説明

編地

【課題】酸性染料における染色において、深色性及び外観品位に優れ高い堅牢度を有する編地を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維が交編されてなる編地であって、酸性染料同色性試験により染色された際のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維をそれぞれ測色したときの、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のK/Sの差が10以下であり、かつポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のΔEが30以下であり、且つ汚染度が3.5級以上であることを特徴とする編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維との交編編地に関する。更に詳しくは、本発明の編地を用いた衣類において、着用時に布帛が伸長されてポリウレタン弾性繊維が露出した場合に、まだらに色目が異なって見える目剥きが発生せず、深色性及び外観品位に優れ、さらに高い堅牢度を有する編地に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンやポリウレタンウレアを主な構成単位とする重合体からなる弾性繊維(以下、ポリウレタン弾性繊維という)は、弾性的性質および耐薬品性等に優れた性能を有することから、主にポリアミド繊維等と交編織され、ファンデーション、ソックス、パンティストッキングおよびスポーツウエア等多分野において伸縮機能素材として広く利用されている。近年、こうした衣類のストレッチ機能をさらに向上させるため、布帛中のポリウレタン弾性繊維含有率を高くすることが求められている。
【0003】
しかしポリウレタン弾性繊維は、構成するポリウレタン重合体やポリウレタンウレア重合体(以下、ポリウレタン系重合体と称する)分子中に、酸性染料に有効な染着座席が無いことから、ポリアミド繊維等と交編織された生地を酸性染料で染色した際に、染着座席が多いポリアミド繊維等に比べ、ポリウレタン弾性繊維は染料が染着し難い。そのためポリアミド繊維等と同等の濃染性を確保できないため、最終的に製品の外観品位を低下させる「目剥き」および「ぎらつき」の原因となっていた。特に濃色製品ではこの傾向が顕著であり、衣料とした場合の生地色の深みである濃色鮮明性不足による外観品位低下が発生し、用途によってはポリウレタン弾性繊維の混率が制限される場合があった。またポリウレタン弾性繊維は、酸性染料染色が施された時に、単に染料を抱え込んでいる、いわゆる汚染された状態であるため、洗濯等によって色落ちしやすく、色落ちによる他布汚染も大きな問題となっており、これもポリウレタン弾性繊維の使用が制限される一因となっていた。
【0004】
これらの問題を解決する為に、ポリウレタン重合体の分子鎖中に第3級窒素原子を含有させる方法が知られているが(特許文献1〜4および非特許文献1参照)、これらの方法では、ポリアミド繊維等と同等の濃染性を達成するのが困難であるばかりでなく、場合によってはポリウレタン弾性繊維の物理特性を低下させるという問題があった。
一方、酸性染料と結合する染色性改良剤をポリウレタン重合体に混合する方法が提案されているが(特許文献5〜7参照)、編地における濃染性および高い洗濯堅牢度を達成するものは得られていない。
また、ポリウレタンそのものを着色したいわゆる原着糸が開発されているが(特許文献8〜17参照)、多様な色相には対応できず、使用用途が限定されるものであった。
【0005】
更にまた3級窒素を有するマレイミド構造を含むポリマーを染色改良剤として添加することで濃染性を向上させる方法が開発されているが(特許文献18参照)、同文献中の製造方法では原料の1つであるジアミンの未反応分がポリマー中に少なからず残留することがあり、このポリマーが添加されたポリウレタン弾性繊維は堅牢度が低下し、染色後にナイロン白布と一緒に洗濯したときにナイロン汚染を引き起こすことが分かった。また、この剤は経日変化による着色とゲル化を引き起こす可能性があることも分かった。この着色とゲル化は繊維の色目や紡糸安定性に影響するものである。
【特許文献1】特公昭39−23097号公報
【特許文献2】特公昭47−51645号公報
【特許文献3】特公昭59−12789号公報
【特許文献4】特公昭61−7212号公報
【特許文献5】特開昭64−52889号公報
【特許文献6】特開2000−313802号公報
【特許文献7】特開2001−40587号公報
【特許文献8】特開2003−247123号公報
【特許文献9】特開2004−60062号公報
【特許文献10】特開2004−60088号公報
【特許文献11】特開2004−60089号公報
【特許文献12】特開2004−60090号公報
【特許文献13】特開2004−60091号公報
【特許文献14】特開2004−60092号公報
【特許文献15】特開2004−60093号公報
【特許文献16】特開2004−91938号公報
【特許文献17】特開2005−2489号公報
【特許文献18】特公平3−6177号公報
【非特許文献1】日本レオロジー学会誌、2001年、Vol.29、P191
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、酸性染料における染色において深色性及び外観品位に優れ、高い堅牢度を有した編地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、編地生機を特定の酸性染料を用いて染色し、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のK/Sの差及びΔEを特定し、且つ汚染度を3.5級以上とすることにより、各種条件で染色された生地において目剥きが発生せず、深色性及び外観品位に優れ、さらに高い堅牢度を有する編地が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明は、下記のとおりである。
(1)ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維が交編されてなる編地であって、酸性染料同色性試験により染色された際のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維をそれぞれ測色したときの、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のK/Sの差が10以下であり、かつポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のΔEが30以下であり、且つ汚染度が3.5級以上であることを特徴とする編地。
(2)下記式(I)で表されるイソブチレン単位と下記式(II)で表されるマレイミド単位とからなるマレイミド構造を有するポリマーが0.2重量%〜10重量%含有されたポリウレタン弾性繊維が用いられてなることを特徴とする上記(1)記載の編地。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐したアルキレン基を表し、R及びRは同一であっても異なってもよく、それぞれ炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す)
(3)酸性染料に対する染着座席が繊維1g当たり7.0×10−3ミリモル当量以上3.5×10−1ミリモル当量以下であるポリウレタン弾性繊維が用いられてなることを特徴とする上記(1)または(2)記載の編地。
(4)マレイミド構造を有するポリマーの重量平均分子量Mwが80,000〜150,000であり、Mw/Mn(Mnは数平均分子量)が3.5以下であることを特徴とする上記(2)記載の編地。
(5)マレイミド構造を有するポリマーの50%ジメチルアセトアミド溶液の剪断粘度が80〜300ポイズであることを特徴とする上記(2)または(4)記載の編地。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維を用いてなる編地において、目むきが発生せず、深色性及び外観品位に優れ、さらに高い堅牢度を有する編地が得られ、ファンデーションおよびスポーツウエア等の多種製品に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の編地は、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維が用いられてなる。酸性染料可染型繊維としては、おもにナイロン6繊維、ナイロン66繊維などの公知のポリアミド繊維、絹、羊毛、獣毛などが挙げられる。また使用目的に合わせて、酸性染料可染型繊維以外の他素材を更に編成に供することができる。他素材の種類、形態および繊度は適宜選択すればよく、特に限定されない。たとえば、綿、麻等の天然繊維、ポリエステル繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨンおよびアセテートレーヨン等が挙げられる。
【0014】
本発明の編地は、後述する酸性染料同色性試験により染色された際のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維をそれぞれ測色したときの、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のK/Sの差が10以下であることを特徴とする。K/Sの差が10を超えると、ポリウレタン弾性繊維とポリアミド系合成繊維の見かけの染着濃度差が大きく、ポリウレタン弾性繊維の染着濃度が低いため、生地における目むきが目立ち、好ましくない。
【0015】
また本発明の編地は、同様の酸性染料同色性試験により染色された際のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のΔEが30以下であることを特徴とする。好ましくは20以下である。ΔEが30を超えると、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維の色相差が大きく、好ましくない。
さらに本発明の編地は、同様の酸性染料同色性試験により染色された際の洗濯堅牢度(JIS L0844 A2法)による汚染度が3.5級以上であることを特徴とする。3.5級未満では、洗濯時の色落ちによる他布汚染の原因となり、好ましくない。ここで、汚染度評価とは酸性染料可染型繊維に対する汚染度を見るものとする。
【0016】
このような本発明の特徴を有する編地は、マレイミド構造を有するポリマーが含有されたポリウレタン弾性繊維を用いることで好適に得ることができる。
本発明で用いられるマレイミド構造を有するポリマーとしては、下記式(I)で表されるイソブチレン単位と下記式(II)(式中、Rは炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐したアルキレン基を表し、R及びRは同一であっても異なってもよく、それぞれ炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す)で表されるマレイミド単位とからなるものであり、イソブチレン単位とマレイミド単位とが交互に反復してなるものが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
本発明におけるマレイミド構造を有するポリマーは、下記式(I)で表されるイソブチレン単位と下記式(III)で表される無水マレイン酸単位からなるポリマーと、下記式(IV)で表されるジアミンとを脱水縮合反応させることにより容易に得ることができる。イソブチレンと無水マレイン酸からなるポリマーは、重合方法およびモノマー比等の選択によって、その比率の異なるポリマーも製造可能であるが、製造のしやすさやコストの観点から両者の比が1で且つ交互に共重合されているポリマーが好ましく、例えばイソバン04(クラレ社製)が挙げられる。
【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
マレイミドを形成する際に用いられるジアミンとしては、形成されるマレイミド構造が上記式(II)を満たすものであればよく、例えば、2−ジメチルアミノエチルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、2−ジ−n−プロピルアミノエチルアミン、2−ジイソプロピルアミノエチルアミン、2−ジ−n−ブチルアミノエチルアミン、2−ジイソブチルアミノエチルアミン、2−ジ−tert−ブチルアミノエチルアミン、2−ジ−n−ペンチルアミノエチルアミン、2−ジ−n−ヘキシルアミノエチルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジ−n−プロピルアミノプロピルアミン、3−ジイソプロピルアミノプロピルアミン、3−ジ−n−ブチルアミノプロピルアミン、3−ジイソブチルアミノプロピルアミン、3−ジ−tert−ブチルアミノプロピルアミン、3−ジ−n−ペンチルアミノプロピルアミン、3−ジ−n−ヘキシルアミノプロピルアミン、4−ジメチルアミノブチルアミン、4−ジエチルアミノブチルアミン、4−ジ−n−プロピルアミノブチルアミン、4−ジイソプロピルアミノブチルアミン、4−ジ−n−ブチルアミノブチルアミン、4−ジイソブチルアミノブチルアミン、4−ジ−tert−ブチルアミノブチルアミン、4−ジ−n−ペンチルアミノブチルアミン、4−ジ−n−ヘキシルアミノブチルアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジエチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジ−n−プロピルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジイソプロピルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジ−n−ブチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジイソブチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジ−tert−ブチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジ−n−ペンチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジ−n−ヘキシルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−ジメチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジエチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジ−n−プロピルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジイソプロピルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジ−n−ブチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジイソブチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジ−tert−ブチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジ−n−ペンチルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ジ−n−ヘキシルアミノ−1,1−ジメチルエチルアミン、5−ジメチルアミノペンチルアミン、5−ジエチルアミノペンチルアミン、5−ジ−n−プロピルアミノペンチルアミン、5−ジイソプロピルアミノペンチルアミン、5−ジ−n−ブチルアミノペンチルアミン、5−ジイソブチルアミノペンチルアミン、5−ジ−tert−ブチルアミノペンチルアミン、5−ジ−n−ペンチルアミノペンチルアミン、5−ジ−n−ヘキシルアミノペンチルアミン、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジエチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジ−n−プロピルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジイソプロピルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジ−n−ブチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジイソブチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジ−tert−ブチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、3−ジ−n−ヘキシルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアミン、6−ジメチルアミノヘキシルアミン、6−ジエチルアミノヘキシルアミン、6−ジ−n−プロピルアミノヘキシルアミン、6−ジイソプロピルアミノヘキシルアミン、6−ジ−n−ブチルアミノヘキシルアミン、6−ジイソブチルアミノヘキシルアミン、6−ジ−tert−ブチルアミノヘキシルアミン、6−ジ−n−ペンチルアミノヘキシルアミン、6−ジ−n−ヘキシルアミノヘキシルアミン、またはこれら混合物等が好ましく、その中でも、2−ジエチルアミノエチルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミンまたは3−ジエチルアミノプロピルアミンが特に好ましい。
【0024】
本発明の編地に使用されるポリウレタン弾性繊維に含まれるマレイミド構造を有するポリマーの重量平均分子量Mwは80,000〜150,000であることが好ましく、Mw/Mn(Mnは数平均分子量)が3.5以下であることが好ましい。より好ましくはMwが90,000〜120,000であり、Mw/Mnが3.0以下である。分子量が低すぎると当該ポリマーが表面にブリードアウトすることで脱落しやすくなり、逆に分子量が高すぎると当該ポリマーが紡糸原液中に均一に分散し難くなる。また分子量分布が広すぎる場合でも、一部の低分子量成分または高分子量成分により上記と同様の現象を生じる可能性がある。ここに述べる分子量に関しては、詳細には後述するが、PMMA換算の分子量であり、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により求めることができる。
【0025】
本発明におけるマレイミド構造を有するポリマーの剪断粘度は、50%ジメチルアセトアミド溶液にした時に80〜300ポイズの範囲にあることが好ましく、90〜200ポイズの範囲にあることがより好ましい。剪断粘度がこの範囲であればゲル化を起こしていないので、得られた編地において堅牢度に優れ、染色後に酸性染料可染型繊維白布と一緒に洗濯したときの該白布の汚染が抑制される。また剤の経日変化による着色とゲル化による繊維の色目変化や紡糸安定性への影響が小さい。このような剪断粘度を有するマレイミド構造をもつポリマーは、原料であるイソブチレンと無水マレイン酸からなるポリマーに対し、もう1つの原料であるジアミンのモル当量を少なくすることや、反応終了後に残留揮発分を加熱減圧下で留去するなどの改良によって原料のジアミン残留分を減らすことで好適に得ることができる。ここに述べる剪断粘度に関しては、詳細には後述するが、E型粘度計により測定することができる。
【0026】
このマレイミド構造を含むポリマーをポリウレタン系重合体に対して0.2重量%〜10重量%添加させることにより、ポリウレタン弾性繊維の染色性および堅牢度を高めることができる。より好ましくは0.5重量%〜10重量%である。0.2重量%未満では十分な染着性能を発現せず、10重量%を超えると、濃染しすぎるため逆に目剥きが発生し、更には堅牢度が悪化する。
また、本発明の編地に使用されるポリウレタン弾性繊維は、上述の通り反応条件および処理条件の改良によって原料由来のジアミン残留分を減らすことで得られた特定のマレイミド構造を有するポリマーを含有しているため、洗濯後においても十分な濃染度を保っている上に、洗濯堅牢性にも優れる。
【0027】
本発明の編地に使用されるポリウレタン弾性繊維は、マレイミド構造を含むポリマーが添加されていることにより、酸性染料に対する染着座席を有する。染着座席数はポリウレタン弾性繊維1gあたり7.0×10−3ミリモル当量以上3.5×10−1ミリモル当量以下であることが好ましい。この場合の染着座席とは、塩酸等の酸により滴定可能な塩基性を有するアミン部位と同義である。
【0028】
本発明に用いられるポリウレタン系重合体は、例えば、数平均分子量が600〜5000であるポリマーグリコールと有機ジイソシアネートを反応させてソフトセグメントとなるウレタン中間重合体を合成後、鎖延長剤でハードセグメントを重合し、末端停止剤で末端封鎖するといった公知の技術を用いることで製造することができる。鎖延長剤として、低分子ジオールを用いるとハードセグメントがウレタン結合からなるポリウレタン重合体となり、また、2官能性アミンを用いるとハードセグメントがウレア結合からなるポリウレタン重合体を得ることができる。
【0029】
ポリマーグリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびポリオキシペンタメチレングリコール等のホモポリエーテルジオール、炭素原子数2から6の2種以上のオキシアルキレンから構成される共重合ポリエーテルジオール、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸およびマロン酸等の二塩基酸の一種または二種以上とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール,1,3−プロピレングリコール,2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサンおよび1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のグリコールの一種または二種以上とから得られたポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオールおよびポリバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリチオエステルジオール、又はこれらジオールの共重合物ないしは混合物等が挙げられる。
【0030】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0031】
多官能性活性水素原子を有する鎖延長剤としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の直鎖または分岐した脂肪族、脂環族または芳香族の活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で例えばエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミンおよび特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、および低分子量のグリコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサンおよび1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることが出来る。好ましくは、エチレンジアミンまたは1,2−プロピレンジアミンである。
【0032】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等やエタノールのようなアルキルアルコール等が用いられる。これらの鎖延長剤および末端停止剤は、単独又は、2種以上混合して用いても良い。
このポリウレタン系重合体には、本発明のマレイミド構造を含むポリマー以外に、ポリウレタン弾性繊維に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐塩素脆化剤、耐ガス安定剤、着色剤、艶消し剤および充填剤等を添加してもよい。
【0033】
このようにして得られたポリウレタン系重合体は、公知の乾式紡糸、湿式紡糸または溶融紡糸等で繊維状に成形し、ポリウレタン弾性繊維を製造することができる。
得られたポリウレタン弾性繊維に、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、アミノ変性シリコン、鉱物油、鉱物性微粒子、例えばシリカ、コロイダルアルミナおよびタルク等、高級脂肪酸金属塩粉末、例えばステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム等、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィンおよびポリエチレン等の常温で固形状ワックス等の油剤を単独、又は必要に応じて任意に組合せて付与してもよい。
【0034】
本発明の編地は、酸性染料で染着されたときに、発色性および洗濯堅牢度が良好であり、目剥きを抑制することができる。酸性染料可染型繊維とポリウレタン弾性繊維の混用は、ポリウレタン弾性繊維を裸糸として編成する方法、被覆弾性繊維として編成する方法、いずれでもあっても良い。また酸性染料可染型繊維以外に更に混用される他素材も、そのままの状態の糸として、あるいは被覆弾性繊維として編成に供することができる。
【0035】
酸性染料可染型繊維は、フィラメント糸及び紡績糸のいずれであってもよい。具体的にはフィラメント糸としては、ポリアミド系繊維等の合繊からなるものが好ましい。フィラメント糸の形態は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸等のいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。これらは、撚糸加工のしやすい、安定した糸条が好ましい。
酸性染料可染型繊維の紡績糸としては、羊毛、獣毛等の天然繊維、ポリアミド系繊維等の化合繊からなるものが好ましく、これらは単独又は混紡されたもの等、いずれであってもよい。
【0036】
酸性染料可染型繊維以外に更に混用される他素材の非弾性繊維は、フィラメント糸及び紡績糸のいずれであっても良い。具体的にはフィラメント糸としては、各種レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、塩化ビニル系繊維等の化合繊からなるものが好ましい。フィラメント糸の形態は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸等のいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。これらは、撚糸加工のしやすい、安定した糸条が好ましい。
酸性染料可染型繊維以外に更に混用される他素材の非弾性繊維の紡績糸としては、木綿、麻等の天然繊維、各種レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、塩化ビニル系繊維等の化合繊からなるものが好ましく、これらは単独または混紡されたもの等、いずれであっても良い。
【0037】
上記ポリウレタン弾性繊維の裸糸とは、弾性繊維そのままの状態の糸であり、酸性染料可染型繊維との引き揃えや、添え糸編により編成される。酸性染料可染型繊維とポリウレタン弾性繊維との編成時における、弾性繊維の給糸速度と非弾性繊維の給糸速度との比であるドラフト率(ドラフト率=弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度)も任意に設定可能であるが、製編性を考慮すれば、ドラフト率は1.2〜4.5が好ましい。
【0038】
また被覆弾性繊維とは、ポリウレタン弾性繊維を芯に、酸性染料可染型繊維のマルチフィラメント合成繊維や短繊維などを鞘成分とした、FTY、SCY、DCYと称されるようなカバリング糸や、酸性染料可染型繊維の短繊維で被覆されたCSYと称されるコアスパンヤーン、更には、酸性染料可染型繊維とポリウレタン弾性繊維とを撚糸した被覆弾性繊維等が挙げられる。これらの被覆弾性繊維の、ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維のドラフト率(被覆弾性繊維のドラフト率=被覆弾性繊維を伸長した時の非弾性繊維の長さ/被覆弾性繊維を伸長した時のポリウレタンウレア弾性繊維の長さ)も任意に設定が可能であり、1.2〜4.5の範囲内に設定するのが好ましい。被覆弾性繊維に使用するポリウレタン弾性繊維の太さは限定されないが、20〜160デシテックスが好ましい。非弾性繊維との混率についても限定されないが、5〜70重量%程度が好ましく、製造する編地により任意に選定できる。
【0039】
酸性染料可染型繊維以外に更に混用される他素材についても、そのままの状態の糸として編成に供するほか、ポリウレタン弾性繊維を芯糸に、マルチフィラメント合成繊維や短繊維などを鞘成分とした、FTY、SCY、DCYと称されるようなカバリング糸や、綿等の短繊維で被覆されたCSYと称されるコアスパンヤーン、更には、他素材とポリウレタン弾性繊維とを撚糸した被覆弾性繊維として編成に供することができる。
編地の構成に際して使用する糸の太さは、総繊度22〜1220デシテックスの範囲が好ましく、34〜310デシテックスがより好ましい。これらは、使用目的に合わせて適宜選択することができる。
【0040】
本発明の編地は、丸編地、緯編地、経編地のいずれでも良く、特に限定されない。また後述の成形衣料にも適用される。
本発明の丸編地および緯編地に使用可能な編成組織としては、平編の基本組織、タック編、浮編、片畦編、レース編、添糸編、ジャガード編等の組織のいずれであってもよい。
本発明の丸編地は、一列針床を有する通常のシングルニット丸編機、二列針床を有する通常のダブルニット丸編機のような、給糸口数が多数あり、同時に複数本の糸を供給し得るフィーダーのある編機を用いて編成される。編機のゲージは、通常、5〜50ゲージであり、使用目的によって適宜選定すればよい。
【0041】
本発明の緯編地は、大緯編機、小緯編機、両頭機、両面機、ジャガード機等の緯編機、シングルニードル機、ダブルニードル機等のフルファッション編機を用いて編成される。編機のゲージとしては、通常、3〜50ゲージであり、使用目的によって適宜選定すればよい。
本発明の経編地に使用可能な編成組織は、鎖編、デンビー編、コード編、アトラス編、挿入編等の基本組織、またこれらの組み合わせによる変化組織のいずれであってもよい。ポリウレタン弾性繊維は全面に編みこんでも良いし、所望する間隔に編みこんでも良い。またポリウレタン弾性繊維を挿入することも可能である。
【0042】
本発明の経編地は、カールマイヤー整経機、リバー整経機等を用いた整経工程により、弾性繊維及び又は被覆弾性繊維、非弾性繊維を各々、目的とする商品に合わせた本数を揃えてビームに巻き取る。その後、後述の編機に、弾性繊維及び又は被覆弾性繊維、非弾性繊維のビームを設置し、編成して所望の経編地を得る。
【0043】
経編地の編成にはトリコット編機、ラッセル編機、ダブルラッセル編機が使用でき、使用する糸のデニールや商品の狙いにより適宜使用デニール、編機種、ゲージを選択すればよい。編成組織としては、上述の基本編成組織、これらの組み合わせによる変化組織を用いて、トリコット編機では2枚筬組織のハーフ組織、サテン組織、ジャガード組織、またこれらの組織の組み合わせによる変化組織等、ラッセル編機、ダブルラッセル編機では、パワーネット組織、サテンネット組織、ジャガード組織等によって所望の経編地が得られる。トリコット編機、ラッセル編機とも、3枚以上の筬組織で編成しても良い。編機のゲージは、通常10〜50ゲージであり、使用目的によって適宜選定すればよい。
【0044】
本発明における丸編地、緯編地、経編地の染色は、一般の工程を使用することができる。すなわち、生機を開反し、リラックス処理を施した後、プレセット工程、染色工程を経て、樹脂加工を含めた仕上げセットなどの行う一般的な染色工程を経る。
本発明における丸編地、緯編地、経編地は、上記のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維(フィラメント糸、紡績糸)を交編して得られた布帛や、上記ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維、他素材を交編して得られた布帛を、染色前にテンターでの150〜200℃のプレセット工程を通すことによって製造される。テンターでの処理時間としては30秒から2分が好ましい。
プレセット工程を通過後は、酸性染料による90〜110℃の染色条件により染色される。また酸性染料可染型繊維以外に混用される他素材に合わせた染色を更に施しても良い。例えばポリエステル繊維ならば、分散染料による120〜135℃染色条件のように、適宜条件が選ばれる。
【0045】
染色工程を通過後は、ソーピング処理、フィックス処理を施しても良い。また酸性染料可染型繊維以外に組み合わされた他素材に合わせ、例えば交編相手素材がポリエステル繊維ならば、還元洗浄処理、ソーピング処理を施しても良い。さらには、ポリエステル繊維で通常加工される減量加工を施しても良い。他素材が綿ならば、過酸化水素による晒し工程を施しても良い。このように、本発明の編地は、得られる生地の堅牢度、風合いを良くするために、酸性染料可染型繊維以外に組み合わされた他素材に合わせた各種処理を施すことが出来る。また通常付与される後加工、例えば、柔軟剤加工、吸水加工などを施しても良い。
【0046】
染色工程を通過後は、テンターでの150〜200℃のファイナルセット工程を通すことによって本発明の丸編地、緯編地、経編地の染上げ反が製造される。
本発明の編地は、成形衣料にも適用することができる。
成形衣料とは、編地部分が着用する人体の部位に合わせて連続して編成された丸編地から成り、例えば、該丸編地の全体は開反されずに、首部、両腕部、腰部または両脚部に対応する部分が所望の形状に裁断されており、且つ肩部、腰部または股部のみが接合縫製されている衣料をさす。該丸編地を成形衣料の少なくとも一部に用いればよく、成形衣料全体が該丸編地から成るものが特に好ましい。
【0047】
本発明の成形衣料は、インナー衣料に特に好適である。インナー衣料とは、肌に直接触れる編地をいい、例えば、タンクトップ、ロングパンツ、ズボン下、スパッツ、トランクス、ブリーフ、体型補正効果のあるメンズファンデーション、婦人用ランジェリー、ファンデーション、ブリーフ、ショーツ類が挙げられる。婦人用ランジェリーとしては、例えばキャミソール、スリップ、ペチコート、フレアパンツ、ボディブリファ、テディ等が挙げられる。婦人用ファンデーションとしてはガードル、ボディスーツ等が挙げられる。
【0048】
本発明の成形衣料用丸編地に用いられる組織としては、いわゆる編物の種々の組織、例えば天竺編、ゴム編、鹿の子編等や、これらを基本にしてメッシュ調にしたり、凹凸感をつけたもの等、その他多数のものが可能であり、適宜選定すればよい。本発明の成形衣料用丸編地の編成に用いる編機は特に限定されないが、例えば一般的にいう丸編機を用いることができる。この場合、針本数は500本から1500本、釜径(釜の直径)は、25.4cm(10インチ)から38.1cm(15インチ)が好ましい。
【0049】
本発明における成形衣料は、着用する人体の部位に合わせて連続して編成する。具体的には上記のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のフィラメント糸、紡績糸とを交編するか、あるいは酸性染料可染型繊維を用いた被覆弾性繊維のみを編成して得られる。使用目的に合わせて、酸性染料可染型繊維以外の他素材を更に編成に供しても良い。得られた編地を、酸性染料染色前あるいは染色後に湿熱セット工程と呼ばれる湿熱下での熱加工(90〜140℃が好ましく、処理時間は10秒から2分)が施される。最終製品の形に肩口などを縫製してから染色工程を施しても良い。また酸性染料可染型繊維以外の他素材に合わせた染色、各種処理を施すこともできる。
【実施例】
【0050】
本発明を実施例で更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例等における測定値は、下記の測定法により求めたものである。
(1)同色性試験
本発明のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維を交編した編地生機を以下の染色条件で染色した。まず編地生機を80℃×20分精錬し、酸性ハーフミーリング染料(Telon BLUE A2R;DyStar社製)1%owf、均染剤(SeraGalN−FS;DyStar社製)0.6%owf、硫酸アンモニウム4.0%owfを加え、浴比1:50の条件にて常圧ボイルで60分間染色処理を行った。
【0051】
染色された編地を乾燥後、編地をポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維に分解し、それぞれの繊維のK/S、ΔEを下記の方法で測定した。別途、編地の汚染度については、JIS L0844 A2法による洗濯堅牢度評価法による汚染度を測定した。ここで、汚染度の評価に用いる白布として、酸性染料可染型繊維であるナイロンからなる布帛を用いた。
【0052】
K/S:グレタグマクベス社製分光光度計COLOR−EYE 7000Aにて、ポリウレタン弾性繊維、酸性染料可染型繊維を測色し、それぞれの表面染色濃度K/Sを求め、K/Sの差を、下記式で求めた。
K/Sの差=(酸性染料可染型繊維のK/S)−(ポリウレタン弾性繊維のK/S)
ΔE:日本電色工業(株)製分光式色差計SQ−2000(標準光源C、2度視野)にて、ポリウレタン弾性繊維、酸性染料可染型繊維を測色した。CIELAB表色系で明度指数L、クロマティクネス指数a、bを求めた。ポリウレタン弾性繊維、酸性染料可染型繊維の明度指数、クロマティクネス指数をそれぞれ、(L、a、b)、(L、a、b)とした時、下記の計算式(V)で、ΔEを求めた。
ΔE=√((L−L+(a−a+(b−b) (V)
【0053】
(2)染着座席の測定
マレイミド構造を有するポリマーの50%ジメチルアセトアミド溶液約200mgを正確に秤量し、10mLのジメチルアセトアミドに溶解し、ブロムフェノールブルーを指示薬として、塩酸−メタノール溶液(0.16mol/L)にて中和滴定を行い、ポリマー1g中のアミン価を測定した。紡糸ポリマー中のマレイミド構造を有するポリマー添加量とアミン価からポリウレタン弾性繊維1gあたりの染着座席数を算出した。
【0054】
(3)重量平均分子量および分子量分布の測定
ジメチルアセトアミドにLiBrを10mmol/Lになるように溶かした溶離液を用いて、マレイミド構造を有するポリマーが1.0mg/mLとなるように調整したものを試料としてGPCにて測定を行った。
測定条件
データ処理 東ソー GPC−8020
カラム TSKgel α−M(7.8mmx30cm)2本
オーブン 60℃
溶離液 ジメチルアセトアミド(LiBr10mmol/L)1.0mL/min
試料量 200μL
検出器 RI
較正曲線 PMMA
【0055】
(4)剪断粘度の測定
E型粘度計(東機産業社製 RE105U)にて測定した。
測定条件
温度 30℃
試料量 0.5mL
ローター 3°×R14
回転数 10tpm
【0056】
(5)目剥き
後述の染色レシピで赤、黒に染色した染上げ反生地を引っ張り、目視判定して目剥きの状態を1級から4級で判定した。
4級:ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維の染着濃淡差が全く認識できないレベル
3級:ポリウレタン弾性繊維が十分に染まっているが、酸性染料可染型繊維との濃淡の違いがわずかに確認できるレベル
2級:ポリウレタン弾性繊維は染まっているが酸性染料可染型繊維との濃淡差が大きく、ポリウレタン弾性繊維がはっきり認識できるレベル
1級:目剥きして明らかにポリウレタン弾性繊維が確認でき、それがほとんど染まっていないと認識できるレベル
【0057】
(6)染上げ反の同色性
後述の染色レシピで赤、黒に染色した染上げ反生地を引っ張り、目視判定してポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維の色相差を○×で判定した。
○:ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維の色相差が全く認識できないレベル
×:明らかにポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維との色相差が異なるレベル
(7)モールド試験
通常のブラカップ用モールド金型にて、190℃×30秒でモールド試験を実施し、上記(5)の目剥き評価、上記(6)の同色性評価に供した。
(8)染上げ反の洗濯堅牢度
後述の染色レシピで赤、黒に染色した染上げ反生地を、JIS L0844 A2法による洗濯堅牢度で評価した。ここで、添付白布には酸性染料可染型繊維であるナイロン白布を用い、汚染度を洗濯堅牢度とした。
【0058】
[実施例1]
平均分子量約60,000のイソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体(クラレ社製イソバン04)を40g、ジエチルアミノプロピルアミンを33.8g、及びジメチルアセトアミドを160g混合し、窒素雰囲気下にて50℃で1時間および100℃で1時間攪拌し、次いで180℃還流下で生成する水を留去しながら4時間加熱した。残留揮発分を減圧下で留去し、これによって得られたポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、50%溶液とした。得られたポリマーは重量平均分子量Mw=1.0×10、分子量分布Mw/Mn=2.7、剪断粘度104ポイズであった。
【0059】
平均分子量1,800のポリテトラメチレンエーテルグリコール1,500g及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート312gを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミド2,700gを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0060】
エチレンジアミン23.4gおよびジエチルアミン3.7gを乾燥ジメチルアセトアミド1,570gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度2,200ポイズ(30℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。
このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を0.4重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを5.0重量%および作製した上記マレイミド構造を有するポリマーを1.0重量%混合して紡糸原液とした。
【0061】
この紡糸原液を紡糸速度800m/分および熱風温度325℃で乾式紡糸して、44デシテックス/4フィラメントの繊維を製造した。
得られたポリウレタン弾性繊維の裸糸44デシテックスとナイロン6(東レ社製ミラコスモ)56デシテックス/17フィラメントとを引き揃えて、ナイロン6の給糸速度86m/分、ポリウレタン弾性繊維39m/分のドラフト2.2、給糸張力5cNで編立てて、天竺編地を形成した。28ゲージ、30インチ径、60口のシングルニット丸編機(福原精機(株)製、機種タイプVXAC−3SRE)で編成し、丸編生機を作成した。生機の編地組成と酸性染料同色性試験結果を表1に示す。
【0062】
この丸編生機を開反し、液流染色機で80℃×30分の条件で精練し、プレセットとしてテンター仕上げ機で幅方向に5%幅出しさせながら、熱処理条件として温度190℃、時間60秒で処理した。次いで、液流染色機を用いて、下記染色レシピにて、赤、黒に100℃×60分の条件で染色、ソーピング、フィックス処理した。ファイナルセットとして、テンター仕上げ機を用いて、幅方向に3%幅出しさせながら、熱処理条件180℃×45秒で処理して、染上げ反を得た。染色された2種類の編地の性能を表2に示す。
【0063】
<(赤)染色レシピ>
染料:Telon RED A2R;DyStar社製 1%owf
均染剤:SeraGalN−FS;DyStar社製 0.6%owf
pHスライド剤:硫酸アンモニウム 4.0%owf
浴比1:50
染色100℃×60分
<(黒)染色レシピ>
染料:Isoran Black 3RL;DyStar社製 2.7%owf
pHスライド剤:硫酸アンモニウム 4.0%owf
浴比1:50
<ソーピングレシピ>
ソーピング剤:ニューサンレックスE;日華化学社製 2g/L
ソーピング60℃×30分
【0064】
<(染料が赤の場合)フィックスレシピ>
フィックス剤:ハイフィックスSW−A;大日本製薬 5%owf
スカム防止剤:NWH201;センカ(株) 1%owf
炭酸ナトリウムにてpH4〜5に調整
フィックス処理90℃×45分
<(染料が黒の場合)フィックスレシピ>
フィックス剤:天然タンニン酸S;富士化学 6%owf
吐酒石L;大日本製薬 3%owf(フィックス剤添加20分後に投入)
【0065】
[実施例2]
マレイミド構造を有するポリマーの添加量が2.0重量%であることを除いて、実施例1と同様の紡糸原液を用いて同様の条件にて紡糸を行い、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。実施例1と同様に、丸編生機を作成し、得られた生機を実施例1と同様にして、赤、黒に染色した染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
【0066】
[実施例3]
マレイミド構造を有するポリマーの添加量が4.0重量%であることを除いて、実施例1と同様の紡糸原液を用いて同様の条件にて紡糸を行い、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。実施例1と同様に、丸編生機を作成し、得られた生機を実施例1と同様にして、赤、黒に染色した染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
【0067】
[実施例4]
ナイロン66加工糸44デシテックス/34フィラメントをフロントとし、バックには実施例2で得られたポリウレタンウレア弾性繊維44デシテックス/4フィラメントをドラフト率80%で整経し、下記条件でハーフ組織を編成した。
<編成条件>
編機:36ゲージ/インチ カールマイヤー社製 トリコット編機
組織:フロント 10/23
バック 12/10
ランナー長:フロント120cm/480コース
バック 77.6cm/480コース
機上コース:100コース/インチ
この編成条件で得られた生機を、90℃で1分間精錬し、プレセットとしてテンター仕上げ機を用いて、熱処理条件として温度190℃、時間60秒で処理した。次いで、液流染色機を用いて、実施例1と同様の染色レシピで100℃×60分の条件で染色した。 ファイナルセットとして、テンター仕上げ機を用いて、熱処理条件180℃×45秒で処理して、経編地の染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
【0068】
[比較例1]
マレイミド構造を有するポリマーを添加しないことを除いて、実施例1と同様の条件にて紡糸を行った。実施例1と同様の条件にて紡糸を行い、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。実施例1と同様に、丸編生機を作成し、得られた生機を、実施例1と同様にして、赤、黒に染色した染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
【0069】
[比較例2]
マレイミド構造を有するポリマーの添加量が15重量%であることを除いて、実施例1と同様の紡糸原液を用いて同様の条件にて紡糸を行い、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維を得た。実施例1と同様に、丸編生機を作成し、得られた生機を実施例1と同様にして、赤、黒に染色した染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
【0070】
[比較例3]
オペロンテックス社製ブラックライクラ(商標)44デシテックスのポリウレタン弾性繊維を用いて、実施例1と同様に、丸編生機を作成し、得られた生機を実施例1と同様にして、赤、黒に染色した染上げ反を得た。生機および染め上げ反の評価結果を表1,2に示す。
表1、表2の結果より、本発明の編地は、染色性および堅牢度が良好であり、目剥きのない商品価値の高いものであることが分かる。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の編地は、ポリウレタン弾性繊維に酸性染料が十分に染着しかつ堅牢度が優れているため、目剥き現象の発生しない外観品位の優れた衣料品等を好適に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維が交編されてなる編地であって、酸性染料同色性試験により染色された際のポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維をそれぞれ測色したときの、ポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のK/Sの差が10以下であり、かつポリウレタン弾性繊維と酸性染料可染型繊維のΔEが30以下であり、且つ汚染度が3.5級以上であることを特徴とする編地。
【請求項2】
下記式(I)で表されるイソブチレン単位と下記式(II)で表されるマレイミド単位とからなるマレイミド構造を有するポリマーが0.2重量%〜10重量%含有されたポリウレタン弾性繊維が用いられてなることを特徴とする請求項1記載の編地。
【化1】

【化2】

(式中、Rは炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐したアルキレン基を表し、R及びRは同一であっても異なってもよく、それぞれ炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す)
【請求項3】
酸性染料に対する染着座席が繊維1g当たり7.0×10−3ミリモル当量以上3.5×10−1ミリモル当量以下であるポリウレタン弾性繊維が用いられてなることを特徴とする請求項1または2記載の編地。
【請求項4】
マレイミド構造を有するポリマーの重量平均分子量Mwが80,000〜150,000であり、Mw/Mn(Mnは数平均分子量)が3.5以下であることを特徴とする請求項2記載の編地。
【請求項5】
マレイミド構造を有するポリマーの50%ジメチルアセトアミド溶液の剪断粘度が80〜300ポイズであることを特徴とする請求項2または4記載の編地。

【公開番号】特開2009−74184(P2009−74184A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241994(P2007−241994)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】