説明

縦型JFET制限型シリコンカーバイドパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタおよび縦型JFET制限型シリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを製造する方法

【課題】
空乏領域が、pウェルのまわりのn−ドリフト領域中に形成される恐れがある。電流が、空乏領域のまわりで流れるとき、この空乏領域によって、事実上pウェル接合部の深さよりチャネル長が長くなることがある。
【解決手段】
シリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、n型シリコンカーバイドのドリフト層(12)と、ドリフト層に隣接し、第1のn型シリコンカーバイド領域(24)をその中に有した第1のp型シリコンカーバイド領域(20)と、ドリフト層上の酸化物層(28)と、ドリフト層と第1のp型領域の一部分との間に配置されたn型シリコンカーバイド制限領域(26)とを含むことができる。制限領域は、キャリア濃度が、ドリフト層のキャリア濃度より高い。シリコンカーバイドMOSFETデバイスを製造する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスおよび半導体デバイスの製造に関し、より詳細には、シリコンカーバイド(SiC)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)およびそのMOSFETの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、少なくとも部分的に米国海軍研究所(the United States Office of Naval Research)からの契約番号N00014−02−C−0302による援助に基づき行われた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を保有することができる。
【0003】
本出願は、「縦型JFET制限型シリコンカーバイドパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタおよび縦型JFET制限型シリコンカーバイドパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを製造する方法(Vertical JFET Limited Silicon Carbide Power Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistors and Methods of Fabricating Vertical JFET Limited Silicon Carbide Power Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistors)」と題する2002年12月20日出願の米国特許仮出願第60/435,212号に基づき優先権を主張するものである。その開示は、参照によって本明細書に完全に述べられているように、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0004】
高電流、高電圧および低オン抵抗の縦型SiCパワーMOSFETを製造することは、反転層中の電子の表面移動度が小さいため、これまで少なくとも一部で実現不可能であった。最近、いくつかの処理技法が横型MOSFET構造について開発され、それによって表面電子移動度が改善されることになった。しかし、パワーMOSFET構造は、たとえば、p型ドーパントを、たとえばpウェル/pコンタクト/p−接合部終端拡張部(JTE)のインプラントを活性化するために1500℃より高い温度でアニーリングすることを含め、追加の処理を必要とすることがある。そのアニーリングは、その技法を使用して製造されたパワーMOSFETの性能に、有害な影響を与える恐れがある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,506,421号明細書
【特許文献2】米国特許出願第09/834,283号明細書、“Method of N2O Annealing an Oxide Layer on a Silicon Carbide Layer”
【特許文献3】米国特許仮出願第60/237,822号明細書、“Method of N2O Growth of an oxide layer on a Silicon Carbide Layer”2001年5月30日出願
【特許文献4】米国特許出願第09/968,391号明細書、“Method of NO Growth of An Oxide On A Silicon Carbide Layer”2001年10月1日出願
【特許文献5】米国特許出願第10/045,542号明細書、“Method of Fabricating an Oxide Layer on a Silicon Carbide Layer Utilizing an Anneal in a Hydrogen Environment”2001年10月26日出願
【特許文献6】米国特許出願第09/878,442号明細書、“High Voltage, High Temperature Capacitor Structures and Methods of Fabrication”2001年6月11日出願
【特許文献7】米国特許出願第09/911,995号明細書、“Silicon Carbide Power Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistors Having a Shorting Channel and Methods of Fabricating Silicon Carbide Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistors Having a Shorting Channel”2001年7月24日出願
【非特許文献1】A. K. Agarwal, J. B. Casady, L. B. Rowland, W. F. Valek, M. H. White, and C. D. Brandt,“1.1 kV 4H-SiC Power UMOSFET’s”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 18, No. 12, pp. 586-588, December 1997
【非特許文献2】A. K. Agarwal, J. B. Casady, L. B. Rowland, W. F. Valek and C. D. Brandt,“1400 V 4H-SiC Power MOSFETs”, Materials Science Forum Vols. 264-268,pp. 989-992, 1998
【非特許文献3】J. Tan, J. A. Cooper, Jr., and M. R. Melloch, “High-Voltage Accumulation-Layer UMOSFETs in 4H-SiC”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 19, No. 12, pp. 487-489, December 1998
【非特許文献4】J. N. Shenoy, J. A. Cooper and M. R. Melloch, “High-Voltage Double-Implanted Power MOSFET’s in 6H-SiC”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 18, No. 3, pp. 93-95, March 1997
【非特許文献5】J. B. Casady, A. K. Agarwal, L. B. Rowland, W. F. Valek, and C. D. Brandt, “900 V DMOS and 1100 V UMOS 4H-SiC Power FETs”, IEEE Device Research Conference, Ft. Collins, CO, June 23-25, 1997
【非特許文献6】R. Schorner, P. Friedrichs, D. Peters, H. Mitlehner, B. Weis and D. Stephani, “Rugged Power MOSFETs in 6H-SiC with Blocking Capability up to 1800 V”, Materials Science Forum Vols. 338-342, pp. 1295-1298, 2000
【非特許文献7】V. R. Vathulya and M. H. White, “Characterization of Channel Mobility on Implanted SiC to determine Polytype suitability for the Power DIMOS structure”, Electronic Materials Conference, Santa Barbara, CA, June 30-July 2, 1999
【非特許文献8】A. V. Suvorov, L. A. Lipkin, G. M. Johnson, R. Singh and J. W. Palmour, “4H-SiC Self-Aligned Implant-Diffused Structure for Power DMOSFETs”, Materials Science Forum Vols. 338-342, pp. 1275-1278, 2000
【非特許文献9】P. M. Shenoy and B. J. Baliga, “The Planar 6H-SiC ACCUFET: A New High-Voltage Power MOSFET Structure”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 18, No. 12, pp. 589-591, December 1997
【非特許文献10】Ranbir Singh, Sei-Hyung Ryu and John W. Palmour, “High Temperature, High Current, 4H-SiC Accu-DMOSFET”, Materials Science Forum Vols. 338-342, pp. 1271-1274, 2000
【非特許文献11】Y. Wang, C. Weitzel and M. Bhatnagar, “Accumulation-Mode SiC Power MOSFET Design Issues”, Materials Science Forum Vols. 338-342, pp. 1287-1290, 2000
【非特許文献12】A. K. Agarwal, N. S. Saks, S. S. Mani, V. S. Hegde and P. A. Sanger, “Investigation of Lateral RESURF, 6H-SiC MOSFETs”, Materials Science Forum Vols. 338-342, pp. 1307-1310, 2000
【非特許文献13】S. T. Pantelides, “Atomic Scale Engineering of SiC Dielectric Interfaces”, DARPA/MTO High Power and ONR Power Switching MURI Reviews, Rosslyn, VA, August 10-12, 1999
【非特許文献14】V. V. Afanas’ev, M. Bassler, G. Pensl and M. Schulz, “Intrinsic SiC/SiO2Interface States”, Phys. Stat. Sol. (a), Vol. 162, pp. 321-337, 1997
【非特許文献15】S. Sridevan, P. K. McLarty and B. J. Baliga, “On the Presence of Aluminum in Thermally Grown Oxides on 6H-Silicon Carbide”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 17, No. 3, pp. 136-138, March 1996
【非特許文献16】M. A. Capano, S. Ryu, J. A. Cooper, Jr., M. R. Melloch, K. Rottner, S. Karlsson, N. Nordell, A. Powell, and D. E. Walker, Jr., “Surface Roughening in Ion Implanted 4H-Silicon Carbide”, Journal of Electronic Materials, Vol. 28, No. 3, pp. 214-218, March, 1999
【非特許文献17】M.K. Das, J. A. Cooper, Jr., M. R. Melloch, and M. A. Capano, “Inversion Channel Mobility in 4H- and 6H-SiC MOSFETs”, IEEE Semiconductor Interface Specialists Conference, San Diego, CA, December 3-5, 1998
【非特許文献18】Vathulya et al., “A Novel 6H-SiC DMOSFET With Implanted P-Well Spacer”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 20, No. 7, p. 354, July 1999
【非特許文献19】J. P. Xu, P. T. Lai, C. L. Chan, B. Li, and Y. C. Cheng, “Improved Performance and Reliability of N2O-Grown Oxynitride on 6H-SiC”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 21, No. 6, pp. 298-300, June 2000
【非特許文献20】L. A. Lipkin and J. W. Palmour, “Low interface state density oxides on p-type SiC”, Materials Science Forum Vols. 264-268, pp. 853-856, 1998
【非特許文献21】M. K. Das, L. A. Lipkin, J. W. Palmour, G. Y. Chung, J. R. Williams, K. McDonald and L. C. Feldman, “High Mobility 4H-SiC Inversion Mode MOSFETs Using Thermally Grown, NO Annealed SiO2”, IEEE Device Research Conference, Denver, CO, June 19-21, 2000
【非特許文献22】G. Y. Chung, C. C. Tin, J. R. Williams, K. McDonald, R. A. Weller, S. T. Pantelides, L. C. Feldman, M. K. Das, and J. W. Palmour, “Improved Inversion Channel Mobility for 4H-SiC MOSFETs Following High Temperature Anneals in Nitric Oxide”, IEEE Electron Device Letters accepted for publication
【非特許文献23】G. Y. Chung, C. C. Tin, J. R. Williams, K. McDonald, M. Di. Ventra, S. T. Pantelides, L. C. Feldman, and R. A. Weller, “Effect of nitric oxide annealing on the interface trap densities near the band edges in the 4H polytype of silicon carbide”, Applied Physics Letters, Vol. 76, No. 13, pp. 1713-1715, March 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかのシリコンカーバイドのパワーMOSFET構造は、文献に記載されている。たとえば、特許文献1および非特許文献1から12を参照されたい。
【0007】
既存のSiC構造は、一般に、3つのカテゴリ、すなわち(1)トレンチ(Trench)またはUMOSFET、(2)縦型二重インプラントMOSFET(DIMOSFET;Vertical Doubly Implanted MOSFET)、および(3)横型拡散MOSFET(LDMOSFET;Lateral Diffused MOSFET)に分類することができる。これらの構造のうちで、図1に示す縦型DIMOSFET構造は、シリコン技術で使用される拡散(DMOSFET)構造の変形である。通常、pウェルは、Alまたはホウ素がイオン注入され、ソース領域(n+)は、窒素またはリンがイオン注入され、p+領域は、普通Alがイオン注入される。インプラントは、1400℃〜1700℃の温度で活性化される。n+層へのコンタクトは、ニッケル(Ni)から製作されてアニーリングされ、p+層へのコンタクトは、Ni、TiまたはTi/Alから製作される。両方のコンタクトは、高温でアニーリングされる。ゲート誘電体は、通常、熱的に成長させる(熱によるSiO)または低圧化学気相成長(LPCVD)技法を使用して付着され、その後様々な環境でアニーリングされる。堆積された誘電体は、たとえば、SiOまたは酸化物/窒化物/酸化物(ONO)のスタックでよい。
【0008】
伝導帯縁部付近の界面状態では、普通なら自由な電子が反転層から捕捉され、反転層中に比較的わずかな数の自由電子が残りがちである。また捕捉された電子によって、負の帯電状態が界面において形成され、そのクーロン力が自由電子を散乱させることがある。自由電子の数が減り、散乱させられた電子の数が増えると、ソースからドレインへの電流の流れが減少する恐れがあり、それによって電子の有効移動度が低く、オン抵抗が高くなることがある。伝導帯端部縁部の状態の密度が高いのは、いくつかの要素、すなわち(1)カーボンまたはシリコンのダングリング結合、(2)カーボンクラスター、(3)界面において薄いアモルファスシリコン層を形成するSi−Si結合などが関係すると考えられてきた。非特許文献13および14を参照されたい。
【0009】
界面状態の高密度化に加え、反転層の電子の移動度が低いのは、いくつかの他の機構、すなわち(1)Alをドープされたp型のSiCからAlが分離すること、(2)イオン注入された不純物の高温による活性化によって生じた界面の凸凹などが関連するとも考えられてきた。非特許文献15および16を参照されたい。Purdue大学の研究者は、反転層の電子移動度とインプラント活性化温度の間に直接相関があると結論した。その研究によって、インプラント活性化温度がより低くなる(1200℃)と、電子移動度がより高くなり、活性化温度がより高くなる(1400℃)と、電子移動度がより低くなると結論付けられた。非特許文献17を参照されたい。これらの結果は、pウェルへのイオン注入を利用しない平面状MOSFETについて得られた。pウェルのイオン注入された不純物(Alまたはホウ素)には、通常少なくとも1500℃の活性化温度が必要である。
【0010】
DIMOSFETに関するさらなる問題は、デバイスの「JFET」領域に関連する場合がある。図1に示すように、空乏領域が、pウェルのまわりのn−ドリフト領域中に形成される恐れがある。電流が、空乏領域のまわりで流れるとき、この空乏領域によって、事実上pウェル接合部の深さよりチャネル長が長くなることがある。スペーサインプラントをpウェル領域間に導入してこの問題を緩和することが示唆された。非特許文献18を参照されたい。pウェルに形成された空乏領域とn−ドリフト領域の界面が、n−ドリフト領域中に深く延びている場合、このスペーサインプラントは、pウェル領域を超えて延びずに、JFET抵抗をほとんど減少させない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施態様によって、シリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、およびn型シリコンカーバイドのドリフト層と、ドリフト層に隣接し、第1のn型シリコンカーバイド領域をその中に有した第1のp型シリコンカーバイド領域と、ドリフト層上の酸化物層とを有するシリコンカーバイドMOSFETを製造する方法が提供される。このMOSFETは、n型シリコンカーバイドのドリフト層と第1のp型シリコンカーバイド領域の一部分との間に配置されたn型シリコンカーバイド制限領域も有する。いくつかの実施態様では、n型制限領域は、n型シリコンカーバイドのドリフト層のキャリア濃度より高いキャリア濃度を有する。
【0012】
本発明の別の実施態様では、n型シリコンカーバイド制限領域が、ドリフト層と第1のp型シリコンカーバイド領域の底との間に形成される。さらに別の実施態様では、n型制限領域もまた、第1のp型シリコンカーバイド領域の側壁に隣接して形成される。本発明のいくつかの実施態様では、第1のp型領域の底に隣接する制限領域の一部分が、第1のp型領域の側壁に隣接する制限領域の一部分より高いキャリア濃度を有する。
【0013】
本発明の特定の実施態様では、第1のp型シリコンカーバイド領域は、アルミニウムがイオン注入される。
【0014】
本発明の別の実施態様によって、酸化物層上のゲートコンタクトと、第1のn型シリコンカーバイド層上のソースコンタクトと、酸化物層とは反対側のドリフト層上のドレインコンタクトとが提供される。本発明の特定の実施態様では、ゲートコンタクトは、(p型またはn型どちらかの)多結晶シリコンである。他の実施態様では、ゲートコンタクトは、金属である。いくつかの実施態様では、n型シリコンカーバイド基板が、ドリフト層とドレインコンタクトとの間に形成される。
【0015】
本発明のいくつかの実施態様では、n型制限領域が、シリコンカーバイドのエピタキシャル層からn型シリコンカーバイドのドリフト層上に形成される。その実施態様では、第1のp型領域は、シリコンカーバイドのエピタキシャル層中に、しかし貫通することなく形成される。
【0016】
別の実施態様では、n型制限領域は、イオン注入されたn型領域からドリフト層中に形成される。いくつかの実施態様では、n型制限領域は、厚さが、約0.5μmから約1.5μmである。いくつかの実施態様では、n型制限領域は、キャリア濃度が、約1×1015cm−3から約5×1017cm−3である。
【0017】
本発明のさらに他の実施態様では、n型エピタキシャル層が、第1のp型領域および第1のn型領域の一部分の上に形成される。エピタキシャル層は、第1のn型シリコンカーバイド領域および第1のp型シリコンカーバイド領域と酸化物層との間に形成される。
【0018】
いくつかの実施態様では、第2のp型シリコンカーバイド領域が、第1のp型シリコンカーバイド領域内で第1のn型シリコンカーバイド領域に隣接して、形成される。
【0019】
本発明の追加の実施態様では、n型シリコンカーバイドのドリフト層と、p型シリコンカーバイドの第1の領域とを有したシリコンカーバイドのデバイスが提供される。p型シリコンカーバイドの第1の領域は、離間しており、その間にn型シリコンカーバイドの第1の領域を画定する周辺縁部を有する。キャリア濃度がドリフト層のキャリア濃度より高いn型シリコンカーバイドの第2の領域が、p型シリコンカーバイドの第1の領域中に形成され、p型シリコンカーバイドの第1の領域の周辺縁部から離間している。酸化物層が、ドリフト層、n型シリコンカーバイドの第1の領域およびn型シリコンカーバイドの第2の領域の上に形成される。キャリア濃度がドリフト層のキャリア濃度より高いn型シリコンカーバイドの第3の領域が、p型シリコンカーバイドの第1の領域の下でp型シリコンカーバイドの第1の領域とドリフト層との間に形成される。ソースコンタクトが、n型シリコンカーバイドの第2の領域の一部分の上に形成される。ゲートコンタクトが、酸化物層上に形成され、ドレインコンタクトが、酸化物層とは反対側のドリフト層上に形成される。
【0020】
本発明の特定の実施態様では、n型シリコンカーバイドの第3の領域もまた、n型シリコンカーバイドの第1の領域を画定するp型シリコンカーバイドの第1の領域の周辺縁部に隣接して形成される。本発明のいくつかの実施態様では、n型シリコンカーバイドの第1の領域およびn型シリコンカーバイドの第3の領域は、第1のn型シリコンカーバイドのエピタキシャル層からドリフト層上に形成され、p型シリコンカーバイドの第1の領域が、第1のn型シリコンカーバイドのエピタキシャル層中に形成される。本発明の他の実施態様では、n型シリコンカーバイドの第3の領域が、イオン注入されたn型領域からドリフト層中に形成される。
【0021】
本発明のいくつかの実施態様では、n型シリコンカーバイドの第1の領域は、ドリフト層の領域である。他の実施態様では、n型シリコンカーバイドの第1の領域は、キャリア濃度が、ドリフト層のキャリア濃度より高いことがあり、n型シリコンカーバイドの第3の領域のキャリア濃度より低いことがある。
【0022】
本発明のさらに他の実施態様では、シリコンカーバイドのエピタキシャル層が、第1のp型領域およびn型シリコンカーバイドの第1の領域の上に形成される。
【0023】
本発明の他の実施態様では、キャリア濃度がドリフト層より高いn型シリコンカーバイド層が、ドリフト層とドレインコンタクトとの間に形成される。その実施態様では、n型シリコンカーバイド層は、n型シリコンカーバイド基板でよい。
【0024】
他の実施態様では、第2のp型シリコンカーバイド領域が、第1のp型シリコンカーバイド領域内に形成される。
【0025】
本発明のいくつかの実施態様では、n型シリコンカーバイドの第3の領域は、厚さが、約0.5μmから約1.5μmであり、キャリア濃度が、約1×1015cm−3から約5×1017cm−3である。
【0026】
本発明の追加の実施態様では、n型シリコンカーバイドのドリフト層と、離間しているp型シリコンカーバイドのウェル領域と、ウェル領域とドリフト層との間にあるn型シリコンカーバイド制限領域とを有するシリコンカーバイドのデバイスが提供される。特定の実施態様では、n型制限領域は、離間しているpウェル領域間に形成される。いくつかの実施態様では、n型制限領域は、キャリア濃度が、ドリフト層のキャリア濃度より高い。他の実施態様では、n型制限領域は、シリコンカーバイドのエピタキシャル層からドリフト層上に形成され、pウェル領域は、エピタキシャル層中に、しかし貫通することなく形成される。
【0027】
本発明の実施態様によるデバイスを製造する方法も、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のDIMOSFETの断面図である。
【図2A】本発明の実施形態によるSiCのMOSFETの断面図である。
【図2B】本発明の実施形態によるSiCのMOSFETの断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態によるSiCのMOSFETの断面図である。
【図4A】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4B】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4C】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4D】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4E】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4F】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4G】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図4H】本発明の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図5A】本発明の他の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図5B】本発明の他の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図5C】本発明の他の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図5D】本発明の他の実施形態によるMOSFETの製造上の処理工程を示す図である。
【図6A】従来のDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスのオン抵抗対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図6B】従来のDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスの酸化物電界電圧対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図7A】インプラントスペーサを有したDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスのオン抵抗対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図7B】インプラントスペーサを有したDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスの酸化物電界電圧対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図8A】本発明の実施形態によるDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスのオン抵抗対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図8B】本発明の実施形態によるDIMOSFETについて、シミュレートしたデバイスの酸化物電界電圧対pウェル領域間ギャップを示した、シミュレーション結果の図である。
【図9A】インプラントスペーサを有したDIMOSFETについて、実験で得られたI−V曲線を示す図である。
【図9B】本発明の実施形態によるDIMOSFETについて、実験で得られたI−V曲線を示す図である。
【図10A】インプラントスペーサを有したDIMOSFETについて、実験で得られた逆バイアス漏れ電流をプロットした図である。
【図10B】本発明の実施形態によるDIMOSFETについて、実験で得られた逆バイアス漏れ電流をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明の好ましい実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明を以下に十分に述べる。しかし、本発明は、異なる多くの形で実施することができ、本明細書で述べる実施形態に限定されると解釈すべきでなく、むしろこれらの実施形態は、本明細書における開示が詳細で完全なものになり、本発明の範囲が十分当業者に伝わるように、提供するものである。これらの図に示すように、層または領域のサイズは、例示する目的のため、誇張されており、したがって本発明の全体構造を示すことを目的としている。同じ参照番号は、本明細書において同じ要素を示す。層、領域または基板などの要素が、他の要素「上」にあると言及されたとき、それは、直接他の要素上にあり、または介在する要素が存在することもある。これに対し、要素が、「直接」他の要素「上」にあると言及されたとき、介在する要素は、存在しない。
本発明の実施形態によって、シリコンカーバイドMOSFETおよび/またはデバイスのオン抵抗を低下させることができるシリコンカーバイドMOSFETを製造する方法が提供される。本発明者等は、どんな動作理論によっても束縛されないことを望むが、MOSFETのpウェルの下にある空乏領域を縮小することによって、電流経路の長さが短縮され、したがって同じ大きさの従来のMOSFETのオン抵抗よりデバイスのオン抵抗を小さくすることができると考えられる。さらに、JFETギャップ中の空乏領域を縮小し、それによってJFETのギャップを小さくすることによって、デバイス面積を縮小することができる。
【0030】
図2Aに、本発明の実施形態によるMOSFETを示す。図2Aから分かるように、本発明の特定の実施形態では、シリコンカーバイドのわずかにドープされたn−ドリフト層12が、任意選択のシリコンカーバイドのn+層10上に存在する。n−ドリフト層12は、基板またはシリコンカーバイドのエピタキシャル層でよく、たとえば4H多結晶シリコンカーバイドでよい。いくつかの実施形態では、n−ドリフト層12は、キャリア濃度が、約1014cm−3から約5×1016cm−3である。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、ドリフト層12は、厚さが、約5μmから約150μmである。さらに、n+層10は、イオン注入された層または領域、エピタキシャル層あるいは基板でよい。いくつかの実施形態では、n+層は、キャリア濃度が、約1018cm−3から約1021cm−3である。
【0031】
キャリア濃度がより高いn型シリコンカーバイドの領域26が、ドリフト層12上に形成される。領域26は、キャリア濃度が、ドリフト層12のキャリア濃度より高く、pウェル20の底20aとドリフト層12との間にJFET制限領域26aを実装させる。領域26は、エピタキシャル成長またはイオン注入によって形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、領域26は、厚さが、約0.5μmから約1.5μmである。また、領域26は、キャリア濃度が、約1015cm−3から約5×1017cm−3とすることができる。領域26は、キャリア濃度が、一様または一様でないことがある。
【0032】
図2Aに示すように、p型シリコンカーバイドの離間された領域から、領域26中にpウェル20を形成する。pウェル20は、領域26中にイオン注入されて、しかし貫通せずに延び、したがってキャリア濃度がより高いn型シリコンカーバイドの領域26aが、pウェル20の底20aとドリフト層12との間に形成される。特定の実施形態では、pウェル20間にあるギャップ21中の領域26の一部分は、キャリア濃度が、ドリフト層12より高い。本発明の他の実施形態では、pウェル20間にあるギャップ21中の領域26の一部分は、キャリア濃度が、ドリフト層12と同じである。したがって、pウェル20の側壁に隣接する領域26の一部分は、キャリア濃度が、ドリフト層12と同じまたはそれより高いことがあり、一方pウェル20の底20aに隣接する領域26の一部分26aは、キャリア濃度が、ドリフト層12より高い。特定の実施形態では、pウェル20は、キャリア濃度が、約1016cm−3から約1019cm−3である。さらに、pウェル20は、約0.3μmから約1.2μmの接合部の深さを形成することができる。
【0033】
図2Bに、ギャップ21およびpウェル20の下の領域が、異なるキャリア濃度を有する本発明の実施形態のうちの一例を示す。図2Bに示すように、領域26’が、pウェル20の底の下でpウェル20とドリフト層12との間に形成されて、JFET制限領域を形成する。しかし、ドリフト層12は、pウェル20間のギャップ21中に形成される。領域26’は、たとえば、マスクを使用してドリフト層12中にn型領域26’をイオン注入し、ドリフト層12中のpウェル20の深さがドリフト層12中の領域26’の最大深さより小さくなるようにpウェル20を埋め込むことによって、形成することができる。同様に、nウェルをドリフト層12中に形成し、pウェル20をnウェル中に形成することができるはずである。
【0034】
いくつかの実施形態では、pウェル20は、Alをイオン注入し、少なくとも約1500℃の温度でアニーリングされる。しかし、pウェル20の形成に、適切な他のp型ドーパントを利用することができる。pウェル20のドーピングプロフィールは、実質的に一様なプロフィール、逆行プロフィール(深くなるとドーピングが増加する)でよく、あるいはpウェルは、(pウェル20の上にいくらかのn型シリコンカーバイドを有して)全体がイオン注入されてもよい。いくつかの実施形態では、pウェル20は、キャリア濃度が、約1×1016cm−3から約1×1019cm−3であり、領域26中にまたはn−ドリフト層12中に、約0.3μmから約1.2μmまで延びてもよい。様々なp型ドーパントを利用できるが、いくつかの実施形態では、Alが利用される。というのは、1500℃を超える温度でアニーリングしたとき、ホウ素は、数ミクロンにわたり拡散することになる傾向があるからである。したがって、pウェル20間のギャップ(JFET領域21と呼ばれることがある領域)、および/またはpウェル20の深さを正確に制御することが困難になる恐れがある。このギャップが広すぎる場合、デバイスが遮断状態にあるときは、ゲート酸化物の電界が高すぎることになり得る。しかし、ギャップが狭すぎる場合、JFET領域21の抵抗が、非常に高くなることがある。したがって、ギャップは、約1μmから約10μmまでが好ましい。所与のデバイスに利用する個々のギャップは、デバイスの所望の遮断電圧およびオン抵抗に依存することになる。
【0035】
n+シリコンカーバイド領域24および任意選択でp+シリコンカーバイド領域22をpウェル内に配置する。いくつかの実施形態では、n+シリコンカーバイド領域24は、JFET領域21に隣接するpウェル20の縁部から、約0.5μmから約5μmだけ離間している。n+シリコンカーバイド領域24は、ドーピング濃度が、約5×1018cm−3から約1021cm−3でよく、深さが、pウェル20中に約0.1μmから約0.8μmだけ延びることができるが、pウェル20の深さより浅い。適切なn型ドーパントは、リン、窒素または当業者に周知の他のn型ドーパントを含む。任意選択によるp+シリコンカーバイド領域22は、n+シリコンカーバイド領域24に隣接し、pウェル20の縁部から反対側にすることができる。p+シリコンカーバイド領域22は、ドーピング濃度が、約5×1018cm−3から約1021cm−3でよく、深さが、pウェル20中に約0.2μmから約1.2μmだけ延びることができるが、pウェル20の深さより浅い。
【0036】
ゲート酸化物28は、少なくともn+シリコンカーバイド領域24間に延在し、その上にゲートコンタクト32を有する。いくつかの実施形態では、ゲート酸化物28は、NOまたはNOのアニーリングを用いて熱的に成長させた酸化物、または最初の酸化物が後にNOまたはNOのアニーリングを施す熱による酸化物である酸化物/窒化物/酸化物(ONO)のどちらかとすることができる。ゲートコンタクト材料は、適切などんなコンタクト材料でもよい。いくつかの実施形態では、ゲートコンタクト材料は、モリブデンまたはp型多結晶シリコンである。p型多結晶シリコンは、いくつかの実施形態では、仕事関数が高いので、適していることがある。ゲート酸化物28は、厚さが、ゲートコンタクト32の材料の仕事関数に依存する場合がある。しかし、一般に、厚さは、約100Åから約5000Åであることが好ましい。
【0037】
1つまたは複数のソースコンタクト30およびドレインコンタクト34も設ける。ソースコンタクト30は、いくつかの実施形態では、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)またはアルミニウム(Al)、それらの組合せおよび/または適切な他のコンタクト材料から形成され、p+領域22およびn+領域24の両方にオーミック接触するように、約600℃から約1000℃、たとえば825℃の温度でアニーリングされることができる。ドレインコンタクト34は、NiまたはTiあるいはn型シリコンカーバイドに対してオーミック接触するのに適した他の材料でよい。
【0038】
異なるまたは同じコンタクト材料を利用してp+領域22およびn+領域24へ接触することができる。さらに、これらの図には示していないが、1つまたは複数の金属上部層を1つまたは複数のコンタクト上に設けることができる。金属上部層を設けるための技法および材料は、当業者に周知であり、したがってここではこれ以上議論しない。
【0039】
図3に、再成長エピタキシャル層を利用した本発明のさらに代替の実施形態を示す。図3に示すように、pウェル20にイオン注入し、アニーリングした後、薄いシリコンカーバイド層27をpウェル20上に再成長させ、JFET領域中の領域26全体にわたって延在させる。pウェルにイオン注入し、アニーリングした後、pウェル20上に再成長させ、JFET領域中のドリフト層12全体にわたって延在させた再成長エピタキシャル層を含めるように、図2Bに示した実施形態を変更することもできる。シリコンカーバイドのn+領域24を、再成長シリコンカーバイド層27から、および/または再成長させる前に形成することができる。いくつかの実施形態では、再成長シリコンカーバイド層27は、厚さが約0.05μmから約1μmでよい。再成長シリコンカーバイド層27は、n型シリコンカーバイドとすることができる。いくつかの実施形態では、再成長シリコンカーバイド層27は、ドーピング濃度が、約5×1014cm−3から約5×1017cm−3である。
【0040】
図3からさらに分かるように、再成長シリコンカーバイド層27があるので、シリコンカーバイド層27を貫通してコンタクトウィンドウを設けて、任意選択によるp+領域22へのコンタクト30’、またはp+領域22が存在しない場合、pウェル20へのコンタクト30’を形成する。コンタクト30’は、上記で述べたように、オーミック接触するのに適したどんな材料製とすることもできる。
【0041】
図2A、2Bおよび3は、本発明による実施形態を離散デバイスとして示すが、当業者が理解するように、図2A、2Bおよび3は、複数のセルを有したデバイスの単位セルと見なすことができる。したがって、たとえば、(図2A、2Bおよび3に垂直軸として示した)デバイスの中心軸に沿ってデバイスを分割し、図2A、2Bおよび3に示したデバイスの周辺部の軸(図2A、2Bおよび3に示したデバイスの垂直縁部)のまわりで分割したデバイスを回転することによって図2A、2Bおよび3に示されるデバイス中に、追加の単位セルを組み込むことができる。したがって、本発明の実施形態は、図2A、2Bおよび3に示したデバイスなどのデバイス、ならびに図2A、2Bおよび3に示したJFET制限領域を組み込んだ複数の単位セルを有したデバイスを含む。
【0042】
ここで、エピタキシャル層から形成されたJFET制限領域を有した、本発明の実施形態によるデバイスの製造について、図4Aから4Hおよび図5Aから5Dを参照して、説明する。当業者が、本開示に照らして理解することになるように、イオン注入によって設けられたJFET制限領域を有した本発明の実施形態は、本明細書で述べた工程を変更し、上述したようなイオン注入領域を設けることによって、実施することができる。
【0043】
図4Aに示すように、n型シリコンカーバイドエピタキシャル層26をドリフト層12上に形成する。n型エピタキシャル層26は、厚さおよびドーピングレベルが上述したものになるように形成することができる。図4Bに示すように、n型エピタキシャル層26上に、マスク100を形成してパターン形成する。n型エピタキシャル層26中に不純物をイオン注入し、pウェルを形成する。埋め込む不純物は、上述した深さまでイオン注入されて、活性化されたとき、所望のキャリア濃度を有する。あるいは、ドリフト層12は、n+シリコンカーバイド基板上に設けることができる。その実施形態では、以下に述べるn+層が、基板から形成される。
【0044】
図4Cに示すように、マスク100を除去し、マスク104を形成してパターン形成し、マスク104を利用してn型不純物をイオン注入し、n+領域24を設ける。マスク104は、pウェル20の周辺部とn+領域24との間に、チャネル26を短絡するチャネル長を画定する所望の間隔を設けるように形成される。適切なn型不純物は、窒素およびリンを含む。さらに、不純物を埋め込むことにより、本明細書で述べるn+領域24の寸法およびキャリア濃度を得ることができる。
【0045】
図4Dに、任意選択によるp+領域の形成を示す。マスク104を除去し、マスク106を形成してパターン形成し、マスク106を利用してp型不純物を埋め込んで、p+領域22を形成する。p型不純物を埋め込むことにより、本明細書で述べるp+領域22の寸法およびキャリア濃度を得ることができる。いくつかの実施形態では、p型不純物は、アルミニウムであるが、適切な他のp型不純物も利用することができる。
【0046】
図4Eに、マスク106の除去、ならびにn+層10の形成を示す。n+層10は、裏面で基板中にn型不純物を埋め込むことによって形成でき、あるいはエピタキシャル層または基板自体でもよく、図4Aに先立って形成することができる。その構造は、約1200℃から約1800℃の温度において約30秒から約24時間の間アニーリングし、イオン注入されたp型およびn型不純物を活性化する。任意選択で、構造は、SiOやSiなどの誘電層で覆い、アニーリング中その構造を保護することができる。あるいは、ゲート酸化物が形成後アリーリングされて、SiC/SiO界面が改善される実施形態では、その不純物の活性化を、そのアニーリングによって行うことができる。
【0047】
図4Fに、ゲート酸化物28の形成を示す。ゲート酸化物は、熱的に成長させることができ、窒化酸化物でもよく、および/または他の酸化物でもよい。窒化酸化物は、適切などんなゲート酸化物でもよいが、いくつかの実施形態では、SiO、酸窒化物またはONOが使用される。ゲート酸化物またはONOゲート誘電体の最初の酸化物の形成後に、SiC/酸化物界面における欠陥密度を低減するためにNOまたはNO中でアニリーリングする場合がある。特定の実施形態では、ゲート酸化物は、熱的成長または堆積のどちらかによって形成され、次に、約1100℃より高い温度であり、かつ流速が約11秒から約45秒の最初のNOの滞留時間をもたらすことができる約2SLMから約8SLMであるNO雰囲気中においてアニーリングされる。シリコンカーバイド上の酸化物層の、そのような形成およびアニーリングは、同一出願人による特許文献2、3、4および/または5に記載されており、それらの特許出願は、参照によって本明細書に完全に記載されているように、本明細書に組み込まれるものとする。
【0048】
さらに、NO成長させた酸化物も、非特許文献19に述べられているように使用することができる。非特許文献20に記載の技法も使用することができる。あるいは、熱的に成長させた酸化物の場合、非特許文献21、22および23に記載されているように、熱的に成長させたSiO層にその後のNOアニーリングを施して、界面トラップ密度を低減することができる。特許文献6に記載されているように、酸窒化物を設けることができ、この特許出願は、参照によってあたかも本明細書に完全に述べられているように、本明細書に組み込まれるものとする。
【0049】
図4Gに、ゲートコンタクト32の形成を示す。上述したように、ゲートコンタクト32は、p型多結晶シリコンおよび/または適切な他のコンタクト材料でよく、当業者に周知の技法を使用して形成し、パターン形成することができる。あるいは、図4Fの酸化物28およびゲートコンタクト32を一緒に形成しパターン形成してもよい。最後に、図4Hに、蒸着法、スパッタリングまたは当業者に周知の他の技法によって形成できるソースコンタクト30およびドレインコンタクト34の形成をそれぞれ示す。いくつかの実施形態では、ソースコンタクト30およびドレインコンタクト34は、形成後約825℃でアニーリングして、オーミック接触の品質を向上させるニッケルである。
【0050】
図5Aから5Dに、再成長エピタキシャル層を使用する本発明の代替形態によるデバイスの製造上の工程を示す。このデバイスの製造工程は、図4Aから4Eを参照して上述した工程と同じであり、図5Aに示した工程を継続する。図5Aに示すように、図4Eの構造上にn型エピタキシャル層27を形成する。その成長は、インプラントを活性化するためのアニーリングの前後に実施することができる。図5Bに示すように、エピタキシャル層27は、パターン形成されてイオン注入領域24間に延在する。図5Bに、ゲート酸化物28の形成も示す。いくつかの実施形態では、ゲート酸化物28は、熱的に成長させ、窒化酸化物とすることができる。窒化酸化物は、適切などんなゲート酸化物でよいが、SiO、酸窒化物またはONOが好ましいことがある。ゲート酸化物の形成は、図4Fを参照して上記で述べたように実行することができる。
【0051】
図5Cに、ソースコンタクト30’の形成を示す。図5Cに示すように、p+領域22および/またはn+領域24の位置に対応して、ウィンドウをゲート酸化物28中に開ける。次に、コンタクト30’をウィンドウ中に形成する。図5Dに、ゲートコンタクト32およびソースコンタクト30’の形成を示す。あるいは、図5Dの酸化物28およびゲートコンタクト32を一緒に形成することができる。したがって、ゲートコンタクトは、ソースコンタクト用のウィンドウを開ける前に形成し、パターン形成することができる。上述したように、ゲートコンタクト32は、p型多結晶シリコンまたは適切な他のコンタクト材料でよく、当業者に周知な技法を使用して形成し、パターン形成することができる。ソースコンタクト30’は、噴霧堆積法、スパッタリングまたは当業者に周知の他の技法によって形成することができる。最後に、図5Dに、噴霧堆積法、スパッタリングまたは当業者に周知の他の技法によって形成できる、ドレインコンタクト34の形成も示す。いくつかの実施形態では、ソースコンタクト30’およびドレインコンタクト34は、オーミック性接触の品質を向上させるために、形成後、約600℃から約1000℃、たとえば約825℃の温度でアニーリングされるニッケルである。
【0052】
本明細書で述べる実施形態に加えて、JFET制限領域の実施形態は、特許文献7に記載のようにDMOSFETの形でも実施することができ、この特許出願は、参照によって本明細書に完全に記載されているように本明細書に組み込まれるものとする。
【0053】
本発明の実施形態について特定のシーケンスの工程を参照して述べてきたが、当業者なら理解するように、このシーケンス内のいくつかの工程は、本発明の教示の利益を受けて組み直すことができる。たとえば、本発明の特定の実施形態では、n+領域24およびp+領域22は、その形成を逆にすることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載するシーケンスの工程に厳密に限定されると解釈すべきでない。
【0054】
図6Aから8Bに、オン抵抗対JFETギャップ間隔または酸化物電界強度対JFETギャップ間隔を示す、様々なDMOSFET構造についての2Dシミュレーション結果を示す。図6Aおよび6Bに、ドリフト層のキャリア濃度が6×1014cm−3であり、ドリフト層の厚さが、115μmであり、ドリフト層中に0.75μm延びたpウェルの幅が、10μmである、従来のDMOSFETについてのシミュレーション結果を示す。図7Aおよび7Bに、ドリフト層のキャリア濃度が6×1014cm−3であり、ドリフト層の厚さが115μmであり、ドリフト層中に0.75μm延びたpウェルの幅が10μmであり、ドリフト層中に0.75μm延びたインプラントスペーサのキャリア濃度が5×1015cm−3である、DMOSFETについてのシミュレーション結果を示す。図8Aおよび8Bに、ドリフト層のキャリア濃度が6×1014cm−3であり、ドリフト層の厚さが115μmであり、厚さが1.75μmであって、キャリア濃度が5×1015cm−3であるエピタキシャル層中に0.75μm延びたpウェルの幅が10μmである、本発明の実施形態によるDMOSFETについてのシミュレーション結果を示す。図6Aから8Bに示すように、本発明の実施形態によって、所与の最大酸化物電界強度ならびに低減されたオン抵抗を得るために、より狭いJFETギャップを提供することができる。
【0055】
図9Aに、本発明の実施形態によるJFET制限領域がないDMOSFETについての測定したI−V曲線を示す。図9Bに、本発明の実施形態によるJFET制限領域を有したDMOSFETについての測定したI−V曲線を示す。図9Aおよび9Bから分かるように、測定したオン抵抗は、266mΩ‐cmから189mΩ‐cmに低減されている。さらに、図10Aに、本発明の実施形態によるJFET制限領域がないDMOSFETについての測定したドレイン漏れ電流曲線を示す。図10Bに、本発明の実施形態によるJFET制限領域を有したDMOSFETについての測定したドレイン漏れ電流曲線を示す。図10Aおよび10Bに示すように、両方のデバイスは、絶縁破壊電圧が、3150Vより大きい。
【0056】
図面および明細書では、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示し、具体的な用語を使用しているが、それらの用語は、総称的で説明的な意味だけで使用しており、限定する目的では使用していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のシリコンカーバイドのドリフト層と、
前記ドリフト層に隣接し、離間した、第2の導電型の複数のシリコンカーバイドウェル領域と、
前記複数のシリコンカーバイドウェル領域と前記ドリフト層との間に配置された第1導電型のシリコンカーバイド制限領域であって、該制限領域は前記複数のウェル領域のそれぞれの底を横方向に沿って延びた第1の部分と、前記複数のウェル領域のそれぞれの側面に沿って延びた第2の部分とを含み、前記制限領域の第1の部分は前記ウェル領域の周辺縁部まで延び、前記制限領域の第2の部分よりも高いキャリア濃度を有している
ことを特徴とするシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記制限領域の第1の部分と第2の部分が、前記ドリフト層よりも高いキャリア濃度を有していることを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記制限領域の第1の部分は、厚さが約0.5μmから約1.5μmであり、キャリア濃度が、約1×1015cm−3から約5×1017cm−3であることを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記制限領域は、前記ドリフト層上にシリコンカーバイドのエピタキシャル層を含むことを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記ウェル領域は、前記シリコンカーバイドのエピタキシャル層中に配置されるが、前記シリコンカーバイドのエピタキシャル層を貫通しないことを特徴とする請求項4に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記第1導電型がn型であり、前記第2導電型がp型であることを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記制限領域は、前記ドリフト層中のイオン注入されたn型領域を含むことを特徴とする請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記p型ウェル領域は、前記ドリフト層中のアルミニウムがイオン注入された領域を含むことを特徴とする請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記複数のp型シリコンカーバイドのウェル領域のそれぞれの中に、n型シリコンカーバイド領域をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記ドリフト層、前記複数のウェル領域、前記それぞれのn型シリコンカーバイド領域の上の酸化物層と、
該酸化物層上のゲートコンタクトと、
前記酸化物層とは反対側の、前記それぞれのn型シリコンカーバイド領域の上のソースコンタクトと、
前記酸化物層とは反対側の、前記ドリフト層上のドレインコンタクトと
をさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載のトランジスタ。
【請求項11】
前記複数のウェル領域および前記複数のウェル領域の中にある前記それぞれのn型領域の部分の上にあるn型エピタキシャル層をさらに備え、該n型エピタキシャル層は前記ウェル領域と前記酸化物層との間に配置されたたことを特徴とする請求項10に記載のトランジスタ。
【請求項12】
前記ゲートコンタクトは多結晶シリコンまたは金属を含むことを特徴とする請求項10に記載のトランジスタ。
【請求項13】
前記ドリフト層と前記ドレインコンタクトとの間に配置されたn型シリコンカーバイド基板をさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載のトランジスタ。
【請求項14】
前記複数のウェル領域内に前記n型シリコンカーバイド領域に隣接して配置されたそれぞれのp型シリコンカーバイド領域と、
前記それぞれのp型シリコンカーバイド領域の上に延長したソースコンタクトと
をさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載のトランジスタ。
【請求項15】
n型のシリコンカーバイドのドリフト層と、
前記ドリフト層上の第1のp型シリコンカーバイド領域と、
該第1のp型シリコンカーバイド領域内の第1のn型シリコンカーバイド領域と、
前記第1のp型シリコンカーバイド領域と前記ドリフト層との間に配置されたn型のシリコンカーバイドの制限領域であって、該制限領域は前記第1のp型シリコンカーバイド領域の下に沿ってその周辺縁部まで延びた横方向の部分と、前記第1のp型シリコンカーバイド領域の側面に沿って延びた縦方向の部分とを含み、前記制限領域の前記縦方向の部分のキャリア濃度は前記ドリフト層のキャリア濃度よりも高く、前記制限領域の前記横方向の部分のキャリア濃度よりも低い、
ことを特徴とするシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。
【請求項16】
前記第1のp型シリコンカーバイド領域は、前記ドリフト層中のアルミニウムがイオン注入された領域を含むことを特徴とする請求項15に記載のシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。
【請求項17】
前記制限領域は、前記ドリフト層中のイオン注入されたn型領域を含み、前記第1のp型シリコンカーバイド領域の深さは前記制限領域の深さよりも浅いことを特徴とする請求項16に記載のシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。
【請求項18】
前記制限領域は、前記ドリフト層上のシリコンカーバイドのエピタキシャル層を含み、前記第1のp型シリコンカーバイド領域は前記シリコンカーバイドのエピタキシャル層中に配置されるが、前記シリコンカーバイドのエピタキシャル層を貫通しないことを特徴とする請求項16に記載のシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。
【請求項19】
前記第1のp型シリコンカーバイドの領域の上、および第1のn型シリコンカーバイド領域の部分の上にn型エピタキシャル層をさらに備え、該n型エピタキシャル層は、前記第1のp型シリコンカーバイドの領域と酸化物層の間に配置されることを特徴とする請求項15に記載のシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。
【請求項20】
前記ドリフト層、前記第1のp型シリコンカーバイド領域および前記第1のn型シリコンカーバイド領域の上の酸化物層と、
該酸化物層上のゲートコンタクトと、
前記第1のn型シリコンカーバイド領域の上のソースコンタクトと、
前記酸化物層とは反対側の前記ドリフト層上のドレインコンタクトと
をさらに備えたことを特徴とする請求項15に記載のシリコンカーバイド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ単位セル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2013−102245(P2013−102245A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−44370(P2013−44370)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2004−565192(P2004−565192)の分割
【原出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.