説明

編織布および紙を仕上げ処理するためのエマルション

本発明は、全組成物を基準として、(a)12〜21重量%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル−2、(b)4〜7重量%のエトキシル化された水素化ヒマシ油、(c)25〜35重量%の鉱油、(d)20〜30重量%の他の油性物質、(e)3〜5重量%のヒドロトロープ、(f)3〜4重量%の金属石鹸および(g)10〜30重量%の水を含有するW/Oエマルションを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日用品用および衛生用ペーパータオルを含浸および湿潤するために用いることができる特定のエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
一般用語「紙」は約3000の異なった種類および物品を意味すると理解され、これらは場合によっては性質および使用の分野がかなり異なる。紙の製造のために、多くの添加剤が必要とされ、そのうち、充填材(すなわち白亜またはカオリン)およびバインダー(例えばデンプン)はもっとも重要である。比較的、人間の皮膚と密接に接触するティッシュペーパーおよび衛生紙の分野にとって、繊維の慎重な選択、および特に高比率の新しい砕木またはセルロースによって紙に通常付与される快適な柔軟感は特に必要である。しかしながら、製紙の費用効果に対して、また環境保護の観点から、低品質な古紙をできるだけ高比率で用いることも望ましい。しかしながら、このことは、紙の柔軟感にかなりの程度悪影響を及ぼし、使用者にとって煩わしく、また、特に頻繁な使用により皮膚の炎症が生じることもある。
【0003】
このような状況下、過去、快適な柔軟感を生じさせるために、含浸、被覆または他の表面処理によってティッシュペーパーを改良する試みが絶えることはなかった。この目的のため、第1に紙への適用が容易で、第2に紙の構造に悪影響を与えることがない特別なローションおよびエマルションを開発しなければならない。柔軟感を向上させるには、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤の組み合わせがしばしば用いられる。ポリシロキサンおよびカチオン性ポリマーもまたこの目的に使用される。
【0004】
国際特許出願WO95/35411は、20〜80重量%の無水皮膚軟化剤(鉱油、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アルコールおよびこれらの混合物)、5〜95重量%の皮膚軟化剤固定化剤(いずれの場合にも脂肪基中に12〜22個の炭素原子を有する脂肪アルコール、脂肪酸または脂肪アルコールエトキシレート)および好ましくは4〜20のHLB値を有する1〜50重量%の界面活性剤を含有する仕上げ処理組成物で被覆されたティッシュペーパーに関する。この文献中に言及された実施例は全て、皮膚軟化剤としてワセリンを含有する。国際特許出願WO95/35412には、(a)鉱油、(b)脂肪アルコールまたは脂肪酸、および(c)脂肪アルコールエトキシレートの無水混合物を軟化剤として用いる同様のティッシュペーパーが開示されている。国際特許出願WO95/16824は、鉱油、脂肪アルコールエトキシレートおよび非イオン性界面活性剤(ソルビタンエステル、グルカミド)を含有するティッシュペーパー用の仕上げ処理組成物に関する。更に、国際特許出願WO97/30216(Kaysersberg)には、長鎖飽和脂肪アルコールおよび合計少なくとも24個の炭素原子を有するワックスエステルに基づくペーパーティッシュ用の液体仕上げ処理組成物が記載され、該仕上げ処理組成物は非常に高い比率の水を含有する。しかし、使用の観点から、処理紙の柔軟感、加工挙動および感触は、未だ改良する余地がある。DE10102500A1は、(a)ポリオール ポリ−12−ヒドロキシステアレート、(b)グリセリド、炭化水素、シリコーン油、ジアルキルエーテルおよびジアルキルカーボネートまたは任意の所望のこれらの混合物からなる群から選択される油性物質を含有するローションに関する。これらのエマルションおよびローションは未だ、安定性に対して改良する余地がある。特に、色変化させずに植物抽出物を組み込むことができない場合が多く、これは被覆される紙の白色度に不利な影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願第95/35411号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願第95/35412号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願第95/16824号パンフレット
【特許文献4】国際特許出願第97/30216号パンフレット
【特許文献5】独国特許出願公開第10102500号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、日用品用ドライペーパー、特にティッシュペーパーを用いて、安定性を有するエマルションを提供することであるが、紙の白色度を著しく減少させることなく強化ティッシュを被覆することもできる。該エマルションは、優れたケア特性を有するであろうし、感覚特性に関して従来のスキンケア用処方物と類似するであろう。本発明のさらなる態様は、古紙の比率が高いティッシュペーパーでさえ適合する調製物を提供することである。同時に、ごく容易に生物分解できる助剤が用いられるであろうし、該調製物は容易にティッシュ中に浸透し、均一にその中で分散し、比較的低い含水率および高濃縮形態であるにも拘わらず容易に処理できる低い粘度を有するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、特定の乳化剤、高い比率の鉱油および規定の含水量に基づく製剤は、紙製品の快適な柔軟感を確実とするだけでなく、先行技術の既知の被覆ローション/エマルションよりも安定性であることを見出した。内色素を有する植物抽出物を組み込んでも、紙の白色度は本発明によるローションで被覆しても顕著に減少しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
かかる状況下、本発明は、全組成物を基準として
(a)12〜21重量%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル−2
(b)4〜7重量%のエトキシル化された水素化ヒマシ油
(c)25〜35重量%の鉱油
(d)20〜30重量%の他の油性物質
(e)3〜5重量%のヒドロトロープ
(f)3〜4重量%の金属石鹸、および
(g)10〜30重量%の水
を含有するW/Oエマルションに関する。
【0009】
本発明によるエマルションは、液体であって、20℃でポンプ輸送性であるため、極めて容易に処理することができる。高比率の油に起因して、該エマルションは、ケア特性が良好であり、被覆に用いる先行技術の同様のエマルションよりも実質的により安定性である。これらは、被覆される紙物質の白色度への影響が少ないことで区別され、皮膚上で良好な感覚の滑らかさを生み出す。該エマルションの成分を互いに正確に適合させなければならない;好適には、本発明によるエマルションは、原料に関する副生成物のほかにはさらなる成分を含有せず、すなわち、該エマルションは規定された量で成分(a)〜(g)を実質的に含んでなる。安定性の要件を充足する規定された比率での混合物のみが内色素を有する活性物質、例えばハーブのカモミールなどを、被覆紙の白色度の顕しい変化を生じさせずに利用できることを見出した。例えば、Cognis Deutschland GmbH and Co.KG製のDehymuls(登録商標)PGPHを成分(a)として用いてよい。紙と不織布を被覆した際、紙/不織布の白色度の減少は4%以下、特に3.5%以下であることを特徴とするエマルションは、本発明によれば特に好適である。白色度は、方法DIN EN 12625−7、ポイント7.3.2、色(D65/10°)によって測定され、未被覆/未含浸の紙の白色度は100%に相当する。
【0010】
好適な実施態様においては、エマルションは23℃で500〜5000mPa・sの粘度を有し、500〜3000mPa・s、特に1000〜2000mPa・sの範囲が好適である(Brookfield RVF、スピンドル5、10rpm、23℃)。
【0011】
エマルションは、全組成物を基準として30重量%以下の割合の水を含有する。25重量%未満、特に好適には20重量%未満の含水量は、本発明に従えば好適である。乳化剤(a)および(b)の全量は、全組成物を基準として16〜28重量%に変化し得、好適には15〜25重量%である。本発明に従えば、成分の重量比(a:b)が範囲(2.5〜3.5):1で変化する場合、好適である。水素化ヒマシ油1モルあたりエチレンオキシド7モルのエチレンオキシド付加物は成分(b)として好適である。このような生成物は、例えば、Cognis Deutschland GmbH & Co.KGによって市販されているDehymuls(登録商標) HRE 7である。
【0012】
油性物質:成分(c)および(d)
油性物質(c)および(d)の全量は、45重量%から65重量%まで変化する。好適な実施態様においては、油相に基づく鉱油の割合は、成分(c)および(d)の全量を基準として少なくとも45重量%、好適には少なくとも50重量%、とりわけ少なくとも55重量%である。油相は、できるだけ低い粘度を有すべきであり、すなわち、2〜230mPa・sの粘度を有する油性物質は、とりわけ油性物質(d)として好適である。以下の鉱油は成分(c)として適当である:ホワイトオイルPharma 40、低粘性パラフィン油、高粘性パラフィン油、液体パラフィン、パラフィヌムパーリキヂウム(Paraffinum perliqidum )、パラフィヌムサブリキヂウム(Paraffinum subliquidum)。
【0013】
例えば、下記の化合物のクラスは他の油性物質(成分d)として適当である:6〜18個、好適には8〜10個の炭素原子を有する脂肪アルコールをベースとするゲルベアルコール、例えば2−エチルヘキサノールまたは2−オクチルドデカノール;直鎖状または分枝状で飽和または不飽和のC〜C24脂肪酸と直鎖または分枝状で飽和または不飽和のC〜C24アルコールとのエステル。ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ミリスチル、オレイン酸ミリスチル、イソステアリン酸セチル、オレイン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、オレイン酸ステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸イソステアリル、ミリスチン酸オレイル、イソステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、イソステアリン酸エルシル、オレイン酸エルシル、ココカプリレート/カプレートを例として挙げることができる。さらなる適当なエステルは、例えば、C18〜C38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐状の飽和または不飽和C〜C22脂肪アルコールとのエステル、直鎖または分岐状で飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコール(例えばプロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオールなど)および/またはゲルベアルコールとのエステル、トリグリセリドまたはトリグリセリド混合物、液体のモノ−、ジ−およびトリグリセリド混合物、C〜C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル(例えばFinsolv(登録商標) TN)、C〜C12ジカルボン酸と、直鎖または分岐状で飽和または不飽和の1〜22個の炭素原子を有するアルコールまたは2〜10個の炭素原子および2〜6個のヒドロキシル基を有するポリオールとのエステルである。植物油、トリグリセリド混合物、置換シクロヘキサン、対称または非対称の直鎖ジアルキルカーボネート(例えばCetiol(登録商標) CC)、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を有する脂肪アルコールをベースとするゲルベカーボネート、アルキル基1個につき6〜22個の炭素原子を有する直鎖または分岐状で対称または非対称のジアルキルエーテル、例えばジ−n−オクチルエーテル(Cetiol(登録商標) OE)など、エポキシ化脂肪酸エステルとポリオールとの開環生成物、炭化水素、例えばパラフィンまたは鉱油、オリゴ−またはポリ−α−オレフィンも適当である。ジアルキルカーボネートおよびジアルキルエーテルは、対称でも非対称でも、分岐状でも直鎖状でも、飽和でも不飽和でもよく、先行技術から十分によく知られている反応によって製造することができる。適当なシリコン化合物は、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコン(シクロメチコン)およびアミノ−、脂肪酸−、アルコール−、ポリエーテル−、エポキシ−、フッ素−、グリセリド−および/またはアルキル−変性シリコン化合物である。シメチコンはさらに適当である。
【0014】
とりわけ、少なくとも250mm/10分の拡散値を有する油(U.Zeidler:Ueber das Spreiten von Lipiden auf der haut、Fette−Seifen−Anstrichmittel[On the spreading of lipids on the skin、fats−soaps−coating materials]、No.10、第403〜408頁、1985年)、とりわけ上記の拡散値を有するエステル油、ジアルキルエーテル、ゲルベアルコールまたはグリセリドは成分(d)として好適である。これらには、例えばアジピン酸ジブチル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイルまたは植物油が含まれる。
【0015】
ヒドロトロープ(e)
本発明によるエマルションは、成分(e)として、感覚特性および組成物の安定性の向上に寄与し、可溶化特性を有する少なくとも1つのヒドロトロープを含有する。これはエマルションの含水量を紙中で安定に保つ働きをする。
【0016】
本発明によれば、液体ポリオールおよびポリオール誘導体、例えば、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールおよび液体ポリエチレングリコールは、適当である。本発明によれば、グリセロール、ジグリセロールおよびトリグリセロールは好適である。本発明によれば、グリセロール、ブチレングリコールまたはプロピレングリコール、これらの中でもグリセロールは好適である。
【0017】
金属石鹸(f)
用語「金属石鹸」はあまり水溶性ではない脂肪酸の金属塩を意味すると当業者に理解される(cf.Roempps Chemielexikon[Roempps Chemistry Lexikon])。その油濃化特性に起因して、これらはエマルションの安定性に相乗的に寄与する。C12〜C24脂肪酸またはC12〜C24ヒドロキシ脂肪酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩および亜鉛塩は通常適当である。本発明によれば、好適な金属石鹸はステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸アルミニウムである。これらの構造形成に起因して、ステアリン酸アルミニウムは特に油相の濃化および安定化に適している。
【0018】
消炎/抗炎症活性物質
本発明によるエマルジョンの好適な実施態様は、とりわけ炎症性皮膚プロセスまたは赤くなって擦り剥いた皮膚を和らげる働きをする少なくとも一つの消炎/抗炎症活性物質を含有する。消炎活性物質は通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、とりわけ0.05〜3重量%の量で存在する。
【0019】
本発明によれば、とりわけ、ビサボロール、アラントインおよびパンテノールおよびビサボロールが好適である。ビタミンおよびビタミン前駆体並びにタンパク質加水分解生成物も創傷治癒を促進し得る。
【0020】
創傷治癒/消炎物質を相乗的に組み合わせてしばしば含有する植物抽出物も適当である。このような抽出物は通常、植物全体の抽出により得られる。しかし、個々の場合においては、専ら植物の花および/または葉から、抽出物を調製することも好適である。
【0021】
本発明によれば、とりわけカモミールの抽出物、アロエ、マンサク、シナノキの花、セージおよびメリッサは適当である。
【実施例】
【0022】
2つの処方物、本発明による処方物(実施例1)および比較処方物(比較例1)を、安定性および白色度に関して評価した。白色度は方法DIN EN 12625−7、ポイント7.3.2、色(D65/10°)によって測定し、未被覆/未含浸の紙の白色度を100%で評価した。%で白色度の減少を評価し、該減少が4%を越えることを許容しなかった。感覚特性は、1〜6の点数の原則に基づいて、訓練された者が評価した。
【0023】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全組成物を基準として、
(a)12〜21重量%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル−2、
(b)4〜7重量%のエトキシル化された水素化ヒマシ油、
(c)25〜35重量%の鉱油、
(d)20〜30重量%の他の油性物質、
(e)3〜5重量%のヒドロトロープ、
(f)3〜4重量%の金属石鹸、および
(g)10〜30重量%の水
を含有するW/Oエマルション。
【請求項2】
水素化ヒマシ油1モルあたりエチレンオキシド7モルのエチレンオキシド付加物が成分(b)として存在することを特徴とする、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
乳化剤(a)および(b)の全量は、全組成物を基準として15〜25重量%であることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載のエマルション。
【請求項4】
前記成分の重量比(a:b)は(2.5〜3.5):1の範囲で変化することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエマルション。
【請求項5】
ヒドロトロープ(e)はグリセロール、ブチレングリコールまたはプロピレングリコールから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエマルション。
【請求項6】
金属石鹸はステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸アルミニウムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のエマルション。
【請求項7】
少なくとも1つの消炎活性物質がさらに存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のエマルション。
【請求項8】
23℃で500〜5000mPa・s、好適には500〜3000mPa・s、とりわけ1000〜2000mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のエマルション。
【請求項9】
紙および不織布を被覆した際、紙/不織布の白色度の減少は4%以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のエマルション。

【公表番号】特表2010−511754(P2010−511754A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539642(P2009−539642)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010349
【国際公開番号】WO2008/067944
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】