説明

繊維強化複合材料成形品の製造方法

【課題】ピンホールと繊維蛇行の発生を防止でき、表面欠陥の無い外観に優れた繊維強化複合材料成形品の製造方法を課題とする。
【解決手段】強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるシート状物を上下型が形成する空間内で加熱・押圧して、繊維強化複合材料成形品を製造する際に、前記成形品の片面表面積の80〜100%となるように前記シート状物を前記成形品の片面を成形する型に配置する繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、前記上下型として、上下型間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部から型の端部に向かって距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている型を使用する繊維強化複合材料成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料成形品(以下「FRP」という。)は、軽量でかつ高強度及び高剛性であるため、スポーツ、レジャー用途から、自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。
FRPの製造には、成形材料として、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸した繊維強化複合材料(プリプレグ)や、通常12〜50mmに切断した強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸したシートモールディングコンパウンド(SMC)等が好適に用いられている。特に、実質的に連続した強化繊維を一方向に引き揃えてなるプリプレグや織物プリプレグ等を用いることは、SMCを用いるより、FRPの強度の点で有利である。
【0003】
成形材料からFRPを製造する方法としては、プリプレグを型内に配置してオートクレーブ内で硬化する製造方法、中芯材の上下にプリプレグを配置したものを真空バッグフィルムで覆い、真空引きしながら加熱硬化する製造方法、プリプレグを成形用型内で圧縮成形する製造方法等が知られている。
なかでも圧縮成形によるFRPの製造方法は、オートクレーブ又は真空バッグフィルムを用いた製造方法と同等の外観と強度を有するFRPが得られるのに加えて、成形時間が比較的短時間であるため、大量生産用として好適な方法である。また、成形用型の形状を容易に加工できることから、複雑な形状のFRPの製造も容易であるという利点がある。
【0004】
しかしながら、圧縮成形においては、成形用型を締めた際、キャビティに空気が残存し、この残存した空気の影響により、成形品にピンホールが発生しやすい問題があった。成形品に生じたピンホールは、塗装時に塗装欠陥の原因となるおそれがある。
また、圧縮成形によりFRPを製造する際、熱硬化性樹脂は、加熱によりその粘度が下がり、加圧によってプリプレグ中で流動する。熱硬化性樹脂の流動方向が一方向でないと強化繊維の配向が乱れ、その乱れた状態で硬化することにより、成形品に繊維蛇行が生じる問題があった。繊維蛇行は、成形品表面の波打ちの原因となり、成形品の表面平滑性を悪化させる。
【0005】
これらピンホールと繊維蛇行の発生を防止するため、脱気機構を有する型を予め硬化温度以上に調温した後、型の成形面の片面表面積とプリプレグの片面表面積との比率が一定の範囲となるように圧縮成形する、繊維強化複合材料成形品の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
また強化繊維の配向の乱れを抑制する技術としては、プリプレグの両側に不織布層を配置する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第04/048435号パンフレット
【特許文献2】特開平10−138375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FRPの製造において、特に厚さ2.0mm以下の薄物のシート状のFRPを製造する場合、ピンホールや繊維蛇行等の表面欠陥の無い外観に優れた成形品の製造が求められる。
しかし、特許文献1の技術では、成形用型を締めた際にキャビティに空気が残存することに変わりがなく、また、成形用型が締まる際、プリプレグ表面の全面が型面により同時に加圧されることにより、熱硬化性樹脂が多方向に流動するため、強化繊維の配向が乱れやすく、繊維蛇行の発生を充分に抑えることができない。
特許文献2の技術は、プリプレグからなる連続繊維層以外に不織布層を用意しなければならず、また、不織布層が介在するため、薄物のシート状のFRPの製造には適さない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ピンホールと繊維蛇行の発生を防止でき、表面欠陥の無い外観に優れたFRPの製造方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の繊維強化複合材料成形品の製造方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるシート状物を上下型が形成する空間内で加熱・押圧して、繊維強化複合材料成形品を製造する際に、前記成形品の片面表面積の80〜100%となるように前記シート状物を前記成形品の片面を成形する型に配置する繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、前記上下型として、上下型間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部から型の端部に向かって距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている型を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のFRPの製造方法によれば、ピンホールと繊維蛇行の発生を防止でき、表面欠陥の無い外観に優れたFRPを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】型の一実施形態例(型が開いている状態)を示す縦断面図である。
【図2】図1の型がキャビティを形成した際の様子を示す(a)縦断面図と、(b)シアエッジ部の拡大縦断面図である。
【図3】図2の型で圧縮成形して得られるFRPの一例を示す(a)斜視図と、(b)A−A線に沿う断面図である。
【図4】型の他の実施形態例を示す縦断面図である。
【図5】型の他の実施形態例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<FRPの製造方法>
本発明のFRPの製造方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるシート状物を、特定の上下型が形成する空間内で加熱・押圧して、FRPを製造する方法である。
【0013】
(シート状物)
本発明におけるシート状物は、強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなる繊維強化複合材料である。
かかる繊維強化複合材料としては、たとえば、実質的に連続した強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸したもの(プリプレグ)、短繊維状の強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸したもの(SMC)が挙げられ、なかでもFRPの強度向上に優れることから、プリプレグが好ましい。また、繊維強化複合材料としては、プリプレグの少なくとも片側表面にSMCを重ね合わせた材料等も挙げられる。
プリプレグの形態は、特に限定されず、たとえば、強化繊維を一方向に引き揃えたUDプリプレグ、強化繊維を製織した織物プリプレグ等が挙げられる。FRPの意匠性を高めるために、FRPの表面は織物プリプレグとし、FRPの内部はUDプリプレグとする等、複数のプリプレグを併用することもできる。
本発明においては、たとえば長さ5cm以上の長繊維を含有する繊維強化複合材料を用いても、繊維蛇行の発生を防止でき、外観に優れるとともに、強度の高いFRPを製造することができる。
【0014】
強化繊維としては、たとえば、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維、高強度ポリエステル繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。これらの複数の強化繊維を組み合わせて用いてもよい。なかでも、比弾性率が良好で軽量化に大きな効果が認められることから、炭素繊維又は黒鉛繊維が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
また、本発明におけるシート状物は、強化繊維に、熱硬化性樹脂を主成分として各種添加剤(硬化剤、離型剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、充填材等)を含む組成物を含浸したものでもよい。
【0015】
本発明においては、シート状物を、そのサイズが最終的に製造されるFRPの片面表面積の80〜100%の大きさとなるように、好ましくは90〜100%の大きさとなるように、前記FRPの片面を成形する型に配置する。
FRPの片面表面積の80%未満であると、型が締まる際、シート状物の変形が大きくなるため、熱硬化性樹脂が大きく流動し、これに伴い強化繊維の配向が乱れて繊維蛇行が生じやすくなる。
FRPの片面表面積の100%を超えると、シート状物が型面からはみ出して型を締める際の障害となる、又はシート状物が折り畳まれることにより強化繊維の配向が乱れて繊維蛇行が生じやすくなる。
シート状物の配置方法は、たとえば、複数枚のプリプレグを予め一体化した所定の大きさのプリフォーム状のものを配置する方法、配置する際に所定の大きさとなるように複数枚のプリプレグを積層する方法等が挙げられる。
ここで、「FRPの片面表面積の80〜100%の大きさ」とは、当該FRP(圧縮成形後)の片面に対応するシート状物(圧縮成形前)の面の大きさを意味する。
【0016】
また、特に高品質なFRPを得るため、シート状物の体積と厚さについては、キャビティ(得られる成形品)の形状に近いことが好ましい。
シート状物は、キャビティの体積の100〜120%となるものを用いることが好ましい。キャビティの体積の100%未満であると、キャビティがシート状物で完全に満たされないため、シート状物に充分な圧力が加わらず、得られるFRPの形状が不安定となるおそれがある。120%を超えると、型を締めるのが容易でなくなる。
シート状物は、キャビティの最薄成形部の厚さ(上下型の最近接部における上下型間の距離)の100〜150%となるものを用いることが好ましい。キャビティの最薄成形部の厚さの100〜150%の範囲であれば、キャビティがシート状物で満たされ、シート状物の全面を均等に加圧することができ、得られるFRPの形状が安定する。
【0017】
(型)
本発明においては、上下型として、上下型間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部から型の端部に向かって距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている型を使用する。
【0018】
図1は、型の一実施形態例(型が開いている状態)を示す縦断面図である。
本実施形態の型10は、一対の型として上型11(雌型)と下型12(雄型)とを備えている。
この例では、上型11が下型12に対して垂直方向に昇降することで、一対の型が相対移動(相対離間及び相対接近)して型開きと型締めが行われる。
上型11と下型12の材質としては、圧縮成形時に溶融したり変形したりしないものであればよく、好ましくは金属が用いられ、場合によっては樹脂であってもよい。
【0019】
図1において、型10には、下型12の型面12aに、FRPの片面表面積の80〜100%となるようにシート状物13(シート状の繊維強化複合材料)が配置されている。
ここでは、シート状物13の片面13a表面積が、FRPの片面表面積の80〜100%の大きさとなっている。
型面12aは、表面積の基準となる「FRPの片面」を成形する型面となる。
【0020】
図2は、図1の型がキャビティを形成した際の様子を示す(a)縦断面図と、(b)シアエッジ部の拡大縦断面図である。なお、図2では、シート状物と、シート状物を加熱する手段は図示していない。
型10においては、上型11と下型12とが相対接近したことにより、型面11a、12aで囲まれたキャビティ14が形成されている。キャビティ14内では、シート状物が加熱されながら圧縮されることにより成形品が成形される。
型10の端部17a、17bには、上型11と下型12とが対向する面により、下型12に対して垂直方向に延びたガス抜き用の間隙15(いわゆるシアエッジ構造)が形成されている(図2(b))。
【0021】
本実施形態の型10は、上型11と下型12との間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部16から、型10の端部17a、17bに向かって、距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている。
【0022】
図2(a)において、「最近接部16」は、キャビティ14における16a−16b間の領域であり、この領域では、型面11a、12a間の距離(t)が最小値(t)で一定となっている。
16a−16b間の距離は、空気の型外への排出性の向上と、型を締める際にできるだけ熱硬化性樹脂の流動方向を一様にして強化繊維の配向を乱さない点から、端部17a−17b間の距離の75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、5〜25%であることがさらに好ましい。
また、「最近接部16」は、キャビティ14の中心に位置していることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂の流動が小さく抑えられることに加えて、熱硬化性樹脂を、最近接部16から端部17a、17bに向かって(キャビティ14の中心から外周へ)一様に流動させることができるため、熱硬化性樹脂が流動しても強化繊維の配向が乱れにくく、繊維蛇行の発生がより抑制される。
【0023】
型10において、型面11a、12a間は、16a−16b間の領域(最近接部16)から端部17a、17bに向かって、型面11a、12a間の距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている。
すなわち、端部17a、17bで対向している型面11a、12a間の距離(t)、(t)は、それぞれ最も長くて1.2×(t)となる。
【0024】
型10は、たとえば最近接部16で対向している型面11a、12a間の距離(t)が1.0mmである場合、端部17a、17bで対向している型面11a、12a間の距離(t)、(t)はそれぞれ1.0mm超1.2mm以下の範囲となっている。
【0025】
[FRPの製造方法]
本発明のFRPの製造方法の実施形態の一例として、前記シート状物を用いて、図1〜2に例示した型10により圧縮成形する方法について説明する。
【0026】
まず、型10を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上まで加熱する。
次いで、型面12aに、上述した成形品の片面表面積の80〜100%となるようにシート状物13を配置する。
次いで、上型11と下型12とを締めて型10を型締めし、キャビティ14内で、シート状物13を加熱しながら圧縮する。
圧縮の後、上型11と下型12とを相対離間して型10を型開きし、FRPを取り出す。
【0027】
図3は、図2の型で圧縮成形して得られるFRPの一例を示す(a)斜視図と、(b)A−A線に沿う断面図である。
FRP20は、最薄部26から端部27a、27b、27c、27dに向かってそれぞれ連続的に厚みが増しているシート状の成形体である。
図3における最薄部26、FRP20における26a−26b間の領域は、図2における最近接部16、キャビティ14における16a−16b間の領域にそれぞれ対応している。
端部27a、27b、27c、27dの厚さは、最薄部26の厚さの20%以下の範囲で、最薄部26より厚みが増している。
【0028】
以上説明した本発明のFRPの製造方法によれば、型10を用いることにより、型を締める際、型面11aが、シート状物13と、最近接部16から端部17a、17bに向かって順次、接触していく。
これに伴い、型面11a側のシート状物13の片面と型面11aとの間の空気が、最近接部16から端部17a、17bに向かって流れて型10外へ排出されやすくなっている。そのため、キャビティ14に空気が残存しにくい。これにより、本発明は、ピンホールの発生を防止できる。
また、成形品の片面表面積の80〜100%となるようにシート状物13を配置することにより、型10を締める際、シート状物13の変形が小さいため、熱硬化性樹脂の流動が抑制されている。加えて、型面11aが、シート状物13と、最近接部16から端部17a、17bに向かって順次、接触していくことにより、シート状物13中の熱硬化性樹脂が、最近接部16から端部17a、17bに向かって一様に流動するようになっている。これにより、熱硬化性樹脂が流動しても強化繊維の配向が乱れにくい。以上の理由により、本発明は、繊維蛇行の発生を防止できる。
【0029】
上述したように、本発明のFRPの製造方法において、型10における最近接部16を、好ましくはキャビティ14の中心に設けることにより、型10を締める際、特に、熱硬化性樹脂を最近接部16から端部17a、17bへ向かって(キャビティ14の中心から外周へ)一様な流れで流動させることができるため、強化繊維の配向がより乱れにくくなり、繊維蛇行の発生がさらに防止される。
本発明者らは、FRPの製造において、ピンホール又は繊維蛇行を生じて成形品に表面欠陥が発生した場合、その表面欠陥の発生部に、プリプレグを追加積層して成形すると、当該発生部は表面欠陥が修復されて平滑になるものの、プリプレグを追加積層していない所に、熱硬化性樹脂が多方向から流れ込むことにより、繊維蛇行等が生じて新たに表面欠陥が発生しやすいことを確認した。
熱硬化性樹脂を一方向に流動させる方法としては、型の圧受け板にシムを追加したり抜いたりして、キャビティの端部で対向している型面間の距離を微調整する方法が考えられる。しかし、この方法では、熱硬化性樹脂の流動がキャビティの端部から対向する端部への一方向のみであり、また、型を締める際、シムによる型面間の距離の調整を都度行わなければならず、作業効率が低下する。
対して、型10を用いた本発明は、最近接部16をキャビティ14の一端に設けることにより熱硬化性樹脂を当該一端から対向するキャビティ14の端部方向の一方向へ、又は最近接部16をキャビティ14の中心に設けることにより熱硬化性樹脂をキャビティ14の中心から外周へ、それぞれ流動させることができる。また、本発明は、型を締める際、型面間の距離の調整を行う必要がないため、作業効率にも優れている。
【0030】
本発明に用いられる型は、図1〜2に示す型10に限定されず、たとえば、図4〜5に示す形態のものであってもよい。
図4に示す型30は、上型31と下型32との間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部36から、型30の端部37a、37bに向かって、距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている。端部37a、37bで対向している型面31a、32a間の距離(t)、(t)は、それぞれ最も長くて1.2×(t)となる。
図4において、「最近接部36」は、図1〜2に示すような領域ではなく、キャビティ34の中心部(型面31aのほぼ中心と型面32aのほぼ中心とを結ぶ線分の位置)である。
【0031】
図5に示す型40は、上型41と下型42との間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部46から、型40の端部47a、47bに向かって、距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている。端部47a、47bで対向している型面41a、42a間の距離(t)、(t)は、それぞれ最も長くて1.2×(t)となる。型面42aは略平面を形成している。
図5において、「最近接部46」は、キャビティ44における46a−46b間の領域であり、この領域では型面41a、42a間の距離(t)が最小値(t)で一定である。
なお、図4〜5に示す型においては、いずれも、型の端部に、上型と下型とが対向する面によりシアエッジ構造が形成されている。
【0032】
型には、必要に応じて、蒸気や電気ヒーターによって温度調節を行うための調整機構、成形体を脱型するために必要な圧縮空気又は油圧によるエジェクター機構、ボイドやピンホールを抑制するために成形時に型内を真空引きできる機構等を取り付けることができる。
一対の型としては、上述したもの以外のものであってもよく、上型と下型からなり下型に対して垂直方向に相対移動自在なものの場合でも、上型が昇降するのではなく、下型が昇降するものでもよいし、上型及び下型のいずれもが昇降するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のFRPの製造方法によれば、ピンホールと繊維蛇行の発生を防止でき、表面欠陥の無い外観に優れたFRPを製造できる。本発明によれば、塗装欠陥を生じにくく、反り等の変形のない表面平滑性の高いFRPを製造できる。また、クロスプリプレグを成形する際、クロス目の乱れがなく意匠の優れるFRPが得られることが期待できる。
本発明のFRPの製造方法は、特に厚さ2.0mm以下の薄物のFRPを製造するのに好適な方法であり、ボンネット、ルーフ、トランク等の自動車用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
10 型 11 上型 12 下型 13 シート状物 14 キャビティ 16 最近接部 20 FRP 26 最薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるシート状物を上下型が形成する空間内で加熱・押圧して、繊維強化複合材料成形品を製造する際に、
前記成形品の片面表面積の80〜100%となるように前記シート状物を前記成形品の片面を成形する型に配置する繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記上下型として、上下型間の距離(t)が最小値(t)となる最近接部から型の端部に向かって距離(t)が1.2×(t)まで徐々に大きくなっている型を使用する繊維強化複合材料成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−56764(P2011−56764A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208459(P2009−208459)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】