイオセンサーは、高屈折率を有する材料を含む1次元格子層、1次元格子層を支持する低屈折率材料層、および低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。1次元格子の断面周期は共鳴格子効果の波長より短い。他の態様において、バイオセンサーは、低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造、低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層、および低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率材料の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【0007】
1次元格子の断面形状は、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、階段型、v型、u型、逆v型、逆u型、または正方形でもよい。バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに、光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される。
【0008】
バイオセンサーの低屈折率材料には、ガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシが含まれる。高屈折率材料としては、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ぶことができる。1次元格子は、約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有することができる。
【0009】
1またはそれ以上の特異的結合物質を、別個の位置のアレイとして配置することができる。別個の位置は、直径約50−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質は、物理吸着または化学結合により高屈折率材料に固定化されることができる。1またはそれ以上の特異的結合物質は、その結合パートナーに結合することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質または結合パートナーは、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、タンパク質溶液、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、および生物学的サンプルから成る群より選ぶことができる。生物学的サンプルは、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ぶことができる。
【0010】
バイオセンサーは、ミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルのような、液体収容容器の内側表面を含むことができる。
【0011】
本発明の他の態様は、バイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射した光を検出する検出器を含み、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システムを提供する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと;および最大波長値(PWV)を検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、ここで高屈折率材料が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;およびバイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する。
【0014】
また、本発明のさらに他の態様は、酵素の活性を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の酵素をバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを洗浄すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびPWVを検出すること、を含む。1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する。
【0015】
本発明の他の態様は、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法を提供する。その方法は、バイオセンサーを光で照らすこと、バイオセンサーからのPWVを検出すること、1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびバイオセンサーからのPWVを検出すること、を含む。PWVの違いが、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値となる。
【0016】
本発明のさらなる他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびバイオセンサーからのPWVを検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する。1またはそれ以上のタグは、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ぶことができる。1またはそれ以上のタグは、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応させることができる。
【0017】
本発明の他の態様は、高屈折率を有する材料を含む1次元または2次元格子層、1次元または2次元格子層を支持する低屈折率材料層、低屈折率材料層の反対側の1次元または2次元格子層の表面の表面修飾層、および1次元または2次元格子層の反対側の表面修飾層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質、を含むバイオセンサーを提供する。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。表面修飾層は、酸化ケイ素を含んでもよい。表面修飾層の厚さは、約5nmから約15nmでもよい。
【0018】
本発明のさらなる他の態様は、第1の表面上の1次元または2次元格子を含む格子層、格子層の第1の表面上の界面層、格子層の反対側の界面層表面上の高屈折率材料層、および界面層の反対側の高屈折率材料層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質、を含むバイオセンサーを提供する。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。界面層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、ガラス、および金属酸化物から成る群より選択される材料を含むことができる。界面層は、約1nmから約200nmの厚さでもよい。
【0019】
従って、表面プラスモン共鳴、共鳴ミラー、および導波管バイオセンサーとは異なり、記載された構成物および方法は、バイオセンサー表面で同時に起こる数千の個々の結合反応を可能にする。この技術は、多数の生体分子相互作用を並行して測定する応用に有用であり、特に分子ラベルが試験中に分子の機能を変化させたり阻害する場合に有用である。タンパク質標的の医薬化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、およびプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のミクロアレイスクリーニングは、この方法により提供される感度と処理量を必要とされる応用の例となる。本発明のバイオセンサーは、例えば、プラスチックのエンボス加工やエポキシ複製加工を用いて大面積に作成することができ、従って、ミクロタイタープレートやミクロアレイスライドのような一般的な使い捨ての実験室アッセイのプラットフォームに安価に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aは、色測定共鳴反射率バイオセンサーに用いられる光学格子構造の1態様の模式図である。n基板は、基板材料を示す。n1は、被覆層の屈折率を示す。n2は、1次元または2次元格子の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、被覆層の厚さを示す。t2は、格子の厚さを示す。tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の層の厚さを示す。図1は、バイオセンサーの断面図を示す。
【図2】図2は、1次元線形格子表面構造の模式図を示す。
【図3】図3A−Bは、正方形(図3A)または穴(図3B)の長方形格子を含む2次元格子を示す。
【図4】図4は、シヌソイド的に変化する格子特徴を利用するバイオセンサーの断面図を示す。
【図5】図5は、エンボス加工された基板がZnSやSiNのような高屈折率材料で被覆されたバイオセンサーの断面図を示す。例えば、エポキシやSOGなどの任意の低屈折率材料の被覆層は、高屈折率材料の上面で層化され、1またはそれ以上の特異的結合物質は、被覆層に固定化される。
【図6】図6は、種々の型の生体分子レセプターをバイオセンサーに共有結合するために用いることができる対応する化学リンカー分子を有する、3つの型の表面活性化化学物質(アミン、アルデヒド、およびニッケル)を示す。
【図7】図7A−Cは、バイオセンサーの表面で検出されたDNAや、検出されたタンパク質のような結合パートナーの質量を増幅するために用いることができる方法を示す。
【図8】図8は、タンパク質単層のような吸着した材料が、SRVDバイオセンサーの反射した波長を如何に増加するかの図画描写を示す。
【図9】図9は、ミクロアレイとして用いられるバイオセンサーの例を示す。
【図10】図10A−Bは、色測定共鳴反射率バイオセンサーを取り込むことができる2つのバイオセンサーの形式を示す。図10Aは、ミクロタイタープレートに取り込まれたバイオセンサーを示す。図10Bは、ミクロアレイスライド形式のバイオセンサーを示す。
【図11】図11は、高い密度および処理量でアッセイを実行するためにバイオセンサープラットフォームを用いるアレイ概念のアレイを示す。
【図12】図12は、バイオセンサー電極のアレイの図を示す。単一の電極は、多くの格子周期を含む領域を含むことができ、いくつかの個別の格子領域は、同じ基板表面に存在することができる。
【図13】図13は、バイオセンサー電極のアレイの個別の格子領域を示すSEM写真を示す。
【図14】図14は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。電極表面近くの生体分子を引きつけるかまたははねつけることができる電位を、バイオセンサーに適用することができる。
【図15】図15は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。正電圧が電極に適用され、負電荷の生体分子がバイオセンサー表面に引きつけられる。
【図16】図16は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。負電圧が電極に適用され、負電荷の生体分子が陰電極電圧を用いてバイオセンサー表面からはねつけられる。
【図17】図17は、in vivoでの生化学物質の検出のためのファイバープローブの先端に存在するバイオセンサーの例を示す。
【図18】図18は、光を照射してバイオセンサーから反射した光を集めるための2つの組み合わされたファイバーの使用例を示す。
【図19】図19は、検出ビームの入射角の関数としてのバイオセンサーの共鳴波長を示す。
【図20】図20は、照射する光および反射した光を、バイオセンサーへの共通の平行化した光学経路を共有できるようにするビームスプリッタの使用例を示す。
【図21】図21は、バイオセンサーの角度走査のシステムの例を示す。
【図22】図22は、フォトレジスト格子構造のSEM写真の平面図(中央および右上)と断面図(右下)を示す。
【図23】図23は、スピンオンガラスを窒化ケイ素格子に適用した後の格子構造のSEM断面写真を示す。
【図24】図24は、バイオセンサーチップの例を示す(1.5×1.5インチ)。円形の領域は、共鳴構造が規定された領域である。
【図25】図25は、空気中で測定された、高濃度でBSAが堆積したバイオセンサーの波長の関数としての応答を示す。タンパク質の堆積前は、バイオセンサーの共鳴波長は380nmであり、この実験に用いた装置では観測されない。
【図26】図26は、BSAが堆積したバイオセンサーと未処理ものとを比較した波長の関数としての応答を示す。両方の測定値は、バイオセンサー表面に水を用いて採取した。
【図27】図27は、水中で測定された、ボレリアバクテリアが高濃度で堆積したバイオセンサーの波長の関数としての応答を示す。
【図28】図28は、生体分子が表面に堆積した場合に長波長への共鳴の変位を示すバイオセンサーのコンピュータシミュレーションを示す。
【図29】図29は、タンパク質被覆厚に対する反射した波長のピークの依存性を示すコンピュータシミュレーションを示す。この特定のバイオセンサーは、応答が飽和し始める前に、250nmの堆積した生体材料のダイナミックレンジを有する。
【図30】図30は、バイオセンサーの1態様を示す。n基板は、基板の屈折率を示す。n1は、任意の光学被覆層の屈折率を示す。n2は、1次元または2次元格子の屈折率を示す。n3は、窒化ケイ素のような高屈折率材料の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、被覆層の厚さを示す。t2は、1次元または2次元格子の厚さを示す。t3は、高屈折率材料の厚さを示す。tbioは、特異的結合物質の層の厚さを示す。
【図31】図31は、種々の厚さのタンパク質が上面に取り込まれる場合の共鳴格子構造に対する波長の関数としての反射した強度を示す。
【図32】図32は、図30に示されたバイオセンサーについて、反射した波長とタンパク質被覆厚との直線関係を示す。
【図33】図33は、バイオセンサーの出力を読みとるために使用できる装置を示す。平行化した光源は、光学ファイバーを通じて垂直の入射角でバイオセンサー表面で検出される一方、第2の平行ファイバーが垂直の入射角で反射した光を集める。分光計は、波長の関数として反射率を記録する。
【図34】図34は、測定されたバイオセンサーの反射率スペクトルを示す。
【図35】図35は、水に溶解したタンパク質BSAの濃度に対する、液体中で測定されたピーク共鳴波長値の依存性を示す。
【図36】図36は、PBSに溶解したBSAの濃度に対するピーク共鳴波長値の依存性を示し、BSAはバイオセンサー表面で乾燥された。
【図37】図37Aは、ストレプトアビジンレセプター層の結合により生じたピーク共鳴波長変位の測定、およびそれに続くビオチン化IgGの検出を示す。図37Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図38】図38Aは、ビオチンレセプター分子に連結したNH2表面化学物質により活性化されたバイオセンサーについて、種々の濃度でのストレプトアビジンの検出結果を示す。図38Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図39】図39Aは、ヤギ抗体レセプター分子を用いた抗−ヤギIgGの検出のアッセイを示す。検出表面のBSA遮蔽は、バイオセンサーに取り込まれたBSAの質量のために、明瞭に測定可能なバックグラウンドシグナルを生じる。66nM濃度の抗−ヤギIgGは、バックグラウンドシグナル上で容易に測定される。図39Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図40】図40Aは、抗−ヒトIgG インターフェロン−ガンマレセプター分子、および神経成長因子(NGF)陰性対照を用いたインターフェロン−ガンマ(INF−ガンマ)のラベル化しないELISAアッセイを示す。図40Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図41】図41Aは、酵素キャスパーゼ−3を用いた5アミノ酸ペプチド(分子量=860)およびこれに続くpNAラベル(分子量=130)の切断を示す。図41Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図42】図42Aは、3つの個別のタンパク質層の結合の連続的モニターの間の液体中での共鳴ピークを示す。図42Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図43】図43Aは、図42に示されたデータから数学的に決定されたエンドポイントの共鳴周波数を示す。図43Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図44】図44Aは、IgG結合の動的結合測定値を示す。図44Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図45】図45Aは、バイオセンサー表面から、結合したタンパク質を切断するプロテアーゼの動的測定値を示す。図45Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図46】図46は、共鳴ピークからの分光計データに対する放物線および指数関数の数学的適合の比較を示す。指数関数曲線適合が、ピーク共鳴波長を数学的に決定するために使用される。
【図47】図47は、測定されたスペクトルに人工的に加えたノイズに対する数学的に決定されたピーク共鳴波長の感度を示す。
【図48】図48は、電気伝導材料を取り込む共鳴光学バイオセンサーを示す。
【図49】図49は、1組の同心輪からなる表面反射または透過フィルター構造を示す。
【図50】図50は、格子のいずれの特定の位置に置く照射ビームも必要としない、図49の同心円構造に極近い穴の六角形格子(または突起物の六角形格子)を含む共鳴反射または透過フィルタ構造を示す。
【図51】図51は、試験溶液のピーク共鳴波長値のプロットを示す。アビジン溶液が、アビジン+BSAおよびアビジン+b−BSA溶液に対する比較の基底参照として採取された。2つのタンパク質が相互作用しないと予測されるので、アビジンへのBSAの添加は、わずかに小さい共鳴波長の増加しかもたらさない。しかし、ビオチンとアビジンは強く結合するので(Kd=10−15M)、アビジン+b−BSA溶液は、大きな結合したタンパク質複合体を含むこととなる。従って、アビジン+b−BSA溶液のピーク共鳴波長値は、アビジン+BSAに比べて大きな変位を提供する。
【図52】図52は、検出システムの模式図を示す。
【図53】図53A−Bは、バイオセンサーの製造に用いられる製造プロセスおよび1次元線形格子センサーの断面を示す。図53Aは、シリコンとプラスチックフィルムのシートとの間で、バイオセンサー構造をエポキシの薄膜に複製するのに用いられるシリコンマスターウエハを示す。エポキシが硬化した後、プラスチックシートをはがす。センサーの製造を完了するには(図53B)、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、または硫化亜鉛のような高屈折率誘電材料の薄膜を構造上に堆積する。
【図54】図54A−Cは、1次元線形格子導波モード共鳴フィルター「マスター」構造を製造するために用いられる線形格子構造(図54A;上面図)を示す。まず、直径8インチのシリコン「マスター」ウエハが製造される。図54Bに示されるように、フォトレジストを被覆したシリコンウエハの表面上に、直径9mmの円形格子レチクルにより遠紫外線フォトリソグラフィーを用いて段階的に繰り返し曝露して、550nm周期の線形格子構造をフォトレジスト中に規定する。図54Cは、曝露のステップ/リピート工程により8列12カラムずつの標準型96ウェルミクロタイタープレートの2つのパターンを製造したものを示す。曝露されたフォトレジストは現像され、〜200nmの深さの反応性イオンエッチングを用いて格子構造がシリコンウエハに永久的に写された。エッチング後、フォトレジストは除去された。
【図55】図55は、バイオセンサー構造を照らし、バイオセンサー構造からの出力を読み取るために用いられる計測器を示す。プローブ部は、2つの光学ファイバーを含む。第1のファイバーは、白色光源に接続してバイオセンサー表面に偏光した平行化光の小さなスポットを当てる。第2のファイバーは、分光計による分析のために反射光を集める。
【図56】図56は、水で満たされたミクロタイタープレートウェル中の1次元線形格子表面バイオセンサー構造についての、波長に対する反射強度を示す。
【図57】図57は、3つのバイオセンサー表面活性化状態についての、清浄な1次元線形格子表面バイオセンサー構造に対する最大波長変位を示す。エラーバーは、7つの別個のセンサーウェルについての変位の標準偏差を示す。
【図58】図58A−Cは、NH2、PEG、およびPEG−ビオチンで活性化された1次元線形格子表面バイオセンサー構造の、7種の濃度の抗−ビオチンIgGによる曝露を示す。NH2表面(図58A)は、高いタンパク質曝露濃度において低いレベルの非特異的タンパク質結合を示し、PEG表面(図58B)は、低いレベルの非特異的結合を示す。PEG−ビオチン表面(図58C)は、抗−ビオチンIgGと強い結合相互作用を有する。
【図59】図59は、20分間のインキュベーション後のPEG−ビオチン活性化ウェルについての、抗−ビオチンIgG濃度に対する最大波長値変位を示す。プロットされた線は、最小自乗法による適合直線関数を示す。
【図60】図60は、バイオセンサー表面への特異的結合物質の固定化に対する表面修飾層の効果を示す。
【図61】図61は、界面層がある場合およびない場合におけるバイオセンサーの水に対する安定性試験結果を示す。界面層の付加により、水溶液中でのバイオセンサーの安定性が顕著に向上した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
サブ波長構造化表面(SWS)バイオセンサー
本発明の1つの態様として、サブ波長構造化表面(SWS)を用いて、特異的結合物質、結合パートナー、またはその両方のような、生体材料の相互作用を高感度で追跡できる特定の波長において、敏感な光学共鳴反射を作成した。色測定共鳴回折格子表面は、特異的結合物質の表面結合のプラットフォームとして作用する。
【0022】
サブ波長構造化表面は、薄膜被覆効果を疑似できる新しい型の回折光学機器である(Peng & Morris,「2次元格子からの共鳴消散」 J. Opt. Soc. Am. A, Vol. 13, No. 5, p. 993, May; Magnusson, & Wang,「光学フィルタのための新しい原理」 Appl. Phys. Lett.,61, No. 9, p. 1022, August, 1992; Peng & Morris,「2次元格子からの回折の共鳴異常の実験的証明」Optics Letters, Vol. 21, No. 8, p. 549, April, 1996)。SWS構造は、表面レリーフ、反射したおよび透過した0次オーダー以外の回折オーダーが伝播しないように入射光の波長と比べて格子周期が小さい1次元または2次元格子、を含む。SWS表面狭周波数帯フィルタは、基板層および格子溝を満たす被覆層に挟まれた1次元または2次元格子を含むことができる。任意に、被覆層は使用されなくてもよい。格子領域の効果的反射率が基板または被覆層よりも大きい場合、導波管が作られる。フィルタが適切に設計される場合、入射光は導波管領域に進み、漏洩モードとして伝播する。1次元または2次元格子構造は、波長の狭周波数帯で導波管に選択的に光を結合する。光は、ほんの短い距離しか(10−100マイクロメーターのオーダーで)伝播せず、消散を受け、前進−および後退−伝播ゼロ次の光に結合する。この高感度の結合条件は、反射した放射スペクトル上で共鳴格子効果を発生させることができ、反射したまたは透過した波長の狭周波数帯をもたらす。1次元または2次元格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長よりも短い。
【0023】
この構造の反射したまたは透過した色は、特異的結合物質や結合パートナー、またはその両方のような分子の、被覆層上面または1次元または2次元格子表面への添加により調節できる。添加した分子は、構造を通じた入射した放射の光学経路を増加し、これにより最大の反射または透過が起こる波長に変更する。
【0024】
1つの態様として、白色光で照らされるとき、バイオセンサーは、単一波長のみを反射するように設計される。特異的結合物質がバイオセンサーの表面に結合すると、格子に結合する光の光学経路の変化のために、反射した波長(色)が変位する。特異的結合物質をバイオセンサー表面に連結することにより、相補的結合パートナー分子がいずれの種類の蛍光プローブや粒子ラベルを用いることなく検出できる。この検出技術は、例えば、〜0.1nm厚のタンパク質結合の変化を解像する能力があり、バイオセンサー表面が液体で浸漬しているか乾燥しているかのいずれでも実施できる。
【0025】
検出システムは、例えば、ファイバー光学プローブ等を通じて垂直の入射角でバイオセンサーの小さいスポットを照らす光源、および第2のファイバー光学プローブ等を通じて垂直の入射角で反射した光を集める分光計からなる。励起/検出システムとバイオセンサー表面との間で物理的接触が起こらないので、特別な結合プリズムを必要とせず、バイオセンサーは、例えば、ミクロタイタープレートおよびミクロアレイスライド等の通常使用されるいずれのアッセイプラットフォームにも容易に適合できる。一回の分光計の読みとりは、数ミリ秒で実行でき、そのためバイオセンサー表面で並行して起こる非常に多くの分子間相互作用を迅速に測定でき、リアルタイムで反応動態をモニターできる。
【0026】
この技術は、非常に多数の生体分子間相互作用が並行して測定される応用において有用であり、特に分子ラベルが試験中に分子の機能を変化させまたは阻害する場合に有用である。タンパク質標的の医薬化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、およびプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のミクロアレイスクリーニングは、本発明の構成物および方法により提供される感度と処理量を必要とする応用の例である。
【0027】
SWS構造の例の模式図を、図1に示す。図1中、n基板は、基板材料を示す。n1は、任意の被覆層の屈折率を示す。n2は、2次元格子の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、2次元格子構造上方の被覆層の厚さを示す。t2は、格子の厚さを示す。tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の層の厚さを示す。1つの態様として、n2>n1である(図1参照)。層の厚さ(即ち、被覆層、1またはそれ以上の特異的結合物質、または格子)は、上面に添加された分子に対する共鳴波長の感度の良さを達成するように選択される。格子周期は、望む波長で共鳴を達成するように選択される。
【0028】
本発明の1つの態様は、SWSバイオセンサーを提供する。SWSバイオセンサーは、1次元または2次元格子、格子を支持する基板層、および基板層の反対側の格子表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【0029】
1次元または2次元格子は、例えば、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素等の材料を含むことができる。格子の断面の特徴は、例えば、「正方波」等のいずれの周期的繰り返し関数を含むことができる。格子は、連続平行線形、正方形、円形、楕円形、三角形、台形、シヌソイド波形、長円形、長方形、および六角形から成る群より選ばれる形状の繰り返しパターンを含むことができる。シヌソイドの断面特徴は、プラスチックのような柔らかい材料に格子形状をエンボス加工する必要や、エポキシのような材料に格子表面を複製する必要のある製造の応用に好ましい。本発明の1つの態様として、格子の深さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンであり、格子の周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。
【0030】
SWSバイオセンサーは、1次元線形格子表面構造、即ち、一連の平行線や溝を含んでもよい。図54を参照。1次元線形格子は、導波モード共鳴フィルター効果を生じるのに充分である。2次元格子は、双方とも波長以下のセンサー表面の平面を横切る2つの横方向に特徴を有する一方、1次元格子の断面は、1つの横方向にのみ波長以下であり、長手方向は共鳴格子効果の波長より大きくすることができる。1次元格子バイオセンサーは、1次元格子の表面構造を有する低屈折率材料層上に薄膜として被覆された高屈折率材料を含むことができる。図53を参照。あるいは、1次元格子バイオセンサーは、低屈折理宇材料基板を含むことができ、ここでは、高屈折率薄膜材料が1次元格子の表面構造に形成される。低屈折率材料は、ガラス、プラスチック、ポリマー、または硬化したエポキシでもよい。高屈折率材料は、低屈折率材料よりも高い屈折率を有する必要がある。高屈折率材料は、例えば、硫化亜鉛、窒化ケイ素、酸化タンタル、2酸化チタン、または酸化インジウムスズでもよい。
【0031】
図53は、バイオセンサーの断面特徴を示し、ここで1次元格子断面は、長方形である。1次元線形格子構造の他の断面特徴は、導波モード共鳴効果をも生ずることである。これらには、例えば、三角形、v型、u型、逆vまたは逆u型、シヌソイド型、台形、階段型および正方形などが含まれる。いずれの規則的に繰り返される関数でも、導波モード共鳴効果を提供することとなる。
【0032】
さらに、1次元線形格子マスター構造は、市販の格子を用いて簡単に製造でき、均一な性能を有する大規模格子マスター構造は、遠紫外線(DUV)フォトリソグラフィーにより製造できる。プラスチックフィルムの連続シート上にマスターセンサー表面構造のサブミクロンのマイクロ複製を用いて、バイオセンサーを大きな表面積について安価に製造できる。本発明の1次元格子バイオセンサーは、シリコンの「マスター」ウエハを作成することにより製造でき、これは、高品位マイクロ複製加工によりプラスチックにセンサー構造を形成するためのテンプレートとして用いられる。大きな表面積についてプラスチックに高感度バイオセンサーを製造できることは、ミクロタイタープレートやミクロアレイスライドのような大面積の使い捨てアッセイ形式にバイオセンサーを組み込むことができることとなる。プラスチックバイオセンサーを、例えば底なし96ウェルミクロタイタープレートの底に組み込むことにより、バイオセンサープレートを用いて、例えば、同時に複数のタンパク質−タンパク質結合アッセイを行うことができる。プラスチック基板バイオセンサーの検出感度は、ガラス基板バイオセンサーのものと同等である。バイオセンサー構造は、標準的なミクロタイタープレートに組み込むことができ、これを用いてバイオセンサー表面に固定化された特異的結合物質と試験サンプル中の結合パートナーとの生化学的相互作用を測定することに基づくアフィニティーアッセイを行うことができる。バイオセンサーは、ミクロアレイスライド、フローセル、および細胞培地のような他の使い捨て実験室アッセイ形態に組み込むこともできる。バイオセンサーを汎用の実験室形態に組み込むことは、スポッターやインキュベーションチャンバーのような既存のミクロアレイ操作装置との互換性の点で望ましい。
【0033】
1次元線形格子バイオセンサー表面は光学構造を含み、これは、平行化白色光により照らされるときに、波長の狭周波数帯のみを反射するように設計される。狭波長帯は、「最大」波長として記載される。バイオセンサー表面に生化学材料若しくは他の材料が堆積するとき、または、これらがバイオセンサーから離れるときに、「最大波長値」(PWV)が、変化する。読みとり装置は、平行化白色光によりバイオセンサー表面の別個の位置を照らし、平行化反射光を収集する。収集された光は、PWVを測定するための波長分光計に集められる。
【0034】
1次元線形格子は、照射される光の偏光が格子周期に対して垂直にまたは平行に配向する共鳴特徴を有する。しかし、穴の六角形格子は、穴の長方形格子よりもよい偏光対称性を有する。従って、本発明の色測定共鳴反射バイオセンサーは、例えば、穴の2次元六角形アレイ(図3B参照)、正方形の2次元アレイ(図3A)、または平行線の1次元格子(図2参照)、を含むことができる。1次元線形格子は、六角形アレイ格子と同一の、ピッチ(即ち、高および低屈折率領域間の距離)、周期、層の厚さ、および材料特性、を有する。しかし、光は、光学構造に共鳴して結合するために格子線に対して垂直にまたは平行に偏光されなければならない。従って、1次元線形格子に対して垂直なまたは平行な偏光軸で配向した偏光フィルタは、照射源とバイオセンサー表面の間に挿入されなければならない。照射する光源のわずかに小さい部分しか正しく偏光されないので、共鳴して反射した光と同等の量を集めるためには、六角形格子に比べて長い積算時間を必要とする。
【0035】
1次元線形格子は、六角形格子に比べ高強度の照射源または長い測定積算時間を必要としうるが、1次元線形格子構造の加工に必要とされるものは、簡単である。2次元六角形格子パターンは、3つの相互干渉レーザービームへのフォトレジストのホログラフィーの暴露により製造される。3つのビームは、3方向に対称である格子パターンを製造するために、精密に配列される。1次元線形格子パターンは、フォトレジストのホログラフィー暴露を生成するためにわずか2つのレーザービームの配列しか必要とせず、従って少ない配列しか必要とされない。1次元線形格子パターンは、例えば、電子線ビームによるフォトレジストへの直接の書き込みによっても製造できる。また、プラスチックに格子構造をエンボス加工するまたは複製する1次元線形格子「マスター」型を製造するために、いくつかの市販の供給源がある。線形格子構造の模式図を図54に示す。
【0036】
長方形格子パターンは、電子線ビーム直接描画暴露システムを用いてフォトレジスト中に製造することができる。単一ウエハは、暴露の間90度回転した部分により2つの連続暴露で線形格子として照射することができる。
【0037】
1次元または2次元格子は、例えば、「階段状」の特徴も含むことができ、その単一で固定された高さの高屈折率領域は、低屈折率被覆層に埋め込まれる。高または低屈折率の二者択一領域は、バイオセンサーの上面に平行な光学導波管を提供する。図5を参照。
【0038】
製造のために、階段状構造は、ガラスやプラスチックのような基板材料中にエッチングされるかエンボス加工される。図53Bを参照。窒化ケイ素や硫化亜鉛のような高屈折率材料の均一な薄膜が、この構造上に堆積される。堆積した層は、基板にエンボス加工されたまたはエッチングされた構造の形の輪郭に従い、堆積した材料はもとのエンボス加工されたまたはエッチングされた特徴と同一の表面レリーフ特徴を有するようになる。誘電層の厚さは、格子構造の深さより少ないか、同等か、または大きくてもよい。構造は、高屈折率材料より低い屈折率を有し、実質的に平坦な上面を有する材料を含む任意の被覆層の適用により完成することができる。被覆材料は、例えば、ガラス、エポキシ、またはプラスチックを用いることができる。
【0039】
この構造は、大量生産できるので、低コストバイオセンサーの製造を可能にする。「マスター」格子は、例えば、3ビームレーザーホログラフィーパターン工程を用いてガラス、プラスチック、または金属中に製造することができる。例えば、Cowan、多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフィー格子アレイの記録と大規模生産、Proc. Soc. Photo-optical Instum. Eng. 503:120 (1984)、を参照。マスター格子は、繰り返し使用して、プラスチック基板をエンボス加工することができる。エンボス加工された基板は、その後高屈折率材料および任意に被覆層により被覆される。
【0040】
階段状構造は製造するのが簡単である一方で、高屈折率材料が階段状でないが、横の位置にしたがって変化する共鳴バイオセンサーを作成することもできる。図4に、n2の1次元または2次元格子の高屈折率材料が高さ方向にシヌソイドで変化する特徴を示す。特定の波長で共鳴反射が発生するように、シヌソイドの周期は、同等の階段状構造の周期と同一である。シヌソイドに変化する構造の共鳴操作およびバイオセンサーとしてのその機能性は、GSOLVER(グレーティングソルバーカンパニー、米国テキサス州アレン)コンピュータモデルを用いて実証されてきた。
【0041】
2次元格子を作成する技術は、Wang, J. Opt. Soc. Am No. 8, August 1990, pp. 1529-44に開示されている。本発明のバイオセンサーは、例えば、半導体ミクロ加工設備で作ることができる。バイオセンサーは、連続エンボス加工および光学被覆加工を用いてプラスチック基板上に作成することもできる。この型の製造工程としては、「マスター」構造がガラスやシリコンのような堅牢な材料中に作られ、これを用いていくつかの型の複製工程の1つを用いてエポキシやプラスチックに「母」構造を生じさせる。「母」構造は、次に伝導材料の薄膜で被覆され、ニッケルの厚い膜の電気メッキの型として用いられる。ニッケルの「娘」は、プラスチックの「母」構造から解放される。最後に、ニッケルの「娘」は、筒状ドラムに結合し、これを用いて、プラスチック膜に表面レリーフ構造が連続的にエンボス加工される。エンボス加工されたプラスチック基板を用いる装置の構造を、図5に示す。エンボス加工の後、プラスチック構造は、高屈折率材料の薄膜でさらに被覆され、任意に平面化された被覆層ポリマーで被覆され、そして適当な大きさに切断される。
【0042】
SWSバイオセンサーのための基板は、例えば、ガラス、プラスチックまたはエポキシを含むことができる。任意に、基板および2次元格子若しくは1次元格子は、単一ユニットを含むことができる。これは、格子および基板が、例えば、ガラス、プラスチック、またはエポキシと同じ材料から形成されるものである。格子を含む単一ユニットの表面は、例えば、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素のような高屈折率を有する材料で被覆される。1またはそれ以上の特異的結合物質は、高屈折率を有する材料表面または任意の被覆層上に固定化することができる。
【0043】
本発明のバイオセンサーは、基板層の反対側の2次元格子若しくは1次元格子表面上に被覆層をさらに含むことができる。被覆層が存在するところでは、1またはそれ以上の特異的結合物質は格子の反対側の被覆層表面上に固定化される。好ましくは、被覆層は、格子を含む材料より低い屈折率を有する材料を含む。被覆層は、例えば、ガラス(スピンオンガラス(SOG)を含む)、エポキシ、またはプラスチックを含むことができる。
【0044】
例えば、バイオセンサーに必要とされる屈折率に適合する種々のポリマーは、被覆層として用いることができる。SOGは、その好ましい屈折率、取り扱いやすさ、および豊富なガラス表面活性化技術を用いて特異的結合物質により容易に活性化されることにより、用いることができる。バイオセンサー表面の平坦さが特定のシステムの設定で問題とならない場合、SiN/ガラス格子構造は検出表面として直接使用することができ、その活性化はガラス表面に対するものと同様の方法を用いて行うことができる。
【0045】
共鳴反射は、2次元格子若しくは1次元格子上の平面化被覆層を用いずに得ることもできる。例えば、バイオセンサーは、高屈折率材料の構造化された薄膜層により被覆された基板のみを含むことができる。平面化被覆層を用いることなしに、(空気や水のような)周囲の媒質は、格子を満たす。従って、特異的結合物質は、上面のみではなく、特異的結合物質に暴露された格子の全表面のバイオセンサーに固定化される。
【0046】
一般的に、本発明のバイオセンサーは、すべての偏光角の光を含むであろう白色光により照らされるであろう。バイオセンサー格子の繰り返し特徴に関する偏光角の配向は、共鳴波長を決定するであろう。例えば、繰り返しの直線と空間の1組からなる1次元線形格子バイオセンサー構造は、個別の共鳴反射を発生する2つの光学偏光を有するであろう。直線に対して垂直に偏光する光は、「s−偏光」とよばれ、一方、直線に並行に偏光する光は、「p−偏光」と呼ばれる。入射光のsおよびp成分の両方は、フィルタを透過していない照射ビーム中に同時に存在し、各々は、個別の共鳴シグナルを発生する。バイオセンサー構造は、一般的にただ1つの偏光(一般的にs−偏光)の特性を最適化するように設計され、最適化されない偏光は、偏光フィルタにより容易に除去される。
【0047】
偏光依存性を除去するために、すべての偏光角が同じ共鳴反射スペクトルを発生させるように1組の同心輪からなる代替のバイオセンサー構造が用いられる。この構造では、各々の同心輪の内側の直径と外側の直径との違いは、格子周期の約半分に等しい。各々の連続する輪は、前の輪の内側の直径より格子周期約1つ分大きい内側の直径を有する。同心輪パターンは、ミクロアレイスポットまたはミクロタイタープレートウェルのような単一のセンサー位置を被覆するように伸びる。各々の個別のミクロアレイスポットまたはミクロタイタープレートウェルは、その中に中心をおく個別の同心輪パターンを有する。例えば、図49。このような構造のすべての偏光方向は、同じ断面の特徴を有する。同心輪構造は、偏光の独立性を保持するために中心に正確に照らされなければならない。同心輪構造の格子周期は、共鳴して反射した光の波長よりも短い。格子周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。格子深さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。
【0048】
他の態様として、穴または突起物のアレイが、格子のどの特定の位置を中心におく照射ビームも必要とせずに上記の同心円構造の極近傍に配置される。図50を参照。このようなアレイパターンは、同一角度の3方向から表面上への3つのレーザービームの入射の光学干渉により自動的に発生する。このパターンでは、穴(または突起物)は、図50に示したように細密充填した六角形のアレイの角に位置する。穴または突起物はまた、各々の六角形の中心にも存在する。このような穴または突起物の六角形格子は、同じ断面の特徴に「見える」3つの偏光方向を有する。六角形格子構造は、それ故、いずれの偏光角の光を用いても同等な共鳴反射スペクトルを提供する。従って、欲しない反射シグナル成分を除去するために、偏光フィルタを必要としない。穴または突起物の周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンとでき、深さまたは高さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンとすることができる。
【0049】
本発明は、同心円格子および穴または突起物の六角形格子を含む共鳴反射構造および透過フィルタ構造を提供する。共鳴反射構造としては、光の出力は、照射光ビームと同じ構造面で測定される。透過フィルタ構造としては、光の出力は、照射光ビームと反対側の構造面で測定される。反射したおよび透過したシグナルは、相補的である。これは、波長が強く反射した場合、弱く透過することを意味する。構造そのものではエネルギーが吸収されないと仮定すると、所定のどの波長においても反射した+透過したエネルギーは、一定である。共鳴反射構造および透過フィルタは、特定の波長で高い効率の反射を与えるように設計される。従って、反射フィルタは、入射光からの狭周波数帯の波長を「通過させる」が、透過フィルタは、狭周波数帯の波長を「遮断する」。
【0050】
共鳴反射構造または透過フィルタ構造は、同心円パターンに配置された2次元格子を含むことができる。共鳴反射構造または透過フィルタ構造は、穴または突起物の六角形格子を含むこともできる。これらの構造が照射光ビームで照らされるときに、照らされる光ビームの照射偏光角に独立した反射した放射スペクトルが発生する。これらの構造が照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、ここでは2次元格子または穴若しくは突起物の六角形格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長よりも短い。これらの構造は、構造が広周波数帯の光で照らされるときに、狭周波数帯の光を反射する。
【0051】
本発明の共鳴反射構造および透過フィルタ構造は、バイオセンサーとして使用できる。例えば、1またはそれ以上の特異的結合物質は、穴若しくは突起物の六角形格子上または同心円に配置された2次元格子上に固定化できる。
【0052】
本発明の1つの態様として、参照共鳴シグナルが、ピーク共鳴波長変位のより正確な測定のために提供される。参照共鳴シグナルは、例えば温度を含む環境の効果を相殺できる。参照シグナルは、2つの個別の共鳴波長を発生する共鳴反射上部構造を用いることにより提供できる。透明共鳴反射上部構造は、2つの下部構造を含むことができる。第1の下部構造は、上面および底面を有する第1の1次元または2次元格子を含む。1次元または2次元格子の上面は、格子表面を含む。第1の1次元または2次元格子は、その上面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含むことができる。第1の1次元または2次元格子の上面は、試験サンプルと接触する。任意の基板層が、第1の1次元または2次元格子の底面を支持するために存在してもよい。基板層は、上面および底面を含む。基板の上面は、第1の1次元または2次元格子の底面に接触し、これを支持する。
【0053】
第2の下部構造は、上面および底面を有する第2の1次元または2次元格子を含む。第2の1次元または2次元格子は、試験サンプルと接触しない。第2の1次元または2次元格子は、第1の1次元または2次元格子を支持する基板の底面上に加工することができる。第2の1次元または2次元格子が第1の1次元または2次元格子を支持する基板上に加工される場合には、第2の1次元または2次元格子の底面は基板の底面上に加工できる。従って、第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の1次元または2次元格子の上面と反対方向に向くこととなる。
【0054】
第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の下部構造の底面に直接接触することもできる。この態様では、第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の1次元または2次元格子の上面と同じ方向に向くであろう。この態様では、基板は第2の1次元または2次元格子の底面を支持できる。
【0055】
第2の下部構造は試験サンプルに物理的に接触しないので、そのピーク共鳴波長は、試験媒体の光学密度、または第1の1次元または2次元格子表面の特異的結合物質の堆積若しくは結合パートナーの堆積、の変化を受けない。従って、このような上部構造は、2つの共鳴シグナルを発生させる。第2の下部構造のピーク共鳴波長の位置は固定されているので、2つの下部構造間のピーク波長の違いは、試験サンプルに暴露される第1の構造の上面に堆積した、特異的結合物質、結合パートナーまたはその両方の量を決定するための相対的な手段を提供する。
【0056】
バイオセンサーの上部構造は、その上面若しくはその底面から、または両方の表面から照らされることができる。第1の構造のピーク共鳴反射波長は、上部構造表面と接触する材料の光学密度に依存するが、第2の構造のピーク共鳴反射波長は、上部構造表面と接触する材料の光学密度に依存しない。
【0057】
本発明の1つの態様として、バイオセンサーは、バイオセンサーの底面から照らされる。約50%の入射光は、バイオセンサーの活性な(上)面に到達することなくバイオセンサーの底面で反射される。薄膜または物理構造は、共鳴波長で反射したエネルギーを最小化する一方でバイオセンサー上面に透過した光の量を最大化する能力のあるバイオセンサー構成物に含めることができる。抗反射薄膜またはバイオセンサー底面の物理構造は、例えば、単一の誘電薄膜、多重誘電薄膜の積重ね、またはバイオセンサー底面にエンボス加工された「蛾目」構造を含むことができる。蛾目構造の例は、Hobbs, et al. 「サブミクロン特徴サイズパターンの発生のための自動化干渉リソグラフィーシステム」 Proc. 1999 Micromachine Technology for Diffracting and Holographic Optics, Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers, p. 124-135, (1999)、に開示されている。
【0058】
本発明の1つの態様として、光学装置が提供される。光学装置は、本発明のいずれのバイオセンサーにも似た構造を含むが、光学装置は、2次元格子に固定化された1またはそれ以上の結合物質を含まない。光学装置は、狭周波数帯光学フィルタとして用いることができる。
【0059】
本発明の1つの態様として、第1の分子の第2の試験分子との相互作用を検出することができる。上述したSWSバイオセンサーが用いられるが、その表面に固定化された特異的結合物質はない。従って、バイオセンサーは、1次元または2次元格子、1次元または2次元格子を支持する基板層、および任意に被覆層を含む。上述したように、バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長より短い。
【0060】
第1の分子の第2の試験分子との相互作用を検出するために、第1と第2の分子の混合物がバイオセンサーの別個の位置が適用される。別個の位置は、バイオセンサーの1つのスポット若しくはウェルでもよく、またはバイオセンサーの大きな範囲でもよい。第1の分子と第3の対照分子の混合物も、バイオセンサーの別個の位置に適用される。バイオセンサーは、上述したバイオセンサーと同じでもよく、または第2のバイオセンサーでもよい。バイオセンサーが同じバイオセンサーの場合、第2の別個の位置は、第1の分子および第3の対照分子の混合物のために用いることができる。その代わりに、同じ別個のバイオセンサーの位置は、第1および第2の分子がバイオセンサーから洗浄された後に用いることもできる。第3の対照分子は、第1の分子と相互作用せず、第1の分子とほぼ同じ大きさである。バイオセンサーの別個の位置から反射した光の波長の変位が、測定される。第1の分子および第2の試験分子を有する別個の位置から反射した光の波長の変位が、第1の分子および第3の対照分子を有する別個の位置から反射した波長の変位より大きい場合、第1の分子および第2の試験分子は、相互作用する。相互作用は、例えば、核酸分子のハブリダイゼーション、抗体または抗体フラグメントの抗原への特異的結合、およびポリペプチド間の結合でもよい。第1の分子、第2の試験分子、または第3の対照分子は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリアでもよい。
【0061】
特異的結合物質および結合パートナー
1またはそれ以上の特異的結合物質は、例えば、物理的吸着または化学結合により、1次元または2次元格子または存在する場合には被覆層に固定化される。特異的結合物質は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、または生物学的サンプルでもよい。生物学的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、または前立腺液でもよい。
【0062】
好ましくは、1またはそれ以上の特異的結合物質は、バイオセンサーの別個の位置のミクロアレイに配置される。特異的結合物質のミクロアレイは、表面に各々異なる特異的結合物質または異なる量の特異的結合物質を有する多くの別個の位置を含むように、本発明のバイオセンサーの表面に1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。例えば、アレイは、1、10、100、1,000、10,000または100,000の別個の位置を含むことができる。1またはそれ以上の特異的結合物質がx−y座標の規則的な格子パターンで典型的に配置されるので、このようなバイオセンサー表面は、ミクロアレイと呼ばれる。しかし、本発明のミクロアレイは、規則的または不規則のパターンのいずれの型でも配置された1またはそれ以上の特異的結合物質を含むことができる。例えば、別個の位置は、1またはそれ以上の特異的結合物質のスポットのミクロアレイを規定することができる。ミクロアレイスポットは、直径約50から約500ミクロンでもよい。ミクロアレイスポットは、直径約150から約200ミクロンでもよい。1またはそれ以上の特異的結合物質は、その特異的結合パートナーに結合できる。
【0063】
本発明のバイオセンサーのミクロアレイは、1またはそれ以上の特異的結合物質の微小滴を、例えば、1次元または2次元格子または被覆層表面の位置のx−y格子に置くことにより作成することができる。バイオセンサーが1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルに暴露されると、結合パートナーは、結合パートナーに高い親和性を有する特異的結合物質を含むミクロアレイの別個の位置に優先的に引きつけられることとなる。別個の位置のいくつかは、その表面に結合パートナーを集めるが、他の位置は集めないこととなる。
【0064】
特異的結合物質は、本発明のバイオセンサー表面に添加された結合パートナーに特異的に結合する。特異的結合物質は、その結合パートナーに特異的に結合するが、バイオセンサー表面に添加された他の結合パートナーには実質的に結合しない。例えば、特異的結合物質が抗体であり、その結合パートナーが特定の抗原である場合、抗体は、特定の抗原に特異的に結合するが、他の抗原には実質的に結合しない。結合パートナーは、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、および生物学的サンプルでもよい。生物学的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液でもよい。
【0065】
本発明のミクロアレイの1つの例は、核酸ミクロアレイであり、このアレイ中の各々の別個の位置は異なる核酸分子を含む。この態様では、核酸ミクロアレイのスポットは、試験サンプル中の対向する核酸鎖と相補的な化学結合を検出する。
【0066】
ミクロタイタープレートは生化学アッセイに用いられる最も一般的な形式であるが、ミクロアレイは、高価な試薬の容積を最小にする一方で同時測定できる生化学相互作用の数を最大化する方法として、だんだん見られるようになってきた。本発明のバイオセンサー上へのミクロアレイスポッターによる特異的結合物質の適用により、10,000の特異的結合物質/in2の特異的結合物質密度を得ることができる。単一のミクロアレイ位置に送るために照射ビームを集中させることにより、バイオセンサーは、ラベル不用のミクロアレイ読みとりシステムとして用いることができる。
【0067】
固定化または1またはそれ以上の特異的結合物質
特異的結合物質がすすぎ工程により洗い流されないように、そして試験サンプル中の結合パートナーへの結合がバイオセンサー表面により妨げられないように、バイオセンサーへの1またはそれ以上の結合物質の固定化が行われる。種々の型のミクロアレイおよびバイオセンサーに用いるためのガラス等への特異的結合物質の共有結合のために、いくつかの異なる型の表面化学方策が実行されてきた。これらの同じ方法は、本発明のバイオセンサーに容易に適用することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質の結合のための正しい官能基を含むようにするバイオセンサーの表面調製は、バイオセンサー製造工程の不可欠な部分である。
【0068】
1またはそれ以上の特異的結合物質は、物理吸着(即ち、化学的リンカーを用いない)または化学結合(即ち、化学的リンカーを用いる)によりバイオセンサーに結合することができる。化学結合は、バイオセンサー表面への特異的結合物質の強い結合を発生させ、表面結合分子の規定された配向とコンフォメーションを提供することができる。
【0069】
本発明のバイオセンサーへの特異的結合物質の化学結合のいくつかの例を、以下の実施例8に示す。他の型の化学結合には、例えば、アミン活性化、アルデヒド活性化、およびニッケル活性化が含まれる。これらの表面は、図6に示すように、バイオセンサー表面にいくつかの異なる型の化学リンカーを結合させるために用いることができる。アミン表面はいくつかの型のリンカー分子を結合するために用いることができる一方、アルデヒド表面は追加のリンカーを用いることなくタンパク質を直接結合するために用いることができる。ニッケル表面は、取り込まれたヒスチジン(「his」)タグを有する分子を結合するために用いることができる。ニッケル活性化表面による「his−タグ」化分子の検出は、この分野でよく知られている(Whitesides, Anal. Chem. 68, 490, (1996))。
【0070】
プラスチック、エポキシ、または高屈折率材料への特異的結合物質の固定化は、本質的にガラスへの固定化のために記載されたものと同様に行うことができる。しかし、酸洗浄工程のような処置は特異的結合物質が固定化した材料を損傷しうるので、このような工程は排除することができる。
【0071】
約〜0.1ng/ml未満の濃度における結合パートナーの検出には、バイオセンサーに結合した結合パートナーをバイオセンサー表面のさらなる層に増幅して変換することが好ましい。バイオセンサーに堆積した増加した質量は、増加した光学経路の結果として容易に検出することができる。大きな質量をバイオセンサー表面に取り込むことにより、表面の結合パートナーの光学密度も増加し、従って、添加した質量なしに起こるのに比べて大きな共鳴波長変位が起こるようになる。質量の添加は、例えば、「サンドウィッチ」アッセイを通じて酵素的に、または種々の大きさや組成の適切にコンジュゲートしたビーズや高分子の形態でバイオセンサー表面に質量を直接適用することにより、達成することができる。この原理は、他の型の光学バイオセンサーに利用されて、質量の増幅なしに達成された感度の限界を1500倍以上超える感度の増加を示した。Jenison et al., 「干渉に基づく、光学的に被覆されたシリコン上での核酸標的の検出」 Nature Biotechnology, 19: 62-65, 2001を参照のこと。
【0072】
例として、図7Aは、NH2−活性化バイオセンサー表面が表面に固定化された単鎖DNA捕捉プローブを含む特異的結合物質を有することができることを示す。捕捉プローブは、その相補的標的結合パートナーと選択的に相互作用する。そして、結合パートナーは、「検出」分子と結合する配列またはタグを含むように設計することができる。図7Aに示すように、検出分子は、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に対するリンカーを含むことができ、これは、正しい酵素に暴露されたときに、検出分子が存在する場所のみのバイオセンサー上にさらなる材料を選択的に堆積するものである。このような工程は、例えば、300オングストロームの検出可能な生体材料を数分の内にバイオセンサーに添加することができる。
【0073】
「サンドウィッチ」手法は、検出感度を増強するために用いることもできる。この手法では、高分子量分子が低分子量分子の存在を増幅するために用いることができる。例えば、約0.1kDaから約20kDa等の分子量を有する結合パートナーは、サクシニミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、またはジメチルピメリミデート(DMP)、ヒスチジン、または図7Bに示すようなビオチン分子等でタグ化することができる。タグがビオチンの場合、ビオチン分子は、ストレプトアビジンに強く結合し、これは60kDaの分子量を有するものである。ビオチン/ストレプトアビジン相互作用はとても特異的なので、ストレプトアビジンは、小さい結合パートナーによるだけで発生するシグナルを60倍増幅する。
【0074】
検出感度は、化学的に誘導された小粒子の使用を通じてさらに増強することができる。金コロイドから作られる「ナノ粒子」、種々のプラスチック、または直径約3−300nmのガラスは、結合パートナーに選択的に共有結合できるようにする分子種で被覆することができる。例えば、図7Cに示すように、ストレプトアビジンにより共有結合的に被覆されているナノ粒子は、バイオセンサー表面のビオチンタグ化した結合パートナーの視認性を増強するために用いることができる。ストレプトアビジン分子はそれ自身60kDaの分子量を有しているが、誘導されたビーズは、例えば、60kDaを含むいずれの大きさの分子量をも有することができる。大きなビーズの結合は、バイオセンサー表面の光学密度の大きな変化をもたらし、容易に測定できるシグナルとなるであろう。この方法は、感度の解像度において約1000倍の増強をもたらすことができる。
【0075】
表面−レリーフボリューム回折バイオセンサー
本発明の他の態様は、表面−レリーフボリューム回折構造を含むバイオセンサー(SRVDバイオセンサー)である。SRVDバイオセンサーは、光学波長の広周波数帯で照らされたときに光学波長の特定の狭周波数帯で優先的に反射する表面を有する。特異的結合物質および/または結合パートナーがSRVDバイオセンサー上で固定化される場合、反射した光の波長が変位する。薄膜干渉フィルタおよびブラッグ反射体のような1次元表面は、広周波数帯励起源からの狭い範囲の反射したまたは透過した波長を選択できるが、その上面への特異的結合物質および/または結合パートナーのようなさらなる材料の堆積は、共鳴波長よりもむしろ共鳴線幅の変化をもたらすのみである。対照的に、SRVDバイオセンサーは、表面への特異的結合物質および/または結合パートナーのような材料の添加により反射した波長を変化させる能力を有する。
【0076】
SRVDバイオセンサーは、第1および第2の表面を有するシート材料を含む。シート材料の第1の表面は、レリーフボリューム回折構造を規定する。シート材料は、例えば、プラスチック、ガラス、半導体ウエハ、または金属膜を含むことができる。
【0077】
レリーフボリューム回折構造は、例えば、上述した2次元格子、または3次元表面レリーフボリューム回折格子でもよい。レリーフボリューム回折構造の深さおよび周期は、バイオセンサーから反射した光の共鳴波長より短い。
【0078】
3次元表面レリーフボリューム回折格子は、例えば、その溝のパターンが階段状ピラミッドに似た3次元相−量子化段状表面レリーフパターンでもよい。このような格子が広周波数帯放射のビームにより照らされるとき、光は、周囲の媒体の屈折率と段間隔の2倍を掛けることにより与えられる波長において、等間隔に空けられた段から干渉光を発して反射することとなる。与えられた波長の光は、半波長離れた段から、段の数に反比例する周波数帯幅で、共鳴して回折しまたは反射する。反射したまたは回折した色は、新しい波長が被覆の屈折率に依存して選択されるように、誘電層の堆積により制御できる。
【0079】
階段相構造は、前述したような3つのレーザービームに薄いフォトレジスト膜を干渉光で暴露することよりフォトレジスト中に最初に作成できる。例えば、Cowen, 「多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフ格子アレイの記録と大規模複製」、周期構造、回折格子、およびモアレ現象IIの応用、理論、および加工に関する国際会議、Lerner, ed., Proc. Soc. Photo-Opt. Instrum. Eng., 503, 120-129, 1984; Cowen, 「ホログラフハニカムマイクロレンズ」Opt. Eng. 24, 796-802 (1985); Cowen & Slafer, 「フィルムシステムにおける写真乳化粒子の秩序化のためのホログラフミクロパターンの記録および複製」 J. Imaging Sci. 31, 100-107, 1987を参照のこと。フォトレジストの非線形エッチングの特徴は、3次元レリーフパターンを作成するために暴露した膜を現像するために用いられる。そして、フォトレジスト構造は、標準的なエンボス加工工程を用いて複製される。例えば、薄い銀の膜は、フォトレジスト構造に堆積し、ニッケルの厚い膜を電気メッキできる伝導層を形成する。ニッケルの「マスター」面は、ビニルのようなプラスチック膜中に直接エンボス加工するために用いられ、これは、熱や溶媒により柔らかくされる。
【0080】
階段状ピラミッドに似た3次元相−量子化段状表面レリーフパターンの設計および加工を記述する理論は、Cowen, 「アステカの表面レリーフボリューム回折構造」J. Opt. Soc. Am. A, 7:1529 (1990)に、記載されている。
【0081】
3次元相−量子化段状表面レリーフパターンの例は、階段状ピラミッドに似たパターンである。各々の逆さのピラミッドは、直径約1ミクロンで、好ましくは、各々の逆さのピラミッドは、直径約0.5から5ミクロン、例えば約1ミクロン、でもよい。ピラミッド構造は、直径150−200ミクロンの典型的なミクロアレイスポットが数百段のピラミッド構造を取り込むことができるように細密充填されていてもよい。レリーフボリューム回折構造は、約0.1から約1ミクロンの周期および約0.1から約1ミクロンの深さを有する。図8は、特異的結合物質または結合パートナーが表面に吸着するかどうかを決定するために、(1つのミクロアレイスポットとして単一のピラミッドにより示された数百のピラミッドを含む全ミクロアレイの)個々のミクロアレイの位置が、如何に光学的に測定できるかを、示す。構造が白色光で照らされるとき、意義のある結合材料を有しない構造は、構造の階段の高さにより決定される波長を反射するであろう。結合パートナーや特異的結合物質のような高屈折率材料が反射金属表面に取り込まれたとき、反射した波長は、長い波長に向かって変位するように修正される。段状の階段構造から反射した色は、SRVDバイオセンサーのシート材料の第1の表面に被覆された反射材料の屈折率を階段高さの2倍と掛けたものとして、理論的には与えられる。反射材料は、例えば、銀、アルミニウム、または金でもよい。
【0082】
1またはそれ以上の特異的結合物質は、上述したように、SRVDバイオセンサーの反射材料に固定化される。1またはそれ以上の特異的結合物質は、上述したように、反射材料の別個の位置のミクロアレイに配置されていてもよい。図9は、9素子のミクロアレイバイオセンサーの例を提供する。小さな円で示される多くの個々の格子構造は、各々のミクロアレイスポットの中にある。大きな円で示されるミクロアレイスポットは、その表面の材料の屈折率により決定される波長で空気中で白色光を反射するであろう。さらなる吸着材料を有するミクロアレイの位置は、大きな円で示される長い波長に向かって変位する反射した波長を有するであろう。
【0083】
SRVDバイオセンサーから反射した光の波長は、狭い周波数幅に捕らわれているので、表面の光学特徴の非常に小さな変化は、反射した波長スペクトルの容易に観察される変化としてそれ自身拡大される。狭い反射周波数幅は、平面表面上の反射分光測定に比べ、表面吸着感度の優位性を提供する。
【0084】
光学波長の広周波数帯で照らされたとき、SRVDバイオセンサーは、第1の単一光学波長で優先的に光を反射し、1またはそれ以上の特異的結合物質が反射表面に固定化されているとき、第2の単一光学波長で光を反射する。第2の光学波長での反射は、光学干渉によりもたらされる。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合するとき、SRVDバイオセンサーはまた、光学干渉により第3の単一光学波長で光を反射する。
【0085】
反射した色の読みとりは、個々のミクロアレイスポットに顕微鏡の対物レンズの焦点を合わせて反射したスペクトルを読むこと、または、例えば、ミクロアレイの反射した画像を高解像度カラーCCDカメラに投影することと並行して、連続的に行うことができる。
【0086】
SRVDバイオセンサーは、例えば、金属マスター板を作成すること、およびレリーフボリューム回折構造をビニルのようなプラスチック材料等に打ち出すことにより製造することができる。打ち出しの後、表面は、例えば、金、銀、またはアルミニウムのような薄い金属膜の全体的な堆積により反射性にする。フォトリソグラフ、エッチング、およびウエハ結合工程に依存するMEMSに基づくバイオセンサーと比較して、SRVDバイオセンサーの製造は、非常に安い。
【0087】
液体収容容器
本発明のSWSまたはSRVDバイオセンサーは、例えば、液体収容容器の底面の内側表面を含むことができる。液体収容容器は、例えば、ミクロタイタープレートウェル、試験管、ペトリ皿、またはミクロ流体チャネルでもよい。この発明の1つの態様は、いずれの型のミクロタイタープレートにも取り込まれるSWSまたはSRVDバイオセンサーである。例えば、SWSバイオセンサーまたはSRVDバイオセンサーは、図10に示すように、共鳴反射表面上に反応容器の壁を組み立てることによりミクロタイタープレートの底面に取り込むことができ、各々の反応「スポット」は別個の試験サンプルに暴露できる。従って、各々の個々のミクロタイタープレートウェルは、個別の反応容器として作用することができる。個別の化学反応は、それ故、反応液と混ざり合うことなく近接のウェルの内側で起こることができ、化学的に別個の試験溶液が個々のウェルに適用できる。
【0088】
本発明のバイオセンサーを底なしミクロタイタープレートの底面に結合させるいくつかの方法として、例えば、接着結合、超音波溶接、およびレーザー溶接等を用いることができる。
【0089】
医薬のハイスループットスクリーニングの研究室、分子生物学の研究室、および診断アッセイの研究室において最も一般的なアッセイ形式は、ミクロタイタープレートである。プレートは、格子に配置された96、384、または1536の個々の反応容器を含みうる標準化された大きさのプラスチックカートリッジである。これらのプレートの標準的な機械的配置のために、液体の分配、自動プレート操作、および検出システムは、この共通の形式で機能するように設計されている。本発明のバイオセンサーは、標準的なミクロタイタープレートの底面に取り込むことができる。例えば、図10を参照のこと。バイオセンサー表面は大きな領域で加工でき、読みとりシステムはバイオセンサー表面と物理的接触をしないので、個々のバイオセンサー領域の任意の数が、バイオセンサー表面にわたる照射/検出プローブを走査する照射光学装置およびx−yステージの焦点解像度によってのみ限定されて、規定できる。
【0090】
保持具
例えば、約1mm2から約5mm2の、好ましくは約3×3mm2以下の、いずれの数のバイオセンサーも、96、384、または1536ウェルミクロタイタープレート等のミクロタイタープレートのウェルのような個別の液体収容容器にバイオセンサーを同時に浸漬することができる保持具に、配置することができる。例えば、図11を参照のこと。バイオセンサーの各々は、複数の別個の位置を含むことができる。保持具は、保持具に結合した1またはそれ以上のバイオセンサーを有し、各々の個々のバイオセンサーを個別の液体収容容器に入れることができるようになる。保持具は、プラスチック、エポキシまたは金属を含むことができる。例えば、50、96、384、または1,000、または1,536個のバイオセンサーが保持具に配置でき、ここでは各々のバイオセンサーは、25、100、500、または1,000の別個の位置を有する。例として、96個のバイオセンサーが保持具に結合し、各々のバイオセンサーが100個の別個の位置を含むところでは、9600個の生化学的アッセイが同時に実行できる。
【0091】
SWSおよびSRVDバイオセンサーの使用方法
本発明のSWSおよびSRVDバイオセンサーは、1または多数の特異的結合物質/結合パートナー相互作用を並行して調べるために用いることができる。1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合は、ラベルを用いることなく、表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を有するSWSまたはSRVDバイオセンサーに、1またはそれ以上の結合パートナーを適用することにより、検出することができる。SWSバイオセンサーは、光で照らされ、反射した光の波長の最大値、または透過した光の波長の最小値がバイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合、反射した光の波長は、1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合しなかった場合の状態と比較して、変位する。SWSバイオセンサーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されている場合、反射した光の波長の最大値または透過した光の波長の最小値がバイオセンサーの各々の別個の位置から検出される。
【0092】
SRVDバイオセンサーは、結合パートナーが添加された後に光で照らされ、反射した光の波長がバイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合、反射した光の波長は変位する。
【0093】
本発明の1つの態様では、例えば、抗体等の種々の特異的結合物質は、本発明のバイオセンサーにアレイ形式で固定化できる。そして、バイオセンサーは、タンパク質のような結合パートナーを含む目的とする試験サンプルと接触する。バイオセンサーに固定化された抗体と特異的に結合するタンパク質だけが、バイオセンサーに結合して残る。このような手法は、本質的に酵素結合イムノソルベントアッセイの大規模のものであるが、酵素または蛍光ラベルの使用は必要ではない。
【0094】
酵素活性は、1またはそれ以上の特異的結合物質が固定化されたSWSまたはSRVDバイオセンサーに1またはそれ以上の酵素を適用することにより検出することができる。バイオセンサーは、洗浄され、光で照らされる。反射した光の波長は、バイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合、反射した光の波長は変位する。
【0095】
さらに、例えば、結合パートナーを含む細胞溶解物のような試験サンプルを、本発明のバイオセンサーに適用することができ、その後結合しなかった材料を取り除くために洗浄される。バイオセンサーに結合する結合パートナーは、バイオセンサーから溶出することができ、例えば、質量分析計により同定することができる。任意に、ファージDNAディスプレイライブラリーを、本発明のバイオセンサーに適用することができ、その後結合しなかった材料を取り除くために洗浄される。バイオセンサーに結合した個々のファージ粒子は、単離することができ、これらのファージ粒子の挿入物は、結合パートナーの同一性を測定するために配列決定することができる。
【0096】
上記の応用、特にプロテオミクスへの応用では、本発明のバイオセンサーの試験サンプルからの結合パートナーのような材料に選択的に結合する能力は、その後のさらなる分析のためにバイオセンサーの別個の位置から結合した材料を選択的に取り除く能力として、有利である。本発明のバイオセンサーは、反射した光の波長の変位を測定することにより、バイオセンサーアレイの別個の位置に結合するサンプルからの結合パートナーの量を検出し定量することもできる。例えば、1つの別個のバイオセンサー位置における波長の変位は、他の別個のバイオセンサー位置における陽性または陰性対照と比較して、バイオセンサーアレイの別個の位置に結合する結合パートナーの量を測定することができる。
【0097】
SWSおよび電気伝導材料
任意のバイオセンサー構造は、バイオセンサーアレイを、バイオセンサーの個々の別個の位置からの結合パートナーを選択的に引きつけ、またははねつけることがさらにできるようにする。この分野でよく知られているように、起電力は、電場におかれている核酸およびアミノ酸のような生物学的分子に適用することができる。これらの分子は電気的に陰性であるので、これらは正に荷電した電極に引きつけられ、負に荷電した電極により反発を受ける。
【0098】
共鳴光学バイオセンサーの格子構造は、電気絶縁材料よりむしろ電気伝導材料を用いて作ることができる。電場は、バイオセンサー表面近くで適用することができる。格子が共鳴反射バイオセンサーおよび電極双方として作動する場合、格子は、共鳴波長近くでは光学的に透明であり、かつ低い抵抗性を有する材料を含む。本発明の1つの態様では、材料は、インジウムスズ酸化物、InSnxO1−x (ITO)である。ITOは、平板光学ディスプレイのための透明電極を作成するために一般的に用いられ、それ故大きなガラスシートに低価格で容易に利用可能である。ITOの屈折率は、材料に存在するSn部分のxを制御することにより調整することができる。液体試験サンプル溶液は移動するイオンを有するであろうから(それゆえ電気伝導体であろうから)、ITO電極は絶縁材料で被覆することが必要である。共鳴光学バイオセンサーとしては、格子層は、低屈折率材料の層で被覆される。硬化したフォトレジスト(n=1.65)、硬化した光学エポキシ(n=1.5)、およびガラス(n=1.4−1.5)のような材料は、ITO(n=2.0−2.65)より低い屈折率も有する強い電気絶縁体である。ITO格子を組み込むバイオセンサーの断面図を図48に示す。n1は、電気絶縁体の屈折率を示す。n2は、2次元格子の屈折率を示す。t1は、電気絶縁体の厚さを示す。t2は、2次元格子の厚さを示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示し、tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の厚さを示す。
【0099】
格子は、規則的に間を空けた穴のアレイを含むITOの連続シートでもよい。穴は、硬化したフォトレジストのような電気絶縁材料で満たされる。電気絶縁層は、構造の上面が電気絶縁体で完全に被覆されるように、そして上面が実質的に平面となるように、ITO格子に上塗りされる。バイオセンサーが光で照らされるとき、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長より短い。
【0100】
図12および図13に示すように、1つの電極は、多くの格子周期を含む領域を含むことができる。同じ基板表面の2またはそれ以上の個別の格子領域を作成することにより、バイオセンサー電極のアレイを作ることができる。各々のバイオセンサー電極への電気的接触は、バイオセンサー電極内の伝導体として同じ材料から作られる電気伝導トレースを用いて提供される。伝導トレースは、電位を電極に適用できる電源に接続する。電極表面近くで分子を引きつけるかまたははねつけることができるバイオセンサーに電位を適用するために、バイオセンサー上面は、図14に示されるような液体サンプルに浸漬することができる。「共通」電極は、サンプル液の中に配置でき、電圧は1つの選択されたバイオセンサー電極領域と共通電極との間に適用することができる。この方法では、1つの、いくつかの、またはすべての電極は、所定の時間荷電することまたは荷電しないことができる。図15は、正電圧が電極に適用されるときの電気的に陰性の分子のバイオセンサー表面への引きつけを示す一方、図16は、負の電極電圧を用いた、反対電荷のような反発力の電気的に陰性な分子への適用を示す。
【0101】
検出システム
検出システムは、本発明のバイオセンサー、光をバイオセンサーに導く光源、およびバイオセンサーから反射した光を検出する検出器を含むことができる。1つの態様として、決められた閾値を超える正の結果のみが検出の引き金となるようにフィルタの適用により読みとり装置を単純化できる。
【0102】
光源は、その上面、即ち、1またはそれ以上の特異的結合物質が固定化されている表面から、またはその底面から、バイオセンサーを照らすことができる。本発明のバイオセンサーの各々の別個の位置における共鳴波長の変位を測定することにより、どの別個の位置がそれらに結合する結合パートナーを有するかを決定することができる。変位の範囲は、試験サンプル中の結合パートナーの量、および1またはそれ以上の特異的結合物質と試験サンプルの結合パートナーとの化学的親和性、を決定するために用いることができる。
【0103】
本発明のバイオセンサーは、2度照らされてもよい。第1の測定で、バイオセンサーに固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質によるバイオセンサーアレイの1またはそれ以上の別個の位置の反射率スペクトルを決定する。第2の測定で、1またはそれ以上の結合パートナーがバイオセンサーに適用された後の反射率スペクトルを決定する。これら2つの測定値のピーク波長の違いは、バイオセンサーまたはバイオセンサーの1またはそれ以上の別個の位置、に特異的に結合した結合パートナーの量の測定値である。この照射方法は、ピーク共鳴波長のわずかな変動を有する領域によりもたらされるバイオセンサー表面のわずかな不均一性を制御することができる。この方法はまた、バイオセンサーに固定化された特異的結合物質の濃度または分子量の変化を制御することもできる。
【0104】
コンピュータシミュレーションを用いて、ピーク共鳴波長と照射の入射角との予測される依存性を決定することができる。図1に示すバイオセンサー構造は、例示のためのものである。選ばれた基材は、ガラスである(n基板=1.50)。格子は、510nmの周期および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%が窒化ケイ素四辺で被覆されている一方、残りは四辺の間の領域である)の窒化ケイ素四辺(t2=180nm、n2=2.01(n=屈折率)、κ2=0.001(κ=吸着係数))の2次元パターンである。窒化ケイ素四辺間の領域は、低屈折率材料で満たされている。同じ材料がまた四辺を被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmで窒化ケイ素四辺を被覆するガラス層が選択された(n1=1.40)。
【0105】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0106】
図19は、入射照射角に対するピーク共鳴波長の依存性をプロットする。シミュレーションは、入射光の角度と測定されるピーク波長との間に強い相関があることを示す。結果は、照射ビームの平行、および照射ビームと反射ビームとの配置が、測定される共鳴ピーク線幅に直接影響しうることを意味する。照射ビームの平行性が悪いと、様々な照射角でバイオセンサー表面に入射し、精密に平行化した光が入射する場合より、広い共鳴ピークが測定されうる。
【0107】
バイオセンサーの低い感度限界がピーク最大値を決定する能力に関連するので、狭い共鳴ピークを測定することが重要である。従って、バイオセンサーの平行化照射システムの使用は、最も高い潜在的な感度を提供する。
【0108】
バイオセンサー表面を照らすためおよび反射した光を集めるための検出システムの1つの型は、例えば、光源に接続した6つの照射光学ファイバー、および分光計に接続した1つの集光光学ファイバーを含むプローブである。ファイバーの数は決定的ではなく、いずれの数の照射または集光ファイバーも可能である。ファイバーは、集光ファイバーが束の中心にあり、6つの照射ファイバーに囲まれるように束に配置される。ファイバー束の先端は、バイオセンサー表面に照射の焦点を合わせる平行レンズに接続する。
【0109】
このプローブ配置では、照射および集光ファイバーは、並んでいる。従って、平行レンズがバイオセンサー表面に正しく光の焦点を合わせるように調整される場合、6つの明確に規定された照射の円領域、および中央の暗い領域が観察される。バイオセンサーは光を散乱せず、むしろ平行化したビームを反射するので、光は集光ファイバーに入射せず、共鳴シグナルは観察されない。6つの照射領域が中心領域に重なるまで平行レンズの焦点をずらすことのみにより、集光ファイバーに光が反射することとなる。焦点がずらされ、わずかに平行でなくなった光のみがシグナルを発生させるので、バイオセンサーは単一の入射角ではなく、様々な入射角で照らされる。様々な入射角は、図19に示す依存性により共鳴波長の混合をもたらす。それ故、広い共鳴ピークが、他に可能でない限り測定される。
【0110】
従って、照射および集光ファイバープローブが同じ光学経路を空間的に共有することが望ましい。いくつかの方法を用いて、照射および集光光学経路を共通にすることができる。例えば、単一の照射ファイバーを、バイオセンサーに光を導く光源にその第1の末端で接続し、単一の集光ファイバーを、バイオセンサーから反射した光を導く検出器にその第1の末端で接続し、各々をそれらの第2の末端で、照射器および集光器の両方として作用する第3のファイバープローブに接続することができる。第3のファイバープローブは、バイオセンサーに垂直の入射角で配向し、対向伝搬照射および反射光学シグナルを支持する。このような検出システムの例を、図18に示す。
【0111】
検出の他の方法には、光源に接続する単一の照射ファイバーを、検出器に接続する集光ファイバーに90度の角度で配向することを可能にするビームスプリッタの使用が含まれる。光は、照射ファイバープローブを通じてビームスプリッタに導かれ、これはバイオセンサーに光を導く。反射した光は、ビームスプリッタに再び導かれ、これは光を集光ファイバープローブに導く。このような検出装置の例を、図20に示す。ビームスプリッタは、照射光および反射光がビームスプリッタとバイオセンサー間の共通の光学経路を共有することを可能にし、これにより完全に平行な光が焦点をずらすことなく使用することができる。
【0112】
角度の走査
本発明の検出システムは、バイオセンサー表面の平行化された白色光照射および反射したビームの共鳴ピークの光学的分光学測定に基づく。バイオセンサー表面の分子結合は、ピーク波長の値の変位により示される一方、波長の増加は、分子吸着の増加に対応する。
【0113】
理論的モデル化および実験データに示されるように、共鳴ピーク波長は、検出光ビームの入射角に強く依存する。図19は、本発明のバイオセンサーのモデルとしてこの依存性を示す。共鳴ピーク波長の角度依存性のために、入射白色光は、よく平行化されていることが必要である。光ビームの角度の分散は、共鳴ピークを広げ、バイオセンサーの検出感度を落とす。さらに、分光学測定からのシグナル品質は、光源の出力および検出器の感度に依存する。高いシグナル対ノイズ比を得るために、各々の検出位置に対して過剰に長い積算時間を必要とし、それ故バイオセンサー平面を読みとるために総時間を長くすることとなる。回転可能なレーザー源を格子共鳴の検出のために用いることができるが、高価である。
【0114】
本発明の1つの態様として、これらの不利益には、バイオセンサーの照射のためのレーザービーム、および反射したビーム出力の測定のための光検出器の使用により取り組んでいる。走査ミラー装置がレーザービームの入射角を変化させるために用いることができ、また光学システムが入射レーザービームの平行を維持するために用いられる。例えば、「光学走査」(Gerald F. Marchall ed., Marcel Dekker (1991))を参照のこと。いずれの型のレーザー走査も使用できる。例えば、1秒間に約2線から約1000線の速度で走査線を発生できる走査装置は、本発明に有用である。本発明の1つの態様として、走査装置は、1秒間に約50線から約300線を走査する。
【0115】
1つの態様として、反射光ビームは、レーザー走査光学システムの一部を通過し、単一の光検出器で測定される。レーザー源は、例えば、780nm,785nm、810nm、または830nmの波長を有すダイオードレーザーでもよい。これらのようなレーザーダイオードは、150mWまでの出力レベルで容易に利用可能であり、それらの波長はSiフォトダイオードの高い感度に相当する。従って検出器は、フォトダイオードバイオセンサーに基づくことができる。このような検出システムの例を、図52に示す。光源100は、走査装置200に光を供給し、これは光学システム300に光を導く。光学システム300は、バイオセンサー400に光を導く。光は、バイオセンサー400から光学システム300に反射し、そしてこれは光を光シグナル検出器500に導く。検出システムの1つの態様を図21に示し、これは、走査ミラーがその角度位置を変化させる一方、表面のレーザービームの入射角はミラー角変位の名目上2倍変化することを示す。走査ミラー装置は、線形ガルバノメータでもよく、約2Hzから約120Hzまでの周波数および約10度から約20度の機械走査角で操作される。この例では、単一の走査が、約10m秒以内に完了することができる。共鳴ガルバノメータまたは多角形走査器も、用いることができる。図21に示した例には、角度走査のための単純な光学システムが含まれる。これは、これらの間に共通の焦点を有する1組のレンズからなる。光学システムは、レーザーの平行化および反射光ビームの集光の最適化した性能を発揮するように設計することができる。
【0116】
角度解像度は、ガルバノメータの規格、および反射した光の採取周波数に依存する。ガルバノメータの解像度を機械的に30秒と仮定すると、バイオセンサー角度走査に対応する解像度は、60秒、即ち0.017度である。さらに、100kサンプル/秒のサンプリング速度、および10m秒以内に20度の走査が見込まれる。結果として、定量化工程は、1000サンプルに対し20度、即ち1サンプルあたり0.02度である。この例では、PengおよびMorrisに示されているように(2次元格子からの回折における共鳴異常性の実験的例証、Optics Lett., 21:549 (1996))、0.2度の共鳴ピーク幅は、10個のデータポイントにより覆われ、その各々は検出システムの解像度に相当するであろう。
【0117】
このような検出システムの有利な点には、レーザービームによる入射光の優れた平行性、レーザーダイオードの高いビーム出力による高いシグナル対ノイズ比、分光計の代わりの単一素子の光検出器による低いコスト、および角度走査による共鳴ピークの高い解像度、が含まれる。
【0118】
ファイバープローブバイオセンサー
本発明のバイオセンサーは、多重モードファイバー光学プローブの先端に存在することができる。このファイバー光学プローブは、例えば、心臓動脈疾患、癌、炎症、および敗血症のような疾患および症状のための生体マーカーのin vivoでの検出を可能にする。(例えば、数百の格子周期を含む)単一のバイオセンサー素子は、ファイバー光学プローブの先端に加工することができ、またはガラス基板から加工してファイバー光学プローブの先端に結合することができる。図17を参照のこと。単一のファイバーが、照射を提供し、反射したシグナルの共鳴を測定するために用いられる。
【0119】
例えば、図18に示したものと同様のファイバープローブ構造を用いて、照射ファイバーおよび検出ファイバーを、その先端に埋め込まれたまたは結合したバイオセンサーを有する単一の対向伝搬ファイバーに結合することができる。ファイバー光学プローブは、例えば、ヒトの身体等の、哺乳動物の身体に挿入される。照射と反射したシグナルの検出は、プローブが体内に挿入されている間にすることができる。
【0120】
数学的な共鳴ピークの決定
バイオセンサーの感度は、材料がバイオセンサー表面に結合するときの共鳴ピーク位置の変位により決定される。スペクトルのノイズの固有値のために、分析曲線のよく規定される転換点(即ちピーク)を決定する工程を用いることが好ましい。さらに、分析表現に対応するピークは、サブサンプリング間隔の精度より大きく決定されることが好ましく、より大きな感度を提供できる。
【0121】
本発明の1つの態様は、色測定共鳴バイオセンサーにより共鳴反射率スペクトルの結合パートナーに対する共鳴ピーク位置を決定する方法を提供する。その方法は、複数の色測定共鳴バイオセンサーまたは複数のバイオセンサーの別個の位置に対する1組の共鳴反射率データを選択することを含む。1組の共鳴反射率データは、光源により色測定共鳴回折格子表面を照らし、あらかじめ決められた入射角における反射した光を測定することにより採取される。色測定共鳴回折格子表面は、結合パートナーが分子ラベルを用いることなく検出できるように、1またはそれ以上の特異的結合物質に対する表面結合プラットフォームとして用いられる。
【0122】
1組の共鳴反射率データの選択の工程は、1組の共鳴反射率データ:
i=1、2、3、...n、に対して、xiおよびyi
を選択することを含むことができ、ここで、xiは、色測定共鳴回折格子表面に結合した1またはそれ以上の特異的結合物質の第1の反射率スペクトルを含む第1の測定値であり、yiは、複数の結合パートナーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む色測定共鳴回折格子表面に適用された後の1またはそれ以上の特異的結合物質の第2の反射率スペクトルを含む第2の測定値であり、nは、採取された測定値の全数量である。
【0123】
1組の共鳴反射率データは、2つの測定値の複数の組を含み、ここで第1の測定値は、色測定共鳴回折格子表面に結合する1またはそれ以上の特異的結合物質の第1の反射率スペクトルを含み、第2の測定値は、1またはそれ以上の結合パートナーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む色測定共鳴回折格子表面に適用された後の1またはそれ以上の特異的結合物質の第2の反射率スペクトルを含む。第1および第2の測定値間のピーク波長の違いは、1またはそれ以上の特異的結合物質に結合した結合パートナーの量の測定値である。色測定共鳴バイオセンサーの感度は、1組の共鳴反射率データにおける2つの測定値の複数の組の共鳴ピーク位置の変位により決定することができる。
【0124】
2つの測定値の複数の組からの第2の測定値の最大値は、複数の結合パートナーの1組の共鳴反射率データから決定され、ここで最大値には共鳴反射率データに含まれる固有のノイズが含まれる。第2の測定値の最大値は、
すべてのi≠kに対して、(yk>=yi)
となるような最大値ykを決定することを含むことができる。
【0125】
最大値があらかじめ決められた閾値より大きいかどうかが決定される。これは、例えば、1組の共鳴反射率データの平均値を計算すること;1組の共鳴反射率データの標準偏差を計算すること;および((yk−平均値)/標準偏差)があらかじめ決められた閾値より大きいかどうか決定すること;により計算することができる。あらかじめ決められた閾値は、使用者により決定することができる。使用者はどの程度の感度が望まれるのかを決定し、それに従いあらかじめ決められた閾値を設定しうる。
【0126】
最大値があらかじめ決められた閾値より大きい場合、決定した最大値の周囲の曲線適合領域が規定される。決定した最大値の周囲の曲線適合領域を規定する工程は、例えば、
(2w+1)ビンの曲線適合領域を規定すること、ここでwは、あらかじめ決められた正確な値であり;
(xi,k−w<=i<=k+w)を抽出すること;および
(yi,k−w<=i<=k+w)を抽出すること;
を含むことができる。曲線適合処理は、曲線適合領域周囲の曲線を適合させることにより行われ、ここで曲線適合処理は、共鳴反射率データに含まれたあらかじめ決められた量の固有のノイズを除去する。曲線適合処理は、例えば、
gi=lnyiを計算すること;
2次多項式適合をgiに行い、(xi,k−w<=i<=k+w)で規定されるg’iを得ること;
2次多項式適合から、(ax2+bx+c)の係数a,bおよびcを決定すること;および
y’i=eg’iを計算すること;
を含むことができる。最大共鳴ピークの位置は、適合した曲線上で決定され、これには、例えば、最大共鳴ピークの位置(xp=(−b)/2a)を決定することを含むことができる。最大共鳴ピークの値が決定され、ここで最大共鳴ピークの値は、1またはそれ以上の結合パートナーへの1またはそれ以上の特異的結合物質の生体分子の結合量を同定するために用いられる。最大共鳴ピークの値は、例えば、y’pにおけるxpの値を決定することを含むことができる。
【0127】
本発明の1つの態様は、色測定共鳴バイオセンサーにより、共鳴反射率スペクトルの結合パートナーの共鳴ピーク位置を決定する方法をプロセッサーに実行させるための指示をその中に保持するコンピュータ読みとり可能媒体を含む。コンピュータ読みとり可能媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、有機メモリー、およびプロセッサーにより読みとり可能な他のいずれの揮発性(例えば、ランダムアクセスメモリー(「RAM」)または不揮発性(例えば、リードオンリーメモリー(「ROM」)大量保持システムを含むことができる。コンピュータ読みとり可能媒体は、共同または相互接続されたコンピュータ読みとり可能媒体を含み、これはプロセッシングシステムに排他的に存在し、またはプロセシングシステムの一部分であるかまたはこれらか離れた多重相互接続プロセシングシステムに分配される。
【0128】
以下は、例証の目的のためのみに提供されるものであり、上記の広い用語として記載された本発明の範囲を限定するものではない。この開示に引用されたすべての参考文献は、参照するとにより本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0129】
実施例1: SWSバイオセンサーの加工
バイオセンサー加工の例は、プラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)による窒化ケイ素の薄層(180nm)で被覆された平面ガラス基材から始まる。
【0130】
望む構造は、前述したように、薄いフォトレジスト膜を3つのレーザービームに干渉光により暴露することによりフォトレジストに最初に作成される(Cowen、「多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフ格子アレイの記録と大規模複製」、周期構造、回折格子、およびモアレ現象IIの応用、理論、および加工に関する国際会議、Lerner, ed., Proc. Soc. Photo-Opt. Instrum. Eng., 503, 120-129, 1984; Cowen, 「ホログラフハニカムマイクロレンズ」Opt. Eng. 24, 796-802 (1985); Cowen & Slafer, 「フィルムシステムにおける写真乳化粒子の秩序化のためのホログラフミクロパターンの記録および複製」 J. Imaging Sci. 31, 100-107, 1987)。フォトレジストの非線形エッチングの特徴は、図22に示すように、六角形格子内の穴のパターンを作成するために暴露した膜を現像するのに用いられる。フォトレジストパターンは、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて窒化ケイ素層に写される。フォトレジストは除去され、スピンオンガラス(SOG)の被覆層が窒化ケイ素格子の空いた領域を満たすように適用される(ハネウェルエレクトロニックマテリアルズ、サニーベール、カリフォルニア州)。完成したバイオセンサーの上面構造を、図23に示す。完成した部品の写真を図24に示す。
【0131】
実施例2
SRVDバイオセンサーは、ビニルに金属マスター板を打ち抜くことにより5つの円形分散格子ホログラムを作ることにより作成した。円形ホログラムは切り出され、ガラスのスライドにのり付けされた。スライドは、1000オングストロームのアルミニウムで被覆された。空気中での格子の共鳴波長は〜380nmであり、それ故、反射した色は見られない。格子が水で被覆される場合、薄い青い反射が観察される。格子が液体で被覆されている間、または特異的結合物質および/または結合パートナーが構造を被覆する場合、反射した波長変位が観察でき測定できる。
【0132】
タンパク質およびバクテリアの双方は、高濃度でSRVDバイオセンサーの表面に固定化され、波長変位が測定された。各々の材料には、20μlの滴がバイオセンサーの別個の位置に置かれ、空気中で乾燥された。1μg/mlのタンパク質濃度で、直径1cmの円を被覆するために20μlの滴を広げ、約2×10−8グラムの材料を堆積させた。表面密度は、25.6ng/mm2である。
【0133】
高濃度のタンパク質の固定化には(バイオセンサー4)、40mlDI H2O中0.8gウシ血清アルブミン(BSA)の10μl滴が、バイオセンサー表面の直径1cmの円を被覆するように広げられる。滴は、2.5e−6g/mm2の密度で、0.0002gのBSAを堆積する。タンパク質の堆積の後、バイオセンサー4は、空気中で緑色の共鳴を有した。
【0134】
バクテリアの固定化には(バイオセンサー2)、NECKボレリアライム病バクテリア(1.8e8 cfu/ml)の20μl滴が、バイオセンサー表面に堆積された。バクテリアの堆積の後、バイオセンサーは、空気中で灰色に見える。
【0135】
低濃度のタンパク質の固定化には(バイオセンサー6)、DI H2O中0.02%のBSA(40mlDIH2O中0.8gBSA)の10μl滴が、直径1cmの円を被覆するように広げられる。滴は、2.5e−8g/mm2の密度で、0.000002gのBSAを堆積する。タンパク質の堆積の後、バイオセンサー6は、空気中で灰色に見える。
【0136】
上記の処理によりもたらされる表面修飾の範囲で定量的データを得るために、バイオセンサーは、分光計を用いて測定された。
【0137】
緑色の共鳴シグナルは、高濃度のBSAが堆積したバイオセンサー(バイオセンサー4)ですくに視覚的に観察されたので、これは空気中で測定された。図25は、タンパク質が堆積する前は何も存在しなかったところに緑色の波長で540nmおよび550nmに2つのピークを示し、タンパク質薄膜の存在が表面レリーフ構造の共鳴波長の強い変位をもたらすのに充分であることを示している。
【0138】
視認できる共鳴波長が低濃度のタンパク質を適用したスライド(バイオセンサー6)について空気中で観察されなかったので、表面の蒸留水とともに測定し、タンパク質処理をしていないバイオセンサーと比較した。図26は、タンパク質を適用したスライドの共鳴波長が、処理されていない水で被覆されたスライドに比べ緑色に変位したことを示す。
【0139】
最後に、ライム病バクテリアBorrelia burgdorferを含む水滴が、格子構造に適用され、空気中で乾燥された(バイオセンサー2)。バクテリアの堆積後空気中では視覚的に観察される共鳴が起こらなかったので、バイオセンサーは、表面の蒸留水とともに測定され、他の処理を受けていない水で被覆されたバイオセンサーと比較した。図27に示すように、バクテリアの適用は、長い波長への共鳴周波数変位をもたらす。
【0140】
実施例3:バイオセンサーのコンピュータモデル
生体材料がその表面に吸着したときに引き起こされる反射した波長の変位を測定することにより、共鳴格子構造がバイオセンサーとして使用することができるという概念を論証するために、図1に示した構造がコンピュータによりモデル化された。論証の目的のために、選択された基材はガラスである(n基板=1.50)。格子は、510nmの周期、および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%が窒化ケイ素四辺で被覆される一方、残りは四辺の間の領域である)の窒化ケイ素四辺(t2=180nm、n2=2.01、κ2=0.001)の2次元パターンである。窒化ケイ素四辺の間の領域は、低屈折率材料により満たされている。同じ材料がまた四辺を被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmで窒化ケイ素四辺を被覆するガラス層が選択された(n1=1.40)。生体材料の堆積によるこの構造の反射した波長の効果を観察するために、種々の厚さのタンパク質(nbio=1.5)がガラス被覆層上に添加された。
【0141】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0142】
コンピュータシミュレーションの結果を、図28および図29に示す。図28に示すように、タンパク質が表面に存在しない場合は、共鳴構造は、780nm近くの、単一波長のみを表面から反射することができる。半最大値におけるピーク幅が〜1.5nmなので、〜0.2nmの共鳴波長変位は、容易に解像されうる。図28はまた、より多くのタンパク質が構造表面に堆積すると共鳴波長が長波長に変位することを示す。2nmのタンパク質厚の変化は、容易に観察される。図29は、タンパク質被覆厚に対する共鳴波長の依存性をプロットする。タンパク質厚と共鳴波長の線形に近い相関が観察され、タンパク質吸着を測定するこの方法が定量データを提供できることを示している。シミュレートされた構造として、図29は、全堆積タンパク質層が〜250nmを超えると、波長変位反応が飽和になることを示す。この堆積した材料の検出上限は、いずれの型の生体分子アッセイに対しても充分なダイナミックレンジを提供する。
【0143】
実施例4:バイオセンサーのコンピュータモデル
本発明の他の態様として、図30に示されたバイオセンサー構造は、コンピュータによりモデル化された。例示の目的として、選択された基板は、窒化ケイ素、硫化亜鉛、酸化タンタル、または2酸化チタンのような高屈折率材料の層で被覆されたn基板=1.454のガラスであった。この場合、窒化ケイ素(t3=90nm,n3=2.02)を用いた。格子は、510nmの周期、および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%がフォトレジスト四辺で被覆されている一方、残りが四辺の間の領域である)のフォトレジスト四辺(t2=90nm、n2=1.625)の2次元パターンである。フォトレジスト四辺間の領域は、ガラス、プラスチック、またはエポキシのような低屈折率材料で満たされている。同じ材料がまた四辺の被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmでフォトレジスト四辺を被覆するガラス層が選択された。特異的結合物質の堆積によるこの構造の反射した波長への効果を観察するために、種々の厚さのタンパク質(nbio=1.5)が、ガラス被覆層上に添加された。
【0144】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0145】
コンピュータシミュレーションの結果を図31および図32に示す。タンパク質が表面に存在しない場合、共鳴構造は、805nm近くの、単一波長のみを表面から反射することができる。半最大値におけるピーク幅が<0.25nmなので、1.0nmの共鳴波長変位は、容易に解像されうる。図31はまた、より多くのタンパク質が構造表面に堆積すると共鳴波長が長波長に変位することを示す。1nmのタンパク質厚の変化は、容易に観察される。図32は、タンパク質被覆厚に対する共鳴波長の依存性をプロットする。タンパク質厚と共鳴波長の線形に近い相関が観察され、タンパク質吸着を測定するこの方法が定量データを提供できることを示している。
【0146】
実施例5:センサー読みとり装置
反射した共鳴を検出するために、図33に示すように、直径400マイクロメーターのファイバー光学装置および平行レンズを通じてバイオセンサー表面の直径〜1mmの領域に、白色光源を照射することができる。より小さいかまたはより大きい範囲が、照射装置および異なるレンズの使用を通じて採取されうる。6つの検出ファイバの群が、分光計(オーシャンオプティクス、ダニーディン、フロリダ州)による分析のための反射した光を集めるために、照射ファイバーのまわりに束にされる。例えば、分光計は、サンプリングビン間の解像度が〜0.14nmで、800nmの波長で中心におくことができる。分光計は、各々の測定で25−75ミリ秒間反射したシグナルを積算する。バイオセンサーは、バイオセンサー表面の異なる領域が正方形に位置できるように、x−y作動ステージに設置される。
【0147】
同等な測定が、装置の上面を照らすこと、または透明な基板の底面を通じて照らすことの何れかにより、行うことができる。バイオセンサー表面が液体で浸漬されている場合は、背面を通じた照射が好ましく、また、バイオセンサーが底面、例えばミクロウェルプレートに取り込まれる場合、背面を通じた照射は、バイオセンサーの測定に最も互換性がある。
【0148】
実施例6:共鳴反射の実証
図34に、実施例5に記載された装置を用いた図1に示すようなバイオセンサーから採取された共鳴反射率スペクトルを示す。共鳴の波長(λピーク=772.5nm)を、コンピュータモデルにより予測された共鳴波長(λピーク=781nm)と比較し、測定された反射率効率(51%)は、予測された効率(70%)に匹敵するものである。測定された特徴と予測された特徴との最も大きな不一致は、共鳴ピークの線幅である。共鳴の半最大値における測定された完全幅(FWHM)は6nmである一方、予測されたFWHMは1.5nmである。示されるように、測定された大きなFWHMの主な原因は、照射光学装置の平行化であり、これは容易に訂正することができる。
【0149】
その表面に接触する材料の屈折率の違いを検出する共鳴構造の能力の基本的な例証として、バイオセンサーは、よく特徴づけられた光学特性の一連の液体に暴露された。用いられた液体は、水、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、およびDMFである。バイオセンサーは、各々の液体の小滴に向けて置かれ、共鳴波長がバイオセンサー背面に向けられたファイバー照射/検出プローブにより測定された。バイオセンサー表面が種々の屈折率の液体に暴露される場合につき、表1に、計算されたものおよび測定されたピーク共鳴波長を示し、測定されたものと理論的な検出感度との相関を示す。表1に示されるように、測定された共鳴ピーク位置および測定された共鳴波長変位は、予測された値とほぼ同一である。この例は、バイオセンサーの感度の基礎となるものを示し、表面に接触する材料の変化による波長の変位を予測するコンピュータモデルを検証するものである。
【0150】
【表1】
【0151】
同様に、バイオセンサーは、種々のバッファー溶液間の屈折率の違いを測定することができる。例として、図35に、水中のウシ血清アルブミン(BSA)の濃度によるピーク波長の変化を示す。共鳴は、バッファーの滴に向けられて置かれたバイオセンサーにより測定され、各々の測定の間に水で洗い流された。
【0152】
実施例7:固定化されたタンパク質の検出
実施例6に示された検出実験が、液体溶液の屈折率のわずかな違いを測定するバイオセンサーの能力を示す一方、バイオセンサーは、バイオセンサー表面に化学的に結合する特異的結合物質および結合パートナーを測定することを意図する。その表面の生体分子を定量するバイオセンサーの能力を示すために、種々の濃度でPBSに溶解させたBSAの滴を、図1に示すようなバイオセンサーに適用した。3μlの滴が空気中で乾燥され、直径〜2mmの領域に分配された少量のBSAを置いた。各々のバイオセンサー位置のピーク共鳴波長は、滴の堆積の前後で測定され、ピーク波長変位が記録された。図37を参照のこと。
【0153】
実施例8:1またはそれ以上の特異的結合物質の固定化
以下のプロトコルを色測定共鳴反射バイオセンサーに用い、アミン官能基で表面を活性化した。アミン基は、いくつかの型のリンカー分子のこれに続く共有結合のための多目的表面として使用することができる。
【0154】
本発明のバイオセンサーは、ピラニアエッチング液(70/30%(v/v)濃硫酸/30%過酸化水素)中に12時間浸漬することにより、清浄される。バイオセンサーは、水で完全に洗浄された。バイオセンサーは、乾燥アセトン中3%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液に1分間漬けられ、乾燥アセトンで洗い流され、空気乾燥された。そして、バイオセンサーは、水で洗浄された。
【0155】
半定量的方法を用いて、バイオセンサー表面のアミノ基の存在が確認される。アミノ官能化バイオセンサーの各々のバッチからの1つのバイオセンサーは、pH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム5mLで、短時間洗浄する。その後、バイオセンサーを、0.1mMスルホ−サクシニミジル−4−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ブチレート(s−SDTB、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)を含むpH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム5mLに漬け、30分間激しく振とうする。s−SDTB溶液は、3.0mgのs−SDTBを1mLのDMFに溶解し、pH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム50mLで希釈することにより調製される。30分のインキュベーションの後、バイオセンサーを、20mLのddH2Oで3回洗浄し、その後30%過塩素酸5mLで処理する。オレンジ色した溶液の発色は、バイオセンサーがアミンでうまく誘導化されたことを示し、未処理のガラスのバイオセンサーは、色の変化が観察されない。
【0156】
上記工程に続く過塩素酸処理後の溶液の495nmにおける吸光度は、表面のアミン基の量の指標として用いることができる。1組の実験では、吸光度は、シグマスライド、セルアソシエイトスライド、および自家製バイオセンサースライドに対して、それぞれ0.627、0.647、および0.728であった。これは、バイオセンサー表面のNH2活性化のレベルが、活性化した市販のミクロアレイガラススライドに匹敵することを示す。
【0157】
アミンによりバイオセンサーを活性化する上記のプロトコルに続いて、リンカー分子をバイオセンサーに結合させることができる。架橋剤を選択する場合、反応性基の選択性、スペーサーアームの長さ、溶解度、および切断性のような問題を考慮すべきである。そして、リンカー分子は、結合パートナーの特異的認識のために用いられる特異的結合物質に結合する。例として、以下のプロトコルを用いて、ビオチンリンカー分子をアミン活性化バイオセンサーに結合させた。
【0158】
ビオチンによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
アミン被覆バイオセンサーをPBS(pH8.0)で3回洗浄する。PBSバッファー(pH8)中、濃度0.5mg/mlで、スルホ−サクシニミジル−6−(ビオチンアミド)ヘキサノエート(スルホ−NHS−LC−ビオチン、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)溶液を調製する。2mlのスルホ−NHS−LC−ビオチン溶液を、各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で30分間インキュベートする。バイオセンサーをPBS(pH8.0)で3回洗浄する。スルホ−NHS−LC−ビオチンリンカーは、556.58の分子量および22.4Åの長さを有する。得られたバイオセンサーは、アビジンまたはストレプトアビジン分子を補足するために用いることができる。
【0159】
アルデヒドによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
0.1Mリン酸ナトリウム、0.05%アジドナトリウム、0.1%シアノボロハイドレートナトリウム中2.5%グルタルアルデヒド溶液、pH7.0、を調製する。2mlのスルホ−NHS−LC−ビオチン溶液を、各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で30分間インキュベートする。バイオセンサーをPBS(pH7.0)で3回洗浄する。グルタルアルデヒドリンカーは、100.11の分子量を有する。得られたバイオセンサーは、タンパク質および他のアミン含有分子を結合するために用いることができる。反応は、シッフ塩基の形成を通じて進行し、これに続く還元性アミノ化により安定な2級アミン結合が形成される。1つの実験では、本発明者らにより作成された被覆されたアルデヒドスライドを市販のアルデヒドスライド(セルアソシエイト)と比較した場合、本発明者らにより作成されたスライドでは、ストレプトアビジンおよび抗−ウサギIgGの10倍高い結合が観察された。
【0160】
NHSによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)中25mMのN,N’−ジサクシニミジルカーボネート(DSC、シグマケミカルカンパニー、セントルイス、ミズーリ州)を調製した。2mlのDSC溶液を各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で2時間インキュベートした。バイオセンサーをPBS(pH8.5)で3回洗浄した。DSCリンカーは、256.17の分子量を有する。得られたバイオセンサーは、ヒドロキシル−またはアミン−含有分子を結合するために用いることができる。このリンカーは、入手可能な最も小さい均一2官能性NHSエステル架橋剤の1つである。
【0161】
上に規定したプロトコルに加えて、異なる型の生体分子に対するアッセイ能力を最適化する、多くのさらなる表面活性化および分子リンカー技術が報告されてきた。これらの最も一般的なものは、アミン表面、アルデヒド表面、およびニッケル表面である。そして、活性化された表面は、表2に示すように、いくつかの異なる型の化学リンカーをバイオセンサー表面に結合するために用いることができる。アミン表面がいくつかの型のリンカー分子を結合するために用いられる一方、アルデヒド表面はさらなるリンカーを必要とせずにタンパク質を直接結合するために用いられる。ニッケル表面は、取り込まれたヒスチジン([his])タグを有する分子を結合するために、排他的に用いられる。ニッケル活性化表面による「his−タグ化」分子の検出は、よく知られている(Sigal et al., Anal. Chem. 68, 490 (1996))。
【0162】
表2は、バイオセンサーを調製し、使用するために用いられる工程、および表面活性化成分、化学リンカー分子、特異的結合物質および結合パートナー分子に利用可能な種々の選択肢の配列例を示す。HRPまたはストレプトアビジンのような大きな分子による増幅、および分子結合に利用可能な表面積を増加するデキストランやTSPSのような高分子材料の使用、を通じて検出したシグナルを増強する機会も存在する。
【0163】
【表2】
【0164】
実施例9:IgGアッセイ
生化学的結合の検出の最初の実証として、ビオチンリンカー分子の結合に続いて実施例8に記載されたアミノ表面成分での活性化により調製されたバイオセンサーでのアッセイを行った。ビオチンリンカーを用いて、PBS中濃度50μl/mlのストレプトアビジン溶液に室温で2−4時間暴露することによりストレプトアビジンレセプター分子を表面に共有結合させた。ストレプトアビジンレセプターは、いずれのビオチン化タンパク質をもバイオセンサー表面に結合させる能力がある。この例として、リン酸バッファー溶液(PBS)中3μl滴のビオチン化抗−ヒトIgGを、200μg/mlの濃度でバイオセンサー表面の4つの個別の位置に堆積させた。溶液は、PBSで完全に洗い流す前に60分間バイオセンサー上でインキュベートされた。4つの位置のピーク共鳴波長は、ビオチン活性化の後、ストレプトアビジンレセプターの適用後、およびah−IgG結合の後、測定された。図37は、ストレプトアビジンおよびah−IgG両方の添加が、共鳴波長の明確な測定可能な増加を生じることを示す。
【0165】
実施例10:ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ
ビオチンレセプター層によるストレプトアビジンの結合を検出するために、一連のアッセイを行った。バイオセンサーは、前述したように、まずアミノ成分により活性化し、その後NHS−ビオチンリンカー層を結合した。次に、PBS中3μl滴のストレプトアビジンを種々の濃度でバイオセンサーに適用した。滴は、PBSで完全に洗浄し、DI水で洗い流す前に、30分間バイオセンサー表面でインキュベートされた。ピーク共鳴波長を、ストレプトアビジン結合の前後で測定し、図38に共鳴波長変位を示す。ピーク波長とストレプトアビジン濃度の間に直線関係が観察され、この場合測定された最低のストレプトアビジン濃度は、0.2μg/mlであった。この濃度は、3.3nMのモル濃度に相当する。
【0166】
実施例11:タンパク質−タンパク質結合アッセイ
タンパク質−タンパク質相互作用の検出を実証するためにアッセイを行った。前述したように、バイオセンサーはアミノ成分およびNHS−リンカー層で活性化した。室温で60分間PBS中濃度50μg/ml溶液にバイオセンサーを暴露することにより、ヤギ抗−ビオチン抗体レセプター層をビオチンリンカーに結合し、その後PBSで完全に洗浄し、DI水で洗い流した。非特異的タンパク質とバイオセンサー表面に結合していないビオチンとの相互作用を防ぐために、バイオセンサー表面を、PBS中1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液に30分間暴露した。この工程の目的は、望まないタンパク質をバイオセンサーと相互作用することから「遮蔽」することである。図39に示され、誘発されるピーク波長の増加により示されるように、相当量のBSAがレセプター層に取り込まれる。遮蔽に続き、3μl滴の種々の濃度の抗−ヤギIgGを、バイオセンサー表面の個別の位置に適用した。滴は、DI水で完全に洗い流される前に30分間インキュベートされた。バイオセンサーのピーク共鳴波長を、遮蔽前、遮蔽後、レセプター層の結合後、および抗−ヤギIgGの検出後に、各々のスポットについて測定した。図39は、10μg/mlの抗−ヤギIgG濃度が容易に測定可能な波長変位を生じさせることを示す。
【0167】
実施例12:ラベル化されないELISAアッセイ
バイオセンサーアレイプラットフォームの他の応用としては、酵素ラベル、およびその後の発色した色素発生のための酵素特異的基質の相互作用を必要としない、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を実行する能力にある。図40は、バイオセンサーがインターフェロン−γ(IFN−γ)抗体レセプター分子によりIFN−γを検出するために調製された実験結果を示す。レセプター分子は、SMPTリンカー分子(ピアスケミカルカンパニー、ロックフォード、イリノイ州)によりNH2−活性化バイオセンサー表面に共有結合させた。NH2、SMPT、および抗−ヒトIFN−αレセプター分子の適用によるピーク共鳴波長変位は、図40に示すように、バイオセンサー表面の2つの近接する位置で測定された。2つの位置は、PBS中100μg/mlの濃度の2つの異なるタンパク質溶液に暴露された。第1の位置は、IFN−γに暴露され、これはレセプター分子に結合すると予測される一方、第2のものは、神経成長因子(NGF)に暴露され、これはレセプターに結合しないと予測される。30分間のインキュベーションの後バイオセンサーは、底面から照らすことにより測定され、一方上面は液体に浸漬したままであった。IFN−γに暴露された位置は、0.29nmの波長変位を示す一方、NGFに暴露された位置は、わずか0.14nmの波長変位しか示さなかった。従って、いずれの型の酵素ラベルや発色酵素反応を用いることなしに、バイオセンサーは、異なる型のタンパク質を含む溶液同士を区別することができた。
【0168】
実施例13:プロテアーゼ阻害剤アッセイ(キャスパーゼ−3)
医薬化合物のスクリーニングと関連する実験的背景における小分子の存在と切断を測定するバイオセンサーの能力を実証するために、キャスパーゼ−3プロテアーゼ阻害剤アッセイを行った。
【0169】
キャスパーゼ(システイン要求性アスパラギン酸プロテアーゼ)は、細胞死を媒介し、アポトーシス工程に重要なプロテアーゼの一員である。キャスパーゼ3、エフェクターキャスパーゼは、最も知られたキャスパーゼ関連基質を特異的に切断できるので、ほ乳類のキャスパーゼのなかで最も研究されたものである。キャスパーゼ3アッセイは、キャスパーゼ3による4アミノ酸ペプチド基質NHS−Gly−Asp−Glu−Val−Asp
p−ニトロアニリド(NHS−GDEVD−pNA)の加水分解に基づいており、これはpNA部分の放出をもたらす。
【0170】
【化1】
【0171】
GDEVDのN−末端に結合したNHS分子は、NHS−GDEVD−pNA複合体を、複合体のpNA部分を表面から外に向けて、バイオセンサーに共有結合できるようにする、反応性末端基を提供する。この方法の結合により、キャスパーゼ−3は、その基質切断部位に最適な接触ができるようになる。
【0172】
バイオセンサーは、3:1のH2SO4:H2O2溶液で洗浄し(室温、1時間)、次にシラン化(乾燥アセトン中2%シラン、30秒間)およびポリ−phe−ジン(PPL)層の結合(0.5MNaClを含むpH6.0のPBS中100μg/mlPPL、10時間)により、調製した。NHS−GDEVD−pNA複合体は、バイオセンサーをPBS中10mM溶液に暴露することにより結合した(pH8.0、室温、1時間)。ミクロウェルチャンバーを、バイオセンサー表面上で密封し、pNAの切断を1×酵素バッファー中(100ng/ml、室温、90分間)で、100μlのキャスパーゼ−3の添加により行った。キャスパーゼ3溶液への暴露の後、バイオセンサーをPBSで洗浄した。分光光度計を用いた別の組の実験を行い、バイオセンサー表面への複合体の結合、および表面結合複合体からのpNA分子の除去に対するキャスパーゼ−3の機能活性を確認した。
【0173】
バイオセンサーのピーク共鳴周波数を、NHS−GDEVD−pNA複合体の結合前、複合体(分子量=860Da)の結合後、およびキャスパーゼ3によるpNA(分子量=136)の切断後、に測定した。図41に示すように、ペプチド分子の結合は、その後のpNAの除去として、明瞭に測定できる。Δλ=0.016nmのpNA除去シグナルは、0.003nmの最小検出可能ピーク波長変位より5.3倍高い。添加された分子量と差し引かれた分子量との比(860Da/136Da=6.32)は、添加された、および差し引かれた材料について観察されたピーク波長変位の比(0.082nm/0.016nm=5.14)によく一致する。
【0174】
この実験結果は、バイオセンサーがラベルを用いることなく小さいペプチド(この場合、5量体ペプチド)を測定し、さらに酵素の活性を通じて分子の130Da部分の除去さえ検出できることを確認するものである。
【0175】
実施例14:タンパク質−タンパク質結合アッセイの反応動態
本発明のバイオセンサーは、液体に浸漬されている間に時間の関数として連続的に問うことができるので、バイオセンサーは、エンドポイント検出実験を実行すること、および生化学反応の動的情報を得ることの両方に利用することができる。例として、単一のバイオセンサー位置が表面に種々の結合パートナーを連続的に添加する過程を通じて連続的に測定される実験結果を、図42に示す。実験を通じて、検出プローブがバイオセンサー基板の背面を通じてバイオセンサーを照らす一方、生化学反応が装置の上面で実行される。添加された試薬が閉じこめられるようにゴムのガスケットにより測定されるバイオセンサー位置のまわりを密封し、バイオセンサー上面がバッファー溶液に浸漬されている間にすべての測定が行われた。初期洗浄の後、バイオセンサーは、NH2およびNHS−ビオチンリンカー分子で活性化された。図42に示すように、いくつかの異なる濃度(1、10、100、1000μg/ml)のヤギα−ビオチン抗体をバイオセンサーに連続的に添加し、ピーク共鳴波長をモニターしながら30分間インキュベートした。最大濃度のα−ビオチンIgGの適用後、いくつかの濃度で(0.1、1、10、および100μg/ml)でのα−ヤギIgGの添加を通じて、タンパク質の第2層をバイオセンサー表面に結合させた。再び、各々の溶液を30分間バイオセンサー上でインキュベートしながら、共鳴ピークを連続的にモニターした。図42は、共鳴ピークが各々のインキュベーション期間の終了時点で大きな波長に如何に変位するかを示す。
【0176】
図43は、図42からの最終共鳴ピーク転移の動的結合曲線を示し、ここでは100μg/mlのα−ヤギIgGがバイオセンサーに添加される。曲線は、動的結合実験で典型的に観察される型の特徴を示し、ここで基底周波数からの急激な増加が最初に観察され、次に反応の緩やかな飽和となる。この型の反応特徴は、この実験で測定されたすべての転移について観察された。図44に、IgG結合の動的結合測定値を示す。
【0177】
酵素活性を通じたバイオセンサー表面からの材料の除去も、容易に観察される。(ヤギ抗−ビオチンIgGおよび抗−ヤギIgGの2つのタンパク質被覆による)上記実験からのバイオセンサーが1mg/mlの濃度でプロテアーゼペプシンに暴露される場合、酵素は、両方のIgG分子を分離し、バイオセンサー表面からそれらを除去する。図45に示すように、表面からの結合した分子の除去は、時間の関数として観察することができる。
【0178】
実施例15:プロテオミクスの応用
本発明のバイオセンサーは、プロテオミクスの応用に用いることができる。バイオセンサーアレイは、例えば、タンパク質またはファージディスプレイライブラリーを含む結合パートナーの混合物を含む試験サンプルに暴露することができ、そしてバイオセンサー表面はすべての結合しなかった材料を除去するために洗い流される。バイオセンサーは、バイオセンサー表面のどの別個の位置が最も大きな結合度合いを有するかを測定するために、また結合した材料の定量的測定を提供するために、光学的に探査される。次に、バイオセンサーは、少量(例えば、<50マイクロリットル)に固定した容積の液体をバイオセンサー表面に接触させる「フローセル」に置かれる。選択されたバイオセンサーアレイの別個の位置のみから結合した材料を溶出するように、1つの電極が荷電される。結合した材料は、フローセル液体内で希釈される。フローセル液体は、バイオセンサー表面からポンプにより除去され、ミクロタイタープレートや他の容器内に保存される。フローセル液体は新しい溶液と置き換えられ、新しいバイオセンサー電極がその結合した結合パートナーを溶出するために荷電される。この工程は、目的とするすべてのバイオセンサーの別個の位置が溶出され、個別の容器に集められるまで繰り返される。試験サンプル液体がタンパク質の混合物を含んでいた場合、個別の容器内のタンパク質内容物は、エレクトロスプレータンデム質量分析計のような技術を用いて分析することができる。サンプル液がファージディスプレイライブラリーを含んでいた場合、個別の容器内のファージクローンは宿主株バクテリアとのインキュベーション、濃縮増幅、および関連するライブラリーDNA配列の分析を通じて同定することができる。
【0179】
実施例16:数学的な共鳴ピークの決定
この例は、異なる型の曲線を観察されたデータに適合させて観察することから、得られたいくつかの発見を議論するためのものである。
検定された第1の分析曲線は、以下に与えられる2次多項式である。
【数1】
この方程式の最小二乗法の解は、コスト関数により与えられる。
【数2】
この最小化は、以下の制約が課せられる。
【数3】
これらの制約を、a、b、およびcについて解くと、以下を得る。
【数4】
このような適合の1つの結果を図46に示し、得られたデータは点で示し、2次元多項式曲線適合は、実線で示す。
【0180】
経験的に、適合させた曲線は、ピーク近くで充分な上昇および下降を有しないように思える。この点についてよい特徴を提供する分析曲線は、ガウス曲線のような指数関数である。ガウス曲線様の適合を実行する簡単な方法は、曲線の形態が以下により与えられると仮定することである。
【数5】
この場合、上記の2次方程式は、y’を形成することにより利用可能であり、ここで、y’=lnyである。図46に、このような適合の結果を示す。図46の視覚的外観は、指数関数がより適合し、2次関数の適合のものに対して20%の改善を提供することを、示す。
【0181】
指数関数曲線が好ましいデータ適合方法であると仮定すると、曲線適合の強固さは、2つの方法:波長の変位に関するもの、およびシグナル振幅の誤差に関するもの、で検定される。
【0182】
分析的ピーク位置の感度を検定するために、曲線適合が実行される窓を真の最大値の左または右に10サンプリング間隔降下するように変化させる。得られた数学的に決定されたピーク位置の変位を、表3に示す。導かれる結論は、ピーク位置が、特定の選ばれた窓に関して適度に強固であり、〜1.5nmの変位で、わずか<0.06nm、または100分の4の感度で変化した対応するピーク位置であることである。
【0183】
データ中のノイズに関してピーク位置の感度を検定するためには、ノイズなしのシグナルを規定する必要があり、ノイズの増加量をシグナルに加え、ピーク位置へのこのノイズの影響が検定される。この実験の目的に対し理想的なシグナルは、平均10の共鳴スペクトル補足である。
【0184】
度合いが変化するガウス関数ノイズは、理想シグナルに重ねられる。このような作り出したノイズのあるシグナル各々に対し、2次指数関数曲線適合を用いてピーク位置が見積もられる。これは25回繰り返され、平均、最大、および最小ピーク位置が表に記入されるようになる。これは、広範囲のノイズ変動について−0の変動から750の変動まで−繰り返される。結果を図47に示す。
【0185】
【表3】
【0186】
この実験の結論は、ピーク位置の見積もりの決まった手順が、ノイズのあるシグナルに対し非常に強固であるということである。図47のピーク位置の全範囲は、750もの任意のノイズ変動が重ねられても、わずか1.5nmであり、ノイズの量はこれよりも実質的に大きく、従ってバイオセンサーで観察されたものもさらに大きい。ノイズのレベルにもかかわらず、平均ピーク位置は、理想位置の0.1nm以内である。
【0187】
これらの結果に基づいて、色測定共鳴バイオセンサーのピーク位置を数学的に決定するための基本的なアルゴリズムは、以下の通りとなる。
【0188】
【表4】
【0189】
要約すると、強固なピーク決定の決まった手順が実証され、統計的結果は、シグナル中のノイズ、および使用される窓決定工程に、ほとんど影響を受けないことを示す。これらの結果は、妥当なノイズの統計で、ピーク位置が1nmの一部分、おそらく0.1から0.05nmの小ささで、ほとんどの場合矛盾なく決定することができることを、導く。
【0190】
実施例17:均一アッセイの実証
SWSバイオセンサーは、その表面に接触する均一な液体の光学密度を検出し、Δn=4×10−5のわずかしか違わない屈折率により液体を区別することができる。2つの遊離の相互作用しないタンパク質を含む溶液は、2つの結合した相互作用するタンパク質を含む溶液とは異なる屈折率を有するので、タンパク質−タンパク質相互作用がいずれの種類の粒子タグや化学ラベルも用いない溶液中で起こる場合、SWSバイオセンサーにより測定できることとなる。
【0191】
3つの試験溶液を、比較のために調製した。
1.リン酸バッファー溶液(PBS)中アビジン、(10μg/ml)
2.PBS中アビジン(10μg/ml)+ウシ血清アルブミン(BSA)(10μg/ml)
3.PBS中アビジン(10μg/ml)+ビオチン化BSA(b−BSA)(10μg/ml)
【0192】
単一のSWSセンサーが、センサー間の偏りのいずれの可能性をも排除するためにすべての測定に用いられた。各々の試験溶液の200μlのサンプルがバイオセンサーに適用され、SWSバイオセンサーピーク共鳴波長値の測定の前に10分間平衡化された。サンプルごとに、バイオセンサーはPBSで完全に洗浄された。
【0193】
試験溶液のピーク共鳴波長値を、図51にプロットする。アビジン溶液が、アビジン+BSAおよびアビジン+b−BSA溶液の比較のためにベースライン参照として採取された。2つのタンパク質が相互作用しないと予測されるように、アビジンへのBSAの添加は、わずかな小さい共鳴波長の増加しかもたらさなかった。しかし、ビオチンとアビジンは強く結合するので(Kd=10−15M)、アビジン+b−BSA溶液は、大きな結合したタンパク質複合体を含むこととなる。従って、アビジン+b−BSA溶液のピーク共鳴波長値は、アビジン+BSAと比べて大きな変位を提供する。
【0194】
BSA(分子量=66kDa)およびb−BSA(分子量=68kDa)の分子量の違いは、非常に小さい。従って、相互作用しないタンパク質(アビジン+BSA)および相互作用するタンパク質(アビジン+b−BSA)を含む溶液間で測定された違いは、2つの分子間の結合相互作用の違いのみに起因する。結合した分子複合体は、結合した複合体を有しない溶液とは異なる光学屈折率の溶液をもたらす。光学屈折率の変化は、SWSバイオセンサーにより測定される。
【0195】
実施例18:センサーの設計と製造
1次元線形格子表面バイオセンサー構造には、共鳴反射光の波長より短い周期を有する格子が必要とされる(R.Magnusson, およびS.S.Wang,「光学フィルタのための新しい原理」 Appl. Phys. Lett., 61, No. 9, p. 1022, August, 1992; S.Peng およびG.M. Morris,「2次元格子からの共鳴散乱」J. Opt. Soc. Am. A, Vol. 13, No. 5, p. 993, May 1996)。図53に示すように、1次元線形格子表面構造は、高屈折率材料の薄膜により被覆された低屈折率材料から製造した。格子構造は、硬化したエポキシ層にマイクロ複製した。
【0196】
1次元線形格子表面構造は、以下のようにしてプラスチック基板材料の表面に作成した。まず、直径8インチのシリコン「マスター」ウエハを製造した。図54に示すように、フォトレジストを被覆したシリコンウエハの表面上に、直径9mmの円形格子レチクルにより遠紫外線フォトリソグラフィーを用いて段階的に繰り返し曝露して、550nm周期の線形格子構造をフォトレジスト中に規定した。曝露のステップ/リピート工程により、8列12カラムずつの標準型96ウェルミクロタイタープレートの2つのパターンを製造した。曝露されたフォトレジストは現像され、〜200nmの深さの反応性イオンエッチングを用いて格子構造がシリコンウエハに永久的に写された。エッチング後、フォトレジストは除去された。
【0197】
シリコンマスターウエハとポリカーボネートシートの部分との間にエポキシの薄膜を分配することにより、厚さ0.005インチのポリカーボネートのシート上に格子構造を複製した。液体エポキシは、マスター格子の形状に適合し、その後紫外線に曝露して硬化させた。硬化したエポキシは、ポリカーボネートシートに優先的に付着し、シリコンウエハからはがされる。
【0198】
センサーの製造は、硬化したエポキシ格子表面に120nmの酸化タンタルをスパッタリング堆積させることにより完了した。酸化タンタルの堆積後、3×5インチのミクロタイタープレート部分をセンサーシートから切り出し、アミン官能基により活性化して底なし96ウェルミクロタイタープレート(Corning Costar(登録商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツおよびグレイナー、ロングウッド、フロリダ)の底にエポキシにより結合させた。
【0199】
表面の活性化とレセプター分子の結合
高屈折率材料を堆積した後、バイオセンサーをアミン官能基により活性化して、種々の2重機能性リンカー分子を既知の配向により表面に結合させた。アミン活性化は、エタノール(アルドリッチ社製)中10%3−アミノプロピルトリエトキシシラン(ピアス社製)溶液に1分間センサーを浸漬することにより行い、その後簡単にエタノールで洗浄した。活性化したセンサーを、10分間70℃で乾燥させた。他の表面活性化分子としては、例えば、COOH、CHO、ポリマー、およびポリ−フェニル−リジンを挙げることができる。
【0200】
ピアス社の修正プロトコルによる簡単な色測定方法を用いて、表面のアミン基の密度を測定した。アミン活性化バイオセンサーは、50mM炭酸水素ナトリウム溶液(pH8.5)中に作成した0.1mMのスルホ−サクシンイミジル−4−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ブチレート(s−SDTB、ピアス社製)に浸漬し、30分間激しく振盪した。そして、バイオセンサーを脱イオン水にて洗浄した後、30%過塩素酸(シグマ社製)で処理した。バイオセンサーがアミン活性化されている場合は、溶液がオレンジ色に変わり、そうでない場合は、無色のままであった。この方法は、アミン基の表面密度が〜2×1014基/cm2であることを示した。
【0201】
1次元線形格子共鳴バイオセンサーを、よく特徴付けされたタンパク質−タンパク質結合相互作用の検出に用いた。この試験に選択されたタンパク質−タンパク質系は、レセプター分子としてバイオセンサー表面に固定化されたビオチンを用いた抗−ビオチンIgG抗体の検出であった。したがって、バイオセンサー表面へのビオチンの固定化のプロトコルは、アミン表面基とビオチンとの間で媒介として作用する2重機能性ポリエチレングリコール−N−ヒドロサクシンイミド(NHS−PEG)リンカー分子(シェアウォーターポリマーズ社製)を用いるものに発展させた。NHS−PEG分子は、特にNHSがアミン活性化表面に優先的に結合し、分子のPEG部分が表面から遠のくように配向して離れるように設計される。NHS−PEGリンカー分子は、近距離でバイオセンサー表面からビオチン分子を分離するように機能し、これによりそのコンホメーションを維持でき、したがって他の分子に対するアフィニティーを維持する。PEGはまた、バイオセンサーへのタンパク質の非特異的結合を防止する。
【0202】
ミクロタイタープレートの底へのアミン活性化バイオセンサーシートの結合後、個々のミクロタイターウェルを、3つの異なる表面官能基により調製することにより、抗−ビオチンIgGの検出のための充分な実験対照を提供した。第1に、アミン活性化表面をさらなる修飾なしに調べた。アミン活性化表面は、タンパク質に非特異的に結合するが、高いアフィニティーはないと予想される。第2に、NHS−PEG2重機能性リンカー分子を有するミクロタイターウェルを、調製した。NHS−PEG分子は、タンパク質に結合しない表面を提供すると予想される。第3に、NHS−PEG−ビオチンリンカー分子を有するミクロタイターウェルを、調製した。NHS−PEG−ビオチン分子は、抗−ビオチンIgGに強く結合すると予想される。
【0203】
ビオチンによりアミン被覆センサーを活性化するために、TPBS(リン酸バッファー溶液中0.01%TweenTM−20の参照バッファー溶液、pH8)中のNHS−PEG−ビオチン(シェアウォーター社製)溶液2mlを1.0mg/mlの濃度でバイオセンサー表面に添加し、37℃で1時間インキュベートした。同一の操作を、ビオチン無しのNHS−PEG(シェアウォーター社製)分子の結合に用いた。購入したすべての試薬は、包装されたとおりに使用した。
【0204】
96ウェルプレートスキャナー装置
バイオセンサーを照らし、反射シグナルを検出するために用いたシステムの模式図を、図55に示す。反射した共鳴を検出するために、ミクロタイタープレートの底を通じて公称の垂直入射において、直径100マイクロメーターの光ファイバーおよび平行化レンズを通じて、格子表面の直径〜1mmの領域を白色光源で照らした。平行化レンズを通過した後、入射光は線形偏光フィルターを通り、格子線に対して平行または垂直のいずれかに偏光した光のみにより線形格子が励起されるようになる。反射光は、検出プローブに戻る途中で再び偏光フィルターを通る。検出ファイバーは、照射ファイバーと一緒に束ねられ、分光計(オーシャンオプティクス社製)による分析のために反射光が集められる。一連の8つの照射/検出部は、線状に配置され、反射スペクトルがミクロタイターカラムの8つの全てのウェルに同時に集められるようになる。ミクロタイタープレートは、可動台に乗せられ、各々のカラムが連続して配置できるようになる。
【0205】
反射共鳴シグナルと反応の均一性
ミクロタイタープレートウェルに水がある場合の、p−偏光反射共鳴スペクトルを図56に示す。測定された最大波長値(PWV)は、857nmであり、共鳴ピークの半値幅(FWHM)は、1.8nmである。例えば、六角形格子上に2次元格子穴を用いて作成した構造と比較して、線幅が>3×低い単一の共鳴ピークのみが測定される。最も重要なことに、単一の狭い共鳴ピークの特徴は、96ウェルミクロタイタープレートバイオセンサーの全てのウェルにおいて、均一に得られる。
【0206】
表面における光学密度の変位を測定するバイオセンサーの能力は、既知の屈折率値を有する2つの溶液をミクロタイタープレートウェルに添加したときのバイオセンサーのPWVを測定し、2つの溶液間のPWV変位(ΔPWV)を計算することにより検定できる。1枚のプレートに渡るバイオセンサーの反応の均一性を測定するために、全ての96ウェルのPWVを水中(n=1.333)、さらにグリコール中(n=1.472)で測定した。変位係数σ=ΔPWV/Δnは、バイオセンサーの反応を他の設計や製造方法によるものと比較して利点を示すように規定した。全てのウェルについて水からグリコールへのPWVの平均変位は15.57nmであり、変位係数はσ=112nmであった。96センサーウェルについてのσの標準偏差は、1.07nmであり、大きな表面積に渡って非常に高い度合いのバイオセンサーの均一性が示された。
【0207】
タンパク質−タンパク質結合アッセイ
プラスチックバイオセンサーの操作を示すために、タンパク質−抗体アフィニティアッセイを行った。3つの別個のセンサー表面状態(NH2、NHS−PEG、NHS−PEG−ビオチン)のマトリックスを調製し、7種の濃度のヤギ抗−ビオチンIgG(シグマ社製)に曝露した。各々のマトリックスの位置は、別個のミクロタイタープレートウェルで測定し、全部で21ウェルを同時に測定した。NHS−PEGウェルはタンパク質に結合しないと予測されるので、試験サンプルの屈折率の効果や、アッセイ操作中の周囲の温度変動の効果のような一般的な様式の効果を相殺するために、参照として用いた。ここで報告されたデータは、数学的な補正を行っていない。
【0208】
図57は、化学官能基を固定化していないセンサーと比較して、バイオセンサー表面にNH2、NH2+(NHS−PEG)、およびNH2+(NHS−PEG−ビオチン)分子を結合させたことによる記録についてPWV変位をプロットした。エラーバーは、7つのミクロタイタープレートウェルについて記録されたPWV変位の標準偏差を示す。データは、バイオセンサーが清浄な表面とNH2を固定化したものとを区別することができ、さらにNHS−PEG(分子量=2000Da)分子の付加を明確に検出できることを示している。NHS−PEGとNHS−PEG−ビオチン(分子量=3400Da)を固定化した表面間の違いも、測定できる。
【0209】
図58は、種々の濃度の抗−ビオチンIgG(0〜80μg/ml)に曝露し、20分間インキュベートしたときのバイオセンサーウェルについての時間に対するPWV変位反応を示す。NHS−PEG表面(図58B)は、最も低い反応であり、アミン被覆表面(図58A)は、高い濃度の抗−ビオチンIgGと低いレベルで非特異的相互作用を示した。NHS−PEG−ビオチン表面(図58C)は、抗−ビオチンIgGと強い特異的相互作用を明確に示し、曝露された抗−ビオチンIgG濃度に比例して強いPWV変位を示した。
【0210】
図58Cから20分後のPWV変位の大きさを、抗−ビオチンIgG濃度に対してプロットして図59に示す。IgG濃度と測定されたPWV変位との間に、おおまかな直線関係が観察され、最も低濃度のIgG溶液(1.25μg/ml、8.33nM)が、陰性対照PBS溶液について明確に測定できる。
【0211】
実施例19:表面修飾層を含むバイオセンサー
表面修飾層を本発明の1次元格子または2次元格子バイオセンサーに付加することができる。表面修飾層は、バイオセンサーの高屈折率材料または被覆層上面に付加され、バイオセンサー表面への特異的結合物質の固定化に有用である。表面修飾層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、他のいずれものガラス(BK7,SF11,LaSF9,Ultran,FK3,FK5等)、および他のいずれもの金属酸化物を含むことができる。表面修飾層の厚さは、約5nmから約15nmでもよい。本発明の1つの態様において、高屈折率材料は、酸化タンタルである。
【0212】
酸化ケイ素は、DCスパッタリングにより本発明のバイオセンサーに被覆された。被覆の他の可能性のある方法としては、蒸発、レーザーアブレーション、化学気相蒸着、およびプラズマ増強化学気相蒸着等がある。NH2を、表面修飾層を有するバイオセンサーと、表面修飾層を有しないバイオセンサーに付加した。NH2反応性蛍光染料を用いて、バイオセンサーへのNH2の結合を視覚化した。図60を参照。表面修飾層からのより高い蛍光強度は、より高いNH2密度を示す。
【0213】
実施例20:水溶液中で高い安定性を有するバイオセンサーの設計
本発明のバイオセンサーは、使用中に水溶液に曝露することもできる。高屈折率材料層の下に界面層を付加することにより、水溶液中での安定性をバイオセンサーに付加できる。例えば、低屈折率格子材料等のプラスチック格子表面が高屈折率材料により被覆されている場合には、高屈折率材料と低屈折率材料との間に界面層を付加することができる。
【0214】
例えば、プラスチック格子表面と高屈折率光学材料との間に付着増強界面層を付加することによりバイオセンサーを構築した。付着とは、広範囲の環境条件において薄膜材料が堆積した材料にしっかりと結合して留まる能力を指す。例えば、本発明で用いられるバイオセンサー構造では、(窒化ケイ素、硫化亜鉛、酸化タンタル、または酸化チタンのような)高屈折率薄膜は、硬化したエポキシ材料から形成された格子表面構造上に堆積される。付着増強層(「結合層」または「界面層」と呼ばれる)なしでは、高屈折率材料は、液体による長期間の曝露などの厳しい実験条件下では格子表面構造から剥離する可能性がある。結合層材料は、下にある材料と高屈折率堆積材料の双方に強い付着性を有するように選択される。一般的には、結合層の厚さは、非常に薄くなるように選択され、埋め込まれた構造の光学特性を妨害しないようにする。結合層の厚さは、例えば、約1nmから約200nmの範囲である。この例では、結合層は、厚さ約5nmの酸化ケイ素層であり、プラスチック材料は、ポリエチレン(PET)、高屈折率光学材料は、酸化タンタルであった。結合層の他の材料としては、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、他のいずれものガラス(BK7,SF11,LaSF9,Ultran,FK3,FK5等)、または他のいずれもの金属酸化物である。バイオセンサーの安定性の能力は、酸化ケイ素界面層を付加することにより、水溶液中で向上した。図61を参照。向上したバイオセンサーの安定性の能力により、ノイズに対するシグナルの比を向上でき、これは、検出限界をより高感度にすることとなる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の相互作用を検出するための構成物および方法に関連する。検出は、ラベルを使用することなく起こり、ハイスループット方式により行われる。本発明は、また光学装置にも関連する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの配列決定の完了に伴い、分子生物学の次の大きな課題の一つは、DNAによりエンコードされる多くのタンパク質標的物が、他のタンパク質、小分子薬候補物質、並びに酵素および阻害因子の大きな宿主、とどのように相互作用するかを理解することになるであろう。例えば、Pandey & Mann,「遺伝子およびゲノム研究のためのプロテオミクス」 Nature, 405, p. 837-846, 2000; Leigh Anderson et al., 「プレテオミクス:基礎および応用生物学における応用」 Current Opinion in Biotechnology, 11, p. 408-412, 2000; Patterson, 「プレテオミクス:タンパク質化学の工業化」 Current Opinion in Biotechnology, 11, p. 413-418, 2000; MacBeath & Schreiber, 「ハイスループット機能決定のためのミクロアレイとしてのタンパク質のプリント」Science, 289, p. 1760-1763, 2000; De Wildtet al., 「抗体−抗原相互作用のハイスループットスクリーニングのための抗体アレイ」 Nature Biotechnology, 18, p. 989-994, 2000を参照のこと。この目的のため、多くの異なる生体分子の相互作用を高感度で同時に定量する能力を有する手段の、医薬の発見、プロテオミクス、および診断への応用が見出されるであろう。さらに、これらの手段として広範囲な使用を見出すためには、これらは簡単に使用でき、所有して操作するのに高価でなく、例えばポリヌクレオチド、ペプチド、小タンパク質、抗体、および細胞全体でさえ含みうる広範囲の分析物に適用できなければならない。
【0003】
オリゴヌクレオチド、抗体−抗原相互作用、ホルモン−レセプター相互作用、および酵素−基質相互作用を含む種々の生体分子複合体を検出するために、バイオセンサーが開発されてきた。一般的に、バイオセンサーは、2つの部品:高特異的認識素子および分子認識事象を定量可能なシグナルに変換する変換器、からなる。シグナル変換は、蛍光、干渉分光法((Jenison et al., 「光学被覆シリコン上での核酸標的の干渉に基づく検出」Nature Biotechnology, 19, p. 62-65; Lin et al., 「多孔性シリコン基材光学干渉計バイオセンサー」 Science, 278, p. 840-843, 1997)、および重力測定法(A. Cunningham, Bioanalytical Sensors, John Wiley & Sons (1998))を含む、多くの方法によりなされてきた。
【0004】
光学に基づく変換方法として、蛍光化合物による分析物のラベル化を必要としない直接方法は、容易にラベル化されない小分子やタンパク質の相互作用を研究するために相対的なアッセイの簡便性と能力のために注目される。直接光学方法には、表面プラスモン共鳴(SPR)(Jordan & Corn, 「化学的に修飾された金表面への静電生体高分子の吸着の表面プラスモン共鳴イメージング測定」 Anal. Chem., 69:1449-1456 (1997)、 格子カプラー(Morhard et al.,「光学回折による細胞検出のためのミクロパターンにおける抗体の固定化」 Sensors and Actuators B, 70, p. 232-242, 2000)、偏光解析法(Jin et al., 「生体分子相互作用の視覚化のためのイメージング偏光解析法に基づくバイオセンサーの概念」 Analytical Biochemistry, 232, p. 69-72, 1995)、エバネッセント波装置(Huber et al., 「直接光学免疫検出(感度と選択性)」Sensors and Actuators B, 6, p. 122-126, 1992)、および反射計(Brecht & Gauglitz, 「光学プローブおよび変換器」 Biosensors and Bioelectronics, 10, p. 923-936, 1995)が含まれる。これらの検出方法の理論的に予測される検出限界は、診断的に同等な濃度範囲に低下させて可能となることが、決定され、実験的に確認されてきた。しかし、現在のところ、これらの方法は、ハイスループット生体分子相互作用分析に最もしばしば用いられるミクロタイタープレートに基づく、またはミクロアレイに基づく基盤に容易に適合できる形態で、いずれの型のラベルをも用いずに高感度アッセイを実行できる市販のハイスループット装置を依然得る必要がある。従って、この分野では、これらの目的を達成できる構成物および方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出するための構成物および方法を提供することである。これおよび本発明の他の目的は、1またはそれ以上の以下に記載される態様により提供される。
【0006】
本発明の1つの態様は、バイオセンサーを提供する。バイオセンサーは、高屈折率を有する材料を含む1次元格子層、1次元格子層を支持する低屈折率材料層、および低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。1次元格子の断面周期は共鳴格子効果の波長より短い。他の態様において、バイオセンサーは、低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造、低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層、および低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率材料の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【0007】
1次元格子の断面形状は、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、階段型、v型、u型、逆v型、逆u型、または正方形でもよい。バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに、光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される。
【0008】
バイオセンサーの低屈折率材料には、ガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシが含まれる。高屈折率材料としては、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ぶことができる。1次元格子は、約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有することができる。
【0009】
1またはそれ以上の特異的結合物質を、別個の位置のアレイとして配置することができる。別個の位置は、直径約50−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質は、物理吸着または化学結合により高屈折率材料に固定化されることができる。1またはそれ以上の特異的結合物質は、その結合パートナーに結合することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質または結合パートナーは、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、タンパク質溶液、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、および生物学的サンプルから成る群より選ぶことができる。生物学的サンプルは、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ぶことができる。
【0010】
バイオセンサーは、ミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルのような、液体収容容器の内側表面を含むことができる。
【0011】
本発明の他の態様は、バイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射した光を検出する検出器を含み、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システムを提供する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと;および最大波長値(PWV)を検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、ここで高屈折率材料が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;およびバイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する。
【0014】
また、本発明のさらに他の態様は、酵素の活性を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上の酵素をバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを洗浄すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびPWVを検出すること、を含む。1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する。
【0015】
本発明の他の態様は、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法を提供する。その方法は、バイオセンサーを光で照らすこと、バイオセンサーからのPWVを検出すること、1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびバイオセンサーからのPWVを検出すること、を含む。PWVの違いが、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値となる。
【0016】
本発明のさらなる他の態様は、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法を提供する。その方法は、1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーをバイオセンサーに適用すること、バイオセンサーを光で照らすこと、およびバイオセンサーからのPWVを検出すること、を含む。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する。1またはそれ以上のタグは、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ぶことができる。1またはそれ以上のタグは、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応させることができる。
【0017】
本発明の他の態様は、高屈折率を有する材料を含む1次元または2次元格子層、1次元または2次元格子層を支持する低屈折率材料層、低屈折率材料層の反対側の1次元または2次元格子層の表面の表面修飾層、および1次元または2次元格子層の反対側の表面修飾層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質、を含むバイオセンサーを提供する。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。表面修飾層は、酸化ケイ素を含んでもよい。表面修飾層の厚さは、約5nmから約15nmでもよい。
【0018】
本発明のさらなる他の態様は、第1の表面上の1次元または2次元格子を含む格子層、格子層の第1の表面上の界面層、格子層の反対側の界面層表面上の高屈折率材料層、および界面層の反対側の高屈折率材料層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質、を含むバイオセンサーを提供する。バイオセンサーが照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。界面層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、ガラス、および金属酸化物から成る群より選択される材料を含むことができる。界面層は、約1nmから約200nmの厚さでもよい。
【0019】
従って、表面プラスモン共鳴、共鳴ミラー、および導波管バイオセンサーとは異なり、記載された構成物および方法は、バイオセンサー表面で同時に起こる数千の個々の結合反応を可能にする。この技術は、多数の生体分子相互作用を並行して測定する応用に有用であり、特に分子ラベルが試験中に分子の機能を変化させたり阻害する場合に有用である。タンパク質標的の医薬化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、およびプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のミクロアレイスクリーニングは、この方法により提供される感度と処理量を必要とされる応用の例となる。本発明のバイオセンサーは、例えば、プラスチックのエンボス加工やエポキシ複製加工を用いて大面積に作成することができ、従って、ミクロタイタープレートやミクロアレイスライドのような一般的な使い捨ての実験室アッセイのプラットフォームに安価に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aは、色測定共鳴反射率バイオセンサーに用いられる光学格子構造の1態様の模式図である。n基板は、基板材料を示す。n1は、被覆層の屈折率を示す。n2は、1次元または2次元格子の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、被覆層の厚さを示す。t2は、格子の厚さを示す。tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の層の厚さを示す。図1は、バイオセンサーの断面図を示す。
【図2】図2は、1次元線形格子表面構造の模式図を示す。
【図3】図3A−Bは、正方形(図3A)または穴(図3B)の長方形格子を含む2次元格子を示す。
【図4】図4は、シヌソイド的に変化する格子特徴を利用するバイオセンサーの断面図を示す。
【図5】図5は、エンボス加工された基板がZnSやSiNのような高屈折率材料で被覆されたバイオセンサーの断面図を示す。例えば、エポキシやSOGなどの任意の低屈折率材料の被覆層は、高屈折率材料の上面で層化され、1またはそれ以上の特異的結合物質は、被覆層に固定化される。
【図6】図6は、種々の型の生体分子レセプターをバイオセンサーに共有結合するために用いることができる対応する化学リンカー分子を有する、3つの型の表面活性化化学物質(アミン、アルデヒド、およびニッケル)を示す。
【図7】図7A−Cは、バイオセンサーの表面で検出されたDNAや、検出されたタンパク質のような結合パートナーの質量を増幅するために用いることができる方法を示す。
【図8】図8は、タンパク質単層のような吸着した材料が、SRVDバイオセンサーの反射した波長を如何に増加するかの図画描写を示す。
【図9】図9は、ミクロアレイとして用いられるバイオセンサーの例を示す。
【図10】図10A−Bは、色測定共鳴反射率バイオセンサーを取り込むことができる2つのバイオセンサーの形式を示す。図10Aは、ミクロタイタープレートに取り込まれたバイオセンサーを示す。図10Bは、ミクロアレイスライド形式のバイオセンサーを示す。
【図11】図11は、高い密度および処理量でアッセイを実行するためにバイオセンサープラットフォームを用いるアレイ概念のアレイを示す。
【図12】図12は、バイオセンサー電極のアレイの図を示す。単一の電極は、多くの格子周期を含む領域を含むことができ、いくつかの個別の格子領域は、同じ基板表面に存在することができる。
【図13】図13は、バイオセンサー電極のアレイの個別の格子領域を示すSEM写真を示す。
【図14】図14は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。電極表面近くの生体分子を引きつけるかまたははねつけることができる電位を、バイオセンサーに適用することができる。
【図15】図15は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。正電圧が電極に適用され、負電荷の生体分子がバイオセンサー表面に引きつけられる。
【図16】図16は、液体サンプルに浸漬されたバイオセンサー上面を示す。負電圧が電極に適用され、負電荷の生体分子が陰電極電圧を用いてバイオセンサー表面からはねつけられる。
【図17】図17は、in vivoでの生化学物質の検出のためのファイバープローブの先端に存在するバイオセンサーの例を示す。
【図18】図18は、光を照射してバイオセンサーから反射した光を集めるための2つの組み合わされたファイバーの使用例を示す。
【図19】図19は、検出ビームの入射角の関数としてのバイオセンサーの共鳴波長を示す。
【図20】図20は、照射する光および反射した光を、バイオセンサーへの共通の平行化した光学経路を共有できるようにするビームスプリッタの使用例を示す。
【図21】図21は、バイオセンサーの角度走査のシステムの例を示す。
【図22】図22は、フォトレジスト格子構造のSEM写真の平面図(中央および右上)と断面図(右下)を示す。
【図23】図23は、スピンオンガラスを窒化ケイ素格子に適用した後の格子構造のSEM断面写真を示す。
【図24】図24は、バイオセンサーチップの例を示す(1.5×1.5インチ)。円形の領域は、共鳴構造が規定された領域である。
【図25】図25は、空気中で測定された、高濃度でBSAが堆積したバイオセンサーの波長の関数としての応答を示す。タンパク質の堆積前は、バイオセンサーの共鳴波長は380nmであり、この実験に用いた装置では観測されない。
【図26】図26は、BSAが堆積したバイオセンサーと未処理ものとを比較した波長の関数としての応答を示す。両方の測定値は、バイオセンサー表面に水を用いて採取した。
【図27】図27は、水中で測定された、ボレリアバクテリアが高濃度で堆積したバイオセンサーの波長の関数としての応答を示す。
【図28】図28は、生体分子が表面に堆積した場合に長波長への共鳴の変位を示すバイオセンサーのコンピュータシミュレーションを示す。
【図29】図29は、タンパク質被覆厚に対する反射した波長のピークの依存性を示すコンピュータシミュレーションを示す。この特定のバイオセンサーは、応答が飽和し始める前に、250nmの堆積した生体材料のダイナミックレンジを有する。
【図30】図30は、バイオセンサーの1態様を示す。n基板は、基板の屈折率を示す。n1は、任意の光学被覆層の屈折率を示す。n2は、1次元または2次元格子の屈折率を示す。n3は、窒化ケイ素のような高屈折率材料の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、被覆層の厚さを示す。t2は、1次元または2次元格子の厚さを示す。t3は、高屈折率材料の厚さを示す。tbioは、特異的結合物質の層の厚さを示す。
【図31】図31は、種々の厚さのタンパク質が上面に取り込まれる場合の共鳴格子構造に対する波長の関数としての反射した強度を示す。
【図32】図32は、図30に示されたバイオセンサーについて、反射した波長とタンパク質被覆厚との直線関係を示す。
【図33】図33は、バイオセンサーの出力を読みとるために使用できる装置を示す。平行化した光源は、光学ファイバーを通じて垂直の入射角でバイオセンサー表面で検出される一方、第2の平行ファイバーが垂直の入射角で反射した光を集める。分光計は、波長の関数として反射率を記録する。
【図34】図34は、測定されたバイオセンサーの反射率スペクトルを示す。
【図35】図35は、水に溶解したタンパク質BSAの濃度に対する、液体中で測定されたピーク共鳴波長値の依存性を示す。
【図36】図36は、PBSに溶解したBSAの濃度に対するピーク共鳴波長値の依存性を示し、BSAはバイオセンサー表面で乾燥された。
【図37】図37Aは、ストレプトアビジンレセプター層の結合により生じたピーク共鳴波長変位の測定、およびそれに続くビオチン化IgGの検出を示す。図37Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図38】図38Aは、ビオチンレセプター分子に連結したNH2表面化学物質により活性化されたバイオセンサーについて、種々の濃度でのストレプトアビジンの検出結果を示す。図38Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図39】図39Aは、ヤギ抗体レセプター分子を用いた抗−ヤギIgGの検出のアッセイを示す。検出表面のBSA遮蔽は、バイオセンサーに取り込まれたBSAの質量のために、明瞭に測定可能なバックグラウンドシグナルを生じる。66nM濃度の抗−ヤギIgGは、バックグラウンドシグナル上で容易に測定される。図39Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図40】図40Aは、抗−ヒトIgG インターフェロン−ガンマレセプター分子、および神経成長因子(NGF)陰性対照を用いたインターフェロン−ガンマ(INF−ガンマ)のラベル化しないELISAアッセイを示す。図40Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図41】図41Aは、酵素キャスパーゼ−3を用いた5アミノ酸ペプチド(分子量=860)およびこれに続くpNAラベル(分子量=130)の切断を示す。図41Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図42】図42Aは、3つの個別のタンパク質層の結合の連続的モニターの間の液体中での共鳴ピークを示す。図42Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図43】図43Aは、図42に示されたデータから数学的に決定されたエンドポイントの共鳴周波数を示す。図43Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図44】図44Aは、IgG結合の動的結合測定値を示す。図44Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図45】図45Aは、バイオセンサー表面から、結合したタンパク質を切断するプロテアーゼの動的測定値を示す。図45Bは、バイオセンサーに結合した分子の模式図を示す。
【図46】図46は、共鳴ピークからの分光計データに対する放物線および指数関数の数学的適合の比較を示す。指数関数曲線適合が、ピーク共鳴波長を数学的に決定するために使用される。
【図47】図47は、測定されたスペクトルに人工的に加えたノイズに対する数学的に決定されたピーク共鳴波長の感度を示す。
【図48】図48は、電気伝導材料を取り込む共鳴光学バイオセンサーを示す。
【図49】図49は、1組の同心輪からなる表面反射または透過フィルター構造を示す。
【図50】図50は、格子のいずれの特定の位置に置く照射ビームも必要としない、図49の同心円構造に極近い穴の六角形格子(または突起物の六角形格子)を含む共鳴反射または透過フィルタ構造を示す。
【図51】図51は、試験溶液のピーク共鳴波長値のプロットを示す。アビジン溶液が、アビジン+BSAおよびアビジン+b−BSA溶液に対する比較の基底参照として採取された。2つのタンパク質が相互作用しないと予測されるので、アビジンへのBSAの添加は、わずかに小さい共鳴波長の増加しかもたらさない。しかし、ビオチンとアビジンは強く結合するので(Kd=10−15M)、アビジン+b−BSA溶液は、大きな結合したタンパク質複合体を含むこととなる。従って、アビジン+b−BSA溶液のピーク共鳴波長値は、アビジン+BSAに比べて大きな変位を提供する。
【図52】図52は、検出システムの模式図を示す。
【図53】図53A−Bは、バイオセンサーの製造に用いられる製造プロセスおよび1次元線形格子センサーの断面を示す。図53Aは、シリコンとプラスチックフィルムのシートとの間で、バイオセンサー構造をエポキシの薄膜に複製するのに用いられるシリコンマスターウエハを示す。エポキシが硬化した後、プラスチックシートをはがす。センサーの製造を完了するには(図53B)、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、または硫化亜鉛のような高屈折率誘電材料の薄膜を構造上に堆積する。
【図54】図54A−Cは、1次元線形格子導波モード共鳴フィルター「マスター」構造を製造するために用いられる線形格子構造(図54A;上面図)を示す。まず、直径8インチのシリコン「マスター」ウエハが製造される。図54Bに示されるように、フォトレジストを被覆したシリコンウエハの表面上に、直径9mmの円形格子レチクルにより遠紫外線フォトリソグラフィーを用いて段階的に繰り返し曝露して、550nm周期の線形格子構造をフォトレジスト中に規定する。図54Cは、曝露のステップ/リピート工程により8列12カラムずつの標準型96ウェルミクロタイタープレートの2つのパターンを製造したものを示す。曝露されたフォトレジストは現像され、〜200nmの深さの反応性イオンエッチングを用いて格子構造がシリコンウエハに永久的に写された。エッチング後、フォトレジストは除去された。
【図55】図55は、バイオセンサー構造を照らし、バイオセンサー構造からの出力を読み取るために用いられる計測器を示す。プローブ部は、2つの光学ファイバーを含む。第1のファイバーは、白色光源に接続してバイオセンサー表面に偏光した平行化光の小さなスポットを当てる。第2のファイバーは、分光計による分析のために反射光を集める。
【図56】図56は、水で満たされたミクロタイタープレートウェル中の1次元線形格子表面バイオセンサー構造についての、波長に対する反射強度を示す。
【図57】図57は、3つのバイオセンサー表面活性化状態についての、清浄な1次元線形格子表面バイオセンサー構造に対する最大波長変位を示す。エラーバーは、7つの別個のセンサーウェルについての変位の標準偏差を示す。
【図58】図58A−Cは、NH2、PEG、およびPEG−ビオチンで活性化された1次元線形格子表面バイオセンサー構造の、7種の濃度の抗−ビオチンIgGによる曝露を示す。NH2表面(図58A)は、高いタンパク質曝露濃度において低いレベルの非特異的タンパク質結合を示し、PEG表面(図58B)は、低いレベルの非特異的結合を示す。PEG−ビオチン表面(図58C)は、抗−ビオチンIgGと強い結合相互作用を有する。
【図59】図59は、20分間のインキュベーション後のPEG−ビオチン活性化ウェルについての、抗−ビオチンIgG濃度に対する最大波長値変位を示す。プロットされた線は、最小自乗法による適合直線関数を示す。
【図60】図60は、バイオセンサー表面への特異的結合物質の固定化に対する表面修飾層の効果を示す。
【図61】図61は、界面層がある場合およびない場合におけるバイオセンサーの水に対する安定性試験結果を示す。界面層の付加により、水溶液中でのバイオセンサーの安定性が顕著に向上した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
サブ波長構造化表面(SWS)バイオセンサー
本発明の1つの態様として、サブ波長構造化表面(SWS)を用いて、特異的結合物質、結合パートナー、またはその両方のような、生体材料の相互作用を高感度で追跡できる特定の波長において、敏感な光学共鳴反射を作成した。色測定共鳴回折格子表面は、特異的結合物質の表面結合のプラットフォームとして作用する。
【0022】
サブ波長構造化表面は、薄膜被覆効果を疑似できる新しい型の回折光学機器である(Peng & Morris,「2次元格子からの共鳴消散」 J. Opt. Soc. Am. A, Vol. 13, No. 5, p. 993, May; Magnusson, & Wang,「光学フィルタのための新しい原理」 Appl. Phys. Lett.,61, No. 9, p. 1022, August, 1992; Peng & Morris,「2次元格子からの回折の共鳴異常の実験的証明」Optics Letters, Vol. 21, No. 8, p. 549, April, 1996)。SWS構造は、表面レリーフ、反射したおよび透過した0次オーダー以外の回折オーダーが伝播しないように入射光の波長と比べて格子周期が小さい1次元または2次元格子、を含む。SWS表面狭周波数帯フィルタは、基板層および格子溝を満たす被覆層に挟まれた1次元または2次元格子を含むことができる。任意に、被覆層は使用されなくてもよい。格子領域の効果的反射率が基板または被覆層よりも大きい場合、導波管が作られる。フィルタが適切に設計される場合、入射光は導波管領域に進み、漏洩モードとして伝播する。1次元または2次元格子構造は、波長の狭周波数帯で導波管に選択的に光を結合する。光は、ほんの短い距離しか(10−100マイクロメーターのオーダーで)伝播せず、消散を受け、前進−および後退−伝播ゼロ次の光に結合する。この高感度の結合条件は、反射した放射スペクトル上で共鳴格子効果を発生させることができ、反射したまたは透過した波長の狭周波数帯をもたらす。1次元または2次元格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長よりも短い。
【0023】
この構造の反射したまたは透過した色は、特異的結合物質や結合パートナー、またはその両方のような分子の、被覆層上面または1次元または2次元格子表面への添加により調節できる。添加した分子は、構造を通じた入射した放射の光学経路を増加し、これにより最大の反射または透過が起こる波長に変更する。
【0024】
1つの態様として、白色光で照らされるとき、バイオセンサーは、単一波長のみを反射するように設計される。特異的結合物質がバイオセンサーの表面に結合すると、格子に結合する光の光学経路の変化のために、反射した波長(色)が変位する。特異的結合物質をバイオセンサー表面に連結することにより、相補的結合パートナー分子がいずれの種類の蛍光プローブや粒子ラベルを用いることなく検出できる。この検出技術は、例えば、〜0.1nm厚のタンパク質結合の変化を解像する能力があり、バイオセンサー表面が液体で浸漬しているか乾燥しているかのいずれでも実施できる。
【0025】
検出システムは、例えば、ファイバー光学プローブ等を通じて垂直の入射角でバイオセンサーの小さいスポットを照らす光源、および第2のファイバー光学プローブ等を通じて垂直の入射角で反射した光を集める分光計からなる。励起/検出システムとバイオセンサー表面との間で物理的接触が起こらないので、特別な結合プリズムを必要とせず、バイオセンサーは、例えば、ミクロタイタープレートおよびミクロアレイスライド等の通常使用されるいずれのアッセイプラットフォームにも容易に適合できる。一回の分光計の読みとりは、数ミリ秒で実行でき、そのためバイオセンサー表面で並行して起こる非常に多くの分子間相互作用を迅速に測定でき、リアルタイムで反応動態をモニターできる。
【0026】
この技術は、非常に多数の生体分子間相互作用が並行して測定される応用において有用であり、特に分子ラベルが試験中に分子の機能を変化させまたは阻害する場合に有用である。タンパク質標的の医薬化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、およびプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のミクロアレイスクリーニングは、本発明の構成物および方法により提供される感度と処理量を必要とする応用の例である。
【0027】
SWS構造の例の模式図を、図1に示す。図1中、n基板は、基板材料を示す。n1は、任意の被覆層の屈折率を示す。n2は、2次元格子の屈折率を示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示す。t1は、2次元格子構造上方の被覆層の厚さを示す。t2は、格子の厚さを示す。tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の層の厚さを示す。1つの態様として、n2>n1である(図1参照)。層の厚さ(即ち、被覆層、1またはそれ以上の特異的結合物質、または格子)は、上面に添加された分子に対する共鳴波長の感度の良さを達成するように選択される。格子周期は、望む波長で共鳴を達成するように選択される。
【0028】
本発明の1つの態様は、SWSバイオセンサーを提供する。SWSバイオセンサーは、1次元または2次元格子、格子を支持する基板層、および基板層の反対側の格子表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。
【0029】
1次元または2次元格子は、例えば、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素等の材料を含むことができる。格子の断面の特徴は、例えば、「正方波」等のいずれの周期的繰り返し関数を含むことができる。格子は、連続平行線形、正方形、円形、楕円形、三角形、台形、シヌソイド波形、長円形、長方形、および六角形から成る群より選ばれる形状の繰り返しパターンを含むことができる。シヌソイドの断面特徴は、プラスチックのような柔らかい材料に格子形状をエンボス加工する必要や、エポキシのような材料に格子表面を複製する必要のある製造の応用に好ましい。本発明の1つの態様として、格子の深さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンであり、格子の周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。
【0030】
SWSバイオセンサーは、1次元線形格子表面構造、即ち、一連の平行線や溝を含んでもよい。図54を参照。1次元線形格子は、導波モード共鳴フィルター効果を生じるのに充分である。2次元格子は、双方とも波長以下のセンサー表面の平面を横切る2つの横方向に特徴を有する一方、1次元格子の断面は、1つの横方向にのみ波長以下であり、長手方向は共鳴格子効果の波長より大きくすることができる。1次元格子バイオセンサーは、1次元格子の表面構造を有する低屈折率材料層上に薄膜として被覆された高屈折率材料を含むことができる。図53を参照。あるいは、1次元格子バイオセンサーは、低屈折理宇材料基板を含むことができ、ここでは、高屈折率薄膜材料が1次元格子の表面構造に形成される。低屈折率材料は、ガラス、プラスチック、ポリマー、または硬化したエポキシでもよい。高屈折率材料は、低屈折率材料よりも高い屈折率を有する必要がある。高屈折率材料は、例えば、硫化亜鉛、窒化ケイ素、酸化タンタル、2酸化チタン、または酸化インジウムスズでもよい。
【0031】
図53は、バイオセンサーの断面特徴を示し、ここで1次元格子断面は、長方形である。1次元線形格子構造の他の断面特徴は、導波モード共鳴効果をも生ずることである。これらには、例えば、三角形、v型、u型、逆vまたは逆u型、シヌソイド型、台形、階段型および正方形などが含まれる。いずれの規則的に繰り返される関数でも、導波モード共鳴効果を提供することとなる。
【0032】
さらに、1次元線形格子マスター構造は、市販の格子を用いて簡単に製造でき、均一な性能を有する大規模格子マスター構造は、遠紫外線(DUV)フォトリソグラフィーにより製造できる。プラスチックフィルムの連続シート上にマスターセンサー表面構造のサブミクロンのマイクロ複製を用いて、バイオセンサーを大きな表面積について安価に製造できる。本発明の1次元格子バイオセンサーは、シリコンの「マスター」ウエハを作成することにより製造でき、これは、高品位マイクロ複製加工によりプラスチックにセンサー構造を形成するためのテンプレートとして用いられる。大きな表面積についてプラスチックに高感度バイオセンサーを製造できることは、ミクロタイタープレートやミクロアレイスライドのような大面積の使い捨てアッセイ形式にバイオセンサーを組み込むことができることとなる。プラスチックバイオセンサーを、例えば底なし96ウェルミクロタイタープレートの底に組み込むことにより、バイオセンサープレートを用いて、例えば、同時に複数のタンパク質−タンパク質結合アッセイを行うことができる。プラスチック基板バイオセンサーの検出感度は、ガラス基板バイオセンサーのものと同等である。バイオセンサー構造は、標準的なミクロタイタープレートに組み込むことができ、これを用いてバイオセンサー表面に固定化された特異的結合物質と試験サンプル中の結合パートナーとの生化学的相互作用を測定することに基づくアフィニティーアッセイを行うことができる。バイオセンサーは、ミクロアレイスライド、フローセル、および細胞培地のような他の使い捨て実験室アッセイ形態に組み込むこともできる。バイオセンサーを汎用の実験室形態に組み込むことは、スポッターやインキュベーションチャンバーのような既存のミクロアレイ操作装置との互換性の点で望ましい。
【0033】
1次元線形格子バイオセンサー表面は光学構造を含み、これは、平行化白色光により照らされるときに、波長の狭周波数帯のみを反射するように設計される。狭波長帯は、「最大」波長として記載される。バイオセンサー表面に生化学材料若しくは他の材料が堆積するとき、または、これらがバイオセンサーから離れるときに、「最大波長値」(PWV)が、変化する。読みとり装置は、平行化白色光によりバイオセンサー表面の別個の位置を照らし、平行化反射光を収集する。収集された光は、PWVを測定するための波長分光計に集められる。
【0034】
1次元線形格子は、照射される光の偏光が格子周期に対して垂直にまたは平行に配向する共鳴特徴を有する。しかし、穴の六角形格子は、穴の長方形格子よりもよい偏光対称性を有する。従って、本発明の色測定共鳴反射バイオセンサーは、例えば、穴の2次元六角形アレイ(図3B参照)、正方形の2次元アレイ(図3A)、または平行線の1次元格子(図2参照)、を含むことができる。1次元線形格子は、六角形アレイ格子と同一の、ピッチ(即ち、高および低屈折率領域間の距離)、周期、層の厚さ、および材料特性、を有する。しかし、光は、光学構造に共鳴して結合するために格子線に対して垂直にまたは平行に偏光されなければならない。従って、1次元線形格子に対して垂直なまたは平行な偏光軸で配向した偏光フィルタは、照射源とバイオセンサー表面の間に挿入されなければならない。照射する光源のわずかに小さい部分しか正しく偏光されないので、共鳴して反射した光と同等の量を集めるためには、六角形格子に比べて長い積算時間を必要とする。
【0035】
1次元線形格子は、六角形格子に比べ高強度の照射源または長い測定積算時間を必要としうるが、1次元線形格子構造の加工に必要とされるものは、簡単である。2次元六角形格子パターンは、3つの相互干渉レーザービームへのフォトレジストのホログラフィーの暴露により製造される。3つのビームは、3方向に対称である格子パターンを製造するために、精密に配列される。1次元線形格子パターンは、フォトレジストのホログラフィー暴露を生成するためにわずか2つのレーザービームの配列しか必要とせず、従って少ない配列しか必要とされない。1次元線形格子パターンは、例えば、電子線ビームによるフォトレジストへの直接の書き込みによっても製造できる。また、プラスチックに格子構造をエンボス加工するまたは複製する1次元線形格子「マスター」型を製造するために、いくつかの市販の供給源がある。線形格子構造の模式図を図54に示す。
【0036】
長方形格子パターンは、電子線ビーム直接描画暴露システムを用いてフォトレジスト中に製造することができる。単一ウエハは、暴露の間90度回転した部分により2つの連続暴露で線形格子として照射することができる。
【0037】
1次元または2次元格子は、例えば、「階段状」の特徴も含むことができ、その単一で固定された高さの高屈折率領域は、低屈折率被覆層に埋め込まれる。高または低屈折率の二者択一領域は、バイオセンサーの上面に平行な光学導波管を提供する。図5を参照。
【0038】
製造のために、階段状構造は、ガラスやプラスチックのような基板材料中にエッチングされるかエンボス加工される。図53Bを参照。窒化ケイ素や硫化亜鉛のような高屈折率材料の均一な薄膜が、この構造上に堆積される。堆積した層は、基板にエンボス加工されたまたはエッチングされた構造の形の輪郭に従い、堆積した材料はもとのエンボス加工されたまたはエッチングされた特徴と同一の表面レリーフ特徴を有するようになる。誘電層の厚さは、格子構造の深さより少ないか、同等か、または大きくてもよい。構造は、高屈折率材料より低い屈折率を有し、実質的に平坦な上面を有する材料を含む任意の被覆層の適用により完成することができる。被覆材料は、例えば、ガラス、エポキシ、またはプラスチックを用いることができる。
【0039】
この構造は、大量生産できるので、低コストバイオセンサーの製造を可能にする。「マスター」格子は、例えば、3ビームレーザーホログラフィーパターン工程を用いてガラス、プラスチック、または金属中に製造することができる。例えば、Cowan、多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフィー格子アレイの記録と大規模生産、Proc. Soc. Photo-optical Instum. Eng. 503:120 (1984)、を参照。マスター格子は、繰り返し使用して、プラスチック基板をエンボス加工することができる。エンボス加工された基板は、その後高屈折率材料および任意に被覆層により被覆される。
【0040】
階段状構造は製造するのが簡単である一方で、高屈折率材料が階段状でないが、横の位置にしたがって変化する共鳴バイオセンサーを作成することもできる。図4に、n2の1次元または2次元格子の高屈折率材料が高さ方向にシヌソイドで変化する特徴を示す。特定の波長で共鳴反射が発生するように、シヌソイドの周期は、同等の階段状構造の周期と同一である。シヌソイドに変化する構造の共鳴操作およびバイオセンサーとしてのその機能性は、GSOLVER(グレーティングソルバーカンパニー、米国テキサス州アレン)コンピュータモデルを用いて実証されてきた。
【0041】
2次元格子を作成する技術は、Wang, J. Opt. Soc. Am No. 8, August 1990, pp. 1529-44に開示されている。本発明のバイオセンサーは、例えば、半導体ミクロ加工設備で作ることができる。バイオセンサーは、連続エンボス加工および光学被覆加工を用いてプラスチック基板上に作成することもできる。この型の製造工程としては、「マスター」構造がガラスやシリコンのような堅牢な材料中に作られ、これを用いていくつかの型の複製工程の1つを用いてエポキシやプラスチックに「母」構造を生じさせる。「母」構造は、次に伝導材料の薄膜で被覆され、ニッケルの厚い膜の電気メッキの型として用いられる。ニッケルの「娘」は、プラスチックの「母」構造から解放される。最後に、ニッケルの「娘」は、筒状ドラムに結合し、これを用いて、プラスチック膜に表面レリーフ構造が連続的にエンボス加工される。エンボス加工されたプラスチック基板を用いる装置の構造を、図5に示す。エンボス加工の後、プラスチック構造は、高屈折率材料の薄膜でさらに被覆され、任意に平面化された被覆層ポリマーで被覆され、そして適当な大きさに切断される。
【0042】
SWSバイオセンサーのための基板は、例えば、ガラス、プラスチックまたはエポキシを含むことができる。任意に、基板および2次元格子若しくは1次元格子は、単一ユニットを含むことができる。これは、格子および基板が、例えば、ガラス、プラスチック、またはエポキシと同じ材料から形成されるものである。格子を含む単一ユニットの表面は、例えば、硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素のような高屈折率を有する材料で被覆される。1またはそれ以上の特異的結合物質は、高屈折率を有する材料表面または任意の被覆層上に固定化することができる。
【0043】
本発明のバイオセンサーは、基板層の反対側の2次元格子若しくは1次元格子表面上に被覆層をさらに含むことができる。被覆層が存在するところでは、1またはそれ以上の特異的結合物質は格子の反対側の被覆層表面上に固定化される。好ましくは、被覆層は、格子を含む材料より低い屈折率を有する材料を含む。被覆層は、例えば、ガラス(スピンオンガラス(SOG)を含む)、エポキシ、またはプラスチックを含むことができる。
【0044】
例えば、バイオセンサーに必要とされる屈折率に適合する種々のポリマーは、被覆層として用いることができる。SOGは、その好ましい屈折率、取り扱いやすさ、および豊富なガラス表面活性化技術を用いて特異的結合物質により容易に活性化されることにより、用いることができる。バイオセンサー表面の平坦さが特定のシステムの設定で問題とならない場合、SiN/ガラス格子構造は検出表面として直接使用することができ、その活性化はガラス表面に対するものと同様の方法を用いて行うことができる。
【0045】
共鳴反射は、2次元格子若しくは1次元格子上の平面化被覆層を用いずに得ることもできる。例えば、バイオセンサーは、高屈折率材料の構造化された薄膜層により被覆された基板のみを含むことができる。平面化被覆層を用いることなしに、(空気や水のような)周囲の媒質は、格子を満たす。従って、特異的結合物質は、上面のみではなく、特異的結合物質に暴露された格子の全表面のバイオセンサーに固定化される。
【0046】
一般的に、本発明のバイオセンサーは、すべての偏光角の光を含むであろう白色光により照らされるであろう。バイオセンサー格子の繰り返し特徴に関する偏光角の配向は、共鳴波長を決定するであろう。例えば、繰り返しの直線と空間の1組からなる1次元線形格子バイオセンサー構造は、個別の共鳴反射を発生する2つの光学偏光を有するであろう。直線に対して垂直に偏光する光は、「s−偏光」とよばれ、一方、直線に並行に偏光する光は、「p−偏光」と呼ばれる。入射光のsおよびp成分の両方は、フィルタを透過していない照射ビーム中に同時に存在し、各々は、個別の共鳴シグナルを発生する。バイオセンサー構造は、一般的にただ1つの偏光(一般的にs−偏光)の特性を最適化するように設計され、最適化されない偏光は、偏光フィルタにより容易に除去される。
【0047】
偏光依存性を除去するために、すべての偏光角が同じ共鳴反射スペクトルを発生させるように1組の同心輪からなる代替のバイオセンサー構造が用いられる。この構造では、各々の同心輪の内側の直径と外側の直径との違いは、格子周期の約半分に等しい。各々の連続する輪は、前の輪の内側の直径より格子周期約1つ分大きい内側の直径を有する。同心輪パターンは、ミクロアレイスポットまたはミクロタイタープレートウェルのような単一のセンサー位置を被覆するように伸びる。各々の個別のミクロアレイスポットまたはミクロタイタープレートウェルは、その中に中心をおく個別の同心輪パターンを有する。例えば、図49。このような構造のすべての偏光方向は、同じ断面の特徴を有する。同心輪構造は、偏光の独立性を保持するために中心に正確に照らされなければならない。同心輪構造の格子周期は、共鳴して反射した光の波長よりも短い。格子周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。格子深さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンである。
【0048】
他の態様として、穴または突起物のアレイが、格子のどの特定の位置を中心におく照射ビームも必要とせずに上記の同心円構造の極近傍に配置される。図50を参照。このようなアレイパターンは、同一角度の3方向から表面上への3つのレーザービームの入射の光学干渉により自動的に発生する。このパターンでは、穴(または突起物)は、図50に示したように細密充填した六角形のアレイの角に位置する。穴または突起物はまた、各々の六角形の中心にも存在する。このような穴または突起物の六角形格子は、同じ断面の特徴に「見える」3つの偏光方向を有する。六角形格子構造は、それ故、いずれの偏光角の光を用いても同等な共鳴反射スペクトルを提供する。従って、欲しない反射シグナル成分を除去するために、偏光フィルタを必要としない。穴または突起物の周期は、約0.01ミクロンから約1ミクロンとでき、深さまたは高さは、約0.01ミクロンから約1ミクロンとすることができる。
【0049】
本発明は、同心円格子および穴または突起物の六角形格子を含む共鳴反射構造および透過フィルタ構造を提供する。共鳴反射構造としては、光の出力は、照射光ビームと同じ構造面で測定される。透過フィルタ構造としては、光の出力は、照射光ビームと反対側の構造面で測定される。反射したおよび透過したシグナルは、相補的である。これは、波長が強く反射した場合、弱く透過することを意味する。構造そのものではエネルギーが吸収されないと仮定すると、所定のどの波長においても反射した+透過したエネルギーは、一定である。共鳴反射構造および透過フィルタは、特定の波長で高い効率の反射を与えるように設計される。従って、反射フィルタは、入射光からの狭周波数帯の波長を「通過させる」が、透過フィルタは、狭周波数帯の波長を「遮断する」。
【0050】
共鳴反射構造または透過フィルタ構造は、同心円パターンに配置された2次元格子を含むことができる。共鳴反射構造または透過フィルタ構造は、穴または突起物の六角形格子を含むこともできる。これらの構造が照射光ビームで照らされるときに、照らされる光ビームの照射偏光角に独立した反射した放射スペクトルが発生する。これらの構造が照らされるときに、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、ここでは2次元格子または穴若しくは突起物の六角形格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長よりも短い。これらの構造は、構造が広周波数帯の光で照らされるときに、狭周波数帯の光を反射する。
【0051】
本発明の共鳴反射構造および透過フィルタ構造は、バイオセンサーとして使用できる。例えば、1またはそれ以上の特異的結合物質は、穴若しくは突起物の六角形格子上または同心円に配置された2次元格子上に固定化できる。
【0052】
本発明の1つの態様として、参照共鳴シグナルが、ピーク共鳴波長変位のより正確な測定のために提供される。参照共鳴シグナルは、例えば温度を含む環境の効果を相殺できる。参照シグナルは、2つの個別の共鳴波長を発生する共鳴反射上部構造を用いることにより提供できる。透明共鳴反射上部構造は、2つの下部構造を含むことができる。第1の下部構造は、上面および底面を有する第1の1次元または2次元格子を含む。1次元または2次元格子の上面は、格子表面を含む。第1の1次元または2次元格子は、その上面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を含むことができる。第1の1次元または2次元格子の上面は、試験サンプルと接触する。任意の基板層が、第1の1次元または2次元格子の底面を支持するために存在してもよい。基板層は、上面および底面を含む。基板の上面は、第1の1次元または2次元格子の底面に接触し、これを支持する。
【0053】
第2の下部構造は、上面および底面を有する第2の1次元または2次元格子を含む。第2の1次元または2次元格子は、試験サンプルと接触しない。第2の1次元または2次元格子は、第1の1次元または2次元格子を支持する基板の底面上に加工することができる。第2の1次元または2次元格子が第1の1次元または2次元格子を支持する基板上に加工される場合には、第2の1次元または2次元格子の底面は基板の底面上に加工できる。従って、第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の1次元または2次元格子の上面と反対方向に向くこととなる。
【0054】
第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の下部構造の底面に直接接触することもできる。この態様では、第2の1次元または2次元格子の上面は、第1の1次元または2次元格子の上面と同じ方向に向くであろう。この態様では、基板は第2の1次元または2次元格子の底面を支持できる。
【0055】
第2の下部構造は試験サンプルに物理的に接触しないので、そのピーク共鳴波長は、試験媒体の光学密度、または第1の1次元または2次元格子表面の特異的結合物質の堆積若しくは結合パートナーの堆積、の変化を受けない。従って、このような上部構造は、2つの共鳴シグナルを発生させる。第2の下部構造のピーク共鳴波長の位置は固定されているので、2つの下部構造間のピーク波長の違いは、試験サンプルに暴露される第1の構造の上面に堆積した、特異的結合物質、結合パートナーまたはその両方の量を決定するための相対的な手段を提供する。
【0056】
バイオセンサーの上部構造は、その上面若しくはその底面から、または両方の表面から照らされることができる。第1の構造のピーク共鳴反射波長は、上部構造表面と接触する材料の光学密度に依存するが、第2の構造のピーク共鳴反射波長は、上部構造表面と接触する材料の光学密度に依存しない。
【0057】
本発明の1つの態様として、バイオセンサーは、バイオセンサーの底面から照らされる。約50%の入射光は、バイオセンサーの活性な(上)面に到達することなくバイオセンサーの底面で反射される。薄膜または物理構造は、共鳴波長で反射したエネルギーを最小化する一方でバイオセンサー上面に透過した光の量を最大化する能力のあるバイオセンサー構成物に含めることができる。抗反射薄膜またはバイオセンサー底面の物理構造は、例えば、単一の誘電薄膜、多重誘電薄膜の積重ね、またはバイオセンサー底面にエンボス加工された「蛾目」構造を含むことができる。蛾目構造の例は、Hobbs, et al. 「サブミクロン特徴サイズパターンの発生のための自動化干渉リソグラフィーシステム」 Proc. 1999 Micromachine Technology for Diffracting and Holographic Optics, Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers, p. 124-135, (1999)、に開示されている。
【0058】
本発明の1つの態様として、光学装置が提供される。光学装置は、本発明のいずれのバイオセンサーにも似た構造を含むが、光学装置は、2次元格子に固定化された1またはそれ以上の結合物質を含まない。光学装置は、狭周波数帯光学フィルタとして用いることができる。
【0059】
本発明の1つの態様として、第1の分子の第2の試験分子との相互作用を検出することができる。上述したSWSバイオセンサーが用いられるが、その表面に固定化された特異的結合物質はない。従って、バイオセンサーは、1次元または2次元格子、1次元または2次元格子を支持する基板層、および任意に被覆層を含む。上述したように、バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長より短い。
【0060】
第1の分子の第2の試験分子との相互作用を検出するために、第1と第2の分子の混合物がバイオセンサーの別個の位置が適用される。別個の位置は、バイオセンサーの1つのスポット若しくはウェルでもよく、またはバイオセンサーの大きな範囲でもよい。第1の分子と第3の対照分子の混合物も、バイオセンサーの別個の位置に適用される。バイオセンサーは、上述したバイオセンサーと同じでもよく、または第2のバイオセンサーでもよい。バイオセンサーが同じバイオセンサーの場合、第2の別個の位置は、第1の分子および第3の対照分子の混合物のために用いることができる。その代わりに、同じ別個のバイオセンサーの位置は、第1および第2の分子がバイオセンサーから洗浄された後に用いることもできる。第3の対照分子は、第1の分子と相互作用せず、第1の分子とほぼ同じ大きさである。バイオセンサーの別個の位置から反射した光の波長の変位が、測定される。第1の分子および第2の試験分子を有する別個の位置から反射した光の波長の変位が、第1の分子および第3の対照分子を有する別個の位置から反射した波長の変位より大きい場合、第1の分子および第2の試験分子は、相互作用する。相互作用は、例えば、核酸分子のハブリダイゼーション、抗体または抗体フラグメントの抗原への特異的結合、およびポリペプチド間の結合でもよい。第1の分子、第2の試験分子、または第3の対照分子は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリアでもよい。
【0061】
特異的結合物質および結合パートナー
1またはそれ以上の特異的結合物質は、例えば、物理的吸着または化学結合により、1次元または2次元格子または存在する場合には被覆層に固定化される。特異的結合物質は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、または生物学的サンプルでもよい。生物学的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、または前立腺液でもよい。
【0062】
好ましくは、1またはそれ以上の特異的結合物質は、バイオセンサーの別個の位置のミクロアレイに配置される。特異的結合物質のミクロアレイは、表面に各々異なる特異的結合物質または異なる量の特異的結合物質を有する多くの別個の位置を含むように、本発明のバイオセンサーの表面に1またはそれ以上の特異的結合物質を含む。例えば、アレイは、1、10、100、1,000、10,000または100,000の別個の位置を含むことができる。1またはそれ以上の特異的結合物質がx−y座標の規則的な格子パターンで典型的に配置されるので、このようなバイオセンサー表面は、ミクロアレイと呼ばれる。しかし、本発明のミクロアレイは、規則的または不規則のパターンのいずれの型でも配置された1またはそれ以上の特異的結合物質を含むことができる。例えば、別個の位置は、1またはそれ以上の特異的結合物質のスポットのミクロアレイを規定することができる。ミクロアレイスポットは、直径約50から約500ミクロンでもよい。ミクロアレイスポットは、直径約150から約200ミクロンでもよい。1またはそれ以上の特異的結合物質は、その特異的結合パートナーに結合できる。
【0063】
本発明のバイオセンサーのミクロアレイは、1またはそれ以上の特異的結合物質の微小滴を、例えば、1次元または2次元格子または被覆層表面の位置のx−y格子に置くことにより作成することができる。バイオセンサーが1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルに暴露されると、結合パートナーは、結合パートナーに高い親和性を有する特異的結合物質を含むミクロアレイの別個の位置に優先的に引きつけられることとなる。別個の位置のいくつかは、その表面に結合パートナーを集めるが、他の位置は集めないこととなる。
【0064】
特異的結合物質は、本発明のバイオセンサー表面に添加された結合パートナーに特異的に結合する。特異的結合物質は、その結合パートナーに特異的に結合するが、バイオセンサー表面に添加された他の結合パートナーには実質的に結合しない。例えば、特異的結合物質が抗体であり、その結合パートナーが特定の抗原である場合、抗体は、特定の抗原に特異的に結合するが、他の抗原には実質的に結合しない。結合パートナーは、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、1本鎖または2本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーからの化合物を含む溶液、および生物学的サンプルでもよい。生物学的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液でもよい。
【0065】
本発明のミクロアレイの1つの例は、核酸ミクロアレイであり、このアレイ中の各々の別個の位置は異なる核酸分子を含む。この態様では、核酸ミクロアレイのスポットは、試験サンプル中の対向する核酸鎖と相補的な化学結合を検出する。
【0066】
ミクロタイタープレートは生化学アッセイに用いられる最も一般的な形式であるが、ミクロアレイは、高価な試薬の容積を最小にする一方で同時測定できる生化学相互作用の数を最大化する方法として、だんだん見られるようになってきた。本発明のバイオセンサー上へのミクロアレイスポッターによる特異的結合物質の適用により、10,000の特異的結合物質/in2の特異的結合物質密度を得ることができる。単一のミクロアレイ位置に送るために照射ビームを集中させることにより、バイオセンサーは、ラベル不用のミクロアレイ読みとりシステムとして用いることができる。
【0067】
固定化または1またはそれ以上の特異的結合物質
特異的結合物質がすすぎ工程により洗い流されないように、そして試験サンプル中の結合パートナーへの結合がバイオセンサー表面により妨げられないように、バイオセンサーへの1またはそれ以上の結合物質の固定化が行われる。種々の型のミクロアレイおよびバイオセンサーに用いるためのガラス等への特異的結合物質の共有結合のために、いくつかの異なる型の表面化学方策が実行されてきた。これらの同じ方法は、本発明のバイオセンサーに容易に適用することができる。1またはそれ以上の特異的結合物質の結合のための正しい官能基を含むようにするバイオセンサーの表面調製は、バイオセンサー製造工程の不可欠な部分である。
【0068】
1またはそれ以上の特異的結合物質は、物理吸着(即ち、化学的リンカーを用いない)または化学結合(即ち、化学的リンカーを用いる)によりバイオセンサーに結合することができる。化学結合は、バイオセンサー表面への特異的結合物質の強い結合を発生させ、表面結合分子の規定された配向とコンフォメーションを提供することができる。
【0069】
本発明のバイオセンサーへの特異的結合物質の化学結合のいくつかの例を、以下の実施例8に示す。他の型の化学結合には、例えば、アミン活性化、アルデヒド活性化、およびニッケル活性化が含まれる。これらの表面は、図6に示すように、バイオセンサー表面にいくつかの異なる型の化学リンカーを結合させるために用いることができる。アミン表面はいくつかの型のリンカー分子を結合するために用いることができる一方、アルデヒド表面は追加のリンカーを用いることなくタンパク質を直接結合するために用いることができる。ニッケル表面は、取り込まれたヒスチジン(「his」)タグを有する分子を結合するために用いることができる。ニッケル活性化表面による「his−タグ」化分子の検出は、この分野でよく知られている(Whitesides, Anal. Chem. 68, 490, (1996))。
【0070】
プラスチック、エポキシ、または高屈折率材料への特異的結合物質の固定化は、本質的にガラスへの固定化のために記載されたものと同様に行うことができる。しかし、酸洗浄工程のような処置は特異的結合物質が固定化した材料を損傷しうるので、このような工程は排除することができる。
【0071】
約〜0.1ng/ml未満の濃度における結合パートナーの検出には、バイオセンサーに結合した結合パートナーをバイオセンサー表面のさらなる層に増幅して変換することが好ましい。バイオセンサーに堆積した増加した質量は、増加した光学経路の結果として容易に検出することができる。大きな質量をバイオセンサー表面に取り込むことにより、表面の結合パートナーの光学密度も増加し、従って、添加した質量なしに起こるのに比べて大きな共鳴波長変位が起こるようになる。質量の添加は、例えば、「サンドウィッチ」アッセイを通じて酵素的に、または種々の大きさや組成の適切にコンジュゲートしたビーズや高分子の形態でバイオセンサー表面に質量を直接適用することにより、達成することができる。この原理は、他の型の光学バイオセンサーに利用されて、質量の増幅なしに達成された感度の限界を1500倍以上超える感度の増加を示した。Jenison et al., 「干渉に基づく、光学的に被覆されたシリコン上での核酸標的の検出」 Nature Biotechnology, 19: 62-65, 2001を参照のこと。
【0072】
例として、図7Aは、NH2−活性化バイオセンサー表面が表面に固定化された単鎖DNA捕捉プローブを含む特異的結合物質を有することができることを示す。捕捉プローブは、その相補的標的結合パートナーと選択的に相互作用する。そして、結合パートナーは、「検出」分子と結合する配列またはタグを含むように設計することができる。図7Aに示すように、検出分子は、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に対するリンカーを含むことができ、これは、正しい酵素に暴露されたときに、検出分子が存在する場所のみのバイオセンサー上にさらなる材料を選択的に堆積するものである。このような工程は、例えば、300オングストロームの検出可能な生体材料を数分の内にバイオセンサーに添加することができる。
【0073】
「サンドウィッチ」手法は、検出感度を増強するために用いることもできる。この手法では、高分子量分子が低分子量分子の存在を増幅するために用いることができる。例えば、約0.1kDaから約20kDa等の分子量を有する結合パートナーは、サクシニミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、またはジメチルピメリミデート(DMP)、ヒスチジン、または図7Bに示すようなビオチン分子等でタグ化することができる。タグがビオチンの場合、ビオチン分子は、ストレプトアビジンに強く結合し、これは60kDaの分子量を有するものである。ビオチン/ストレプトアビジン相互作用はとても特異的なので、ストレプトアビジンは、小さい結合パートナーによるだけで発生するシグナルを60倍増幅する。
【0074】
検出感度は、化学的に誘導された小粒子の使用を通じてさらに増強することができる。金コロイドから作られる「ナノ粒子」、種々のプラスチック、または直径約3−300nmのガラスは、結合パートナーに選択的に共有結合できるようにする分子種で被覆することができる。例えば、図7Cに示すように、ストレプトアビジンにより共有結合的に被覆されているナノ粒子は、バイオセンサー表面のビオチンタグ化した結合パートナーの視認性を増強するために用いることができる。ストレプトアビジン分子はそれ自身60kDaの分子量を有しているが、誘導されたビーズは、例えば、60kDaを含むいずれの大きさの分子量をも有することができる。大きなビーズの結合は、バイオセンサー表面の光学密度の大きな変化をもたらし、容易に測定できるシグナルとなるであろう。この方法は、感度の解像度において約1000倍の増強をもたらすことができる。
【0075】
表面−レリーフボリューム回折バイオセンサー
本発明の他の態様は、表面−レリーフボリューム回折構造を含むバイオセンサー(SRVDバイオセンサー)である。SRVDバイオセンサーは、光学波長の広周波数帯で照らされたときに光学波長の特定の狭周波数帯で優先的に反射する表面を有する。特異的結合物質および/または結合パートナーがSRVDバイオセンサー上で固定化される場合、反射した光の波長が変位する。薄膜干渉フィルタおよびブラッグ反射体のような1次元表面は、広周波数帯励起源からの狭い範囲の反射したまたは透過した波長を選択できるが、その上面への特異的結合物質および/または結合パートナーのようなさらなる材料の堆積は、共鳴波長よりもむしろ共鳴線幅の変化をもたらすのみである。対照的に、SRVDバイオセンサーは、表面への特異的結合物質および/または結合パートナーのような材料の添加により反射した波長を変化させる能力を有する。
【0076】
SRVDバイオセンサーは、第1および第2の表面を有するシート材料を含む。シート材料の第1の表面は、レリーフボリューム回折構造を規定する。シート材料は、例えば、プラスチック、ガラス、半導体ウエハ、または金属膜を含むことができる。
【0077】
レリーフボリューム回折構造は、例えば、上述した2次元格子、または3次元表面レリーフボリューム回折格子でもよい。レリーフボリューム回折構造の深さおよび周期は、バイオセンサーから反射した光の共鳴波長より短い。
【0078】
3次元表面レリーフボリューム回折格子は、例えば、その溝のパターンが階段状ピラミッドに似た3次元相−量子化段状表面レリーフパターンでもよい。このような格子が広周波数帯放射のビームにより照らされるとき、光は、周囲の媒体の屈折率と段間隔の2倍を掛けることにより与えられる波長において、等間隔に空けられた段から干渉光を発して反射することとなる。与えられた波長の光は、半波長離れた段から、段の数に反比例する周波数帯幅で、共鳴して回折しまたは反射する。反射したまたは回折した色は、新しい波長が被覆の屈折率に依存して選択されるように、誘電層の堆積により制御できる。
【0079】
階段相構造は、前述したような3つのレーザービームに薄いフォトレジスト膜を干渉光で暴露することよりフォトレジスト中に最初に作成できる。例えば、Cowen, 「多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフ格子アレイの記録と大規模複製」、周期構造、回折格子、およびモアレ現象IIの応用、理論、および加工に関する国際会議、Lerner, ed., Proc. Soc. Photo-Opt. Instrum. Eng., 503, 120-129, 1984; Cowen, 「ホログラフハニカムマイクロレンズ」Opt. Eng. 24, 796-802 (1985); Cowen & Slafer, 「フィルムシステムにおける写真乳化粒子の秩序化のためのホログラフミクロパターンの記録および複製」 J. Imaging Sci. 31, 100-107, 1987を参照のこと。フォトレジストの非線形エッチングの特徴は、3次元レリーフパターンを作成するために暴露した膜を現像するために用いられる。そして、フォトレジスト構造は、標準的なエンボス加工工程を用いて複製される。例えば、薄い銀の膜は、フォトレジスト構造に堆積し、ニッケルの厚い膜を電気メッキできる伝導層を形成する。ニッケルの「マスター」面は、ビニルのようなプラスチック膜中に直接エンボス加工するために用いられ、これは、熱や溶媒により柔らかくされる。
【0080】
階段状ピラミッドに似た3次元相−量子化段状表面レリーフパターンの設計および加工を記述する理論は、Cowen, 「アステカの表面レリーフボリューム回折構造」J. Opt. Soc. Am. A, 7:1529 (1990)に、記載されている。
【0081】
3次元相−量子化段状表面レリーフパターンの例は、階段状ピラミッドに似たパターンである。各々の逆さのピラミッドは、直径約1ミクロンで、好ましくは、各々の逆さのピラミッドは、直径約0.5から5ミクロン、例えば約1ミクロン、でもよい。ピラミッド構造は、直径150−200ミクロンの典型的なミクロアレイスポットが数百段のピラミッド構造を取り込むことができるように細密充填されていてもよい。レリーフボリューム回折構造は、約0.1から約1ミクロンの周期および約0.1から約1ミクロンの深さを有する。図8は、特異的結合物質または結合パートナーが表面に吸着するかどうかを決定するために、(1つのミクロアレイスポットとして単一のピラミッドにより示された数百のピラミッドを含む全ミクロアレイの)個々のミクロアレイの位置が、如何に光学的に測定できるかを、示す。構造が白色光で照らされるとき、意義のある結合材料を有しない構造は、構造の階段の高さにより決定される波長を反射するであろう。結合パートナーや特異的結合物質のような高屈折率材料が反射金属表面に取り込まれたとき、反射した波長は、長い波長に向かって変位するように修正される。段状の階段構造から反射した色は、SRVDバイオセンサーのシート材料の第1の表面に被覆された反射材料の屈折率を階段高さの2倍と掛けたものとして、理論的には与えられる。反射材料は、例えば、銀、アルミニウム、または金でもよい。
【0082】
1またはそれ以上の特異的結合物質は、上述したように、SRVDバイオセンサーの反射材料に固定化される。1またはそれ以上の特異的結合物質は、上述したように、反射材料の別個の位置のミクロアレイに配置されていてもよい。図9は、9素子のミクロアレイバイオセンサーの例を提供する。小さな円で示される多くの個々の格子構造は、各々のミクロアレイスポットの中にある。大きな円で示されるミクロアレイスポットは、その表面の材料の屈折率により決定される波長で空気中で白色光を反射するであろう。さらなる吸着材料を有するミクロアレイの位置は、大きな円で示される長い波長に向かって変位する反射した波長を有するであろう。
【0083】
SRVDバイオセンサーから反射した光の波長は、狭い周波数幅に捕らわれているので、表面の光学特徴の非常に小さな変化は、反射した波長スペクトルの容易に観察される変化としてそれ自身拡大される。狭い反射周波数幅は、平面表面上の反射分光測定に比べ、表面吸着感度の優位性を提供する。
【0084】
光学波長の広周波数帯で照らされたとき、SRVDバイオセンサーは、第1の単一光学波長で優先的に光を反射し、1またはそれ以上の特異的結合物質が反射表面に固定化されているとき、第2の単一光学波長で光を反射する。第2の光学波長での反射は、光学干渉によりもたらされる。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合するとき、SRVDバイオセンサーはまた、光学干渉により第3の単一光学波長で光を反射する。
【0085】
反射した色の読みとりは、個々のミクロアレイスポットに顕微鏡の対物レンズの焦点を合わせて反射したスペクトルを読むこと、または、例えば、ミクロアレイの反射した画像を高解像度カラーCCDカメラに投影することと並行して、連続的に行うことができる。
【0086】
SRVDバイオセンサーは、例えば、金属マスター板を作成すること、およびレリーフボリューム回折構造をビニルのようなプラスチック材料等に打ち出すことにより製造することができる。打ち出しの後、表面は、例えば、金、銀、またはアルミニウムのような薄い金属膜の全体的な堆積により反射性にする。フォトリソグラフ、エッチング、およびウエハ結合工程に依存するMEMSに基づくバイオセンサーと比較して、SRVDバイオセンサーの製造は、非常に安い。
【0087】
液体収容容器
本発明のSWSまたはSRVDバイオセンサーは、例えば、液体収容容器の底面の内側表面を含むことができる。液体収容容器は、例えば、ミクロタイタープレートウェル、試験管、ペトリ皿、またはミクロ流体チャネルでもよい。この発明の1つの態様は、いずれの型のミクロタイタープレートにも取り込まれるSWSまたはSRVDバイオセンサーである。例えば、SWSバイオセンサーまたはSRVDバイオセンサーは、図10に示すように、共鳴反射表面上に反応容器の壁を組み立てることによりミクロタイタープレートの底面に取り込むことができ、各々の反応「スポット」は別個の試験サンプルに暴露できる。従って、各々の個々のミクロタイタープレートウェルは、個別の反応容器として作用することができる。個別の化学反応は、それ故、反応液と混ざり合うことなく近接のウェルの内側で起こることができ、化学的に別個の試験溶液が個々のウェルに適用できる。
【0088】
本発明のバイオセンサーを底なしミクロタイタープレートの底面に結合させるいくつかの方法として、例えば、接着結合、超音波溶接、およびレーザー溶接等を用いることができる。
【0089】
医薬のハイスループットスクリーニングの研究室、分子生物学の研究室、および診断アッセイの研究室において最も一般的なアッセイ形式は、ミクロタイタープレートである。プレートは、格子に配置された96、384、または1536の個々の反応容器を含みうる標準化された大きさのプラスチックカートリッジである。これらのプレートの標準的な機械的配置のために、液体の分配、自動プレート操作、および検出システムは、この共通の形式で機能するように設計されている。本発明のバイオセンサーは、標準的なミクロタイタープレートの底面に取り込むことができる。例えば、図10を参照のこと。バイオセンサー表面は大きな領域で加工でき、読みとりシステムはバイオセンサー表面と物理的接触をしないので、個々のバイオセンサー領域の任意の数が、バイオセンサー表面にわたる照射/検出プローブを走査する照射光学装置およびx−yステージの焦点解像度によってのみ限定されて、規定できる。
【0090】
保持具
例えば、約1mm2から約5mm2の、好ましくは約3×3mm2以下の、いずれの数のバイオセンサーも、96、384、または1536ウェルミクロタイタープレート等のミクロタイタープレートのウェルのような個別の液体収容容器にバイオセンサーを同時に浸漬することができる保持具に、配置することができる。例えば、図11を参照のこと。バイオセンサーの各々は、複数の別個の位置を含むことができる。保持具は、保持具に結合した1またはそれ以上のバイオセンサーを有し、各々の個々のバイオセンサーを個別の液体収容容器に入れることができるようになる。保持具は、プラスチック、エポキシまたは金属を含むことができる。例えば、50、96、384、または1,000、または1,536個のバイオセンサーが保持具に配置でき、ここでは各々のバイオセンサーは、25、100、500、または1,000の別個の位置を有する。例として、96個のバイオセンサーが保持具に結合し、各々のバイオセンサーが100個の別個の位置を含むところでは、9600個の生化学的アッセイが同時に実行できる。
【0091】
SWSおよびSRVDバイオセンサーの使用方法
本発明のSWSおよびSRVDバイオセンサーは、1または多数の特異的結合物質/結合パートナー相互作用を並行して調べるために用いることができる。1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合は、ラベルを用いることなく、表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質を有するSWSまたはSRVDバイオセンサーに、1またはそれ以上の結合パートナーを適用することにより、検出することができる。SWSバイオセンサーは、光で照らされ、反射した光の波長の最大値、または透過した光の波長の最小値がバイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合、反射した光の波長は、1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合しなかった場合の状態と比較して、変位する。SWSバイオセンサーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されている場合、反射した光の波長の最大値または透過した光の波長の最小値がバイオセンサーの各々の別個の位置から検出される。
【0092】
SRVDバイオセンサーは、結合パートナーが添加された後に光で照らされ、反射した光の波長がバイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合、反射した光の波長は変位する。
【0093】
本発明の1つの態様では、例えば、抗体等の種々の特異的結合物質は、本発明のバイオセンサーにアレイ形式で固定化できる。そして、バイオセンサーは、タンパク質のような結合パートナーを含む目的とする試験サンプルと接触する。バイオセンサーに固定化された抗体と特異的に結合するタンパク質だけが、バイオセンサーに結合して残る。このような手法は、本質的に酵素結合イムノソルベントアッセイの大規模のものであるが、酵素または蛍光ラベルの使用は必要ではない。
【0094】
酵素活性は、1またはそれ以上の特異的結合物質が固定化されたSWSまたはSRVDバイオセンサーに1またはそれ以上の酵素を適用することにより検出することができる。バイオセンサーは、洗浄され、光で照らされる。反射した光の波長は、バイオセンサーから検出される。1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合、反射した光の波長は変位する。
【0095】
さらに、例えば、結合パートナーを含む細胞溶解物のような試験サンプルを、本発明のバイオセンサーに適用することができ、その後結合しなかった材料を取り除くために洗浄される。バイオセンサーに結合する結合パートナーは、バイオセンサーから溶出することができ、例えば、質量分析計により同定することができる。任意に、ファージDNAディスプレイライブラリーを、本発明のバイオセンサーに適用することができ、その後結合しなかった材料を取り除くために洗浄される。バイオセンサーに結合した個々のファージ粒子は、単離することができ、これらのファージ粒子の挿入物は、結合パートナーの同一性を測定するために配列決定することができる。
【0096】
上記の応用、特にプロテオミクスへの応用では、本発明のバイオセンサーの試験サンプルからの結合パートナーのような材料に選択的に結合する能力は、その後のさらなる分析のためにバイオセンサーの別個の位置から結合した材料を選択的に取り除く能力として、有利である。本発明のバイオセンサーは、反射した光の波長の変位を測定することにより、バイオセンサーアレイの別個の位置に結合するサンプルからの結合パートナーの量を検出し定量することもできる。例えば、1つの別個のバイオセンサー位置における波長の変位は、他の別個のバイオセンサー位置における陽性または陰性対照と比較して、バイオセンサーアレイの別個の位置に結合する結合パートナーの量を測定することができる。
【0097】
SWSおよび電気伝導材料
任意のバイオセンサー構造は、バイオセンサーアレイを、バイオセンサーの個々の別個の位置からの結合パートナーを選択的に引きつけ、またははねつけることがさらにできるようにする。この分野でよく知られているように、起電力は、電場におかれている核酸およびアミノ酸のような生物学的分子に適用することができる。これらの分子は電気的に陰性であるので、これらは正に荷電した電極に引きつけられ、負に荷電した電極により反発を受ける。
【0098】
共鳴光学バイオセンサーの格子構造は、電気絶縁材料よりむしろ電気伝導材料を用いて作ることができる。電場は、バイオセンサー表面近くで適用することができる。格子が共鳴反射バイオセンサーおよび電極双方として作動する場合、格子は、共鳴波長近くでは光学的に透明であり、かつ低い抵抗性を有する材料を含む。本発明の1つの態様では、材料は、インジウムスズ酸化物、InSnxO1−x (ITO)である。ITOは、平板光学ディスプレイのための透明電極を作成するために一般的に用いられ、それ故大きなガラスシートに低価格で容易に利用可能である。ITOの屈折率は、材料に存在するSn部分のxを制御することにより調整することができる。液体試験サンプル溶液は移動するイオンを有するであろうから(それゆえ電気伝導体であろうから)、ITO電極は絶縁材料で被覆することが必要である。共鳴光学バイオセンサーとしては、格子層は、低屈折率材料の層で被覆される。硬化したフォトレジスト(n=1.65)、硬化した光学エポキシ(n=1.5)、およびガラス(n=1.4−1.5)のような材料は、ITO(n=2.0−2.65)より低い屈折率も有する強い電気絶縁体である。ITO格子を組み込むバイオセンサーの断面図を図48に示す。n1は、電気絶縁体の屈折率を示す。n2は、2次元格子の屈折率を示す。t1は、電気絶縁体の厚さを示す。t2は、2次元格子の厚さを示す。nbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の屈折率を示し、tbioは、1またはそれ以上の特異的結合物質の厚さを示す。
【0099】
格子は、規則的に間を空けた穴のアレイを含むITOの連続シートでもよい。穴は、硬化したフォトレジストのような電気絶縁材料で満たされる。電気絶縁層は、構造の上面が電気絶縁体で完全に被覆されるように、そして上面が実質的に平面となるように、ITO格子に上塗りされる。バイオセンサーが光で照らされるとき、共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生する。格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長より短い。
【0100】
図12および図13に示すように、1つの電極は、多くの格子周期を含む領域を含むことができる。同じ基板表面の2またはそれ以上の個別の格子領域を作成することにより、バイオセンサー電極のアレイを作ることができる。各々のバイオセンサー電極への電気的接触は、バイオセンサー電極内の伝導体として同じ材料から作られる電気伝導トレースを用いて提供される。伝導トレースは、電位を電極に適用できる電源に接続する。電極表面近くで分子を引きつけるかまたははねつけることができるバイオセンサーに電位を適用するために、バイオセンサー上面は、図14に示されるような液体サンプルに浸漬することができる。「共通」電極は、サンプル液の中に配置でき、電圧は1つの選択されたバイオセンサー電極領域と共通電極との間に適用することができる。この方法では、1つの、いくつかの、またはすべての電極は、所定の時間荷電することまたは荷電しないことができる。図15は、正電圧が電極に適用されるときの電気的に陰性の分子のバイオセンサー表面への引きつけを示す一方、図16は、負の電極電圧を用いた、反対電荷のような反発力の電気的に陰性な分子への適用を示す。
【0101】
検出システム
検出システムは、本発明のバイオセンサー、光をバイオセンサーに導く光源、およびバイオセンサーから反射した光を検出する検出器を含むことができる。1つの態様として、決められた閾値を超える正の結果のみが検出の引き金となるようにフィルタの適用により読みとり装置を単純化できる。
【0102】
光源は、その上面、即ち、1またはそれ以上の特異的結合物質が固定化されている表面から、またはその底面から、バイオセンサーを照らすことができる。本発明のバイオセンサーの各々の別個の位置における共鳴波長の変位を測定することにより、どの別個の位置がそれらに結合する結合パートナーを有するかを決定することができる。変位の範囲は、試験サンプル中の結合パートナーの量、および1またはそれ以上の特異的結合物質と試験サンプルの結合パートナーとの化学的親和性、を決定するために用いることができる。
【0103】
本発明のバイオセンサーは、2度照らされてもよい。第1の測定で、バイオセンサーに固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質によるバイオセンサーアレイの1またはそれ以上の別個の位置の反射率スペクトルを決定する。第2の測定で、1またはそれ以上の結合パートナーがバイオセンサーに適用された後の反射率スペクトルを決定する。これら2つの測定値のピーク波長の違いは、バイオセンサーまたはバイオセンサーの1またはそれ以上の別個の位置、に特異的に結合した結合パートナーの量の測定値である。この照射方法は、ピーク共鳴波長のわずかな変動を有する領域によりもたらされるバイオセンサー表面のわずかな不均一性を制御することができる。この方法はまた、バイオセンサーに固定化された特異的結合物質の濃度または分子量の変化を制御することもできる。
【0104】
コンピュータシミュレーションを用いて、ピーク共鳴波長と照射の入射角との予測される依存性を決定することができる。図1に示すバイオセンサー構造は、例示のためのものである。選ばれた基材は、ガラスである(n基板=1.50)。格子は、510nmの周期および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%が窒化ケイ素四辺で被覆されている一方、残りは四辺の間の領域である)の窒化ケイ素四辺(t2=180nm、n2=2.01(n=屈折率)、κ2=0.001(κ=吸着係数))の2次元パターンである。窒化ケイ素四辺間の領域は、低屈折率材料で満たされている。同じ材料がまた四辺を被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmで窒化ケイ素四辺を被覆するガラス層が選択された(n1=1.40)。
【0105】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0106】
図19は、入射照射角に対するピーク共鳴波長の依存性をプロットする。シミュレーションは、入射光の角度と測定されるピーク波長との間に強い相関があることを示す。結果は、照射ビームの平行、および照射ビームと反射ビームとの配置が、測定される共鳴ピーク線幅に直接影響しうることを意味する。照射ビームの平行性が悪いと、様々な照射角でバイオセンサー表面に入射し、精密に平行化した光が入射する場合より、広い共鳴ピークが測定されうる。
【0107】
バイオセンサーの低い感度限界がピーク最大値を決定する能力に関連するので、狭い共鳴ピークを測定することが重要である。従って、バイオセンサーの平行化照射システムの使用は、最も高い潜在的な感度を提供する。
【0108】
バイオセンサー表面を照らすためおよび反射した光を集めるための検出システムの1つの型は、例えば、光源に接続した6つの照射光学ファイバー、および分光計に接続した1つの集光光学ファイバーを含むプローブである。ファイバーの数は決定的ではなく、いずれの数の照射または集光ファイバーも可能である。ファイバーは、集光ファイバーが束の中心にあり、6つの照射ファイバーに囲まれるように束に配置される。ファイバー束の先端は、バイオセンサー表面に照射の焦点を合わせる平行レンズに接続する。
【0109】
このプローブ配置では、照射および集光ファイバーは、並んでいる。従って、平行レンズがバイオセンサー表面に正しく光の焦点を合わせるように調整される場合、6つの明確に規定された照射の円領域、および中央の暗い領域が観察される。バイオセンサーは光を散乱せず、むしろ平行化したビームを反射するので、光は集光ファイバーに入射せず、共鳴シグナルは観察されない。6つの照射領域が中心領域に重なるまで平行レンズの焦点をずらすことのみにより、集光ファイバーに光が反射することとなる。焦点がずらされ、わずかに平行でなくなった光のみがシグナルを発生させるので、バイオセンサーは単一の入射角ではなく、様々な入射角で照らされる。様々な入射角は、図19に示す依存性により共鳴波長の混合をもたらす。それ故、広い共鳴ピークが、他に可能でない限り測定される。
【0110】
従って、照射および集光ファイバープローブが同じ光学経路を空間的に共有することが望ましい。いくつかの方法を用いて、照射および集光光学経路を共通にすることができる。例えば、単一の照射ファイバーを、バイオセンサーに光を導く光源にその第1の末端で接続し、単一の集光ファイバーを、バイオセンサーから反射した光を導く検出器にその第1の末端で接続し、各々をそれらの第2の末端で、照射器および集光器の両方として作用する第3のファイバープローブに接続することができる。第3のファイバープローブは、バイオセンサーに垂直の入射角で配向し、対向伝搬照射および反射光学シグナルを支持する。このような検出システムの例を、図18に示す。
【0111】
検出の他の方法には、光源に接続する単一の照射ファイバーを、検出器に接続する集光ファイバーに90度の角度で配向することを可能にするビームスプリッタの使用が含まれる。光は、照射ファイバープローブを通じてビームスプリッタに導かれ、これはバイオセンサーに光を導く。反射した光は、ビームスプリッタに再び導かれ、これは光を集光ファイバープローブに導く。このような検出装置の例を、図20に示す。ビームスプリッタは、照射光および反射光がビームスプリッタとバイオセンサー間の共通の光学経路を共有することを可能にし、これにより完全に平行な光が焦点をずらすことなく使用することができる。
【0112】
角度の走査
本発明の検出システムは、バイオセンサー表面の平行化された白色光照射および反射したビームの共鳴ピークの光学的分光学測定に基づく。バイオセンサー表面の分子結合は、ピーク波長の値の変位により示される一方、波長の増加は、分子吸着の増加に対応する。
【0113】
理論的モデル化および実験データに示されるように、共鳴ピーク波長は、検出光ビームの入射角に強く依存する。図19は、本発明のバイオセンサーのモデルとしてこの依存性を示す。共鳴ピーク波長の角度依存性のために、入射白色光は、よく平行化されていることが必要である。光ビームの角度の分散は、共鳴ピークを広げ、バイオセンサーの検出感度を落とす。さらに、分光学測定からのシグナル品質は、光源の出力および検出器の感度に依存する。高いシグナル対ノイズ比を得るために、各々の検出位置に対して過剰に長い積算時間を必要とし、それ故バイオセンサー平面を読みとるために総時間を長くすることとなる。回転可能なレーザー源を格子共鳴の検出のために用いることができるが、高価である。
【0114】
本発明の1つの態様として、これらの不利益には、バイオセンサーの照射のためのレーザービーム、および反射したビーム出力の測定のための光検出器の使用により取り組んでいる。走査ミラー装置がレーザービームの入射角を変化させるために用いることができ、また光学システムが入射レーザービームの平行を維持するために用いられる。例えば、「光学走査」(Gerald F. Marchall ed., Marcel Dekker (1991))を参照のこと。いずれの型のレーザー走査も使用できる。例えば、1秒間に約2線から約1000線の速度で走査線を発生できる走査装置は、本発明に有用である。本発明の1つの態様として、走査装置は、1秒間に約50線から約300線を走査する。
【0115】
1つの態様として、反射光ビームは、レーザー走査光学システムの一部を通過し、単一の光検出器で測定される。レーザー源は、例えば、780nm,785nm、810nm、または830nmの波長を有すダイオードレーザーでもよい。これらのようなレーザーダイオードは、150mWまでの出力レベルで容易に利用可能であり、それらの波長はSiフォトダイオードの高い感度に相当する。従って検出器は、フォトダイオードバイオセンサーに基づくことができる。このような検出システムの例を、図52に示す。光源100は、走査装置200に光を供給し、これは光学システム300に光を導く。光学システム300は、バイオセンサー400に光を導く。光は、バイオセンサー400から光学システム300に反射し、そしてこれは光を光シグナル検出器500に導く。検出システムの1つの態様を図21に示し、これは、走査ミラーがその角度位置を変化させる一方、表面のレーザービームの入射角はミラー角変位の名目上2倍変化することを示す。走査ミラー装置は、線形ガルバノメータでもよく、約2Hzから約120Hzまでの周波数および約10度から約20度の機械走査角で操作される。この例では、単一の走査が、約10m秒以内に完了することができる。共鳴ガルバノメータまたは多角形走査器も、用いることができる。図21に示した例には、角度走査のための単純な光学システムが含まれる。これは、これらの間に共通の焦点を有する1組のレンズからなる。光学システムは、レーザーの平行化および反射光ビームの集光の最適化した性能を発揮するように設計することができる。
【0116】
角度解像度は、ガルバノメータの規格、および反射した光の採取周波数に依存する。ガルバノメータの解像度を機械的に30秒と仮定すると、バイオセンサー角度走査に対応する解像度は、60秒、即ち0.017度である。さらに、100kサンプル/秒のサンプリング速度、および10m秒以内に20度の走査が見込まれる。結果として、定量化工程は、1000サンプルに対し20度、即ち1サンプルあたり0.02度である。この例では、PengおよびMorrisに示されているように(2次元格子からの回折における共鳴異常性の実験的例証、Optics Lett., 21:549 (1996))、0.2度の共鳴ピーク幅は、10個のデータポイントにより覆われ、その各々は検出システムの解像度に相当するであろう。
【0117】
このような検出システムの有利な点には、レーザービームによる入射光の優れた平行性、レーザーダイオードの高いビーム出力による高いシグナル対ノイズ比、分光計の代わりの単一素子の光検出器による低いコスト、および角度走査による共鳴ピークの高い解像度、が含まれる。
【0118】
ファイバープローブバイオセンサー
本発明のバイオセンサーは、多重モードファイバー光学プローブの先端に存在することができる。このファイバー光学プローブは、例えば、心臓動脈疾患、癌、炎症、および敗血症のような疾患および症状のための生体マーカーのin vivoでの検出を可能にする。(例えば、数百の格子周期を含む)単一のバイオセンサー素子は、ファイバー光学プローブの先端に加工することができ、またはガラス基板から加工してファイバー光学プローブの先端に結合することができる。図17を参照のこと。単一のファイバーが、照射を提供し、反射したシグナルの共鳴を測定するために用いられる。
【0119】
例えば、図18に示したものと同様のファイバープローブ構造を用いて、照射ファイバーおよび検出ファイバーを、その先端に埋め込まれたまたは結合したバイオセンサーを有する単一の対向伝搬ファイバーに結合することができる。ファイバー光学プローブは、例えば、ヒトの身体等の、哺乳動物の身体に挿入される。照射と反射したシグナルの検出は、プローブが体内に挿入されている間にすることができる。
【0120】
数学的な共鳴ピークの決定
バイオセンサーの感度は、材料がバイオセンサー表面に結合するときの共鳴ピーク位置の変位により決定される。スペクトルのノイズの固有値のために、分析曲線のよく規定される転換点(即ちピーク)を決定する工程を用いることが好ましい。さらに、分析表現に対応するピークは、サブサンプリング間隔の精度より大きく決定されることが好ましく、より大きな感度を提供できる。
【0121】
本発明の1つの態様は、色測定共鳴バイオセンサーにより共鳴反射率スペクトルの結合パートナーに対する共鳴ピーク位置を決定する方法を提供する。その方法は、複数の色測定共鳴バイオセンサーまたは複数のバイオセンサーの別個の位置に対する1組の共鳴反射率データを選択することを含む。1組の共鳴反射率データは、光源により色測定共鳴回折格子表面を照らし、あらかじめ決められた入射角における反射した光を測定することにより採取される。色測定共鳴回折格子表面は、結合パートナーが分子ラベルを用いることなく検出できるように、1またはそれ以上の特異的結合物質に対する表面結合プラットフォームとして用いられる。
【0122】
1組の共鳴反射率データの選択の工程は、1組の共鳴反射率データ:
i=1、2、3、...n、に対して、xiおよびyi
を選択することを含むことができ、ここで、xiは、色測定共鳴回折格子表面に結合した1またはそれ以上の特異的結合物質の第1の反射率スペクトルを含む第1の測定値であり、yiは、複数の結合パートナーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む色測定共鳴回折格子表面に適用された後の1またはそれ以上の特異的結合物質の第2の反射率スペクトルを含む第2の測定値であり、nは、採取された測定値の全数量である。
【0123】
1組の共鳴反射率データは、2つの測定値の複数の組を含み、ここで第1の測定値は、色測定共鳴回折格子表面に結合する1またはそれ以上の特異的結合物質の第1の反射率スペクトルを含み、第2の測定値は、1またはそれ以上の結合パートナーが1またはそれ以上の特異的結合物質を含む色測定共鳴回折格子表面に適用された後の1またはそれ以上の特異的結合物質の第2の反射率スペクトルを含む。第1および第2の測定値間のピーク波長の違いは、1またはそれ以上の特異的結合物質に結合した結合パートナーの量の測定値である。色測定共鳴バイオセンサーの感度は、1組の共鳴反射率データにおける2つの測定値の複数の組の共鳴ピーク位置の変位により決定することができる。
【0124】
2つの測定値の複数の組からの第2の測定値の最大値は、複数の結合パートナーの1組の共鳴反射率データから決定され、ここで最大値には共鳴反射率データに含まれる固有のノイズが含まれる。第2の測定値の最大値は、
すべてのi≠kに対して、(yk>=yi)
となるような最大値ykを決定することを含むことができる。
【0125】
最大値があらかじめ決められた閾値より大きいかどうかが決定される。これは、例えば、1組の共鳴反射率データの平均値を計算すること;1組の共鳴反射率データの標準偏差を計算すること;および((yk−平均値)/標準偏差)があらかじめ決められた閾値より大きいかどうか決定すること;により計算することができる。あらかじめ決められた閾値は、使用者により決定することができる。使用者はどの程度の感度が望まれるのかを決定し、それに従いあらかじめ決められた閾値を設定しうる。
【0126】
最大値があらかじめ決められた閾値より大きい場合、決定した最大値の周囲の曲線適合領域が規定される。決定した最大値の周囲の曲線適合領域を規定する工程は、例えば、
(2w+1)ビンの曲線適合領域を規定すること、ここでwは、あらかじめ決められた正確な値であり;
(xi,k−w<=i<=k+w)を抽出すること;および
(yi,k−w<=i<=k+w)を抽出すること;
を含むことができる。曲線適合処理は、曲線適合領域周囲の曲線を適合させることにより行われ、ここで曲線適合処理は、共鳴反射率データに含まれたあらかじめ決められた量の固有のノイズを除去する。曲線適合処理は、例えば、
gi=lnyiを計算すること;
2次多項式適合をgiに行い、(xi,k−w<=i<=k+w)で規定されるg’iを得ること;
2次多項式適合から、(ax2+bx+c)の係数a,bおよびcを決定すること;および
y’i=eg’iを計算すること;
を含むことができる。最大共鳴ピークの位置は、適合した曲線上で決定され、これには、例えば、最大共鳴ピークの位置(xp=(−b)/2a)を決定することを含むことができる。最大共鳴ピークの値が決定され、ここで最大共鳴ピークの値は、1またはそれ以上の結合パートナーへの1またはそれ以上の特異的結合物質の生体分子の結合量を同定するために用いられる。最大共鳴ピークの値は、例えば、y’pにおけるxpの値を決定することを含むことができる。
【0127】
本発明の1つの態様は、色測定共鳴バイオセンサーにより、共鳴反射率スペクトルの結合パートナーの共鳴ピーク位置を決定する方法をプロセッサーに実行させるための指示をその中に保持するコンピュータ読みとり可能媒体を含む。コンピュータ読みとり可能媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、有機メモリー、およびプロセッサーにより読みとり可能な他のいずれの揮発性(例えば、ランダムアクセスメモリー(「RAM」)または不揮発性(例えば、リードオンリーメモリー(「ROM」)大量保持システムを含むことができる。コンピュータ読みとり可能媒体は、共同または相互接続されたコンピュータ読みとり可能媒体を含み、これはプロセッシングシステムに排他的に存在し、またはプロセシングシステムの一部分であるかまたはこれらか離れた多重相互接続プロセシングシステムに分配される。
【0128】
以下は、例証の目的のためのみに提供されるものであり、上記の広い用語として記載された本発明の範囲を限定するものではない。この開示に引用されたすべての参考文献は、参照するとにより本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0129】
実施例1: SWSバイオセンサーの加工
バイオセンサー加工の例は、プラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)による窒化ケイ素の薄層(180nm)で被覆された平面ガラス基材から始まる。
【0130】
望む構造は、前述したように、薄いフォトレジスト膜を3つのレーザービームに干渉光により暴露することによりフォトレジストに最初に作成される(Cowen、「多重ビーム干渉計を用いた交差ホログラフ格子アレイの記録と大規模複製」、周期構造、回折格子、およびモアレ現象IIの応用、理論、および加工に関する国際会議、Lerner, ed., Proc. Soc. Photo-Opt. Instrum. Eng., 503, 120-129, 1984; Cowen, 「ホログラフハニカムマイクロレンズ」Opt. Eng. 24, 796-802 (1985); Cowen & Slafer, 「フィルムシステムにおける写真乳化粒子の秩序化のためのホログラフミクロパターンの記録および複製」 J. Imaging Sci. 31, 100-107, 1987)。フォトレジストの非線形エッチングの特徴は、図22に示すように、六角形格子内の穴のパターンを作成するために暴露した膜を現像するのに用いられる。フォトレジストパターンは、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて窒化ケイ素層に写される。フォトレジストは除去され、スピンオンガラス(SOG)の被覆層が窒化ケイ素格子の空いた領域を満たすように適用される(ハネウェルエレクトロニックマテリアルズ、サニーベール、カリフォルニア州)。完成したバイオセンサーの上面構造を、図23に示す。完成した部品の写真を図24に示す。
【0131】
実施例2
SRVDバイオセンサーは、ビニルに金属マスター板を打ち抜くことにより5つの円形分散格子ホログラムを作ることにより作成した。円形ホログラムは切り出され、ガラスのスライドにのり付けされた。スライドは、1000オングストロームのアルミニウムで被覆された。空気中での格子の共鳴波長は〜380nmであり、それ故、反射した色は見られない。格子が水で被覆される場合、薄い青い反射が観察される。格子が液体で被覆されている間、または特異的結合物質および/または結合パートナーが構造を被覆する場合、反射した波長変位が観察でき測定できる。
【0132】
タンパク質およびバクテリアの双方は、高濃度でSRVDバイオセンサーの表面に固定化され、波長変位が測定された。各々の材料には、20μlの滴がバイオセンサーの別個の位置に置かれ、空気中で乾燥された。1μg/mlのタンパク質濃度で、直径1cmの円を被覆するために20μlの滴を広げ、約2×10−8グラムの材料を堆積させた。表面密度は、25.6ng/mm2である。
【0133】
高濃度のタンパク質の固定化には(バイオセンサー4)、40mlDI H2O中0.8gウシ血清アルブミン(BSA)の10μl滴が、バイオセンサー表面の直径1cmの円を被覆するように広げられる。滴は、2.5e−6g/mm2の密度で、0.0002gのBSAを堆積する。タンパク質の堆積の後、バイオセンサー4は、空気中で緑色の共鳴を有した。
【0134】
バクテリアの固定化には(バイオセンサー2)、NECKボレリアライム病バクテリア(1.8e8 cfu/ml)の20μl滴が、バイオセンサー表面に堆積された。バクテリアの堆積の後、バイオセンサーは、空気中で灰色に見える。
【0135】
低濃度のタンパク質の固定化には(バイオセンサー6)、DI H2O中0.02%のBSA(40mlDIH2O中0.8gBSA)の10μl滴が、直径1cmの円を被覆するように広げられる。滴は、2.5e−8g/mm2の密度で、0.000002gのBSAを堆積する。タンパク質の堆積の後、バイオセンサー6は、空気中で灰色に見える。
【0136】
上記の処理によりもたらされる表面修飾の範囲で定量的データを得るために、バイオセンサーは、分光計を用いて測定された。
【0137】
緑色の共鳴シグナルは、高濃度のBSAが堆積したバイオセンサー(バイオセンサー4)ですくに視覚的に観察されたので、これは空気中で測定された。図25は、タンパク質が堆積する前は何も存在しなかったところに緑色の波長で540nmおよび550nmに2つのピークを示し、タンパク質薄膜の存在が表面レリーフ構造の共鳴波長の強い変位をもたらすのに充分であることを示している。
【0138】
視認できる共鳴波長が低濃度のタンパク質を適用したスライド(バイオセンサー6)について空気中で観察されなかったので、表面の蒸留水とともに測定し、タンパク質処理をしていないバイオセンサーと比較した。図26は、タンパク質を適用したスライドの共鳴波長が、処理されていない水で被覆されたスライドに比べ緑色に変位したことを示す。
【0139】
最後に、ライム病バクテリアBorrelia burgdorferを含む水滴が、格子構造に適用され、空気中で乾燥された(バイオセンサー2)。バクテリアの堆積後空気中では視覚的に観察される共鳴が起こらなかったので、バイオセンサーは、表面の蒸留水とともに測定され、他の処理を受けていない水で被覆されたバイオセンサーと比較した。図27に示すように、バクテリアの適用は、長い波長への共鳴周波数変位をもたらす。
【0140】
実施例3:バイオセンサーのコンピュータモデル
生体材料がその表面に吸着したときに引き起こされる反射した波長の変位を測定することにより、共鳴格子構造がバイオセンサーとして使用することができるという概念を論証するために、図1に示した構造がコンピュータによりモデル化された。論証の目的のために、選択された基材はガラスである(n基板=1.50)。格子は、510nmの周期、および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%が窒化ケイ素四辺で被覆される一方、残りは四辺の間の領域である)の窒化ケイ素四辺(t2=180nm、n2=2.01、κ2=0.001)の2次元パターンである。窒化ケイ素四辺の間の領域は、低屈折率材料により満たされている。同じ材料がまた四辺を被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmで窒化ケイ素四辺を被覆するガラス層が選択された(n1=1.40)。生体材料の堆積によるこの構造の反射した波長の効果を観察するために、種々の厚さのタンパク質(nbio=1.5)がガラス被覆層上に添加された。
【0141】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0142】
コンピュータシミュレーションの結果を、図28および図29に示す。図28に示すように、タンパク質が表面に存在しない場合は、共鳴構造は、780nm近くの、単一波長のみを表面から反射することができる。半最大値におけるピーク幅が〜1.5nmなので、〜0.2nmの共鳴波長変位は、容易に解像されうる。図28はまた、より多くのタンパク質が構造表面に堆積すると共鳴波長が長波長に変位することを示す。2nmのタンパク質厚の変化は、容易に観察される。図29は、タンパク質被覆厚に対する共鳴波長の依存性をプロットする。タンパク質厚と共鳴波長の線形に近い相関が観察され、タンパク質吸着を測定するこの方法が定量データを提供できることを示している。シミュレートされた構造として、図29は、全堆積タンパク質層が〜250nmを超えると、波長変位反応が飽和になることを示す。この堆積した材料の検出上限は、いずれの型の生体分子アッセイに対しても充分なダイナミックレンジを提供する。
【0143】
実施例4:バイオセンサーのコンピュータモデル
本発明の他の態様として、図30に示されたバイオセンサー構造は、コンピュータによりモデル化された。例示の目的として、選択された基板は、窒化ケイ素、硫化亜鉛、酸化タンタル、または2酸化チタンのような高屈折率材料の層で被覆されたn基板=1.454のガラスであった。この場合、窒化ケイ素(t3=90nm,n3=2.02)を用いた。格子は、510nmの周期、および56.2%の充填率(即ち、表面の56.2%がフォトレジスト四辺で被覆されている一方、残りが四辺の間の領域である)のフォトレジスト四辺(t2=90nm、n2=1.625)の2次元パターンである。フォトレジスト四辺間の領域は、ガラス、プラスチック、またはエポキシのような低屈折率材料で満たされている。同じ材料がまた四辺の被覆し、均一な平面の上面を提供する。このシミュレーションでは、t2=100nmでフォトレジスト四辺を被覆するガラス層が選択された。特異的結合物質の堆積によるこの構造の反射した波長への効果を観察するために、種々の厚さのタンパク質(nbio=1.5)が、ガラス被覆層上に添加された。
【0144】
波長の関数としての反射した強度は、GSOLVERソフトウエアを用いてモデル化され、これはハイブリッドした厳格に組み合わされた波形解析およびモード解析を用いた完全3次元ベクトル符号を利用するものである。GSOLVERは、任意に複合化した格子構造の平面波照射から、回折した場および回折効率を計算する。照射は、いずれの入射角、またいずれの偏光からでもよい。
【0145】
コンピュータシミュレーションの結果を図31および図32に示す。タンパク質が表面に存在しない場合、共鳴構造は、805nm近くの、単一波長のみを表面から反射することができる。半最大値におけるピーク幅が<0.25nmなので、1.0nmの共鳴波長変位は、容易に解像されうる。図31はまた、より多くのタンパク質が構造表面に堆積すると共鳴波長が長波長に変位することを示す。1nmのタンパク質厚の変化は、容易に観察される。図32は、タンパク質被覆厚に対する共鳴波長の依存性をプロットする。タンパク質厚と共鳴波長の線形に近い相関が観察され、タンパク質吸着を測定するこの方法が定量データを提供できることを示している。
【0146】
実施例5:センサー読みとり装置
反射した共鳴を検出するために、図33に示すように、直径400マイクロメーターのファイバー光学装置および平行レンズを通じてバイオセンサー表面の直径〜1mmの領域に、白色光源を照射することができる。より小さいかまたはより大きい範囲が、照射装置および異なるレンズの使用を通じて採取されうる。6つの検出ファイバの群が、分光計(オーシャンオプティクス、ダニーディン、フロリダ州)による分析のための反射した光を集めるために、照射ファイバーのまわりに束にされる。例えば、分光計は、サンプリングビン間の解像度が〜0.14nmで、800nmの波長で中心におくことができる。分光計は、各々の測定で25−75ミリ秒間反射したシグナルを積算する。バイオセンサーは、バイオセンサー表面の異なる領域が正方形に位置できるように、x−y作動ステージに設置される。
【0147】
同等な測定が、装置の上面を照らすこと、または透明な基板の底面を通じて照らすことの何れかにより、行うことができる。バイオセンサー表面が液体で浸漬されている場合は、背面を通じた照射が好ましく、また、バイオセンサーが底面、例えばミクロウェルプレートに取り込まれる場合、背面を通じた照射は、バイオセンサーの測定に最も互換性がある。
【0148】
実施例6:共鳴反射の実証
図34に、実施例5に記載された装置を用いた図1に示すようなバイオセンサーから採取された共鳴反射率スペクトルを示す。共鳴の波長(λピーク=772.5nm)を、コンピュータモデルにより予測された共鳴波長(λピーク=781nm)と比較し、測定された反射率効率(51%)は、予測された効率(70%)に匹敵するものである。測定された特徴と予測された特徴との最も大きな不一致は、共鳴ピークの線幅である。共鳴の半最大値における測定された完全幅(FWHM)は6nmである一方、予測されたFWHMは1.5nmである。示されるように、測定された大きなFWHMの主な原因は、照射光学装置の平行化であり、これは容易に訂正することができる。
【0149】
その表面に接触する材料の屈折率の違いを検出する共鳴構造の能力の基本的な例証として、バイオセンサーは、よく特徴づけられた光学特性の一連の液体に暴露された。用いられた液体は、水、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、およびDMFである。バイオセンサーは、各々の液体の小滴に向けて置かれ、共鳴波長がバイオセンサー背面に向けられたファイバー照射/検出プローブにより測定された。バイオセンサー表面が種々の屈折率の液体に暴露される場合につき、表1に、計算されたものおよび測定されたピーク共鳴波長を示し、測定されたものと理論的な検出感度との相関を示す。表1に示されるように、測定された共鳴ピーク位置および測定された共鳴波長変位は、予測された値とほぼ同一である。この例は、バイオセンサーの感度の基礎となるものを示し、表面に接触する材料の変化による波長の変位を予測するコンピュータモデルを検証するものである。
【0150】
【表1】
【0151】
同様に、バイオセンサーは、種々のバッファー溶液間の屈折率の違いを測定することができる。例として、図35に、水中のウシ血清アルブミン(BSA)の濃度によるピーク波長の変化を示す。共鳴は、バッファーの滴に向けられて置かれたバイオセンサーにより測定され、各々の測定の間に水で洗い流された。
【0152】
実施例7:固定化されたタンパク質の検出
実施例6に示された検出実験が、液体溶液の屈折率のわずかな違いを測定するバイオセンサーの能力を示す一方、バイオセンサーは、バイオセンサー表面に化学的に結合する特異的結合物質および結合パートナーを測定することを意図する。その表面の生体分子を定量するバイオセンサーの能力を示すために、種々の濃度でPBSに溶解させたBSAの滴を、図1に示すようなバイオセンサーに適用した。3μlの滴が空気中で乾燥され、直径〜2mmの領域に分配された少量のBSAを置いた。各々のバイオセンサー位置のピーク共鳴波長は、滴の堆積の前後で測定され、ピーク波長変位が記録された。図37を参照のこと。
【0153】
実施例8:1またはそれ以上の特異的結合物質の固定化
以下のプロトコルを色測定共鳴反射バイオセンサーに用い、アミン官能基で表面を活性化した。アミン基は、いくつかの型のリンカー分子のこれに続く共有結合のための多目的表面として使用することができる。
【0154】
本発明のバイオセンサーは、ピラニアエッチング液(70/30%(v/v)濃硫酸/30%過酸化水素)中に12時間浸漬することにより、清浄される。バイオセンサーは、水で完全に洗浄された。バイオセンサーは、乾燥アセトン中3%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液に1分間漬けられ、乾燥アセトンで洗い流され、空気乾燥された。そして、バイオセンサーは、水で洗浄された。
【0155】
半定量的方法を用いて、バイオセンサー表面のアミノ基の存在が確認される。アミノ官能化バイオセンサーの各々のバッチからの1つのバイオセンサーは、pH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム5mLで、短時間洗浄する。その後、バイオセンサーを、0.1mMスルホ−サクシニミジル−4−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ブチレート(s−SDTB、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)を含むpH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム5mLに漬け、30分間激しく振とうする。s−SDTB溶液は、3.0mgのs−SDTBを1mLのDMFに溶解し、pH8.5の50mM炭酸水素ナトリウム50mLで希釈することにより調製される。30分のインキュベーションの後、バイオセンサーを、20mLのddH2Oで3回洗浄し、その後30%過塩素酸5mLで処理する。オレンジ色した溶液の発色は、バイオセンサーがアミンでうまく誘導化されたことを示し、未処理のガラスのバイオセンサーは、色の変化が観察されない。
【0156】
上記工程に続く過塩素酸処理後の溶液の495nmにおける吸光度は、表面のアミン基の量の指標として用いることができる。1組の実験では、吸光度は、シグマスライド、セルアソシエイトスライド、および自家製バイオセンサースライドに対して、それぞれ0.627、0.647、および0.728であった。これは、バイオセンサー表面のNH2活性化のレベルが、活性化した市販のミクロアレイガラススライドに匹敵することを示す。
【0157】
アミンによりバイオセンサーを活性化する上記のプロトコルに続いて、リンカー分子をバイオセンサーに結合させることができる。架橋剤を選択する場合、反応性基の選択性、スペーサーアームの長さ、溶解度、および切断性のような問題を考慮すべきである。そして、リンカー分子は、結合パートナーの特異的認識のために用いられる特異的結合物質に結合する。例として、以下のプロトコルを用いて、ビオチンリンカー分子をアミン活性化バイオセンサーに結合させた。
【0158】
ビオチンによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
アミン被覆バイオセンサーをPBS(pH8.0)で3回洗浄する。PBSバッファー(pH8)中、濃度0.5mg/mlで、スルホ−サクシニミジル−6−(ビオチンアミド)ヘキサノエート(スルホ−NHS−LC−ビオチン、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)溶液を調製する。2mlのスルホ−NHS−LC−ビオチン溶液を、各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で30分間インキュベートする。バイオセンサーをPBS(pH8.0)で3回洗浄する。スルホ−NHS−LC−ビオチンリンカーは、556.58の分子量および22.4Åの長さを有する。得られたバイオセンサーは、アビジンまたはストレプトアビジン分子を補足するために用いることができる。
【0159】
アルデヒドによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
0.1Mリン酸ナトリウム、0.05%アジドナトリウム、0.1%シアノボロハイドレートナトリウム中2.5%グルタルアルデヒド溶液、pH7.0、を調製する。2mlのスルホ−NHS−LC−ビオチン溶液を、各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で30分間インキュベートする。バイオセンサーをPBS(pH7.0)で3回洗浄する。グルタルアルデヒドリンカーは、100.11の分子量を有する。得られたバイオセンサーは、タンパク質および他のアミン含有分子を結合するために用いることができる。反応は、シッフ塩基の形成を通じて進行し、これに続く還元性アミノ化により安定な2級アミン結合が形成される。1つの実験では、本発明者らにより作成された被覆されたアルデヒドスライドを市販のアルデヒドスライド(セルアソシエイト)と比較した場合、本発明者らにより作成されたスライドでは、ストレプトアビジンおよび抗−ウサギIgGの10倍高い結合が観察された。
【0160】
NHSによるアミン被覆バイオセンサーの活性化のプロトコル
炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)中25mMのN,N’−ジサクシニミジルカーボネート(DSC、シグマケミカルカンパニー、セントルイス、ミズーリ州)を調製した。2mlのDSC溶液を各々のアミン被覆バイオセンサーに添加し、室温で2時間インキュベートした。バイオセンサーをPBS(pH8.5)で3回洗浄した。DSCリンカーは、256.17の分子量を有する。得られたバイオセンサーは、ヒドロキシル−またはアミン−含有分子を結合するために用いることができる。このリンカーは、入手可能な最も小さい均一2官能性NHSエステル架橋剤の1つである。
【0161】
上に規定したプロトコルに加えて、異なる型の生体分子に対するアッセイ能力を最適化する、多くのさらなる表面活性化および分子リンカー技術が報告されてきた。これらの最も一般的なものは、アミン表面、アルデヒド表面、およびニッケル表面である。そして、活性化された表面は、表2に示すように、いくつかの異なる型の化学リンカーをバイオセンサー表面に結合するために用いることができる。アミン表面がいくつかの型のリンカー分子を結合するために用いられる一方、アルデヒド表面はさらなるリンカーを必要とせずにタンパク質を直接結合するために用いられる。ニッケル表面は、取り込まれたヒスチジン([his])タグを有する分子を結合するために、排他的に用いられる。ニッケル活性化表面による「his−タグ化」分子の検出は、よく知られている(Sigal et al., Anal. Chem. 68, 490 (1996))。
【0162】
表2は、バイオセンサーを調製し、使用するために用いられる工程、および表面活性化成分、化学リンカー分子、特異的結合物質および結合パートナー分子に利用可能な種々の選択肢の配列例を示す。HRPまたはストレプトアビジンのような大きな分子による増幅、および分子結合に利用可能な表面積を増加するデキストランやTSPSのような高分子材料の使用、を通じて検出したシグナルを増強する機会も存在する。
【0163】
【表2】
【0164】
実施例9:IgGアッセイ
生化学的結合の検出の最初の実証として、ビオチンリンカー分子の結合に続いて実施例8に記載されたアミノ表面成分での活性化により調製されたバイオセンサーでのアッセイを行った。ビオチンリンカーを用いて、PBS中濃度50μl/mlのストレプトアビジン溶液に室温で2−4時間暴露することによりストレプトアビジンレセプター分子を表面に共有結合させた。ストレプトアビジンレセプターは、いずれのビオチン化タンパク質をもバイオセンサー表面に結合させる能力がある。この例として、リン酸バッファー溶液(PBS)中3μl滴のビオチン化抗−ヒトIgGを、200μg/mlの濃度でバイオセンサー表面の4つの個別の位置に堆積させた。溶液は、PBSで完全に洗い流す前に60分間バイオセンサー上でインキュベートされた。4つの位置のピーク共鳴波長は、ビオチン活性化の後、ストレプトアビジンレセプターの適用後、およびah−IgG結合の後、測定された。図37は、ストレプトアビジンおよびah−IgG両方の添加が、共鳴波長の明確な測定可能な増加を生じることを示す。
【0165】
実施例10:ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ
ビオチンレセプター層によるストレプトアビジンの結合を検出するために、一連のアッセイを行った。バイオセンサーは、前述したように、まずアミノ成分により活性化し、その後NHS−ビオチンリンカー層を結合した。次に、PBS中3μl滴のストレプトアビジンを種々の濃度でバイオセンサーに適用した。滴は、PBSで完全に洗浄し、DI水で洗い流す前に、30分間バイオセンサー表面でインキュベートされた。ピーク共鳴波長を、ストレプトアビジン結合の前後で測定し、図38に共鳴波長変位を示す。ピーク波長とストレプトアビジン濃度の間に直線関係が観察され、この場合測定された最低のストレプトアビジン濃度は、0.2μg/mlであった。この濃度は、3.3nMのモル濃度に相当する。
【0166】
実施例11:タンパク質−タンパク質結合アッセイ
タンパク質−タンパク質相互作用の検出を実証するためにアッセイを行った。前述したように、バイオセンサーはアミノ成分およびNHS−リンカー層で活性化した。室温で60分間PBS中濃度50μg/ml溶液にバイオセンサーを暴露することにより、ヤギ抗−ビオチン抗体レセプター層をビオチンリンカーに結合し、その後PBSで完全に洗浄し、DI水で洗い流した。非特異的タンパク質とバイオセンサー表面に結合していないビオチンとの相互作用を防ぐために、バイオセンサー表面を、PBS中1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液に30分間暴露した。この工程の目的は、望まないタンパク質をバイオセンサーと相互作用することから「遮蔽」することである。図39に示され、誘発されるピーク波長の増加により示されるように、相当量のBSAがレセプター層に取り込まれる。遮蔽に続き、3μl滴の種々の濃度の抗−ヤギIgGを、バイオセンサー表面の個別の位置に適用した。滴は、DI水で完全に洗い流される前に30分間インキュベートされた。バイオセンサーのピーク共鳴波長を、遮蔽前、遮蔽後、レセプター層の結合後、および抗−ヤギIgGの検出後に、各々のスポットについて測定した。図39は、10μg/mlの抗−ヤギIgG濃度が容易に測定可能な波長変位を生じさせることを示す。
【0167】
実施例12:ラベル化されないELISAアッセイ
バイオセンサーアレイプラットフォームの他の応用としては、酵素ラベル、およびその後の発色した色素発生のための酵素特異的基質の相互作用を必要としない、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を実行する能力にある。図40は、バイオセンサーがインターフェロン−γ(IFN−γ)抗体レセプター分子によりIFN−γを検出するために調製された実験結果を示す。レセプター分子は、SMPTリンカー分子(ピアスケミカルカンパニー、ロックフォード、イリノイ州)によりNH2−活性化バイオセンサー表面に共有結合させた。NH2、SMPT、および抗−ヒトIFN−αレセプター分子の適用によるピーク共鳴波長変位は、図40に示すように、バイオセンサー表面の2つの近接する位置で測定された。2つの位置は、PBS中100μg/mlの濃度の2つの異なるタンパク質溶液に暴露された。第1の位置は、IFN−γに暴露され、これはレセプター分子に結合すると予測される一方、第2のものは、神経成長因子(NGF)に暴露され、これはレセプターに結合しないと予測される。30分間のインキュベーションの後バイオセンサーは、底面から照らすことにより測定され、一方上面は液体に浸漬したままであった。IFN−γに暴露された位置は、0.29nmの波長変位を示す一方、NGFに暴露された位置は、わずか0.14nmの波長変位しか示さなかった。従って、いずれの型の酵素ラベルや発色酵素反応を用いることなしに、バイオセンサーは、異なる型のタンパク質を含む溶液同士を区別することができた。
【0168】
実施例13:プロテアーゼ阻害剤アッセイ(キャスパーゼ−3)
医薬化合物のスクリーニングと関連する実験的背景における小分子の存在と切断を測定するバイオセンサーの能力を実証するために、キャスパーゼ−3プロテアーゼ阻害剤アッセイを行った。
【0169】
キャスパーゼ(システイン要求性アスパラギン酸プロテアーゼ)は、細胞死を媒介し、アポトーシス工程に重要なプロテアーゼの一員である。キャスパーゼ3、エフェクターキャスパーゼは、最も知られたキャスパーゼ関連基質を特異的に切断できるので、ほ乳類のキャスパーゼのなかで最も研究されたものである。キャスパーゼ3アッセイは、キャスパーゼ3による4アミノ酸ペプチド基質NHS−Gly−Asp−Glu−Val−Asp
p−ニトロアニリド(NHS−GDEVD−pNA)の加水分解に基づいており、これはpNA部分の放出をもたらす。
【0170】
【化1】
【0171】
GDEVDのN−末端に結合したNHS分子は、NHS−GDEVD−pNA複合体を、複合体のpNA部分を表面から外に向けて、バイオセンサーに共有結合できるようにする、反応性末端基を提供する。この方法の結合により、キャスパーゼ−3は、その基質切断部位に最適な接触ができるようになる。
【0172】
バイオセンサーは、3:1のH2SO4:H2O2溶液で洗浄し(室温、1時間)、次にシラン化(乾燥アセトン中2%シラン、30秒間)およびポリ−phe−ジン(PPL)層の結合(0.5MNaClを含むpH6.0のPBS中100μg/mlPPL、10時間)により、調製した。NHS−GDEVD−pNA複合体は、バイオセンサーをPBS中10mM溶液に暴露することにより結合した(pH8.0、室温、1時間)。ミクロウェルチャンバーを、バイオセンサー表面上で密封し、pNAの切断を1×酵素バッファー中(100ng/ml、室温、90分間)で、100μlのキャスパーゼ−3の添加により行った。キャスパーゼ3溶液への暴露の後、バイオセンサーをPBSで洗浄した。分光光度計を用いた別の組の実験を行い、バイオセンサー表面への複合体の結合、および表面結合複合体からのpNA分子の除去に対するキャスパーゼ−3の機能活性を確認した。
【0173】
バイオセンサーのピーク共鳴周波数を、NHS−GDEVD−pNA複合体の結合前、複合体(分子量=860Da)の結合後、およびキャスパーゼ3によるpNA(分子量=136)の切断後、に測定した。図41に示すように、ペプチド分子の結合は、その後のpNAの除去として、明瞭に測定できる。Δλ=0.016nmのpNA除去シグナルは、0.003nmの最小検出可能ピーク波長変位より5.3倍高い。添加された分子量と差し引かれた分子量との比(860Da/136Da=6.32)は、添加された、および差し引かれた材料について観察されたピーク波長変位の比(0.082nm/0.016nm=5.14)によく一致する。
【0174】
この実験結果は、バイオセンサーがラベルを用いることなく小さいペプチド(この場合、5量体ペプチド)を測定し、さらに酵素の活性を通じて分子の130Da部分の除去さえ検出できることを確認するものである。
【0175】
実施例14:タンパク質−タンパク質結合アッセイの反応動態
本発明のバイオセンサーは、液体に浸漬されている間に時間の関数として連続的に問うことができるので、バイオセンサーは、エンドポイント検出実験を実行すること、および生化学反応の動的情報を得ることの両方に利用することができる。例として、単一のバイオセンサー位置が表面に種々の結合パートナーを連続的に添加する過程を通じて連続的に測定される実験結果を、図42に示す。実験を通じて、検出プローブがバイオセンサー基板の背面を通じてバイオセンサーを照らす一方、生化学反応が装置の上面で実行される。添加された試薬が閉じこめられるようにゴムのガスケットにより測定されるバイオセンサー位置のまわりを密封し、バイオセンサー上面がバッファー溶液に浸漬されている間にすべての測定が行われた。初期洗浄の後、バイオセンサーは、NH2およびNHS−ビオチンリンカー分子で活性化された。図42に示すように、いくつかの異なる濃度(1、10、100、1000μg/ml)のヤギα−ビオチン抗体をバイオセンサーに連続的に添加し、ピーク共鳴波長をモニターしながら30分間インキュベートした。最大濃度のα−ビオチンIgGの適用後、いくつかの濃度で(0.1、1、10、および100μg/ml)でのα−ヤギIgGの添加を通じて、タンパク質の第2層をバイオセンサー表面に結合させた。再び、各々の溶液を30分間バイオセンサー上でインキュベートしながら、共鳴ピークを連続的にモニターした。図42は、共鳴ピークが各々のインキュベーション期間の終了時点で大きな波長に如何に変位するかを示す。
【0176】
図43は、図42からの最終共鳴ピーク転移の動的結合曲線を示し、ここでは100μg/mlのα−ヤギIgGがバイオセンサーに添加される。曲線は、動的結合実験で典型的に観察される型の特徴を示し、ここで基底周波数からの急激な増加が最初に観察され、次に反応の緩やかな飽和となる。この型の反応特徴は、この実験で測定されたすべての転移について観察された。図44に、IgG結合の動的結合測定値を示す。
【0177】
酵素活性を通じたバイオセンサー表面からの材料の除去も、容易に観察される。(ヤギ抗−ビオチンIgGおよび抗−ヤギIgGの2つのタンパク質被覆による)上記実験からのバイオセンサーが1mg/mlの濃度でプロテアーゼペプシンに暴露される場合、酵素は、両方のIgG分子を分離し、バイオセンサー表面からそれらを除去する。図45に示すように、表面からの結合した分子の除去は、時間の関数として観察することができる。
【0178】
実施例15:プロテオミクスの応用
本発明のバイオセンサーは、プロテオミクスの応用に用いることができる。バイオセンサーアレイは、例えば、タンパク質またはファージディスプレイライブラリーを含む結合パートナーの混合物を含む試験サンプルに暴露することができ、そしてバイオセンサー表面はすべての結合しなかった材料を除去するために洗い流される。バイオセンサーは、バイオセンサー表面のどの別個の位置が最も大きな結合度合いを有するかを測定するために、また結合した材料の定量的測定を提供するために、光学的に探査される。次に、バイオセンサーは、少量(例えば、<50マイクロリットル)に固定した容積の液体をバイオセンサー表面に接触させる「フローセル」に置かれる。選択されたバイオセンサーアレイの別個の位置のみから結合した材料を溶出するように、1つの電極が荷電される。結合した材料は、フローセル液体内で希釈される。フローセル液体は、バイオセンサー表面からポンプにより除去され、ミクロタイタープレートや他の容器内に保存される。フローセル液体は新しい溶液と置き換えられ、新しいバイオセンサー電極がその結合した結合パートナーを溶出するために荷電される。この工程は、目的とするすべてのバイオセンサーの別個の位置が溶出され、個別の容器に集められるまで繰り返される。試験サンプル液体がタンパク質の混合物を含んでいた場合、個別の容器内のタンパク質内容物は、エレクトロスプレータンデム質量分析計のような技術を用いて分析することができる。サンプル液がファージディスプレイライブラリーを含んでいた場合、個別の容器内のファージクローンは宿主株バクテリアとのインキュベーション、濃縮増幅、および関連するライブラリーDNA配列の分析を通じて同定することができる。
【0179】
実施例16:数学的な共鳴ピークの決定
この例は、異なる型の曲線を観察されたデータに適合させて観察することから、得られたいくつかの発見を議論するためのものである。
検定された第1の分析曲線は、以下に与えられる2次多項式である。
【数1】
この方程式の最小二乗法の解は、コスト関数により与えられる。
【数2】
この最小化は、以下の制約が課せられる。
【数3】
これらの制約を、a、b、およびcについて解くと、以下を得る。
【数4】
このような適合の1つの結果を図46に示し、得られたデータは点で示し、2次元多項式曲線適合は、実線で示す。
【0180】
経験的に、適合させた曲線は、ピーク近くで充分な上昇および下降を有しないように思える。この点についてよい特徴を提供する分析曲線は、ガウス曲線のような指数関数である。ガウス曲線様の適合を実行する簡単な方法は、曲線の形態が以下により与えられると仮定することである。
【数5】
この場合、上記の2次方程式は、y’を形成することにより利用可能であり、ここで、y’=lnyである。図46に、このような適合の結果を示す。図46の視覚的外観は、指数関数がより適合し、2次関数の適合のものに対して20%の改善を提供することを、示す。
【0181】
指数関数曲線が好ましいデータ適合方法であると仮定すると、曲線適合の強固さは、2つの方法:波長の変位に関するもの、およびシグナル振幅の誤差に関するもの、で検定される。
【0182】
分析的ピーク位置の感度を検定するために、曲線適合が実行される窓を真の最大値の左または右に10サンプリング間隔降下するように変化させる。得られた数学的に決定されたピーク位置の変位を、表3に示す。導かれる結論は、ピーク位置が、特定の選ばれた窓に関して適度に強固であり、〜1.5nmの変位で、わずか<0.06nm、または100分の4の感度で変化した対応するピーク位置であることである。
【0183】
データ中のノイズに関してピーク位置の感度を検定するためには、ノイズなしのシグナルを規定する必要があり、ノイズの増加量をシグナルに加え、ピーク位置へのこのノイズの影響が検定される。この実験の目的に対し理想的なシグナルは、平均10の共鳴スペクトル補足である。
【0184】
度合いが変化するガウス関数ノイズは、理想シグナルに重ねられる。このような作り出したノイズのあるシグナル各々に対し、2次指数関数曲線適合を用いてピーク位置が見積もられる。これは25回繰り返され、平均、最大、および最小ピーク位置が表に記入されるようになる。これは、広範囲のノイズ変動について−0の変動から750の変動まで−繰り返される。結果を図47に示す。
【0185】
【表3】
【0186】
この実験の結論は、ピーク位置の見積もりの決まった手順が、ノイズのあるシグナルに対し非常に強固であるということである。図47のピーク位置の全範囲は、750もの任意のノイズ変動が重ねられても、わずか1.5nmであり、ノイズの量はこれよりも実質的に大きく、従ってバイオセンサーで観察されたものもさらに大きい。ノイズのレベルにもかかわらず、平均ピーク位置は、理想位置の0.1nm以内である。
【0187】
これらの結果に基づいて、色測定共鳴バイオセンサーのピーク位置を数学的に決定するための基本的なアルゴリズムは、以下の通りとなる。
【0188】
【表4】
【0189】
要約すると、強固なピーク決定の決まった手順が実証され、統計的結果は、シグナル中のノイズ、および使用される窓決定工程に、ほとんど影響を受けないことを示す。これらの結果は、妥当なノイズの統計で、ピーク位置が1nmの一部分、おそらく0.1から0.05nmの小ささで、ほとんどの場合矛盾なく決定することができることを、導く。
【0190】
実施例17:均一アッセイの実証
SWSバイオセンサーは、その表面に接触する均一な液体の光学密度を検出し、Δn=4×10−5のわずかしか違わない屈折率により液体を区別することができる。2つの遊離の相互作用しないタンパク質を含む溶液は、2つの結合した相互作用するタンパク質を含む溶液とは異なる屈折率を有するので、タンパク質−タンパク質相互作用がいずれの種類の粒子タグや化学ラベルも用いない溶液中で起こる場合、SWSバイオセンサーにより測定できることとなる。
【0191】
3つの試験溶液を、比較のために調製した。
1.リン酸バッファー溶液(PBS)中アビジン、(10μg/ml)
2.PBS中アビジン(10μg/ml)+ウシ血清アルブミン(BSA)(10μg/ml)
3.PBS中アビジン(10μg/ml)+ビオチン化BSA(b−BSA)(10μg/ml)
【0192】
単一のSWSセンサーが、センサー間の偏りのいずれの可能性をも排除するためにすべての測定に用いられた。各々の試験溶液の200μlのサンプルがバイオセンサーに適用され、SWSバイオセンサーピーク共鳴波長値の測定の前に10分間平衡化された。サンプルごとに、バイオセンサーはPBSで完全に洗浄された。
【0193】
試験溶液のピーク共鳴波長値を、図51にプロットする。アビジン溶液が、アビジン+BSAおよびアビジン+b−BSA溶液の比較のためにベースライン参照として採取された。2つのタンパク質が相互作用しないと予測されるように、アビジンへのBSAの添加は、わずかな小さい共鳴波長の増加しかもたらさなかった。しかし、ビオチンとアビジンは強く結合するので(Kd=10−15M)、アビジン+b−BSA溶液は、大きな結合したタンパク質複合体を含むこととなる。従って、アビジン+b−BSA溶液のピーク共鳴波長値は、アビジン+BSAと比べて大きな変位を提供する。
【0194】
BSA(分子量=66kDa)およびb−BSA(分子量=68kDa)の分子量の違いは、非常に小さい。従って、相互作用しないタンパク質(アビジン+BSA)および相互作用するタンパク質(アビジン+b−BSA)を含む溶液間で測定された違いは、2つの分子間の結合相互作用の違いのみに起因する。結合した分子複合体は、結合した複合体を有しない溶液とは異なる光学屈折率の溶液をもたらす。光学屈折率の変化は、SWSバイオセンサーにより測定される。
【0195】
実施例18:センサーの設計と製造
1次元線形格子表面バイオセンサー構造には、共鳴反射光の波長より短い周期を有する格子が必要とされる(R.Magnusson, およびS.S.Wang,「光学フィルタのための新しい原理」 Appl. Phys. Lett., 61, No. 9, p. 1022, August, 1992; S.Peng およびG.M. Morris,「2次元格子からの共鳴散乱」J. Opt. Soc. Am. A, Vol. 13, No. 5, p. 993, May 1996)。図53に示すように、1次元線形格子表面構造は、高屈折率材料の薄膜により被覆された低屈折率材料から製造した。格子構造は、硬化したエポキシ層にマイクロ複製した。
【0196】
1次元線形格子表面構造は、以下のようにしてプラスチック基板材料の表面に作成した。まず、直径8インチのシリコン「マスター」ウエハを製造した。図54に示すように、フォトレジストを被覆したシリコンウエハの表面上に、直径9mmの円形格子レチクルにより遠紫外線フォトリソグラフィーを用いて段階的に繰り返し曝露して、550nm周期の線形格子構造をフォトレジスト中に規定した。曝露のステップ/リピート工程により、8列12カラムずつの標準型96ウェルミクロタイタープレートの2つのパターンを製造した。曝露されたフォトレジストは現像され、〜200nmの深さの反応性イオンエッチングを用いて格子構造がシリコンウエハに永久的に写された。エッチング後、フォトレジストは除去された。
【0197】
シリコンマスターウエハとポリカーボネートシートの部分との間にエポキシの薄膜を分配することにより、厚さ0.005インチのポリカーボネートのシート上に格子構造を複製した。液体エポキシは、マスター格子の形状に適合し、その後紫外線に曝露して硬化させた。硬化したエポキシは、ポリカーボネートシートに優先的に付着し、シリコンウエハからはがされる。
【0198】
センサーの製造は、硬化したエポキシ格子表面に120nmの酸化タンタルをスパッタリング堆積させることにより完了した。酸化タンタルの堆積後、3×5インチのミクロタイタープレート部分をセンサーシートから切り出し、アミン官能基により活性化して底なし96ウェルミクロタイタープレート(Corning Costar(登録商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツおよびグレイナー、ロングウッド、フロリダ)の底にエポキシにより結合させた。
【0199】
表面の活性化とレセプター分子の結合
高屈折率材料を堆積した後、バイオセンサーをアミン官能基により活性化して、種々の2重機能性リンカー分子を既知の配向により表面に結合させた。アミン活性化は、エタノール(アルドリッチ社製)中10%3−アミノプロピルトリエトキシシラン(ピアス社製)溶液に1分間センサーを浸漬することにより行い、その後簡単にエタノールで洗浄した。活性化したセンサーを、10分間70℃で乾燥させた。他の表面活性化分子としては、例えば、COOH、CHO、ポリマー、およびポリ−フェニル−リジンを挙げることができる。
【0200】
ピアス社の修正プロトコルによる簡単な色測定方法を用いて、表面のアミン基の密度を測定した。アミン活性化バイオセンサーは、50mM炭酸水素ナトリウム溶液(pH8.5)中に作成した0.1mMのスルホ−サクシンイミジル−4−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ブチレート(s−SDTB、ピアス社製)に浸漬し、30分間激しく振盪した。そして、バイオセンサーを脱イオン水にて洗浄した後、30%過塩素酸(シグマ社製)で処理した。バイオセンサーがアミン活性化されている場合は、溶液がオレンジ色に変わり、そうでない場合は、無色のままであった。この方法は、アミン基の表面密度が〜2×1014基/cm2であることを示した。
【0201】
1次元線形格子共鳴バイオセンサーを、よく特徴付けされたタンパク質−タンパク質結合相互作用の検出に用いた。この試験に選択されたタンパク質−タンパク質系は、レセプター分子としてバイオセンサー表面に固定化されたビオチンを用いた抗−ビオチンIgG抗体の検出であった。したがって、バイオセンサー表面へのビオチンの固定化のプロトコルは、アミン表面基とビオチンとの間で媒介として作用する2重機能性ポリエチレングリコール−N−ヒドロサクシンイミド(NHS−PEG)リンカー分子(シェアウォーターポリマーズ社製)を用いるものに発展させた。NHS−PEG分子は、特にNHSがアミン活性化表面に優先的に結合し、分子のPEG部分が表面から遠のくように配向して離れるように設計される。NHS−PEGリンカー分子は、近距離でバイオセンサー表面からビオチン分子を分離するように機能し、これによりそのコンホメーションを維持でき、したがって他の分子に対するアフィニティーを維持する。PEGはまた、バイオセンサーへのタンパク質の非特異的結合を防止する。
【0202】
ミクロタイタープレートの底へのアミン活性化バイオセンサーシートの結合後、個々のミクロタイターウェルを、3つの異なる表面官能基により調製することにより、抗−ビオチンIgGの検出のための充分な実験対照を提供した。第1に、アミン活性化表面をさらなる修飾なしに調べた。アミン活性化表面は、タンパク質に非特異的に結合するが、高いアフィニティーはないと予想される。第2に、NHS−PEG2重機能性リンカー分子を有するミクロタイターウェルを、調製した。NHS−PEG分子は、タンパク質に結合しない表面を提供すると予想される。第3に、NHS−PEG−ビオチンリンカー分子を有するミクロタイターウェルを、調製した。NHS−PEG−ビオチン分子は、抗−ビオチンIgGに強く結合すると予想される。
【0203】
ビオチンによりアミン被覆センサーを活性化するために、TPBS(リン酸バッファー溶液中0.01%TweenTM−20の参照バッファー溶液、pH8)中のNHS−PEG−ビオチン(シェアウォーター社製)溶液2mlを1.0mg/mlの濃度でバイオセンサー表面に添加し、37℃で1時間インキュベートした。同一の操作を、ビオチン無しのNHS−PEG(シェアウォーター社製)分子の結合に用いた。購入したすべての試薬は、包装されたとおりに使用した。
【0204】
96ウェルプレートスキャナー装置
バイオセンサーを照らし、反射シグナルを検出するために用いたシステムの模式図を、図55に示す。反射した共鳴を検出するために、ミクロタイタープレートの底を通じて公称の垂直入射において、直径100マイクロメーターの光ファイバーおよび平行化レンズを通じて、格子表面の直径〜1mmの領域を白色光源で照らした。平行化レンズを通過した後、入射光は線形偏光フィルターを通り、格子線に対して平行または垂直のいずれかに偏光した光のみにより線形格子が励起されるようになる。反射光は、検出プローブに戻る途中で再び偏光フィルターを通る。検出ファイバーは、照射ファイバーと一緒に束ねられ、分光計(オーシャンオプティクス社製)による分析のために反射光が集められる。一連の8つの照射/検出部は、線状に配置され、反射スペクトルがミクロタイターカラムの8つの全てのウェルに同時に集められるようになる。ミクロタイタープレートは、可動台に乗せられ、各々のカラムが連続して配置できるようになる。
【0205】
反射共鳴シグナルと反応の均一性
ミクロタイタープレートウェルに水がある場合の、p−偏光反射共鳴スペクトルを図56に示す。測定された最大波長値(PWV)は、857nmであり、共鳴ピークの半値幅(FWHM)は、1.8nmである。例えば、六角形格子上に2次元格子穴を用いて作成した構造と比較して、線幅が>3×低い単一の共鳴ピークのみが測定される。最も重要なことに、単一の狭い共鳴ピークの特徴は、96ウェルミクロタイタープレートバイオセンサーの全てのウェルにおいて、均一に得られる。
【0206】
表面における光学密度の変位を測定するバイオセンサーの能力は、既知の屈折率値を有する2つの溶液をミクロタイタープレートウェルに添加したときのバイオセンサーのPWVを測定し、2つの溶液間のPWV変位(ΔPWV)を計算することにより検定できる。1枚のプレートに渡るバイオセンサーの反応の均一性を測定するために、全ての96ウェルのPWVを水中(n=1.333)、さらにグリコール中(n=1.472)で測定した。変位係数σ=ΔPWV/Δnは、バイオセンサーの反応を他の設計や製造方法によるものと比較して利点を示すように規定した。全てのウェルについて水からグリコールへのPWVの平均変位は15.57nmであり、変位係数はσ=112nmであった。96センサーウェルについてのσの標準偏差は、1.07nmであり、大きな表面積に渡って非常に高い度合いのバイオセンサーの均一性が示された。
【0207】
タンパク質−タンパク質結合アッセイ
プラスチックバイオセンサーの操作を示すために、タンパク質−抗体アフィニティアッセイを行った。3つの別個のセンサー表面状態(NH2、NHS−PEG、NHS−PEG−ビオチン)のマトリックスを調製し、7種の濃度のヤギ抗−ビオチンIgG(シグマ社製)に曝露した。各々のマトリックスの位置は、別個のミクロタイタープレートウェルで測定し、全部で21ウェルを同時に測定した。NHS−PEGウェルはタンパク質に結合しないと予測されるので、試験サンプルの屈折率の効果や、アッセイ操作中の周囲の温度変動の効果のような一般的な様式の効果を相殺するために、参照として用いた。ここで報告されたデータは、数学的な補正を行っていない。
【0208】
図57は、化学官能基を固定化していないセンサーと比較して、バイオセンサー表面にNH2、NH2+(NHS−PEG)、およびNH2+(NHS−PEG−ビオチン)分子を結合させたことによる記録についてPWV変位をプロットした。エラーバーは、7つのミクロタイタープレートウェルについて記録されたPWV変位の標準偏差を示す。データは、バイオセンサーが清浄な表面とNH2を固定化したものとを区別することができ、さらにNHS−PEG(分子量=2000Da)分子の付加を明確に検出できることを示している。NHS−PEGとNHS−PEG−ビオチン(分子量=3400Da)を固定化した表面間の違いも、測定できる。
【0209】
図58は、種々の濃度の抗−ビオチンIgG(0〜80μg/ml)に曝露し、20分間インキュベートしたときのバイオセンサーウェルについての時間に対するPWV変位反応を示す。NHS−PEG表面(図58B)は、最も低い反応であり、アミン被覆表面(図58A)は、高い濃度の抗−ビオチンIgGと低いレベルで非特異的相互作用を示した。NHS−PEG−ビオチン表面(図58C)は、抗−ビオチンIgGと強い特異的相互作用を明確に示し、曝露された抗−ビオチンIgG濃度に比例して強いPWV変位を示した。
【0210】
図58Cから20分後のPWV変位の大きさを、抗−ビオチンIgG濃度に対してプロットして図59に示す。IgG濃度と測定されたPWV変位との間に、おおまかな直線関係が観察され、最も低濃度のIgG溶液(1.25μg/ml、8.33nM)が、陰性対照PBS溶液について明確に測定できる。
【0211】
実施例19:表面修飾層を含むバイオセンサー
表面修飾層を本発明の1次元格子または2次元格子バイオセンサーに付加することができる。表面修飾層は、バイオセンサーの高屈折率材料または被覆層上面に付加され、バイオセンサー表面への特異的結合物質の固定化に有用である。表面修飾層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、他のいずれものガラス(BK7,SF11,LaSF9,Ultran,FK3,FK5等)、および他のいずれもの金属酸化物を含むことができる。表面修飾層の厚さは、約5nmから約15nmでもよい。本発明の1つの態様において、高屈折率材料は、酸化タンタルである。
【0212】
酸化ケイ素は、DCスパッタリングにより本発明のバイオセンサーに被覆された。被覆の他の可能性のある方法としては、蒸発、レーザーアブレーション、化学気相蒸着、およびプラズマ増強化学気相蒸着等がある。NH2を、表面修飾層を有するバイオセンサーと、表面修飾層を有しないバイオセンサーに付加した。NH2反応性蛍光染料を用いて、バイオセンサーへのNH2の結合を視覚化した。図60を参照。表面修飾層からのより高い蛍光強度は、より高いNH2密度を示す。
【0213】
実施例20:水溶液中で高い安定性を有するバイオセンサーの設計
本発明のバイオセンサーは、使用中に水溶液に曝露することもできる。高屈折率材料層の下に界面層を付加することにより、水溶液中での安定性をバイオセンサーに付加できる。例えば、低屈折率格子材料等のプラスチック格子表面が高屈折率材料により被覆されている場合には、高屈折率材料と低屈折率材料との間に界面層を付加することができる。
【0214】
例えば、プラスチック格子表面と高屈折率光学材料との間に付着増強界面層を付加することによりバイオセンサーを構築した。付着とは、広範囲の環境条件において薄膜材料が堆積した材料にしっかりと結合して留まる能力を指す。例えば、本発明で用いられるバイオセンサー構造では、(窒化ケイ素、硫化亜鉛、酸化タンタル、または酸化チタンのような)高屈折率薄膜は、硬化したエポキシ材料から形成された格子表面構造上に堆積される。付着増強層(「結合層」または「界面層」と呼ばれる)なしでは、高屈折率材料は、液体による長期間の曝露などの厳しい実験条件下では格子表面構造から剥離する可能性がある。結合層材料は、下にある材料と高屈折率堆積材料の双方に強い付着性を有するように選択される。一般的には、結合層の厚さは、非常に薄くなるように選択され、埋め込まれた構造の光学特性を妨害しないようにする。結合層の厚さは、例えば、約1nmから約200nmの範囲である。この例では、結合層は、厚さ約5nmの酸化ケイ素層であり、プラスチック材料は、ポリエチレン(PET)、高屈折率光学材料は、酸化タンタルであった。結合層の他の材料としては、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、他のいずれものガラス(BK7,SF11,LaSF9,Ultran,FK3,FK5等)、または他のいずれもの金属酸化物である。バイオセンサーの安定性の能力は、酸化ケイ素界面層を付加することにより、水溶液中で向上した。図61を参照。向上したバイオセンサーの安定性の能力により、ノイズに対するシグナルの比を向上でき、これは、検出限界をより高感度にすることとなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高屈折率を有する材料を含む1次元格子層;
(b)1次元格子層を支持する低屈折率材料層;および
(c)低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、1次元格子の断面が共鳴格子効果の波長より短い、バイオセンサー。
【請求項2】
1次元格子の断面形状が、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、v型、u型、逆u型、逆v型、階段型または正方形である、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
低屈折率材料がガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシを含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
1次元格子が硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ばれる物質を含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
1次元格子が約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有する、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置のアレイとして配置される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
1またはそれ以上の特異的結合物質が物理吸着または化学結合により1次元格子に固定化される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
別個の位置が直径約10−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定する、請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
1またはそれ以上の特異的結合物質がその結合パートナーに結合する、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
1またはそれ以上の特異的結合物質が、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項12】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項11に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
結合パートナーが核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項10に記載のバイオセンサー。
【請求項14】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項13に記載のバイオセンサー。
【請求項15】
内側表面として請求項1に記載のバイオセンサーを含む、液体収容容器。
【請求項16】
容器がミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルから成る群より選ばれる、請求項15に記載の液体収容容器。
【請求項17】
請求項1に記載のバイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射したまたは透過した光を検出する検出器を含む検出システムであって、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システム。
【請求項18】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項19】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること、ここで1次元格子が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、
(b)バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項20】
(a)1またはそれ以上の酵素を請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを洗浄すること;
(c)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(d)PWVを検出すること;
を含む、酵素の活性を検出する方法であって、
1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する方法。
【請求項21】
(a)請求項1に記載のバイオセンサーを光で照らすこと;
(b)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
(c)1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること;
(d)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(e)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法であって、
工程(b)および工程(e)のPWVの違いが試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値である方法。
【請求項22】
(a)1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する方法。
【請求項23】
1またはそれ以上のタグが、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1またはそれ以上のタグが、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
(a)低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造;
(b)低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層;および
(c)低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、1次元格子の断面が共鳴格子効果の波長より短い、バイオセンサー。
【請求項26】
1次元格子の断面形状が、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、v型、u型、逆u型、逆v型、階段型または正方形である、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項27】
バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項28】
低屈折率材料がガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシを含む、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項29】
高屈折率材料が硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ばれる、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項30】
1次元格子が約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有する、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項31】
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置のアレイとして配置される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項32】
1またはそれ以上の特異的結合物質が物理吸着または化学結合により高屈折率材料に固定化される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項33】
別個の位置が直径約10−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定する、請求項31に記載のバイオセンサー。
【請求項34】
1またはそれ以上の特異的結合物質がその結合パートナーに結合する、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項35】
1またはそれ以上の特異的結合物質が、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項36】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項35に記載のバイオセンサー。
【請求項37】
結合パートナーが核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項34に記載のバイオセンサー。
【請求項38】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項37に記載のバイオセンサー。
【請求項39】
内側表面として請求項25に記載のバイオセンサーを含む、液体収容容器。
【請求項40】
容器がミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルから成る群より選ばれる、請求項39に記載の液体収容容器。
【請求項41】
請求項25に記載のバイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射したまたは透過した光を検出する検出器を含む検出システムであって、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システム。
【請求項42】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項43】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること、ここで高屈折率材料が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、
(b)バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項44】
(a)1またはそれ以上の酵素を請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを洗浄すること;
(c)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(d)PWVを検出すること;
を含む、酵素の活性を検出する方法であって、
1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する方法。
【請求項45】
(a)請求項25に記載のバイオセンサーを光で照らすこと;
(b)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
(c)1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること;
(d)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(e)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法であって、
工程(b)および工程(e)のPWVの違いが試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値である方法。
【請求項46】
(a)1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する方法。
【請求項47】
1またはそれ以上のタグが、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
1またはそれ以上のタグが、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
(a)高屈折率を有する材料を含む1次元または2次元格子層;
(b)1次元または2次元格子層を支持する低屈折率材料層;
(c)低屈折率材料層の反対側の1次元または2次元格子層の表面の表面修飾層;および(d)1次元または2次元格子層の反対側の表面修飾層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生するバイオセンサー。
【請求項50】
表面修飾層が酸化ケイ素を含む、請求項49に記載のバイオセンサー。
【請求項51】
表面修飾層の厚さが約5nmから約15nmである、請求項49に記載のバイオセンサー。
【請求項52】
(a)第1の表面の1次元または2次元格子を含む格子層;
(b)格子層の第1の表面の界面層;
(c)格子層の反対側の界面層表面の高屈折率材料層;および
(d)界面層の反対側の高屈折率材料層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生するバイオセンサー。
【請求項53】
界面層が、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、ガラス、および金属酸化物から成る群より選択される材料を含む、請求項51に記載のバイオセンサー。
【請求項54】
界面層が、約1nmから約200nmの厚さである、請求項51に記載のバイオセンサー。
【請求項1】
(a)高屈折率を有する材料を含む1次元格子層;
(b)1次元格子層を支持する低屈折率材料層;および
(c)低屈折率材料層の反対側の1次元格子層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、1次元格子の断面が共鳴格子効果の波長より短い、バイオセンサー。
【請求項2】
1次元格子の断面形状が、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、v型、u型、逆u型、逆v型、階段型または正方形である、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
低屈折率材料がガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシを含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
1次元格子が硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ばれる物質を含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
1次元格子が約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有する、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置のアレイとして配置される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
1またはそれ以上の特異的結合物質が物理吸着または化学結合により1次元格子に固定化される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
別個の位置が直径約10−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定する、請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
1またはそれ以上の特異的結合物質がその結合パートナーに結合する、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
1またはそれ以上の特異的結合物質が、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項12】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項11に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
結合パートナーが核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項10に記載のバイオセンサー。
【請求項14】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項13に記載のバイオセンサー。
【請求項15】
内側表面として請求項1に記載のバイオセンサーを含む、液体収容容器。
【請求項16】
容器がミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルから成る群より選ばれる、請求項15に記載の液体収容容器。
【請求項17】
請求項1に記載のバイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射したまたは透過した光を検出する検出器を含む検出システムであって、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システム。
【請求項18】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項19】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること、ここで1次元格子が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、
(b)バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項20】
(a)1またはそれ以上の酵素を請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを洗浄すること;
(c)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(d)PWVを検出すること;
を含む、酵素の活性を検出する方法であって、
1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する方法。
【請求項21】
(a)請求項1に記載のバイオセンサーを光で照らすこと;
(b)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
(c)1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること;
(d)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(e)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法であって、
工程(b)および工程(e)のPWVの違いが試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値である方法。
【請求項22】
(a)1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーを請求項1に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する方法。
【請求項23】
1またはそれ以上のタグが、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1またはそれ以上のタグが、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
(a)低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造;
(b)低屈折率1次元格子層の頂部に適用される高屈折率材料層;および
(c)低屈折率を有する材料を含む1次元格子表面構造の反対側の高屈折率層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生し、1次元格子の断面が共鳴格子効果の波長より短い、バイオセンサー。
【請求項26】
1次元格子の断面形状が、三角形、シヌソイド型、台形、長方形、v型、u型、逆u型、逆v型、階段型または正方形である、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項27】
バイオセンサーが光学波長の広周波数帯により照らされるときに光学波長の狭周波数帯がバイオセンサーから反射される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項28】
低屈折率材料がガラス、プラスチック、ポリマーまたはエポキシを含む、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項29】
高屈折率材料が硫化亜鉛、2酸化チタン、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、および窒化ケイ素から成る群より選ばれる、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項30】
1次元格子が約0.01ミクロンから約1ミクロンの周期および約0.01ミクロンから約1ミクロンの深さを有する、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項31】
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置のアレイとして配置される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項32】
1またはそれ以上の特異的結合物質が物理吸着または化学結合により高屈折率材料に固定化される、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項33】
別個の位置が直径約10−500ミクロンのミクロアレイスポットを規定する、請求項31に記載のバイオセンサー。
【請求項34】
1またはそれ以上の特異的結合物質がその結合パートナーに結合する、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項35】
1またはそれ以上の特異的結合物質が、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項25に記載のバイオセンサー。
【請求項36】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項35に記載のバイオセンサー。
【請求項37】
結合パートナーが核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、小有機分子、細胞、ウイルス、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、タンパク質溶液、化学物質ライブラリー溶液、1本鎖DNA溶液、2本鎖DNA溶液、RNA溶液および生物学的サンプルから成る群より選ばれる、請求項34に記載のバイオセンサー。
【請求項38】
生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、胃腸分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊椎液、腹膜液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液から成る群より選ばれる、請求項37に記載のバイオセンサー。
【請求項39】
内側表面として請求項25に記載のバイオセンサーを含む、液体収容容器。
【請求項40】
容器がミクロタイタープレート、試験管、ペトリ皿およびミクロ流体チャネルから成る群より選ばれる、請求項39に記載の液体収容容器。
【請求項41】
請求項25に記載のバイオセンサー、バイオセンサーに光を導く光源、およびバイオセンサーから反射したまたは透過した光を検出する検出器を含む検出システムであって、偏光フィルタが光源とバイオセンサーとの間に存在する検出システム。
【請求項42】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項43】
(a)1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること、ここで高屈折率材料が1またはそれ以上の特異的結合物質を含む別個の位置のアレイで被覆されており、
(b)バイオセンサーの各々の別個の位置を光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーの各々の別個の位置について最大波長値(PWV)を検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質が別個の位置でそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、PWVが変位する方法。
【請求項44】
(a)1またはそれ以上の酵素を請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを洗浄すること;
(c)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(d)PWVを検出すること;
を含む、酵素の活性を検出する方法であって、
1またはそれ以上の酵素が酵素活性によりバイオセンサーの1またはそれ以上の特異的結合物質を変化させた場合に、PWVが変位する方法。
【請求項45】
(a)請求項25に記載のバイオセンサーを光で照らすこと;
(b)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
(c)1またはそれ以上の結合パートナーを含む試験サンプルをバイオセンサーに適用すること;
(d)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(e)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量を測定する方法であって、
工程(b)および工程(e)のPWVの違いが試験サンプル中の1またはそれ以上の結合パートナーの量の測定値である方法。
【請求項46】
(a)1またはそれ以上のタグを含む1またはそれ以上の結合パートナーを請求項25に記載のバイオセンサーに適用すること;
(b)バイオセンサーを光で照らすこと;および
(c)バイオセンサーからのPWVを検出すること;
を含む、1またはそれ以上の特異的結合物質のそれぞれの結合パートナーへの結合を検出する方法であって、
1またはそれ以上の特異的結合物質がそれぞれの結合パートナーに結合した場合に、反射した光の波長が変位する方法。
【請求項47】
1またはそれ以上のタグが、ビオチン、サクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(2−ピリジル−ジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(SMPT)、ジメチルピメリミデート(DMP)、およびヒスチジンから成る群より選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
1またはそれ以上のタグが、バイオセンサーを光で照らす工程の前に、ストレプトアビジン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびストレプトアビジン被覆ナノ粒子から成る群より選ばれる構成物と反応する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
(a)高屈折率を有する材料を含む1次元または2次元格子層;
(b)1次元または2次元格子層を支持する低屈折率材料層;
(c)低屈折率材料層の反対側の1次元または2次元格子層の表面の表面修飾層;および(d)1次元または2次元格子層の反対側の表面修飾層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生するバイオセンサー。
【請求項50】
表面修飾層が酸化ケイ素を含む、請求項49に記載のバイオセンサー。
【請求項51】
表面修飾層の厚さが約5nmから約15nmである、請求項49に記載のバイオセンサー。
【請求項52】
(a)第1の表面の1次元または2次元格子を含む格子層;
(b)格子層の第1の表面の界面層;
(c)格子層の反対側の界面層表面の高屈折率材料層;および
(d)界面層の反対側の高屈折率材料層の表面に固定化された1またはそれ以上の特異的結合物質;
を含むバイオセンサーであって、
バイオセンサーが照らされるときに共鳴格子効果が反射した放射スペクトル上で発生するバイオセンサー。
【請求項53】
界面層が、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、パイレックス、ガラス、および金属酸化物から成る群より選択される材料を含む、請求項51に記載のバイオセンサー。
【請求項54】
界面層が、約1nmから約200nmの厚さである、請求項51に記載のバイオセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【公開番号】特開2010−122227(P2010−122227A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270534(P2009−270534)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2003−564545(P2003−564545)の分割
【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2003−564545(P2003−564545)の分割
【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】
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