説明

緩衝材の製造方法

【課題】 多品種少量物品の梱包に使用する緩衝材を、低コストで容易に製造すること。
【解決手段】 被梱包物体又はその模型を、それよりも大きな空間を有する容器に入れ、被梱包物体又はその模型と、容器との空間に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、常圧で、且つ熱可塑性樹脂発泡粒子のガラス転移点(Tg)以上且つTg+120℃以下の加工温度Tで加熱成形し、その際の加工温度Tにおける該熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡力Ex[T]が、ρrel<Ex[T]<2、であることを特徴とする緩衝材の製造方法に従って、緩衝材を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多品種少量物品の梱包に使用する緩衝材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の如く国際化や情報化或いは革新化の時代においては多種多様の製品や情報が海外より流入し、且つ製品開発のサイクルも著しく早まっていることから消費の価値観が極めて多様化し、従って製品もその機能や形状デザイン等に亘って多品種少量生産化を余儀なくされるに至っており、そのため、輸送用の緩衝材も多品種少量化が進んでいる。
【0003】
特許文献1にはポリスチレン系樹脂組成物のビーズ発泡法による発泡成形体を緩衝材として使用できることが記載されている。しかし、その都度、高価な金型や成形機を必要とし、多品種少量物品の緩衝材として使用する場合にはコストが掛かりすぎる。
【0004】
特許文献2にはポリプロピレン系樹脂組成物のビーズ発泡法による発泡成形体が緩衝材として使用できることが記載されている。しかし、特許文献1の場合と同様に設備コストが掛かりすぎる。
【0005】
特許文献3にはブロック形状のビーズ発泡法による発泡体を二次加工することによって緩衝材として使用することが記載されている。しかし、ブロック形状の発泡体の二次加工では細かい細工が難しく、手作業に頼る部分が多いため、多品種少量物品に対しては、コストが高い。
【0006】
特許文献4には、バラ状緩衝材について記載されている。バラ状緩衝材は安価であるが、被梱包物体が固定されていない為に、輸送中に被梱包物品が動くことによって緩衝性能が得られなくなる等の問題があった。
【特許文献1】特開2006−265425号公報
【特許文献2】特開2005−139350号公報
【特許文献3】特開2007−137433号公報
【特許文献4】特許平9−111029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、多品種少量物品の梱包に使用する緩衝材を、低コストで容易に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、被梱包物体又はその模型を、それよりも大きな空間を有する容器に入れ、被梱包物体又はその模型と、容器との空間に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、常圧で、且つ特定の加工温度で加熱成形し、その際の加工温度Tにおける該発泡粒子の嵩倍率/真倍率=ρrelとするとき、加工温度Tにおける熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡力Ex[T]が、
ρrel<Ex[T]<2
である熱可塑性樹脂発泡粒子を用いて緩衝材を作製すれば、形状が多様であってもそれに合わせた緩衝材になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第一は、被梱包物体又はその模型を、それよりも大きな空間を有する容器に入れ、被梱包物体又はその模型と、容器との空間に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、常圧で、且つ熱可塑性樹脂発泡粒子のガラス転移点(Tg)以上且つTg+120℃以下の加工温度Tで加熱成形し、その際の加工温度Tにおける該熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡力Ex[T]が、ρrel<Ex[T]<2、であることを特徴とする緩衝材の製造方法に関する。好ましい実施態様は、熱可塑性樹脂発泡粒子がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする上記記載の緩衝材の製造方法に関する。より好ましくは、緩衝材を製造するのに際し、被梱包物体又はその模型の上及び/又は下に、加工温度Tで溶融しないフィルム又はシートを配して、製造後の緩衝材の分離を容易にすることを特徴とする上記記載の緩衝材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、多品種少量物品の梱包に使用する緩衝材を、低コストで製造できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の緩衝材の製造方法は、被梱包物体又はその模型を、それよりも大きな空間を有する容器に入れ、被梱包物体又はその模型と、容器との空間に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、常圧で、且つ熱可塑性樹脂発泡粒子のガラス転移点(Tg)以上且つTg+120℃以下の加工温度Tで加熱成形し、発泡粒子の嵩倍率/真倍率=ρrelとするとき、加工温度Tにおける熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡力Ex[T]が、ρrel<Ex[T]<2、である熱可塑性樹脂発泡粒子を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂としては、前記ρrel<Ex[T]<2を満たせるのであれば特に限定はないが、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂など一般の熱可塑性樹脂が用いられ、好ましくは熱可塑性の生分解性樹脂が用いられる。このような生分解性樹脂を用いると、使用後の緩衝材を廃棄したとしても、微生物により分解されるため、環境を汚染することがない。
【0013】
上記生分解性樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂をはじめとする脂肪族ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体、ポリブチレンサクシネート類、などの各種生分解性ポリエステル樹脂などが挙げられ、中でも2次発泡力が大きいことや発泡剤の保持性が良く、発泡粒子での保存が可能なため、成形機や予備発泡機を持たない業者でも対応できることから、ポリ乳酸系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0014】
以下、熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を用いる場合を例に挙げて本発明を説明するが、他の熱可塑性樹脂も同様に利用され得る。
【0015】
本発明においてポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂であれば特に限定しないが、ポリ乳酸を構成する乳酸モノマーのL体とD体のモル比が95/5〜60/40、又は40/60〜5/95の範囲が好ましく、より好ましくは90/10〜70/30、又は30/70〜10/90の範囲である。L体とD体のモル比が95/5〜60/40、又は40/60〜5/95の範囲の場合、結晶性が低いために高い倍率の発泡粒子が容易に製造でき、また、成形時には結晶化による2次発泡力の低下がないため容易に緩衝材が製造できる。ポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂とは、即ち結晶化速度の遅い実質的に非晶質のポリ乳酸をポリ乳酸系樹脂全体中50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含む樹脂である。なお、ポリ乳酸系樹脂には、極端に発泡粒子の2次発泡力を阻害しない範囲で、ポリ乳酸以外の他の樹脂を含有することができる。
【0016】
前記他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。さらには、脂肪族ポリエステル成分単位を少なくとも35モル%以上含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられ、この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物が挙げられ、それらはエポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油で一部架橋されていてもよい。上記で挙げたそれらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0017】
なお前記ポリ乳酸系樹脂中のポリ乳酸においては、一部モノマーが乳酸と交換可能な脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等で置き換わってもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油で一部架橋されていてもよい。
【0018】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、少なくとも1種含有される。また、前記脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、少なくとも1種用いることができる。
【0019】
また、前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。
【0020】
前記ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7210に準拠したメルトインデックス(MI)値で(測定荷重2.16kg、測定温度:190℃、オリフィス径:2mm)、0.1〜10g/10分の高分子量のポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。MI値がこの範囲にあれば、生産性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形体を得やすく、本発明の目的・効果を発現しやすい。
【0021】
ポリ乳酸系樹脂には、増粘、即ち発泡するのに適した粘度に調整する目的で架橋剤を用いてもよい。用いられる架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物等、一般的な架橋剤を少なくとも1種用いることができる。
【0022】
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネート化合物が使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0023】
前記過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等の有機化酸化物が挙げられる。
【0024】
前記酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0025】
前記エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等の各種グリシジルエーテル及び各種グリシジルエステル等が挙げられる。
【0026】
これら架橋剤のうち、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することによって尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能であるポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートが好ましく使用される。
【0027】
架橋剤の添加量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜5.0重量部であることが好ましく、例えば、イソシアネート基≧2.0当量/モルのポリイソシアネート化合物を使用する場合、該化合物の添加量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.5重量部〜5.0重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0重量部〜3.0重量部である。添加量が0.5重量部以上であれば、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度を発泡に適した領域まで上昇させる傾向があり、5.0重量部以下であれば、未反応の架橋剤が残ってしまったり、架橋が進行し過ぎてゲル化物が多量に生成して発泡性が低下したりすることがない。
【0028】
ポリ乳酸系樹脂に、発泡セルの均一化を目的として、発泡核剤を含有させてもよい。用いられる発泡核剤としては固体の粒子状物、例えば、タルク、シリカ、カオリン、ゼオライト、マイカ、アルミナなどの無機粒子、炭酸又は重炭酸塩、カルボン酸のアルカリ金属塩などの塩が用いられる。この中でもタルクが特に好ましく用いられる。
【0029】
発泡核剤の添加量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上3.0重量部以下である。好ましくは0.02重量部以上2.8重量部以下、さらに好ましくは0.04重量部以上2.6重量部以下である。発泡核剤の添加量が0.01重量部以上であれば、均一な発泡セルを生成することができ、3.0重量部以下であれば、発泡剤の散逸速度が速くなり発泡性が低下することが無い。
【0030】
またポリ乳酸系樹脂発泡粒子には、発泡性を阻害しない範囲で帯電防止剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の一般的な各種添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の被梱包物体とは、容器の中に緩衝材で梱包される物であれば特に限定はない。また、その模型とは、前記被梱包物体と同じ形状をしたもので、緩衝材を作製する際の加工温度で変形しない物であれば特に限定はない。
【0032】
本発明の容器は、被梱包物体又はその模型よりも大きな空間を有する容器であり、緩衝材を作製する際の加工温度で変形しない物であれば特に限定はない。例えば、ダンボール箱などが挙げられる。
【0033】
<ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造>
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得るには、特に新規な装置及び方法を用いて行う必要はなく、公知の装置及び方法が利用可能であるが、以下に例示する。
【0034】
(ポリ乳酸系樹脂粒子の作製)
本発明において、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を好ましく製造するには、まずポリ乳酸系樹脂粒子を作製する。このポリ乳酸系樹脂粒子は従来公知の方法で作ることができ、例えば、ペレット状のポリ乳酸系樹脂、及び必要に応じて架橋剤、発泡核剤、各種添加剤を一緒に単軸及び二軸押出機で加熱・混練しつつ押出した後、水中カッターやストランドカッター等でカットすることで得ることができる。カット後のポリ乳酸系樹脂粒子の1個当りの重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。1個当りの粒子重量が前記範囲であれば、樹脂粒子の生産性が良好であり、発泡粒子の充填性が良好になる傾向である。
【0035】
(ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の作製)
次いで、粒子状ポリ乳酸系樹脂組成物と発泡剤、分散媒としての水を密閉容器内に充填し、ポリ乳酸系樹脂組成物粒子の軟化温度以上に加熱した後、常温まで冷却後取り出すことによりポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得ることができる。
【0036】
上記発泡剤として炭素数5以下の炭化水素類が好適に使用され、炭素数5以下の炭化水素類としては、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が挙げられ、それらの群より少なくとも1種が用いられる。中でもノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが好ましく使用される。炭素数が5以下の炭化水素類を発泡剤として使用することで、緩衝材として十分な発泡倍率に発泡させることができる。また、発泡剤の含浸量は特に限定されないが、通常、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して発泡剤が5〜15重量部であるのが適切である。
【0037】
(ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の作製)
次いで、上記で得られる該ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を加熱することによりポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる。その他の方法として、単軸及び二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム押出機でポリ乳酸系樹脂と発泡剤、必要に応じて架橋剤、発泡核剤、各種添加剤を加熱・混練しつつ押出し、水を供給しながら球状にカットしてポリ乳酸系樹脂発泡性粒子とし、次いで、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を加熱することによりポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0038】
上記で得られ、本発明の緩衝材の製造に用いるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡粒子の嵩倍率/真倍率=ρrelとするとき、加工温度Tにおける2次発泡力Ex[T]がρrel<Ex[T]<2であり、好ましくはρrel+0.05<Ex[T]<1.95である。Ex[T]がρrelより高いと加熱後の発泡粒子間に空隙がなく、被梱包物品がしっかりと固定される緩衝材が製造することができ、2未満であれば過剰な2次発泡による容器の変形がなく緩衝材を製造することができる。
【0039】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩倍率は、容積200cm3のメスシリンダーに、2gの発泡粒子を入れ、そのときの嵩体積を読みとり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の重量と嵩体積から次式により求められる。
【0040】
発泡粒子の嵩倍率(倍率)=嵩体積(cm3)/発泡粒子の重量(2g)
また本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の真倍率は、100cm3の水が入った容積200cm3のメスシリンダーに、2gの発泡粒子を入れ、金網等を使用し発泡粒子を沈め、水の水位上昇分を発泡粒子の体積としたとき、次式により求められる。
発泡粒子の真倍率(倍率)=水位上昇分(発泡粒子の体積)(cm3)/発泡粒子の重量(2g)
【0041】
本発明の加工温度Tにおける2次発泡力Ex[T]は、嵩体積100cm3のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を量り取り、加工温度Tに温調した恒温槽の中に静置して熱処理を行い、2次発泡が終わった段階で恒温槽から取り出し、熱処理後のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩体積を量り、熱処理前後のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩体積から次式によって求められる。
二次発泡力Ex[T]=熱処理後の体積(cm3)/熱処理前の体積(100cm3
【0042】
<緩衝材の作製>
まず、ダンボール箱などの容器の半分くらいまでポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填し、その上に加工温度Tで溶融しないフィルム又はシートを置き、さらにその上に被梱包物体又はその模型を置き、その上に加工温度Tで溶融しないフィルム又はシートを置く。それから残りの空間にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填し、発泡粒子が漏れ出ないようにダンボール箱を封止する。ここでフィルム又はシートは、被梱包物体又はその模型の上及び/又は下に置くことが好ましい。
【0043】
前記フィルム又はシートを構成する樹脂は、加工温度Tで溶融しなければ特に限定されない。例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸系樹脂、セルロース誘導体、ポリブチレンサクシネート類、各種生分解性ポリエステル樹脂等の生分解性樹脂が使用できる。中でも非晶性のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を緩衝材に使用する場合は、結晶性のポリ乳酸系樹脂が環境を汚染することが無い為、特に好ましく用いられる。一方、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を緩衝材に使用する場合は結晶性ポリ乳酸系樹脂よりも加工温度が高いポリイミド系樹脂が好ましく用いられる。
【0044】
ダンボール箱を封止後、常圧且つ加工温度Tで加熱成形するが、その手段は所望の加工温度が得られる方法であれば特に限定はされない。例えば、被梱包物体又はその模型と熱可塑性樹脂発泡粒子を充填した容器を、加工温度Tに温調した乾燥機の中に静置する方法や、熱風をあてて加熱する方法、赤外線によって加熱する方法等が用いられるが、コスト面から乾燥機の中に静置する方法が特に好ましい。
【0045】
本加工温度Tは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子のTg以上、且つTg+120℃以下が好ましく、より好ましくはTg+5℃以上、且つTg+115℃以下、さらに好ましくはTg+10℃以上、且つTg+110℃以下である。加工温度Tがポリ乳酸系樹脂発泡粒子のTg以上であれば、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が十分に2次発泡することで緩衝材を製造することができる。Tg+120℃以下であれば、過剰な加熱により加熱成形後の緩衝材の収縮や溶融による緩衝性能の低下がなく外観良好な緩衝材を製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0047】
<緩衝材の評価>
実施例、比較例で得られた緩衝材を目視で評価した。その際の評価基準は以下の通りであった。○:緩衝材の収縮がなく発泡粒子間の空隙が殆どない、×:緩衝材が収縮している、又は発泡粒子間の空隙がある。
【0048】
(製造例1)
乳酸モノマーのL体とD体のモル比が90/10であるポリ乳酸樹脂100重量部に対してポリイソシアネート化合物「ミリオネートMR−200」(日本ポリウレタン工業(株)製)を2重量部添加しつつ2軸混練機「TEM−35B」(東芝機械(株)製)にてシリンダ温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφに粒子化されたポリ乳酸系樹脂組成物を得た。得られたポリ乳酸系樹脂組成物を100重量部、水100重量部、発泡剤として混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)25重量部とを密閉容器に充填し、94℃で90分間保持し、発泡剤を含浸させた。常温まで冷却後取り出し、乾燥して発泡性ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。得られた発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡スチロール用予備発泡機「BH−110」(大開工業(株))にて発泡温度88℃で発泡させ、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子のTgは55℃であった。又、このポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩倍率は37倍、真倍率は23倍であり、嵩倍率/真倍率=1.61となった。この発泡粒子の加工温度50℃における二次発泡力は1.40であり、加工温度70℃における二次発泡力は1.64であり、加工温度160℃における二次発泡力は1.80であり、さらに加工温度250℃における二次発泡力は1.90であった。
【0049】
(実施例1)
製造例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を内寸400mm×300mm×300mmのダンボール箱に半分ほど充填し、その上に150mm×100mm×100mmの木製の模型を置き、残りの空間にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填し発泡粒子が漏れ出ないようにダンボール箱を封止した。次いで、内温が70℃に設定された恒温機(乾燥機)内に静置し、60分間経過後取り出して常温まで冷却後、緩衝材を得た。得られた緩衝剤の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0050】
【表1】

【0051】
(実施例2)
内温が160℃に設定された恒温機(乾燥機)内に15分間静置したこと以外は、実施例1と同様に行い、緩衝材を得た。得られた緩衝剤の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0052】
(実施例3)
製造例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を内寸400mm×300mm×300mmのダンボール箱に半分ほど充填し、その上に400mm×300mm×厚み25μmで融点が170℃のポリ乳酸系樹脂フィルムを配し、その上に150mm×100mm×100mmの木製の模型を置き、残りの空間にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填し発泡粒子が漏れ出ないようにダンボール箱を封止した。次いで、内温が70℃に設定された恒温機(乾燥機)内に静置し、60分間経過後取り出して常温まで冷却後、緩衝材を得た。得られた緩衝剤の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0053】
(実施例4)
製造例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を内寸400mm×300mm×300mmのダンボール箱に半分ほど充填し、その上に400mm×300mm×厚み25μmのポリイミドフィルムを配し、その上に150mm×100mm×100mmの木製の模型を置き、残りの空間にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填し発泡粒子が漏れ出ないようにダンボール箱を封止した。次いで、内温が160℃に設定された恒温機(乾燥機)内に静置し、15分間経過後取り出して常温まで冷却後、緩衝材を得た。得られた緩衝剤の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0054】
(比較例1)
内温が50℃に設定された恒温機(乾燥機)内に静置したこと以外は、実施例1と同様にして加熱成形を行ったが、発泡粒子間の空隙が多く、良好な緩衝材は得られなかった。
【0055】
(比較例2)
内温が250℃に設定された恒温機(乾燥機)内に静置したこと以外は、実施例1と同様にして加熱成形を行ったが、収縮していて良好な緩衝材は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物体又はその模型を、それよりも大きな空間を有する容器に入れ、被梱包物体又はその模型と、容器との空間に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、常圧で、且つ熱可塑性樹脂発泡粒子のガラス転移点(Tg)以上且つTg+120℃以下の加工温度Tで加熱成形し、その際の加工温度Tにおける該熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡力Ex[T]が、
ρrel<Ex[T]<2
であることを特徴とする緩衝材の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂発泡粒子がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝材の製造方法。
【請求項3】
緩衝材を製造するのに際し、被梱包物体又はその模型の上及び/又は下に、加工温度Tで溶融しないフィルム又はシートを配して、製造後の緩衝材の分離を容易にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝材の製造方法。

【公開番号】特開2010−17988(P2010−17988A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182505(P2008−182505)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】