説明

締付体型フリーホイール

締付体型フリーホイール(10)において、内輪(12)と、内輪(12)に対して相対的に第1の回動方向に回動可能な外輪(14)と、内輪(12)及び外輪(14)の間の締付体(22)のためのケージ(24)と、複数の締付体(22)とを備えており、締付体(22)は、内輪(12)及び外輪(14)の間の相対回動を第2の回動方向において阻止する締付け位置と、内輪(12)及び外輪(14)の間の相対回動を第1の方向において可能にする解放位置との間において傾動可能であり、締付体(22)を半径方向内側にかつ締付け位置に向かって予荷重をかける締付体ばね支承部が設けられており、締付体ばね支承部は各締付体のために個別に形成されたばね(50)として設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付体型フリーホイール、特に、例えばクランクCVT変速機の被動側において使用可能である、ケージを備えた減衰される締付体型フリーホイール及びこのような締付体型フリーホイールを備えたクランクCVT変速機に関する。
【0002】
クランクCVT変速機は、例えば欧州特許出願公開第1650071号明細書において公知である。エンジンによって駆動可能な、変速機に対して駆動軸を形成する入力軸に、偏心体構成部分を備えた調整可能な偏心体駆動装置が設けられている。この偏心対駆動装置は、変速機に対して出力軸又は被動軸を形成する駆動される軸にコネクティングロッド状の接合エレメントを介して接合されている。接合エレメントのストロークをフリーホイール装置を介して駆動される軸に、ひいては変速機の被動側に伝達することにより、駆動される軸は駆動されて回動する。フリーホイール装置は、コネクティングロッド状の接合エレメントと駆動される軸との間に設けられている。
【0003】
上述のクランクCVT変速機において、駆動するクランク軸と被動軸若しくは駆動される軸とは互いに平行に配向されていて、変速機ハウジング内に回動可能に支承されている。内燃機関からトルクがクランク軸に導入されると、トルクはクランクCVT変速機により被動軸に伝達される。駆動軸の回動軸線に対する偏心体構成部分の位置に応じて、偏心体構成部分の偏心量、ひいては駆動軸に対する偏心体構成部分の回動軸線の偏心量は変化し、これによりコネクティングロッド状の接合エレメントから被動軸へ伝達されるストローク、ひいては変速機の変速比を調節することができる。被動軸において、例えば車両のホイールの駆動のためのトルクを測ることができる。通常、クランクCVT変速機においてはクランク軸の軸線方向に相前後して複数の偏心対ユニットが配置されている。これらの偏心体ユニットには夫々、コネクティングロッド状の接合エレメントが取り付けられていて、コネクティングロッド状の接合エレメントは変速機の被動側において、対応する数のフリーホイール装置に接合している。これらのフリーホイール装置は被動軸において同様に、被動軸の軸線方向で相前後して配置されている。
【0004】
フリーホイールとしては基本的に2種類のフリーホイールが公知になっている。つまり、切換え可能なフリーホイールと、確定した変更不能なブロック方向を有するフリーホイールとが公知である。切換え可能なフリーホイールはフリーホイールの切換え位置に応じて選択的に、外輪及び内輪の相対回動を2つの相対回動方向のうちの一方向でブロックする。確定した変更不能なブロック方向を有するフリーホイールは、ブロック方向において外輪と内輪との間の一方の相対回動を防ぐ一方で、他の相対回動方向において外輪と内輪との互いに相対的な回動を許容する。フリーホイールの切換えにより、変速機の入力軸の回動方向に対する被動軸の回動方向を変更することができるので、例えば後進を実現するために、切換え可能なフリーホイールにおいては、付加的な伝送装置又は別体のモータを設ける必要はない。切換え可能でないフリーホイールにおいては、別体のモータ、例えば電動モータが設けられるか、又は変速機の出力軸に後置されて他の伝動装置、例えば遊星歯車伝動装置が連結される。他の伝動装置は、必要な場合、つまり後進機能を設定したい場合、変速機における荷重伝達経路の一部であり、その他の場合は切り離されている。
【0005】
切換え可能なフリーホイールは、一般的にローラ型フリーホイールとして構成される。このローラ型フリーホイールのローラは内輪と外輪との間において転動し、一方又は他方の相対回動方向において締付けギャップ内へ適切なばね支承部により押圧される。このために、内輪又は外輪の少なくとも一方は輪郭付けされているので、上記締付けギャップが形成される。
【0006】
ローラ型フリーホイールに対して択一的には、ローラ型フリーホイールよりもコンパクトでかつ軽量である締付体型フリーホイール或いはスプラグ型フリーホイールが公知である。この締付体型フリーホイールにおいて、例えば締付体或いはスプラグは、円形横断面を有することができる内輪及び外輪の相対回動を1つの位置においてブロックし、他の位置において相対回動を許容するように輪郭付けされている。
【0007】
上述のフリーホイールにおいて、内輪及び外輪が互いに静止することを締付体若しくはローラがもたらす、締付体若しくはローラの位置は、締付け位置又はロック位置と称呼される。この締付け位置又はロック位置において、ローラ若しくは締付体は内輪と外輪との間に形成される締付けギャップに位置する。ローラ若しくは締付体が内輪及び外輪の回動を互いに許容する位置は、フリーホイール位置と称呼される。この用語は本明細書においては、ブロッキング若しくは解放が締付体の実際に有効な直径に基づくフリーホイールに対して使用され、周方向に沿った締付体の位置に基づかない(締付体型)フリーホイールに対しても使用される。
【0008】
本発明の目的は、頑丈に構成されていて確実に機能する、特にクランクCVT変速機のための締付体型フリーホイールを提供することである。
【0009】
上記目的は請求項1の特徴部を備えた締付体型フリーホイールによって達成される。有利な構成は従属請求項に記載する。請求項17には、上述の締付体型フリーホイールを使用するクランクCVT変速機を記載する。
【0010】
本発明の根底にある思想は、締付体を備えたフリーホイールを提供することである。これらの締付体の、フリーホイールの軸線方向に対して垂直な横断面における輪郭は、内輪における転動による締付体の傾動状態に応じて、締付け位置又はフリーホイール位置を占めることができるように形成されている。個々の締付体は、内輪と外輪との間に設けられているケージ内に保持され案内され、各締付体のためのケージに個々にかつ別個に締付体ばね支承部が設けられている。したがって傾動状態は、傾動状態に応じて変化する締付体の有効な直径を規定する。別個の締付体ばね支承部により、力方向及び力の大きさはばね定数及び力の作用方向の適切な選択により、幾何学的な公差が有効な力の大きさに殆ど作用せず、締付けギャップへの運動のための迅速な戻し調整を保証する各締付体に対する基本圧着力以外の、締付けギャップからの運動時に存在するエネルギの一部分を摩擦により無効にすることができるか若しくは締付体ばね支承部に蓄えることができるように選択することができる。これにより、減衰過程の最後における締付体の迅速な戻り回動、つまり再度の締付けギャップへの戻り回動が保証される。したがって、個々の締付体のための個々の締付体ばね支承部により、フリーホイールの確実な運転を保証することができる。さらに、個別締付体ばね支承部による、半径方向内側の成分を有する力の作用方向により、各運転状態の内輪における締付体の接触を保証することができる。
【0011】
有利な構成によれば、内輪と外輪とはフリーホイールの軸線方向に対して垂直な断面において夫々円形である。これにより内輪及び外輪の製造は容易である。このことは(軸線方向に対して垂直な断面において)次のような横断面輪郭を備えた締付体の使用により可能になる。つまり、締付体の横断面輪郭は、締付体が内輪に接している場合、所定の傾動状態において内輪及び外輪の回動を互いに許容する、つまり締付体と、例えば外輪との間の空隙があるように輪郭付けされる。他の傾動状態においては、内輪及び外輪の回動は互いにブロックされる。これにより、締付体が内輪及び外輪において同時に緊締される場合が起こる。
【0012】
有利にはケージは内輪において回動可能である。さらに有利には、ケージばね支承部はケージを内輪に及び/又は内輪に不動に接合されている構成部分に対して付勢を与えるように設けられている。このことは、内輪に対するケージの回動時に摩擦エネルギが発生し、その結果、締付けギャップからの締付体の運動及び内輪に対するケージの運動が減衰され、エネルギが排出されることを意味する。
【0013】
さらに例えば外輪は内輪において滑り軸受又は転がり軸受により支承されていてよく、滑り軸受又は転がり軸受は内輪に固定されていてよく、有利には被嵌されていてよい。ケージばね支承部は、ケージを軸線方向に滑り軸受又は転がり軸受の1つの軌道輪に対して押圧することができる。
【0014】
別の有利な構成によれば、ケージばね支承部は皿ばねにより形成されている。これにより構造に関して全体的に単純になる。
【0015】
有利には締付体ばね支承部はケージに支承されている。これによりまた、ケージは締付体ばね支承部のばねを備えた構成群として予め形成することができ、内輪及び外輪と締付体と共に組み付けることができる。
【0016】
有利には、締付体弾性部のばねは、ねじりコイルばね又は板ばねとして構成されていて、有利には比較的小さなばね定数を有している。したがってばねの圧接方向若しくは作用方向を良好に調節することができる一方で、幾何学的な公差は小さなばね定数に基づき実際に締付体に加えられる力の大きさに殆ど影響を与えない。
【0017】
有利には締付体ばね支承力は、締付体ばね支承力の半径方向の成分、つまりフリーホイールの半径方向に作用する力の成分が、各締付体の最大の遠心力よりも大きいように選択されている。これにより締付体を各運転状態において内輪に確実に圧接させることができるので、締付体の内輪からの持上りは各運転状態において確実に防がれる。
【0018】
有利には個々の締付体の重心は半径方向において、締付体のための、ケージに設けられている案内領域の半径方向外側に位置する。これにより締付体の傾動若しくは転動運動は、内輪にいて確実にかつ簡単に実施することができ、ケージに設けられている案内領域からの影響は殆ど受けない。
【0019】
さらに別の有利な構成によれば、各締付体のためにケージにストッパが設けられているように形成されている。このストッパは、適切に成形された締付体の領域と協働することができるので、締付体の運動時に締付け位置からフリーホイール位置への締付体の運動距離は制限される。これにより締付体はケージから離れるか若しくは締付けギャップから極めて遠くに離れることは防がれる。これにより、フリーホイールの故障を阻止することができ、若しくは締付け位置とフリーホイール位置との間の確実かつ迅速な切換えを保証することができる。
【0020】
有利には、ケージにおける締付体は、ケージが移動するか又は締付体が内輪又はケージにおいて滑動することなく、締付体が内輪において転動することができるように遊びを持って案内されておりかつ内輪に対して成形されている。このために、ケージ及び滑動体の輪郭は有利には、案内領域におけるケージの輪郭が、上述の横断面輪郭の転動曲線に相当する、つまり一致している形状を有しているものの、転動曲線に対して規定の極めて小さな遊びだけ平行にずらされているように互いに合わされている。したがって、締付体は転動時には常に、ケージに対して同じ小さな遊びを有している。これによりフリーホイールにおいて不必要にエネルギは打ち消されず、摩擦と、ひいては場合によっては導出する必要がある熱とが発生する、ということが保証される。
【0021】
さらに別の有利な構成によれば、フリーホイールの外輪は、クランクCVT変速機のコネクティングロッド状の接合エレメントと接合するためにコネクティングアイを備えて構成されている。コネクティングロッド状の接合エレメントは、変速機の駆動側に対する接合を形成する。
【0022】
さらに別の有利な構成によれば、コネクティングロッドアイに隣接して、1つ又は複数の応力軽減貫通開口若しくは負荷軽減口が設けられている。これにより、負荷軽減口はコネクティングロッドアイの領域における応力を明らかに減じるので、コネクティングロッドアイの領域における外輪の故障及び破断又は亀裂を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るフリーホイールの、フリーホイールの軸線方向に対して垂直の横断面図である。
【図2】図1に示したフリーホイールの軸線方向における横断面図である。
【図3】緊締されていない図1に示したフリーホイールの一部分を示す図である。
【図4】フリーホイールが緊締されていない図3に対応する図である。
【図5】図3,4に示した減衰過程を説明する、図3,4に対応する図である。
【図6】図2を拡大して示す図である。
【図7】外輪の第1の実施の形態を示す図である。
【図8】外輪の第2の実施の形態を示す図である。
【0024】
以下に、本発明を添付の図面に基づいて例示的に説明する。
【0025】
本発明に係る締付体型フリーホイール10の実施の形態を、図1では軸線方向に対して垂直の横断面図において示し、図2では軸線方向の横断面図において示す。図1,2の細部については、図3〜5若しくは図6に示す。
【0026】
減衰される締付体型フリーホイール10は、内輪12と外輪14とを有している。これらの内輪12と外輪14とは共通の回動軸線Aを有しており、互いに同心的になっている。内輪12は図1の横断面において円形の外面13を有している。外輪14は図1の横断面において円形の内面15を有している。
【0027】
内輪12は、例えばクランクCVT変速機の被動軸と同一であってよいか、又は被動軸に相対回動不能に若しくは変速機を介して必要に応じて接合されていてよい。外輪14には、円形リングとして半径方向外側に突出部16が備え付けられている。突出部16の領域にはコネクティングロッドアイ18が組み込まれている。このコネクティングロッドアイ18を介して、例えばコネクティングロッド状の接合エレメント(図示せず)により、クランクCVT変速機の駆動側に対する接合を形成することができ、偏心体ユニットによってコネクティングロッド状の接合エレメントにもたらされるストロークは、外輪14に伝達され、外輪14の回動に繋がる。
【0028】
さらに図1において、コネクティングロッドアイ18の領域に、つまりコネクティングロッドアイ18に隣り合って応力軽減貫通開口19が看取可能である。応力軽減貫通開口19は、図1に示す実施の形態においては、コネクティングロッドアイ18若しくは外輪14の内面15のほぼ接線方向に延ばされた開口として形成されている。この開口のコネクティングロッドアイ18寄りの面は、コネクティングロッドアイの形状に追従しており、応力軽減貫通開口19は、接線方向に見て中央の領域において、応力軽減貫通開口19の縁領域に較べて先細りされている。
【0029】
図7に、図1,2に示した外輪14を単独で示す。図8には、外輪14の択一的な実施の形態、特に応力軽減貫通開口19′の択一的な実施の形態を示す。図8に示す実施の形態においては、互いに分離した2つの応力軽減貫通開口19′が外輪14の突出部16に隣り合った領域に設けられている。応力軽減貫通開口19若しくは19′は突出部16の負荷を軽減するので、上記領域において応力は減じられる。このために、応力軽減貫通開口は、有利には全体として貫通開口若しくは負荷軽減口として形成されている。また、止まり穴も基本的に可能である。
【0030】
図2,6において最もよく見て取ることができるように、外輪14は内輪12上において滑り軸受20を介して支承されている。滑り軸受20は内輪12若しくは被動軸に不動に被せ嵌められている。したがって外輪14は内輪12に対して相対的に回動可能に支承されている。これにより、外輪14の内面15と、内輪12の外面13との間に環状ギャップ21が形成される。この環状ギャップ21に、ケージ24により案内される締付体22が収納されている。ケージ24は同様に内輪に回動可能に取り付けられており、ひいては接触していてよい。さらにケージ24は、図6から看取可能であるように、皿ばね26により軸線方向に予め加圧される。したがって皿ばね26はケージばね支承部を形成する。したがってケージ24は、図6の左側の転がり軸受20の軌道輪に皿ばね26により押圧される。転がり軸受20の軌道輪は内輪12に対して固定されておりかつ相対回動不能であるので、内輪12若しくは転がり軸受20に対してケージ24が回動する場合、摩擦が発生し、ケージ24の回動時に摩擦エネルギが導出される。
【0031】
図6から看取可能であるように、外輪に対する転がり軸受20の軸受面が適切に成形されていると、転がり軸受20の軌道輪は軸線方向に夫々隣り合った外輪14のために一緒に使用することができる。これにより、転がり軸受20の軌道輪に、図6から看取可能であるように、2つの軸受面23は各々、隣り合う2つの外輪のうち1つの外輪のために成形されている。
【0032】
以下にケージ24と締付体22のばね支承部とを個別に、特に図3〜5に関連して説明する。
【0033】
締付体22は夫々、転動面30を有している。この転動面30によって締付体22は内輪12を滑ることなく転動することができる。内輪12、特に内輪12の外周面13における転動面30での転動により、締付体は図3に示すフリーホイール10の緊締されていない位置と、図4に示すフリーホイール10の緊締された位置との間を運動することができる。
【0034】
さらにケージ24には案内面40若しくは41が設けられている。これらの案内面40若しくは41は、フリーホイールの緊締されていない位置と緊締されている位置との間における締付体22の運動時に、締付体22の輪郭面と、ケージ24の案内面40若しくは41との間に均一な遊びが常に存在するように成形されている。これによりケージ24は動かされないか又は影響を与えられない。つまり、案内面40,41は実質的にノーズ形の締付体領域31,32の転動輪郭に一致するが、この締付体領域31,32に対して平行にずらされているので、ケージ24と締付体22との間に常に同じ遊びが存在する、ことを意味する。図3に示すフリーホイールの緊締されていない位置において、締付体22は外輪14の内面15に対して遊びを持っている。上述の緊締されていない位置において、締付体22の載置点において、締付体22は内輪12の接線に対して右側(時計回り)に傾けられている。
【0035】
さらに、緊締されている位置から解放位置へ締付体22が運動し、この運動時に締付体22の運動(つまり過剰な傾動)を制限することができる場合には、ケージ24は各締付体のために、締付体22のノーズ形の領域31と接触することができるストッパノーズの形式のストッパ42を有している。
【0036】
ケージ24に各締付体22のために、夫々個別のねじりコイルばね50が締付体ばね支承部として設けられている。ねじりコイルばね50は締付体22に半径方向内側にかつ締付け位置(図3において左側)に向けられている基本圧着力Fを加える。したがって基本圧着力Fはギャップの方向に斜めに半径方向内側に作用する。基本圧着力の接線方向の成分FGTは、締付け位置若しくは締付けギャップに向かって基本ばね支承力を形成する、つまり、締付けギャップに向かって締付体22の十分な基本ばね支承力が常に設けられているように選択されている。基本圧着力Fの半径方向の成分FGRは、有利には運転中に発生する締付体22への最大の遠心力よりも小さく、ひいては締付体22の内輪12からの持上りを防ぐように選択されている。ねじりコイルばね50は、有利には比較的小さなばね定数を有しているので、幾何学的な公差が、例えばねじりコイルばね50のケージ24又は締付体22自体への組付け時に基本圧着力Fに殆ど影響を与えることはない。
【0037】
図4に示す外輪14及び締付体22の重畳により概略的に示してある締付け位置において、締付体22は図3に示した位置に対して左側に傾けられていて、ひいては内輪12と外輪14とを互いに締め付ける。したがって図4において反時計方向に、内輪12若しくは外輪14は、一緒にしか回動することはできない。
【0038】
図5に示すように、締付体22が締付けギャップから高速で回動する場合、ねじりコイルばね50が圧縮され、外輪14の内面15と締付体22との間にエアギャップ52がもたらされるまで傾く。したがってねじりコイルばね50は、締付けギャップからの締付体22の回動時に発生するエネルギの(小さな)一部分を吸収する。ねじりコイルばね50に蓄えられたエネルギは、減衰過程の最後に、締付けギャップへ、つまり図3に示した位置への締付体22の戻り回動のために使用される。
【0039】
さらに締付け位置からフリーホイール位置への運動時に、締付体22は内輪12の外面13において転動面30で、ケージ24におけるストッパ42に対して締付体22のストッパノーズ31が接触するまで転動する。本実施の形態において、内輪12若しくは内輪12に接合されている転がり軸受20に対するケージ24の運動のために導くことができる、ケージへの衝撃力Fが生じる。エネルギが摩擦により排出されることで、ケージ運動は、転がり軸受20とケージ24との間の摩擦により減衰される。締付体22に発生する反動力FIRは、摩擦力の形式の制動力FIRBを形成し、ひいてはシステムから同様にエネルギを取り去る。したがって締付体22の締付けギャップからの運動は、ケージ24のストッパ42における衝突により制限され、場合によって生じる振動は摩擦力により減衰され、締付体22は迅速にかつ確実に再び図3に示した出発位置に戻ることができ、この出発位置から確実に締付け位置に移動することができる。さらにケージ24の運動により、締付体22の他のノーズ形の締付体領域32と、ケージに設けられている対応する案内面41との間に同様に、締付体22の振動運動を減衰する摩擦力Fが生じる。
【符号の説明】
【0040】
10 締付体型フリーホイール、 12 内輪、 13 外面、 14 外輪、 15 内面、 16 突出部、 18 コネクティングロッドアイ、 19,20 応力軽減貫通開口、 21 環状ギャップ、 22 締付体、 23 軸受面、 24 ケージ、 26 皿ばね、 30 転動面、 31,32 締付体領域、 40,41 案内面、 42 ストッパ、 50 ねじりコイルばね、 52 エアギャップ、 A 回動軸線、 F 基本圧着力、 FGT 基本圧着力Fの接線方向の成分、 FGR 基本圧着力Fの半径方向の成分、 F 衝撃力、 FIR 反動力、 FIRB 摩擦力、 F 摩擦力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付体型フリーホイール(10)において、内輪(12)と、該内輪(12)に対して相対的に第1の回動方向に回動可能な外輪(14)と、前記内輪(12)及び前記外輪(14)の間の締付体(22)のためのケージ(24)と、複数の締付体(22)とを備えており、該締付体(22)は、前記内輪(12)及び前記外輪(14)の間の相対回動を第2の回動方向において阻止する締付け位置と、前記内輪(12)及び前記外輪(14)の間の相対回動を前記第1の方向において可能にする解放位置との間において傾動可能であり、半径方向内側にかつ前記締付け位置に向かって前記締付体(22)に予荷重をかける締付体ばね支承部が設けられており、該締付体ばね支承部は各締付体のために個別に形成されたばね(50)として設けられていることを特徴とする、締付体型フリーホイール。
【請求項2】
前記内輪(12)の外面(13)と前記外輪(14)の内面とは夫々、軸線方向に対して垂直な断面において円形横断面を有していることを特徴とする、請求項1記載の締付体型フリーホイール。
【請求項3】
前記ケージ(24)は前記内輪(12)において回動可能であることを特徴とする、請求項1又は2記載の締付体型フリーホイール。
【請求項4】
前記内輪(12)及び/又は前記内輪(12)に不動に接合されている構成部分(20)に向かって前記ケージ(24)に予荷重をかけるケージばね支承部(26)が設けられていることを特徴とする、請求項3記載の締付体型フリーホイール。
【請求項5】
前記外輪(14)は前記内輪(12)において滑り軸受又は転がり軸受(20)により支承されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項6】
前記滑り軸受又は転がり軸受(20)は前記内輪(12)に固定されている、有利には被嵌されていることを特徴とする、請求項5記載の締付体型フリーホイール。
【請求項7】
前記ケージばね支承部(26)は前記ケージ(24)を軸線方向において、前記滑り軸受又は転がり軸受(20)の軌道輪に対して押圧することを特徴とする、請求項3,5又は6記載の締付体型フリーホイール。
【請求項8】
前記ケージばね支承部は皿ばね(26)により形成されていることを特徴とする、請求項7記載の締付体型フリーホイール。
【請求項9】
前記締付体ばね支承部のばね(50)は前記ケージに支承されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項10】
前記締付体ばね支承部のばねは、ねじりコイルばね又は板ばね(50)として構成されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項11】
締付体ばね支承力の半径方向の成分(FGR)が、各締付体(22)の最大の遠心力よりも大きく設定されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項12】
前記締付体(22)の重心は夫々、前記締付体(22)のために前記ケージ(24)に設けられている案内領域(40,41)の半径方向外側に位置することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項13】
前記各締付体(22)のために前記ケージ(24)に夫々、前記締付け位置から前記フリーホイール位置への傾動時に前記締付体(22)の運動距離を制限するストッパ(42)が設けられていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項14】
前記締付体(22)は前記ケージ(24)内において遊びを持って案内されており、前記締付体(22)と前記ケージ(24)とは、前記締付け位置及び前記フリーホイール位置の間の前記締付体(22)の運動時に滑動しないことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項15】
前記外輪(14)は、クランクCVT変速機のコネクティングロッド状の接合エレメントとの接合のためにコネクティングロッドアイ(18)を有していることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール。
【請求項16】
前記外輪(14)は、特に前記コネクティングロッドアイ(18)に対して隣り合って、1つ又は複数の応力軽減貫通開口(19)を有していることを特徴とする、請求項15記載の締付体型フリーホイール。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項記載の締付体型フリーホイール(10)を備えていることを特徴とする、クランクCVT変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−8】
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【公表番号】特表2012−508352(P2012−508352A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535000(P2011−535000)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001340
【国際公開番号】WO2010/051785
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】