説明

線材、線材の製造方法、線材の製造装置

【課題】従来と同一寸法でも高効率を得ることのできるコイル、コイル組品を得るための線材、線材の製造方法、線材の製造装置を提供する。
【解決手段】所定の単位部が連続して形成された線材12であって、前記単位部は、一端の断面積が、他端の断面積より小さく、前記他端から前記一端の方向へ、各部の断面の高さhc2がhc1に短くなることにより前記各部の断面積が連続的に減少するものであって、各単位部は、前記一端同士および前記他端同士が直接的又は間接的に接続することにより連続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気及び電子部品に使用されるコイル等に用いられる線材およびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気部品や電子部品、特にコイルを用いる変成器等の部品においては、コイルと、コイルとともに磁界回路を形成するための磁心部とを備えたコイル組品が用いられている。
【0003】
ここで図22(a)(b)にそのような従来のコイル組品を示す。図22(b)に示すように、コイル組品300は、コイル310、およびコイル310の中心に設けられた中央部320と、コイル310の外側に設けられた外縁部330と、中央部320と外縁部330とを接続するブリッジ部340とを有する磁心部350を備えている。なお、図22(a)において、コイル310を説明するため、磁心部350の上半分は省略して図示した。
【0004】
また、図22(a)に示すように、コイル310は、最内周同士が接続した、上下一対の渦巻部を有する、いわゆるアルファ捲きコイルである。コイル310は、上部の渦巻部の310aの最外周から、他の部品に接続するための端部311aが、下部の渦巻部311bの最外周から、他の部品に接続するための端部311bがそれぞれ伸びている。
【0005】
このようなコイル組品は、通信機や、携帯電話または携帯通信端末の基地局の変成器等に主に用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなコイル組品には、以下のような問題があった。すなわち、コイル組品300に用いられているコイル310の能力は、主に巻線に用いる線材の幅、厚み、長さ、および巻線の捲き数に依存する。
【0007】
したがって、同一寸法のコイルでさらなる効率の向上を得ることは困難であった。
【0008】
また、コイル組品300を他の装置内に実装する場合、図22(c)に示すように、端部311a、311bを磁心部350の底面もしくは上面に折り曲げる、等の必要があるが、このとき折り曲げた巻線の厚みの分、コイル組品300の背を高くしてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、従来と同一寸法でも高効率を得ることのできるコイル、コイル組品を得るための線材、線材の製造方法、線材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の本発明は、所定の単位部が連続して形成された線材であって、
前記単位部は、
一端の断面積が、他端の断面積より小さく、前記他端から前記一端の方向へ、各部の断面の高さ又は幅が短くなることにより前記各部の断面積が連続的に減少するものであって、
各単位部は、前記一端同士および前記他端同士が直接的又は間接的に接続することにより連続している線材である。
【0011】
また、第2の本発明は、前記一端および/または前記他端は、一定の断面積である所定長の部分を介して間接的に接続している第1の本発明の線材である。
【0012】
また、第3の本発明は、断面の形状が矩形である第1の本発明の線材である。
【0013】
また、第4の本発明は、断面の形状が実質上円形または実質上楕円形のいずれかである第1の本発明の線材である。
【0014】
また、第5の本発明は、表面が絶縁皮膜で被覆されている第1から第4のいずれかの本発明の線材である。
【0015】
また、第6の本発明は、前記絶縁皮膜は電着塗装により形成されている第5の本発明の線材である。
【0016】
また、第7の本発明は、所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、第1の本発明の線材の製造方法であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
他方の成型ローラの前記素線との接触面は、前記断面形状の残りの一部を形成しており、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心は、前記一方の成型ローラの回転中心に対して偏心している線材の製造方法である。
【0017】
また、第8の本発明は、前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が前記他方の成型ローラにもっとも接近したときにもっとも遅く、前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように連続的に変化させる第7の本発明の線材の製造方法である。
【0018】
また、第9の本発明は、少なくとも、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が、前記他方の成型ローラにもっとも接近したとき、および前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える第8の本発明の線材の製造方法である。
【0019】
また、第10の本発明は、前記一方の成型ローラの凹溝は、前記一方の成型用ローラと前記他方の成型用ローラとの接触点から見て同一の深さとなる所定長の部分を有し、
前記所定長の部分は、前記凹溝の底面部分の周の中心と、前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線を含む場所に設けられており、
前記場所は、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置である第7の本発明の線材の製造方法である。
【0020】
また、第11の本発明は、前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記凹溝の底面部分の周の中心と前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置であり、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する第7または第10の本発明の線材の製造方法である。
【0021】
また、第12の本発明は、所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、第1の本発明の線材の製造方法であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
前記一対の成型ローラにおける、他方の成型ローラには前記凹溝の幅と実質同一の幅を有し、前記線材の断面形状の残りの一部に対応する凸部が形成されており、
前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心との間の距離を、前記一対の成型ローラの同期した回転に応じた周期で、所定の大きさだけ変化させる線材の製造方法である。
【0022】
また、第13の本発明は、前記変化は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったたときを含む所定の時間だけ停止し、残りの時間は連続的に実行される第12の本発明の線材の製造方法である。
【0023】
また、第14の本発明は、前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したときにもっとも遅く、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように変化させる第12または第13の本発明の線材の製造方法である。
【0024】
また、第15の本発明は、少なくとも、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える第14の本発明の線材の製造方法である。
【0025】
また、第16の本発明は、前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近するとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠ざかるときに、前記他方のローラと対向するような位置であって、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する第12または第13の本発明の線材の製造方法である。
【0026】
また、第17の本発明は、前記一対の成形ローラは同期回転しており、前記凹溝および/または凸部の幅は、前記一方の成型ローラおよび/または他方の成型ローラの周に沿って連続的に変化している第7または第12の本発明の線材の製造方法である。
【0027】
また、第18の本発明は、所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、第1の本発明の線材の製造装置であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
他方の成型ローラの前記素線との接触面は、前記断面形状の残りの一部を形成しており、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心は、前記一方の成型ローラの回転中心に対して偏心している線材の製造装置である。
【0028】
また、第19の本発明は、前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が前記他方の成型ローラにもっとも接近したときにもっとも遅く、前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように連続的に変化させる第18の本発明の線材の製造装置である。
【0029】
また、第20の本発明は、少なくとも、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が、前記他方の成型ローラにもっとも接近したとき、および前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える第19の本発明の線材の製造装置である。
【0030】
また、第21の本発明は、前記一方の成型ローラの凹溝は、前記一方の成型用ローラと前記他方の成型用ローラとの接触点から見て同一の深さとなる所定長の部分を有し、
前記所定長の部分は、前記凹溝の底面部分の周の中心と、前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線を含む場所に設けられており、
前記場所は、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置である第18の本発明の線材の製造装置である。
【0031】
また、第22の本発明は、前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記凹溝の底面部分の周の中心と前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置であり、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する第18または第21の本発明の線材の製造装置である。
【0032】
また、第23の本発明は、所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、第1の本発明の線材の製造装置であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
前記一対の成型ローラにおける、他方の成型ローラには前記凹溝の幅と実質同一の幅を有し、前記線材の断面形状の残りの一部に対応する凸部が形成されており、
前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心との間の距離を、前記一対の成型ローラの同期した回転に応じた周期で、所定の大きさだけ変化させる線材の製造装置である。
【0033】
また、第24の本発明は、前記変化は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったたときを含む所定の時間だけ停止し、残りの時間は連続的に実行される第23の本発明の線材の製造装置である。
【0034】
また、第25の本発明は、前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したときにもっとも遅く、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように変化させる第23または第24の本発明の線材の製造装置である。
【0035】
また、第26の本発明は、少なくとも、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える第25の本発明の線材の製造装置である。
【0036】
また、第27の本発明は、前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近するとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠ざかるときに、前記他方のローラと対向するような位置であって、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する第23または第24の本発明の線材の製造装置である。
【0037】
また、第28の本発明は、前記一対の成形ローラは同期回転しており、前記凹溝および/または凸部の幅は、前記一方の成型ローラおよび/または他方の成型ローラの周に沿って連続的に変化している第18または第23の本発明の線材の製造装置である。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したところから明らかなように、本発明によれば、従来と同一寸法で抵抗値を削減して高能率に動作するコイル、コイル組品等に用いる線材、線材の製造方法、製造装置等を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明を行う。
【0040】
(実施の形態1)
図1(a)〜(d)は本発明に関連する発明の実施の形態1におけるコイル組品の構成を示す図である。図1(a)に示すように、本発明に関連する発明のコイル組品に相当するコイル組品1は、本発明に関連する発明のコイルに相当する平角線コイル10と、平角線コイル10を収納した格好になっている、本発明に関連する発明の磁心部に相当する磁心部20とを有している。
【0041】
また図1(b)はコイル組品1の平面図であり、図1(c)は図1(b)のA−A′直線による模式断面図であり、図1(d)は図1(b)のB−B′直線による模式断面図である。図1(c)に示すように、磁心部20は、平角線コイル10の中心部、すなわち最内周より内側に設けられている、本発明に関連する発明の中央部に相当する中央部21と、平角線コイル10の外縁に設けられている、本発明に関連する発明の外縁部に相当する外縁部22と、中央部21と外縁部21とを接続する、本発明に関連する発明のブリッジ部に相当するブリッジ部23とから構成されている。さらに、磁心部20は、平角線コイル10の捲き方向と平行な向きに2分割された一対の磁心部材20aおよび20bからなり、平角線コイル10は、磁心部材20aおよび20bの間に挟まれている。
【0042】
次に、図2(a)〜(c)は、平角線コイル10の構成を示す図であって、図2(a)は斜視図、図2(b)は平面図であり、図2(c)は図2(b)のA−A′直線による模式断面図である。
【0043】
このような構成を有する本実施の形態のコイル組品について説明を行うとともに、本発明に関連する発明のコイル、及び本発明の線材について説明を行う。
【0044】
第1に、平角線コイル10について説明する。図2(a)(b)に示すように、平角線コイル10は、最内周同士が接続した一対の渦巻部10a、10bを有する、いわゆるアルファ捲きコイルであって、渦巻部10aの最外周から、他の部品に接続するための端部11aが、渦巻部10bの最外周から、他の部品に接続するための端部11bがそれぞれ伸びている。ただし図2(b)において、渦巻部10bは点線にて示した。また、渦巻部10a、10bは本発明に関連する発明の一対の渦巻部に相当する。
【0045】
また、図2(c)に示すように、平角線コイル10の巻線は、幅は均等であるが、内周から外周に向かって徐々に厚みを増していく構成を有している。なお、両端11a、11bの厚みは同一となる。
【0046】
次に図3(a)は平角線コイル10一個分の巻線に相当する線材12の平面図、図3(b)は同側面図である。図に示すように、線材12は、幅は各部で同一であって、厚みは中央で一番薄く、両端に向かって徐々に厚くなっていく構成を有している。なお、図において、図2(c)のコイル断面図における厚みが対応する箇所を、薄い箇所をhc1,厚い箇所をhc2としてそれぞれ示した。なお、線材12の両端はコイル10の両端部11a、11bに対応する。
【0047】
平角線コイル10は、コイルの捲き数が大きくなるほど、外周側の巻線の断面積を、内周側の巻線の断面積よりも大きくとることができるので、巻き数、外形が同一である場合、同一の断面積を有する従来のコイルより、コイル抵抗を低減して、より高い効率を得ることができる。
【0048】
ここで表1に、同一幅、同一厚みの巻線を用いた従来例の平角線コイルと、同一幅で厚みが異なる巻線を用いた本実施の平角線コイルの比較を示す。ただしここで平角線コイルの形状は、図2(a)〜(c)に示す例と同一である。従来例、本実施の形態の両方のコイルは、巻き数と巻線の長さとが同じであるが、本実施の平角線コイルの方が抵抗値が小さくなっている。したがって、このコイルで変成器を作成した場合、消費電力を低減することが可能となる。
【0049】
【表1】

なお、表において、巻線の材質として銅を用いた。銅の物理的な電気抵抗値は1.694Ω・cm10-6であるが、コイル、電気製品に用いる銅の抵抗値は、φ2の銅線の場合、スケアは3.142mmで5.488(Ω/km、20℃下における)であって、この値を表1の基準とした。また、スケア3mmの場合の抵抗値は5.75(Ω/km、20℃下における)である。
【0050】
このように、本実施の形態の平角線コイルは2.36Ωと、従来例の3.61Ωに対し、コイル抵抗を約34%削減することが可能となったことがわかる。
【0051】
第2に、磁心部について説明する。図1(c)に示すように、ブリッジ部23は、中央部21から外縁部22に向かって、その厚みを徐々に薄くしていき、外縁部21の直前でもっとも薄い寸法となる構成を有している。これにより、中央部21,外縁部22およびブリッジ部23で囲まれる空間は、図中A−A′直線による断面が略くさび型の形状を形成し、平角線コイル10の断面形状と相似になり、磁心部20の内部における平角線コイルの占積率を高め、無駄のないコイル組品を得ることができる。
【0052】
さらに、本実施の形態においては、図1(a)(b)に示すように、磁心部20のブリッジ部23は、中央部21から2つの外縁部21に向かって、その幅を徐々に広くしていき、外縁部21の直前で最大幅の寸法となる構成を有している。これは次の理由による。平角線コイル10により発生する磁界回路の負担は、磁心部20の2分の1に対して均等であることが必要である。これに対し、ブリッジ部23の厚みだけを変化させた場合、ブリッジ部23の断面積は中央部21から遠ざかるにつれて減少することになる。これを防ぐために、ブリッジ部23は、中央部21から遠ざかるにつれて、厚みを減らすとともに幅広になる構成としている。
【0053】
ここで図4(a)〜(c)に、磁界部20における中央部21,外縁部22およびブリッジ部23の断面積の関係を示す。ただし図4(b)は図4(a)のA−A′直線による模式断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B′直線による模式断面図である。図4(a)に示すように、平角線コイル10が形成する磁界回路に対応する中央部21、外縁部22の断面積をそれぞれS1、S2とし、さらに図4(b)、図4(c)に示すブリッジ部23の断面積をそれぞれS3、S4とすると、各断面積の間にはS1=S2=S3=S4の関係がある。これにより、磁界回路の負担を、磁心部20において均等化することができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態のコイル組品は、高い占積率を有し、コイル抵抗が低いコイルを高能率で動作させることができるものである。
【0055】
なお、上記の実施の形態においては、本発明に関連する発明のコイルは平角線コイル110であるとして説明を行ったが、本発明に関連する発明のコイルは、少なくとも最外周側の巻線の断面積が、最内周側の巻線の断面積よりも大きいものであればよい。したがって、平角線に限らず、断面が丸、楕円、多角形、矩形等の形状を有する巻線であってもよい。このとき、コイルのリード線部となる両端部(図1の端部11a、端部11bが相当する)の断面積は、上記最外周側の巻線の断面積と同一に保つようにするのが望ましい。また、いわゆるアルファ捲きコイルでなくとも、他の巻き形状を有するコイルであってもよい。
【0056】
また、本発明に関連する発明のコイル組品に用いられるコイルおよび本発明に関連する発明のコイルは、図23に示すように、全体として外周側のほうが内周側よりもその厚みが大きく、個々の巻線は、隣り合った周と周との間で互いに対向する側が実質上同一の厚みを有するようなものとしてもよい。ただし図23は、図2(c)の断面図に相当する部分断面図である。この場合、図2(c)に示す例と異なり、隣り合った巻線に段差が生じないため、磁心部内の占有率をさらに高めることができる。
【0057】
(実施の形態2)
図5(a)〜(e)は本発明に関連する発明の実施の形態2におけるコイル組品の構成を示す図である。図5(a)に示すように、コイル組品2は、本発明に関連する発明の同心円上に配置された複数の一回捲きコイルに相当する多重一回捲きコイル30と、多重一回捲きコイル30を収納した格好になっている、本発明に関連する発明の磁心部に相当する磁心部40とを有している。
【0058】
また図5(b)はコイル組品1の平面図であり、図5(c)は図1(b)のA−A′直線による模式断面図であり、図5(d)は図1(b)のB−B′直線による模式断面図である。図5(c)に示すように、磁心部40は、多重一回捲きコイル30の中央部、すなわち最内周より内側に設けられている、本発明に関連する発明の中央部に相当する中央部41と、多重一回捲きコイル30の外縁に設けられている、本発明に関連する発明の外縁部に相当する外縁部42と、中央部41と外縁部42とを接続する、本発明に関連する発明のブリッジ部に相当するブリッジ部43とから構成されている。さらに磁心部40は、多重一回捲きコイル30の捲き方向と平行な向きに2分割されてなる磁心部材40aおよび40bからなり、多重一回捲きコイル30は、磁心部材40aおよび40bの間に挟まれている。
【0059】
このような構成を有する本実施の形態のコイル組品について説明を行う。
【0060】
図5(a)〜(d)に示すように、多重一回捲きコイル30の巻線は、幅は均等であって、内周側のものから外周に向かって徐々に厚みを増していく複数の一回捲き平角線コイル30a〜30dを有している。ただしそれぞれの一回捲き平角線コイル30a〜30dは上面で高さがそろえられ、厚みの差は下面に現れている。
【0061】
一回捲き平角線コイル30aは中央部41の周囲を実質一周捲くように配置され、一回捲き平角線コイル30bは一回捲き平角線コイル30bを実質一周捲くように配置され、以下同様にして、外周側の一回捲き平角線コイルが内周側の平角線コイルの周囲を捲くように、同心円状に配置されている。これは、実施の形態1の平角線コイル10と同様、同一の断面積を有する従来のコイルより、コイル抵抗を低減して、より高い効率を得ることができる。
【0062】
また、磁心部40において、磁心部材40aおよび40bは、図5(c)に示すように、磁心部材40aは、側面においても磁心部材21a、21bと同様の形状であって、ブリッジ部43が、中央部41から外縁部42に向かって、その厚みを徐々に薄くしていき、外縁部42の直前でもっとも薄い寸法となる構成を有している。これにより、中央部41,外縁部42およびブリッジ部43で囲まれる空間は、図中A−A′直線による断面が略くさび型の形状を形成し、多重一回捲きコイル30の断面形状と相似になる。このような多重一回捲きコイル30は、磁心部40の内部における占積率を高めることができ、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0063】
さらに、図5(b)に示すように、上面においては実施の形態1の磁心部材21a、21bと同様の形状であって、ブリッジ部43は、中央部41から2つの外縁部42に向かって、その幅を徐々に広くしていき、外縁部42の直前で最大幅の寸法となる構成を有している。これは実施の形態1と同様、磁界回路の負担を、磁心部40において均等化するためである。
【0064】
以上のように、本実施の形態のコイル組品は、一回捲きのコイルを多重化したコイルにおいても高い占積率を有し、コイル抵抗が低いコイルを高能率で動作させることができるものである。
【0065】
なお、上記の説明においては、多重一回捲きコイル30の巻線は、上面で高さが揃えられた一回捲き平角線コイル30a〜30dから構成されるものとしたが、図5(e)に示すように、上面、下面のいずれにも厚みの変化が現れる構成としてもよい。この場合、磁心部として、実施の形態1の磁心部20(磁心部材20a、20b)と組み合わせたコイル組品が得られる。
【0066】
また、上記の実施の形態においては、本発明に関連する発明の複数のコイルは多重一回捲きコイル30であるとして説明を行ったが、本発明に関連する発明の複数の一回捲きコイルは、少なくとも最外周側の巻線の断面積が、最内周側の巻線の断面積よりも大きいものであればよい。したがって、平角線に限らず、断面が丸、楕円、多角形、矩形等の形状を有する巻線であってもよい。
【0067】
また、本発明に関連する発明のコイル組品に用いられるコイルおよび本発明に関連する発明のコイルは、図24に示すように、全体として外周側のほうが内周側よりもその厚みが大きく、個々の一回捲きコイルの巻線30a〜30dは、隣り合った周と周との間で互いに対向する側が実質上同一の厚みを有するようなものとしてもよい。ただし図24は、図5(e)の断面図に相当する部分断面図である。この場合、図5(d)に示す例と異なり、隣り合った巻線に段差が生じないため、磁心部内の占有率をさらに高めることができる。
【0068】
(実施の形態3)
図6(a)は本発明に関連する発明の実施の形態3における平角線コイル50の斜視図、同(b)は図6(a)のA−A′断面図である。図6(c)は本発明に関連する発明の実施の形態3におけるコイル組品の構成を示す図である。ただし図5と同一部または相当部には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0069】
平角線コイル50について説明する。図6(a)(b)に示すように、本発明に関連する発明の捲き軸方向に平行な方向に捲かれたコイルに相当する平角線コイル50は、渦巻状であって、その最内周から、他の部品に接続するための端部50aが、その最外周から、他の部品に接続するための端部50bがそれぞれ伸びている。
【0070】
また、図6(b)に示すように、平角線コイル50の巻線は、幅は均等であるが、端部内周(厚みhc2′)から外周に向かって徐々に厚みを増していき、最外周で最大になる(厚みhc1′)構成を有している。ただしそれぞれのターンは上面で高さがそろえられ、厚みの差は下面に現れている。また、図において、平角線コイル50の断面は一方のみを示したが、ほぼ左右対称の形状を有するので、他方の表示は省略した。
【0071】
次に図7(a)は平角線コイル50一個分の巻線に相当する線材12の平面図、図3(b)は同側面図である。図に示すように、線材51は、幅は各部で同一であって、一端が一番薄く(厚さt1)、他端に向かって徐々に厚くなっていき、他端で最大の厚みを与える(厚さt2)構成を有している。したがって、端部50aの厚みはt1,端部50bの厚みはt2となる。
【0072】
このような平角線コイル50は、コイルの捲き数が大きくなるほど、外周側の巻線の断面積を、内周側の巻線の断面積よりも大きくとることができ、巻き数、外形が同一である場合、同一の断面積を有する従来のコイルより、コイル抵抗を低減して、より高い効率を得ることができる。
【0073】
このような平角線コイルを、実施の形態2と同様の磁心部40と組み合わせることにより、高い占積率を有するコイル組品が得られる。
【0074】
なお、上記の説明においては、平角線コイル50の巻線は、上面で高さが揃えられたものとしたが、上面、下面のいずれにも厚みの変化が現れる構成としてもよい。この場合、実施の形態2の場合と同様、磁心部として、実施の形態1の磁心部20(磁心部材20a、20b)と組み合わせたコイル組品が得られる。
【0075】
また、図においては、平角線コイル50を90度回転させ、平角線コイル50と磁心部40との配置を、その両端部50a、50bの間に外縁部42の一方が挟まれるようにしたが、実施の形態の形態1,2と同様に、外縁部42を挟み込まないような配置はとしてもよい。また、図6に示す平角線コイルの配置を、実施の形態1,2において実施してもよい。
【0076】
また、上記の実施の形態においては、本発明に関連する発明のコイルは平角線コイル50であるとして説明を行ったが、本発明に関連する発明のコイルは、少なくとも最外周側の巻線の断面積が、最内周側の巻線の断面積よりも大きいものであればよい。したがって、平角線に限らず、断面が丸、楕円、多角形、矩形等の形状を有する巻線であってもよい。
【0077】
また、本発明に関連する発明のコイル組品に用いられるコイルおよび本発明に関連する発明のコイルは、図25に示すように、全体として外周側のほうが内周側よりもその厚みが大きく、個々の巻線は、隣り合った周と周との間で互いに対向する側が実質上同一の厚みを有するようなものとしてもよい。ただし図25は、図6(b)の断面図に相当する部分断面図である。この場合、図6(b)に示す例と異なり、隣り合った巻線に段差が生じないため、磁心部内の占有率をさらに高めることができる。
【0078】
(実施の形態4)
図8(a)〜(c)は本発明に関連する発明の実施の形態4におけるコイル組品の構成を示す図である。図において、図1と同一部または相当部には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。各図に示すように、コイル組品60は平角線コイル70と、平角線コイル60を収納した格好になっている磁心部20とを有している。
【0079】
また図8(a)はコイル組品1の平面図であり、図8(c)は図1(b)のA−A′直線による模式断面図であり、図8(c)は図8(b)のB−B′直線による模式断面図である。
【0080】
平角線コイル70について説明する。図8(a)に示すように、本発明に関連する発明のコイルに相当する平角線コイル70は、平角線コイル10と同様、最内周同士が接続した一対の渦巻部70a、70bを有する、いわゆるアルファ捲きコイルであって、渦巻部10aの最外周から、他の部品に接続するための端部71aが、渦巻部70bの最外周から、他の部品に接続するための端部71bがそれぞれ伸びている。ただし図8(c)において、渦巻部70bは点線にて示した。ただし平角線コイル10と異なり、平角線コイル70は従来例と同様、巻線は、幅、厚みとも各部で均等である。
【0081】
第2に、磁心部20は、実施の形態1と同様なので詳細な説明は省略する。
【0082】
さらに、本実施の形態においては、図8(b)(c)に示すように、平角線コイル70の渦巻部70a、70bの間に、本発明に関連する発明のスペーサ部材に相当する断面二等辺三角形のテーパーワッシャ80a、80bが挿入されており、平角線コイルの70の最内周から渦巻部70a、70bを押し広げて、渦巻部70a、70bの、互いに対向しない方の2つの主面を、磁心部20の外壁と密着させた格好になっている。
【0083】
ここで図9(a)〜(c)にテーパワッシャ80a、80bの構成を示す。図に示すように、テーパワッシャ80a、80bはそれぞれ平角線コイル70を当分したのと実質同一の形状を有し、渦巻部70a、70bの境界のほぼ全体に挿入される。
【0084】
このような本実施の形態の構成の構成においては、必ずしも磁心部内の空間に対応した形状のコイルを用意する必要がなくなり、設計の自由度を高めることができるという効果がある。
【0085】
さらに本実施の形態においては、渦巻部70aと70bとの間の間隔が大きくなり、外縁部22の大きさと同等に達している。これにより、中央部21を含む磁気回路のセンターポール部分が伸びることとなり、磁心部20内において磁束が任意の箇所に一点集中することを防ぐ効果がある。
【0086】
なお、上記の説明においては、渦巻部70aと70bとの間にはテーパーワッシャ80a、80bをほぼコイルの全面にわたって挿入するものとして説明を行ったが、本発明に関連する発明のスペーサ部材としては、図10(a)〜(c)に示すペーパースペーサ99を用いてもよい。これは紙、樹脂、繊維等を2つ折りにして、その反発力によってテーパーワッシャ80aと同等の効果を生じさせることができる。また、ペーパースペーサ99は、コイルの全面に配置する必要はなく、渦巻部70a、70bを押し広げて、それぞれの主面が磁心部20の外壁と密着させる程度の力を与えることができればよい。
【0087】
以上のように、本実施の形態のコイル組品は、磁心部と組み合わせて用いるコイルの自由度を高めるとともに、一対の渦巻部の間に生ずるキャパシタンスを減少させ、特に高電圧に対して用いる場合、電流が流れやすいという利点がある。
【0088】
また、コイルの部品の両端部は電位差が大きくなるが、この両端が短絡することを防ぐ絶縁効果がある。
【0089】
また、上記の説明では、最内周同士が接続した一対の渦巻部を有するコイルを例に説明を行ったが、本発明に関連する発明のコイルは、最外周同士で接続された複数の上記一対の渦巻部、すなわち最内周同士が接続した一対の渦巻部を複数を有するコイルであってもよく、平角線に限らず、断面が丸、楕円、多角形、矩形等の形状を有する巻線であってもよい。また、いわゆるアルファ捲きコイルでなくとも、他の巻き形状を有するコイルであってもよい。
【0090】
(実施の形態5)
図11(a)(b)は本発明に関連する発明の実施の形態5におけるコイルのコア部材の構成を示す図である。図11(a)に示すように、本発明に関連する発明のコア部材に相当するコア部材90は、コイルが配置された際、その最内周より内側に対応するよう設けられている、本発明に関連する発明の軸部に相当する軸部91と、コイルの最外周の外側に対応するよう設けられている、本発明に関連する発明の側壁部に相当する側壁部92と、軸部91と側壁部92とを接続する、本発明に関連する発明のブリッジに相当するブリッジ部93とから構成されている。
【0091】
このような構成を有する本実施の形態のコア部材について説明を行うとともに、本発明に関連する発明のコイル組品について説明を行う。
【0092】
図11(b)に示すように、ブリッジ部93は、軸部91から側壁部92に向かって、その厚みを徐々に薄くしていき、側壁部92の直前でもっとも薄い寸法となる構成を有している。図12(a)に示すように、この最も薄くなった部位に折り曲げた平角線コイル70の端部をはめ込む。図12(b)に示すように、端子の折り曲げにより生ずる厚みは、軸部91の長さと同一になるので、低背性の高いコイル組品を得ることができる。
【0093】
また、このとき、実施の形態1の磁心部20のブリッジ部23と同様に、ブリッジ部93の幅は、軸部91から2つの側壁91に向かって、その幅を徐々に広くしていき、側壁部91の直前で最大幅の寸法となる構成を有し、ブリッジ部93は、軸部91から遠ざかるにつれて、厚みを減らすとともに幅広になる構成としている。これにより、ブリッジ部93,軸部91,側壁部92の断面積を同一となるようにし、磁界回路の負担を、コア部材全体において均等化することができる。なお、ブリッジ部93の幅は変化させず一定とした構成としてもよい。低背化の効果は十分に得られるからである。
【0094】
なお、図12(c)に示すように、側壁部92に隣接するブリッジ部93の一部を、コイルの巻線の外形に対応する分だけ段差をつけて、この段差内にコイルの両端部を織り込むようにしても、同様の効果が得られる。このとき、段差の幅は、コイルの巻線の幅より大きくてもよいが、段差の深さは、少なくともコイルの端部リード線の厚みdと同等またはそれ以上である必要がある。
【0095】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6は、実施の形態1,3の平角線コイル10,50を作成するための線材の製造装置である。
【0096】
図13(a)は、本実施の形態の線材の製造装置を示す側面図、図13(b)は同平面図である。また、図14は成型用受けローラ120の正面図であり、図15(a)は成型用押しローラ110の正面図である。各図において、成型用押しローラ110および成型用受けローラ120は、線材の材料となる、一様な断面形状を有する素線150を成型するための手段、線材排出ゴムローラ130a、130bは成型された線材を送り出す手段、線材巻き取りボビン140は線材を巻き取る手段である。
【0097】
また、成型用押しローラ110は略円筒形で側面部に相当する外周部111を有しており、成型用受けローラ120は、その側面のなす周に沿って、一定の幅を有する溝部122が形成されている。図14(a)および図15に示すように、溝部122は円周を形成し、周の中心121cは、成型用受けローラ120の回転中心120cに対して偏心している。そのため、図15の円で囲んだ拡大部分にて示すように、溝部の122の深さは、成型用受けローラ120の各部で異なり、図に示す例では、成型用受けローラ120の回転中心120cと、周の中心121cとを結ぶ直線(これは成型用受けローラ120の直径上にある)上にて、それぞれ最大深さdr1,最小深さdr2となる。なお、最大深さdr1は、最小深さdr2よりも周の中心121cから遠い側に位置する。
【0098】
さらに最大深さdr1の位置には、突起部122が設けられている。なお、上記の構成において、成型用受けローラ、製材排出ゴムローラ、線材巻き取りボビンを保持、駆動させる手段等々に関しては、公知の技術を用いるものとして、図示ならびに詳細な説明は省略する。
【0099】
また、素線150の外形は任意でよいが、その径は、成型されてできあがる線材160の径よりも大きいものである必要がある。
【0100】
なお、上記の構成において、成型用押しローラ110は本発明の他方の成型ローラに相当し、成型用受けローラ120は本発明の一方の成型ローラに相当し、溝部121は本発明の凹溝に相当する。また、突起部122は本発明の突起部に相当する。
【0101】
以上のような構成を有する、実施の形態の線材の製造装置の動作を説明するとともに、本発明の線材の製造方法の一実施の形態について説明を行う。ただし突起部122の動作については別途述べ、以下の説明ではその構成は省略して説明する。
【0102】
はじめに、図13中実線矢印に示すように、対向する成型用押しローラ110および成型用受けローラ120は、対向面側に向かって互いに同期して回転している。この成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間に、素線150を挿入する。二つのローラの回転方向は、対向する点における接線で素線150の挿入方向と同一になるから、素線150は、成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間に入り込み、加圧成型されることになる。
【0103】
ここで図16(a)に成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間で加圧成型される素線150の拡大図を、図16(b)は、図16(a)において、成型用受けローラ120の回転中心120sから伸びる直線イ、ロ、ハ、ニ、のそれぞれにおける断面図をそれぞれ示す。
【0104】
ローラ間に挿入された素線150は、成型用受けローラ120の溝部121にはまりこんでから、成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間に送られ、図中イ、ロ、ハの順で送り出されるたびに、成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間の距離が短くなり、素線150は両ローラに圧迫され、変形し始める。図中ハの時点となる、成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との接点120rで、溝部121と、外周部111とで形成される空間と同一の形状に成型され、ニの時点で両ローラ間から解放され、線材160として、外部に引き出される。
【0105】
ところで、溝部121のなす周の中心121cは、成型用受けローラ120の回転中心120cに対して偏心しているため、溝部121の深さは成型用受けローラ120の各部にて異なり、例えば図16(a)に示す点120r′における溝部122の深さdr′は、現在素線150を加圧している点120rにおける深さdrよりも浅い。
【0106】
したがって、成型用押しローラ110の成型用受けローラ120の回転が進むたびに、溝部120の深さは徐々に変化することになる。溝部120の幅は一定なので、加圧成型により得られる線材160は、その厚みが徐々に変化することになる。
【0107】
ここで図16(c)は、図16(a)において、点120r′が現在の120rの位置に来た時の素線150の加工状態を、回転中心120sから伸びる直線イ、ロ、ハ、ニ、のそれぞれにおける断面図として示したものである。図に示すように、線材160の厚みは、溝部122の、点120r′における深さdr′に対応するため、図16(b)に示す線材160よりも、その厚みを減じたものとなっている。また、点120rから120r′までの間に加工された線材160は、その厚みを連続的に減らしている。
【0108】
なお、溝部122の最大深さdr1と最小深さdr2とは、成型用受けローラ120の回転中心120cに対して対称の位置にあるので、最小深さdr2を与える地点を起点として、ローラ一回転あたりに得られる線材160の側面形状200は、図17(a)に模式的に示すように、最小深さdr2にて成型された両端が最も薄く、最大深さdr1で形成された中央部が最も厚いものとなる。
【0109】
したがって、製造装置100を連続運転させると、図17(b)に示すように、線材160においては、上記の側面形状200が、最小深さdr2にて成型された両端または最大深さdr1にて成型された両端が互いに連結して、連続して現れることになる。
【0110】
このようにして得られた線材160は、成型用押しローラ110と成型用受けローラ120と同様の回転をする線材排出ゴムローラ130a、130bによって線材巻き取りボビン140へ送り出され、図13(b)に示すように、線材巻き取りボビン140に巻き取られる。
【0111】
次に、素線150の挿入動作について説明を行う。素線150の外形は線材160のそれよりも大きいため、従って溝部121および側面部111により形成される空間よりも大きい。このとき、溝部121にはまりこんだ素線150の余った体積が、成型用受けローラ120の側面部にあふれてしまい、線材160が正確な断面形状を得られなくなる。
【0112】
本実施の形態では、これを無くすために、図16(a)に示すように、素線150が成型用押しローラ110と成型用受けローラ120との間に挟み込まれている間、素線150の挿入速度を、両ローラ回転速度に対して、常に遅くなるよう保ち、かつ、溝部121の移動に応じて変化させる。これにより、素線150は両ローラに押し込まれたとき、挿入方向と逆方向(図中点線矢印)に応力が発生し、この応力によって、素線150が溝部121に填るときに生ずる余剰体積を、素線150の線方向に吸収させる。これにより、線材160は常に正確な断面形状を得ることが可能となる。
【0113】
このとき、素線の挿入スピードは、成型用受けローラ120における溝部121の周の中心121cが成型用押しローラ110から遠くなったとき、すなわち線材成型時に溝部121が最大深さdr1を与える点でもっとも早くなるようにする。これにより、線材160の最も厚い部分の精度を向上させることができる。また、成型用受けローラ120における溝部121の周の中心121cが成型用押しローラ110にもっとも接近したとき、すなわち線材成型時に溝部121が最小深さdr2を与える点に来たときでもっとも遅くなるようにする。これにより、線材160の最も薄い部分の精度を向上させることができる。なお、このとき、余剰体積の吸収を容易にするために、供給する素線に所定の引っ張り応力を加えるようにしてもよい。このとき引っ張り応力は、線材の形成中随時加えるようにしてもよいが、線材がもっとも厚くなる部分およびもっとも薄くなる部分を形成するときにのみ加えてもよく、さらにその力の大きさは、線材がもっとも厚くなる部分を形成する時にもっとも小さく、線材がもっとも薄くなる部分を形成する時にもっとも大きくなるように加えるのが望ましい。ただし引っ張り応力を加える動作、機構の詳細については、公知の技術を用いるものとし、図示および詳細な説明は省略する。
【0114】
次に、突起部122の動作を、図18を参照して説明する。
【0115】
図18(a)(c)は、突起部122を説明するための図である。すでに述べたように、突起部122は成型用受けローラ120において、溝部121が最大深さdr1を与える位置に、溝部121の底面から突出するように設けられている。なお図18(c)は、成型用受けローラ120の突起部122の近傍を示す正面図である。
【0116】
素線150が成型用押しローラ110と成型用受けローラ120とによって加圧成型されているとき、その位置が溝部121の最大深さを与える位置であると、突起部122が素線150にめりこみ、その先端形状を素線150に反転刻印する。ここで図18(b)に、突起部122によって生じた切りかき部161を示す。
【0117】
次に、切りかき部161を与えられた線材160の部分形状を図19に示す。ただし図19(a)は側面図であり、(b)は上面図である。切りかき部161は、線材の図における中央部、すなわち最も厚みがある場所に設けられていることになる。
【0118】
したがって、製造装置100を連続運転させると、図20(a)に示すように、線材160においては、最小深さdr2にて成型された両端または最大深さdr1にて成型された両端が互いに連結した側面形状が、連続して現れることになり、周期的に現れる厚みのもっとも大きい部分には、切りかき部161が刻まれていることになる。
【0119】
このような切りかき部161毎に線材160を切り取れば、線分201が得られる。線分202の外形は、図3に示す実施の形態1の平角線コイル10を作成するのに用いる巻線12と同一であるから、切りかき部161によって、線材16から、実施の形態1のコイルを得るのに必要な巻線を容易に得ることができることになる。
【0120】
なお、突起部として、溝部121が最大深さdr1を与える位置に設ける突起部122を例にして説明を行ったが、突起部は、最小深さdr2を与える位置にも設けるようにしてよい。
【0121】
ここで図20(b)は、突起部122と、最小深さdr2を与える位置に設けられた突起部123とを備えた成型用受けローラ120の図である。突起部123は、突起部122と同様にして、線材160の最も厚みが小さい場所に切りかき部を刻み込む。
【0122】
このような成型用受けローラ120を用いて素線150の加工を行うと、図20(c)に示すように、線材160には、周期的に現れる厚みのもっとも大きい部分に、突起部122により刻まれた切りかき部161が、また厚みのもっとも小さい部分に、突起部123により刻まれた切りかき部162が、それぞれ設けられていることになる。
【0123】
このような切りかき部161、162毎に線材160を切り取れば、線分202が得られる。線分201の外形は、図7に示す実施の形態3の平角線コイル50を作成するのに用いる巻線51と同一であるから、切りかき部161および162によって、線材160から、実施の形態3の平角線コイルを得るのに必要な巻線を容易に得ることができることになる。
【0124】
ところで、実施の形態1〜3のコイル組材にて用いられたコイルは、いずれもその両端の断面積が同一となっていた。本実施の形態の線材にてそのような形状を実現しようとすると、コイルを作成した後、両端の形状を断面同一となるよう圧着等の加工を行う必要がある。
【0125】
この端部加工の手間を省くため、成型用受けローラ120の形状を、図26に示す構成としてもよい。図に示すように、成型用受けローラ120において、溝部121の一部に凸部126aを形成する。凸部126の形成位置は、図中破線にて示す、溝部121の底面部分の周の中心121cと、前記一方の成型ローラの回転中心120cとを結ぶ線が含まれるようにする。さらに凸部126aは、成型用受けローラ120の回転中心120cよりの位置に設けるようにする。
【0126】
凸部126aは、弧状の形状を有し、その曲率は、成型用受けローラ120の曲率に等しい。したがって、成型用受けローラ120から凸部126aまでの距離dep1は一定の値となる。これは凸部126aに対応する溝部121の深さが、成型用受けローラ120と成型用押しローラ110との接触点から見て同一の深さとなることを意味する。
【0127】
このような成型用受けローラ120を用いて、上述したような線材を形成すると、凸部126aに対応する部分は、図26(b)に示すように、その厚みが距離dep1に相当する所定長の平坦部260を備えることになる。平坦部260の所定長は、凸部126aの弧の長さに実質等しい。この平坦部260の中心で線材を切断すれば、コイル1つを作成した時に、両端の断面形状、すなわち断面積が同一である線材を得ることができる。
【0128】
なお、さらに溝部121において、凸部126aの、周の中心121cに対して対称となる側に、凹部126bを設けるようにしてもよい。すなわち、凹部126bは、溝部121の底面部分の周の中心121cと、前記一方の成型ローラの回転中心120cとを結ぶ線が含まれ、かつ溝部121の底面部分の周の中心121cよりの位置に設けるようにする。凹部126bは、弧状の形状を有し、その曲率は、成型用受けローラ120の曲率に等しい。したがって、成型用受けローラ120から凹部126bまでの距離dep2は一定の値となる。これは凹部126bに対応する溝部121の深さが、成型用受けローラ120と成型用押しローラ110との接触点から見て同一の深さとなることを意味する。
【0129】
このような成型用受けローラ120を用いて、上述したような線材を形成すると、凹部126bに対応する部分は、図26(c)に示すように、その厚みが距離dep1に相当する平坦部260に併せて、その厚みが距離dep2に相当する所定長の平坦部261を備えることになる。平坦部261の所定長は、凹部126bの弧の長さに実質等しい。この平坦部260および平坦部261の中心で線材を切断すれば、コイル1つを作成した時に、両端の断面形状、すなわち断面積が同一である線材を得ることができる。これは図6に示す実施の形態3のコイル組材、およびコイルの線材の作成に有効である。
【0130】
さらに、図27(a)に示すように、凸部126a、凹部126bには、それぞれ突起部122,123を設けるようにしてもよい。これにより、図27(b)、27(c)に示すように、平坦部260,261にそれぞれ切りかき部161,162を設けることができ、線材の加工が容易となる。
【0131】
なお、上記の説明においては、図26,27には、成型用受けローラ120に凸部126a、凹部126bの両方が備えられた構成を示したが、凸部126a、凹部126bのいずれか一方を備えた構成としてもよいことは言うまでもない。
【0132】
なお、上記の説明においては、図16(b)等に示すように、線材160の断面形状は矩形であるとして説明を行ったが、本発明の巻線は、一端における断面積が、他端における断面積より小さく、その他端から一端への方向に各部の断面積が連続して減少するような複数の単位部が、上記一端同士、または他端同士が接続することにより連続しているような形状を有するものであればよい。したがって、断面の形状は任意であればよく、そのような巻線を得ることができるものとして、図21(a)に示すように、成型用受けローラ120に断面U字型の溝部123を形成し、成型用押しローラ110の側面部に、断面U字型の凸列部112を設けることにより、断面が円形の丸線において、長さに応じてその厚みが変化する線材が得られ、上記と同様にコイルを作成して、上記各実施の形態のコイルおよびコイル線材を得ることができる。ここで図14(b)に凸列部112が設けられた成型用押しローラ110の正面図を示す。
【0133】
また、図21(b)に示すように、成型用受けローラ120に断面台形(底面が、成型用押しローラ110の側面部111に対して非平行である)型の溝部124を形成することにより、縁部の厚みが非平行な角線において、長さに応じてその厚みが変化する線材が得られることになり、これを用いて上記各実施の形態のコイルおよびコイル線材を得ることができる。
【0134】
また、図21(c)に示すように、成型用受けローラ120に断面台形(底面が、成型用押しローラ110の側面部111に対して平行であって、両側面が放射状に傾斜を有している)型の溝部125を形成することにより、一方の面と他方の面とで幅が互いに異なる角線において、長さに応じてその厚みが変化する線材が得られることになり、これを用いて上記各実施の形態のコイルおよびコイル線材を得ることができる
また、上記の実施の形態においては、溝部121の幅は一定であるとして説明を行ったが、溝部121の幅は、成型用押しローラ110および成型用受けローラ120の周に沿って連続的に変化しているようにしてもよい。図28(a)に示すように、溝部121が最大深さdr1を与える場所で最大幅wd1、最小深さdr2を与える場所で最小幅wd1となるように溝部121の幅を変化させるようにすれば、線材の断面積の変化を厚み方向に加えて、幅方向にも与えることができる。なお、図28(b)は図14(b)および図21(a)に示す、断面円形の線を作成するための構成において、幅を変化させた場合の成型用押しローラ110の構成を示す図である。幅の変化に応じて、成型用受けローラ120の溝部123の幅(図21(a)を参照)も変化させるようにすることは言うまでもない。この構成においては、断面の実質円形の形状が、相似形を保ったまま線材の長さに応じて増大する線材を得ることができる。
【0135】
また、上記の実施の形態においては、成型用押しローラ110および成型用受けローラ120は互いに同期回転するものとして説明を行ったが、厚みが異なり、幅が一定の線材を製造する場合は、各ローラは必ずしも同期回転しなくともよい。また、断面積が相似形を保ったまま増大する断面実質円形の線材や、幅が異なりとともに、厚みが一定または異なるような線材を製造する場合は、各ローラは同期回転する必要がある。
【0136】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7は、実施の形態1,3の平角線コイル10,50を作成するための線材の製造装置の他の構成例である。
【0137】
図29(a)は、本実施の形態の線材の製造装置を示す側面図、図29(b)は同平面図である。図において、成型用押しローラ280は、その側面のなす周に沿って、一定の幅、一定の厚みを有する凸部281が形成されている。凸部281は円周を形成し、周の中心は、成型用押しローラ280の回転中心280cと一致している。
【0138】
また、成型用受けローラ290は、その側面のなす周に沿って、一定の幅を有する溝部291が形成されている。溝部291は円周を形成し、周の中心は、成型用受けローラ290の回転中心290cと一致している。
【0139】
また、溝部291は凸部281と実質同一の横幅を有する。また深さは、凸部281の高さと同等、または少なくとも、凸部281の高さと溝部291の深さの差とが、製造しようとする線材の最小厚みに対応する程度の深さとする。
【0140】
また、成型用押しローラ280、成型用受けローラ290の両方もしくはいずれかは、成型用押しローラ280と成型用受けローラ290との間隔が変化するよう移動させることができる。ただしローラの移動を実現させる構成については、公知技術のため詳細な説明および図示は省略する。
【0141】
なお、上記の構成において、成型用押しローラ280は本発明の他方の成型ローラに相当し、成型用受けローラ290は本発明の一方の成型ローラに相当し、凸部281は本発明の凸部に相当し、溝部291は本発明の凹溝に相当する。以上のような構成を有する、本実施の形態の線材の製造装置の動作を説明するとともに、本発明の線材の製造方法の一実施の形態について説明を行う。
【0142】
はじめに、図29(a)中実線矢印に示すように、対向する成型用押しローラ280および成型用受けローラ290は、対向面側に向かって互いに同期して回転し、凸部281が溝部291に嵌りこむようになっている。なお、凸部281と溝部291との間は、素線150を挿入するための空間が形成されている。この空間に、素線150を挿入する。二つのローラの回転方向は、対向する点における接線で素線150の挿入方向と同一になるから、素線150は、成型用押しローラ280の凸部281と成型用受けローラ290の溝部291との間に入り込み、加圧成型されることになる。
【0143】
このとき、成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の同期回転に合わせて、凸部281と溝部291との間隔、すなわち成型用押しローラ280の回転中心280cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔を狭めるように制御を行う。
【0144】
すると、ローラ間に挿入された素線150は、成型用受けローラ290の溝部291にはまりこんでから、成型用押しローラ280と成型用受けローラ290との間に送られるが、挿入が進むたびに、凸部281と溝部219との間隔が小さくなるので素線150は両ローラに圧迫され、変形する。
【0145】
さらに、成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の回転が進むたびに、両ローラ間の距離そのものが短くなるので、凸部281と溝部219との間の距離は徐々に変化することになる。凸部281および溝部291の幅は一定なので、加圧成型により得られる線材160は、その厚みが徐々に変化することになる。これは図16(b)に示す動作状態と同様の効果が与えられたことを意味する。両ローラ間から解放された素線は、線材160として、外部に引き出される。
【0146】
このとき、線材160の最大厚みは、凸部281と溝部219との間の距離が最大になった時に与えられ、線材160の最小厚みは、凸部281と溝部219との間の距離が最小になった時に与えられる。
【0147】
したがって、この距離をローラの回転に合わせて周期的に変化させることにより、図17(b)に示すパターンを有する線材160が得られることになる。例えば、図17(a)に示すパターンを得るためには、両ローラが一回転するたびに凸部281と溝部219との間の距離の変化が一周期とするようにすればよい。また、両ローラが2回転する毎に変化を一周期にするようにしてもよい。この場合は、線材の断面積の変化がよりなだらかになる。
【0148】
このようにして得られた線材160は、成型用押しローラ280と成型用受けローラ290から巻き取りボビン140へ送り出され、図13(b)に示すように、線材巻き取りボビン140に巻き取られる。
【0149】
次に、素線150の挿入動作について説明を行う。素線150の外形は線材160のそれよりも大きいため、従って凸部281と溝部291とにより形成される空間よりも大きい。このとき、凸部281と溝部291との間にはまりこんだ素線150の余った体積が、成型用受けローラ290の側面部にあふれてしまい、線材160が正確な断面形状を得られなくなる。
【0150】
本実施の形態では、これを無くすために、素線150が凸部281と溝部291との間に挟み込まれている間、素線150の挿入速度を、両ローラ回転速度に対して、常に遅くなるよう保ち、かつ、成型用押しローラ280の回転中心110cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔の変化に応じて変化させる。これにより、素線150は両ローラに押し込まれたとき、挿入方向と逆方向(図中点線矢印)に応力が発生し、この応力によって、素線150が凸部281と溝部291との間に填るときに生ずる余剰体積を、素線150の線方向に吸収させる。これにより、線材160は常に正確な断面形状を得ることが可能となる。
【0151】
このとき、素線の挿入スピードは、成型用押しローラ280の回転中心110cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも小さくなったとき、すなわち成型された線材がもっとも薄くなる部分を形成する地点でもっとも遅くなるようにする。これにより、線材160の最も薄い部分の精度を向上させることができる。また、成型用押しローラ280の回転中心110cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも大きくなったとき、すなわち成型された線材がもっとも厚くなる部分を形成する地点でもっとも早くなるようにする。これにより、線材160の最も厚い部分の精度を向上させることができる。なお、このとき、余剰体積の吸収を容易にするために、供給する素線に所定の引っ張り応力を加えるようにしてもよい。このとき引っ張り応力は、線材の形成中随時加えるようにしてもよいが、線材がもっとも厚くなる部分およびもっとも薄くなる部分を形成するときにのみ加えてもよく、さらにその力の大きさは、線材がもっとも厚くなる部分を形成する時にもっとも小さく、線材がもっとも薄くなる部分を形成する時にもっとも大きくなるように加えるのが望ましい。ただし引っ張り応力を加える動作、機構の詳細については、公知の技術を用いるものとし、図示および詳細な説明は省略する。
【0152】
また、本実施の形態において、図26(b)(c)に示すような、平坦部160,161を有する線材を作成する場合は、凸部281と溝部291との間隔、すなわち成型用押しローラ280の回転中心280cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔の変化において、間隔を一定に保つ期間を設けるようにすればよい。つまり、両ローラが一回転に対応した凸部281と溝部291との間の距離の周期的な変化において、ローラの回転にかかわらず変化をさせない期間を設ければよい。このとき、成型用押しローラ280の回転中心280cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも大きくなったときに、間隔の変化を所定の時間だけ停止すれば、その所定の時間に応じた長さの平坦部160が得られる。成型用押しローラ280の回転中心280cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも小さくなったときに、間隔の変化を所定の時間だけ停止すれば、その所定の時間に応じた長さの平坦部161が得られる。
【0153】
また、本実施の形態において、図20(a)に示す、線材160の厚みが最大となる部分に形成される切りかき部161を得ようとする場合は、図30に示すように、成型用受けローラ290において、溝部291の任意の位置に突起部292を設けた構成として、上述した動作を行えばよい。このとき、突起部292が成型用押しローラ280の凸部281と対向して、素線150に刻印動作を行うタイミングで、成型用押しローラ280の回転中心110cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも大きくなるよう制御を行う。
【0154】
また、図20(b)に示す、線材160の厚みが最小となる部分に形成される切りかき部162を得ようとする場合は、突起部292が成型用押しローラ280の凸部281と対向して、素線150に刻印動作を行うタイミングで、成型用押しローラ280の回転中心280cと成型用受けローラ290の回転中心290cとの間隔がもっとも小さくなるよう制御を行う。
【0155】
また、切りかき部161,162および平坦部261,262の両方を備えた線材を形成するときは、上記の動作を組合わせて行えばよい。
【0156】
さらに、上記の実施の形態においては、凸部281と溝部291の幅は一定であるとして説明を行ったが、凸部281と溝部219の幅は、成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の周に沿って連続的に変化しているようにしてもよい。図28(a)に示す例と同様にして、凸部281と溝部291が最大深さを与える場所で最大幅を、最小深さを与える場所で最小幅となるように凸部281と溝部291の幅を変化させるようにすれば、線材の断面積の変化を厚み方向に加えて、幅方向にも与えることができる。
【0157】
以上述べたように、本実施の形態によっても、上記各実施の形態のコイルおよびコイル線材に必要な線材を得ることができる。
【0158】
また、上記の実施の形態においては、成型用押しローラ280および成型用受けローラ290は互いに同期回転するものとして説明を行ったが、厚みが異なり、幅が一定の線材を製造する場合は、各ローラは必ずしも同期回転しなくともよい。また、断面積が相似形を保ったまま増大する断面実質円形の線材や、幅が異なりとともに、厚みが一定または異なるような線材を製造する場合は、各ローラは同期回転する必要がある。
【0159】
なお、上記の各実施の形態において、得られる線材160は被覆されていないが、本発明の線材は、ビニール、ゴム、エナメル、樹脂等の絶縁被覆で被覆されたものとしてもよい。このとき、被覆としては電着塗装を用いることが、皮膜の厚みを均一にすることができ、望ましい。
【0160】
なお、上記の各実施の形態におけるコイル、コイル組品を用いた変成器も本発明に関連する発明に含まれ、抵抗値を小さくして、消費電力を削減した変成器を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明にかかる線材、線材の製造方法、線材の製造装置は、従来と同一寸法で抵抗値を削減して高能率に動作するコイル、コイル組品等に用いる線材、線材の製造方法、製造装置等を得ることができる効果を有し、電気及び電子部品に使用されるコイル等の使用において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】(a)本発明に関連する発明の実施の形態1によるコイル組品の斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態1によるコイル組品の平面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態1によるコイル組品の断面図 (d)本発明に関連する発明の実施の形態1によるコイル組品の断面図
【図2】(a)本発明に関連する発明の実施の形態1による平角線コイルの斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態1による平角線コイルの平面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態1による平角線コイルの断面図
【図3】(a)本発明に関連する発明の実施の形態1による平角線コイルの巻線の平面図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態1による平角線コイルの巻線の側面図
【図4】(a)本発明に関連する発明の実施の形態1による磁心部の部分図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態1による磁心部の断面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態1による磁心部の断面図
【図5】(a)本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品の斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品の平面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品の断面図 (d)本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品の断面図 (e)本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品の他の構成例を示す断面図
【図6】(a)本発明に関連する発明の実施の形態3による平角線コイルの斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態3による平角線コイルの断面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態3によるコイル組品の斜視図
【図7】(a)本発明の実施の形態3による平角線コイルの巻線の平面図 (b)本発明の実施の形態3による平角線コイルの巻線の側面図
【図8】(a)本発明に関連する発明の実施の形態4によるコイル組品の平面図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態4によるコイル組品の断面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態4によるコイル組品の断面図
【図9】(a)本発明に関連する発明の実施の形態4によるテーパワッシャの平面図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態4によるテーパワッシャの正面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態4によるテーパワッシャの側面図
【図10】(a)本発明に関連する発明の実施の形態4によるペ−パースペーサの平面図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態4によるペ−パースペーサの正面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態4によるペ−パースペーサの側面図
【図11】(a)本発明に関連する発明の実施の形態5によるコア部材の斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態5によるコア部材の正面図
【図12】(a)本発明に関連する発明の実施の形態5によるコア部材の斜視図 (b)本発明に関連する発明の実施の形態5によるコア部材の正面図 (c)本発明に関連する発明の実施の形態5によるコア部材の他の構成例の正面図
【図13】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の側面図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の上面図
【図14】(a)成型用押しローラ280の正面図 (b)成型用押しローラ280の他の構成例の正面図
【図15】成型用受けローラ290の正面図
【図16】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における素線の加圧成型を説明するための図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における素線の加圧成型を説明するための図 (c)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における素線の加圧成型を説明するための図
【図17】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置により成型された線材の側面形状を示す図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置により成型された線材を示す図
【図18】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における突起部122の動作を説明するための図 (c)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における突起部122により刻印された素線の状態を示す図 (c)成型用受けローラ290における突起部122の配置を示す図
【図19】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における突起部122により刻印された線材の部分平面図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における突起部122により刻印された線材の部分側面図
【図20】(a)切りかき部161が形成された線材160の側面図 (b)切りかき部161および162が形成された線材160の側面図 (c)成型用受けローラ290の他の構成例の正面図
【図21】(a)成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の他の構成例の正面図 (b)成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の他の構成例の正面図 (c)成型用押しローラ280および成型用受けローラ290の他の構成例の正面図
【図22】(a)従来の技術によるコイル組品の斜視図 (b)従来の技術によるコイル組品の正面図 (c)従来の技術によるコイル組品の実装状態を示す正面図
【図23】本発明に関連する発明の実施の形態1によるコイル組品のコイルの他の構成例を示す断面図
【図24】本発明に関連する発明の実施の形態2によるコイル組品のコイルの他の構成例を示す断面図
【図25】本発明に関連する発明の実施の形態3によるコイル組品のコイルの他の構成例を示す断面図
【図26】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における成型用受けローラの他の構成例を示す図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の成型用受けローラ290の他の構成例により作成された線材の部分平面図 (c)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の成型用受けローラ290の他の構成例により作成された線材の部分平面図
【図27】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における成型用受けローラのさらなる他の構成例を示す図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の成型用受けローラ290のさらなる他の構成例により作成された線材の部分平面図 (c)本発明の実施の形態6による線材の製造装置の成型用受けローラ290のさらなる他の構成例により作成された線材の部分平面図
【図28】(a)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における成型用受けローラのさらなる他の構成例を示す図 (b)本発明の実施の形態6による線材の製造装置における成型用押しローラのさらなる他の構成例を示す図
【図29】(a)本発明の実施の形態7による線材の製造装置の側面図 (b)本発明の実施の形態7による線材の製造装置の上面図
【図30】本発明の実施の形態7による線材の製造装置における成型用受けローラの他の構成例を示す図
【符号の説明】
【0163】
10 平角線コイル
10a、10b 渦巻部
11a、11b 端部
12 巻線
20 磁心部
21 中央部
22 外縁部
23 ブリッジ部
100 巻線の製造装置
110 成型用押しローラ
111 側面部
120 成型用受けローラ
121 溝部
122、123 突起部
130 線材排出ゴムローラ
140 線材巻き取りボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の単位部が連続して形成された線材であって、
前記単位部は、
一端の断面積が、他端の断面積より小さく、前記他端から前記一端の方向へ、各部の断面の高さ又は幅が短くなることにより前記各部の断面積が連続的に減少するものであって、
各単位部は、前記一端同士および前記他端同士が直接的又は間接的に接続することにより連続している線材。
【請求項2】
前記一端および/または前記他端は、一定の断面積である所定長の部分を介して間接的に接続している請求項1に記載の線材。
【請求項3】
断面の形状が矩形である請求項1に記載の線材。
【請求項4】
断面の形状が実質上円形または実質上楕円形のいずれかである請求項1に記載の線材。
【請求項5】
表面が絶縁皮膜で被覆されている請求項1から4のいずれかに記載の線材。
【請求項6】
前記絶縁皮膜は電着塗装により形成されている請求項5に記載の線材。
【請求項7】
所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、請求項1に記載の線材の製造方法であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
他方の成型ローラの前記素線との接触面は、前記断面形状の残りの一部を形成しており、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心は、前記一方の成型ローラの回転中心に対して偏心している線材の製造方法。
【請求項8】
前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が前記他方の成型ローラにもっとも接近したときにもっとも遅く、前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように連続的に変化させる請求項7に記載の線材の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が、前記他方の成型ローラにもっとも接近したとき、および前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える請求項8に記載の線材の製造方法。
【請求項10】
前記一方の成型ローラの凹溝は、前記一方の成型用ローラと前記他方の成型用ローラとの接触点から見て同一の深さとなる所定長の部分を有し、
前記所定長の部分は、前記凹溝の底面部分の周の中心と、前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線を含む場所に設けられており、
前記場所は、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置である請求項7に記載の線材の製造方法。
【請求項11】
前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記凹溝の底面部分の周の中心と前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置であり、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する請求項7または10に記載の線材の製造方法。
【請求項12】
所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、請求項1に記載の線材の製造方法であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
前記一対の成型ローラにおける、他方の成型ローラには前記凹溝の幅と実質同一の幅を有し、前記線材の断面形状の残りの一部に対応する凸部が形成されており、
前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心との間の距離を、前記一対の成型ローラの同期した回転に応じた周期で、所定の大きさだけ変化させる線材の製造方法。
【請求項13】
前記変化は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったたときを含む所定の時間だけ停止し、残りの時間は連続的に実行される請求項12に記載の線材の製造方法。
【請求項14】
前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したときにもっとも遅く、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように変化させる請求項12または13に記載の線材の製造方法。
【請求項15】
少なくとも、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える請求項14に記載の線材の製造方法。
【請求項16】
前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近するとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠ざかるときに、前記他方のローラと対向するような位置であって、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する請求項12または13に記載の線材の製造方法。
【請求項17】
前記一対の成形ローラは同期回転しており、前記凹溝および/または凸部の幅は、前記一方の成型ローラおよび/または他方の成型ローラの周に沿って連続的に変化している請求項7または12に記載の線材の製造方法。
【請求項18】
所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、請求項1に記載の線材の製造装置であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
他方の成型ローラの前記素線との接触面は、前記断面形状の残りの一部を形成しており、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心は、前記一方の成型ローラの回転中心に対して偏心している線材の製造装置。
【請求項19】
前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が前記他方の成型ローラにもっとも接近したときにもっとも遅く、前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように連続的に変化させる請求項18に記載の線材の製造装置。
【請求項20】
少なくとも、前記一方の成型ローラにおける前記凹溝の底面部分の周の中心が、前記他方の成型ローラにもっとも接近したとき、および前記他方の成型ローラにもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える請求項19に記載の線材の製造装置。
【請求項21】
前記一方の成型ローラの凹溝は、前記一方の成型用ローラと前記他方の成型用ローラとの接触点から見て同一の深さとなる所定長の部分を有し、
前記所定長の部分は、前記凹溝の底面部分の周の中心と、前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線を含む場所に設けられており、
前記場所は、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置である請求項18に記載の線材の製造装置。
【請求項22】
前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記凹溝の底面部分の周の中心と前記一方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心よりの位置および/または前記凹溝の底面部分の周の中心よりの位置であり、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する請求項18または21に記載の線材の製造装置。
【請求項23】
所定の線径を有する素線を、所定の速度で回転する一対の成型用ローラの間に挿入し、前記素線の断面形状を前記一対の成型ローラの間で線材の断面形状に加圧成型する、請求項1に記載の線材の製造装置であって、
前記一対の成型ローラにおける、一方の成型ローラの、前記素線との接触面には前記線材の断面形状の一部に対応する凹溝が形成されており、
前記一対の成型ローラにおける、他方の成型ローラには前記凹溝の幅と実質同一の幅を有し、前記線材の断面形状の残りの一部に対応する凸部が形成されており、
前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心との間の距離を、前記一対の成型ローラの同期した回転に応じた周期で、所定の大きさだけ変化させる線材の製造装置。
【請求項24】
前記変化は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったたときを含む所定の時間だけ停止し、残りの時間は連続的に実行される請求項23に記載の線材の製造装置。
【請求項25】
前記素線の挿入のスピードを、前記一対の成型用ローラの接線速度よりも遅く保ち、かつ前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したときにもっとも遅く、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときにもっとも早くなるように変化させる請求項23または24に記載の線材の製造装置。
【請求項26】
少なくとも、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近したとき、および前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠くなったときに、前記素線に対し、その挿入方向と逆方向に所定の応力を加える請求項25に記載の線材の製造装置。
【請求項27】
前記一方の成型ローラは、前記凹溝状の所定の位置に突起部を有し、
前記所定の位置は、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とを結ぶ線上であって、前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも接近するとき、および/または前記一方の成型ローラの回転中心と前記他方の成型ローラの回転中心とがもっとも遠ざかるときに、前記他方のローラと対向するような位置であって、
前記突起部は、線材に加圧成型された素線に凹部を刻印する請求項23または24に記載の線材の製造装置。
【請求項28】
前記一対の成形ローラは同期回転しており、前記凹溝および/または凸部の幅は、前記一方の成型ローラおよび/または他方の成型ローラの周に沿って連続的に変化している請求項18または23に記載の線材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−228747(P2006−228747A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99521(P2006−99521)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【分割の表示】特願2002−142878(P2002−142878)の分割
【原出願日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願人】(000138152)株式会社モステック (16)
【Fターム(参考)】