説明

縦支持部を有するフランジを備えた自動車のためのルーフ構造

本発明は、自動車(8)のためのルーフ構造に関し、当該ルーフ構造は、ルーフを支持するルーフフレームを備え、当該ルーフフレームは、例えばパノラマ式ルーフ、スライディングルーフ等の様々なルーフモジュールを収容するのに適している。本発明によるルーフ構造のルーフフレーム(6)は、ルーフの中心側を向いている、周囲フランジ(7)を備える。フランジ(7)はさらに、自動車の側部側において、縦支持部(5)を有するように形成され、縦支持部(5)は、ルーフフレームに対して並行に、ルーフフレームの長さにわたって、フランジの関連する自由端から車両のルーフの中心側の方向に延在する。ここで、フランジ(7)及び支持部(5)は、本発明によれば一体的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載された、自動車のためのルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の様々なルーフ構造を備える自動車が知られている。例えば、古典的な閉鎖型の板金ルーフを有する自動車の他に、摺動式ルーフ、又はいわゆるパノラマタイプのパノラマ式ルーフを有する自動車も存在し、それらのルーフにおいては、面積の広いガラスパネルが自動車のルーフとして使用される。
【0003】
使用される様々なルーフ構造は、それぞれの自動車の種類に対して同一のタイプのルーフフレーム基礎構造に基づいている。また、従来から既知である車体は、古典的な態様では、少なくとも2つのAピラー、Bピラー及びCピラーを備え、ピラーは、自動車の長手(縦)方向に延在する2つの構造要素、及びルーフを支持するフレームに接続され、様々なルーフモジュールが、これらのルーフを支持するフレームに設置される。このような構造によって、購入者又は客によって選ばれる任意選択のルーフ構造を比較的容易に変更することが可能である。
【0004】
最近では、ステーションワゴン又はバンの購入者は、通常の板金ルーフ又は一体化されているサンルーフを有する板金ルーフを有するステーションワゴン又はバンの代わりに、高度な快適さに対する意識の向上により、パノラマ式ルーフを有するステーションワゴン又はバンを選ぶ。
【0005】
「板金ルーフモジュール」を「パノラマ式ルーフモジュール」によって代替する、本出願人によって説明されるルーフ構造を前提とすると、パノラマ式のガラスは、連続して取り囲まれている追加ルーフ又は取り付け枠の上に置かれる。本出願人のそのようなルーフモジュールの可能な実施の形態は、先行するいまだに開示されていない特許出願であるドイツ特許第103 55 656.7号に記載されている。
【0006】
さらに、通常のルーフ構造においては、自動車のルーフ領域にルーフ溝を備える。このルーフ溝は、ルーフの前方領域において、サイドパネルのルーフ溝の側壁に突起又はわずかな隆起(リッジ)を有し、当該隆起は、金属性ルーフ板の延性のために組み立ての際に必要であり、それによって、ルーフが引っぱられた際にルーフが引き裂かれるのを防止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来より既知であるルーフ構造において問題なのは、これらのルーフ構造において支持面としての役割を果たすフランジにおいては、外側から内側へ向けられていて自由に使用できる長さは、パノラマ式ガラスを確実に取り付けるのに十分な寸法ではなく、さらに、支持フランジは、パノラマ式ガラスと周囲ルーフフレームとが基本的に平坦な面を形成しており、すなわち互いに位置合わせするのに利用される必要な高さを有しないということである。
【0008】
さらに、既知のルーフ構造が示す問題は、普及品として利用可能なルーフ溝はパネルを接続するのに使用できず、これは、ルーフ溝の構成がルーフ支持体と通常のルーフ構造のルーフエッジの高さとに適応しているためであるということにある。
【0009】
さらに、サイドパネルのルーフ溝内の突起によってパネルを接続するのは不可能である。
【0010】
したがってこれまでは、支持面は、必要であれば付加的に対応して適合される必要があり、通常は、追加の周囲フレームが使用され、当該追加フレームは、支持フランジ及び接続フランジとして自動車のボディシェル内に溶接固定される。ここで、この追加フレームは、自動車のAピラーから側面のルーフフレームへと延在する。
【0011】
しかしここで、付加的に実施されなければならない追加の溶接工程は、追加フレームをルーフ構造内に組み込むために、高い加工費用を伴い、これによってまた、自動車の製造コスト、及びひいては購入に必要なコストが高くなる。
【0012】
したがって、本発明の課題は、上述したような種類の従来のルーフ構造を改良することであり、その際に、パノラマ式ガラスを容易に且つコストをかけずにルーフ構造に一体化することが可能になり、このために付加的に改造又は組み込みを自動車のルーフフレームに行う必要がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1の特徴を有するルーフ構造によって解決される。
【0014】
ここで先ず、自動車のためのルーフ構造が提案され、当該ルーフ構造は、ルーフを支持するルーフフレームを備え、当該ルーフフレームは、例えばパノラマ式ルーフ等の様々なルーフモジュールを収容するのに適している。
【0015】
このために、ルーフ構造のルーフフレームは、それぞれルーフの中心側に向けられている、周囲フランジを備える。自動車の縦(長手)方向において、フランジは、自動車の各側部側にルーフモジュールを支持するための縦(長手方向)支持部を備え、当該縦支持部は、ルーフフレームの長さにわたって、且つルーフフレームに対して並行に、関連するフランジの自由端から自動車のルーフの中心側の方向に延在する。
【0016】
ここで、この縦支持部は、有利な態様では、フランジと、ひいてはルーフモジュールを支持するために使用可能な支持面とを伸ばす。さらに、フランジと関連する縦支持部とは一体的に形成される。
【0017】
したがって、ルーフ構造が、有利には、パノラマ式ガラス又は対応する他のルーフモジュールのために一定の支持面を形成することが可能である。
【0018】
ここで特に有利には、本発明による縦支持部は、ルーフフレームのフランジを自動車のルーフの中心側の方向に伸ばし、これによって、ルーフモジュールを支持する自由に使用可能な支持面がかなり拡張する。ここで、特に有利なのは、この延伸は車体の製造において容易に取り込むことができ、追加の支持面を導入する付加的な作業工程を不要にし、これは、本発明による構成が既に、基本的な自動車(Basisfahrzeug: basic vehicle)において形成されているためであるということである。
【0019】
ここで、この一定の支持面は対応する面積の広いガラスルーフの使用を可能にし、その結果、広く自由に見渡すことのできる面が存在するようになり、当該面によって、運転手及びおそらくは同乗者が感じる快適さは劇的に向上し、また空間をよりよく感じることができるようになる。
【0020】
さらに、本発明による一体的に実施されるルーフ構造においては、追加の溶接固定フレーム又は取り付け枠はもはや必要なく、製造のための作業費用は低減し、したがって、コストが低減する。
【0021】
付加的に溶接固定される取り付け枠を放棄することは、同時に、製造中に様々なルーフモジュールを導入するためのこれまでの解決策において発生する、多くの様々なボディシェルの数を減らし、したがって、最終的に生産率を上げることができるということを意味する。
【0022】
本発明によるルーフ構造のさらに有利なさらなる形成は、従属項の特徴から得られる。
【0023】
したがって、支持部は、実質的に階段状に形成することができ、これによって、支持部によるフランジの延伸に加えて、高さの増大を自動車の高さ方向に形成する。したがって、有利には、様々な高さプロファイルを有する様々なルーフモジュールを自動車に組み込むことができ、この際に、追加の取り付け具又は追加フレームの溶接固定を要することなく、ルーフモジュールの幾何特性によって生じる高さの違いを調整することが可能である。
【0024】
さらに、フランジが引き上げられる所定の高さは、使用されるルーフモジュールが取り囲むルーフフレームと位置合わせされて最終的に取り付けられる高さに対応する。したがって、有利には、パノラマ式ガラスも、通常の板金ルーフモジュールも、車体のルーフ面と位置合わせされて最終的に取り付けられることができ、これによって、自動車の経済性に悪影響を及ぼす空気抵抗の上昇と、騒音発生とにつながる恐れのある大気乱流(Luftverwirbelung: air turbulence)を低減することができる。
【0025】
さらに、横支持部は、ルーフの前方部分内で自動車のAピラーの横方向に伸びる接続要素によって形成されることができ、後方部分内では、さらなる横支持部が、横方向に伸びる内側のルーフフレームによって形成されることができる。ここで、この構成は、有利には、パノラマ式ガラス又は対応する他のルーフモジュールのための、支持部によって実現される一定の支持面を提供し、その結果、パノラマ式ルーフ又は他のルーフモジュールを完全に取り囲んで取り付けることができる。さらに、自動車内に既に存在し、横方向に伸びるルーフ要素を使用することによって、製造プロセスの簡易化を達成することができる。
【0026】
上述した本発明を、以下で、例示的な実施形態に基づいて図面を参照してより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、パノラマ式ルーフを有する自動車の斜視図を示す。ここで、図1において示される自動車8は、ルーフフレームを有するルーフ構造を備え、ルーフフレームは、ルーフモジュールを取り付けるための周囲支持体を備える。ここで、該周囲支持体は、2つの縦(長手)方向支持部5と、2つの横(短手)方向支持部2及び3とから成る。
【0028】
ここで、横支持部2は、自動車のルーフの前方領域内で、Aピラー1に対して横方向に伸びる接続要素2によって形成され、横支持部3は、自動車のルーフの後方領域内で、横方向に伸びる内側のルーフフレーム3によって形成される。
【0029】
さらに、側部において自動車の縦方向に沿って伸びる縦支持部5は、自動車のリアエンドから沿うようにしてAピラー1まで延在する。
【0030】
図2において、ルーフ構造の拡大詳細図が、図1に描かれている線A−Aに沿う断面で示されている。ここで図2から、ルーフフレーム6は、自動車の中心側を向いているフランジ7を備え、当該フランジ7に、階段状に形成されている支持部5が設けられていることが見て取れる。ここで、支持部5を階段状に形成することによって、所定の高さまでフランジの位置を自動車の高さ方向に増大させることができ、例えば、フランジは10mm〜50mmの範囲内で高さ方向に増大させることができる。この所定の高さにおいて、支持部5は、内側でルーフ溝の突起に接して、ルーフ溝の突起上で且つルーフ溝と平行に伸びる。
【0031】
図2から見て取れるように、フランジ7は、当該支持部によって、長さを約1.5倍〜2.5倍まで伸ばされる。断面においては、この延伸は、大抵の場合では、フランジの元の寸法の2倍の延伸に相当する。
【0032】
図2に示される実施形態においては、支持部5によるフランジ7の拡張は、15mm〜30mmの範囲内の延伸に相当する。代替的に、拡張はまた、それぞれの自動車に応じて10mm〜60mmの範囲内にある。
【0033】
図3は、典型的な板金ルーフモジュール41を有する、図2のルーフ構造の詳細図を示し、板金ルーフモジュール41は、階段状に形成されている支持部5の上にあり、フランジ7上をルーフフレーム6の縁にまで延在する。
【0034】
板金ルーフモジュール41は、この実施形態においては、接着物質9を用いてルーフフレーム6の支持部5と接着される。板金ルーフモジュール41を使用する際、代替的に、モジュール41が、自動車の幅方向に拡大することによって、フランジ7に形成される支持部5のみでなく、フランジ7と直接接着することも可能である。
【0035】
図4において、図2の詳細図の代替の一実施形態が示され、その実施形態においては、パノラマ式ルーフモジュール42が自動車のルーフとして使用される。
【0036】
ここで、パノラマ式ルーフモジュール42のガラスパネルは専ら、フランジ7に形成されている支持部5の上にある。図3の板金ルーフモジュールのように、パノラマ式ルーフモジュール42も、ルーフフレーム6と接着する。ここで、パノラマ式ルーフモジュール42のルーフフレーム6との接着は、パノラマ式ルーフモジュール42が接着物質9を用いて支持部5と接着するように行われる。
【0037】
本発明の自動車のためのルーフ構造の上述した好ましい実施形態の他に、当業者は、提案される代替の実施形態に基づいて、本発明の本質的な課題を解決するためのさらなる可能性を得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】パノラマ式ルーフを有する自動車の斜視図である。
【図2】本発明によるルーフ構造の断面の詳細図である。
【図3】従来の板金ルーフを有する図2のルーフ構造の詳細図である。
【図4】パノラマ式ルーフを有する図2のルーフ構造の詳細図である。
【符号の説明】
【0039】
1 Aピラー
2 前方の横支持部
3 横方向に伸びる内側のルーフフレーム
5 支持部
6 ルーフフレーム
7 フランジ
8 自動車
41 板金ルーフモジュール
42 パノラマ式ルーフモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のためのルーフ構造であって、ルーフを支持するルーフフレーム(6)を備え、該ルーフフレーム(6)は、パノラマ式ルーフ、スライディングルーフ等の様々なルーフモジュール(41、42)を収容するのに適しており、前記ルーフフレーム(6)には、それぞれルーフの中心側に向けられているフランジ(7)が形成され、該フランジ(7)は、自動車の長手方向において、自動車の各側部側において、ルーフモジュール(41、42)を支持する縦支持部(5)を備えるように形成されていて、該縦支持部(5)は、前記ルーフフレーム(6)の長さにわたって、且つ該ルーフフレーム(6)に対して並行に、前記フランジ(7)の自由端から自動車のルーフの中心側の方向に延在し、該フランジ(7)と関連する前記縦支持部(5)とは一体的に形成されることを特徴とする、自動車のためのルーフ構造。
【請求項2】
前記縦支持部(5)は、階段状に形成され、支持面を所定の高さで提供することを特徴とする、請求項1に記載の自動車のためのルーフ構造。
【請求項3】
前記所定の高さは、自動車の高さ方向において、使用される前記ルーフモジュール(41、42)を取り囲む前記ルーフフレーム(6)と位置合わせされて最終的に取り付けられる高さに相当することを特徴とする、請求項2に記載の自動車のためのルーフ構造。
【請求項4】
横支持部(2)が、自動車の前方領域内でAピラー(1)の横方向に伸びる接続要素によって形成され、もう1つの横支持部が、自動車の後方領域内で横方向に伸びる内側のルーフフレーム(3)によって形成されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の自動車のためのルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535731(P2008−535731A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505783(P2008−505783)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003182
【国際公開番号】WO2006/108569
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506425295)ジーエム グローバル テクノロジー オペレーションズ,インク. (22)
【Fターム(参考)】