説明

線材の接合装置

【課題】線材を突き合わせ抵抗溶接により接合する装置において、線材の接合部分におけるバリの程度に応じてバリ取りを適切に行う。
【解決手段】一つの線材と別の線材とを突き合わせ、抵抗溶接により接合する押圧加熱部と、接合時に生じるバリを除去するバリ取り部とを備える接合装置である。バリ取り部15は、押圧加熱部にて接合された線材に生じたバリを研削する研削具151と、接合された線材のバリの形状を検出する検出器156と、検出器156により検出されたバリの形状によって研削具を動作させる制御部157とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線材からスチールコードを製造する際は、線材に伸線処理や熱処理等といった各種の処理を行う。リールに巻き取られた複数の線材を連続的に処理するために、一つのリールから巻き出され線材の後端と、他のリールから巻き出された線材の先端とが接合される。このような線材の接合は、線材同士を突き合わせ、加圧しつつ通電して抵抗加熱する、いわゆる突き合わせ抵抗溶接法により行われる。鋼材の接合後は、接合された部分に生じることがあるバリを除去することが行われている。
【0003】
バリの除去は、手作業によって行うこともできるが、最近では、鋼材の自動接合装置にバリ取り部を備えるものがある。バリ取り部に関して、鋼材の接合された部分を挟むように設けられた2個の砥石をバリに押しつけて除去するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−24435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自動接合装置のバリ取り部は、線材の径やバリの発生の程度にかかわらずバリ取りを行う。したがって、バリ取りが不足したり過剰になったりする場合があった。また、バリが発生していないか、バリ取りをする必要がない程、わずかに発生している場合にもバリ取り工程を実施するのは無駄があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、線材の接合時に生じたバリの程度に応じてバリ取りを適切に行うことのできる、線材の接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の線材の接合装置は、一つの線材と別の線材とを突き合わせ、抵抗溶接により接合する押圧加熱部と、接合時に生じるバリを除去するバリ取り部とを備え、バリ取り部は、押圧加熱部にて接合された線材に生じたバリを研削する研削具と、接合された線材のバリの形状を検出する検出器と、検出器により検出されたバリの形状によって研削具を動作させる制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の線材の接合装置において、研削具は、円盤形状を有して円の中心を回転軸として回動可能であり、周面が線材の接合部分に対向して配設された砥石とすることができる。また、研削具が取り付けられる保持部材を備え、保持部材は、接合された線材の周面の周りに揺動可能なものであることが好ましい。更に、研削具の近傍に、線材に張力を付与する押圧具を備えることは、より好ましい。また、本発明の線材の接合装置は、バリ取り部を、接合された線材に対して進退可能とする移動手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バリ取り部が、線材の接合部分の形状を検出する検出器と、制御部とを有し、検出器で検出された検出器により検出されたバリの形状によって研削具を動作させるから、線材の接合部分に生じたバリの程度に応じて、適切にバリ取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の線材の接合装置の一実施形態の模式的な正面図である。
【図2】図1の接合装置におけるバリ取り部の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の線材の接合装置の実施形態を、図面を用いつつ具体的に説明する。図1に示す接合装置1は、ベッド10上に抵抗加熱部11を備えている。抵抗加熱部11は、第1の把持部12及び第2の把持部13を有し、これらのうちの一方で、先行する線材の後端部近傍を把持し、もう一方で追行する線材の先端部近傍を把持する。把持する部分は、第1の把持部12及び第2の把持部13のそれぞれに設けられた電極12a及び13aと接続していて、電源14からの電流を線材に通電可能となっている。また、第1の把持部12は、第2の把持部13に対して進退移動可能になっており、第1の把持部12が第2の把持部13に向かう方向に移動することにより、第1の把持部12に把持された線材は、第2の把持部13に把持された線材と接し、押圧できるようになっている。なお、押圧時には、第1の把持部の電極12aの先端部が,電源と接続する電極ソケット12bと接続して、通電されるようになっている。このような構成を有する抵抗加熱部11によって、先行する線材の後端と追行する線材の先端とを突き合わせ、押圧しつつ通電することにより、これらの線材を抵抗溶接する。
【0012】
接合装置1のバリ取り部15は、第1の把持部12と第2の把持部13との間に設けられている。また、バリ取り部15は、線材の接合中には、邪魔にならないようにベッド10の下方に待避し、バリ取り時には突き合わせ抵抗溶接により接合された部分の近傍に位置するように、昇降具15aを有している。
【0013】
バリ取り部15は、図2に示すように、研削具としての円盤形状の砥石151を有している。砥石151は、周面が線材Wの接合部分に当接するように、回転軸の軸線方向が線材Wの長手方向とほぼ平行になっている。また、砥石151は、線材Wに対して接近離隔できるように、図示しない移動手段を介して保持部材152に取り付けられている。砥石151を駆動するモータ153は、保持部材152の下面に取り付けられている。
【0014】
保持部材152は、上面が開放された筐体の形状を有し、側壁152aには線材Wを収容する切り込み部152bを有している。また、側壁152aの外方には、保持部材152を線材Wの周りに揺動できるように、回転軸152cが突出していて、固定部材154により回動可能に支持されている。回転軸152cは、モータ155により駆動される。保持部材152が線材Wの周りに、例えば±200度の角度で揺動することにより、保持部材152内に取り付けられて線材Wに当接した砥石151が、線材Wの接合部分を全周にわたって研削できる。
【0015】
バリ取り部15の保持部材152内には、更に、線材Wの接合部分の形状を検出する検出器としてのセンサ156を有している。図2に示したセンサ156の例は、線材Wの接合部分に近接して設けられた非接触のセンサ156であって、例えば変位センサを用いて、線材Wの周りを保持部材152と共に揺動することにより線材Wの接合部分の形状を全周にわたって検出することが可能となる。センサ156からの信号は制御装置157に入力され、制御装置157にて、接合部分の径やバリ発生の有無、発生したバリの個数、バリの程度などが算出される。そして算出されたバリの形状の情報に基づいて、なかでもバリの数により、制御装置157は、砥石151を線材Wに向けて所定量で移動させるような信号を、砥石151の移動手段に出力する。
【0016】
本実施形態の接合装置1は、センサ156及び制御装置157を有し、センサ156にて検出された線材Wの接合部分の形状の情報に基づいて求められたバリの数により砥石151の回転を実行し又は停止し、あるいは砥石151が線材Wの接合部分に向かう移動量を調節する。例えば、形状検出により線材Wの接合部分の周方向にわたって生じたバリの個数が3〜4個以内であり、かつ、バリ高さが3〜4mm以内であれば良好な接合ができたと制御装置157が判定して、砥石151によるバリ取り工程を実施しないようにする。また、バリの個数及びバリ高さの少なくともいずれかが、所定の基準値を超えている場合には、砥石151を動作させるとともに砥石151が所定量だけ研削するように、砥石151を線材Wの接合部分に向けて移動手段により移動させるようにする。これにより、接合部分におけるバリの程度に応じてバリ取りを適切に行うことができる。また、線材の径が以前に接合した時より太い場合にも細い場合にも、適切にバリ取りを実施することができる。
【0017】
砥石151によるバリ取りの際は、砥石151の周面の接線方向に線材Wが振動する。振動を抑制するために図2に示したバリ取り部15は、砥石151の近傍に、線材Wに張力を付与する押圧具としてのローラ158が設けられている。ローラ158は、線材Wに接近離隔する方向に移動可能に構成されていて、バリ取り時のみ線材Wに接して張力を付与するようになっている。ローラ158は、周面に線材Wが嵌まる溝を有する構成とすることもでき、これによりバリ取り時の線材Wの振動を一層抑制することができる。
【0018】
バリ取り部によるバリ取り後は、バリ取り部15をベッド10より下方に待避させて、から、接合部分の焼鈍を行う。焼鈍は、上述した抵抗加熱部11を用いて、接合後の線材を把持して通電加熱することによって実施することができる。
【0019】
以上、本発明の線材の接合装置を、図面を用いて説明したが、本発明の線材の接合装置は、本発明の実施の形態及び図面に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、幾多の変形が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1: 接合装置
11: 抵抗加熱部
15: バリ取り部
15a: 昇降具(移動手段)
151: 砥石(研削具)
156: センサ(検出器)
157: 制御装置(制御部)
158: ローラ(押圧具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの線材と別の線材とを突き合わせ、抵抗溶接により接合する押圧加熱部と、接合時に生じるバリを除去するバリ取り部とを備え、
バリ取り部は、押圧加熱部にて接合された線材に生じたバリを研削する研削具と、
接合された線材のバリの形状を検出する検出器と、
検出器により検出されたバリの形状によって研削具を動作させる制御部と
を有することを特徴とする線材の接合装置。
【請求項2】
前記研削具は、円盤形状を有して円の中心を回転軸として回動可能であり、周面が線材の接合部分に対向して配設された砥石である請求項1記載の線材の接合装置。
【請求項3】
前記研削具が取り付けられる保持部材を備え、保持部材は、接合された線材の周面の周りに揺動可能なものである請求項1又は2に記載の線材の接合装置。
【請求項4】
前記研削具の近傍に、線材に張力を付与する押圧具を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の線材の接合装置。
【請求項5】
前記バリ取り部を、接合された線材に対して進退可能とする移動手段を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の線材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10125(P2013−10125A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144896(P2011−144896)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】