説明

線材巻取装置

【課題】トラバースの折り返しを巻姿に応じて調整することにより、良好な巻姿を得る。
【解決手段】トラバース中に、ボビンの中央部において、ボビン1回転毎にダンサーローラ位置と計尺量を測定する。複数回測定して、その平均値と標準偏差を算出し、閾値を決める。フランジ近傍部において、ボビン1回転毎にダンサーローラ位置と計尺量を測定し、平均値との差から変移量を算出する。変移量と閾値を比較する。変移量が閾値を超えると、巻姿が変化したと判断し、変化が開始した変移位置を検出する。トラバースを1往復して、両側のフランジ近傍部での巻姿を判断し終わると、次のトラバース中に、折り返し調整を行う。巻太りの場合、変移位置よりも中央寄りで折り返す。巻細りの場合、変移位置から減速して、折り返し基準位置で折り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された線材を軸方向にトラバースさせながらボビンに巻き取る線材巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材巻取装置では、ガイドローラを軸方向にトラバースすることにより、供給された線材をボビンに整列して巻き取る。ガイドローラは、折り返し基準位置に達すると折り返され、往復移動する。 折り返し基準位置は、ボビンに対して予め設定される。
【0003】
この折り返し基準位置の設定に不具合があると、ボビンのフランジ近傍において巻太りあるいは巻細りが発生し、線材の巻姿が変化する。また、巻き取られた線材の圧力により、フランジが外側に広がるように変形することがあり、線材がフランジ側に落ち込んで巻姿が崩れるおそれがある。このように、正常な巻姿が得られないと、次工程で線材を取り出すときに、線材の損傷や断線等が起こることがある。
【0004】
そこで、正常な巻姿を得られるように、例えば特許文献1では、ダンサーローラの移動を検出することにより、巻姿の変化を判断し、フランジ位置検出器からの反転基準信号に基づいて折り返しのタイミングを早めたり、遅らせたりしている。また、特許文献2では、ボビンの回転と線速との比率を求め、軸方向中央部における比率とフランジ近傍における比率とを比較して、巻姿の変化を判断し、トラバースの位置検出センサを移動させて、トラバース幅を変化させている。
【特許文献1】特許第3335246号公報
【特許文献2】特許第2913479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の線材巻取装置では、フランジ位置検出器や位置検出センサを設け、その検出信号に基づいてトラバース制御を行っている。この位置検出器を設置するとき、ボビンに合わせて位置決めしなければならず、その作業が面倒である。そこで、本発明は、上記に鑑み、トラバース用の位置検出器を用いずに、巻姿に応じてトラバースの折り返し調整を行うことにより、良好な巻姿を得ることができる線材巻取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ボビンに対してガイドローラを軸方向にトラバースさせながらボビンを回転させて、ダンサーローラを通じて送られてきた線材をボビンに巻き取り、ガイドローラが折り返し基準位置に達したら折り返すようにガイドローラの移動制御を行う制御装置を備えた線材巻取装置であって、ガイドローラのトラバース位置を検出するトラバース位置検出器と、移動するダンサーローラの位置を検出するダンサー位置検出器と、巻き取られる線材を計尺する計尺器とが設けられ、制御装置は、ダンサー位置検出器あるいは計尺器の出力に基づいて線材の巻姿を判断し、巻姿が変化するときの変移位置を検出する手段と、巻太りと判断したとき、変移位置よりも手前で折り返すようにガイドローラの折り返し調整を行う手段と、巻細りと判断したとき、変移位置を基準にして減速し、折り返し基準位置で折り返すようにガイドローラの折り返し調整を行う手段とを有する。
【0007】
線材の巻き取り中、巻姿の変化に伴って、ダンサーローラ位置や線材の計尺量は変化する。したがって、計尺器の出力やダンサー位置検出器の出力に基づいて、巻姿の変化を検出することができ、巻太りあるいは巻細りを判断できる。また、トラバース位置検出器やダンサー位置検出器の出力の変化は、巻姿の変化に連動している。そこで、各検出器の出力の変化を検出すれば、巻姿が変化し始めた位置を特定することができる。特定された位置に対応するトラバース位置が変移位置となる。したがって、実際の巻姿を正確に把握することができ、実際の状況に即した折り返し調整が可能となる。
【0008】
上記のようにして判断した巻姿および変移位置にしたがって、ガイドローラの折り返し位置を補正する折り返し調整が行われる。巻太りの場合、折り返し基準位置よりも中央寄りにある変移位置よりも手前で折り返す。すなわち、通常の折り返しよりも早く折り返す。これによって、ボビンのフランジ近傍で線材は巻き取られず、巻太りが解消する。
【0009】
巻細りの場合、変移位置でガイドローラのトラバース速度を減速する。折り返しは折り返し基準位置で行う。変移位置からフランジ側にかけて、線材の巻取量が増え、巻細りが解消する。
【0010】
また、制御装置は、巻太りのとき、折り返し基準位置を軸方向中央寄りに変更し、巻細りのとき、折り返し基準位置をフランジ寄りに変更する手段を有する。トラバース中に上記のような折り返し調整を行わない場合でも、巻姿に応じてガイドローラを折り返すことができ、巻姿の改善を図れる。 例えば、制御装置は、1往復のトラバース中に巻姿の判断を行い、判断結果に応じて次のトラバース中にガイドローラの折り返し調整を行う。この場合、巻姿の判断を行うためのトラバース中に巻姿の改善を図れる。
【0011】
変移位置や変移量を検出するために、制御装置は、トラバース中にボビンの軸方向中央部において得られたダンサー位置検出器あるいは計尺器の複数の出力データから平均値および閾値を算出する手段と、ボビンのフランジ近傍部において得られたダンサー位置検出器あるいは計尺器の出力データと平均値との差である変移量を算出し、変移量と閾値とを比較する手段とを有する。そして、制御装置は、変移量が閾値を超えたとき、巻姿が変化したと判断し、この変移量に対応する出力データを検出した位置を変移位置とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、巻姿の変化をダンサーローラ位置や計尺量に基づいて判断するとともに、ダンサーローラ位置の変化や計尺量の変化に基づいて巻姿が変化するときの変移位置を特定する。ダンサー位置検出器や計尺器は既設の検出器であり、これらを利用することにより、トラバース用の位置検出器を用いなくても、巻姿を判断でき、折り返し位置を決めることができる。
【0013】
また、巻姿の変化に対応する変移位置を基準にして、折り返し調整することにより、実際の状況に即した調整が可能となり、巻姿を迅速に改善して、良好な巻姿を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の線材巻取装置を図1に示す。線材巻取装置は、線材供給装置から供給される線材をボビン1に巻き取る。線材供給装置は、供給ボビン2と、ダンサーローラ3と、キャプスタンローラ4と、一対のローラを有する引取装置5とを備えている。供給ボビン2は、モータ6によって回転駆動され、引取装置5のローラもモータ7によって一定速度で回転駆動される。
【0015】
線材巻取装置は、線材を巻き取るボビン1と、ガイドローラ10を軸方向にトラバースさせるトラバース装置11と、ダンサーローラ12と、キャプスタンローラ13とを備えている。ボビン1は、モータ14によって回転駆動される。
【0016】
供給ボビン2から供給された線材は、ダンサーローラ3によって張力を一定に保たれながら、引取装置5に引き取られる。引取装置5から一定速度で送り出された線材は、キャプスタンローラ13、ダンサーローラ12を通って、ガイドローラ10により軸方向にトラバースされながらボビン1に巻き取られる。
【0017】
トラバース装置11では、ねじ軸15をトラバースモータ16によって回転させることにより、ねじ軸15に支持されたガイドローラ10が軸方向に往復動する。トラバースモータ16に、ロータリエンコーダあるいはパルスジェネレータ等のトラバース位置検出器17が設けられ、トラバースモータ16の回転が検出される。トラバース位置検出器17の出力に基づいて、ガイドローラ10のトラバース位置を検出できる。
【0018】
ダンサーローラ12は、アーム18の一端に支持され、アーム18の他端は揺動自在に支軸に支持され、線材の速度に応じてダンサーローラ12が上下に移動する。キャプスタンローラ13は、固定軸に回転自在に支持される。線材の速度が遅くなると、ダンサーローラ12は下降する。線材の速度が速くなると、ダンサーローラ12は上昇する。このように、線材の速度に応じてダンサーローラ12が移動することにより、引取速度を一定にして巻き取るときに、巻取径の増加に伴う巻取速度の変化に対応できる。
【0019】
アーム18の支軸にポテンションメータ等のダンサー位置検出器20が設けられ、アーム18の回動が検出される。ダンサー位置検出器20の出力に基づいて、移動するダンサーローラ12の位置を検出できる。キャプスタンローラ13には、ロータリエンコーダあるいはパルスジェネレータ等の計尺器21が設けられ、キャプスタンローラ13の回転が検出される。計尺器21の出力に基づいて、線速あるいは線材の巻取量(計尺量)を検出できる。なお、線材供給装置のダンサーローラ3、キャプスタンローラ4も同じ構成である。
【0020】
そして、線材巻取装置は、図2に示すように、線材を整列してボビン1に巻き取るためにトラバース装置11を駆動制御する制御装置であるコントロールユニット22を備えている。コントロールユニット22として、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が用いられる。コントロールユニット22に、ダンサー位置検出器20の出力がA/D入力ユニット23を介してデジタル信号として入力される。また、計尺器21およびトラバース位置検出器17の出力が高速カウンタユニット24を介してデジタル信号として入力される。
【0021】
コントロールユニット22は、検出されたトラバース位置に基づいてトラバースモータ16を駆動するための駆動信号を出力する。駆動信号は、D/A出力ユニット25、インバータ26を通じてトラバースモータ16に出力され、トラバースモータ16は、一定のタイミングで正逆転駆動される。ガイドローラ10は、一定のピッチで移動し、折り返し基準位置に達したら、折り返され、逆方向に移動する。
【0022】
折り返し基準位置は、ボビン1のフランジ27に合わせてガイドローラ10を移動させることにより設定される。このときのガイドローラ10のトラバ−ス位置に対するトラバース位置検出器17の出力データをメモリに記憶しておく。コントロールユニット22は、トラバース位置検出器17からの出力に基づいて、折り返し基準位置にガイドローラ10が達したことを検知すると、トラバースモータ16の回転方向を切り替える。
【0023】
また、コントロールユニット22は、ダンサーローラ10の移動に応じてボビン1のモータ14を駆動制御する。これにより、巻取速度が変化して、線材の張力が一定に保たれる。
【0024】
そして、コントロールユニット22は、巻き取られた線材の巻姿を判断し、巻姿の変化に応じてガイドローラ10の折り返し調整を行う。すなわち、コントロールユニット22は、ダンサー位置検出器20あるいは計尺器21の出力に基づいて線材の巻姿を判断し、巻姿が変化するときの変移位置を検出する手段と、巻太りと判断したとき、変移位置よりも手前で折り返すようにガイドローラ10の折り返し調整を行う手段と、巻細りと判断したとき、変移位置を基準にしてトラバース速度を減速し、折り返し基準位置で折り返すようにガイドローラ10の折り返し調整を行う手段とを有する。このとき、コントロールユニット22は、巻姿を判断するための測定工程と、折り返し調整を行うための補正工程とを実行する。
【0025】
測定工程では、トラバース中にボビン1の1回転毎にダンサーローラ12の位置および線材の計尺量を測定する。測定は、図3に示すように、ボビン1の中央部Aおよび両側のフランジ近傍部Bにおいて行う。中央部Aでの測定では、ボビン1がn回転、例えば50回転する間、行う。フランジ近傍部Bは、フランジ27から所定距離の範囲内とされ、この範囲は例えば10mmに設定される。この範囲内においてボビン1の1回転毎に測定を行う。そして、測定は、ガイドローラ10が1往復トラバースする間に行われる。図中、軸方向に対して、左側を操作側とし、右側を反操作側とすると、操作側にトラバースするとき、中央部Aを通過中に測定が行われ、操作側のフランジ近傍部Bを通過中に測定が行われる。折り返して反操作側にトラバースするとき、中央部Aを通過中に測定が行われ、反操作側のフランジ近傍部Bを通過中に測定が行われる。
【0026】
中央部Aで測定したときのダンサー位置検出器20および計尺器21の出力は、図4(a)に示すように、ボビン1の1回転毎に変動している。そこで、測定したn個の出力データの平均値を算出し、さらに標準偏差を算出する。この標準偏差に感度調整値を加算して、閾値を決める。感度調整は、ダンサー位置検出器20および計尺器21の出力が増加傾向にあるときには+、減少傾向にあるときには−とする。
【0027】
フランジ近傍部Bで測定したときのダンサー位置検出器20および計尺器21の出力は、図4(b)、(c)に示すように、巻姿に応じて変動する。なお、ここでは、図2に示すように、操作側のフランジ近傍部Bでは巻細り、反操作側のフランジ近傍部Bでは巻太りになっているものとする。
【0028】
巻姿の判断として、まずフランジ近傍部Bでの出力データが上昇傾向にあるか下降傾向にあるかを判断する。上昇傾向にあれば、巻太りになっていると判断する。下降傾向にあれば、巻細りになっていると判断する。
【0029】
次に、フランジ近傍部Bでの出力データと中央部Aでの出力データの平均値との差である変移量を算出し、この変移量と閾値とを比較する。変移量が閾値を超えたとき、図4(b)に示す巻太りの場合、出力データが(平均値+閾値)を超える。このとき、複数回、例えば3回連続して超えた場合に、巻姿が変化したと判断する。1回のみ超えた場合は、機械的な要因等による変動であると判断して、巻姿の変化とはみなさず、誤判断を防ぐ。なお、巻細りの場合は、出力データが(平均値−閾値)よりも下がる。ダンサー位置検出器20および計尺器21の各出力データに基づいて判断するが、少なくとも一方の出力データにおいて、変移量が閾値を超えたときに、巻姿が変化したと判断する。
【0030】
そして、巻姿が変化したと判断されたときの3つの出力データのうち、最初の出力データを検出したときのトラバース位置を変移位置Xとする。すなわち、変移位置Xは、巻姿の変化が始まるトラバース位置である。この変移位置Xに対応するトラバース位置検出器17の出力データがメモリに記憶される。
【0031】
図5に測定結果の一例を示す。(a)は中央部Aでのダンサーローラ位置の測定結果である。(b)は中央部Aでの計尺量の測定結果である。(c)は反操作側のフランジ近傍部Bでの測定結果および変移量である。(d)は操作側のフランジ近傍部Bでの測定結果および変移量である。
【0032】
反操作側では、ダンサーローラ位置において、No.5で変位量が閾値を超え、計尺量において、No.6で変移量が閾値を超えている。したがって、No.5の出力データを検出した時点が巻姿の変化したときと判断する。操作側では、ダンサーローラ位置および計尺量において、No.5で変移量が閾値を超えている。したがって、No.5の出力データを検出した時点が巻姿の変化したときと判断され、この出力データを検出したときのトラバース位置が変移位置Xとされる。
【0033】
補正工程では、巻姿に応じてガイドローラ10の折り返しを調整する。巻太りの場合、図2に示すように、変移位置Xよりも一定値Lだけ中央寄りの折り返し位置X1でガイドローラ10を折り返す。すなわち、ガイドローラ10は、折り返し基準位置よりも手前側で折り返される。この場合、トラバース速度は変更しない。巻細りの場合、変移位置Xの一定値Lだけ中央寄りの減速開始位置X2からトラバース速度の減速を開始して、折り返し基準位置でガイドローラ10を折り返す。この場合、折り返し基準位置は変更しない。なお、一定値Lは、トラバース位置と実際に巻かれた線材の位置との差を考慮して設定され、例えば0.2mmとされる。
【0034】
コントロールユニット22は、測定工程と補正工程とを交互に実行するか、あるいは測定工程を実行してから、複数回補正工程を続けて行う。いずれを実行するかは選択可能とされる。後者の場合、巻姿の変化が大きくなったとき、巻姿を正常に戻すように調整をするときに、有効である。
【0035】
上記の折り返し調整を行うときの手順を図6に基づいて説明する。巻取運転が開始されると、測定工程が実行される。操作側あるいは反操作側にトラバースされるとき、ボビン1の中央部Aにおいて、ダンサーローラ位置および計尺量の測定を行う。測定された出力データから平均値および閾値を算出する。一方のフランジ近傍部Bにおいて、ダンサーローラ位置および計尺量の測定を行い、巻姿を判断する。ガイドローラ10がトラバース基準位置に達すると、折り返されて逆方向にトラバースされる。他方のフランジ近傍部Bでの測定を行い、巻姿を判断する。このとき、巻太りあるいは巻細りといった巻姿の変化を検知したとき、変移位置Xを検出する。
【0036】
1往復すると、次に補正工程が実行される。このときも中央部Aを通過する際に、測定は行われる。ガイドローラ10がフランジ近傍部Bに近づくと、判断された巻姿に応じた補正が開始される。巻太りの場合、ガイドローラ10は変移位置Xを基準にして折り返される。すなわち、ガイドローラ10は折り返し位置X1で折り返される。これによって、変移位置Xよりもフランジ側には、線材は巻き取られず、これ以上線材が積み重ならない。したがって、巻太りが解消され、正常な巻姿に戻る。
【0037】
巻細りの場合、ガイドローラ10は変移位置Xに達すると、減速開始位置X2から減速されてトラバース基準位置まで移動して、折り返される。すなわち、トラバース速度が例えば1/2にされ、ガイドローラ10はトラバース基準位置まで移動する。ガイドローラ10の移動ピッチが半分となり、変移位置Xからトラバース基準位置までの間において、線材の巻取量が増える。したがって、巻細りが解消され、正常な巻姿に戻る。
【0038】
補正工程が1回あるいは複数回実行され、折り返し調整が完了すると、再び測定工程が実行される。線材の巻き取り中、良好な巻姿が得られるように、折り返し調整が繰り返される。
【0039】
また、コントロールユニット22は、巻姿の変化に応じて折り返し基準位置を変更する手段を有する。測定工程において、フランジ近傍部Bでボビン1の1回転毎に変移量を閾値と比較している。変移量が連続して設定回数だけ閾値を超えたときに、折り返し基準位置が変更される。
【0040】
巻太りの場合、折り返し基準位置は元の折り返し基準位置よりも中央寄りに変更される。巻細りの場合、折り返し基準位置は元の折り返し基準位置よりもフランジ寄りに変更される。変更された折り返し基準位置に対応するトラバース位置検出器17の出力データがメモリに記憶される。以降、コントロールユニット22は、変更後の折り返し基準位置に基づいてトラバースモータ16を駆動制御する。
【0041】
これによって、巻太りや巻細りが解消されないまま測定工程が実行されたとき、変更された折り返し基準位置で折り返されるので、巻姿はこれ以上悪化せず、巻姿を改善することができる。
【0042】
ところで、線材の巻き取り中にボビン1のフランジ27が外側に広がって変形する場合がある。このとき、巻細りが発生する。そこで、コントロールユニット22は、折り返し調整を繰り返し行うように、補正工程の実行回数を多くして、ボビン1の変形による巻太りや巻細りに対処する。
【0043】
コントロールユニット22は、測定工程において、前回の測定工程で検出した変移位置Xから折り返し基準位置まで移動する間に算出した変移量を累積する。そして、累積した変移量に対し、閾値および算出した回数に基づいて実行回数を決め、決められた回数だけ補正工程を実行する。すなわち、変移量を累積することにより、ボビン1の変形によって生じた巻姿の変化した部分の断面積がわかる。断面積が0となるように、1回の折り返し調整によって修正できる断面積を考慮して、実行回数が決められる。したがって、ボビン1が変形しても、正常な巻姿に線材を巻き取ることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。上記の実施形態では、ボビンに対してガイドローラをトラバースさせているが、ボビンを軸方向にトラバースさせる線材巻取装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の線材巻取装置の概略構成を示し、(a)は平面図、(b)は正面図
【図2】線材巻取装置の制御ブロック図
【図3】巻姿が変化したボビンに対する折り返し調整のための測定工程と補正工程を説明するための図
【図4】ダンサー位置検出器あるいは計尺器の出力を示す図であり、(a)は中央部での正常な巻姿に対する場合、(b)は巻太りの場合、(c)は巻細りの場合
【図5】ダンサー位置検出器および計尺器の測定結果の一例を示す図であり、(a)は中央部でのダンサーローラ位置の測定結果、(b)は中央部での計尺量の測定結果、(c)は反操作側フランジ近傍部での測定結果および変移量、(d)は操作側フランジ近傍部での測定結果および変移量
【図6】折り返し調整のための測定工程および補正工程のフローチャート
【符号の説明】
【0046】
1 ボビン
10 ガイドローラ
11 トラバース装置
12 ダンサーローラ
16 トラバースモータ
17 トラバース位置検出器
20 ダンサー位置検出器
21 計尺器
22 コントロールユニット
27 フランジ
A 中央部
B フランジ近傍部
X 変移位置
X1 折り返し位置
X2 減速開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンに対してガイドローラを軸方向にトラバースさせながらボビンを回転させて、ダンサーローラを通じて送られてきた線材をボビンに巻き取り、ガイドローラが折り返し基準位置に達したら折り返すようにガイドローラの移動制御を行う制御装置を備えた線材巻取装置であって、ガイドローラのトラバース位置を検出するトラバース位置検出器と、移動するダンサーローラの位置を検出するダンサー位置検出器と、巻き取られる線材を計尺する計尺器とが設けられ、制御装置は、ダンサー位置検出器あるいは計尺器の出力に基づいて線材の巻姿を判断し、巻姿が変化するときの変移位置を検出する手段と、巻太りと判断したとき、変移位置よりも手前で折り返すようにガイドローラの折り返し調整を行う手段と、巻細りと判断したとき、変移位置を基準にして減速し、折り返し基準位置で折り返すようにガイドローラの折り返し調整を行う手段とを有することを特徴とする線材巻取装置。
【請求項2】
制御装置は、巻太りのとき、折り返し基準位置を軸方向中央寄りに変更し、巻細りのとき、折り返し基準位置をフランジ寄りに変更する手段を有することを特徴とする請求項1記載の線材巻取装置。
【請求項3】
制御装置は、トラバース中にボビンの軸方向中央部において得られたダンサー位置検出器あるいは計尺器の複数の出力データから平均値および閾値を算出する手段と、ボビンのフランジ近傍部において得られたダンサー位置検出器あるいは計尺器の出力データと平均値との差である変移量を算出し、変移量と閾値とを比較する手段とを有し、制御装置は、変移量が閾値を超えたとき、巻姿が変化したと判断し、この変移量に対応する出力データを検出した位置を変移位置とすることを特徴とする請求項1または2記載の線材巻取装置。
【請求項4】
制御装置は、1往復のトラバース中に巻姿の判断を行い、判断結果に応じて次のトラバース中にガイドローラの折り返し調整を行うことを特徴とする請求項2または3記載の線材巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−1451(P2008−1451A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171099(P2006−171099)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000161231)宮▲崎▼機械システム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】