説明

繊維サイズ、サイズを塗布した補強材、及び係る補強材で補強された製品

繊維−サイズ組成物は、修飾ポリオレフィン、親水性カップリング剤、及び下記の少なくとも一つを備えたエンハンサを含んでいる:フッ素含有化合物、疎水性カップリング剤、環式脂肪酸、又は少なくとも一つの脂肪酸が二以上の酸基を有する少なくとも二つの飽和脂肪酸。該組成物をサイズ塗布された補強繊維材料が複合材製品を形成するために使用されるとき、該製品は強度及び色のような改善された特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い強度、並びに加水分解及び洗浄剤分解を含む化学分解に対する高い抵抗性等の望ましい性質を有する、複合材の製造に使用される繊維−サイズ組成物に関する。本発明の繊維−サイズ組成物はまた、より中性又は自然な色の複合材をもたらし、また光学的増白剤の使用を必要とせずに、従来の繊維−サイズ組成物に付随した変色を最小化又は排除する。本発明の繊維−サイズ組成物は、複合材に使用するための補強繊維をコーティングするために使用されてよく、該複合材はその後、望ましい色を得るために着色されてよい。この点において、当該組成物は有利なことに、着色プロセスの際に色補償添加剤を必要とすることなく良好な色適合を与える。本発明の繊維−サイズ組成物は、ガラス補強複合材の製造に使用される低ホウ素及び/又は低フッ素、或いは本質的に無ホウ素及び/又は無フッ素のガラスを含む、Eガラス繊維のようなガラス繊維をコーティングするために特に有用である。繊維−サイズ組成物の一つの目的は、光学的増白剤及び/又は色補償添加剤を使用することなく良好な色特性を提供しながら、サイズ組成物をコーティングした繊維で補強された複合材の強度及び化学分解(加水分解及び洗浄剤分解を含む)に対する抵抗性を改善することである。特に、本発明は、以下の強度及び/又は色改善増強剤の少なくとも一つを含有する繊維−サイズ組成物に関する:1)飽和脂肪酸、2)フッ素添加剤、3)疎水性カップリング剤、及び4)環式飽和脂肪酸。
【背景技術】
【0002】
補強された複合材産業は、歴史的に、ガラスのような補強繊維を連続した又はチョップされた繊維、ストランド、ロービングの形態で使用してきた。これらは、高度の弾性及び加重耐性能力を有する広範な複合材製品を作製するために使用される。また、このような複合材製品は、パターン、表面エンボス、又は着色のような装飾的特徴を有するように製造されてよい。
【0003】
ガラス補強ポリオレフィン複合材は、自動車、電気機器及び家庭用器具の産業において見出すことができる。それらの使用は、屡々、機械的、物理的、化学的、及び美的性質の特定の組み合せを必要とする。多くの補強ポリオレフィン複合材の応用において、高い強度、化学分解に対する高い抵抗性、及び改善された着色は非常に望ましい性質である。低い引張りクリープ及び高い疲労抵抗のような機械的性質を備えたポリオレフィン複合材を製造することもまた、非常に望ましいことである。当該複合材部品の有用な寿命を予測するとき、また複合部材を設計するときには、その最終的な厚さ及び質量に影響することが多いこれらパラメータが考慮される。
【0004】
サイジング組成物は、補強複合材部品の特性を決定する上で重要な役割を果す。複合材部品を製造する際に、繊維−サイズ組成物は、補強繊維とポリマーマトリックスの間に中間相を形成する。複合材に負荷が加わると、力はマトリックスから繊維へと移動される。高い複合材強度のためには強い中間相が望ましい。高い複合材強度は、中間相に対する繊維表面の良好な接着を用いて、並びに中間相とポリマーマトリックスの間の良好な接着によって達成することができる。
【0005】
中間相とポリマーマトリックスの間の良好な接着は、一般には、前記繊維に適用される適切なファイバーサイズ組成物の使用によって達成される。組成物の一つの特定の性質を加工及び改善することは比較的容易であるかもしれないが、幾つかの性質を同時に改善することは困難である。例えば、サイジング組成物は、良好な初期強度を備えた複合材部品を形成するために使用されてよい。しかし、この組成物は、良好な加水分解耐性及び洗浄剤耐性、又は変色に対する良好な抵抗性のような他の特性を備えた複合材を形成することはできないであろう。
【0006】
従って、繊維−サイズ組成物は、強く且つ熱分解に対して抵抗性で、化学分解に対して抵抗性である中間相を形成し、繊維と繊維−サイズ組成物との間の良好な接着を与え、繊維−サイズ組成物とポリマーマトリックスとの間の良好な接着を与えることが望ましい。また、繊維−サイズ組成物は、無機物質である補強繊維及び有機物質であるポリマーマトリックスの両方に対して適合性でなければならない。ナトリウム、カリウム及びカルシウムのテトラボレートが、エポキシ及びウレタンサイジングの特性を改良するものとして、日本の特開平10(1998)291841号及び特開平10(1998)324544にそれぞれ報告されており、また、エポキシ樹脂は補強繊維に対して乏しい接着性を有するのに対して、ポリウレタンは補強繊維に対しては良好な接着性を有するが、マトリックス樹脂に対しては不充分にしか接着しないことが注記されている。
【0007】
色の改善された組成物を達成するためには、酸化及び黄色化に対する高い抵抗性を与える、熱的に安定な成分を含む繊維−サイズ組成物を得ることが必要である。ここで使用する「サイズ」又は「サイジング」の用語は、繊維の更なる処理及びその後の繊維と補強される材料との間の接着を促進する際に、繊維の磨耗破損から繊維を保護する目的で、繊維のフィラメント形成に適用されるコーティングを意味する。フィラメントが糸に束ねられるときには、フィラメント間にある種の物理的結合が生じ得るが、サイジングが、繊維が組込まれるマトリックス中への繊維の分散を妨害しないことが不可欠である。即ち、サイジングは、特にマトリックス組成物に組込まれるときに糸を凝集させる傾向を有するべきではない。これは「バインダ」とは対照的であり、バインダは繊維と接触する一方、マット、ファブリック及び不織布のような形態において、バインダの重合を介して処方剤がそれらの交わり部(交差点)での糸の相互結合を促進する。
【0008】
バインダの応用においては、マットの強度及び安定性を与えるために、それらの交差部分で糸を一緒に結合することに力点が置かれる。サイズはフィラメント形成の際の適用が標準であり、且つサイズは最終使用前に繊維に適用される組成物であるに過ぎないのとは異なり、バインダは、典型的には別のサイズ組成物に加えて使用され、サイズが適用された後の製造プロセスの遥かに後の工程で適用される。サイズの一つの目的は、フィラメント及び繊維の初期形成の際、及びそれらをその後に加工する際に、フィラメント及び繊維を保護するためにフィラメントの全体をコーティングすることである。
【0009】
バインダは、フィラメント及び繊維にサイズが塗布されてそれらの最終形態へと加工された後の別の工程で適用され、個々の繊維をそれらの交わり部分又は交差点で相互にしっかりと結合及び保持するために使用される。サイズにおいては、典型的にはサイズ組成物中に見られる成分の重合を最小限にしながら、サイズ組成物中の成分上に既に存在する部分とガラス上に存在する部分との間、並びにサイズ組成物中の成分上に見られる部分とマトリックス樹脂中に見られる部分との間での結合形成に重点がある。サイズは、物理的な水除去の結果として典型的には主に繊維状で固化するのに対して、バインダは繊維から繊維へのより強い結合を与える化学反応(典型的には重合)のために設計される。
【0010】
従来、ポリプロピレン複合体に使用されるサイジング組成物は、高度に修飾された低分子量ポリプロピレン樹脂を有する膜形成体の水性エマルジョンを特徴とするものである。例えば、ChemCorp43N40、即ち、マレイン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン樹脂(イーストマン・ケミカルカンパニーから入手できるE43)の水性エマルジョンが、サイジング組成物中の主要な膜形成剤として使用されてよい。E43は、9000の平均分子量を有し、比較的低分子量の樹脂に相当する。この膜形成体に基づくサイジング組成物は、補強繊維及びポリプロピレンマトリックス樹脂と適合するが、形成された最終的な中間相は、この膜形成体の低い機械的強度のため強くない。このサイジング組成物から製造された複合材部品は、不充分な短期及び長期の機械的特性を有する可能性がある。
【0011】
加えて、多くの同様のサイジング組成物において、膜形成体エマルジョンに使用された表面活性剤パッケージは低分子量の化学物質を含んでおり、該物質は不飽和で有あってよく、1以上のアミン基を有してよく、陽イオン性に特徴付けられ得るアミノ基を有してもよい。これらの化学物質は、複合材部品の変色のような、複合材の粗悪な性質に寄与するものである。これら化学物質の例は、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸)及びアミンに基づく中和剤(例えばトリエチルアミン、窒素含有陽イオン表面活性剤)である。これらの薬剤は、更に、複合材の黄色化及び変色を生じる可能性がある。このような性質によって、最終的な複合材部品は多くの用途に適さなくなり、それらの使用が制限される。従って、これらの問題を克服する繊維−サイズ組成物が必要とされている。
【0012】
モールドされた複合材製品、又はモールドされた複合材製品を製造するために使用される材料における変色は、複合材処方を形成する1以上の材料における汚染物の存在から生じ、又は繊維強化複合材を形成するために使用される成分における不純物の存在から生じる可能性がある。これらの成分は、補強繊維を複合材の中にモールドする前に該補強繊維をコーティングするための、繊維−サイズ組成物中に使用された材料であるかもしれない。例えば、従来のサイジング組成物は、屡々、このようなサイジングが適用された後に、繊維補強体に黄色を付与し、又は他の変色を与える。これらの変色は、次いで、該補強剤がモールドされるときに複合材製品の中にもキャリオーバーされる。これらの変色は、熱的安定性の低い脂肪族の不飽和表面活性剤及び/又は潤滑剤のような、不飽和化学物質の酸化的変色によって生じる可能性がある。これらの変色はまた、例えば中和剤として用いられるアミド、イミド、陽イオン性表面活性剤、又はアミンに基づく化学薬品、窒素含有化合物によっても生じ得る。
【0013】
変色の問題は歴史的に、複合材処方がモールドされる前に、変色を打消すための成分を複合材組成物に添加することによって部分的に対処されてきた。多くの場合は、熱分解及び付随する変色を最小化するために、処方剤を混合する際に抗酸化剤が使用される。また、添加される成分は、複合材処方の色を変化させるための着色剤、例えば、顔料もしくは染料であってよい。例えば、青色の顔料又は染料は、黄色の変色を抑制し、その結果として最終のモールドされた複合材がより白く見えるように、複合材処方に添加されてよい。
【0014】
最近開発された変色を強制する方法が、繊維強化複合材の製造に採用されている。それは、紙製品、衣服、及びプラスチックに適用される組成物において輝きのある白色の外観を形成するために従来使用されてきたが、この方法は、光学的増白剤、例えば蛍光性の白化剤又は増白剤を、複合材処方に添加し、又は複合材をモールド整形するために使用される繊維補強剤に塗布すべきサイジング組成物に添加することを含んでいる。例えば、米国特許第5,646,207号は、カルボキシ化ポリプロピレン、シランカップリング剤、及び潤滑剤のような他のサイジング成分に加えて、蛍光性増白剤を含んだサイジング組成物を記載している。しかし、この特許に開示されたような組成物は、複合材製品における変色を低下させるために、特に蛍光性の白化剤の存在に依存する。関連の米国特許第6,207,737号は、ホスフィン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩のような種々の安定化剤の使用を開示しており、これらはマトリックスポリマー中に使用して該ポリマーの酸化を阻止する上で有効であることが報告されている。好ましくは、このような安定化剤は、蛍光増白剤と共に使用される。
【0015】
しかし、光学的増白剤の使用は、モールド成型された複合材における変色の問題を満足には解決しない。米国特許第5,646,207号に従えば、変色を充分に防止するためには、蛍光性白化剤が複合材処方のマトリックスポリマーの中に十分に分散されなければならないので、蛍光性白化剤が複合剤処方に加えられるときには、モールド成型された複合材における変色の問題が残る。同時に、この特許は、マトリックスポリマー中の蛍光性増白剤の均一な分散を達成するのは困難であると述べている。
【0016】
他の技術的及び経済的な問題は、複合材処方、特に、繊維補強材のためのサイズ組成物中において、蛍光性白化材のような光学的増白剤を使用することに由来するものである。複合材マトリックスポリマーの分解又は他の複合材成分との望ましくない相互作用を含む技術的問題は、複合材製品の品質を損なう可能性がある。例えば、光学的増白剤は、典型的には、それが紫外線又は他の形態の放射エネルギーに露出されたときにマトリックスポリマーの分解を促進する。更に、光学的増白剤自身が、時間を経るに従って化学的に分解する可能性があり、それによってモールド成型された複合材製品の黄色化又は他の変色に寄与する可能性がある。もう一つの認識された問題は、光学的増白剤が、複合材処方に添加され得る抗酸化剤等の他の成分と反応するときに生じる。この点において、光学的増白剤及び抗酸化剤を組み合せることは、両方の成分の効率を低下させ、最終的には複合材の変色をもたらす。
【0017】
加えて、当該複合材が光学的増白剤を含んでいるときは、複合材バッチの色一致を達成するのは困難であることが認められている。色一致におけるこれらの困難を補償するために、種々の量の顔料又は他の添加剤が複合材に添加されてきており、これがバッチ間での一貫した色の維持を困難にしていた。一貫した色を有する複合材バッチを製造する際に遭遇するこの困難性は、今度はより多くの出発材料及びより高い労働コストを必要とすることによって製造コストを増大させ、従って、上記の技術的問題に加えて経済的欠点を提示する。更に、光学的増白剤を含んだモールド成型された製品の色分析は、これら製品が異なる照明のタイプ及び条件下で異なった挙動を示すので、非常に困難である。色分析に伴うこれらの問題もまた、繊維補強物及び/又は複合材製品を製造するコストを増大させる。光学的増白剤の使用は、更に、単にそれらが高価な化学薬品であるという理由で、製造コストの増大に寄与する。
【0018】
洗濯機の部品製造等の幾つかの応用において、当該モールド成型された製品が白い色を有することは望ましいことである。この点で、白い色を与えるために、複合材モールド成型組成物に白化顔料が直接添加されてきた。このようにして典型的に使用される白化顔料の一つは、粉末化された二酸化チタン(TiO2)である。しかし、TiO2のような白化顔料の添加は、補強ガラス繊維に対して損傷をもたらし、当該複合材の機械的強度を劇的に低下させる。
【0019】
EP0826710B1及びEP0826710B1は、不織布材料をそれらの個々の繊維の交叉部又は交差点で結合するためのバインダとして有用なポリマー組成物を形成するための、ポリ酸及び塩基の硬化における促進剤としての、テトラフルオロボレート及び/又は次亜塩素酸塩の組み合せの使用を開示している。少なくとも二つのカルボン酸基を備えたポリ酸と、ヒドロキシ化合物又はアミン化合物との間のバインダ架橋反応を促進させる上で有用であるが、サイジング組成物中に見られるような非重合性官能基のためのその使用については言及又は示唆されていない。米国特許第5,221,285号には、リン酸二水素アルカリ金属、並びに亜リン酸(phosphorous)、次亜リン酸(hypophosphorous)、及びポリリン酸のアルカリ金属塩が、皺抵抗性のファブリックを形成するために、織布形態におけるセルロースのポリカルボン酸へのエステル化及び架橋における触媒として使用されている。セルロース材料がαヒドロキシ酸で架橋されるときに生じる変色を除去するために、ホウ酸ナトリウム及びナトリウムテトラボレート、ホウ酸、並びにホウ水素化ナトリウムが使用される。
【0020】
従って、本発明の目的は、コスト効果的な繊維−サイズ組成物を提供することである。
本発明の一つの目的は、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品に対して、増大した白さを提供することである。
本発明の一つの目的は、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品に対して、増大した輝きを提供することである。
本発明の一つの目的は、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品に対して、増大した色適合性を提供することである。
本発明の一つの目的は、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品に対して、光学的増白剤の使用を必要とすることなく、増大した白さ、輝き及び/又は色適合性を提供することである。
本発明の一つの目的は、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品に対して、モールド成型された複合材製品の望ましい強度特性を維持しながら、増大した白さ、輝き及び/又は色適合性を提供することである。
【0021】
本発明の更にもう一つの目的は、酸化分解に対して安定な本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された、複合材製品を提供することである。
本発明の一つの目的は、変色に対して抵抗性である本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された、複合材製品を提供することである。
本発明の一つの目的は、熱分解に対して抵抗性である本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された、複合材製品を提供することである。
本発明の一つの目的は、繊維とマトリックス樹脂の間により強固な中間相を形成する、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品を提供することである。
本発明の一つの目的は、望ましい短期の機械的性質を有する、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品を提供することである。
本発明の一つの目的は、望ましい長期の機械的性質を有する、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品を提供することである。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、化学的破損に対する増大した抵抗性を有する、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、熱的劣化に対する増大した抵抗性を有する、本発明の繊維−サイズ組成物でサイズ処理された繊維を用いて製造された複合材製品を提供することである。
【0023】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、1以上の好ましい実施形態が詳細に説明される以下の開示から明らかになるであろう。本発明の範囲を逸脱することなく、又は本発明の如何なる利点をも犠牲にすることなく、一連の工程における変形が当業者に明らかであろうと思われる。
【発明の開示】
【0024】
本発明によって、上記の問題は解決され、また目的が満たされる。本発明は、a)修飾(modified)ポリオレフィン、b)親水性カップリング剤、及びc)下記の1)〜4)の少なくとも一つを有するエンハンサを含有してなる繊維−サイズ組成物を特徴とするものである:1)フッ素含有化合物、2)疎水性カップリング剤、3)環式脂肪酸、又は4)少なくとも一つの脂肪酸は二以上の酸基を有する少なくとも二つの飽和脂肪酸。
【0025】
この繊維−サイズ組成物は、例えば水性エマルジョンの形態のような、典型的には水ベースのものである。例えば10,000;35,000;80,000、更には100,000よりも大きい高分子量ポリマー質量の、無水マレイン酸で修飾されたポリプロピレンのような修飾ポリマーを有する繊維−サイズ組成物を達成するために、前記修飾されたポリオレフィンは、修飾されたポリオレフィン、脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基及び水の単一の加圧、加熱及び撹拌された混合物からの非イオン性水性ポリマーエマルジョンとして形成することができる。
【0026】
親水性カップリング剤は、繊維と反応する少なくとも一つの基、及び修飾されたポリオレフィンと反応する第二の基を有している。これら基の両方とも親水性であり、通常は水に可溶性である傾向がある。典型的には、この親水性カップリング剤はシランである。
【0027】
抗酸化剤は、繊維−サイズ組成物中において使用することができる。典型的には、抗酸化剤はリン含有化合物、好ましくはリン酸化状態の低いリン含有化合物である。このような化合物には、次亜リン酸アルカリ金属、次亜リン酸アルカリ土類金属、リアリン酸アンモニウム、及びこれらの混合物のような、次亜リン酸化合物が含まれる。次亜リン酸ナトリウムは、効果的なリン含有化合物であることが見出されている。
【0028】
前記エンハンサがフッ素含有化合物であるとき、それはフルオロボレート、フッ化アルカリ金属、フッ化アルカリ土類金属、フルオロアルミン酸塩、フルオロジルコン酸塩、及びこれら化合物の混合物のようなフッ素含有化合物から選択される。ナトリウムもしくはカリウムテトラフルオロボレートは、繊維−サイズ組成物のための適切な化合物である。これらフッ素化合物は、本発明の繊維サイズでコーティングした繊維から形成された、種々の複合材の強度及び色特性を改善することが見出されている。
【0029】
前記エンハンサが疎水性カップリング剤であるときには、1以上の前記基はアルキル基のような疎水性基である。典型的には、前記疎水性カップリング基は1以上のこれらアルキル基を備えたシランであり、該シラン上の残りの基は、前記繊維と結合することができる。前記疎水性基は、最終的な複合材製品において、繊維/樹脂の界面を水分及び水の攻撃から保護すると信じられている。
【0030】
前記エンハンサは、環式脂肪酸として選択することができる。該環式脂肪酸は、二つのペンダントアルキル基及び二つのペンダント酸基を備えたシクロヘキセンを生じるための、二つの脂肪酸の二量体化の生成物であり、二量体生成物における全ての不飽和結合を除去するために水素添加されている。前記疎水性カップリング剤に関して、前記ペンダント酸基は、前記繊維又は修飾ポリマー上の種々の活性基と反応することができるのに対して、前記疎水性アルキル基は、水分、水及び他の極性反応体による攻撃から界面を保護する。
【0031】
最後に、エンハンサは少なくとも二つの飽和脂肪酸であるように選択することができ、ここでは飽和脂肪酸の少なくとも一方が少なくとも二つの酸基を有する。二つの飽和脂肪酸は、繊維−サイズ組成物において色補償添加物なしに使用され、繊維−サイズ組成物における他の成分は、本質的に完全に飽和され且つ実質的に変色性窒素化合物を含まないように選択される。ここで使用する「脂肪酸」の用語は、低級アルキル酸を含むものである。好ましくは、該脂肪酸は約3〜約40の炭素原子を含んでいる。モノ酸脂肪酸は、好ましくは約8〜約36の炭素原子を含んでいる。モノ酸の非限定的例は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸である。二以上の酸基を含む脂肪酸の非限定的な例には、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸及びセバシン酸である。パルミチン酸、セバシン酸、及びステアリン酸の混合物は、繊維−サイズ組成物に適している。脂肪酸は潤滑剤、表面面活性剤、溶媒のような多くの機能を果すことが分かっているので、当該繊維−サイズ組成物は最小の成分を用いて形成することができる。従って、良好な組成物は、修飾されたポリオレフィン、ポリマーエマルジョン脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基及び水、一方が少なくとも二つの酸基を含む少なくとも二つの脂肪酸、親水性カップリング剤、及び消泡剤の、加圧、加熱及び混合された単一の混合物からの非イオン性水性ポリマーエマルジョンのみからなることができる。
【0032】
疎水性の特徴を有する他のエンハンサが選択されるときは、良好な繊維−サイズ組成物エマルジョンの形成を補助するために、追加の成分を加える必要があるかもしれない。このような薬剤には、湿潤剤、潤滑剤、表面活性剤、及び消泡剤が含まれる。しかし、窒素官能基を備えた無機物質、非イオン性物質、特にアルキルフェノールに基づくもの、及び不飽和官能基を備えた物質は、色制御の理由、並びに安全性及び環境的配慮のために回避すべきである。不飽和物質が使用されるときは、修飾ポリオレフィン以外の繊維−サイズ組成物成分のヨウ素価は、各々が約0.35未満の値を有するべきである。
【0033】
一般に、ホウ素含有化合物は、繊維−サイズ組成物と共に使用することができる。使用してよい典型的なホウ素含有化合物は、水素化ホウ素、過ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、窒化ホウ素、有機ホウ素化合物、ボラゾール(borazole)、ハロゲン化ホウ素、テトラボレート塩、ホウ酸及びこれらの混合物である。ナトリウムテトラボレート、即ち、Na247は、繊維−サイズ組成物中に使用するための便利な化合物である。該繊維−サイズ組成物はまた、次亜リン酸化合物に見られるようにリンの酸化状態が3であるリン含有化合物のような、抗酸化剤を含有することができる。ポリウレタンもまた、修飾ポリオレフィンと共に繊維−サイズ組成物中に使用することができ、これは当該サイズ組成物の加工特性を改善し、またコーティングされた繊維を加工する際に繊維の一体性を維持する上で有用であることが見出されている。
【0034】
ガラス繊維は、繊維フィラメント形成プロセスの一部として、典型的には繊維−サイズ組成物でコーティングされる。その形成段階の早期に繊維をサイズ組成物でコーティングすることにより、繊維サイズコーティングは、フィラメントが繊維に形成され且つ更に処理するために巻回又はチョップされるときに、フィラメントを磨耗及び破断から保護する。
【0035】
当該繊維−サイズ組成物は、Eガラス(ホウ珪酸ガラス)並びに無ホウ素ガラスを含む全てのガラス繊維に適用することができる。無ホウ素繊維はまた、F2、TiO2、SO3及びこれらの組み合せのような成分を実質的に含まないことができる。本発明の繊維−サイズ組成物で有利にコーティングできる無ホウ素ガラス繊維は、59.0〜62.0質量パーセントのSiO2、20.0〜24.0質量パーセントのCaO、12.0〜15.0質量パーセントのAl23、1.0〜4.0質量パーセントのMgO、0.0〜0.5質量パーセントのF2、0.1〜2.0質量%のNa2O、0.0〜0.9質量パーセントのTiO2、0.0〜0.5質量パーセントのFe23、0.0〜2.0質量パーセントのK2O、及び0.0〜0.5質量パーセントのSO3から実質的なっている。更に詳細に言えば、該コーティングされる繊維は無ホウ素ガラス繊維であり、SiO2含量は約60.1質量パーセントであり、CaO含量は約22.1質量パーセントであり、Al23含量は約13.2質量パーセントであり、MgO含量は約3.0質量パーセントであり、K2O含量は約0.2質量パーセントであり、Na2O含量は約0.6質量パーセントであり、Fe23含量は約0.2質量パーセントであり、SO3及びF2の組み合せ含量は約0.1質量パーセントであり、TiO2含量は約0.5質量パーセントである。
【0036】
繊維が繊維−サイズ組成物でコーティングされた後に、それは該サイズでコートされた(補強)繊維及びマトリックス樹脂を含んだ配合処方の一部として使用される。マトリックス樹脂は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリアンハイドライド、ポリイミン、エポキシ、ポリアクリル類、ポリビニルエステル、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、及びこれらの混合物を含む広範なプラスチックから選択することができる。該調合処方はまた、カップリング剤、抗酸化剤、顔料、静電気防止剤、充填材、難燃剤、及び他の添加剤のような1以上の配合剤を含むことができる。好ましくは、マトリックス樹脂は、ポリプロピレンのようなポリオレフィンである。
調合処方は、次いで、典型的にはペレットを形成するために処理され、これは次に所望の複合材製品を形成するためにモールド成型される。
【0037】
本発明はまた、補強繊維を製造し、次いでそれを使用して複合材製品を形成する方法を特徴とする。この補強繊維を調製する方法は、修飾ポリオレフィン、親水性カップリング剤、及び次の(a)〜(e)の少なくとも一つを含むエンハンサの、繊維−サイズ組成物を調製する工程を含むものである:(a)フッ素含有化合物、(b)疎水性カップリング剤、(c)環式脂肪酸、(d)その一方が少なくとも二つの酸基を備えた脂肪酸である少なくとも二つの飽和脂肪酸、(e)前記(a)〜(d)の混合物。前記二以上の脂肪酸は、繊維−サイズ組成物において色補償添加剤を伴わずに使用することができる。繊維−サイズ組成物の他の成分は、本質的に完全に飽和されたものであるべきであり、前記繊維−サイズ組成物は、変色性の窒素化合物を含まないものであるべきである。繊維−サイズ組成物が調製された後、それは繊維と接触され、その後には繊維上で繊維−サイズ組成物が固化させられて補強繊維が形成される。本発明の方法において、修飾されたポリオレフィンは、修飾ポリオレフィン、脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基及び水の単一混合物を加圧コンテナの中で加熱及び撹拌し、次いで得られた水性エマルジョンを繊維−サイズ組成物の他の成分と混合することによって、非イオン性の水性ポリオレフィンエマルジョンとして調製することができる。
【0038】
補強繊維が調製された後に、それらはマトリックス樹脂と混合されて複合材処方が形成される。次いで、該複合材処方は複合材製品を形成するために処理される。
【0039】
本発明の先に述べた並びにその他の目的、特徴及び利点は、本発明の1以上の好ましい実施形態が詳細に説明され且つ付属の実施例により例示される、以下の開示から明らかになるであろう。本発明の方法、成分化合物、及びそれらの相互作用の仕方における、本発明の範囲を逸脱せず且つ本発明の如何なる利点も犠牲にしない変形例は、当業者に明らかであろう。
【発明を実施するため最良の形態】
【0040】
本発明は、繊維補強複合材の製造に使用されるサイジング補強繊維材料を改善するエンハンサを有する、繊維−サイズ組成物を含むものである。該繊維−サイズ組成物は、増大した強度のような、繊維補強複合材の改善された短期の機械的特性を提供する。当該繊維−サイズ組成物はまた、クリープ及び疲労に対する増大した抵抗性のような、該複合材の改善された長期の機械的特性を提供する。当該繊維−サイズ組成物は、熱的及び化学的破損(加水分解による破損を含む)に対するより高い抵抗性を備えた複合材を提供する。
【0041】
良好な短期及び長期の機械的特性、並びに熱的及び化学的破損に対する良好な抵抗性に加えて、繊維補強複合材の白さ、中性の色及び色適合性の容易さが提供される。完全には理解されていないが、繊維−サイズ組成物の熱的酸化又は熱的分解に伴う変色は、中間相における分解に関連すると思われる。これは、繊維とポリマーマトリックスの間の乏しい接着を生じ、該複合材の全体的機械的特性の低下を導く。本発明は、熱的酸化及び/又は熱的分解に抵抗する繊維−サイズ組成物の成分を選択することによって、補強された複合材の改善された特性を提供する。
【0042】
本発明は、実質的に変色しない繊維−サイズ組成物を含むものである。ここで使用する「実質的に非変色性」又は「最小の変色を有する」の用語は、繊維−サイズ組成物が、該サイズ組成物で処理された補強繊維材料又はそれから形成された複合材の変色を生じさせない傾向を有することを意味するものである。当該繊維−サイズ組成物は、補強繊維材料又は得られるモールド成型複合材における白色又は中立色が最適化されるように、最低限の着色のみを生じる。上記の用語はまた、補強繊維材料又はモールド成型された複合材製品が、典型的には光学的増白剤を含めることにより生じる色の変動に付随した技術的及び経済的困難を伴うことなく、同じ材料の他のバッチと色が一致し得ることを意味するものである。
【0043】
本発明の繊維−サイズ組成物の実質的に非変色性の効果は、決定的に確立されているわけではないが、それは部分的には、選択された繊維−サイズ組成物の成分が、熱的又は酸化的な分解に対して良好な抵抗性を提供するという事実によるものと考えられる。当該成分は主に、好ましくは二重結合をもたないか又は僅かしかもたない分子種、即ち、好ましくは高度に飽和した分子種に基づくものである。修飾ポリオレフィン以外の特定の繊維−サイズ組成物成分に関して使用されるときの、「高度に飽和した」の用語は、不飽和有機結合の比率が、成分のヨード値によって定量したときに最大0.35以下であり、好ましくは可能な限りゼロに近いことを意味するものである。これは、不飽和の表面活性剤、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤、乳化剤、カップリング剤、及び繊維−サイズ組成物中に存在する他の化合物において見られるように、当該成分が、高度に不飽和な分子種を可能な限り含まないように選択されることを意味する。
【0044】
不飽和化合物における二重結合に特徴付けられる不飽和は、それらを、酸化のような化学的分解機構に対して更に反応性にすると思われる。その結果、当該化合物は、サイジング処方又は複合材処方において、更に変色反応生成物を発生し易くなる。本発明の繊維−サイズ組成物は高度に飽和した化学物質に基づいており、該物質は、繊維−サイズ組成物を形成するために従来使用されている不飽和化合物よりも酸化的又は熱的に安定である。この非変色性効果はまた、部分的には、好ましいことに脂肪族アミン、脂肪族アミド及び窒素含有陽イオン表面活性剤含む幾つかのアミン、イミド及びアミド、潤滑剤、湿潤剤、及び変色を生じる他の添加物のような一定のタイプの窒素含有化合物が存在しないことに起因すると思われる。しかし、当該組成物の非変色性を維持しながら、変色する傾向のない窒素含有化合物が使用されてもよい。
【0045】
本発明の繊維−サイズ組成物には、グラフト又は化学的に修飾されたポリオレフィンの群から選択される1以上の膜形成ポリマーが含まれる。ここで使用する「グラフトされたポリオレフィン」、「官能化されたポリオレフィン」、「化学的に修飾されたポリオレフィン」又は単純に「修飾されたポリオレフィン」の用語は、ポリオレフィンポリマー主鎖上に1以上の反応性官能基を組込むように化学的に修飾され、且つ官能化されたポリマーオレフィンを意味するものである。典型的には、この修飾されたポリオレフィンは、2〜約6の原子を有するオレフィンモノマーに基づくものである。これらモノマーに基づくポリマーの非制限的な例には、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、及びポリヘキセンが含まれる。好ましいポリマーには、結晶性、半結晶性、非晶質、ゴム性、又はエラストマー性であるポリプロピレンのホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0046】
反応性官能基は、他の化学種との更なる化学反応を受けることができる基である。このような反応性官能基の幾つかの例は、酸無水物基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、イソシアネート基、二重結合、及びエポキシ基である。多くのタイプの反応性官能基がポリオレフィン鎖に結合することができるが、上記で述べたように、非反応性及び未反応の窒素含有基及び不飽和官能基は避けるのが望ましい。従って、酸無水物基、カルボン酸基、ヒドロキシ基及びエポキシ基が好ましい。更に好ましいのは下記の反応性基の例であり、限定されるものではないが、これにはマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物のような酸もしくは酸無水物、及びアクリル酸もしくはメタクリル酸グリシジルのようなオキシランが含まれ、また最も好ましいのは酸無水物基である。修飾ポリプロピレンを含む修飾されたポリオレフィンは、エマルジョンとして商業的に入手可能である。好ましいエマルジョンは、非イオン性表面活性剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、及び変色を回避する傾向がある他の成分に基づくものである。一般には、グラフト化された官能基のレベルは、ポリマーの全質量に基づいて0.05〜15質量%である。典型的には、繊維−サイズ組成物中のグラフト化されたポリオレフィンの量は、繊維−サイズ組成物の全乾燥固体含量に基づいて約20質量%〜約90質量%である。好ましくは使用されるグラフト化されたポリオレフィンの量は、全乾燥固体の約30質量%〜約80質量%である。更に好ましくは、この量は、水性繊維−サイズ組成物の全乾燥固体含量の約35質量%〜約70質量%である。
【0047】
好ましくは、約10,000超の分子量をもった高分子量の修飾されたポリプロピレンは、得られる繊維補強複合材の強度特性を顕著に改善するので、繊維−サイズ組成物に使用するために好ましいものである。過去においては不運にも、繊維製造の際に、繊維用途に適した形態の高分子量ポリプロピレンを提供するのが困難であった。これらポリマーを乳化するための種々の技術は、炭化水素溶媒、複数工程、及び高速での粉砕及び混合を含むことができ、これらはポリプロピレン構造の過剰な分解及び劣化をもたらし、それによって、得られた繊維補強複合材における機械的特性及び色特性は、望ましい特性よりも低くなる。
【0048】
2002年12月31日に出願された米国特許出願第10/334,468号(その全部が完全に本願に再掲されているかの如くに本願に援用される)に記載されているように、これらの問題を回避する高分子量ポリオレフィンの水性乳化のための方法が見出されている。更に、該方法は80,000超、更には100,000超の分子量をもったポリプロピレンポリマーの乳化を可能にする。一段階法においては、官能化されたポリオレフィン、脂肪酸、表面活性剤、及び水が、加圧容器の中で加熱及び撹拌されて、高分子量の修飾されたポリオレフィンエマルジョンを与える。
【0049】
この修飾されたポリオレフィンエマルジョンの全ての成分は、最小の変色性をもった高強度の複合材を助長するように選択される。高分子量ポリプロピレンが好ましく、10,000、35,000、80,000、更には100,000を越える分子量のものが使用される。マレイン酸無水物又はマレイン酸は、黄色化する窒素及び不飽和官能基ではなく、ポリマーに結合される。脂肪酸もしくはアルキル酸(又はエステルもしくは酸無水物)が飽和されて、より良好な最終的な色、並びに熱酸化及び分解に対する更なる安定性を提供する。乳化剤又は表面活性剤は、熱的により安定性が低く、最終の複合体部品の黄色化を生じ、また環境上及び安全性上の問題を生じるノニルフェノールのようなアルキルフェノールではなく、むしろ非イオン性表面活性剤、好ましくはエトキシ化アルキルもしくは脂肪酸又はアルコールである。塩基はヒドロキシルアミンであり、これは良好な中和能力を提供して、該システムを可溶化し、またシステムの乳化を促進する。このようなアミンは、典型的には、水アゼオトロープとして系から容易に除去されるように選択され、それにより、望ましくない色の発生を生じることなく乾燥された系に対して改善された水抵抗性を与えるように選択される。
【0050】
本発明の実質的に非変色性の繊維−サイズ組成物はまた、親水性カップリング剤、典型的にはシラン系カップリング剤を含んでいる。親水性カップリング剤は、補強繊維材と補強されるポリマーマトリックス樹脂との間の接着性を改善する。カップリング剤は、ガラス繊維とマトリックス樹脂との間に「ブリッジ」を形成すると思われる。カップリング剤上の反応性官能基は、繊維上の表面官能基と、及び繊維−サイズ組成物の膜形成剤と相互作用する。該含まれる官能基は典型的に極性なので、該カップリング剤は親水性になり易く、従って容易に水性サイズ組成物の中に侵入する。従って、該カップリング剤は、ここでは「親水性カップリング剤」と称される。上記で述べたように、繊維−サイズ組成物の膜形成成分はマトリックス樹脂と適合するように選択され、最終的にはマトリックス樹脂の中に侵入して、マトリックス樹脂と化学結合し得る。また、ガラス表面化学基と反応する該親水性カップリング剤は、マトリックス樹脂とも反応することができる。
【0051】
広範な親水性カップリング剤が当該技術において知られており、その殆どはケイ素系の「シラン」カップリング剤であり、アミノ含有カップリング官能基を備えたチタン、クロム、又はジルコニウムの繊維金属錯体のような幾つかの非シラン物質を伴う。それらが変色性官能基を含まず、又は得られた繊維補強複合材を脆弱化しないことを条件として、これらの何れを使用してもよい。典型的な親水性カップリング剤は、式Xn−Si−Y4-nで表されるシランであり、ここでのXは酸反応性基であり、Yは繊維反応性基であり、nは好ましくは1であるが、2又は3であってもよい。典型的には、Yは、繊維−サイズ組成物においてヒドロキシ基に加水分解されるアルコキシである。Xは、典型低には、アルキルアミノ基であるが、他の官能基も商業的に入手可能である。アミノシランは、アメリカ合衆国ニューヨーク州タリータウンに所在のOSiスペャルティーズInc社、アメリカ合衆国ミシガン州ミッドランドに所在のダウ・コーニング社、又はドイツ国フランクフルトに所在のテグサ・ハルス(Degussa−Huls)AG社から商業的に入手可能である。好ましいアミノシランカップリング剤は、γ−アミノプロピルトリエトキシシランである。アミノ官能基以外の官能基を有するシランの例には次のものが含まれるが、これらに限定されない:ビニルトリメトキシシラン(A−171として商業的に入手可能)、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(A−187として商業的に入手可能)、及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A−174として商業的に入手可能)、これらは全てGE・OsiスペャルティーズInc社から入手可能である。親水性カップリング剤は、一般的には、繊維−サイズ組成物の全乾燥固体に基づいて約0.05質量%〜約40質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、親水性カップリング剤は約0.2〜約35全乾燥固体質量%の量で用いられる。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約2〜約30質量%である。
【0052】
本発明は、単独で又は相互に組み合わせて使用され得る幾つかのエンハンサ成分を含んだ繊維−サイズ組成物を特徴とする。これらのエンハンサ成分には、フッ素含有化合物、疎水性カップリング剤、環式脂肪酸、及び少なくとも二つの飽和脂肪酸(これら脂肪酸の一方は少なくとも二つの酸基を有する)の組み合せが含まれる。該エンハンサ成分は、繊維補強された複合材の種々の成分間の結合を促進し、又はこれら成分の間のインターフェースを増強し、又はその両方を行う。例えば、エンハンサは繊維−サイズ組成物において、また使用されるときは複合材樹脂において、親水性カップリング剤官能基と、繊維及び修飾ポリオレフィンとの相互作用又は結合を増強することができる。エンハンサは、水及び水分の劣化作用を防止する疎水性環境を提供することによって、繊維とポリマー材料との間の界面を増強することができる。エンハンサは、繊維上のコーティングされたサイジングにおいて、並びにガラス繊維とマトリックス樹脂の間の界面において、酸化による退色を最小化する環境を提供することができる。
【0053】
本発明の実質的に非変色性の繊維−サイズ組成物は、少なくとも二つ(即ち、二以上)の飽和脂肪酸の混合物を含んでおり、これら脂肪酸の一方は少なくとも二つの脂肪酸基を有している。ここで使用する「脂肪酸」の用語には、プロピオン酸及び酪酸のような低級アルキル酸が含まれる。一つの側面において、この脂肪酸の混合物は核形成剤として働き、補強複合材におけるクリスタライト(セライト;serite)の成長のサイズ及び速度に影響すると思われる。得られるクリスタライトの形成速度及びサイズは、補強複合材の特性に対して直接の又は比例した効果を有する。従って、核形成剤として有効量の脂肪酸混合物を含むことは、複合材、特にポリオレフィン複合材の特性を最適化する効果を有する。
【0054】
もう一つの点において、飽和脂肪酸の混合物は、繊維−サイズ組成物における潤滑剤として働く。先行技術において先に知られたサイジング組成物は、WO 048957A1に開示された陽イオン性潤滑剤のような潤滑剤を含むのに対して、本発明の繊維−サイズ組成物は、脂肪酸混合物に加えて別の成分としての潤滑剤の必要性を排除する。本発明の繊維−サイズ組成物において、潤滑効果は脂肪酸混合物によって提供され、繊維を破壊及び剪断歪みから保護する。また、それは繊維製造、取扱い及び複合材製造の際のフィラメントに対する損傷を低減し、より良好な複合材特性を保証する。また、脂肪酸混合物はまた湿潤剤としても作用して、繊維製造の際の繊維−サイズ組成物による繊維フィラメントのより良好な被覆を提供し、このことは、繊維を保護し且つ補強されたポリオレフィン複合材の特性を更に向上させる。脂肪酸混合物は、一定の範囲でモールド成型操作の際の離型剤として作用し、それによって複合材部品に対する良好な表面仕上げ、並びにより迅速なモールド成型サイクル操作を提供する。飽和したモノ酸脂肪酸はそれらのアルキル末端において疎水性であり、且つそれらの酸基末端において親水性であるから、飽和脂肪酸は表面活性剤としても作用して、繊維−サイズ組成物における追加の表面活性剤の必要性を排除する。最後に、当該混合物における脂肪酸は完全に飽和されており、且つ窒素部分を含まないから、それらは最終の複合材製品において実質的に非変色性である。
【0055】
本発明の繊維−サイズ組成物において使用するための飽和脂肪酸の適切な混合物は、二以上のC3〜C40飽和脂肪酸、これら脂肪酸の塩、少なくとも二つの酸基を備えた脂肪酸の無水物、又はこれらの混合物から選択される。ここで使用するとき、脂肪酸の用語には、プロピオン酸及び酪酸のような低級アルキルカルボン酸が含まれる。好ましくは、脂肪酸の混合物は、高度に飽和したC3〜C40脂肪酸、その無水物又は塩の、水性又は非水性媒質中の溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョンとしての混合物を含むものである。最も好ましくは、脂肪酸の混合物は、モノ酸脂肪酸であるミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸、並びに多酸基脂肪酸であるコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、及びクエン酸のような、二以上のC3〜C40脂肪酸の水性混合物として提供される。このような脂肪酸の混合物の一例は、パルミチン酸、セバシン酸、及びステアリン酸の組み合せであり、これは、例えばアメリカ合衆国テネシー州メンフィス所在のコンプトンコーポレーションの子会社であるWitcoポリマーアディティブズ社から、「MoldPro1327」の商標名の下での水性エマルジョンとして商業的に入手すればよい。 該脂肪酸の混合物の量は、繊維−サイズ組成物中の乾燥固体の全質量に基づいて、0.05質量%〜約80質量%の範囲に亘ってよい。好ましくは、脂肪酸の混合物は、約0.90質量%〜約50質量%の濃度範囲で存在する。最も好ましいのは、繊維−サイズ組成物の乾燥固体の2質量%〜30質量%である。
【0056】
フッ化カルシウム(CaF2)のようなフッ化物及びテトラフルオロボレート(BF4-)のようなフルオロ錯体を含む、広範なフッ素含有化合物を繊維−サイズ組成物中に組込むことができる。フッ素含有化合物には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び他の金属及び非金属化合物のようなA群の化合物、並びにB群の繊維金属化合物のものが含まれる。このようなフッ素含有化合物の非限定的な例には、フッ化ナトリウム、ニフッ化ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸カリウム、テトラフルオロアルミン酸カリウム、ヘキサフルオロ珪酸、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、及びテトラフルオロホウ酸ナトリウムが含まれる。フッ素含有化合物は、一般には、当該繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体を基準にして、約0.05質量%〜約15質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、該フッ素含有化合物は、全乾燥固体の約0.1質量%〜約10質量%の量で使用される。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約0.3質量%〜約8質量%である。
【0057】
全ての官能基が極性の特徴をもった親水性カップリング剤とは対照的に、疎水性カップリング剤は、少なくとも一つの決定的に非極性(疎水性)の性質をもった少なくとも一つの置換基を特徴とする。典型的な疎水性カップリング剤は、式Rn−Si−Y4-nで表されるシランであり、ここでのRはメチル基であってよいアルキル基、直鎖炭素基もしくは分岐炭素基、又は不飽和炭素基である。nの値は1〜3であってよく、1の値が好ましい。適切な疎水性カップリング剤には、プロピルトリメトキシシラン及びプロピルトリエトキシシランが含まれる。不飽和の疎水性基は、得られる複合材の可能な変色のため、それほど好ましくはない。Yは、繊維反応性基である。典型的には、Yは、繊維−サイズ組成物中でヒドロキシ基に加水分解されるメトキシ又はエトキシのような、アルコキシ基である。この疎水性カップリング剤は、一般には、当該繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体を基準にして、約1質量%〜約10質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、該疎水性カップリング剤は、全乾燥固体の約2質量%〜約9質量%の量で使用される。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約3質量%〜約8質量%である。
【0058】
本発明の環式脂肪酸は、大部分がニ官能性脂肪酸由来の二量体である。それらは二量体化、例えば長鎖不飽和脂肪酸モノマーのディールスアルダー型反応によって製造される。該モノマーは分岐型でも直線型でもよく、またモノ不飽和であってもポリ不飽和であってよい。一般に、モノマー脂肪酸はその炭素骨格の中に約8個の炭素原子を有し、また20以上の炭素原子を有してもよい。従って、二つのモノマーから二量体が形成されるとき、該二量体は、得られる生成物中に、約16〜40又はそれよりも多い炭素原子を有するであろう。該二量体はニ塩基性であり、疎水性であり且つ高分子量を有するという特有の利点を有している。該ニ量体酸の不飽和性は、二量体の安定性を高めるように、水素添加によって除去される。該ニ量体酸は、6炭素の環構造であり、これには二つのペンダントアルキル基及び二つのペンダントアルキル酸基が、該間構造の別々の炭素に結合されている。該ニ量体酸は、幾何異性体、構造(位置)異性体、及びコンホメーション異性体の複雑な混合物である。加えて、二量体化のプロセスはまた、8炭素環、三つのペンダントアルキル酸基、及び三つのペンダントアルキル基を備えた幾つかの三量体酸をも生じる。従って、18個の炭素原子を有する脂肪酸、例えばオレイン酸の二量体化は、36炭素原子のニ塩基酸と、幾つかの54炭素原子の三塩基酸との混合物を生じるであろう。環状脂肪酸は、デラウエア州ウィルミングトンのUniqema社からPripol・1025として、またオハイオ州シンシナチのCognisコーポレーション社からEmpol・1008として商業的に入手可能である。この環状脂肪酸は、一般には、当該繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体を基準にして、約1質量%〜約30質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、環状脂肪酸は、全乾燥固体の約2質量%〜約20質量%の量で使用される。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約4質量%〜約12質量%である。
【0059】
典型的には低酸化状態、即ち+5未満のリン含有化合物、及び典型的には+4の酸化状態にある硫黄化合物に基づく抗酸化剤を含んだ、広範な抗酸化剤が使用されてよい。低酸化状態のリン及び硫黄含有化合物には、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアに由来する亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、次亜リン酸塩が含まれる。適切な例は、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及び次亜リン酸ナトリウムであり、これらはエマルジョンの安定性及び色を改善するために使用することができる。典型的には、次亜リン酸ナトリウムもしくはカリウムのような次亜リン酸塩が使用され、次亜リン酸ナトリウムがその水溶性の故に好ましい。抗酸化剤は、一般には、当該繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体を基準にして、約0.2質量%〜約15質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、抗酸化剤は、全乾燥固体の約0.5質量%〜約10質量%の量で使用される。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約1質量%〜約8質量%である。
【0060】
ホウ水素化物、ホウ窒化物、ボラゾール、過ホウ酸塩、テトラボレート、及びホウ酸塩のようなホウ素化合物は、初期強度パラメータ及び熱エージング色パラメータを改善するために添加されてよい。典型的には、該ホウ素化合物はナトリウム塩として使用される。該ホウ素化合物は、一般には、当該繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体を基準にして、約0.5質量%〜約15質量%の濃度で繊維−サイズ組成物中に含められる。好ましくは、該ホウ素化合物は、全乾燥固体の約1質量%〜約10質量%の量で使用される。最も好ましくは、この量は繊維−サイズ組成物中の全乾燥固体の約2質量%〜約8質量%である。フッ素を備えたホウ素、即ち、テトラフルオロボレートとしての使用は、フッ素含有化合物に関して上記で述べた通りである。
【0061】
単独で湿潤剤、表面活性剤及び潤滑剤として作用し得る脂肪酸混合物以外の成分が使用されるとき、屡々、繊維の濡れ性、成分分散、及び繊維−サイズ組成物の加工の容易さを改善するために有用な1以上の添加剤を含めることが必要とされる。該湿潤剤は、スルホコハク酸アルキルエステル系湿潤剤、例えばドイツ国のRewo・Chemische・Werke・GmbH社からのRewopol・SBDO・75であることができる。この分散剤/表面活性剤/乳化剤は、非イオン性のエトキシル化アルキルアルコール、例えば、ドイツ国ルドウィッヒスハーフェンのBASFから得られるLutensol ON60である。該潤滑剤は、グリセロール又はグリコール系脂肪酸エステル、例えば全てアメリカ合衆国ニュージャージー州フェアローン所在のロンザInc.社から得られるモノステアリン酸デカグリセロール(Polyaldo 10−1S)、ジステアリン酸エチレングリコール(Glycolube 674)、又はGlycolube WP2200である。窒素官能基を備えたイオン性物質、又はアルキルフェノールもしくはエトキシル化ノニルフェノール化合物に基づく非イオン性物質は、安定性が低く、繊維補強複合材において黄色化を生じることがあり、また幾つかの場合にはそれらの毒性のため環境的に健全でない可能性があるので好ましくない。湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤の組み合せは、典型的には、繊維−サイズ組成物における全乾燥固体の1〜30質量%の範囲;好ましくは2〜25質量%;最も好ましくは3〜20質量%である。しかし、これら材料の量は、繊維−サイズ組成物における他の成分に依存して大きく変化するであろうことが認識されるべきである。例えば、先に述べたように、繊維−サイズ組成物中に飽和脂肪酸の混合物が使用されるときは、このような成分は最早必要でないかもしれない。他の加工助剤、静電気防止剤、及び他の従来知られた添加剤も使用されてよい。
【0062】
繊維−サイズ組成物を補強繊維材料に塗布する前に、繊維−サイズ組成物を混合及び取扱う際の泡の発生を低減するために、消泡剤を繊維−サイズ組成物に添加してよい。種々のタイプの消泡剤が使用されてよく、典型的にはシリコーン系のものであるが、非シリコーン製品が、アメリカ合衆国ペンシルベニア州アレンタウン所在のエアプロダクツ社のような販売会社から、Surfynol及びDynolの商標名の下に入手可能である。適切な消泡剤の例には、限定されるものではないが、ドイツ国ヴェーゼルに所在のBYK化ヒェミー社から、BYK−011、BYK−018、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−031、BYK−032、BYK−033、BYK−034、BYK−035、BYK−036、BYK−037、BYK−045、又はBYK−080の商標名で商業的に入手可能なものである。BYK−024は、ポリグリコール中に疎水性の固体ポリシロキサンを含有する点において、本発明のための適切な消泡剤である。消泡剤は、繊維−サイズ組成物の全質量に基づいて2質量%以下の何れかの量で添加されてよい。好ましくは、該症補言う剤は約0.001質量%〜約0.5質量%である。最も好ましくは、約0.005質量%〜約0.2質量%である。
【0063】
繊維−サイズ組成物は、当業者に知られた何れかの方法に従って、その成分を合体させることにより調製されてよい。好ましくは、繊維−サイズ組成物は、繊維−サイズ組成物の個々の成分を希釈剤とブレンドして、溶液又は懸濁液を形成することにより製造されてよい。最も好ましくは、該希釈剤は水である。
【0064】
成分を合体させる順序は、安定な繊維−サイズ組成物を形成するためには重要ではない。以下に例示する方法は、良好な結果を伴って、ガラス繊維フィラメントに対して適用できることが分かった。グラフト化されたポリオレフィンと水性脂肪酸混合物又は環式脂肪酸とのエマルジョンが、シランカップリング剤を添加する前に、水中の表面活性剤、湿潤剤及び潤滑剤と共に、また全ての水溶性材料の水溶液と共にブレンドされる。親水性シランカップリング剤は、成分間の反応を最小化し且つ主に繊維−サイズ組成物の粘度を制御するために、好ましくは最後に添加される。疎水性シランのような疎水性カップリング剤が使用されるときは、親水性シランは別の混合物中で水中で加水分解され、次いで加水分解されたシランに疎水性シランが添加され、その後に該混合物がポリオレフィンエマルジョンに添加される。当該組成物を、繊維−サイズ組成物の望ましい乾燥固体含量にするために、脱ミネラル化された水が上記の最終混合物に添加される。本発明の繊維−サイズ組成物は、概ね約5cPs〜約250cPsの粘度を提供する。粘度の差は、補強繊維材料の表面に堆積される繊維−サイズ組成物の層厚の変動を導き得るので、粘度における変化は望ましく最小化される。繊維−サイズ組成物の層厚の増大又は減少は、サイズされた補強繊維材料の特性に影響する可能性がある。
【0065】
グラフト化されたポリオレフィンポリマーのエマルジョン、脂肪酸の混合物、及びカップリング剤、並びに上記で述べた他の何れかの任意の添加剤のような成分は、好ましくは、約10℃〜約32℃の温度で約72時間の保存安定性を有する安定な分散液として、繊維−サイズ組成物を処方するのに有効な量で合体される。繊維−サイズ組成物のpHは重要ではないが、上記の全ての成分を合体させることにより形成された最終的な繊維−サイズ組成物は、約6.5〜約11の範囲のpHを有する。
【0066】
本発明の繊維−サイズ組成物は、コーティングされた補強繊維材料を形成するための何れか適切な方法によって、補強繊維材料に塗布されてよい。本発明の繊維−サイズ組成物を塗布することができる補強繊維材料は、ガラス繊維、ポリマー繊維、炭素もしくはグラファイト繊維、天然繊維、及びそれらの何れかの組み合せのような、当該技術において既知の何れかの補強繊維から選択されてよい。好ましくは、ソーダ石灰ガラス、E−ガラスのようなホウ珪酸ガラス、S−ガラスのような高強度ガラス、小量のホウ素を含むE−型ガラス又は無ホウ素ガラスを含むガラス繊維が使用される。ホウ素に加えて、このようなガラスはまた、F2、TiO2、及びSO3、並びにそれらの組み合せ等の成分を含まなくてよい。ここで使用する「無ホウ素/フッ素」の用語は、これら二つの元素を小量しか含まないか、又は全く含まないガラスを意味する。本発明のサイズ組成物と共に使用される典型的なガラス繊維は、59.0〜62.0質量%のSiO2、20.0〜24.0質量%のCaO、12.0〜15.0質量%のAl23、1.0〜4.0質量%のMgO、0.0〜0.5質量%のF2、0.1〜2.0質量%のNa2O、0.0〜0.9質量%のTiO2、0.0〜0.5質量%のFe23、0.0〜2.0質量%のK2O、及び0.0〜0.5質量%のSO3から実質的になるものである。より好ましくは、SiO2含量は約60.1質量%、CaO含量は約22.1質量%、Al23含量は約13.2質量%、MgO含量は約3.0 質量%、K2O含量は約0.2質量%、Na2O含量は約0.6質量%、Fe23含量は約0.2質量%、SO3及びF2の合計含量は約0.1質量%、TiO2含量は約0.5質量%である。
【0067】
補強繊維材料は、個別のフィラメント、ツイストされたヤーン、ストランド又はロービングの形態であってよい。サイズされた補強繊維材料は、繊維補強複合材の製造において、連続的又は不連続的な形態で使用することができる。ここで補強繊維材料に関して使用する「連続的」の用語は、破断されていないフィラメント、スレッド、ストランド、ヤーン又はロービングの形態の補強繊維材料を含むものであり、これらは連続繊維形成操作における形成後にサイズを直接塗布されてもよく、或いは、後で巻回を解いて繊維−サイズ組成物の塗布を可能にするパッケージ形態に形成及び巻回されてもよい。ここで補強繊維材料に関して使用する「不連続な」の用語は、チョッピング又はカッティングによってセグメントに分割された補強繊維を含むものであり、或いは、これらは繊維を形成する紡糸プロセスのような、セグメントに分割された繊維を形成するように設計されたプロセスから形成される。本発明において使用される不連続な補強繊維材料のセグメントの長さは、約2mm〜約25mmの長さ範囲で変化してよい。
【0068】
繊維−サイズ組成物は、イン・ライン操作で、即ち、フィラメント形成プロセスの一部として、例えば形成された直後の補強繊維材料の連続的なフィラメントに塗布されてよい。或いは、繊維−サイズ組成物は、先に形成され且つパッケージされた補強繊維材料の巻回を解いたストランドに対して、オフ・ラインで塗布されてもよい。また、ストランドは、オフ・ラインでカット又はチョップされてもよい。繊維−サイズ組成物を塗布するための手段には、補強繊維材料フィラメント表面の実質的な量を繊維−サイズ組成物で濡らすことを可能にするパッド、噴霧器、ローラもしくは浸漬浴が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
好ましくは、繊維−サイズ組成物は、複数の連続的に形成された補強繊維材料のフィラメントに対して、それらがブッシングのような繊維形成装置から形成されたときに直ちに塗布される。ブッシングには、好ましくは、溶融した補強繊維材料の細い糸を通過させる小さな孔が設けられている。溶融材料の流れがブッシングの孔から出現するときに、各々の流れは細くなり、下方に引出されて長い連続的なフィラメントを形成する。繊維−サイズ組成物の塗布を含むフィラメント形成プロセスの後に、該連続的に形成されたフィラメントは、ストランドに集められてイン・ライン操作でチョップ又はカットされてよく、或いは、それらはストランドに集められて形成パッケージ又はドフ(doff)に巻回され、その後に任意にオフ・ライン操作でチョップされてもよい。次いで、このチョップされたストランド又は形成パッケージは乾燥される。典型的には、チョップされたストランドは、約50℃〜約300℃の温度を使用してオーブンの中で乾燥される。典型的には、形成パッケージは、例えば、約100〜150℃の温度で約3時間〜約30時間だけ静的オーブンの中で乾燥され、その後に、それらは複合材製造操作に使用するための準備が整う。勿論、他の乾燥技術を使用することもできる。ガラス繊維−サイズ組成物は、典型的には、繊維−サイズ組成物及びガラス繊維の乾燥固体の全質量に基づいて約0.01〜約6質量%乾燥固体を与える量で、好ましくは約0.03〜約5質量%乾燥固体の量で、最も好ましくは約0.1〜約4質量%乾燥固体の量で、繊維に対して塗布される。
【0070】
得られたサイズ塗布された補強繊維材料は、主に、繊維に堆積された非変色性の本発明の繊維−サイズ組成物の使用に起因して、実質的に変色のない複合材料を形成するために利用されてよい。この目的のための適切なマトリックス樹脂は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、溶液加工可能なポリマー、水ベースのポリマー、モノマー、オリゴマー、及び空気、熱、光、X線、ガンマ線、マイクロ波放射線、誘電加熱、UV線、赤外線、コロナ放電、電子ビーム及び他の同様の形態の電磁波によって硬化可能なポリマーであってよい。適切なマトリックス樹脂には、ポリオレフィン、修飾ポリオレフィン、飽和もしくは不飽和のポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリアンハイドライド、ポリイミンエポキシ、ポリアクリル、ポリビニルエステル、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
好ましくは、マトリックス樹脂はポリオレフィンである。このようなポリオレフィンの一例は、ドイツ国マインツに所在のバーゼルポリプロピレンGmbH社から、「Moplen・HF1078」として商業的に入手可能なポリプロピレンホモポリマーである。当該複合材処方はまた、例えばカップリング剤、適合化剤、難燃剤、含量、抗酸化剤、潤滑剤、静電気防止剤、及び充填剤のような、1以上の従来知られた添加剤を含んでよい。配合プロセスの際に使用される適切な商業的に入手可能な抗酸化剤は、スイス国バーゼル所在のチバ・スペシャルティーケミカルズInc.社から、「HP2215」の商標で販売されている製品である。PB3200のようなカップリング剤(無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン)は、アメリカ合衆国ルイジアナ州タフト(Taft)所在のユニロイヤル(コンプトン)社から入手可能である。典型的には、これら添加剤は、サイズ塗布された補強繊維及びマトリックス樹脂の全質量の0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.2質量%〜7.5質量%、最も好ましくは0.25質量%〜約5質量%の量で塗布される。
【0072】
サイズ塗布された補強繊維材料及びマトリックス樹脂を混合及びモールド成型して複合材を形成するプロセスは、当該技術で従来知られた何れかの手段によって達成されてよい。このような混合及びモールド成型手段には、押出し、ワイヤコーティング、圧縮モールド成型、射出モールド成型、押出し/圧縮モールド成型、押出し/射出/圧縮モールド成型、長繊維注入、及びプッシュトリュージョン(pushtrusion)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、ポリオレフィン組成物を使用するときは、チョップ繊維ストランドが繊維−サイズ組成物でコーティングされ、ポリオレフィン樹脂マトリックスと共に押出されてペレットに形成される。次いで、これらのチョップされたペレットは、所望の複合材製品へと適切に射出モールド成型される。
【0073】
複合材に含められるマトリックス樹脂の量は、一般には、複合材処方の全質量に基づいて約10質量%〜約99質量%である。好ましくは、マトリックス樹脂のパーセント組成は、約30質量%〜約95質量%である。より好ましくは、該複合材の全質量に基づいて約60質量%〜約90質量%である。
【0074】
本発明の繊維−サイズ組成物は、補強繊維上のコーティングを提供し、これは樹脂マトリックスとの適合性及び接着性を改善して、更に望ましい性質、例えば短期及び長期の高い機械的特性、並びに化学薬品、洗剤、酸化及び加水分解に対する増大した抵抗性を備えた複合材をもたらす。メカニズムは完全には理解されていないが、複合材においては、複合材処方の中に存在するマトリックス樹脂及び他の成分を攻撃する化学薬品、洗浄剤及び水は、複合材特性の原因であるガラス−マトリックス中間層領域をも攻撃して、接着性及び複合材特性を低下させることが認められる。
【0075】
最終複合材製品の特定の着色が望ましい場合は、モールド成型プロセスの前又はその最中に、顔料又は他の色増強剤を複合材処方に添加してよい。加えて、複合材処方は、モールド成型された複合材製品の望ましい色に影響し得るような、如何なる固有の色も含まないのが望ましいであろう。従って、該複合材は、透明又は中性の色を有するのが望ましい。他の応用において当該複合材処方は白色であるのが好ましいことがあり、この場合は白色顔料が添加されてよい。また、白色複合材処方の調製においては、該複合材の変色が最小限に維持されることも望ましいであろう。
【0076】
上記に開示された繊維−サイズ組成物は、適切には、エマルジョンを含んでなり、エマルジョンからなり、又は実質的にエマルジョンからなり、該エマルジョンは、修飾ポリオレフィン、親水性カップリング剤、並びに下記a)〜d)の少なくとも一つ:a)少なくとも一方の脂肪酸が二つの酸基を有する少なくとも二つの飽和脂肪酸、b)疎水性カップリング剤、c)フッ素含有化合物、及びd)環式飽和脂肪酸、他の添加剤及び消泡剤を含むものである。
【0077】
少なくとも一方が二つの酸基を備えた少なくとも二つの飽和脂肪酸のブレンドが使用されるとき、当該繊維−サイズ組成物は、修飾ポリオレフィンのエマルジョン、親水性カップリング剤、消泡剤、無機抗酸化剤、及びフッ素含有化合物、並びに二つの脂肪酸からなってよく、又は実質的にこれらからなってよく、ここでの修飾ポリオレフィンのエマルジョンは、修飾ポリオレフィン、飽和脂肪酸、非イオン性乳化剤、塩基及び水からなり、又は実質的にこれらからなる。塩基は、ヒドロキシルアミンに限定されてよい。更に、この組成物は、乳化剤、潤滑剤、湿潤剤、及び色増強剤もしくは色補償剤の形態の、追加の添加剤の何れか又は全てを欠如していてもよい。ここに例示的に開示された本発明は、ここでは具体的には開示しなかったが、何れかの要素の不存在下において実施されてもよい。異化の実施例は代表的なものではあるが、本発明の範囲に関して如何なる制限を加えるものでもない。
【実施例】
【0078】
以下の開示において、パートAは、二以上の飽和脂肪酸を有するエンハンサをサイズ組成物中に用いて製造された、繊維−サイズ組成物の例及び試験に向けられている。パートBは、フッ素含有化合物、疎水性カップリング剤、及び環式脂肪酸を特徴とするエンハンサを用いて製造された例、及び試験に向けられている。
【0079】
パートA:
<概観>
本発明の繊維−サイズ組成物は、表1に列記した処方に従って調製された。これらの繊維−サイズ組成物を使用して、これも表1に列記したチョップドストランドを調製した。表1に記載したチョップドストランドは、表2に列記した配合処方に従って押出し混合された。表2はまた、更なる試験目的のために使用される、射出モールド成型された複合材試験片に言及している。調製された複合材試験片の各々は、短期及び長期の機械的特性、長期の加水分解及び洗浄剤エージング抵抗、並びに着色のような性質を測定するための試験を受けた。種々の試験の結果は、表3〜表6に報告されている。
<チョップドストランド繊維の例(A〜H、J〜L)>
種々のチョップドストランドガラス繊維ストランドが、本発明のサイジング処方に従って調製された。チョップドストランドA〜H及びJ〜Lは、全て異なる時点で製造された。チョップドストランドKと共に使用されたサイジング処方は光学的増白剤を含んでいたのに対して、チョップドストランドJと共に使用されたサイジング処方はこれを含んでいなかった。表1は、それらの製造に使用されたチョップガラス繊維及びサイジング処方を報告している。








【0080】
【表1】

【0081】
サイズ組成物を作製するために成分が添加される順序は、重要ではないかもしれない。しかし、好ましくは、最初に無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンのエマルジョンを水(希釈剤)に添加し、次いで水性飽和脂肪酸ブレンドを添加することによって、10リットルの各処方を調製した。この混合物を、約5分〜30分間撹拌することによってブレンドする一方、撹拌している間の該混合物の温度は、約25℃(76.9°F)に維持された。混合物が完全にブレンドされた後に、アミノシランカップリング剤を組成物に添加し、好ましくは約5cps〜20cPsの粘度を与えるように水含量を調節した。
【0082】
当該繊維−サイズ組成物は、当該技術において既知の何れかの方法によって、繊維の製造の際、又は更に後の段階において繊維に塗布することができる。各繊維−サイズ組成物は、浸漬塗布ローラプロセスを使用してガラス繊維ストランドに塗布された。このプロセスにおいて、該繊維は、繊維−サイズ組成物の循環浴中に浸漬されている回転アプリケータの表面に接触することによって、それらの製造の際に繊維−サイズ組成物をピクアップする。従って、繊維−サイズ組成物は、連続的な繊維製造の際に繊維に塗布される。このタイプのプロセスは、屡々、イン・ライン・プロセスと称される。回転するアプリケータの表面から繊維によってピックアップされる繊維−サイズ組成物の量は、塗布ロールの速度、繊維−サイズ組成物の濃度、及び繊維製造の際に噴霧される水の量のような幾つかの因子によって影響される可能性がある。イン・ライン・プロセスにおいては、繊維−サイズ組成物は直径の異なる繊維に塗布することができるが、9〜27μの直径範囲が好ましく、11〜17ミクロンの範囲が最も好ましい。本発明の繊維−サイズ組成物は、表1に示すように直径が約12〜14ミクロンの繊維に塗布された。
【0083】
製造プロセスにおいては、次に繊維が集められてストランドに形成され、これはオーエンズ・コーニング(Owens Corning)社が命名したCratec(登録商標)プロセスと称するイン・ラインのチョッピングプロセスを使用して、ストランドにチョップされる。このプロセスに際し、ガラス繊維はその製造の間に、チョッパを使用してイン・ラインでチョップされ切断される。該ストランドのチョップされた長さは、約3mmから25mmまで変動してよい。チョップドストランド長さの好ましい範囲は、3.5mm〜13mmである。チョップされた長さの最も好ましい範囲は、3.5mm〜4.5mmである。また、この最も好ましい範囲の長さは、高剪断押出しプロセスのためにも適している。次いで、このチョップドストランドは、ガラス繊維上の繊維−サイズ組成物を固化させるためにベルト上を乾燥オーブンへと運ばれる。乾燥する前に、チョップトストランドは任意に、オーエンズ・コーニングによって命名されたCratec・Plus(登録商標)プロセスを通して、更なる取扱い及び加工に適したサイズのストランド束を形成するために送られてよい。このCratec・Plus(登録商標)プロセスは、Cratec(登録商標)プロセスの拡張であり、そこではガラス繊維がCratec(登録商標)プロセスを使用してイン・ラインでチョップされ、次いでタンブラーの中でイン・ラインで処理されて、Cratec(登録商標)プロセスで得られるよりも大きいストランド束を生じる。Cratec(登録商標)プロセス及びCratec・Plus(登録商標)プロセスは、例えば、米国特許第5,578,535号、同第5,693,378号、同第5,868,982号、及び同第5,945,134号に記載されており、これらの各々を本明細書の一部として援用する。乾燥オーブンにおいて、チョップドストランドは乾燥され、繊維−サイズ組成物は、制御された温度の熱空気流を使用して固化される。次いで、乾燥された繊維をスクリーンン上に通して長い綿毛球、及び他の望ましくない物質を除去し、最終的に、より望ましい形態のチョップドストランドを回収する。
【0084】
<処方剤を混合する(実施例1〜14及び参考例1〜3、2a、3a)>
表2において、本発明のサイジング組成物でコーティングされたチョップドストランド上、及び参考例チョップドストランド上に、調合処方が使用された。
【表2】

【0085】
表2の実施形態において、30質量%の乾燥されたチョップドストランドが、Werner & Pfleidererから入手したツインスクリュー押出し機ZSK30/2型において、70質量%のポリプロピレンマトリックス樹脂と合体されて、配合されたペレットが形成された。押出し配合の際に、Uniroyalから入手したPolybond・PB3200のようなカップリング剤を、任意にポリマーマトリックス樹脂と合体及び混合させて、最終的な複合材の特性を改善してよい。このようなカップリング剤は、ガラス及びマトリックス樹脂の全質量に基づいて0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%、及び最も好ましくは0.5〜3質量%のカップリング剤を使用して、樹脂マトリックスと配合する間に混合することができる。また、押出し配合の間に、フェノール系、亜リン酸系、又はラクトン系のような種々のタイプの抗酸化剤を、複合材の最適な特性のためにマトリックス樹脂と合体及び混合してもよい。このような抗酸化剤は、ガラス及びマトリックス樹脂の全質量に基づいて0.1〜3%、好ましくは0.3〜2質量%、及び最も好ましくは0.5〜1質量%の抗酸化剤を使用して処方されてよい。処方を配合する際には、チバ・スペシャルティーケミカルズ社から入手可能なHP2215及びHP2225のような抗酸化剤を使用してよい。 何故なら、これらの抗酸化剤はフェノール系、亜リン酸系、及びラクトン系の抗酸化剤に基づいており、それによって特に加工の際の熱分解を制御することにおいて、よりバランスの取れた効果を与えるからである。任意に、ペレットに色付けするために、ZnS(Sachtleben・Chemie社から「Sachtolith HDS」の商標名で商業的に入手可能な白色顔料)のような色補償添加剤を、ガラス及びマトリックス樹脂の混合物の全質量に基づいて0.05%〜10%の顔料、好ましくは0.1〜5質量%、及び最も好ましくは0.5〜5質量%の範囲で、マトリックス樹脂に混合してもよい。
【0086】
その後、押し出し配合されたペレットを適切な標準のモールド成型装置の中に供給して、複合材部品を形成する。本発明の一つの実施形態では、Demag・D80射出モールド成型機(DemagハミルトンプラスチックLtdから入手可能)を使用してモールド成型を行ない、複合材特性を測定するために使用する複合材試験サンプルを製造した。従って、表2の押出し配合されたペレットの各サンプルは、標準の射出モールド成型によって更に複合材試験片に成型された。従って、最終の射出モールド成型された複合材片は、表2で述べたのと同じ数字及び名称で参照される。
【0087】
<試験>
得られた複合材部品は、次いで、引張り強度、アイゾット及びシャルピー衝撃強度、引張り疲労、及び引張りクリープを含む一定の物理的特徴を測定するために試験された。該部品はまた、加水分解及び洗浄剤に対する抵抗性について該部品を試験することにより、エージングをシミュレートするために試験された。これら種々の試験の結果が、表3〜表6に報告されている。
【0088】
<短期の機械的特性及び着色(実施例1〜12、参考例1〜3、2a、3a>
表3に報告した試験結果は、実施例1〜12、参考例1〜3、2a、3aに従う複合材モールド成型片についての、引張り強度及び衝撃強度のような短期(モールド成型された乾燥状態)の機械的特性の測定値、並びに色に関する測定値である。
【表3】

【0089】
引張り強度は、伸び力が印加される時の抵抗の尺度であり、Zwick社のユニバーサル試験機を使用して、ISO法3268に従って測定され、結果はMPaで報告された。衝撃試験は、Zwick社の衝撃試験機を使用して実行された。KJ/m2で測定されたIZOD衝撃強度は、複合材が耐えることができる衝撃値からの程度の尺度であり、ノッチ形成のない検体においてはISO法179/IDに従って測定され、またノッチ形成のある検体(2mmのノッチを形成した)においてはISO法180に従って測定された。シャルピー衝撃強度もまた、衝撃強度の尺度であり、KJ/m2での抵抗として測定された。シャルピー強度は、ISO179/D法に従って測定される。
【0090】
複合材サンプルの色は、ChromaControllソフトウエアを装備したミノルタCIELab色メータを使用して定量化した。色を測定するときには、ディスク形状の標準モールド成型片を使用した。色は、白色度(「L」値として報告される)、赤−緑相関(「a*」値として報告される)、及び青−黄層間(「b*」値として報告される)に関して測定された。より高い「L」値は、より高い反射率をもった試験片のより白い又はより明るい色を示す。正の「a*」値が高いほど、試験片がより赤いことを示し、また負の「a*」値が高いほど、試験片がより緑色であることを示す。
【0091】
同様に、正の「b*」値が高いほど、試験片がより黄色であることを示し、また負の「b*」値が高いほど、試験片がより青色であることを示す。白色度を達成し、又は何れかの色に適合するためには、通常は色補償添加剤が添加される。しかし、このような補償添加剤は複雑な色形成を導き、最終的な複合材部品の色を適合することが非常に困難で、時間要するものになり、また更にコスト高になる。例えば、高い「b*」値を有する部品の黄色を隠蔽又はマスクするために、青化剤を使用する補償青色を添加して「b*」値を低い値にシフトさせてよい。この青化剤はまた、最初の「a*」値を意変化させて望ましくない着色をもたらす。このような色補償添加剤は必要ではないが、本発明とともに使用されてもよい。
【0092】
顔料を添加しない押出し配合処方の場合、実施例1〜6における複合材の各々が、参考例1、参考例2、及び参考例3の複合材サンプルと比較された。顔料を添加した押出し配合処方の場合、実施例7〜12における複合材の各々が、参考例2及び参考例3の複合材サンプルと比較された。試験の結果が表3に報告されている。
【0093】
<長期のエージング特性>:
<加水分解試験及び洗浄剤試験(実施例1〜6、13、14及び参考例2、3)>
実施例1〜6、13、14及び参考例2、3について、それらを加水分解及び洗浄剤条件に露出させた後に、引張り強度試験が行われた。これらの条件は、ランドリーもしくは洗濯機タブ複合材部品が受け得る加水分解条件及び洗剤エージング条件をシミュレートすることを意図したものである。このような状況においては、上昇温度で長期間に亘る、当該複合材の性質の湿潤強度及び最大保持が望ましい。洗浄剤a−ジング抵抗を試験するための条件を見積もるために、実施例1〜6、参考例2及び参考例3の処方に従ってモールド成型された各複合材のサンプルを、1%洗浄剤溶液を含有する浴中に浸漬し、約95℃(203°F)の温度で30日まで維持した。洗浄剤溶液は毎日交換された。























【0094】
同様に、加水分解エージング抵抗を測定するためのサンプルを調製のために、実施例13及び14、並びに参考例2及び参考例3に従ってモールド成型された各複合材のサンプルを、約95℃(203°F)の温度に維持される水浴中に浸漬した。洗浄剤及び加水分解試験の両方において、サンプルは1、3、5、10、20及び30日の間隔で取り出され、その時点で各サンプルの引張り強度が測定された。洗浄剤エージング抵抗性、引張り強度及び衝撃強度についての試験の結果が、表4に報告される。加水分解エージング抵抗性、引張り強度及び衝撃強度についての試験の結果が、表5に報告される。
【0095】
【表4】


【表5】

【表6】


【表7】

【0096】
<長期の機械的特性>
<引張りクリープ及び疲労(実施例13、参考例2、参考例3)>
長期の機械的特性を測定するために、実施例13、参考例2及び参考例3に対して、引張り疲労及び引張りクリープ試験を実施した。その結果を表6に報告する。表6の結果は、本発明の実施例により示された絶対値、並びに参考例2及び参考例3と比較したときにの相対的な改善%を報告している。試験は次のようにして実施された。
【0097】
<設備>
モールド成型された検体を80℃(176°F)にコンディショニングするためのサーモトロン(Thermotron)環境チャンバの中にクランプを備えた、インストロン1331サーボ水圧式試験機。試験は、インストロンMAXソフトウエアを実行するIBM互換機PCによって制御された。
【0098】
<方法>
引張りクリープは、1.3cm(0.5インチ)のテーパしたモールド成型棒を、120kgの固定された平均レベル及び振幅ゼロを使用した負荷制御で、インストロン1331サーボ水圧式試験機の中に配置することによって測定される。情報温度は80℃(176°F)である。破損時間(クリープ破断までの時間)を三つの検体について平均した。疲労は、サイン波形を使用した負荷制御で、インストロンサーボ水圧式機会の中に検体を配置することによって測定される。各サイクルについて、最大応力に対する最小応力の比率は0.05である。試験周波数は6Hzである。58MPa(8400psi)、61MPa(8900psi)、及び69MPa(10,000psi)の三つの応力レベルが屡々選択された。本発明の複合材片について、58MPa(8400psi)の負荷が使用される。破損までのサイクル数が三つの検体について平均された。
【表8】

【0099】
<結果の要約>
表3に見られるように、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された顔料を添加しない配合処方の複合材サンプルは、参考例複合材サンプル(参考例1及び参考例3)に比較して、遥かに望ましい短期(モールド成型された乾燥状態)の機械的特性(例えば引張り強度、衝撃強度)を示す。
【0100】
顔料を添加した配合処方において、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材サンプルは、参考例2a及び参考例3aに比較して、更に望ましい短期の機械的特性を示す。最低の短期の機械的特性は、顔料添加及び顔料無添加の配合処方の両方において、参考例3aについて測定された。
【0101】
顔料無添加の配合処方において、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材は、より低い「a*」及び「b*」値を有し、参考例1、参考例2及び参考例3に比較して更に中性の色を示している。顔料を添加した配合処方においては、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材は、参考例2aよりも良好な白色を有しているが、参考例3aとは同等である。本発明の繊維−サイズ組成物及び12μ繊維を用いて製造された複合材サンプルは、14μ繊維で製造された如何なる複合材よりも高い引張り強度を示す。
【0102】
表4に示すように、繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材は、参考例に比較して、より良好な長期のエージング及び洗剤抵抗性を示す。結果から分かるように、本発明の繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材は、参考例2及び参考例3に比較したときに、初期強度及び30日までの洗剤エージング後の強度について、より高い絶対値を有する。また、本発明の繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材は、参考例2及び参考例3と比較したときに、30日までエージング後に、初期機械的強度のより高いパーセンテージを維持する。こうして、本発明の繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材によって、30日の洗剤エージングの後に、初期引張り強度の85%、初期衝撃強度(シャルピー・ノッチ形成なし)の62%までが維持された。しかし、参考例2では、同じ30日の期間内に、初期引張り強度の約79%及び初期衝撃強度の約49%だけが維持された。
【0103】
同様に、表5の結果から分かるように、参考例2及び参考例3に比較したときに、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材は、初期強度及び20日までの加水分解エージング後の強度について、より高い絶対値を示す。また、本発明の繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材は、参考例2及び参考例3と比較したときに、20日までの加水分解エージング後に、初期機械的強度のより高いパーセンテージを維持する。こうして、本発明の繊維−サイズ組成物を使用して製造された複合材によって、30日の洗剤エージングの後に、初期引張り強度の96%、初期衝撃強度(シャルピー・ノッチ形成なし)の73%までが維持された。しかし、参考例2及び参考例3では、それぞれ当初の引張り強度の90%及び93%だけが、また当初の衝撃強度のそれぞれ65%及び66%だけが維持できたに過ぎない。
【0104】
複合材についての長期の機械的特性の結果が、表6に報告されている。この結果から分かるように、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材は、参考例及び参考例3の両方に対して、引張り披露及び引張りクリープ特性の両方において大きな改善を提供することが明らかである。こうして、引張り疲労については、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材の長期機械的特性の改善%は、参考例2に対して35%、また参考例3に対して152%であった。同様に、引張りクリープについては、本発明の繊維−サイズ組成物を用いて製造された複合材の長期の機械的特性の改善%は、参考例2に対して31%、参考例3に対して629%であった。
【0105】
従って、本発明の繊維−サイズ組成物でコーティングされた繊維を用いて製造された複合材部品は、より良好な短期の機械的特性、改善された長期の機械的特性、改善された洗剤及び加水分解エージング抵抗性、エージング後の初期強度のより高い維持、及び良好な色を提供する。
【0106】
パートB:
<概観>
本発明の繊維−サイズ組成物が、表7A及び表7B(表7Bは表7Aの続きである)に列記した処方に従って調製された。これらの繊維−サイズ組成物を使用して、表1に列記したチョップドストランドを調製した。表7A及び表7Bの繊維−サイズ組成物を使用して、Eガラス繊維、並びにEガラスのタイプの実質的にホウ素及び/又はフッ素を含まないガラス繊維のチョップドストランドを調製した。ホウ素及び/又はフッ素を含まないガラス繊維は、米国特許第5,332,699号に記載されており、該特許は、その全体がここに完全に再掲されているのかのように、本願に援用される。表8に記載したように、Eガラスのチョップドストランドは、その調製に用いた繊維−サイズ組成物の指定の末尾における文字Eによって指定されるのに対して、ホウ素/フッ素を含まないガラスのチョップドストランドは文字Aによって指定される。次に、チョップドストランドは、表8に記載の配合処方に従って押出し混合された。次いで、これらを射出モールド成型して、更なる試験のために使用する複合材試験片を製造した。サイズを塗布した繊維、ペレット、及びこれらを組込んだ試験片似付いて、同じ名称が使用される。
調製された複合材試験片の各々を、機械的特性、水エージング後の機械的性質の維持、及び熱エージングの前後の色パラメータを測定するための試験にかけた。種々の組成物の試験結果が表9に報告されている。
【0107】
<チョップドストランド繊維の実施例>
表7A及び7Bに記載のサイジング処方をEガラス及びホウ素/フッ素を含まないガラス繊維に適用することにより、種々のチョップドガラス繊維ストランドを調製した。このサイジング処方は、特に、ホウ素/フッ素を含まないガラス繊維がマトリックス組成物中に使用されるときに、サイジング材料でコーティングされたガラス繊維がその中に組込まれる得られたマトリックス組成物の強度及び色特性を改善する、該サイジング処方における種々の材料の使用に向けられている。これらの材料には下記のものが含まれる:1)フッ素化合物(S1〜S3、S5、S7、S9、S10、及びS12)、2)疎水性カップリング剤(処方S3〜S5、及びS8〜S13)、3)環式脂肪酸(処方S2〜S3)、4)抗酸化剤(S1〜S12)、5)ホウ素化合物(処方S11)、及び6)ポリウレタン(処方S12)。
【0108】
【表9】


【0109】
【表10】

【0110】
表7A及び7Bの繊維−サイズ組成物は、水中に分散されたポリプロピレンの第一のプレミックスを作製することにより処方された。使用するときに、ポリウレタンを撹拌しながらこのプレミックスに添加した。フッ素エンハンサ及び抗酸化剤のような水溶性の物質は、水の中に溶解し、撹拌しながら前記プレミックスに添加した。適切な潤滑剤、湿潤剤、表面活性剤及び消泡剤と共に、疎水性カップリング剤及び飽和もしくは環式脂肪酸のような選択された成分の第二のプレミックスを調製し、これを撹拌しながら前記第一のプレミックスに加えた。次いで、水中の親水性カップリング剤を加えた。最後に、望ましい固体含量を達成するために脱ミネラル水を添加した。得られた溶液の粘度は、好ましくは約5cP〜約30cPである。種々の混合物の温度は約25℃(76.9°F)に維持され、約5〜30分で混合が達成された。
【0111】
各繊維−サイズ組成物は、浸漬塗布ローラプロセスを使用して、ガラス繊維フィラメントに塗布された。このプロセスにおいて、フィラメントは、その製造の際に、繊維−サイズ組成物の循環浴中に浸漬された回転アプリケータの表面と接触することによって、繊維−サイズ組成物をピックアップする。その結果、繊維−サイズ組成物は、繊維製造の際にフィラメントに連続的に塗布される。このタイプのプロセスは、特徴的にはイン・ライン・プロセスと称される。回転アプリケータの表面からフィラメントにピックアップされる繊維−サイズ組成物の量は、アプリケータロールの速度、繊維−サイズ組成物の濃度、及び繊維製造の際に噴霧される水の量のような、幾つかの因子によって影響され得る。本発明の繊維−サイズ組成物は、表8に示される直径が13μ及び14μの繊維に塗布された。
【0112】
次に、フィラメントは集められてストランドが形成され、該ストランドはイン・ラインチョッピングプロセスを使用して短い長さにチョップされた。このプロセスの際に、ガラス繊維は、チョッパ及びコット(cot)を使用してイン・ラインでチョップされた。このチョップされたストランドの長さは、高剪断押出しプロセスのための好ましい範囲である3.5mm〜4.5mmであった。次いで、該チョップドストランドは、ガラス繊維状の繊維−サイズ組成物を固化させるために、ベルト上で乾燥オーブンへと搬送された。乾燥オーブン中において、チョップドストランドは乾燥され、繊維上の繊維−サイズ組成物は、制御された温度の熱空気流を使用して固化された。次いで、乾燥された繊維をスクリーンン上に通して、長い綿毛球、及び他の望ましくない物質を除去し、最終的に、より望ましい形態のチョップドストランドを回収した。
【0113】
<配合処方>
表8において、表7A及び7Bに記載のサイジング処方でコーティングされたEガラス又は実質的にホウ素/フッ素を含まないガラスのチョップドストランド上で、配合処方が使用された。チョップドストランドは、それがコーティングされる表7A及び7Bに記載の配合処方の文字及び数字で指定される。コーティングの指定は、A又はEの文字で終わり、ここでの文字Aはホウ素を含まない繊維を指定し、文字Eは、Eガラス繊維を指定する。ホウ素を含まない繊維の直径は、14μであるC1Aを除いて全部が13ミクロンであった。サンプルC1E及びS1〜S3E及びS9EのためのEガラス繊維は、直径が14μであった。
【0114】
表8の実施形態においては、30質量%の乾燥されたチョップドストランドを、Werner & Pfleiderer社から入手したZSK30/2型ツインスクリュー押出し機中で67.8質量%のポリプロピレンマトリックス樹脂(HF1078)と合体させ、配合されたペレットを形成した。押出し配合の際、最終的な複合材の特性を改善するために、Uniroyal(Crompton)社から入手可能なPolybond PB 3200等のカップリング剤(1.2質量%)を、ポリマーマトリックス樹脂と混合した。また、チバ・スペシャルティーケミカルズ社から入手可能なHP2215等の抗酸化剤(1.0質量%)も、マトリックス樹脂に合体及び混合された。処方における全ての成分は合計100質量%である。即ち、質量%は当該処方の全乾燥質量に基づくものである。
【0115】
その後、押出し配合されたペレットは、Arburg 420C(Class All Rounder 800−250)射出成型機(ドイツ国ロスブルグのArburg GmbH and Companyから入手可能)を使用してモールド成型され、サイズ塗布されたガラス繊維補強複合材製品に形成された。
【0116】
【表11】

【0117】
<試験>
複合材部品は、引張り強度及びシャルピー(ノッチ形成なし)衝撃強度を含む、一定の物理的特性を測定するために試験された。該部品はまた、加水分解及び熱に対する抵抗性について該部品を試験することにより、エージングをシミュレートするために試験された。複合部材はまた、製造された乾燥状態(DAM)の色及び熱エージング後の色に関しても試験された。種々の試験の結果が表9に報告されている。
【0118】
引張り強度は、伸び力が加えられるときの抵抗の尺度であり、ISO法3268に従い、Zwickから入手したユニバーサル試験機を使用して測定した。シャルピー強度は、衝撃強度の尺度であり、KJ/m2の抵抗として測定された。シャルピー強度は、ISO179/D法に従って測定された。
【0119】
フクゴウザイの色は、ChromaControllソフトウエアを装備したミノルタCIELab色メータを使用して定量化された。色を測定するときには、ディスク又はプラーク形状の標準のモールド成型片を使用した。色は、青−黄色着色(「b*」値として報告)及び黄色指数(「YI」値として報告)に関して測定された。正の「b*」値が高いほど、試験片がより黄色いことを示し、また負の「b*」値が高いほど、試験片がより青色であることを示す。「YI」値が高いほど、試験変がより黄色であることを示す。b*及びYIにおける変化が熱エージングの後に決定され、Δb*値及びΔYI値として報告される。
【0120】
加水分解エージング抵抗を測定するために、各複合材のサンプルは水浴中に浸漬され、約95℃(203°F)の温度に維持された。該サンプルは20日後に取出され、その時点で引張り強度が測定された。熱エージングは、サンプルを150℃(303°F)のオーブンの中に24時間置くことによって実施された。
【0121】
【表12】

【0122】
<結果の要約>
ガラス繊維サイジング組成物中に添加されたフッ素含有化合物の、得られたサイズ塗布したガラス繊維で補強された複合材の特性に対する影響を評価するために、種々の組のサンプル、即ち、S4A対S5A、S6A対S7A、S8A対S9A、及びS11A対S9Aを比較した。各々の対において、最初の繊維−サイズ組成物はフッ素含有化合物を欠いているのに対して、二番目の組成物はフッ素化合物を含んでいる。表9における上記の対についての試験結果を見れば分かるように、フッ素化合物の添加は、大部分の初期強度、全ての水エージング強度パラメータ、並びに全ての維持パーセントの所見を改善した。フッ素添加剤はまた、全ての初期及び熱エージング後の色変化特性を改善した。S9E(Eガラス)複合材サンプルをS9A(ホウ素/フッ素を含まないガラス)複合材サンプルと比較したときに、初期及び水エージング後の引張り強度と共に、全ての色パラメータ(初期及び熱エージング後の両方)が、ホウ素/フッ素を含まないガラスについて更に良好であった。
【0123】
ガラスサイズ組成物への疎水性カップリング剤添加の効果は、次の組のサンプルを調べることによって見ることができる:S7A対S5A、S6A対S4A、S7A対S9A。各々の対において、最初の複合材は疎水性カップリング剤を欠いていたのに対して、ニ番目の複合材はこのような成分を含んでいた。両補言うとも疎水性カップリング剤を含んでいる、Eガラス補強複合材(S9E)及びホウ素/フッ素を含有しないガラス補強複合材(S9A)もまた比較された。結果を見れば、疎水性カップリング剤の添加は、多くの強度パラメータ及び殆どの色パラメータ、初期及び熱エージング後の変化の両方について、水エージング後の改善された引張り強度パラメータを与えることが分かる。
【0124】
ガラス繊維補強複合材の特性に対する環式脂肪酸の効果は、S5AをS3Aと比較することによって立証される(前者は脂肪酸を含まず、後者は環式脂肪酸を含んでいる)。環式脂肪酸と飽和脂肪酸との間の強度及び色の相違は、S1A対S2A、及びS1E対S2E(各組の最初の複合材は飽和脂肪酸を含み、後者の複合材は環式脂肪酸を含む)を比較することによって見ることができる。最後に、S3E対S3Aを調べることによって、ホウ素/フッ素を含まないガラス複合材をEガラス補強複合材と比較した。環式脂肪酸は、全ての初期シャルピー試験(ノッチ形成なし)、及び幾つかの初期引っ張り、水エージング後の引張り、維持パーセント、及び水エージング後のシャルピー試験、並びに初期色試験について改善を示した。
【0125】
本発明のサイズ塗布したガラス繊維で補強された複合材の種々の強度及び色パラメータに対する抗酸化剤の影響は、S13A対S4A、及びS13A対S8Aについての試験結果を調べることによって見ることができる。ここで、初期b*及びΔYIを除き、抗酸化剤は他の特性、特に水エージング後の引張り強度及び維持値についての改善を提供する。比較例サンプルC1A及びC1Eを、それぞれサンプルS1A及びSAEと比較することにおいて分かるように、テトラフルオロボレート及び抗酸化剤の組み合せは、初期及び水エージング後試験において、ホウ素/フッ素を含まないガラス及びEガラスの両方について更に良好な結果をもたらす。初期条件及び水エージングの両方の条件下での予備的な引張りクリープ試験及び引張り疲労試験は、試験された殆どのサンプルのこれらパラメータについて、100%を越える増大を示した
【0126】
ホウ素の効果は、S4A対S11A、及びS8A対S11Aを試験することによって見ることができる。ここで、複合材サンプルS4A及びS8Aはホウ素を有していないのに対して、複合材サンプルS11Aはホウ素化合物を使用する。ホウ素は、全ての試験について、より良好な初期試験値を生じる。
【0127】
サイズ組成物に対するポリウレタン膜形成剤の影響(修飾ポリプロピレンに加えて)は、複合材S10A(ポリウレタンなし)についての試験結果を、S12A(ポリウレタンを含む)と比較することによって見ることができる。明らかなように、ポリウレタンは、水エージングと共に、より良好な強度維持を与える。この添加剤を用いた繊維ストランドは、一般には、エマルジョン形成の及び塗布に際して更に良好な加工品質を有し、また最初の繊維形成及び引続く繊維−樹脂マトリックスの加工に際して、繊維の一体性を与える。S12AをS13Aと比較することで分かるように、ポリウレタンは、フッ化物及び抗酸化剤を含まないサンプルに比較したときに、前記特性に対して認め得る影響を与えない。
【0128】
一般的に、フッ素含有化合物、疎水性カップリング剤、環式脂肪酸、抗酸化剤、ホウ素含有化合物、及びポリウレタンのような種々のサイズ組成物添加剤は、複合材製品処方の強化において使用されるように、ホウ素/フッ素を含まないガラス繊維を含むEガラスの強度、色パラメータ、及び加工パラメータを改善することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維−サイズ組成物であって、
a)修飾ポリオレフィンと、
b)親水性カップリング剤と、
c)下記の1)〜4)の少なくとも一つを有するエンハンサ
1)フッ素含有化合物、
2)疎水性カップリング剤、
3)環式脂肪酸、
4)少なくとも一つの脂肪酸が二以上の酸基を有する少なくとも二つの
飽和脂肪酸、及び
5)これらの混合物、
を含有することを特徴とする繊維−サイズ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記繊維−サイズ組成物が水をベースとする組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記修飾ポリオレフィンが、前記ポリオレフィン、脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基及び水を含む、単一の加圧、加熱及び撹拌された混合物からの非イオン性水性ポリマーエマルジョンとして形成される組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記修飾ポリオレフィンは、分子量が約80,000より大きい無水マレイン酸で修飾されたポリプロピレンである組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記親水性カップリング剤が親水性シランカップリング剤である組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、該組成物が更に抗酸化剤を含む組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記抗酸化剤がリン含有化合物である組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記リン含有化合物が次亜リン酸塩化合物である組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記次亜リン酸塩化号物が、次亜リン酸アルカリ金属、次亜リン酸アルカリ土類金属、次亜リン酸アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記選択された次亜リン酸塩化合物が次亜リン酸ナトリウムである組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記エンハンサが前記フッ素含有化合物である組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記フッ素含有化合物が、1)フルオロボレート、2)フッ化アルカリ金属、3)フッ化アルカリ土類金属、4)フルオロアルミン酸塩、5)フルオロジルコン酸塩、及び6)それらの混合物からなる群から選択される組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記フッ素含有化合物がテトラフルオロボレートである組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記テトラフルオロボレートが、アルカリ金属テトラフルオロボレート、アルカリ土類金属テトラフルオロボレート、アンモニウムテトラフルオロボレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記テトラフルオロボレートが、ナトリウムテトラフルオロボレート、カリウムテトラフルオロボレート、及びそれらの混合物からなるアルカリ金属テトラフルオロボレートから選択される組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記アルカリ金属テトラフルオロボレートが、ナトリウムテトラフルオロボレートとして選択される組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記エンハンサが、前記疎水性カップリング剤である組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記疎水性カップリング剤が、1〜3の疎水性基を含む疎水性シランである組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記疎水性基がアルキル基である組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記疎水性カップリング剤が、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記エンハンサが、前記環式脂肪酸である組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記環式脂肪酸が、約8〜約40の炭素原子を備えた炭素骨格を有する不飽和脂肪酸モノマーから形成された、飽和の二量体及び三量体環式脂肪酸である組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記環式脂肪酸が、18の炭素原子を有する炭素骨格を備えた不飽和脂肪酸モノマーから形成される組成物。
【請求項24】
請求項21に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記環式脂肪酸が、オレイン酸から形成された水素添加二量体を含む組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、該繊維−サイズ組成物は色補償添加剤を伴わずに使用される組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、該繊維−サイズ組成物の全ての成分が実質的に完全に飽和される組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、該繊維−サイズ組成物が、実質的に非変色性の窒素化合物を含有している組成物。
【請求項28】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記エンハンサが、前記一方の脂肪酸が少なくとも二つの酸基を含んだ前記少なくとも二つの飽和脂肪酸である組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の繊維−サイズ組成物であって、該繊維−サイズ組成物は色補償添加剤を伴わずに使用され、また前記繊維−サイズ組成物の他の成分は実質的に完全に飽和され、また前記繊維−サイズ組成物は実質的に非変色性の窒素化合物を含んでいる組成物。
【請求項30】
請求項28に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記少なくとも二つの飽和脂肪酸は、各々が約3〜約40の炭素原子を含んでいる組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記少なくとも二つの飽和脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、コハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、クエン酸、及びセバシン酸からなる群から選択される組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記少なくとも二つの飽和脂肪酸は、パルミチン酸及びセバシン酸の混合物である組成物。
【請求項33】
請求項32に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記混合物が更にステアリン酸を含む組成物。
【請求項34】
請求項28に記載の繊維−サイズ組成物であって、窒素官能基、不飽和官能基を備えたイオン性物質、アルキルフェノールに基づく非イオン性物質を含まない組成物。
【請求項35】
請求項28に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記修飾ポリオレフィン、ポリマーエマルジョン脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基及び水の単一の加圧、加熱及び撹拌された混合物からの非イオン性水性ポリマーエマルジョンとして形成された前記修飾ポリオレフィン、少なくとも一方が少なくとも二つの酸基を有する前記少なくとも二つの脂肪酸、前記親水性カップリング剤、及び消泡剤からなる組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、更に、湿潤剤、潤滑剤、表面活性剤、消泡剤からなる群から選択される加工助剤の少なくとも一つを含んでなり、窒素官能基、不飽和官能基を備えたイオン性物質、及びアルキルフェノールに基づく非イオン性物質を含まない組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記修飾ポリオレフィンを除き、前記繊維−サイズ組成物の成分は、各々が約0.35未満のヨウ素値を有する組成物。
【請求項38】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、更に、ホウ素含有化合物を含む組成物。
【請求項39】
請求項38に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記ホウ素含有化合物が、水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、窒化ホウ素、有機ホウ素化合物、ボラゾール(borazole)、過ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、テトラボレート塩、ホウ酸及びこれらの混合物からなる化合物群から選択される組成物である。
【請求項40】
請求項38に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記ホウ素含有化合物が、アルカリ金属テトラボレート、アルカリ土類金属テトラボレート、ホウ酸アンモニウム、及びこれらの混合物からなるテトラボレート群から選択される組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記テトラボレートが、ニナトリウムテトラボレート、ニカルシウムテトラボレート、ニアンモニウムテトラボレート、及びこれらの混合物からなるテトラボレート群から選択される組成物。
【請求項42】
請求項41に記載の繊維−サイズ組成物であって、前記選択されたテトラボレートがニナトリウムテトラボレートである組成物。
【請求項43】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物であって、更にポリウレタンを含む組成物。
【請求項44】
請求項1に記載の繊維−サイズ組成物でコーティングされた補強繊維。
【請求項45】
請求項44に記載の補強繊維であって、前記繊維がEガラス繊維である補強繊維。
【請求項46】
請求項44に記載の補強繊維であって、前記繊維はホウ素を含まないガラス繊維である補強繊維。
【請求項47】
請求項46に記載の補強繊維であって、前記ホウ素を含まないガラス繊維が、59.0〜62.0質量%のSiO、20.0〜24.0質量%のCaO、12.0〜15.0質量%のAl、1.0〜4.0質量%のMgO、0.0〜0.5質量%のF、0.1〜2.0質量%のNaO、0.0〜0.9質量%のTiO、0.0〜0.5質量%のFe、0.0〜2.0質量%のKO、及び0.0〜0.5質量%のSOから実質的になる補強繊維。
【請求項48】
請求項46に記載の補強繊維であって、前記ガラス繊維が、F、TiO、SO、及びそれらの組み合せからなる成分群から選択される成分を実質的含まない補強繊維。
【請求項49】
請求項47に記載の補強繊維であって、前記ホウ素を含まないガラス繊維において、前記SiO含量が約60.1質量%であり、前記CaO含量が約22.1質量%であり、前記Al含量が約13.2質量%であり、前記MgO含量が約3.0質量%であり、前記KO含量が約0.2質量%であり、前記NaO含量が約0.6質量%であり、前記Fe含量が約0.2質量%であり、前記SO及びFの組合せ含量が約0.1質量%であり、前記TiO含量が約0.5質量%である補強繊維
【請求項50】
請求項44の補強繊維及びマトリックス樹脂を含む配合処方。
【請求項51】
請求項50に記載の配合処方であって、更に、カップリング剤、抗酸化剤、顔料、静電気防止剤、充填剤、及び難燃剤からなる群から選択される少なくとも一つの配合剤を含む配合処方。
【請求項52】
請求項50に記載の配合処方であって、前記マトリックス樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリアンハイドライド、ポリイミド、エポキシ、ポリアクリル、ポリビニルエステル、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、及びそれらの混合物からなる群から選択される配合処方。
【請求項53】
請求項52に記載の配合処方であって、前記マトリックス樹脂がポリオレフィンである配合処方。
【請求項54】
請求項53に記載の配合処方であって、前記ポリオレフィンがポリプロピレンである配合処方。
【請求項55】
請求項54に記載の配合処方であって、更に、修飾ポリオレフィンを含む配合処方。
【請求項56】
請求項55に記載の配合処方であって、更に、抗酸化剤を含む配合処方。
【請求項57】
請求項50に記載の配合処方から形成された複合材ペレット。
【請求項58】
請求項50に記載の配合処方から形成された複合材製品。
【請求項59】
補強繊維を調製する方法であって:
a)下記を含む繊維−サイズ組成物を調製することと;
1)修飾ポリオレフィンと、
2)親水性カップリング剤と、
3)下記からなる群から選択される少なくとも一つを含むエンハンサ
(a)フッ素含有化合物、
(b)疎水性カップリング剤、
(c)環式脂肪酸、
(d)少なくとも一つの脂肪酸が二以上の酸基を有する少なくとも二つの
飽和脂肪酸、及び
(e)これらの混合物、
b)前記繊維−サイズ組成物に繊維を接触させることと;
c)前記繊維−サイズ組成物を前記繊維上で固化させて、前記補強繊維を形成することとを含む方法。
【請求項60】
請求項59に記載の補強繊維を調製する方法であって、前記修飾ポリオレフィンは、前記修飾ポリオレフィン、脂肪酸、非イオン性表面活性剤、塩基、及び水の単一の混合物を、加圧容器内で加熱及び撹拌することによって、非イオン性の水性ポリオレフィンエマルジョンとして調製される方法。
【請求項61】
請求項59に記載の補強繊維を調製する方法であって、前記繊維がガラス繊維である方法。
【請求項62】
請求項61に記載の補強繊維を調製する方法であって、前記ガラス繊維が実質的にホウ素を含まないガラス繊維である方法。
【請求項63】
請求項59に記載の方法であって、前記繊維−サイズ組成物が色補償添加剤を伴わずに使用される方法。
【請求項64】
請求項59に記載の方法であって、前記繊維−サイズ組成物の全ての成分が、本質的に完全に飽和された化合物である方法。
【請求項65】
請求項59に記載の方法であって、前記繊維−サイズ組成物の全ての成分が、変色性の窒素化合物を伴わずに調製及び使用される方法。
【請求項66】
複合材処方を調製する方法であって、請求項59に記載の方法に従って調製された前記補強繊維をマトリックス樹脂と合体させて、前記複合材処方を形成する工程を含む方法。
【請求項67】
請求項66に記載の複合材処方を調製する方法であって、更に、前記補強繊維及び前記マトリックス樹脂を、カップリング剤、抗酸化剤、含量、静電気防止剤、充填剤、難燃剤及びそれらの混合物からなる群の一つと合体させる工程を含む方法。
【請求項68】
複合材製品を張性する方法であって、請求項67において形成された前記複合材処方を前記複合材製品に形成する工程を含む方法。

【公表番号】特表2008−518879(P2008−518879A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540338(P2007−540338)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/037914
【国際公開番号】WO2006/052421
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507130004)オウェンス コーニング ファイバーグラス テクノロジー ザ セカンド リミテッド ライアビリティ カンパニー (9)
【Fターム(参考)】