説明

繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ

【課題】 意匠性に優れ、高い生産性及び後硬化で優れた靭性や耐熱性を実現できるラジカル硬化系繊維強化樹脂複合材料用プリプレグを提供する。
【解決手段】 強化繊維と、ラジカル重合性樹脂組成物とを少なくとも含む繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ。該ラジカル重合性樹脂組成物が、(a)化学式Iで示されるトリ(メタ)アクリレート化合物、(b)ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、(c)化学式IIで示されるジ(メタ)アクリレート化合物を必須成分として含むラジカル重合性樹脂100質量部と、(d)α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤及びチオキサントン型光重合開始剤、および(e)熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料用プリプレグに関する。更に詳しくは、本発明は、独自の深みと光沢を有する繊維強化樹脂複合材料を短時間に製造することができ、更に後加熱により繊維強化樹脂複合材料に高い耐熱性と靭性を付与することが可能な繊維強化複合材料用プリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維にて強化した繊維強化樹脂複合材料は、一般に、比強度、比剛性等に優れるという特徴を有する。更には、このような繊維強化樹脂複合材料は、その軽量性を活かして、例えば、航空機用構造材料から、自動車用部品、ラケットやゴルフシャフト等のスポーツ用途にわたる種々の用途に広範に使用されている。一方、これらの繊維強化樹脂複合材料は独特の光沢、深みのある意匠特性を持ち、その単体の形でも外観の美しさを有しているため、自動車のインパネやシフトノブ等の内装部品、ボンネットやウイング、バンパーといった自動車用外装部品のほか、オートバイの外装部品、椅子をはじめとする家具の表層材等の意匠材としても用いられている。
【0003】
この繊維強化樹脂複合材料の成形方法としては、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれる中間材料を用いて、オートクレーブ成形、真空バック成形、プレス成形により、硬化し、成形する方法が一般的である。
【0004】
プリプレグ用の樹脂としては、通常、常温での安定性と加熱等による硬化性を兼ね備えた樹脂であることが必要であるため、一般にはエポキシ樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂を始めとする熱硬化性樹脂が多用されている。樹脂硬化後の透明性に優れる(メタ)アクリル系樹脂を用いると繊維強化樹脂複合材料の光沢性、深みが際立ち、また強化繊維の幾何学模様がより鮮明に映えるため、意匠用に好まれて使用されることが多い。
【0005】
しかしながら、熱硬化性樹脂の硬化には一定時間の加熱、もしくは常温下での養生が必要であり、所定温度までの昇温時間や成形体を取り出せる温度まで冷却するための時間を含めると、樹脂の硬化または重合に必要な時間は長くなり、生産サイクルの向上によるコストの低減には限界がある。他方、常温での硬化性の良好な樹脂は、常温で硬化が進行してしまいプリプレグとしての成立性、安定性が得られない。
【0006】
DVD(デジタル多用途ディスク)メディアや自動車用ヘッドランプ等で使われるコーティング材料分野では、ラジカル系紫外線硬化樹脂がよく用いられている。これは紫外線を照射するだけで樹脂を硬化できるため、加熱硬化と比較して格段に短時間で成形することができ、生産性を著しく向上させることができるためである。
【0007】
このように短時間成形が可能なラジカル系紫外線硬化樹脂組成物をプリプレグ用のマトリックス樹脂として用い、繊維強化樹脂複合材料の成形時間の短縮を図る試みが行われている。しかしながら、このようなマトリックス樹脂中に強化繊維が存在すると、強化繊維により紫外線が遮断され、内部のマトリックス樹脂の硬化が不充分となり、表面が硬化しても内部の未硬化の樹脂が表面に染み出してくる等の問題が生じてしまう。
【0008】
特開平3−146528号公報(特許文献1)においては、光ラジカル開始剤および熱ラジカル開始剤を含有するアクリロイル化合物をマトリックス樹脂、ガラス繊維を強化繊維とし、紫外線照射によってマトリックス樹脂を増粘B−ステージ化させたプリプレグを作製し、このBステージ化したプリプレグを加熱硬化することで、アクリル樹脂をマトリックス樹脂としたガラス強化繊維樹脂複合材料を成形する手法が示されている。しかしながら、この手法では比較的紫外線が透過しやすいガラス繊維と使っているにもかかわらず、紫外線照射によりマトリックス樹脂を増粘させ、Bステージ化することはできるが、紫外線照射のみで強化繊維樹脂複合材料を成形するまでにいたっていない。
【0009】
また一方で、このような透明性樹脂による繊維強化樹脂複合材料の光沢性、深みといった意匠性だけでなく、たとえばオートバイや自動車の外装用部品のような用途では、過酷な使用環境に耐えうるよう、マトリックス樹脂には優れた靭性や耐熱性が求められることも多い。
【0010】
【特許文献1】特開平3−146528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、意匠性に優れ、高い生産性及び後硬化で優れた靭性や耐熱性を実現できるラジカル硬化系繊維強化樹脂複合材料用プリプレグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、強化繊維と、ラジカル重合性樹脂組成物とを少なくとも含む繊維強化樹脂複合材料用プリプレグが提供される。該ラジカル重合性樹脂組成物は、以下の(a),(b),(c)成分:
(a)化学式Iで示されるトリ(メタ)アクリレート化合物30−50質量部
【化1】

(R1は水素もしくはメチル基である)
(b)ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物20−50質量部
(c)化学式IIで示されるジ(メタ)アクリレート化合物10−35質量部
【化2】

(R1は水素もしくはメチル基、R3は炭素数3〜6の直鎖型炭化水素基、R4は炭素数2〜15の分岐、環状、または直鎖型炭化水素基、または芳香環を有する炭化水素基であって、該構造中にエステル構造を含んでいても良い)
を必須成分として含むラジカル重合性樹脂100質量部と、
(d)α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤及びチオキサントン型光重合開始剤を合わせて0.05−10質量部、および、
(e)熱重合開始剤0.05−10質量部を含むラジカル重合性樹脂組成物である。
【0013】
上記した(e)の熱重合開始剤としては、10時間の半減期を得るための温度が40℃以上130℃以下であるものを用いることが好ましい。上記した強化繊維としては、(メタ)アクリレート基およびエポキシ基を分子内にそれぞれ少なくとも1個づつ有する化合物を有するサイジング剤が付着した炭素繊維を用いることが、より好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記のごとく構成された本発明によれば、紫外線の照射によりごく短時間で意匠性のある繊維強化樹脂複合材料を成形することができ、また、耐熱性、靭性が求められる用途に対しては、(例えば150℃程度の温度で)後硬化することにより耐熱性と靭性に優れた成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量(重量)基準とする。
【0016】
(繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ)
本発明の繊維強化樹脂複合材料用プリプレグは、強化繊維と、ラジカル重合性樹脂組成物とを少なくとも含む。
【0017】
(ラジカル重合性樹脂組成物)
本発明において、ラジカル重合性樹脂組成物は、下記の(a),(b),(c)成分と、これに加えて下記の(d)および(e)成分を含む。
【0018】
((a)成分)
本発明で用いられるラジカル重合性樹脂の必須成分(a)は、化学式Iで示されるトリ(メタ)アクリレート化合物である。(a),(b)および(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対し、この必須成分(a)は30〜50質量部含まれる必要がある。成分(a)の配合量が30質量部以上であれば、得られるラジカル重合性樹脂の耐熱性が高くなり、また該配合量が50質量部以下であれば、得られるラジカル重合性樹脂の靭性が高くなるためである。更に好ましい成分(a)の配合量は、35〜45質量部である。化学式Iで示されるトリアクリレート化合物としては、市販品ではアロニックスM−315(東亞合成)、カヤラッドR−790(日本化薬)等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0019】
【化3】

(R1は水素もしくはメチル基である)
【0020】
(成分(b))
本発明で用いられるラジカル重合性樹脂の必須成分(b)はビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物である。(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対し、必須成分(b)は20〜50質量部含まれる必要がある。成分(b)の配合量が20質量部以上であれば、得られるラジカル重合性樹脂の靭性が高くなり、50質量部以下であれば得られるラジカル重合性樹脂の耐熱性が高くなるためである。更に好ましい成分(b)の配合量は25〜40質量部である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物としては、市販品では、エポキシエステル3000A(共栄社化学)、エポキシエステル3000M(共栄社化学)、リポキシSP1509(昭和高分子)、リポキシVR77(昭和高分子)、リポキシSP1507(昭和高分子)等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0021】
(成分(c))
本発明でラジカル重合性樹脂の必須成分(c)は化学式IIで示されるジ(メタ)アクリレート化合物である。(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対し、必須成分(c)は10〜35質量部含まれる必要ある。成分(c)の配合量が10質量部以上であれば、得られるラジカル重合性樹脂の靭性が高くなり、35質量部以下であれば得られるラジカル重合性樹脂の耐熱性が高くなる。更に好ましい成分(c)の配合量は20〜35質量部である。化学式IIで表されるジ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、脂肪族、脂環族、又は芳香族骨格のジアルコール1モルに2〜10モルのγ−ブチロラクトン、又はε−カプロラクトンを付加したジアルコール末端をメタクリレート又はアクリレート化した化合物が挙げられる。これらの中でも好ましいものとして、ヒドロキシピバリン酸ネオンペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオンペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオンペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(m+n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0022】
【化4】

(R1は水素もしくはメチル基、R3は炭素数3〜6の直鎖型炭化水素基、R4は炭素数2〜15の分岐、環状、または直鎖型炭化水素基、または芳香環を有する炭化水素基であって、該構造中にエステル構造を含んでいても良い)
【0023】
(他のラジカル重合性樹脂)
本発明において、上記したラジカル重合性樹脂は、必須の(a)、(b)および(c)成分に加えて、必要に応じてこれら以外のラジカル重合性樹脂を含んでいても良い。ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の各種ビニルモノマーやビニルオリゴマーを含むことができる。本発明において、このような「他のラジカル重合性樹脂」の配合量は、上記した必須の(a)、(b)および(c)成分の合計量100質量部に対して、30質量部以下(更には10質量部以下)であることが好ましい。
【0024】
(ラジカル重合性樹脂以外の成分)
上記したラジカル重合性樹脂には、硬化物の耐熱性、靭性、剛性、難燃性、表面平滑性、ひずみの低減、金型からの剥離性、色調等の諸物性や、未硬化状態での粘着性や粘度等の取り扱い性等の調整を目的として、必要に応じて、ラジカル重合性樹脂以外の成分を含んでもよい。このような「ラジカル重合性樹脂以外の成分」としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー、無機フィラー等が挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、トリアジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等の架橋性樹脂とその硬化剤が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルフォルマール、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン等が挙げられる。エラストマー成分としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、カボキシル末端変性ブタジエン−アクリロニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。無機フィラーとしては水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等の水酸化金属類や、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の参加金属類や、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸金属類のほか、ガラスバルーン、シリカ等の無機フィラーが挙げられる。更には、脱泡剤、湿潤剤、レベリング剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0025】
(成分(d))
発明における成分(d)は、紫外線の照射のよりラジカルを発生する光重合開始剤である。この成分(d)として、α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤およびチオキサントン型光重合開始剤の両成分を含むことで、強化繊維存在下でのマトリックス樹脂の紫外線硬化性が良好になる。これらの両成分のうち、どちらか一方だけではプリプレグに紫外線を照射しても硬化が不充分となり、表面に未硬化の樹脂が染み出てしまうため、意匠性材料としての要求を満たすことができず好ましくない。
本発明においては、(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対して、α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤およびチオキサントン型光重合開始剤の両成分を合わせて0.05〜10質量部が含まれることが必要である。これら両成分を合わせて、0.04〜9質量部を含むことが特に好ましい。
【0026】
(α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤)
α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤は、(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対して0.04〜9質量部含まれることが好ましい。α−アミノアルキルフェノン型光開始剤の配合量が0.04質量部以上であれば、紫外線による硬化が進行しやすく、紫外線を照射した際の硬化不良の発生を抑えることができる。この含有量が9質量部以下の場合は、(a)、(b)、(c)成分に対してα−アミノアルキルフェノン型光開始剤を溶解させやすい。α−アミノアルキルフェノン型光開始剤の更に好ましい配合量は0.1質量部以上7質量部以下である。
【0027】
α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤としては2−ベンジル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−オン等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0028】
(チオキサントン型光重合開始剤)
他方、チオキサントン型光重合開始剤は、(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対して0.01〜9質量部含まれることが好ましい。このチオキサントン型光重合開始剤の配合量は、0.01質量部以上であれば紫外線による硬化が進行しやすく、紫外線を照射した際の硬化不良の発生を抑えることができる。この配合量が9質量部以下の場合、チオキサントン型光重合開始剤を溶解させやすい。チオキサントン型光重合開始剤の更に好ましい配合量は、0.1質量部以上7質量部以下である。
【0029】
チオキサントン型光重合開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等を例示できるが、これらに限定されない。
【0030】
(成分(e))
本発明の成分(e)は加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤である。(a),(b),(c)成分が必須成分として含まれるラジカル重合性樹脂100質量部に対して、成分(e)は0.05〜10質量部配合される。成分(e)の配合量が0.05質量部以上で、耐熱性や靭性を向上させるための後硬化時間を短くできる。成分(e)の配合量が10質量部以下であれば、硬化樹脂中の熱重合開始剤残査の溶出による硬化物の接着不良等が起こりにくい。成分(e)の配合量のより好ましい配合量は、0.5〜5質量部である。
【0031】
更には、この(e)成分の10時間の半減期を得るための温度が、40℃以上130℃以下であることが好ましい。この温度が40℃以上であれば樹脂の常温でのライフが長く、また加熱により樹脂粘度を下げたうえでの樹脂混合が容易になるので好ましい。他方、10時間の半減期を得るための温度が130℃以下であれば、紫外線硬化した強化繊維複合材料の耐熱性、靭性をあげるためのポストキュア温度を低くできるために好ましい。更には、10時間の半減期を得るための温度が60℃以上110℃以下がより好ましい。
成分(e)としてはケトンパーオキサイドやパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネート等の化合物またはその誘導体が用いられるが、これらの化合物に限られるものではない。
【0032】
これらの化合物またはその誘導体の市販品としては、例えば、パーロイルO(日本油脂)、パーロイルL(日本油脂)、パーロイルS(日本油脂)、パーオクタO(日本油脂)、パーロイルSA(日本油脂)、パーヘキサ250(日本油脂)、パーヘキシルO(日本油脂)、ナイパーPMB(日本油脂)、パーブチルO(日本油脂)、ナイパーPMB(日本油脂)、パーブチルO(日本油脂)、ナイパーBMT(日本油脂)、ナイパーBW(日本油脂)、パーブチルIB(日本油脂)、パーヘキサMC(日本油脂)、パーヘキサTMH(日本油脂)、パーヘキサHC(日本油脂)、パーヘキサC(日本油脂)、パーテトラA(日本油脂)、パーヘキシルI(日本油脂)、パーブチルMA(日本油脂)、パーブチル355(日本油脂)、パーブチルL(日本油脂)、パーヘキサ25MT(日本油脂)、パーブチルI(日本油脂)、パーブチルE(日本油脂)、パーヘキシルZ(日本油脂)、パーヘキサV(日本油脂)、パーブチルP(日本油脂)、パークミルD(日本油脂)、パーヘキシルD(日本油脂)、パーヘキサ25B(日本油脂)、パーブチルD(日本油脂)、パーメンタH(日本油脂)、パーヘキシン25B(日本油脂)等を例示することができるがこれらに限るものではない。
【0033】
(重合性樹脂組成物の物性)
必須成分(a)〜(e)を少なくとも含むラジカル重合性樹脂組成物は、320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の紫外線照射で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して硬化させた樹脂のTgが140℃以上であり、曲げ破断伸度6%以上であることが好ましい。このような320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して硬化させた樹脂のTgが140℃以上であれば、プリプレグを紫外線硬化させた後、後加熱することにより、繊維強化樹脂複合材料のTgを高くすることができるため好ましい。また同様の紫外線硬化条件にて硬化させた樹脂の曲げ破断伸度が6%以上であれば、プリプレグを紫外線硬化させた後、後加熱することにより、繊維強化樹脂複合材料の機械強度が良好になるため好ましい。
【0034】
(強化繊維)
本発明で用いられる強化繊維は特に制限されないが、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、高強度ポリエチレン繊維、タングステンカーバイド繊維、PBO繊維、ガラス繊維、金属繊維等を用いることができる。また、必要に応じて、これらの複数の強化繊維を組み合わせて用いてもかまわない。
これらの強化繊維のうち、炭素繊維や黒鉛繊維は、強化繊維として用いると比弾性および比強度が良好なため軽量で高強度、高弾性な繊維強化複合材料となり、更には独特の黒い光沢と立体感が表れるため本発明に好適である。
【0035】
(サイジング剤)
炭素繊維や黒鉛繊維を強化繊維として用いる場合はサイジング剤として(メタ)アクリレート基およびエポキシ基を分子内に少なくともそれぞれ1個づつ有する化合物を有するサイジング剤を用いると、ラジカル硬化性樹脂を含浸させやすく、更に強化繊維とラジカル重合性樹脂の接着力が高くなるため好ましい。
このような(メタ)アクリレート基およびエポキシ基を主鎖末端にそれぞれ1個づつ有する化合物としては化学式III、化学式IV、化学式VIで表される化合物が例示でき、これらから選ばれる少なくとも1種類以上化合物を、ノニオン系の界面活性剤を用いて水系エマルジョンに調整したものを用いると、ラジカル重合性樹脂が強化繊維に含浸しやすく、強化繊維とラジカル重合性樹脂の接着性が良好になるので好ましい。
更に好ましくは、サイジング剤として、化学式Vで表される両末端にアクリル基およびエポキシ基を有するビスフェノールA型の化合物用いると、強化繊維との接着性およびラジカル硬化性マトリックス樹脂の含浸が良好になるため好ましい。
【0036】
【化5】

(R1、R2は水素もしくはメチル基である)
【0037】
【化6】

(R1、R2は水素もしくはメチル基である)
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

(R1は水素もしくはメチル基。化学式(VI)は分子中R5の部位に(化学式VII)および(化学式VIII)で表される構造を少なくとも1つづつ有する)
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

(R2は水素もしくはメチル基)
【0042】
(強化繊維の形状)
本発明のプリプレグで用いられる強化繊維の形状としては特に制限はなく、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウや、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物又は短く裁断した強化繊維からなる不織布等、が挙げられるが、強化繊維として織物を用いると外観上の深み、光沢性、織物による幾何学模様の美しさにより意匠性が特に良好になるため好ましい。
【0043】
織物の場合は、平織、綾織、朱子織、若しくはノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート、等が例示できる。
【0044】
強化繊維の目付け(繊維1m2当たりの重さ)としては特に制限されるものではないが、10g/m2〜650g/m2が好ましい。10g/m2以上の目付けになると繊維幅のムラや目開きが目立ちにくいため意匠性が良好になるので好ましい。650g/m2以下の目付けであれば樹脂の含浸が良好となり、またプリプレグの紫外線硬化性が良好になるので好ましい。この目付けは、更には50〜500g/m2がより好ましく、50〜300g/m2が特に好ましい。
【0045】
(プリプレグを得る方法)
ラジカル重合性樹脂と強化繊維とから繊維強化樹脂複合材料用プリプレグを得る方法としては、特に制限されない。例えば、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウや強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物又は短く裁断した強化繊維からなる不織布等の補強基材の片側面もしくは両側面から樹脂を供給し、加熱、加圧して樹脂を補強繊維織物に含侵させてプリプレグを製造する方法が好ましく用いられる。
【0046】
プリプレグに用いるラジカル重合性樹脂組成物の量は、30質量%〜70質量%が好ましい。樹脂組成物の量が30質量%以上であれば、硬化したプリプレグ表面の光沢が良好になるため好ましく、70質量%以下であれば機械的特性が充分発現されるため好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本実施例における評価方法は、以下のとおりである。
【0048】
(樹脂曲げ伸度の測定)
インストロン社製万能試験機を用い、サンプルサイズは厚み2mm、幅8mm、長さ60mmとし、クロスヘッドスピード2mm/min、スパン対厚みの比を16として3点曲げ試験(圧子半径 3.2R、サポート半径 3.2R)を実施し、サンプル破断時点での伸度を破断伸度として記録した。
【0049】
(Tgの測定)
UBM社製レオメーターG5000を用い、サンプルサイズは幅12mm、長さ30mmとし、測定周波数1.59Hz、5℃ステップ昇温、1min.ホールドモードにてDMA測定を行い。損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’の比tanδの温度依存性を測定した。tanδの温度依存性カーブからtanδのピークを求め、ピークにおける温度をTgとして記録した。
【0050】
(樹脂及びプリプレグの硬化)
紫外線照射による樹脂及びプリプレグの硬化はFUSION(株)製 LIGHT HAMMER6により実施した。光源とベルト間の距離を104mmに設定した。照度及び光量の測定には株式会社オーク製作所製UV光量計 UV-350をLIGHT HAMMER6のサンプル移動用ベルトに通して測定した。
樹脂の硬化は株式会社オーク製作所製UV光量計 UV-350測定でピーク照度400mW/cm2、積算の光量930mJ/cm2の紫外線を2mmの厚みに調整した樹脂の裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して実施した。
プリプレグの硬化は株式会社オーク製作所製UV光量計 UV-350測定でピーク照度400mW/cm2、積算の光量1850mJ/cm2の紫外線をプリプレグの裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して実施した。
【0051】
以下の実施例及び比較例の樹脂組成物に使用した各成分は、下記の略字で示す通りである。
【0052】
(a)成分
アロニックスM−315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート (東亞合成)
【0053】
(b)成分
エポキシエステル3000A:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物 (共栄社化学)
【0054】
(c)成分
カヤラッドHX220:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加(m+n=2)のジアクリレート(日本化薬)
【0055】
(a),(b),(c)成分以外のラジカル重合性アクリル樹脂
NKオリゴ U−2PHA:イソフォロンジイソシアネート−ヒドロキシエチルアクリレート (新中村化学工業)
【0056】
ニューフロンティアBPE−10:EO変性ビスフェノールAジアクリレート (第一工業製薬)
【0057】
(d)成分
イルガキュア369:α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン (チバ・スペシャリティー・ケミカルズ)
【0058】
カヤキュアITX: チオキサントン型光重合開始剤 イソプロピル チオキサントン (日本化薬)
【0059】
カヤキュアDETX−S:チオキサントン型光重合開始剤 2,4−ジエチルチオキサントン (日本化薬)
【0060】
(e)成分
パーブチルO:t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート (日本油脂)
【0061】
(実施例1)
ラジカル重合性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、エポキシエステル3000A を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0062】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると148℃であった。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、8.4%であった。
【0063】
強化繊維として炭素繊維フィラメント12000本を収束してなる炭素繊維(三菱レイヨン製炭素繊維TR50S)を用いた。この炭素繊維束をサイジング剤溶液Aにローラー含浸し、熱風乾燥してサイジング剤附着糸とした。このサイジング剤溶液Aとしては(化5)で表される化合物を主成分とし、ノニオン系の界面活性剤(旭電化社製、商品名F−88)を水を除くサイジング剤成分を基準として20質量%配合し、濃度2質量%の水性エマルジョンに調整したものを使用し、炭素繊維束に対するサイジング剤の塗布量は1.5重量%とした。
【0064】
このサイジング剤付着糸を製織して繊維目付け200g/m2の平織の織物とし、前記ラジカル重合性樹脂を樹脂含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0065】
このプリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。
また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgを示した。
上記により得られた成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡(75倍)にて拡大観察したところ、樹脂の含浸不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な成形状態であることが確認された。
【0066】
(実施例2)
実施例1と同じ樹脂を用い、この樹脂を含侵させる強化繊維として炭素繊維フィラメント12000本を収束してなる炭素繊維(三菱レイヨン製炭素繊維TR50S)を用いた。この炭素繊維束をサイジング剤溶液Bにローラー含侵し、熱風乾燥してサイジング剤附着糸とした。このサイジング剤溶液Bとしては市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン製)を主成分とした以外は実施例1と同様に調整した。
このサイジング剤付着糸を製織して繊維目付け200g/m2の平織の織物とし、前記ラジカル硬化製樹脂を樹脂含有率が50質量%となるよう含侵させプリプレグを作製した。
【0067】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。
この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgを示した。この成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、炭素繊維束内部での含侵不良や多数のボイドが観察され、樹脂含侵が充分ではなかった。
【0068】
(比較例1)
ラジカル重合性樹脂として、エポキシエステル3000A を60質量部、カヤラッドHX220を40質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0069】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると95℃であり耐熱性が不足していることが確認された。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、7.2%であった。
【0070】
強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂を含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0071】
このプリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgは確認できなかった。またこの成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、樹脂の含浸不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な状態であることが確認された。
【0072】
(比較例2)
ラジカル重合性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、NKオリゴU−2PHA を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0073】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると153℃であった。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、4.5%であり、靭性の低い樹脂であることが確認された。
【0074】
強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂を含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0075】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgを示した。またこの成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、樹脂の含浸不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な状態であることが確認された。
【0076】
(比較例3)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、NKオリゴU−2PHA を30質量部、ニューフロンティアBPE−10を30質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0077】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると125℃であり耐熱性の低い樹脂であることが確認された。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、7.8%であった。
【0078】
強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂の含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0079】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgは確認できなかった。またこの成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、含侵不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な含侵状態であることが確認された。
【0080】
(比較例4)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、カヤラッドHX2200を60質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0081】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると131℃であり耐熱性の低い樹脂であることが確認された。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、9.0%であった。
【0082】
強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂の含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0083】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgは確認できなかった。またこの成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、含侵不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な含侵状態であることが確認された。
【0084】
(比較例5)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を80質量部、カヤラッドHX220を20質量部、イルガキュア369を2質量部、カヤキュアITXを0.4質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0085】
この樹脂を320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量930mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射して、厚さ2mmとなるように硬化させ、硬化物のTgを測定すると231℃であった。また硬化物の曲げ破断伸度を測定したところ、4.5%であり、靱性の低い樹脂であることが確認された。
【0086】
強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂の含有率が50質量%となるよう含浸しプリプレグを作製した。
【0087】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面への未硬化樹脂の染み出しはなく、プリプレグの硬化が確認された。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgを示した。またこの成形体をカットし断面を研磨し光学顕微鏡にて拡大観察したところ、含侵不良、ボイドはほとんど確認されず、良好な含侵状態であることが確認された。
【0088】
(比較例6)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、エポキシエステル3000A を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、イルガキュア369を2質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0089】
この樹脂を含侵させる強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂含有率が50質量%となるよう含侵させプリプレグを作製した。
【0090】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面へ未硬化樹脂が染み出しており、プリプレグの硬化は不充分であった。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ明確なtan δのピークを示さず、Tgを測定できなかった。
【0091】
(比較例7)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、エポキシエステル3000A を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、カヤキュアDETX−Sを2質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0092】
この樹脂を含侵させる強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂含有率が50質量%となるよう含侵させプリプレグを作製した。
【0093】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面は未硬化の樹脂でべたついており、プリプレグの硬化は不充分であった。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ明確なtan δのピークを示さず、Tgを測定できなかった。
【0094】
(比較例8)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、エポキシエステル3000A を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、攪拌混合した。
【0095】
この樹脂を含侵させる強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、樹脂含有率が50質量%となるよう含侵させプリプレグを作製した。
【0096】
この前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面は未硬化の樹脂でべたついており、プリプレグの硬化は不充分であった。また、この紫外線を照射したプリプレグを150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgが確認された。
【0097】
(比較例9)
ラジカル硬化性樹脂として、アロニックスM−315を40質量部、エポキシエステル3000A を30質量部、カヤラッドHX220を30質量部、イルガキュア369を2質量部、パーブチルOを1.5質量部計量し、固形分が溶解するまで攪拌混合した。
【0098】
この樹脂を含侵させる強化繊維として実施例1と同じ炭素繊維織物を用い、前記ラジカル硬化製樹脂を樹脂含有率が50質量%となるよう含侵させプリプレグを作製した。
【0099】
前記プリプレグを320nm−390nmモニターでのピーク照度400mW/cm2の条件で、積算光量1850mJ/cm2の光量を裏面と表面にそれぞれ1回ずつ照射したところ、成形体表面へ未硬化樹脂が染み出しており、プリプレグの硬化は不充分であった。また、この紫外線にて硬化した成形体を150℃、1時間の条件にて後硬化し、Tgを測定したところ150℃を超えるTgが確認された。
【0100】
上記した比較例および実施例により得られた結果を、表1および表2にまとめて示す。これらの表においては、紫外線照射によるプリプレグ硬化性の判断結果として下記の手法により判断した。
表面が硬化しており、硬化したプリプレグ表面を指で力を加えても未硬化樹脂の染み出しによるべた付きが出ないものを○とした。表面は硬化しているものの、硬化したプリプレグ表面に指で力を加えると内部の未硬化樹脂が表面に染み出すため、ベタつきが感じられ、内部が未硬化と判断されたものを△とした。紫外線照射後のプリプレグ表面を触るとべとつきが残っており、明らかに樹脂が未硬化と判断されるものを×として、表1及び表2中に表記した。
【0101】
また、後硬化後の耐熱性測定の結果として、Tgが150℃以上のものは○、150℃に満たないものは×として、表1および表2中に表記した。
【0102】
樹脂組成物の強化繊維への含侵性を以下の方法で判断した。
まず、得られた繊維強化複合材料をダイヤモンドカッターにて切断し、その切断面を、サンドペーパー及びアルミナ微粒子を用いて切断面を研磨することによって、切断傷及び研磨傷を取り除いた後、その研磨した面を光学顕微鏡にて75倍の倍率で拡大観察を行なった。切断研磨したプリプレグ断面に、多数のボイドや未含侵部分が見られたものは△、ボイドや未含侵部分がほとんど見られず、良好な含侵状態を示したものは○とし、表1及び表2中に表記した。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と、ラジカル重合性樹脂組成物とを少なくとも含む繊維強化樹脂複合材料用プリプレグであって;該ラジカル重合性樹脂組成物が、以下の(a),(b),(c)成分、
(a)化学式Iで示されるトリ(メタ)アクリレート化合物30−50質量部
【化1】

(R1は水素もしくはメチル基である)
(b)ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物20−50質量部
(c)化学式IIで示されるジ(メタ)アクリレート化合物10−35質量部
【化2】

(R1は水素もしくはメチル基、R3は炭素数3〜6の直鎖型炭化水素基、R4は炭素数2〜15の分岐、環状、または直鎖型炭化水素基、または芳香環を有する炭化水素基であって、該構造中にエステル構造を含んでいても良い)
を必須成分として含むラジカル重合性樹脂100質量部と、
(d)α−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤及びチオキサントン型光重合開始剤を合わせて0.05−10質量部、および
(e)熱重合開始剤0.05−10質量部
を含むラジカル重合性樹脂組成物である繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ。
【請求項2】
10時間の半減期を得るための温度が40℃以上130℃以下の(e)熱重合開始剤を用いる請求項1に記載の繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ。
【請求項3】
前記強化繊維として、炭素繊維を用いる請求項1または2に記載の繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ。
【請求項4】
前記強化繊維として、(メタ)アクリレート基およびエポキシ基を分子内にそれぞれ少なくとも1個づつ有する化合物を有するサイジング剤が付着した炭素繊維を用いる請求項3に記載の繊維強化樹脂複合材料用プリプレグ。

【公開番号】特開2006−152161(P2006−152161A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346583(P2004−346583)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】