説明

繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物

【課題】 本発明は、スポーツ用途、航空宇宙用途、一般産業用途に好適に使用することのできる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 以下の(A)、(B)および(C)を含有してなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
(A)アルキル(メタ)アクリレート単量体と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するビニル重合性単量体と、ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体とをゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体
(B)エポキシ樹脂
(C)芳香族ポリアミン硬化剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用途、航空宇宙用途、一般産業用途に好適に使用することのできる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とエポキシ樹脂組成物とからなる繊維強化複合材料は、スポーツ用途をはじめ、航空宇宙用途、一般産業用途に広く用いられている。近年、伸度1.5%以上の高伸度炭素繊維も開発されているが、これを硬化物が高い伸度を発現するエポキシ樹脂組成物と組み合わせることにより高い伸度を有する繊維強化複合材料の開発も期待される。
【0003】
ところがエポキシ樹脂組成物は、一般にその硬化物が脆く、靭性が低いことが欠点であり、このようなエポキシ樹脂組成物を用いても高伸度炭素繊維の特性を十分に生かすことができない。
【0004】
エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸びを向上させる方法としては、
1)硬化物中の架橋密度を低下する
2)熱可塑性樹脂を配合し、柔軟性を付与する
以上が知られている。しかし上記の方法は、いずれも硬化物の耐熱性が低下する欠点があった。
【0005】
そこで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度と耐熱性を両立させる試みとして、熱硬化性樹脂組成物中に不溶なアクリルゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴムなどのゴム質重合体を分散する方法が検討されている(例えば特許文献1)。
【0006】
このようなゴム質重合体をエポキシ樹脂組成物中に分散させる手法においては、ゴム質重合体が均一な大きさを持ってエポキシ樹脂組成物中に分散していることが望まれるが、一般に高い耐熱性を示すエポキシ樹脂組成物は、求められる耐熱温度に近い比較的高い温度で硬化させる必要があるため、その際ゴム質重合体同士が相互に融着、凝集してしまい、エポキシ樹脂組成物の硬化物中に均一に分散した状態とすることが困難であった。
【特許文献1】特開平9−227693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高度な耐熱性および靭性、特に高い破断伸度を有する硬化物を得ることのできる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、以下の(A)、(B)および(C)を含有してなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物にある。
【0009】
(A)アルキル(メタ)アクリレート単量体と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するビニル重合性単量体と、ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体とをゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体
(B)エポキシ樹脂
(C)芳香族ポリアミン硬化剤
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高度な耐熱性および靭性、特に高い破断伸度を有する硬化物を得ることのできる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
『ゴム質重合体』
本発明のグラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくはn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートである。単量体には二個以上のビニル重合性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されないがアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。
【0012】
『グラフト共重合体』
本発明では(A)として、アルキル(メタ)アクリレート単量体と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するビニル重合性単量体と、ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体とをゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体を用いる。
【0013】
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくはメチルメタクリレート、エチルアクリレートである。
【0014】
(A)はエポキシ基と反応し得る官能基を持つビニル重合性単量体をグラフト重合されているので、本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化する際に、グラフト共重合体がエポキシ樹脂と反応しその中に固定される。
【0015】
エポキシ基と反応し得る官能基としては、エポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、アミン基、イミン基、カルボン酸基、無水カルボン酸基等が挙げられる。ビニル重合性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。好ましくはグリシジルメタクリレートである。
【0016】
エポキシ基と反応し得る官能基を持つビニル重合性単量体はグラフト共重合体100質量部中に30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下である。グリシジルメタクリレートを使用する場合は、3質量部以下であることが好ましい。
【0017】
ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体は、シェル成分の架橋度を上げることによって、マトリックス樹脂を加熱硬化する際にシェルがガラス転移点以上に加熱された状態でゴム微粒子同士が接触しても融着せぬような目的で加えられる。
【0018】
ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体の種類は特に限定されないが、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。
【0019】
上述のアルキル(メタ)アクリレート単量体と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するビニル重合性単量体と、ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体とをゴム質重合体にグラフト重合させることで、高温での硬化過程においてもグラフト共重合体同士が接触、融着せず、ゴム粒子が好ましい分散状態を維持することができる。これにより高度な耐熱性および靭性、特に高い破断伸度を有する繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0020】
『グラフト共重合体の製造方法』
本発明の(A)を得る際の重合方法や重合条件は特に限定されないが、乳化重合、好ましくはソープフリー乳化重合などの公知の方法で製造されたものを用いることができる。
【0021】
『(A)の平均粒子径』
(A)の平均粒子径は、0.1〜1μmとすることが好ましい。平均粒子径を0.1μm以上とすることで、耐衝撃性の改質効果を十分なものとすることができるとともに、本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸する際に起こるグラフト共重合体の再凝集を抑止することができ、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の粘度上昇を避けることができる。一方、平均粒径を1μm以下とすることで強化繊維に本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を含浸する際に強化繊維を構成する単繊維の間隙を通過することができるので、結果として繊維強化複合材料中にグラフト共重合体が均一に分布することとなる。(A)の平均粒子径は、より好ましくは0.6〜0.8μmである。
【0022】
『(A)の平均粒子径の測定方法』
本発明の(A)の平均粒子径は、ラテックスを蒸留水で希釈し、(株)堀場製作所製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定した50%体積平均粒子径である。
【0023】
『エポキシ樹脂』
本発明で(B)として用いるエポキシ樹脂は、公知の各種のものが使用でき、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有するものであれば分子構造、分子量等に特に制限はない。例えばビスフェノール型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、オキサゾリドン環型などの各種エポキシ樹脂を単独または2種以上併用して用いることができる。
【0024】
『芳香族ポリアミン』
本発明で(C)として用いる芳香族ポリアミンの具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物の耐熱性からジアミノフェニルスルフォンが好ましい。この芳香族ポリアミン硬化剤は他の硬化剤と併用してもよい。例えばフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、ジシアンジアミドやイミダゾール類、脂肪族あるいは芳香族ポリアミン等のアミン系硬化剤、有機酸及、無機酸及び酸無水物等の酸系硬化剤等が挙げられる。これらの使用量については特に制限されない。
【0025】
『樹脂粘度』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の粘度は、特に限定されないが、30℃において1〜1000000ポイズの範囲にあることが好ましい。レジンインフュージョン成形では1〜1000ポイズが好ましく、更には1〜50ポイズが好ましい。プリプレグを用いる場合やレジンフィルムを用いる場合は10000〜1000000ポイズが好ましく、更には50000〜500000ポイズが好ましい。
【0026】
『熱可塑性樹脂』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、熱可塑性樹脂を添加することができる。これらの種類については特に限定されないがポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、ABS、AES、ASA、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。硬化物の耐熱性から好ましくはポリエーテルスルフォンである。
【0027】
『添加剤』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の様々な添加剤を併用することができる。例えば、種々の硬化促進剤、シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、塩素化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムベンゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤等を使用することができる。
【0028】
『調製方法』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく公知の技術、例えばミキシングロールやニーダー等を使用することができる。
【0029】
『強化繊維』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物とともに繊維強化複合材料を構成する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維など各種の無機繊維または有機繊維を用いることができるが、繊維強化複合材料の強度上、ガラス繊維及び/又は炭素繊維が好ましい。中でも比強度、比弾性率の優れた繊維強化複合材料が得られる炭素繊維を用いることがより好ましい。本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸する方法は公知の方法が使用できる。
【0030】
『成形方法』
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を利用した繊維強化複合材料は、公知の方法で成形することが可能である。オートクレーブ成形法、オーブン成形法、バキュームバック成形法、ハンドレイアップ成形法、レジントランスファーモールディング成形(RTM)、バキュームアシストRTM等のレジンインフュージョン成形法、プレス成形法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。好ましくはプリプレグを経由した成形法である。特に好ましくはオートクレーブ成形法、オーブン成形法、バキュームバック成形法である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。実施例および比較例中の物質名の略称および評価方法は以下の通りである。
【0032】
『物質名の略称』
「エポキシ樹脂」
YH434L(商品名):東都化成製4官能型エポキシ樹脂
ELM−100(商品名):住友化学製3官能型エポキシ樹脂
jER828(商品名):ジャパンエポキシレジン製ビスフェノールA型エポキシ樹脂
BPA328(商品名):日本触媒製アクリルゴム分散ビスフェノールA型エポキシ樹脂
「芳香族ポリアミン硬化剤」
DDS:ジアミノジフェニルスルフォン
jERキュアW:ジャパンエポキシレジン製芳香族ポリアミン硬化剤
「熱可塑性樹脂」
PES:ポリエーテルスルフォン
『硬化樹脂の3点曲げ試験』
2mm厚の硬化樹脂板を60mm×8mmに切り分け、クロスヘッドスピード2mm/min、サポートおよびノーズ圧子の曲率R=3.2、試験片厚みとサポートスパンの比L/D=16にて3点曲げ試験を行った。ASTM D790に示された計算法により弾性率、強度および破断伸度を算出した。
【0033】
『硬化樹脂の破壊靭性値(GIC)測定』
ASTM D5045(SENB法)に準拠して3mm厚の硬化樹脂板を所定の大きさに切り分け、切込み部にはカッタ刃を当ててノッチを入れた試験片のモードI臨界エネルギー解放率GICを求めた。
【0034】
『硬化樹脂のガラス転移温度(Tg)測定』
レオメータ(レオメトリック社製RDA−700)にて30℃より5℃ずつ段階的に昇温し、各温度における損失正接Tanδを温度に対してプロットし、Tanδが最大となった温度を硬化樹脂のガラス転移温度Tgとした。
【0035】
『グラフト共重合体の製造例』
(製造例1)グラフト共重合体(M−1)
5リットルのフラスコに、純水88部、ブチルアクリレート5部、アリルメタクリレート0.125部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。つぎに予め調製した過硫酸カリウム0.10部、純水5.2部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー乳化重合を行った。次にブチルアクリレート65部、アリルメタクリレート1.625部、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.6部(花王(株)製、;商品名:ペレックスOT−P)、純水34.0部の混合液を180分かけて滴下、1時間保持し、第二段目の乳化重合を行いアクリル系ゴム重合ラテックス(R−1)を得た。得られたR−1に、メチルメタクリレート28.4部、エチルアクリレート0.6部、グリシジルメタクリレート1部、アリルメタクリレート0.75部、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を100分かけて滴下、1時間保持後乳化重合を終了し、グラフト共重合体ラテックスを得た。得られたグラフト共重合体ラテックスは噴霧乾燥機を用い、圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃にて乾燥し、ラテックス平均粒子径600nmの改質剤(M−1)を得た。
【0036】
(製造例2)グラフト共重合体(M−2)
製造例1で得られたラテックスR−1に、メチルメタクリレート29.4部、エチルアクリレート0.6部、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を100分かけて滴下、1時間保持後乳化重合を終了し、グラフト共重合体ラテックスを得た。得られたグラフト共重合体ラテックスは噴霧乾燥機を用い、圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃にて乾燥し、ラテックス平均粒子径600nmの改質剤(M−2)を得た。
【0037】
製造例1〜2にて得られたグラフト共重合体の概要を表1に示す。
【表1】

【0038】
(実施例1)
表2に示す組成比にて、フラスコ内でPESをYH434Lに170℃にて3時間かけて加熱溶解した。これにELM−100とエピコート828をフラスコ内でスリーワンモーター攪拌棒を使用して混合し、さらに上記のグラフト共重合体(M−1)を10重量部加えて混合した。該混合物にDDSを加え、均一に分散するまで混合してエポキシ樹脂組成物(NR−1)を得た。該エポキシ樹脂組成物を、2あるいは3mmのスペーサーを挟み込んだガラス板間にキャストし、熱風乾燥機中180℃にて2時間保持して加熱硬化させて厚さ2あるいは3mmの樹脂硬化物(CR−1)を得た。樹脂硬化物(CR−1)の色調は均質性を示し、ゴム成分が均一に分散していた。この樹脂硬化物(CR−1)の破壊靭性値GIC、破断伸度ε、ガラス転移温度Tgはいずれも高い価を示した。測定結果を表2に示す。
【0039】
(比較例1)
グラフト共重合体(M−1)に代えてグラフト共重合体(M−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(NR−2)および樹脂硬化物(CR−2)を得た。この樹脂硬化物(CR−2)は、透明な相と不透明な白濁した相が相分離している様子が肉眼で観察され、ゴム成分が均一に分散されなかった。樹脂硬化物(CR−2)の破壊靭性値GICおよびガラス転移温度Tgは高い価を示したものの、破断伸度εは低かった。結果を表2に示す。
【0040】
(比較例2)
グラフト共重合体(M−1)を加えない以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(NR−3)および樹脂硬化物(CR−3)を得た。樹脂硬化物(CR−3)は、ゴム成分を全く含まないため透明で均一な外観であった。樹脂硬化物(CR−3)の破断伸度εおよびガラス転移温度Tは高い価を示したものの、破壊靭性値GICは低かった。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例3)
エピコート828に代えてBPA328を使用した以外は、比較例2と同様にして樹脂組成物(NR−4)および樹脂硬化物(CR−4)を得た。樹脂硬化物(CR−4)は、透明な相と不透明な白濁した相が分離している様子が肉眼で観察され、ゴム成分が均一に分散されなかった。樹脂硬化物(CR−4)のガラス転移温度Tは高い価を示したものの、破断伸度εおよび破壊靭性値GICは実施例1に比較して劣る値であった。結果を表2に示す。
【0042】
(実施例2)
表3に示す組成比にて、エポキシ硬化剤としてDDSに代えてjERキュアWを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(NR−5)および樹脂硬化物(CR−5)を得た。樹脂硬化物(CR−5)の色調は(CR−1)同様に均質性を示し、ゴム成分が均一に分散していた。これらの破壊靭性値GIC、破断伸度ε、ガラス転移温度Tはいずれも高い価を示した。測定結果を表3に示す。
【0043】
(比較例4)
グラフト共重合体(M−1)に代えてグラフト共重合体(M−2)を用いた以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物(NR−6)および樹脂硬化物(CR−6)を得た。この樹脂硬化物(CR−6)は、透明な相と不透明な白濁した相が相分離している様子が肉眼で観察され、ゴム成分が均一に分散されなかった。樹脂硬化物(CR−6)の破壊靭性値GICおよびガラス転移温度Tは高い価を示したものの、破断伸度εは実施例2よりも低かった。結果を表3に示す。
【0044】
(比較例5)
グラフト共重合体(M−1)を加えない以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物(NR−7)および樹脂硬化物(CR−7)を得た。樹脂硬化物(CR−7)は、ゴム成分を全く含まないため透明で均一な外観であった。樹脂硬化物(CR−7)の破断伸度εおよびガラス転移温度Tは高い価を示したものの、破壊靭性値GICは低かった。結果を表3に示す。
【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)、(B)および(C)を含有してなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
(A)アルキル(メタ)アクリレート単量体と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するビニル重合性単量体と、ビニル重合性官能基を二個以上有するビニル重合性単量体とをゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体
(B)エポキシ樹脂
(C)芳香族ポリアミン硬化剤

【公開番号】特開2009−242571(P2009−242571A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90511(P2008−90511)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】