説明

縦型熱処理装置

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は縦型熱処理装置に関する。
(従来の技術)
半導体装置の製造工程では、被処理体である半導体ウエハに絶縁膜、化合物半導体薄膜、有機金属薄膜等を形成するために、加熱炉が使用されている。このような加熱炉は、量産性を向上させるために、通常100枚以上のウエハを一度に処理するようになっている。加熱炉には、炉を水平方向に設置する横型炉と、垂直方向に設置する縦型炉とがある。そして、縦型炉が、設置スペースを小さくできるので、注目されている。
縦型炉は、例えば次のように構成されている。
すなわち、縦型炉は、ボートを垂直方向に昇降させるローディング機構を有している。ボートには、多数枚のウエハが所定隔で搭載されている。ローディング機構の上方には、反応炉が設けられている。
縦型炉は、通常、クリーンルーム内に設置されている。クリーンルームは、清浄なエアーを縦型炉に供給してウエハに不純物が付着するのを防止するようになっている。クリーンルームの清浄度を高い状態に縦持させるには、膨大な費用が必要である。そこで、クリーンルーム内の限られたスペースを有効に利用する必要がある。かかる観点から、縦型炉の前面部をクリーンルーム内に臨むように設置し、他の部分を、クリーンルームと隣接する部屋であって、クリーン度の低い部屋内に設置することが提案されている。
しかしながら、清浄エアーの流れは、通常、クリーンルーム内の上から下へ向かうダウンフローになっている。このため、縦型炉が障害となって、炉の下方に位置するローディング機構まで清浄エアーが達し難い。そこで、ローディング機構の設置領域(以下、ローディング領域と記す)に、別個に清浄エアーの送風機構を設けている。この送風機構から、ローディング領域を通過してクリーンルーム内に清浄エアーを送風していた。このため、ローディング領域内の塵等の不純物が、クリーンルーム内に送出される。しかし、クリーンルーム内の清浄エアーの流れは、ダウンフローである。このため、ローディング領域を通過した送風機構からの不純物を含んだエアーと、クリーンルーム内の清浄エアーが、クリーンルームの床部で衝突する。その結果、ローディング領域からクリーンルーム内に送出された不純物は、クリーンルームの床に向けて排除される。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、上述のように構成された縦型炉を備える縦型熱処理装置は、次のような問題を有する。
■ローディング領域内の不純物を除去するために、専用の清浄エアー送風機構を設けると、装置全体が複雑になり大型化する。
■専用の送風機構から送り出す清浄エアーの流量によっては、縦型炉の近傍で乱気流が発生し、クリーンルーム内の縦型炉等の装置に不純物を到達させて悪影響を及ぼす。
かかる問題を解消するために、次のような策が採られている。
すなわち、通常、クリーンルームは、これと隣接する保守等を行なうための保守ルームよりも高い陽圧の雰囲気に設定されている。この雰囲気の圧力差点を利用して、クリーンルーム内に、ダウンフローされた清浄エアーをローディング領域を通過させて、保守ルーム側に導くための流路を形成しておく。
しかし、この場合、クリーンルームと保守ルームの圧力差や、清浄エアー流路の大きさ等によって、ローディング領域に、保守ルーム側の清浄エアーが流れ込み、乱気流等を発生させる。このため、依然、ローディング領域に存在する不純物を確実に除去できず、縦型炉等に悪影響を及ぼす問題があった。
本発明の目的は、小型で被処理体に不純物が付着するのを防止して生産性を向上させることができる縦型熱処理装置を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
本発明は、所定の清浄度の雰囲気を有する第1クリーンルームと、該第1クリーンルームに隣接し、かつ、該第1クリーンルームよりも低い清浄度の雰囲気を有する第2クリーンルームと、該第2クリーンルームと前記第1クリーンルームとを仕切る仕切壁の該第2クリーンルーム側に設けられ、底部に被処理体の出入口を有する熱処理部と、前記出入口の直下に位置し、前記第1クリーンルームとを連通する開口部を有すると共に、前記被処理体の搬出入用の扉を有し、かつ、前記第1クリーンルームから前記第2クリーンルーム側に流出する清浄エアーの流量を調整する機構とを備えたローディング領域とを具備する縦型熱処理装置である。
(作用効果)
本発明の縦型熱処理装置は、第1クリーンルームから第2クリーンルームに向けて流出する清浄エアーの流量を所定値に設定できる調整機構を有している。このため小型で被処理体に不純物が付着するのを防止して生産性を向上させることができるものである。
(実施例)
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
第1図は、本発明の一実施例の縦型熱処理装置の構成を示す説明図である。この縦型熱処理装置は、半導体ウエハをバッチ処理する縦型CVD装置を構成している。図中1は、縦型熱処理炉を構成する二重構造の反応管である。反応管1は、その長手方向を垂直にして設置されている。反応管1は、外管1aと、この外管1aと非接触状態の内管1bとで構成されている。反応管1は、処理ガスと反応し難い材料であって耐熱性を有する例えば石英のようなもので形成されている。反応管1の外周部には、これを囲むようにして例えばコイル状のヒータ7例えば抵抗加熱ヒータが設けられている。
このヒータ7は、交流電源等で構成された加熱機構(図示せず)に接続されている。このヒータ7によって、後述する反応管1内に搬入された多数枚の半導体ウエハ3列を例えば500〜1000℃に均一に加熱するようになっている。ウエハ3の枚数は適宜選択されるが70枚から200枚位が選択される。勿論200枚以上でもよい。
反応管1の下端部は、蓋体10によって開閉自在になっている。また、反応管1の下端部には、排気管9が接続されている。排気管9は、処理ガスを排出可能な図示しない真空ポンプに接続されている。排気管9からの排気量に応じて反応管1内の圧力を所定値に設定できるようになっている。
反応管1の下端部には、内管1bの内部に、所定の処理ガスを供給するためのガス供給管8が1本又は複数本取り付けられている。ガス供給管8は、図示しないマイクロコントローラ等を介してガス供給源に接続されている。ガス供給管8から反応管1内に定められたプログラムにより所定の処理ガスが供給される。供給された処理ガスは、内管1bの下部から上部へと流れ、上部で内管1bと外管1a間を流下し、排気管9から外部に放出される。このような処理ガスの連続した流下状態の中で、半導体ウエハ3に所定の熱処理が施されるようになっている。
蓋体10上には、内管1bの内に収容される保温筒11が設けられている。保温筒11上には、被処理体例えば半導体ウエハ3を搭載したボート4が設置されるようになっている。このボート4上には、通常100〜150枚の半導体ウエハ3が垂直方向に所定間隔を設けて搭載されるようになっている。ボート4は、処理ガスと反応し難い材料であって耐熱性を有する例えば石英のようなもので形成されている。
このように構成された反応管1等により、熱処理部2が構成されている。
蓋体10は、反応管1とほぼ平行に立設された搬送機構5に取り付けられている。すなわち、蓋体10は、搬送機構5を構成するボールネジ5aに沿って昇降し、反応管1の直下のローディング領域6からボート4を反応管1内壁に非接触で搬出入するようになっている。例えば反応管1の管軸とボート4の中心軸が一致するように構成されている。ローディング領域6には、図示しない搬送機構により、ボート4が受け渡しされるようになっている。
このように構成された縦型熱処理装置本体30の動作は、図示しない制御部によって行われるようになっている。
縦型熱処理装置本体30は、第2図に示す如く、その前面部100を清浄度の高い第1のルームである第1クリーンルームに例えばクリーンルーム内に位置させて設置し、かつ、その前面部以外の後部101を比較的清浄度の低い第2のルームである第2クリーンルーム13例えばクリーンルーム内に設置している。第1クリーンルーム12の清浄度は、例えばクラス10程度に設定される。第2クリーンルーム13の清浄度は、例えばクラス100以上に設定される。ここで、清浄度を表す例えばクラス10は、1立方フィート当たりに存在する0.5μm以上のごみの数が、10個以下であることを意味している。
隣接する第1クリーンルーム12と第2クリーンルーム13の境界部であって、縦型熱処理装置本体30の前面部分を含む平面部分には、垂れ壁であるパーティションウォール(仕切壁)14が設けられている。
第1クリーンルーム12の雰囲気圧は、第2クリーンルーム13の雰囲気圧よりも高圧(陽圧)に設定される。この圧力差を利用して、第1クリーンルーム12から、第2クリーンルーム13内に設置された縦型熱処理装置本体30の下部に向けて、ダウンフローの清浄エアー19が流れ、ローディング領域6を通過して、保守ルームである第2クリーンルーム13側に送出されるように構成される。
ここで、縦型熱処理装置本体30の後部101側には、ローディング領域6を通過する清浄エアーの流量を調整する調整機構15が取り付けられている。調整機構15は、例えば第3図に示す構造を有している。
第3図は、第2クリーンルーム13側から第1クリーンルーム12に向かって見た調整機構15を示している。調整機構15は、縦型熱処理装置本体30のローディング領域6と連通する開口部を形成した枠体31を有している。枠体31には、その開口部を開閉するための扉32が蝶番33a,33bによって取り付けられている。すなわち、調整機構15は、ローディング領域6と第2クリーンルーム12を仕切るように設けられた扉32に設けられている。扉32は、例えば縦800mm、横600mmのステンレススチールで形成されている。扉32の両側部には、エア流通口となる開口34が形成されている。開口34は、例えば縦50mm、横5mmのスリットの複数個を縦横所定間隔で扉32の両側部に穿設することにより形成されている。開口34の開口率は、例えば扉32の片面側の表面の面積の約50%に設定されている。上記開口34は縦長配列に限らず横長配列でも円孔でも多角形孔でも何れでもよい。また流出側に流路が所定の方向例えば下方に形成されるフードを設けてもよい。
扉32は、二重構造になっている。すなわち、上述の開口34を有する2枚の扉構成板32a,32bが、摺動自在に重ね合わせられている。一方の扉構成板32aは、上下の両端部に設けられたガイドバー18にガイドされて他方の扉構成板32bに対して例えば15mm程度横方向(幅方向)に移動可能になっている。つまり、2枚の扉構成板32a,32bが、夫々の開口34を衝合させた状態になっている時に、開口率が、扉32の片面側の表面の面積に対して50%になるように設定されている。この状態から、一方の扉構成板32aを他方の扉構成板32bに対してずらすように移動させることにより、開口率を0〜50%の範囲で自在に調節できるようになっている。一方の扉構成板32aの固定は、例えば第4図に示す如く、一方の扉構成板32aの下端部を支持するナット40に固定された止め金具41上の締め付けボルト42を、扉構成板32aに押し付けることにより行われるようになっている。このようにして、この開口率を変化させることにより、第1クリーンルーム12からローディング領域6を通過して第2クリーンルーム13に流れ込む清浄エアーの流量を調整できるようになっている。
このように構成された縦型熱処理装置は、次のようにして半導体ウエハ3に所定の熱処理を施して薄膜を形成するようになっている。
まず、図示しないウエハ移替え装置により半導体ウエハ3をボート4上に積載する。そして、ボート4を図示しないボート搬送装置でローディング領域6に搬送する。搬送されて来たボート4は、保温筒11上に載置される。
次いで、搬送機構5によりボート4を所定量だけ上昇させる。この操作によって反応管1の内壁に接触させることなく、ボート4を反応管1内の予め設定された位置に設置する。この時、反応管1の下端部と蓋体10とを接触させることにより、自動的に全ての半導体ウエハ3を所定位置に位置決めすると共に、反応管1内を気密に封止するようになっている。
次に、反応管1内を例えば0.1〜2Torrに設定するように排気管9を介して図示しない真空ポンプにより雰囲気ガスの排気を行う。また、予めヒータ7に電力を供給し、ヒータ7の加熱温度を例えば500〜1000℃に設定する。
この状態で、ガス供給管8から図示しないマスフローコントローラ等により流量を調節しつつ、処理ガスを内管1bに供給する。処理ガスとしては、例えばSiH4とO2の混合ガスである。
内管1b内に設置された半導体ウエハ3の表面には、下記式に従う反応によって、SiO2膜が形成される。
SiH4+O2→SiO2+2H2↑ また、反応後の処理ガスは、排気管9から外部に排出される。このようなCVD処理の後、処理ガスの供給を停止する。そして反応管1の内部の雰囲気ガスを例えばN2のような不活性ガスと置換する。この操作により反応管1内の圧力を常圧に戻す。
次に、半導体ウエハ3を搭載したボート4を、搬送機構5によって反応管1からローディング領域6に搬出して熱処理を完了する。
而して、上述の熱処理を行うに際して、予めローディング領域6を通過する清浄エアーの流量を調整しておく、すなわち、調整機構15の扉32の開口率を所定の値に設定しておく。この値は、例えば第1クリーンルーム12と第2クリーンルーム13の圧力差や、第1クリーンルーム12でダウンフローされる清浄エアーの量等によって決定することができる。
このようにして、第1クリーンルーム12でダウンフローされる清浄エアー19の所定量を、第2図に示す如く、ローディング領域6を通過して第2クリーンルーム13に導く。
この結果、ローディング領域6に存在する塵等を第1クリーンルーム12からの清浄エアーによって、第2クリーンルーム側に排除することができる。このため、装置を大型化することなく、被処理体への塵等の不純物が付着するのを防止して、歩留まりを向上させることができる。
また、第1クリーンルーム12からの清浄エアーの量を、上述のように決定した範囲内でさらに所定値に設定することにより、熱処理後の半導体ウエハ3の冷却を促進させて、熱歪みの発生を抑えて生産性を向上させることができる。
なお、本発明は、CVD処理用の装置に限定されず、拡散・酸化やアニール・エピタキシャル成長等の熱処理用の装置、或いは、スパッタ・エッチング・イオン注入等の処理装置にも適用できることは勿論である。
また、調整機構15は、2枚の扉構成板で扉32を構成した二重構造の扉を有するものについて説明したが、これに限定されず、要は、第1クリーンルーム12からの清浄エアーの量を調整できるものであれば如何なるものであっても良い。
また、本発明の対象とする被処理体は、半導体ウエハの他にも液晶板等であっても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例の縦型熱処理装置本体の構成を示す説明図、第2図は、第1図の層流状態を示す説明図、第3図は、第1図の縦型熱処理装置の調整機構を示す説明図、第4図は、第1図の調整機構の要部を度す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】所定の清浄度の雰囲気を有する第1のルームと、該第1のルームに隣接し、かつ、該第1のルームよりも低い清浄度の雰囲気を有する第2のルームと、該第2のルームと前記第1のルームとを仕切る仕切壁の該第2のルーム側に設けられ、底部に被処理体の出入口を有する熱処理部と、上記出入口が清浄エアー流の上流側に位置し、前記第1のルームと連通する開口部を有すると共に、前記第1のルームから前記第2のルーム側に流出する清浄エアーの流量を調整する調整機構とを備えたローディング領域とを具備する縦型熱処理装置。
【請求項2】第1のルームの雰囲気圧力は、第2のルームの雰囲気圧力よりも高いものである特許請求の範囲第1項記載の縦型熱処理装置。
【請求項3】調整機構は、第1のルームから第2のルーム側に流出する清浄エアーの流量を調整するための開口であって開口率が可変の開口を有するものである特許請求の範囲第1項記載の縦型熱処理装置。
【請求項4】調整機構は、ローディング領域と第2のルームを仕切るように設けられた扉に設けられており、該扉を構成する二重構造の扉構成板に開口が形成され、扉構成板の位置をずらすことにより開口率を変化させるものである特許請求の範囲第1項記載の縦型熱処理装置。
【請求項5】開口率は、扉構成板の片面の表面面積に対して0〜50%の範囲で可変するものである特許請求の範囲第4項記載の縦型熱処理装置。
【請求項6】開口の形状が、スリット状、矩形状、多角形状、略円形状の何れかである特許請求の範囲第4項記載の縦型熱処理装置。
【請求項7】熱処理部は、縦型熱処理炉で構成されている特許請求の範囲第1項記載の縦型熱処理装置。
【請求項8】縦型熱処理炉は、CVD炉、酸化・拡散炉、アニール炉、エピタキシャル成長炉、スパッタリング炉、エッチング炉、イオン注入炉の何れかを構成する特許請求の範囲第7項記載の縦型熱処理装置。
【請求項9】被処理体は、半導体ウエハ、液晶板の何れかであって、ボート上に多数枚搭載されてローディング領域をへて熱処理部に搬出入されるものである特許請求の範囲第1項記載の縦型熱処理装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2696570号
【登録日】平成9年(1997)9月19日
【発行日】平成10年(1998)1月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−202389
【出願日】平成1年(1989)8月4日
【公開番号】特開平2−138733
【公開日】平成2年(1990)5月28日
【出願人】(999999999)東京エレクトロン株式会社