説明

繊維強化プラスチックの成形方法及びその製造装置

【課題】
芯材の厚みが大きい場合でも、芯材周辺でのショートパスを抑制し、均一な樹脂流れを実現し、又芯材に樹脂の未含浸部分が生じることを防止し、製品品質の向上を図る。
【解決手段】
成形型1に芯材2を設置し、該芯材を密閉シート3で気密に覆い、該密閉シート内を真空引し、次に該密閉シート内に樹脂を流して前記芯材に含浸させる繊維強化プラスチックの成形方法に於いて、前記芯材の樹脂の流れ方向と平行な側面に沿って隙間充填部材を設け、前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞し、前記密閉シート内部の一方から樹脂を供給し、他方から樹脂を排出して、前記芯材に樹脂を含浸させる様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空圧樹脂含浸成形法、或は樹脂含浸成形法により繊維強化プラスチックを成形する繊維強化プラスチックの成形方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形型が簡単で、簡便に、而も大型の繊維強化プラスチック成形品を製作可能な方法として、真空圧樹脂含浸成形法(VaRTM:Vacuum assisted Resin Transfer Molding)、或は樹脂含浸成形法(RTM:Resin Transfer Molding)が有る。
【0003】
真空圧樹脂含浸成形法(VaRTM)の概略について説明する。
【0004】
定盤上に、例えばカーボンファイバ、ガラスファイバ等を積層して形成した芯材を設置し、該芯材の外周囲を気密性を有する柔軟な密閉シートを覆い、該密閉シートの周辺部を前記定盤に気密に密着させ、前記密閉シート内部を真空引すると共に一端から溶融した液状樹脂を供給し、他端から液状樹脂を吸引し、前記密閉シート内部に液状樹脂を流して、樹脂を前記芯材に含浸させる。
【0005】
該芯材への樹脂の含浸が完了すると、内部を密閉し、真空度を保ったまま常温で硬化、或は炉で所定温度に加熱維持して硬化させる。硬化後、前記密閉シートを剥がし、成形品(芯材に樹脂が含浸され、硬化したもの)を取出す。
【0006】
上記した真空圧樹脂含浸成形法による、繊維強化プラスチックの成形では、芯材に密閉シートを被せて内部を真空引する為、芯材の厚みが大きい場合は、芯材の周囲に隙間が生じてしまう。液状樹脂の流れに対して直角方向の隙間は大きな問題ではないが、液状樹脂の流れと平行な隙間は、流路抵抗の少ないショートパス路となってしまい、液状樹脂が隙間を流れ、前記芯材中を均一に流れず、均質な繊維強化プラスチックを成形することができなかったり、未含浸部位が発生すると言う問題がある。
【0007】
尚、繊維強化プラスチックの成形方法に於ける樹脂流れの改善については特許文献1に示されるものがある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−271248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、芯材の厚みが大きい場合でも、芯材周辺でのショートパスを抑制し、均一な樹脂流れを実現し、又芯材に樹脂の未含浸部分が生じることを防止し、製品品質の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、成形型に芯材を設置し、該芯材を密閉シートで気密に覆い、該密閉シート内を真空引し、次に該密閉シート内に樹脂を流して前記芯材に含浸させる繊維強化プラスチックの成形方法に於いて、前記芯材の樹脂の流れ方向と平行な側面に沿って隙間充填部材を設け、前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞し、前記密閉シート内部の一方から樹脂を供給し、他方から樹脂を排出して、前記芯材に樹脂を含浸させる様にした繊維強化プラスチックの成形方法に係るものであり、又前記隙間充填部材は、真空引した状態で前記密閉シートを介して圧縮され、圧縮した状態で前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞する繊維強化プラスチックの成形方法に係るものである。
【0011】
又本発明は、芯材が設置される成形型と、前記芯材の両側に沿って設置された隙間充填部材と、前記芯材を順次覆う剥離シート、含浸メディアと、前記芯材の一方に配設された樹脂供給ノズルと、他方に配設された樹脂吸引ノズルと、前記芯材、前記隙間充填部材、前記剥離シート、前記含浸メディア、前記樹脂供給ノズル、前記樹脂吸引ノズルを覆い気密にパッキングする密閉シートと、該密閉シートの内部を真空引する排気装置と、前記樹脂供給ノズルに接続された樹脂供給源と、前記樹脂吸引ノズルに接続された樹脂排出ユニットとを具備する繊維強化プラスチックの製造装置に係り、又前記隙間充填部材は、連続気泡の多孔性高弾性材質である繊維強化プラスチックの製造装置に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形型に芯材を設置し、該芯材を密閉シートで気密に覆い、該密閉シート内を真空引し、次に該密閉シート内に樹脂を流して前記芯材に含浸させる繊維強化プラスチックの成形方法に於いて、前記芯材の樹脂の流れ方向と平行な側面に沿って隙間充填部材を設け、前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞し、前記密閉シート内部の一方から樹脂を供給し、他方から樹脂を排出して、前記芯材に樹脂を含浸させる様にしたので、前記芯材側面での樹脂のショートパスが抑制され、均一な樹脂流れが実現され、又前記芯材に樹脂の未含浸部分が生じることが防止され、製品品質が向上する。
【0013】
又本発明によれば、前記隙間充填部材は、真空引した状態で前記密閉シートを介して圧縮され、圧縮した状態で前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞するので、隙間発生状態に応じて前記隙間充填部材が変形し、隙間発生状態に拘らず良好な閉塞状態が得られるという優れた効果を発揮する。
【0014】
又本発明によれば、芯材が設置される成形型と、前記芯材の両側に沿って設置された隙間充填部材と、前記芯材を順次覆う剥離シート、含浸メディアと、前記芯材の一方に配設された樹脂供給ノズルと、他方に配設された樹脂吸引ノズルと、前記芯材、前記隙間充填部材、前記剥離シート、前記含浸メディア、前記樹脂供給ノズル、前記樹脂吸引ノズルを覆い気密にパッキングする密閉シートと、該密閉シートの内部を真空引する排気装置と、前記樹脂供給ノズルに接続された樹脂供給源と、前記樹脂吸引ノズルに接続された樹脂排出ユニットとを具備するので、前記芯材側面での樹脂のショートパスが抑制され、均一な樹脂流れが実現され、又前記芯材に樹脂の未含浸部分が生じることが防止され、製品品質が向上する。
【0015】
又本発明によれば、前記隙間充填部材は、連続気泡の多孔性高弾性材質であるので、隙間発生状態に応じて前記隙間充填部材が変形し、隙間発生状態に拘らず良好な閉塞状態が得られ、芯材側面での樹脂のショートパスが抑制されるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0017】
先ず、図1〜図3に於いて本発明が実施される繊維強化プラスチック製造装置の概略を説明する。
【0018】
繊維強化プラスチック製造装置15は、芯材2が設置される成形型1、前記芯材2に被せられる剥離シート3、該剥離シート3に重合されて被せられる複数層の含浸メディア4a,4b(図示では2層を示している)、前記芯材2を挾んで対向した位置、即ち該芯材2の上辺に沿って配設された樹脂供給ノズル6、前記芯材2の下辺に沿って配設された樹脂吸引ノズル9、前記芯材2の両側辺に沿って、該芯材2の全長に亘ってそれぞれ配設された隙間充填部材19を具備する。
【0019】
又、前記繊維強化プラスチック製造装置15は、前記含浸メディア4a,4b、前記樹脂供給ノズル6、前記樹脂吸引ノズル9、前記隙間充填部材19を覆い、周辺を前記成形型1に密着、密閉された密閉シート5を具備し、更に、前記樹脂供給ノズル6に接続された上流液送チューブ7、該上流液送チューブ7に接続された樹脂供給源8、前記上流液送チューブ7に設けられた流量調整弁14、前記樹脂吸引ノズル9に接続された下流液送チューブ11、該下流液送チューブ11に接続された真空ポンプ12、前記下流液送チューブ11に設けられたトラップ13と流量調整弁18を具備している。
【0020】
尚、前記上流液送チューブ7及び前記下流液送チューブ11は、前記密閉シート5と前記成形型1との間を貫通し、貫通箇所は気密に封止される。或は、前記上流液送チューブ7及び前記下流液送チューブ11は、前記密閉シート5を貫通して貫通箇所が気密に封止される。
【0021】
前記成形型1は、図示では平板を示しているが、目的とする成形品の形状に合せて形状が選択される。例えば、凸曲面形状の成形品を製作する場合は、前記成形型1の形状は、上方に向って凸曲面を有し、前記芯材2は前記凸曲面に倣い、密着する様に設置され、又前記剥離シート3、前記含浸メディア4a,4b、前記密閉シート5も同様にして前記成形型1の曲面に沿わせて被せられる。
【0022】
尚、前記剥離シート3の材質としては、成形される樹脂と親和性がなく、容易に剥がれるもの、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられ、又前記含浸メディア4a,4bはメッシュ布であり、材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。
【0023】
複数層の前記含浸メディア4a,4bは、複数層に重ね合わせることで、メッシュ目を大きくしなくても樹脂が流通できる隙間を増大できる。従って、供給する樹脂の流路断面を大きくすることができる。尚、樹脂の流通が確保できれば前記含浸メディア4は単層でもよい。
【0024】
前記隙間充填部材19は、変形能が大きい多孔質材料であり、孔は外気と連通する連続気泡であることが好ましい。例えば、ウレタン製のスポンジ、ポリエチレン製のスポンジ、或はシリコンゴム等であり、成形用樹脂に溶融しない材料が用いられる。又、前記隙間充填部材19の断面形状は、前記密閉シート5を前記芯材2に被せた状態で、該芯材2の両側片部に形成される隙間20を充足する形状であることが好ましく、又、前記芯材2の側面、前記成形型1の表面に密着する様、前記隙間充填部材19の側面、底面は直交する平面とすることが好ましい。
【0025】
又、前記隙間充填部材19の断面形状を、吸引した状態で該隙間充填部材19と前記密閉シート5間に隙間ができない形状とした場合は、該隙間充填部材19はシリコンゴム等、中実材料で変形量の少ないものを使用する。
【0026】
前記樹脂供給ノズル6、前記樹脂吸引ノズル9は、流れに対して直角な方向に延びる管形状であり、その軸長は前記芯材2の幅と同程度又はやや短い長さとなっている。前記樹脂供給ノズル6には樹脂供給口16が所定ピッチで穿設され、又前記樹脂吸引ノズル9には樹脂吸引口17が所定ピッチで穿設されている。尚、前記樹脂供給口16、前記樹脂吸引口17は下向きに設けられる。少なくとも、前記樹脂供給口16が下向き或は略下向きに設けられることで、該樹脂供給口16から吐出される樹脂の流れは、下向きから水平方向に変更され、流れが変更される過程で速度分布が解消され、幅方向の速度分布の均一化が促進される。
【0027】
前記樹脂供給ノズル6からは液状樹脂が、前記樹脂供給ノズル6の軸長の幅で供給され、前記樹脂吸引ノズル9は該樹脂吸引ノズル9の軸長の幅で吸引し、前記樹脂供給ノズル6から前記樹脂吸引ノズル9に向って、前記軸長の幅を有する樹脂の流れが形成される。
【0028】
前記樹脂供給ノズル6、前記樹脂吸引ノズル9に穿設される前記樹脂供給口16、前記樹脂吸引口17の穿設ピッチは、繊維強化プラスチックの成形条件に合せ、全幅で流速が均一になる様に設定される。又、図示では前記上流液送チューブ7は前記樹脂供給ノズル6に1箇所で連通しているが、前記上流液送チューブ7が分岐し、複数箇所で前記樹脂供給ノズル6に連通する様にしてもよい。同様に、前記下流液送チューブ11も前記樹脂吸引ノズル9に複数箇所で連通する様にしてもよい。
【0029】
前記上流液送チューブ7には前記流量調整弁14が設けられ、前記下流液送チューブ11の所要位置には前記流量調整弁18が設けられ、該流量調整弁18及び前記流量調整弁14により樹脂流量を調整可能となっている。
【0030】
以下、図4を参照して本発明に係る繊維強化プラスチックの成形方法について説明する。
【0031】
前記成形型1に離型剤を塗布し、前記芯材2を設置する。離型剤としては、シリコン、或はフッ素樹脂等のグリースが挙げられる(STEP:01)。
【0032】
前記芯材2の側辺に沿って前記隙間充填部材19,19を配設し(STEP:02)、前記芯材2に、前記剥離シート3、前記含浸メディア4a,4b、前記密閉シート5を順次被せる(STEP:03)。
【0033】
前記含浸メディア4a,4bは、大型の場合好ましくは2層以上とし、少なくとも前記芯材2側に設けられる前記含浸メディア4aは、仕上り後の成形品の面の粗さ、性状を考慮し、メッシュ目の細かいものが用いられる。2層、或は3層に設けられる含浸メディア4bは、前記含浸メディア4aと同等に細かいメッシュ目のもの(例えばメッシュ目数は24目以上のもの)を使用することもできるが、前記含浸メディア4aよりメッシュ目の粗いもの(例えばメッシュ目数は14目以下のもの)を使用することもできる。
【0034】
尚、1層の前記含浸メディア4aに対して2層の前記含浸メディア4bの目の粗さを大きくすることで、該含浸メディア4a,4bが形成する隙間が大きくなり、又前記含浸メディア4aと前記含浸メディア4b間でメッシュ目のピッチが変り、メッシュ目同士の干渉が避けられ、前記含浸メディア4a,4bを重ね合わせる作業がやり易くなる。
【0035】
前記隙間充填部材19、前記剥離シート3、前記含浸メディア4a,4bの設置が完了すると、前記芯材2の上流側に前記樹脂供給ノズル6を設置し、前記芯材2の下流側に前記樹脂吸引ノズル9を設置する。更に前記密閉シート5を被せ、該密閉シート5の周辺部を前記成形型1に密着させ、密封する。前記密閉シート5と前記成形型1間で前記芯材2を収納する気密な空間10を形成する(パッキング)(STEP:04)。尚、密着させる方法としては、両面粘着テープであってもよく、或は周囲を枠体で押さえてもよい。
【0036】
前記樹脂供給ノズル6に前記上流液送チューブ7を連通する。尚、前記樹脂供給ノズル6と前記上流液送チューブ7とは予め一体化しておいてもよい。
【0037】
前記樹脂吸引ノズル9に前記下流液送チューブ11を連通させる。又、同様にして、該下流液送チューブ11と前記樹脂吸引ノズル9とは一体化しておいてもよい。
【0038】
前記上流液送チューブ7を前記流量調整弁14を介して前記樹脂供給源8に接続し、前記下流液送チューブ11を前記真空ポンプ12に接続すると共に前記下流液送チューブ11には前記流量調整弁18、前記トラップ13を取付ける。尚、前記下流液送チューブ11の前記流量調整弁18の上流側で、前記下流液送チューブ11を分断し、管継手を介して接続可能とし、分断した下流側の下流液送チューブ11に前記流量調整弁18、前記トラップ13、前記真空ポンプ12を一体化し、排気・排液ユニットとしてもよい。
【0039】
前記上流液送チューブ7を前記流量調整弁14で閉塞する。前記流量調整弁18を開いて前記真空ポンプ12より前記空間10を真空引する。吸引時間は、前記芯材2内部の空気及び水分等が充分に排気される時間に設定される(STEP:05)。
【0040】
真空引によって、前記密閉シート5を介して前記隙間充填部材19に外圧が作用し、該隙間充填部材19が圧縮される。尚、該隙間充填部材19を連続気泡の多孔質材料とすることで、容易に圧縮され、更に隙間発生状態に応じて前記隙間充填部材19が変形し、前記芯材2の側面と前記密閉シート5間に形成される間隙を充足する様に圧縮変形する。更に、圧縮されることで、前記隙間充填部材19内部の孔は押潰され、樹脂の流れに対しては流路抵抗が増大する。
【0041】
前記上流液送チューブ7の前記流量調整弁14を開き、液状樹脂を前記上流液送チューブ7を介して前記樹脂供給ノズル6に送給する。液状樹脂は前記樹脂供給ノズル6の前記樹脂供給口16から分散されて前記空間10に供給される。該空間10の吸引により、前記密閉シート5は前記含浸メディア4a,4bに密着するが、該含浸メディア4a,4bによって液状樹脂が流動できる隙間が確保される。前記隙間充填部材19については、流路抵抗は増大しているので、供給された液状樹脂の殆どは、前記含浸メディア4a,4bで形成された空間を前記空間10の一方、即ち前記樹脂供給ノズル6から、他方即ち前記樹脂吸引ノズル9に向って一方向に流動する。前記含浸メディア4a,4bを流動する過程で、液状樹脂は前記芯材2に含浸していく(STEP:06)。
【0042】
前記含浸メディア4a,4bを通過した余剰の液状樹脂は、前記樹脂吸引ノズル9により吸引され、前記トラップ13に捕集される。液状樹脂が、前記芯材2を完全に含浸したかどうかの判断は、液状樹脂が芯材2の内部に完全に浸透する時間(含浸時間)について、実験等により予め求めておき、求めた時間を経過した場合に含浸したと判断するか、或は前記芯材2が液状樹脂で濡れたかどうかを目視により判断する。
【0043】
上記した様に、前記含浸メディア4a,4bを複数層にしているので、該含浸メディア4a,4bによって形成される隙間、即ち液状樹脂が流れる流路断面が大きくなり、液状樹脂の流量が増大し、前記芯材2への樹脂の含浸速度が増大し、含浸時間の短縮が図れる。
【0044】
前記芯材2の側面に、前記隙間充填部材19を設けることで、前記芯材2の側面に形成される間隙が閉塞されるので、前記芯材2の側面をショートパスして前記樹脂吸引ノズル9に吸引される液状樹脂を抑制でき、又ショートパスがなくなるので、前記芯材2、或は前記含浸メディア4a,4bを流れる液状樹脂の流速分布を均一化でき、前記芯材2に対する樹脂の未含浸部分が生じることを防止できる。更に、ショートパスする液状樹脂がなくなるので、含浸工程で使用される樹脂量が少なくなる。
【0045】
設定した含浸時間が経過すると、前記流量調整弁14の弁を閉じ、又前記流量調整弁18を閉じて、前記液状樹脂の供給を停止する。
【0046】
前記空間10の気密を維持、即ち減圧状態を維持した状態で、前記上流液送チューブ7を分断して前記樹脂供給源8と前記密閉シート5、前記樹脂供給ノズル6とを切離す。又、前記下流液送チューブ11の前記流量調整弁18より上流側で前記下流液送チューブ11を分断し、前記密閉シート5、前記樹脂吸引ノズル9と前記流量調整弁18とを切離す。尚、気密を維持するのは、真空を保てないと気密できない分、成形品の厚さが厚くなることによる。
【0047】
含浸した樹脂の硬化を行う。樹脂の硬化は、常温で行う場合、100℃〜120℃で加熱硬化を行う場合等、含浸した樹脂の材質、成形品の形状によって適宜選択される(STEP:07)。
【0048】
加熱硬化が行われる場合は、前記成形型1に前記芯材2がパッキングされた状態で炉に入れられ、所要時間加熱される。
【0049】
硬化が完了すると、前記密閉シート5、前記含浸メディア4a,4b、前記剥離シート3を剥がし、前記隙間充填部材19を取除いて、完成した成形品を取出す(STEP:08)。
【0050】
又、図5(A)は本発明を実施しない場合の液状樹脂が芯材2に含浸していく状態を示し、図5(B)は、本発明を実施した場合の液状樹脂が芯材2に含浸していく状態を示しており、本発明を実施することで、樹脂が均一に含浸してゆくことがわかる。従って、未含浸部分の発生が防止される。
【0051】
次に、図6は、本発明を金型を用いて繊維強化プラスチックを成形する場合を示しており、図6は樹脂流れに対して垂直な面で断面した場合を示している。
【0052】
図6中、21は下金型、22は上金型を示し、前記下金型21と前記上金型22が重ね合っている。
【0053】
前記下金型21の凹部23に芯材2を収納した状態では、該芯材2の周囲には隙間24が残置され(図6(A))、周囲の隙間の内、樹脂流れと平行に延びる隙間に充填部材25を挿入する(図6(B))。
【0054】
該充填部材25は、前記隙間24に挿入、好ましくは圧入した状態で復元し、前記芯材2の側面、前記凹部23の壁面に密着することが好ましく、挿入、圧入可能な様に適宜な硬度、弾力性、変形能を備え、成形用樹脂に溶融しない材料が用いられる。前記充填部材25の材質としては、例えばシリコンゴム等が用いられる。
【0055】
前記凹部23に液状樹脂を吸引して前記芯材2に液状樹脂を含浸させる。或は、加圧した液状樹脂を前記凹部23に注入して、前記芯材2に液状樹脂を含浸させる。
【0056】
いずれの場合も、前記隙間24が前記充填部材25によって閉塞されているので、液状樹脂は前記芯材2の側面をショートパスすることはなく、樹脂流れは均一化され、前記芯材2に対する樹脂の未含浸部分の発生が防止され、又使用される樹脂の量が節約される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す平面図である。
【図3】図1のA−A矢視図であり、(A)は隙間が生じた状態、(B)は隙間に隙間充填部材を設けた状態を示している。
【図4】本発明の実施の形態に係る繊維強化プラスチックの成形方法の概略を示すフローチャートである。
【図5】繊維強化プラスチックの成形に於ける液状樹脂の流れを模式化した図であり、(A)は従来の繊維強化プラスチックの成形に於ける液状樹脂の流れ、(B)は本発明の繊維強化プラスチックの成形に於ける液状樹脂の流れを示す。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す説明図であり、(A)は隙間が生じた状態、(B)は隙間に隙間充填部材を設けた状態を示している。
【符号の説明】
【0058】
1 成形型
2 芯材
3 剥離シート
4a,4b 含浸メディア
5 密閉シート
6 樹脂供給ノズル
7 上流液送チューブ
8 樹脂供給源
9 樹脂吸引ノズル
10 空間
11 下流液送チューブ
12 真空ポンプ
13 トラップ
14 流量調整弁
15 繊維強化プラスチック製造装置
16 樹脂供給口
17 樹脂吸引口
18 流量調整弁
19 隙間充填部材
25 充填部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型に芯材を設置し、該芯材を密閉シートで気密に覆い、該密閉シート内を真空引し、次に該密閉シート内に樹脂を流して前記芯材に含浸させる繊維強化プラスチックの成形方法に於いて、前記芯材の樹脂の流れ方向と平行な側面に沿って隙間充填部材を設け、前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞し、前記密閉シート内部の一方から樹脂を供給し、他方から樹脂を排出して、前記芯材に樹脂を含浸させる様にしたことを特徴とする繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項2】
前記隙間充填部材は、真空引した状態で前記密閉シートを介して圧縮され、圧縮した状態で前記芯材の側面に生じる隙間を閉塞する請求項1の繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項3】
芯材が設置される成形型と、前記芯材の両側に沿って設置された隙間充填部材と、前記芯材を順次覆う剥離シート、含浸メディアと、前記芯材の一方に配設された樹脂供給ノズルと、他方に配設された樹脂吸引ノズルと、前記芯材、前記隙間充填部材、前記剥離シート、前記含浸メディア、前記樹脂供給ノズル、前記樹脂吸引ノズルを覆い気密にパッキングする密閉シートと、該密閉シートの内部を真空引する排気装置と、前記樹脂供給ノズルに接続された樹脂供給源と、前記樹脂吸引ノズルに接続された樹脂排出ユニットとを具備することを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。
【請求項4】
前記隙間充填部材は、連続気泡の多孔性高弾性材質である請求項3の繊維強化プラスチックの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−143172(P2009−143172A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324772(P2007−324772)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】