説明

編集装置、編集方法、編集プログラム及びデータ構造

【課題】素材データに指定された任意の「範囲」と、タイムリマップ変換処理後の再生データにおける、その素材データの指定範囲が反映されている「範囲」との相互の対応関係を特定することを可能にする。
【解決手段】本発明の編集方法は、第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、素材データを第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと(S12)、再生データにおける、第1の時間範囲内の素材データを含む第2の時間範囲を特定することと(S13)、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編集装置、編集方法、編集プログラム及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、映像の編集には、映像を収録したビデオ・テープ又はフィルムに編集を行う手法と、ビデオ・テープ又はフィルムに収録された映像データをデジタル・データに変換して編集を行う手法とが存在する。
【0003】
映像を収録したビデオ・テープ又はフィルムに編集を行う場合、タイムコードという時間情報を読み取りながら素材となる映像データの時間軸(以後、「素材時間」と言う)に対してシーケンシャルに編集する必要がある。このため、編集作業は素材時間に対してリニア(線形)となる。これに対して、デジタル・データに変換した映像データは、パソコンやワークステーションなどのハードディスクなどに保存すると、素材時間を考えずにランダムにアクセスして、再生方向、再生時間も含めて自由に編集することができる。このため、編集作業は素材時間に対してノンリニア(非線形)となりうる。このことから、デジタルで映像データを編集する装置のことを、「ノンリニア編集装置」とも呼ぶ。かかるノンリニア編集装置を用いると、タイムコードを気にせずに、例えば、途中のカットが不要になった場合は、後のカットを前にずらすなど、従来のビデオ・テープを用いたテープ編集の場合では比較にならないほどの豊富な編集が可能となる。
【0004】
ノンリニア編集装置では、例えば、ハードディスクに記憶した符号化された映像を読み出して復号・再生を行い、映像をモニタで見ながら作業することができる。従来から、編集対象となる映像データを再生して、その映像を見ながら切り出したいシーンの開始位置(イン点)と終了位置(アウト点)を映像データの対応する位置に設定するノンリニア映像編集装置がある。このイン点及びアウト点は編集情報として映像データに関連づけられて保持され、これらの情報に基づいて、切り出したシーンのクリップが形成される。なお、ノンリニア映像編集では、クリップの形成のために、元の映像データを実際にコピーあるいはカットする必要はなく、クリップの再生時には、クリップを指定することによって、編集情報を参照してイン点からアウト点までの映像データを復号して再生する。
【0005】
ノンリニア編集装置には、クリップ・マーカーと呼ばれる編集機能を用いて、クリップの映像及び音声の任意のシーン位置にマークを付けることができるものがある。さらに、特許文献1には、タイムリマップと呼ばれる編集機能を用いて、クリップの映像及び音声の再生速度を任意の速度に自由に変化させ、再生速度の変化の状態をユーザ・インタフェースに表示する編集装置が開示されている。再生速度は、例えば、ユーザが指定するキーフレームと、キーフレームを利用した線分補間とベジェ(Bezier)補間の数式の集合によって変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0253735号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法では、素材となる映像データ(以後、「素材データ」と言う)にタイムリマップの変換処理を含む編集を行って再生する映像データ(以後、「再生データ」と呼ぶ)を生成した場合、素材データに付した素材時間上の所与の「位置」を示すマークを、再生データに反映させることは比較的容易である。しかしながら、素材データに、素材時間上の所与の「範囲」を画定するマークを付した場合には、素材時間から再生時間へのタイムリマップ変換処理を単に適用するだけでは、その範囲の開始点と終了点との2点間の時間変化が考慮されないため、素材データに付したマークが示す範囲を再生データに正しく反映できない場合があった。
【0008】
図10A〜図10Cは、素材時間と再生時間とにおける、クリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。図10A〜図10Cでは、素材データの任意の位置に付けられたマークをクリップ・マーカーa、b、c、d、eとして示している。図10Aは、素材時間と同じ再生速度で再生を行うように再生時間が設定されている場合を示している。図10Aの例では、実線で示すように、素材時間のクリップ・マーカーa、bの各々に対して一つの再生時間a’、b’が存在しており、また、点線で示すように、再生時間a’、b’に対しても一つの素材時間a、bが存在している。図10Bは、素材時間の再生速度を変化させて再生を行うように再生時間が設定されている場合を示している。図10Bの例では、実線に示すように、例えば、クリップ・マーカーdが示す素材時間に対して複数の再生時間d1’、d2’、d3’が存在している。また、図10Cは、素材時間の再生速度を変化させて再生を行うように再生時間が設定されている場合の他の例を示している。図10Cの例では、クリップ・マーカーeが示す素材時間に対して対応する再生時間が存在していない。しかしこの場合であっても、再生時間の例えばfで示す時間に対応する素材時間は必ず一つ存在している。
【0009】
素材時間と再生時間とが同じ場合(図10A)には、再生時間の各々の位置と、これに対応する素材時間の位置とが一対一に対応する。これに対し、図10B、図10Cに示すように、素材時間の再生速度を変化させて再生を行うように再生時間が設定されている場合には、素材時間の各々の位置に対応する再生時間が存在しない場合もあるし、あるいは複数存在する場合もある。
上述したように、素材データの所与の範囲にクリップ・マーカーを付けて素材時間から再生時間へのタイムリマップによる変換処理を単に適用するだけでは、その範囲の開始点と終了点との2点間の時間変化が考慮されないため、素材データにクリップ・マーカーで指定した範囲を再生データに正しく反映させることはできない。例えば、図10Bに示したクリップマーカーdが指定範囲の開始点あるいは終了点となるように範囲を指定した場合には、それに対応する再生時間d1’、d2’、d3’を知ることはできるものの、d1’−d2’間の時間変化やd2’−d3’間の時間変化は考慮されない。そのため、再生時間におけるd1’−d2’間やd2’−d3’間の範囲が、素材時間において指定された範囲に対応しているかどうかを判断することができない。
このため、素材データが、例えば、サッカー中継の録画データであり、その中の1つのゴール場面の範囲をクリップ・マーカーで指定した場合、タイムリマップの変換処理後に、クリップ・マーカーによって指定されたゴール場面を再生データで再生しようとしても、素材データに指定したゴール場面の範囲が、タイムリマップの変換処理後の再生データのどの範囲に対応しているのかを正しく特定することができないため、その場面の一部分しか再生されない、あるいは適切に再生されない場合が起こりうる。
このように、従来技術では、素材データの任意の「位置」と、タイムリマップ変換処理後の再生データにおける、その位置が反映されている「位置」との相互の対応関係を特定することは可能であった。しかしながら、素材データに指定された任意の「範囲」と、タイムリマップ変換処理後の再生データにおける、その素材データの指定範囲が反映されている「範囲」との相互の対応関係を特定することは困難であった。
【0010】
そこで本発明は、素材データに指定された任意の「範囲」と、タイムリマップ変換処理後の再生データにおける、その素材データの指定範囲が反映されている「範囲」との相互の対応関係を特定することを可能にする、編集装置、編集方法、編集プログラム及びデータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、本発明の編集方法は、第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、を含む。
【0012】
例えば、再生データが素材データの逆再生範囲を含むように第2の時間の設定を行った場合には、素材データから再生データを生成すると、素材データの第1の時間範囲に対応する第2の時間範囲が再生データ内に複数にわたって出現することがある。そのような場合であっても、本発明によれば、再生データにおける、第1の時間範囲内の素材データを含む第2の時間範囲が特定されるため、素材データに指定された第1の時間範囲と、素材データのその指定範囲が反映されている、再生データ中の第2の時間範囲との相互の対応関係を特定することができる。ここで、「第1の時間」とは素材データを収録した際の時間軸を意味しており、例えば明細書中で説明する「素材時間」に対応している。また、「第2の時間」とは再生データを再生する際の時間軸を意味しており、例えば明細書中で説明する「再生時間」に対応している。これらは、特に断らない限り、本願の特許請求の範囲及び明細書中でも同様である。また、「素材データ」、「再生データ」は、明細書中で説明する「動画データ」、「動画信号」、及び「クリップ」を含む。これらは、特に断らない限り、本願の特許請求の範囲及び明細書中でも同様である。第1の時間範囲内の素材データ、第2の時間範囲の再生データは、例えば、明細書中で説明する「クリップ」に対応している。
【0013】
また、本発明の編集方法は、前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とのうち、少なくとも前記第2の時間における前記第2の時間範囲をユーザ・インタフェース上に表示することをさらに含んでいてもよい。これにより、素材データに指定された第1の範囲が反映されている再生データの範囲をユーザが視覚的に認識することができる。
【0014】
さらに、本発明の編集方法は、前記素材データの前記第1の時間範囲には特定の識別情報が含まれており、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、前記特定の識別情報を前記ユーザ・インタフェース上に表示することを含んでいてもよい。この構成によれば、例えばユーザがユーザ・インタフェース上でポインタを操作して第2の時間範囲を指示した場合には、特定の識別情報がユーザ・インタフェース上に表示される。これにより、ユーザは、ポインタで指示した再生データの第2の時間範囲が素材データの第1の時間範囲を反映したものであることを視覚的に認識することができる。
【0015】
あるいは、本発明の編集方法は、前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とを互いに関連付けることと、前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とをユーザ・インタフェース上に表示することと、前記ユーザ・インタフェース上の前記第1の時間範囲が指示されると、該第1の時間範囲に関連付けられた前記第2の時間範囲の表示を変化させ、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、該第2の時間範囲に関連付けられた前記第1の時間範囲の表示を変化させることと、をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、例えばユーザがユーザ・インタフェース上でポインタを操作して素材データの第1の時間範囲を指示した場合には、その素材データの第1の時間範囲が反映されている再生データの第2の時間範囲を視覚的に認識することができ、その逆もまた然りである。第1の時間範囲あるいは第2の時間範囲の表示を変化させることは、例えば、それらの表示の色を変えたり、表示を点滅させたり、表示の大きさを拡大又は縮小するなどして変えたりすること等を含む。
【0016】
本発明の他の態様によれば、本発明の編集装置は、第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、を実行する処理部を有する。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明のコンピュータ・プログラムは、第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、をコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラムである。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明のデータ構造は、第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データと、該素材データから生成された、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データであって、前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲が特定されている前記再生データと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素材データに指定された任意の「範囲」と、タイムリマップ変換処理後の再生データにおける、その素材データの指定範囲が反映されている「範囲」との相互の対応関係を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態のノンリニア編集装置のブロック図である。
【図2】図1のノンリニア編集装置が実行する、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理を説明するフローチャートである。
【図3】図1のノンリニア編集装置が実行する、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理の原理を説明する図である。
【図4】図1のノンリニア編集装置が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理を説明するフローチャートである。
【図5】図4に続く、図1のノンリニア編集装置が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理を説明するフローチャートである。
【図6】図1のノンリニア編集装置が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理の原理を説明する図である。
【図7】グラフ上の交点における微分値及び2回微分値から、それぞれの交点が表す基準位置が範囲の開始位置であるか終了位置であるかを特定する基準を示す表である。
【図8A】クリップ・マーカー機能を備えた編集装置によるタイムリマップの操作を説明するための図である。
【図8B】クリップ・マーカー機能を備えた編集装置によるタイムリマップの操作を説明するための図である。
【図8C】クリップ・マーカー機能を備えた編集装置によるタイムリマップの操作を説明するための図である。
【図9】図8Cに示す表示画面に対応する、素材時間と再生時間におけるクリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。
【図10A】素材時間と再生時間におけるクリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。
【図10B】素材時間と再生時間におけるクリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。
【図10C】素材時間と再生時間におけるクリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明の第1の実施の形態の編集装置であるノンリニア編集装置について、図1を参照して説明する。図1に示すように、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、映像入力部11と、デコーダ12と、入力インタフェース(図面では「入力I/F」)13と、マウス、キーボード、コントロールデバイスなどの入力部13aと、CPU(Central Processing Unit)14と、ROM(Read Only Memory)15と、RAM(Random Access Memory)16と、出力インタフェース(図面では「出力I/F」)17と、ディスプレイ17aと、エンコーダ18と、ハードディスク19と、映像出力部20とを備える。
【0023】
映像入力部11は、例えば、カメラなどから映像データを入力し、デコーダ12は、映像入力部11から入力された映像データを復号する。入力インタフェース13は、マウス、キーボード、コントロールデバイスなどの入力部13aの操作に応じてユーザの指示を入力し、CPU14は、入力インタフェース13を介して入力されるユーザの指示を受け、ノンリニア編集装置1の全体の処理を制御する。ROM15は、CPU14が実行する各種のアプリケーションプログラム、編集画面や各種待ち受け画面などを含む画面データ、各種機能の初期設定データであるデフォルトデータなどの情報を記憶しており、RAM16は、CPU14の作業メモリとして使用される。出力インタフェース17は、CPU14の制御のもと、処理された映像及びその他の情報をディスプレイ17aに出力する。エンコーダ18は、CPU14が処理した映像データを符号化し、映像出力部20は、エンコーダ18によって符号化された映像データを他の装置へ出力する。ハードディスク19は、CPU14が処理した映像、映像入力部11から入力された映像、及びその他の情報を記憶することができる。本実施の形態において、CPU14は処理部として機能する。
【0024】
次に、本実施の形態のノンリニア編集装置1が実行する処理について説明する。具体的には、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理、及び素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理について、詳細に説明する。
【0025】
<1.再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理>
まず、本実施の形態のノンリニア編集装置1が実行する、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理について、図2及び図3を図1と併せて参照して説明する。図2は、本実施の形態のノンリニア編集装置1が実行する、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理を説明するフローチャートであり、図3は、再生時間範囲からそれに対応する素材時間範囲を特定する処理の原理を説明する図で、ここでは、クリップ・マーカーA、Bにより素材時間範囲が指定されており、素材となる映像データ(「素材データ」と言う)は既にハードディスク19に記憶されているものとする。以下の処理は、CPU14の制御の下に行われる。
【0026】
図2に示すように、まず、素材データに範囲を設定する(ステップS11)。具体的には、ユーザが入力部13aを操作して、入力インタフェース13を介して入力する指示に応じて、CPU14は素材データに、例えば、クリップ・マーカーのイン点Aとアウト点Bを設定する。CPU14は、クリップ・マーカーのイン点Aとアウト点Bなどのクリップ・マーカー情報を、ハードディスク19に既に記憶している素材データと関連付けて記憶する。これにより、素材時間におけるクリップ・マーカーAとBとの間の範囲が素材時間範囲(第1の時間範囲)として指定される。
【0027】
次に、素材データを編集して再生データを生成する(ステップS12)。具体的には、ユーザによる入力部13aの操作に応じて、入力インタフェース13を介して入力する指示に応じて、CPU14は、ハードディスク19に記憶した素材データに、素材データをその時間軸(「素材時間」あるいは「第1の時間」)とは時間軸が異なる再生時間(第2の時間)で再生する再生データを生成するためのタイムリマップ編集を行い、素材データにそれぞれ対応する再生速度情報などを付与して再生データを生成する。ここで、CPU14は、素材データを実際にコピーあるいはカットする必要はなく、編集情報をハードディスク19に記憶した素材データに関連付けて記憶するようにしてもよい。
【0028】
次に、再生データにおける、素材データに設定された素材時間範囲に対応する部分を特定する(ステップS13)。このステップを行うための具体的な手法は、後述する<2.素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理>において詳しく説明する。続いて、その特定した部分から、素材データの時間変化に基づいて、ステップS11で設定された素材時間範囲内の素材データ範囲を特定する(ステップS14)。素材時間(素材データの時間軸)と再生時間(再生データの時間軸)の関係を図3に示す。図3の例では、CPU14は、ハードディスク19に記憶した素材データと、クリップ・マーカー情報、編集情報に基づいて、再生データにおける、クリップ・マーカーA、Bで素材データに設定された範囲に対応する部分として、範囲A〜B及び範囲B〜Bを特定し、特定したそれらの範囲において素材時間の最小値と最大値とで画定される範囲を、素材時間範囲内の素材データ範囲として特定する。より具体的には、特定した範囲において素材時間の最小値、すなわち、経過時間が最少の時間を素材時間範囲内の素材データ範囲の開始位置とし、素材時間の最大値、すなわち、経過時間が最大の時間を素材時間範囲内の素材データ範囲の終了位置とする。
【0029】
CPU14は、上述の処理を、素材時間と再生時間を図3に曲線として描かれた関数に従って演算することで、実行することができる。素材データは厳密には連続的ではなく、所定の間隔で離間した複数のフレームから構成されている。クリップ・マーカーのイン点A、アウト点Bによって特定されるフレームをキーフレームA、Bとすると、CPU14は、範囲A〜B、範囲B〜Bのそれぞれの範囲内のキーフレームの存在しない部分について、例えば、直線的に変化する部分についてはその補間値を線分補間によって算出し、高い曲率で変化する部分についてはベジェ補間によって算出し、キーフレームA、B、B、Bの補間値がとる素材時間の最小値と最大値との間の範囲を素材データ範囲として特定する。図3に示す例を参照して説明すると、再生時間における範囲A〜B(第2の時間範囲)は、素材時間における素材時間範囲A〜Bの全てを含み、再生時間における範囲B〜B(第2の時間範囲)は、素材時間における素材時間範囲A〜Bの一部である素材データ範囲B〜Bを含んでいる。本実施の形態の処理によれば、再生時間における範囲B〜Bが素材時間における素材データ範囲A〜Bを反映し、再生時間における範囲B〜Bが素材時間における素材データ範囲B〜Bを反映していることを特定することができる。
なお、本実施の形態では、補間値を線分補間とベジェ補間によって算出するものとして説明するが、本発明はこれに限定されず、実装において好適と判断されればその他の如何なる補間方法を用いてもよいことは明らかである。他の補間方法として、例えばスプライン補完を用いることもできる。
【0030】
ここで、CPU14が実行する線分補間とベジェ補間の一例を説明する。
まず、線形補間の数式は以下の通りである。
素材時間 =(key2_value−key1_value)*(pos−key1_pos)/(key2_pos−key1_pos)+key1_value
・・・・・・・(1)
ここで、
pos : 再生時間の位置
key1: 再生時間位置より前の近傍のキーフレーム
key1_pos : key1の再生時間位置
key1_value : key1の素材時間位置
key2: 再生時間位置より後の近傍のキーフレーム
key2_pos : key2の再生時間位置
key2_value : key2の素材時間位置
【0031】
次に、ベジェ補間の数式は以下の通りである。
再生時間=t*key2_pos+3*t*(1−t)*ctrl2_pos+3 *t*(1−t)*ctrl1_pos+(1−t)*key1_pos
素材時間=t*key2_value+3*t*(1−t)*ctrl2_value+3*t*(1−t)*ctrl1_value+(1−t)*key1_value ・・・・・・・(2)
ここで、
t : 媒介変数
ctrl1 : ベジェのコントロールポイント1
ctrl1_pos : ctrl1の再生時間位置
ctrl1_value: ctrl1の素材時間位置
ctrl2 : ベジェのコントロールポイント2
ctrl2_pos : ctrl2の再生時間位置
ctrl2_value: ctrl2の素材時間位置
【0032】
上記の線分補間およびベジェ補間により、CPU14は、ステップS13において、クリップ・マーカーA、Bで画定される素材データの範囲、すなわち素材時間範囲から、その素材時間範囲内の素材データを含む再生データの範囲として、キーフレームA〜Bで画定される部分と、キーフレームB〜Bで画定される部分とを特定する。続いて、CPU14は、ステップS14で、対応する再生データのキーフレームA〜Bで画定される部分およびキーフレームB、Bで画定される部分において、それぞれ、素材時間が最小値をとる位置を素材データ範囲の開始位置とし、素材時間が最大値をとる位置を素材データ範囲の終了位置とする。こうして、再生データにおける範囲A〜Bおよび範囲B〜Bにそれぞれ対応する素材データ範囲A〜Bおよび範囲B〜Bが特定される。
【0033】
<2.素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理>
本実施の形態のノンリニア編集装置1が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理について、図4〜図6を図1と併せて参照して説明する。図4及び図5は、本実施の形態のノンリニア編集装置1が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理を説明するフローチャートであり、図6は、ノンリニア編集装置1が実行する、素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理の原理を説明する図で、ここでは一例として、クリップ・マーカーにより範囲C、Dが画定されている場合を示している。以下の処理は、CPU14の制御の下に行われる。また、素材データは既にハードディスク19に記憶されているものとする。
【0034】
図4に示すように、まず、素材データに範囲を設定する(ステップS21)。具体的には、ユーザが入力部13aを操作して、入力インタフェース13を介して入力する指示に応じて、CPU14は素材データに、例えば、クリップ・マーカーで範囲C、Dを設定する。CPU14は、クリップ・マーカーで設定した範囲C、Dなどのクリップ・マーカー情報を、ハードディスク19に既に記憶している素材データと関連付けて記憶する。
【0035】
次に、素材データを編集して再生データを生成する(ステップS22)。具体的には、ユーザによる入力部13aの操作に応じて、入力インタフェース13を介して入力する指示に応じて、CPU14は、ハードディスク19に記憶した素材データに、素材データをその時間軸(「素材時間」あるいは「第1の時間」)とは時間軸が異なる再生時間(第2の時間)で再生する再生データを生成するためのタイムリマップ編集を行い、素材データにそれぞれ対応する再生速度情報などを付与し、再生データを生成する。ここで、CPU14は、素材データを実際にコピーあるいはカットする必要はなく、編集情報をハードディスク19に記憶した素材データに関連付けて記憶するようにしてもよい。
【0036】
次に、再生データにおける、素材データに設定された素材時間範囲に対応する部分を特定し(ステップS23)、その特定した部分から、素材データの時間変化に基づいて、ステップS21で設定された素材時間範囲内の素材データ範囲を特定する(ステップS24)。図6の例では、CPU14は、ハードディスク19に記憶した素材データと、クリップ・マーカー情報、編集情報に基づいて、再生データにおける、クリップ・マーカーで素材データに設定された範囲Cに対応する部分として範囲c〜cを特定し、素材データに設定された範囲Dに対応する部分として範囲d〜d及び範囲d〜dを特定する処理を行う。
【0037】
図5を参照して、再生データにおける、クリップ・マーカーで素材データに設定された範囲に対応する部分を特定する処理について説明する。
【0038】
最初に、CPU14は、素材時間範囲の開始位置及び終了位置に対応する、再生時間の位置を基準位置として特定する(ステップS241)。
【0039】
CPU14は、この処理を、素材時間と再生時間の関係を図6に曲線として描かれた関数に従って算出することによって実行する。素材データは厳密には連続的ではなく、所定の間隔で離間した複数のフレームから構成されている。CPU14は、範囲C、範囲Dのそれぞれの範囲内のフレームの存在しない部分について、上述のように、例えば、直線的に変化する部分については線分補間によって算出し、高い曲率で変化する部分についてはベジェ補間によって算出する。こうして、CPU14は、S23で、範囲Cの開始位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を全て求めて基準位置C1を得て、範囲Dの開始位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を全て求めて基準位置D1、D3、D4を得る。次に、範囲Cの終了位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を全て求めて基準位置C2、C3を得て、範囲Dの終了位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を全て求めて基準位置D2、D5を得る。
【0040】
次に、各基準位置における、素材時間での再生方向を判定する(ステップS242)。
【0041】
この処理を実行するため、CPU14は、求めた全ての基準位置C1、D1、D3、D4、C2、D2、C3、D5についてそれぞれの微分値及び2回微分値を算出し、微分値及び2回微分値が正であるか否かに基づいて、それぞれの基準位置における再生方向を判定する。
【0042】
次に、こうして得た再生方向に基づいて、再生時間における再生範囲の開始位置、終了位置を特定する(ステップS243)。
【0043】
図7に、グラフ上の交点における微分値及び2回微分値に基づいて、それぞれの交点が表す基準位置が開始位置又は終了位置であるか否かを特定するための表を示す。
【0044】
この表に従って、全ての交点について「再生範囲」の「開始位置」と「終了位置」を特定し、交点が「再生範囲」の「開始位置」であれば、その位置から次の交点までの位置を「再生範囲の内側」と判定し、交点が「再生範囲」の「終了位置」であれば、その位置から次の交点までの位置を「再生範囲の外側」と判定する。最後の交点については、次の交点が存在しないためグラフの終端位置を使用する。この判定を最後の交点まで繰り返し、「再生範囲の内側」の集合を得る。また、こうして得られた「再生範囲の内側」の集合について、範囲が隣接しているものは結合する。このようにして、素材データにおいて指定された範囲が反映されている、再生データの範囲(再生範囲)を特定することができる。
【0045】
具体的な例として、クリップ・マーカーC、Dの素材時間範囲からそれに対応する再生範囲を特定する処理について説明する。
【0046】
<2−1.クリップ・マーカーの範囲Cの素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理>
【0047】
まず、クリップ・マーカーの範囲Cの開始位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を求め、交点をC1とする。次に、交点C1の微分値、すなわち、グラフの傾きを求める。交点C1の微分値は正で、0より大きいので、これは、交点C1での再生方向が素材時間の正方向であることを意味している。交点C1はクリップ・マーカーの範囲Cの“開始位置”に対応し、かつ微分値は正なので、対応する再生時間を「再生範囲」の開始位置c1とする。
【0048】
次に、クリップ・マーカーの範囲Cの終了位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を求め、交点をC2、C3とする。
【0049】
まず、交点C2の微分値を求める。交点C2の微分値は正で、0より大きい。これは、交点C2の再生方向が、素材時間の正方向であることを意味している。交点C2はクリップ・マーカーの範囲Cの“終了位置”に対応し、かつ微分値が正なので、対応する再生時間を「再生範囲」の終了位置c2とする。
【0050】
次に、交点C3の微分値を求める。交点C3の微分値は0である。これは、交点C3が極大値又は極小値であることを意味している。これが極大値か極小値かの判定を可能にするために、交点C3の2回微分値を求める。交点C3の2回微分値は正で、0より大きいため、交点C3は極小値であることがわかる。交点C3はクリップ・マーカーの範囲Cの終了位置に対応し、かつ2回微分値が正で極小値なので、対応する再生時間が「再生範囲」の終了位置c3となる。
【0051】
c1、c2、c3を再生時間の昇順に並び替える。c1〜c2が範囲の内側、c2〜c3が範囲の外側、c3〜グラフ終端が範囲の外側となり、その結果、素材データに指定された範囲Cを反映している再生データの範囲として、c1を開始位置、c2を終了位置とする再生範囲c1〜c2が特定される。
<2−2.クリップ・マーカーの範囲Dの素材時間範囲からそれに対応する再生時間範囲を特定する処理>
【0052】
まず、クリップ・マーカーの範囲Dの開始位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を求め、交点をD1、D3、D4とする。
【0053】
次に、交点D1の微分値を求める。交点D1の微分値は正で、0より大きい。これは、交点D1の再生方向が素材時間の正方向であることを意味している。交点D1はクリップ・マーカーの範囲Dの「開始位置」に対応し、かつ微分値は正なので、対応する再生時間を「再生範囲」の開始位置d1とする。
【0054】
交点D3の微分値を求める。交点D3の微分値は負で、0より小さい。これは、交点D3の再生が素材時間の逆方向の再生であることを意味している。交点D3はクリップ・マーカーの範囲Dの「開始位置」に対応し、かつ微分値は負なので、対応する再生時間を「再生範囲」の終了位置d3とする。
【0055】
交点D4の微分値を求める。交点D4の微分値は正で、0より大きい。これは、交点D4の再生方向が素材時間の正方向であることを意味している。交点D4はクリップ・マーカーの範囲Dの「開始位置」に対応し、かつ微分値は正なので、対応する再生時間を「再生範囲」の開始位置d4とする。
【0056】
次に、クリップ・マーカーの範囲Dの終了位置とキーフレーム全体の補間値のグラフとが交わる点を求め、交点をD2、D5とする。
【0057】
交点D2の微分値を求める。微分値は0であるので、交点D2極大値又は極小値となる。そこで、極大値であるか極小値であるかを判定するために、交点D2の2回微分値を求める。交点D2の2回微分値は負で、0より小さいことから、交点D2は極大値であることがわかる。交点D2はクリップ・マーカーの範囲Dの「終了位置」に対応し、かつ2回微分値が負であることから極大値なので、対応する再生時間を「再生範囲」の開始位置d2(不図示)とする。
【0058】
交点D5の微分値を求める。交点D5の微分値は正で、0より大きい。これは、交点D5の再生方向が素材時間の正方向であることを意味している。交点D5はクリップ・マーカーの範囲Dの「終了位置」に対応し、かつ微分値が正なので、対応する再生時間を「再生範囲」の終了位置d5とする。
【0059】
次に、このようにして求めたd1〜d5を再生時間の昇順に並び替える。d1〜d2が範囲の内側、d2〜d3が範囲の内側、d3〜dが範囲の外側、d4〜d5が範囲の内側、d5からグラフの終端が範囲の外側となる。d1〜d2の範囲とd2〜d3の範囲は隣接しているので結合され、その結果、素材データに指定された範囲Dを反映している再生データの範囲として、d1を開始位置、d3を終了位置とする再生時間範囲d1〜d3と、d4を開始位置、d5を終了位置とする再生時間範囲d4〜d5とが特定される。
【0060】
次に、ユーザがノンリニア編集装置1を操作して編集作業を行う際にディスプレイ17aに表示される表示画面を図8A〜図8Cを参照して説明する。ディスプレイ17aに表示される表示画面は、編集作業の進行に伴って図8A〜図8Cに示すように変遷する。以下の処理は、基本的には、入力インタフェース13を介して入力されるユーザの指示などを受けて、CPU14がROM15に記憶されたアプリケーションプログラム、画像データなどを読み出して、実行する。
【0061】
図8Aは、制御画面120を操作してメニュー・ウインドウ127を表示した場面である。図8Aに示すように、ディスプレイ17aに表示される表示画面100は、画像画面110と制御画面120とからなり、制御画面120には、現在の設定を示す状態画面123が表示される。このメニュー・ウインドウ127を操作してクリップ・マークの設定(Set clip mark In/Out)をクリックすると図8Bの画面に切り替わり、クリップ・マーカー及びタイムリマップを用いた編集作業を開始できるようになる。
【0062】
図8Bでは、制御画面120に、現在の設定を示す状態画面123の他に、素材時間の再生時間を表すタイムライン124、タイムラインカーソル124a、クリップ・マーカー125が表示されている。図8Bでは、ユーザがイン(In)点とアウト(Out)点を設定して素材時間範囲125aを指定したクリップ・マーカー125をタイムライン124に配置し、さらに、タイムラインカーソル124aを操作している状態を表している。図8Bに示す例では、上記のように指定された素材時間範囲125aにはその特定の識別情報として「On Clouds」なる文字情報が含まれており、タイムラインカーソル124aがその素材時間範囲125aを指示すると、画像画面110には「On Clouds」と表示されるようになっている。これにより、ユーザは、この画像がクリップ・マーカー125で指定された素材時間範囲125aの画像であることを視覚的に認識することができる。
【0063】
図8Cは、ユーザがタイムリマップを行う際の作業画面であり、タイムライン124とクリップ・マーカー125の他に、タイムリマップ設定画面126が現れた状態を示している。タイムリマップ設定画面126は、タイムリマップ後の再生時間を示すタイムラインバー126aと、タイムラインバー126aに加えた設定を示す設定バー126bとからなる。
【0064】
図9は、図8Cの表示画面に対応する、素材時間と再生時間におけるクリップ・マーカーの対応関係を示すグラフである。このタイムリマップ設定画面126で編集速度を変更する設定を行うことによって、グラフにタイムリマップによるカーブが生じていることがわかる。
【0065】
素材データのクリップ・マーカー125に付けられた素材時間範囲125aは、図8Cに示すタイムリマップ編集後の表示画面に示されたタイムライン124では、2つの再生時間範囲125b,125cとして表示されている。この画面でも同様に、タイムラインカーソル124aが再生時間範囲125b,125cを指示すると、画像画面110には「On Clouds」と表示されるようになっている。これにより、ユーザは、この画像がクリップ・マーカー125で指定された素材時間範囲125a内の画像であることを視覚的に認識することができる。
【0066】
このように、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、第1の時間である素材時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲である素材時間範囲が指定された素材データから、素材データを素材時間とは異なる第2の時間である再生時間に従って再生する再生データを生成し、再生データにおける、素材時間範囲内の素材データを含む再生時間範囲を特定する。例えば、再生データが、素材データの再生方向とは反対方向に素材データを再生する範囲である逆再生範囲を含むように再生時間の設定を行った場合には、素材データから再生データを生成すると、素材データの素材時間範囲に対応する再生時間範囲が再生データ内に複数にわたって出現することがある。例えば、図8Bに示した素材時間範囲125aに対応して、図8Cに示したように2つの再生時間範囲125b,125cが出現することがある。そのような場合であっても、本実施の形態のノンリニア編集装置1によれば、再生データにおける、素材時間範囲125a内の素材データを含む再生時間範囲125b,125cが特定されるため、素材データに指定された素材時間範囲と、再生データ中における、その素材時間範囲が反映されている再生時間範囲との相互の対応関係を特定することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、素材時間における素材時間範囲(図8Bの素材時間範囲125a)と、再生時間における再生時間範囲(図8Cの再生時間範囲125b,125c)とのうち、少なくとも再生時間における再生時間範囲125b,125cをユーザ・インタフェース上に表示するようにしてもよい。これにより、素材データに指定された素材範囲が反映されている再生データの範囲をユーザが視覚的に認識することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、図8B、図8Cの画像画面110に「On Clouds」と表示されているように、素材データの素材時間範囲に特定の識別情報が含まれており、ユーザ・インタフェース上の再生時間範囲が指示されると、その特定の識別情報をユーザ・インタフェース上に表示することを含んでいてもよい。この構成によれば、例えばユーザがユーザ・インタフェース上でポインタを操作して再生時間範囲を指示した場合には、特定の識別情報がユーザ・インタフェース上に表示される。これにより、ユーザは、ポインタで指示した再生データの再生時間範囲が素材データの素材時間範囲を反映したものであることを視覚的に認識することができる。
【0069】
あるいは、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、図8Cのタイムリマップ設定画面126の操作によって、素材時間における素材時間範囲125aと、再生時間における再生時間範囲125b,125cとを互いに関連付け、素材時間における素材時間範囲125aと、再生時間における再生時間範囲125b,125cとをユーザ・インタフェース上に表示し、ユーザ・インタフェース上の素材時間範囲125aが指示されると、該素材時間範囲に関連付けられた再生時間範囲125b,125cの表示を変化させ、ユーザ・インタフェース上の再生時間範囲125b,125cが指示されると、該再生時間範囲に関連付けられた素材時間範囲125aの表示を変化させるようにしてもよい。
これによって、本実施の形態のノンリニア編集装置1は、例えばユーザがユーザ・インタフェース上でポインタを操作して素材データの素材時間範囲を指示した場合には、その素材データの素材時間範囲が反映されている再生データの再生時間範囲を視覚的に認識することができる。また、ユーザがユーザ・インタフェース上でポインタを操作して再生データの再生時間範囲を指示した場合には、その再生データの再生時間範囲に反映されている素材データの素材時間範囲を視覚的に認識することができる。素材時間範囲あるいは再生時間範囲の表示を変化させる場合には、例えば、それらの表示の色を変えたり、表示を点滅させたり、表示の大きさを拡大又は縮小させたりしてもよい。
【0070】
既に説明したように、編集作業を行う映像データ、すなわち、素材データを実際にコピーあるいはカットする必要はなく、編集情報をハードディスク19に記憶した素材データに関連付けて記憶するようにしてもよいので、ハードディスク19に記憶した素材データと編集情報を組み合わせると、再生データともなりうる。
【0071】
このため、本実施の形態のデータのデータ構造は、例えば、素材データと編集情報を含むとすると、素材時間である第1の時間に従って生成され、かつ素材時間範囲である第1の時間範囲が指定された素材データと、該素材データから生成された、素材データを素材時間とは異なる、再生時間である第2の時間に従って再生する再生データであって、再生データにおける、素材時間範囲内の素材データを含む再生時間である第2の時間範囲が特定されている再生データと、を有する。
【0072】
また、かかるデータ構造は、素材データの素材時間範囲に、例えば、「On Clouds」など、素材時間範囲を識別するための特定の識別情報を含ませてもよい。これによって、該特定の識別情報は、例えば、図8B、図8Cの画像画面110の「On Clouds」のように、ユーザ・インタフェース上で素材時間範囲や再生時間範囲が指示されたときに特定の識別情報をユーザ・インタフェース上に表示させる処理をコンピュータなどに実行させることができる。
【0073】
さらに、かかるデータ構造は、図8Cのタイムリマップ設定画面126のように、素材時間における素材時間範囲と再生時間における再生時間範囲とを互いに関連付け、素材時間範囲及び再生時間範囲は、ユーザ・インタフェース上の素材時間範囲が指示されると、該素材時間範囲に関連付けられた再生時間範囲の表示を変化させ、ユーザ・インタフェース上の再生時間範囲が指示されると、該再生時間範囲に関連付けられた素材時間範囲の表示を変化させる処理がコンピュータによって実行できるようにしてもよい。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本実施の形態では、ユーザ・インタフェースとして、ディスプレイ17aに表示される表示画面を用いたが、本発明はこれに限定されず、様々な形態が相当可能である。また、本発明の編集装置は、CPUとメモリを含む、一般的なコンピュータを上述した各手段として機能させる編集プログラムによって動作させることができる。編集プログラムは、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ノンリニア変種装置
11 映像入力部
12 デコーダ
13 入力I/F(インタフェース)
13a 入力部
14 CPU
15 ROM
16 RAM
17 出力I/F(インタフェース)
18 エンコーダ
19 ハードディスク
20 映像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、
前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、
を含む編集方法。
【請求項2】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とのうち、少なくとも前記第2の時間における前記第2の時間範囲をユーザ・インタフェース上に表示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記素材データの前記第1の時間範囲には特定の識別情報が含まれており、
前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、前記特定の識別情報を前記ユーザ・インタフェース上に表示することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とを互いに関連付けることと、
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とをユーザ・インタフェース上に表示することと、
前記ユーザ・インタフェース上の前記第1の時間範囲が指示されると、該第1の時間範囲に関連付けられた前記第2の時間範囲の表示を変化させ、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、該第2の時間範囲に関連付けられた前記第1の時間範囲の表示を変化させることと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、
前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、
を実行する処理部を有する編集装置。
【請求項6】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とのうち、少なくとも前記第2の時間における前記第2の時間範囲を表示するユーザ・インタフェースをさらに有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記素材データの前記第1の時間範囲には特定の識別情報が含まれており、
前記処理部は、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、前記特定の識別情報を前記ユーザ・インタフェース上に表示させる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とを互いに関連付け、
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とをユーザ・インタフェース上に表示させ、
前記ユーザ・インタフェース上の前記第1の時間範囲が指示されると、該第1の時間範囲に関連付けられた前記第2の時間範囲の表示を変化させ、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、該第2の時間範囲に関連付けられた前記第1の時間範囲の表示を変化させる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データから、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データを生成することと、
前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲を特定することと、
をコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とのうち、少なくとも前記第2の時間における前記第2の時間範囲をユーザ・インタフェース上に表示することをさらに含む、請求項9に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項11】
前記素材データの前記第1の時間範囲には特定の識別情報が含まれており、
前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、前記特定の識別情報を前記ユーザ・インタフェース上に表示することをさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項12】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とを互いに関連付けることと、
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と、前記第2の時間における前記第2の時間範囲とをユーザ・インタフェース上に表示することと、
前記ユーザ・インタフェース上の前記第1の時間範囲が指示されると、該第1の時間範囲に関連付けられた前記第2の時間範囲の表示を変化させ、前記ユーザ・インタフェース上の前記第2の時間範囲が指示されると、該第2の時間範囲に関連付けられた前記第1の時間範囲の表示を変化させることと、
をさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項13】
第1の時間に従って生成され、かつ第1の時間範囲が指定された素材データと、
該素材データから生成された、前記素材データを前記第1の時間とは異なる第2の時間に従って再生する再生データであって、前記再生データにおける、前記第1の時間範囲内の前記素材データを含む第2の時間範囲が特定されている前記再生データと、
を有し、前記第1の時間における前記第1の時間範囲と前記第2の時間における前記第2の時間範囲とは、コンピュータによって読み取られ、該コンピュータによって互いに関連付ける処理に用いられる、データ構造。
【請求項14】
前記素材データの前記第1の時間範囲には特定の識別情報が含まれており、該特定の識別情報は、ユーザ・インタフェース上で前記第1の時間範囲または前記第2の時間範囲が指示されたときに前記特定の識別情報を前記ユーザ・インタフェース上に表示させる処理がコンピュータによって実行される際に用いられる、請求項13に記載のデータ構造。
【請求項15】
前記第1の時間における前記第1の時間範囲と前記第2の時間における前記第2の時間範囲とは互いに関連付けられており、前記第1の時間範囲及び前記第2の時間範囲は、ユーザ・インタフェース上で前記第1の時間範囲が指示されると、該第1の時間範囲に関連付けられた前記第2の時間範囲の前記ユーザ・インタフェース上での表示を変化させ、前記ユーザ・インタフェース上で前記第2の時間範囲が指示されると、該第2の時間範囲に関連付けられた前記第1の時間範囲の前記ユーザ・インタフェース上での表示を変化させる処理がコンピュータによって実行される際に用いられる、請求項13に記載のデータ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate


【公開番号】特開2012−54619(P2012−54619A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68566(P2009−68566)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(592030263)グラスバレー株式会社 (11)
【Fターム(参考)】