説明

緩衝体

【課題】製造コストの高騰を招くことなく、簡単な構成によって隙間からの外気の進入を確実に防止することのできる緩衝体を提供する。
【解決手段】取付孔10に固定される固定部12と、衝撃緩衝部14とを設ける。固定部12の外周に螺旋溝19を形成し、残余の部分に螺旋周壁22を形成する。緩衝体11を回転させ、螺旋溝19を取付孔10の孔縁にねじ込み状態で係止させる。螺旋周壁22の幅方向の一部から径方向外側に突出するシール突条23を設け、シール突条23によって隙間を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のドア開閉部等に用いられ、閉操作の際の衝撃を緩衝する緩衝体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドア開閉部には、ドアとドア開口部のいずれか一方に緩衝体が取り付けられ、ドア閉時に緩衝体が他方の部材に当接するようになっている。
この緩衝体は、一方の部材の取付孔に固定される固定部と、ドアを閉操作したときに他方の部材に当接する衝撃緩衝部と、を備えている。固定部としては、取付作業性を考慮して略円柱状の軸部の外周に螺旋溝を形成し、この螺旋溝を取付孔の孔縁にねじ込み状態で係止させるものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−96172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の緩衝体は、被取付部材に対する取付作業を容易にするために取付孔をある程度大きく形成する必要があるが、取付孔が大きくなると、取付状態において固定部の周囲に隙間ができ易くなる。そして、固定部の周囲に隙間ができると、その隙間を通して排気ガス等の外気が進入し易くなる。
また、隙間を小さくするために取付孔の成形精度を高めると、成形作業が難しくなり、製造コストの高騰をことが懸念される。
【0004】
そこで、この発明は、製造コストの高騰を招くことなく、簡単な構成によって隙間からの外気の進入を確実に防止することのできる緩衝体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、固定部材と開閉部材のうちの一方の部材に取り付けられ、前記開閉部材の閉操作時に他方の部材に当接して衝撃を緩衝する緩衝体(例えば、後述の実施形態における緩衝体11)であって、前記一方の部材に形成された取付孔(例えば、後述の実施形態における取付孔10)に固定される固定部(例えば、後述の実施形態における固定部12)と、閉操作時に前記他方の部材に当接する衝撃緩衝部(例えば、後述の実施形態における衝撃緩衝部14)と、を備え、前記固定部には、略円柱状の軸部の外周面に形成され、前記取付孔の孔縁にねじ込み状態で係止される螺旋溝(例えば、後述の実施形態における螺旋溝19)と、前記軸部の外周面の残余の部分に形成された螺旋周壁(例えば、後述の実施形態における螺旋周壁22)と、前記螺旋周壁の幅方向の一部から径方向外側に突出するシール突条(例えば、後述の実施形態におけるシール突条23)と、が設けられていることを特徴とする。
緩衝体を一方の部材に取り付ける場合には、固定部の螺旋溝に取付孔の孔縁を沿わせるようにして固定部を取付孔に対してねじ込む。これにより、取付孔の孔縁に螺旋溝が係止されるとともに、螺旋周壁から径方向外側に突出するシール突条が取付孔を覆うようになる。また、シール突条は螺旋周壁の幅方向の全域からではなく一部からのみ突出しているため、軸部のねじ込みの際のシール突条による抵抗は低減される。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緩衝体において、前記螺旋周壁の幅方向の端部には、前記螺旋溝に隣接する略直角なエッジ部(例えば、後述の実施形態におけるエッジ部24)が設けられていることを特徴とする。
これにより、螺旋溝の径方向外側の端部にエッジ部が位置されるようになり、エッジ部分が取付孔の孔縁に安定的に支持されるようになる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の緩衝体において、前記シール突条は、径方向外方に向かって先細りとなるテーパ状の断面形状とされていることを特徴とする。
これにより、取付孔に対する固定部のねじ込みの際のシール突条による抵抗はより低減されるようになる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の緩衝体において、前記螺旋溝の底面には、溝方向に沿って円弧状に隆起する締め込み規制用のストッパ突起(例えば、後述の実施形態におけるストッパ突起21)が形成されていることを特徴とする。
これにより、固定部を取付孔にねじ込む際に、取付孔の内周面が螺旋溝内のストッパ突起に乗り上げると、軸部の締め込みが規制されるようになる。このとき、ストッパ突起が溝方向に沿って円弧状に隆起しているため、軸部の回転停止位置は微調整することが可能になる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の緩衝体において、前記シール突条は、前記螺旋周壁と別体部品によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、螺旋周壁に幅方向の一部から径方向外側に突出するシール突条が設けられているため、シール突条が取付孔を覆い、軸部と取付孔の間の隙間をより小さくすることができる。したがって、簡単な構造でありながら、隙間からの外気の進入を低減することができる。
また、この発明の場合、シール突条が螺旋周壁の幅方向の全域からではなく一部から径方向外側に突出しているため、固定部のねじ込みの際の抵抗を低減し、取付作業性の向上を図ることができるという利点もある。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、螺旋溝の径方向外側の端部に略直角なエッジ部が位置されるようになるため、固定部をエッジ部によって取付孔の孔縁に安定的に支持させ、取付状態での安定性を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、シール突条が径方向外側に向かって先細りとなるテーパ状の断面形状とされているため、固定部のねじ込みの際の抵抗をより低減し、取付作業性のさらなる向上を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、螺旋溝内で円弧状に隆起するストッパ突起によって固定部の回転停止位置を微調整することができるため、この微調整によって固定部と取付孔の間の隙間をより小さくし、隙間からの外気の進入をより低減することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、シール突条を螺旋周壁と別体部品によって構成したため、シール突条を備えない既存の緩衝体を流用して容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、特別に断らない限り、「上」「下」については車体に対しての上下を意味するものとする。
図1は、ハッチバックタイプの車両1の後部を示すものである。
同図に示すように、この車両1は、車体後部面に開口部2が設けられ、その開口部2に後部ドア3が開閉可能に設けられている。後部ドア3は、上端側が開口部2の上縁に跳ね上げ開閉可能に支持されている。そして、この後部ドア3は、閉状態において、車体のルーフ4から後方側に向かって下方傾斜する傾斜面と、傾斜面の後端部から下方に屈曲する垂立面とを備え、傾斜面にリヤガラス5が配置されるとともに、垂立面の上半部にエキストラウィンドウガラス6が配置されている。
【0016】
図2は、図1のA−A断面に対応する断面図であり、同図中7は、車体の開口部2から車内側下方に延設されたガーターパネルであり、8は、後部ドア3の下面側に取り付けられたフレームパネルである。フレームパネル8の底壁9には略円形の取付孔10が形成され、この取付孔10に緩衝体11が取り付けられている。緩衝体11は、全体がゴムや軟質樹脂等のゴム状弾性体によって形成され、図3〜図5にも示すように、取付孔10に固定される固定部12と、後部ドア3の閉操作時に、下端がガーターパネル7の底壁13の上面に当接する衝撃緩衝部14と、を備えている。
【0017】
緩衝体11は、全体が略円柱状に形成され、軸方向の一端側に固定部12が設けられ、他端側に衝撃緩衝部14が設けられている。
衝撃緩衝部14は、軸方向に充分な長さを持つ緩衝部本体15の先端面(図2,図3中の下面)に窪み部16が設けられ、その窪み部16内に円筒壁17が突設されている。この円筒壁17は、緩衝部本体15の平坦な先端面から前方に所定量突出し、後部ドア3の閉操作時に最初にガーターパネル7の底壁13に当接するようになっている。つまり、衝撃緩衝部14は、当接初期の衝撃を弾発力の小さい円筒壁17によって吸収し、その後の大きな入力荷重を緩衝部本体15全体で吸収する。また、緩衝部本体15の外周面には、軸方向に沿って延出する複数の把持突起18が形成されている。この把持突起18は、作業者が緩衝体11を取付孔10に取付ける際の滑り止めとして用いられる。
【0018】
一方、固定部12は、緩衝部本体15から連続する軸部の外周面に設定幅の螺旋溝19が設けられるとともに、衝撃緩衝部14と逆側の端部に截頭円錐状のガイド凸部20が設けられている。螺旋溝19は、取付孔10の孔縁にねじ込み状態で係止される部分であり、図6にも示すように、延出方向のほぼ全域が断面略矩形状に形成されるとともに、ガイド凸部20側の端部が解放されている。また、螺旋溝19の衝撃緩衝部14寄りの設定位置の底面には、図7,図8に示すように、溝の延出方向に沿って円弧状に隆起するストッパ突起21が形成されている。このストッパ突起21は、螺旋溝19が取付孔10の孔縁にねじ込まれた際に、取付孔10の内周面が乗り上げることによって締め込みを規制する。
【0019】
また、固定部12は、軸部の外周面に螺旋溝19を形成した結果、軸部の外周面の残余の部分には設定幅の螺旋周壁22が形成されている。そして、この螺旋周壁22の幅方向の中央領域には、径方向外側に向かって突出する山形状(先細りテーパー状)の断面形状のシール突条23が一体に形成されている。このシール突条23は螺旋周壁22の延出方向に沿って螺旋状に設けられている。また、螺旋周壁22の幅方向の両端部には、シール突条23が形成されておらず、螺旋溝22に隣接する略直角なエッジ部24が設けられている。
【0020】
この緩衝体11を実際に後部ドア3のフレームパネル8に取付ける場合には、作業者が衝撃緩衝部14を把持してフレームパネル8の取付孔10にガイド凸部20を挿入し、緩衝体11全体を所定の方向に回転させる。これにより、緩衝体11の螺旋溝19は取付孔10にねじ込まれる。この緩衝体11のねじ込みは、取付孔10の内周面が螺旋溝19内のストッパ突起21に乗り上げて、緩衝体11の回転が規制されるまで行われる。
【0021】
こうしてフレームパネル8に取り付けられた緩衝体11は螺旋溝19の下面と上面が取付孔10の上下の孔縁に係止され、その状態において、シール突条23が取付孔10の上部側の孔縁から下部側の孔縁にかけてほぼ連続的に覆うようになる。したがって、この緩衝体11を用いた場合には、固定部12と取付孔10の間の隙間がシール突条23によってほぼ閉塞され、取付孔10の隙間を通して車内に外気が進入するを防止される。
特に、この緩衝体11は、断面テーパ状のシール突条23が取付孔10の孔縁に当接した場合にも厚み方向に柔軟に撓み変形するため、フレームパネル8の底壁9(取付孔10の周縁部)が緩やかに湾曲している場合には、隙間の発生を効果的に防止することができる。
【0022】
また、この緩衝体11においては、シール突条23が螺旋周壁22の幅方向の全域ではなく一部からのみ突出しているため、固定部12のねじ込みの際の抵抗を低減できるという利点がある。そして、この実施形態の緩衝体11の場合、シール突条23が径方向外側に向かって先細りテーパ状の断面形状となっているため、ねじ込み時における抵抗をより低減するうえで有利となっている。したがって、この緩衝体11においては、取付作業性が低下することもない。
【0023】
さらに、この実施形態の緩衝体11は、螺旋周壁22と螺旋溝19の間に略直角なエッジ部24が確保されているため、取付孔10に取り付けた状態において、エッジ部24によって取付孔10の孔縁を安定的に支持することができる。したがって、この構造の採用により、緩衝体11の取付状態での安定性を高めることができる。
【0024】
また、この実施形態の緩衝体11においては、締め込み規制用のストッパ突起21が螺旋溝19内に溝方向に沿って略円弧状に隆起するように形成されているため、回転規制状態においても、緩衝体11の回転位置を比較的容易に微調整することができる。したがって、取付孔10に対する固定部12の偏心によってできる部分的な隙間を、この回転位置の微調整によって閉塞することができる。したがって、取付孔10と固定部12の間にできる隙間をより少なくし、隙間を通した外気の進入をより確実に抑制することができる。
【0025】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態においては、シール突条23を螺旋周壁22の外周面に一体に形成したが、シール突条は螺旋周壁とは別の部品として製造し、シール突条の無い緩衝体に接着等によって固定するようにしても良い。この場合、シール突条の無い既存の緩衝体を流用することができることから、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態を示すものであり、車両の後部を斜め上方側から見た斜視図。
【図2】この発明の一実施形態を示す図1のA−A断面に対応する断面図。
【図3】この発明の一実施形態の緩衝体の部分断面側面図。
【図4】この発明の一実施形態の緩衝体の上面図。
【図5】この発明の一実施形態の緩衝体の下面図。
【図6】この発明の一実施形態の緩衝体の図3のB部の拡大図。
【図7】この発明の一実施形態の緩衝体の図3のC−C断面に対応する断面図。
【図8】この発明の一実施形態の緩衝体の図3のD−D断面に対応する断面図。
【符号の説明】
【0027】
10…取付孔
11…緩衝体
12…固定部
14…衝撃緩衝部
19…螺旋溝
21…ストッパ突起
22…螺旋周壁
23…シール突条
24…エッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と開閉部材のうちの一方の部材に取り付けられ、前記開閉部材の閉操作時に他方の部材に当接して衝撃を緩衝する緩衝体であって、
前記一方の部材に形成された取付孔に固定される固定部と、
閉操作時に前記他方の部材に当接する衝撃緩衝部と、を備え、
前記固定部には、
略円柱状の軸部の外周面に形成され、前記取付孔の孔縁にねじ込み状態で係止される螺旋溝と、
前記軸部の外周面の残余の部分に形成された螺旋周壁と、
前記螺旋周壁の幅方向の一部から径方向外側に突出するシール突条と、
が設けられていることを特徴とする緩衝体。
【請求項2】
前記螺旋周壁の幅方向の端部には、前記螺旋溝に隣接する略直角なエッジ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記シール突条は、径方向外方に向かって先細りとなるテーパ状の断面形状とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記螺旋溝の底面には、溝方向に沿って円弧状に隆起する締め込み規制用のストッパ突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の緩衝体。
【請求項5】
前記シール突条は、前記螺旋周壁と別体部品によって構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の緩衝体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101414(P2010−101414A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273164(P2008−273164)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】