説明

線状アルファオレフィンの調製方法およびそのための反応装置システム

本発明は、触媒と溶媒の存在下で反応装置内においてエチレンのオリゴマー化によって線状アルファオレフィンを調製する方法であって、溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む反応装置からの排出流が、少なくとも1つの加熱手段によって、線状アルファオレフィンの実質的に全てが排出流中で溶解および/または溶融するような温度まで加熱される方法、およびそのための反応装置システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒と溶媒の存在下で反応装置内においてエチレンのオリゴマー化によって線状アルファオレフィンを調製する方法、およびそのための反応装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
線状アルファオレフィンの調製方法が当該技術分野において広く知られている。これらの方法は、通常は触媒の存在下で、反応装置内で行われ、溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む排出流が反応装置から排出される。周知のように、線状アルファオレフィンには、オリゴマー化条件下では液体である、短鎖、すなわち、4から18の炭素原子を有するオレフィンが含まれるが、特に、排出流を、触媒を失活させ除去するための触媒除去区画に移送するための反応装置からの排出後に、オリゴマー化条件下では通常固体または半固体である、20以上の炭素原子を有するオレフィンも含まれる。
【0003】
それゆえ、特に、始動条件下および非常に低い周囲温度では、特に触媒除去区画において、重い分子量のオリゴマーが堆積し得る。その結果、設備系と配管系が詰まってしまう。
【0004】
さらに、ある従来技術の方法に関して、高分子量オリゴマーを除去するために、そのオリゴマー化反応装置の出口で冷却と固化が予定されていることが知られている。しかしながら、これは、複雑かつ大規模な運転様式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を克服した、線状アルファオレフィンの調製方法を提供することが本発明の課題である。特に、触媒除去区画およびその下流にある設備系と配管系において、高分子量のオリゴマーの堆積を所望のように避けることのできる方法を提供すべきである。
【0006】
さらに、そのような方法を実施するための反応装置システムも提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の課題は、溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む反応装置からの排出流を、少なくとも1つの加熱手段によって、線状アルファオレフィンの実質的に全てが排出流中で溶解および/または溶融するような温度まで加熱することにより達成される。
【0008】
その温度が約80から約140℃であることが好ましい。
【0009】
線状アルファオレフィンが、4から20より多くの炭素原子を有するオレフィンを含むことがより好ましい。
【0010】
加熱は、電気トレーシング、スチームトレーシングまたは熱交換器により行われてよい。
【0011】
加熱は、触媒が失活され除去される触媒所気区画内で行われることが好ましい。
【0012】
ある実施の形態において、加熱は、触媒除去区画内において加熱された苛性失活剤によって行われる。
【0013】
触媒除去区画の下流の温度は、排出流の望ましくない成分が最終的に廃棄されるまで、触媒除去区画内以上に維持できることが好ましい。
【0014】
ここで、望ましくない成分は、触媒成分および/または20より多くの炭素原子を有する線状アルファオレフィンであることが好ましい。
【0015】
最終的な廃棄は、分離カラムの底から行われることがより好ましい。
【0016】
オリゴマー化が、ジルコニウム成分および有機アルミニウム成分を含む均一系触媒を用いて行われることがさらに好ましい。
【0017】
さらに、ジルコニウム成分が化学式ZrCl4-mmを有し、ここで、X=OCORまたはOSO3R’であり、RおよびR’が独立して、アルキル、アルケンまたはフェニルであり、0<m<4であることが好ましい。
【0018】
ある実施の形態において、有機アルミニウム成分は、Al(C253、Al2Cl3(C253、AlCl(C252、またはそれらの混合物である。
【0019】
反応装置の排出口から触媒除去区画までのアルファオレフィン流の滞留時間が2分未満であることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、特に本発明の方法による、線状アルファオレフィンを調製するための反応装置システムであって、溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む排出流を排出するための排出口を有する反応装置、および反応装置からの排出流を加熱するための加熱手段を備えた反応装置システムも提供される。
【0021】
加熱手段が、反応装置に連結された触媒除去区画内に配置されていることが好ましい。
【0022】
最後に、反応装置の排出口から触媒除去区画までのアルファオレフィン流の滞留時間を2分未満に維持するために、触媒除去区画が反応装置の排出口に隣接していることが好ましい。
【0023】
意外なことに、加熱手段を、線状アルファオレフィンを調製するための反応装置システム内に、特に反応装置に直接隣接して提供することによって、高分子量のオリゴマーの堆積を避けることができ、それゆえ、設備系および配管系の詰まりを避けることができることが分かった。本発明の方法において、排出流の温度を、高分子量のオリゴマーを含む線状アルファオレフィンの実質的に全てが、その中で溶解および/または溶融できるように調節することが重要である。
【0024】
この温度は、加熱手段の下流にある設備系および配管系の詰まりを避けるために、この排出流の望ましくない成分が最終的に廃棄されるまで維持すべきである。反応装置の配管と設備内でのさらなるオリゴマー化を避けるようにできるだけ直ぐに触媒を失活させるために、加熱は、反応装置の排出口に直接隣接していることが好ましい触媒除去区画内で行うことが好ましい。
【0025】
本発明の方法は、線状アルファオレフィンを得るためのエチレンのオリゴマー化に必ずしも制限されず、高分子量のオリゴマーを取り扱う全ての技術に利用してよいのが明らかである。
【0026】
本発明の追加の特徴や利点を、添付の図面を参照して、ここに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】線状アルファオレフィンを調製するための本発明の方法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1において、線状アルファオレフィンを調製するためのエチレンのオリゴマー化に利用できる反応装置1が示されている。反応装置1において、エチレンは、溶媒と触媒の存在下で、好ましくは約60〜100℃の温度でオリゴマー化される。オリゴマー化後(反応装置は連続動作されていることが好ましい)、排出流は反応装置から除去される。出口流は、溶媒、触媒および低分子量と高分子量の両方の線状アルファオレフィンを含む。詳しくは、「高分子量オリゴマー」という用語は、反応温度で実質的に固体であるほど高分子量を有するオリゴマーを含むことを意味する。次いで、反応装置1からの排出流は、触媒が、触媒失活剤、例えば、水酸化ナトリウム溶液の添加により失活され除去される、触媒除去区画2に移送されることが好ましい。反応装置から触媒除去区画への排出流の滞留時間ができるだけ短い、好ましくは2分未満であることが好ましい。触媒除去区画2には、線状アルファオレフィンが排出流中で実質的に全てが溶解および/または溶融するほどの温度まで、排出流を加熱するための加熱手段3も設けられている。当業者には、この目的のために利用できる任意の加熱手段が分かる。触媒除去区画2の後に、排出流をさらに処理しても差し支えない、例えば、線状アルファオレフィンを溶媒と触媒の残留物から分離してもよい。特に、線状アルファオレフィンは、いくつかの分画に、例えば、低分子量を有する分画と高分子量を有する分画に分離してもよい。高分子量オリゴマーの分画は、好ましくは分離カラムの底から、最終的に廃棄されるであろう。排出流の温度を、触媒除去区画内以上に維持し、よって、高分子量オリゴマーの堆積が追加の設備および配管中で避けられるように、触媒除去区画の下流に追加の加熱手段を設けてもよいことが当業者には明らかである。
【0029】
先の説明、図面または特許請求の範囲に開示された特徴は、別々とその任意の組合せで、本発明をその多用な形態で実現するための素材である。
【符号の説明】
【0030】
1 反応装置
2 触媒除去区画
3 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒および溶媒の存在下で反応装置内においてエチレンのオリゴマー化により線状アルファオレフィンを調製する方法であって、前記溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む前記反応装置からの排出流を、該線状アルファオレフィンの実質的に全てを該排出流内に溶解および/または溶融できる温度まで、少なくとも1つの加熱手段によって加熱することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度が約80から約140℃までであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記線状アルファオレフィンが、4から20より多くの炭素原子を有するオレフィンを含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
加熱が、電気トレーシング、スチームトレーシングまたは熱交換器により行われることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
加熱が、触媒が失活され除去される触媒除去区画内で行われることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
加熱が、前記触媒除去区画内に加熱された苛性失活剤の添加により行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記触媒除去区画の下流の温度が、前記排出流の望ましくない成分が最終的に廃棄される間で、前記触媒除去区画内における温度以上に維持されることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記望ましくない成分が、触媒成分および/または20より多く炭素原子を有する線状アルファオレフィンであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
最終的な廃棄物が分離カラムの底から排出されることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記オリゴマー化が、ジルコニウム成分および有機アルミニウム成分を含む均一系触媒を利用して行われることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ジルコニウム成分が化学式ZrCl4-mmを有し、ここで、X=OCORまたはOSO3R’であり、RおよびR’が独立してアルキル、アルケンまたはフェニルであり、0<m<4であることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記有機アルミニウム成分が、Al(C253、Al2Cl3(C253、AlCl(C252、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記反応装置の排出口から前記触媒除去区画へのアルファオレフィン流の滞留時間が2分未満であることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
線状アルファオレフィンを調製するための反応装置システムであって、溶媒、触媒および線状アルファオレフィンを含む排出流を排出するための排出口を有する反応装置、および該反応装置からの前記排出流を加熱するための加熱手段を備えた反応装置システム。
【請求項15】
前記加熱手段が、前記反応装置に連結された触媒除去区画内に配置されていることを特徴とする請求項14記載の反応装置システム。
【請求項16】
前記触媒除去区画が、前記反応装置の排出口に直接隣接して備えられていることを特徴とする請求項15記載の反応装置システム。
【請求項17】
前記反応装置の排出口から前記触媒除去区画へのアルファオレフィン流の滞留時間が2分未満であることを特徴とする請求項16記載の反応装置システム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−516636(P2010−516636A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545823(P2009−545823)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009979
【国際公開番号】WO2008/086837
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(507055615)リンデ アーゲー (29)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AG
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】