説明

繊維束配列装置

【課題】繊維束配列装置におけるガイドパイプが破損しないようにする。
【解決手段】導入パイプ34には磁性体の筒40が嵌合して固定されている。筒40には環状の連結突条401が一体形成されており、連結突条401には円板42が環状の永久磁石43を介して連結されている。環状の永久磁石43は、円板42に固定(例えば接着剤で接着して固定)されている。永久磁石43は、磁性体の連結突条401の先端面に磁力によって連結されている。円板42にはガイドパイプ31が連結して固定されている。直線形状のガイドパイプ31と導入パイプ34とは、筒40、永久磁石43及び円板42からなる連結手段49を介して直列に連結されている。ガイドローラ33を経由して案内されてきた繊維束Fは、導入孔341内及びガイド孔311内へ導かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束を通されるガイド孔を有するガイドパイプと、前記ガイドパイプを移動させる移動手段とを備え、前記ガイドパイプを移動させることによって前記ガイドパイプのガイド孔内から前記繊維束を引き出しながら配列する繊維束配列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量の構造材料として広く使用されている繊維強化複合材のうち、三次元織物(三次元繊維構造体)を強化材として使用したものは、強度が非常に高く、航空機等の構造材として一部使用されている。このような繊維強化複合材の強化材に使用する三次元繊維構造体の製法としては、繊維束を折り返し状に配列した繊維束層を複数積層して少なくとも2軸配向となる繊維束積層群を形成し、その繊維束積層群を各繊維束層と直交する方向に配列される厚さ方向糸で結合する三次元繊維構造体の製造方法がある。特許文献2には、配列面に沿って移動されるガイドパイプから繊維束を繰り出しながら、所定ピッチで配置したピン間に繊維束を偏平な状態で、かつ繊維束の偏平な面が配列面に沿った状態で折り返し状に配列して繊維束層を形成する繊維束配列装置が開示されている。繊維束を複数積層して形成された繊維束積層群は、繊維束配列装置から外された後に厚さ方向糸を挿入される。
【0003】
特許文献1には、繊維束積層群に厚さ方向糸を挿入する装置が開示されている。特許文献1に開示の装置では、挿入された厚さ方向糸の抜けを防止するための抜け止め糸を挿通する機構が組み込まれている。抜け止め糸を挿通するための抜け止め糸挿通用針は、抜け止め糸挿通用針を駆動する装置を構成する動力伝達部に、ダンパを介して係合されている。動力伝達部は、往復走行されるベルトに連結されており、ベルトが往復走行されると、抜け止め糸挿通用針が挿通動作(往復動作)を行なう。抜け止め糸挿通用針が厚さ方向糸を挿入するための厚さ方向糸挿入針や厚さ方向糸に接触すると、抜け止め糸挿通用針に異常な負荷が掛かる場合がある。
【0004】
ダンパは、例えばシリンダであり、シリンダのプランジャの先端が抜け止め糸挿通用針の基端部に形成された凹部に係合されている。往復動作をしている抜け止め糸挿通用針に異常な負荷が掛かると、プランジャの先端が前記凹部から離脱する。これにより、厚さ方向糸挿入針、厚さ方向糸あるいは抜け止め糸挿通用針の損傷が回避される。
【特許文献1】特開2004−256943号公報
【特許文献2】特開2007−16347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繊維束配列装置のガイドパイプが移動しているときに、ガイドパイプが配列された繊維束に引っ掛かったり、ガイドパイプが前記ピンに接触したり、あるいはガイドパイプから繰り出されている繊維束に異常な張力が掛かったりしたような場合には、ガイドパイプが破損するおそれがある。しかし、特許文献1,2のいずれにおいても、このような事態を回避する手段は開示されていない。
【0006】
本発明は、ガイドパイプが破損しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊維束を通されるガイド孔を有するガイドパイプと、前記ガイドパイプを移動させる移動手段とを備え、前記移動手段によって前記ガイドパイプを移動させることによって前記ガイドパイプのガイド孔内から前記繊維束を引き出しながら配列する繊維束配列装置を対象とし、請求項1の発明は、前記ガイドパイプは、分離可能な連結手段を介して前記移動手段によって移動される被動部に連結されていることを特徴とする。
【0008】
ガイドパイプに対して横方向の異常な荷重が加えられると、前記連結手段が分離し、ガイドパイプが被動部から分離される。そのため、ガイドパイプが破損することはない。
好適な例では、前記連結手段は、前記被動部と前記ガイドパイプとの一方に固定された磁石と、前記被動部と前記ガイドパイプとの他方に固定されて前記磁石に磁力で連結された磁性体とを備えている。
【0009】
ガイドパイプに対して横方向の異常な荷重が加えられると、磁石と磁性体との磁力による連結状態が解除され、ガイドパイプが被動部から分離される。そのため、ガイドパイプが破損することはない。ここで破損とは、曲ったり折れたりしてガイドパイプが使用できなくなることを示す。
【0010】
好適な例では、前記ガイドパイプは、直線形状であり、前記移動手段は、前記ガイドパイプを平行移動し、前記ガイドパイプの長さ方向は、前記ガイドパイプの平行移動方向に対して垂直な方向であり、前記磁石と前記磁性体との連結面は、前記ガイドパイプの軸線を包囲する環状形状であって、前記ガイドパイプの長さ方向に対して垂直な平面である。
【0011】
ガイドパイプに対して加えられる横方向の異常な荷重が360°の全方位のいずれからであっても、磁石と磁性体との磁力による連結状態が確実に解除される。
好適な例では、前記連結手段は、筒形状の連結筒であり、前記連結筒は、分離位置を規定するように前記連結筒の両端の中間で周方向に一周する環状スリットを有し、前記連結筒の一端が前記被動部に離脱不能に連結されており、前記連結筒の他端が前記ガイドパイプ側に離脱不能に連結されている。
【0012】
ガイドパイプに対して横方向の異常な荷重が加えられると、連結筒が環状スリットの位置で分離し、ガイドパイプが移動手段から分離される。そのため、ガイドパイプが破損することはない。
【0013】
好適な例では、前記連結手段の分離状態と、前記連結手段が分離していない連結状態とを区別する分離有無確認センサが備えられている。
分離有無確認センサが分離状態を確認すれば、ガイドパイプを移動させる移動手段の動作を停止させることができる。
【0014】
好適な例では、前記ガイドパイプへ前記繊維束を誘導する導入パイプが前記被動部として設けられており、前記ガイドパイプは、前記連結手段を介して前記導入パイプに連結されており、前記ガイドパイプと前記導入パイプとは、直線形状であって直列に連結されており、前記導入パイプは、その軸線の周りに回転可能に前記被動部に支持されており、前記ガイドパイプのガイド孔の横断面形状は、前記繊維束を偏平な形状で繰り出し可能な偏平形状であり、前記導入パイプは、回転駆動機構によって回転される。
【0015】
導入パイプを回転させる構成では、繊維束の偏平な面がガイドパイプの移動方向に向いているようにすることができる。繊維束の偏平な面がガイドパイプの移動方向に向いた状態で、且つガイドパイプの移動方向が360°の全方位のどの方向であっても、ガイドパイプに対して横方向の異常な荷重が加えられると、連結手段が分離し、ガイドパイプが被動部から分離される。そのため、ガイドパイプが破損することはない。
【0016】
好適な例では、前記連結手段の分離状態と、前記連結手段が分離していない連結状態とを区別する分離有無確認センサが備えられており、前記ガイドパイプが前記導入パイプから分離されたときには前記導入パイプから分離されるリング部が前記ガイドパイプ側に設けられており、前記リング部は、前記導入パイプの回転軸線に対して垂直となるように前記回転軸線を包囲しており、前記分離有無確認センサの検出領域は、前記連結手段が分離していないときの前記リング部の位置に設定されている。
【0017】
導入パイプの回転位置がどこであっても、連結手段が分離したときには、分離有無確認センサは、分離したことを確実に検出する。
好適な例では、前記導入パイプのガイド孔の横断面形状は、円形であり、前記導入パイプのガイド孔の径は、前記ガイドパイプのガイド孔の径よりも大きい。
【0018】
このような構成は、繊維束を円滑に移送する上で好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ガイドパイプが破損しないようにすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1(a)は、繊維束配列装置10の全体を示す。
図2(a)に示すように、長方形状のベース11上には一対のリニアスライダ12,13がベース11の長手方向(以下においてはX軸方向という)に延びるように設けられている。リニアスライダ12は、図示しないモータを含むボールネジ機構と、ボールネジ機構の作動によってX軸方向に移動される移動体121とを備え、リニアスライダ13は、図示しないモータを含むボールネジ機構と、ボールネジ機構の作動によってX軸方向に移動される移動体131とを備えている。リニアスライダ12,13の各ボールネジ機構は、同期して作動され、移動体121,131は、同期してX軸方向へ移動する。
【0021】
移動体121,131上にはリニアスライダ14がX軸方向と直交する方向(以下においてはY軸方向という)に延びるように架設されている。リニアスライダ12,13が作動すると、リニアスライダ14は、X軸方向へ平行移動する。リニアスライダ14は、図示しないモータを含むボールネジ機構と、ボールネジ機構の作動によってY軸方向に移動される移動体141とを備えている。
【0022】
リニアスライダ12,13,14は、制御コンピュータCの作動制御を受ける。
図1(a)に示すように、移動体141には支持プレート15が止着されており、支持プレート15には支持フレーム16が止着されている。支持フレーム16には支柱17が立設されており、支柱17の上部には載置板18が止着されている。載置板18上にはモータ19及びボビンホルダ20が支持されている。ボビンホルダ20には繊維束Fからなるボビン21が装着されており、ボビン21は、モータ19の作動によって繊維束Fを繰り出す方向〔図1(a)に矢印Rで示す方向〕に回転される。繊維束Fは、多数本の単繊維(本実施形態では炭素繊維)を撚らないで偏平形状に束ねて形成されている。モータ19は、制御コンピュータCの作動制御を受ける。
【0023】
載置板18には支柱22が立設されており、支柱22の上部には一対のガイドローラ23,24が取り付けられている。ガイドローラ23,24の下方にはテンションローラ25が上下動可能に配設されている。又、支柱22の下部にはガイドロ−ラ26が取り付けられている。ボビン21から繰り出される繊維束Fは、ガイドローラ23,24、テンションローラ25及びガイドロ−ラ26によって載置板18の下方へと案内される。繊維束Fは、テンションローラ25を含む張力付与機構によって適正な張力を付与されるようになっている。
【0024】
支持フレーム16の下部にはモータ27が固定されている。モータ27の出力軸であるネジ軸271は、上下方向(以下においてはZ軸方向という)へ延びており、ネジ軸271には被動部としての支持枠28がナット部29を介して連結されている。ネジ軸271は、ナット部29に螺合されており、モータ27が作動すると、支持枠28がZ軸方向に平行移動する。モータ27は、制御コンピュータCの作動制御を受ける。
【0025】
支持枠28の下部には配列ヘッド30が取り付けられている。配列ヘッド30は、繊維束Fを繰り出す直線形状のガイドパイプ31を備えている。図5(b)に示すように、ガイドパイプ31内のガイド孔311は、偏平形状にしてあり、ガイドパイプ31は、繊維束Fを偏平な状態でガイド孔311から繰り出す。
【0026】
図1(a)に示すように、支持枠28にはガイドローラ32,33が取り付けられている。ガイドロ−ラ26を経由して案内された繊維束Fは、ガイドローラ32,33を介してガイドパイプ31内へ導かれる。
【0027】
図1(b)及び図3に示すように、支持枠28を構成する下壁281には配列ヘッド30を構成する導入パイプ34がラジアルベアリング35を介して回転可能に支持されている。被動部としての導入パイプ34は、下壁281をZ軸方向に貫通しており、導入パイプ34の導入孔341は、Z軸方向に延びている。導入パイプ34の横断面形状は、円形である。下壁281の上方に突出する導入パイプ34の突出端部にはタイミングプーリ36が止着されている。
【0028】
図3及び図2(b)に示すように、支持枠28にはモータ37が装着されており、モータ37の出力軸371にはタイミングプーリ38が止着されている。タイミングプーリ38とタイミングプーリ36とにはタイミングベルト39が巻き掛けられている。モータ37が作動すると、導入パイプ34が回転する。モータ37、タイミングプーリ36,38及びタイミングベルト39は、導入パイプ34を回転させる回転駆動機構を構成する。
【0029】
下壁281の下方に突出する導入パイプ34の突出端部には磁性体の筒40が嵌合されている。筒40は、その周面から螺合されて導入パイプ34の周面に当接する止めネジ41の締め付けによって導入パイプ34に固定されている。筒40の下面には環状の連結突条401が一体形成されており、連結突条401には円板42が環状の永久磁石43を介して連結されている。円板42の上面には環状の凹部421が凹み形成されており、環状の永久磁石43は、凹部421に嵌め込んで固定(例えば接着剤で接着して固定)されている。永久磁石43は、磁性体の連結突条401の先端面402に磁力によって平面的に連結されている。永久磁石43と筒40との連結面である連結突条401の先端面402は、Z軸方向に対して垂直な平面である。
【0030】
円板42の径中心部には嵌合孔422が貫設されており、嵌合孔422にはガイドパイプ31が嵌入されている。円板42は、その周面から螺合されてガイドパイプ31の周面に当接する止めネジ44の締め付けによってガイドパイプ31に固定されている。筒40、永久磁石43、円板42及び止めネジ41,44は、2つに分離可能な連結手段49を構成する。ガイドパイプ31は、連結手段49を介して被動部としての支持枠28に連結されている。
【0031】
ガイドパイプ31のガイド孔311は、Z軸方向に延びており、ガイド孔311の中心軸線L1〔図1(b)及び図4に図示〕と、導入パイプ34の導入孔341の中心軸線L2〔図1(b)及び図4に図示〕とは、一致している。つまり、直線形状のガイドパイプ31と導入パイプ34とは、連結手段49を介して直列に連結されている。ガイドパイプ31の長手方向(中心軸線L1の方向)は、ガイドパイプ31の平行移動方向に対して垂直な方向(Z軸方向)である。ガイドローラ33を経由して案内されてきた繊維束Fは、導入孔341内及びガイド孔311内へ導かれている。
【0032】
永久磁石43の外周面にはリング部としてのリング45が嵌合して固定されている。支持枠28の下壁281には反射式の光電センサ46が取り付けられている。光電センサ46の検出領域は、連結手段49が分離していないときのリング45の位置に設定されている。永久磁石43が連結突条401の先端面に磁力によって連結している状態では、光電センサ46から投射される光の経路は、リング45と交差し、光電センサ46から投射された光は、リング45から反射して光電センサ46に受光される。永久磁石43が連結突条401の先端面に磁力によって連結していない状態では、光電センサ46から投射された光が光電センサ46に受光されることはない。光電センサ46における受光の有無情報は、制御コンピュータCに送られる。
【0033】
図2(a)に示すように、ベース11上には枠体47が設置されている。枠体47は、長方形状に形成されており、枠体47の上面にはピン48が枠体47の周辺に沿って所定ピッチ(例えば、数mmピッチ)で配列されている。ガイドパイプ31は、モータ27の作動によって適宜の高さ位置に配置されると共に、リニアスライダ12,13の作動とリニアスライダ14の作動との組み合わせによって、X軸方向、Y軸方向又はバイアス方向に移動される。ガイドパイプ31がX軸方向、Y軸方向又はバイアス方向に移動されることにより、ガイドパイプ31内を導かれている繊維束Fがピン48に掛け止められながらガイドパイプ31から引き出されてゆく。図5(a)は、繊維束Fをピン48に掛け止めながら繊維束Fを配列してゆく一例を示す。
【0034】
リニアスライダ12,13,14は、X軸方向、Y軸方向又はバイアス方向にガイドパイプ31を平行移動させる移動手段を構成する。
なお、ピン48の周りでガイドパイプ31を反転させるように移動してピン48に繊維束Fを掛け止めるとき以外には、ガイドパイプ31は、ガイドパイプ31から繰り出される繊維束Fの偏平な面がガイドパイプ31の直線移動方向を向くように、モータ37の作動によって向きを調整される。図5(a)に示す状態では、ガイドパイプ31から繰り出される繊維束Fの偏平な面がY軸方向を向いている。
【0035】
ガイドパイプ31が配列された繊維束Fに引っ掛かったり、ガイドパイプ31がピン48に接触したり、あるいはガイドパイプ31から繰り出されている繊維束Fに異常な張力が掛かったりした場合、ガイドパイプ31に対して横方向の異常な荷重が加わる。そうすると、永久磁石43と筒40との間の磁力による連結(連結)が解除され、円板42が筒40から脱落する。円板42が筒40から脱落すると、光電センサ46は、投射光を受光しなくなり、光電センサ46における受光無の情報が制御コンピュータCに送られる。制御コンピュータCは、この受光無の情報の入力に基づいて、リニアスライダ12,13,14及びモータ19,27,37の作動を停止、つまり繊維束配列装置10の作動を停止させる。
【0036】
光電センサ46は、永久磁石43と筒40とが連結している連結状態と、永久磁石43と筒40とが分離している分離状態とを区別する分離有無確認センサである。
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
【0037】
(1)ガイドパイプ31に対して横方向の異常な荷重が加えられると、連結手段49が筒40と永久磁石43との連結部位を境にして2つに分離し、ガイドパイプ31が導入パイプ34から分離される。そのため、ガイドパイプ31が破損することはなく、ガイドパイプ31を再使用することができる。
【0038】
(2)筒40に磁力で連結する永久磁石43は、ガイドパイプ31の中心軸線L1を包囲する環状形状である。そのため、横方向の異常な荷重がガイドパイプ31に対して360°の全方位のどの方向から加わった場合にも、連結手段49が確実に分離する。
【0039】
(3)連結手段49が分離した場合にも、筒40に永久磁石43を再度連結させれば、ガイドパイプ31を交換することなく繊維束の配列を再開することができる。永久磁石43を用いた連結手段49は、分離しても何度でも再使用することができる。
【0040】
(4)分離有無確認センサとしての光電センサ46が設けられているため、連結手段49が分離した場合には繊維束配列装置10の作動を停止して繊維束層の形成不良を回避することができる。
【0041】
(5)三次元繊維構造体の物性の観点からすると、繊維束Fが偏平な状態で配列されることが望ましく、そのためには、繊維束Fの偏平な面がガイドパイプ31の移動方向に向いていることが必要である。導入パイプ34を回転させる構成では、繊維束Fの偏平な面がガイドパイプ31の移動方向に向いているようにすることができる。繊維束Fの偏平な面がガイドパイプ31の移動方向に向いた状態で、且つガイドパイプ31の移動方向が360°の全方位のどの方向であっても、ガイドパイプ31に対して横方向の異常な荷重が加えられると、連結手段49が分離し、ガイドパイプ31が導入パイプ34から確実に分離される。
【0042】
(6)ガイドパイプ31のガイド孔311の形成では、繊維束Fを偏平な状態で配列するために、高精度の加工が要求される。しかし、導入パイプ34の導入孔341は、繊維束Fをガイド孔311へ誘導するだけでよいため、導入パイプ34の導入孔341の形成では、高精度の加工は要求されない。そのため、導入パイプ34は、ガイドパイプ31に比べて安価に製作できる。又、導入パイプ34の導入孔341の径が大きいほど、繊維束Fが導入パイプ34を通過する際の通過抵抗が小さくなるが、横断面形状が円形の導入孔341の径をガイドパイプ31のガイド孔311の径よりも適宜に大きくすることができる。導入パイプ34の導入孔341の径をガイドパイプ31のガイド孔311の径よりも大きくした構成は、繊維束Fを円滑に移送する上で好適である。
【0043】
次に、図6(a),(b)の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
図6(a)に示すように、下壁281の下方に突出する導入パイプ34の突出端部には合成樹脂(例えばアクリル樹脂)製の連結筒50が嵌合されている。導入パイプ34の突出端部は、連結筒50の筒内に嵌入されており、連結筒50は、その周面から螺合されて導入パイプ34の周面に当接する止めネジ51の締め付けによって導入パイプ34に固定されている。つまり、連結筒50の一端が支持枠28に離脱不能に連結されている。
【0044】
連結筒50の筒内にはガイドパイプ31の基端部が嵌入されている。ガイドパイプ31は、連結筒50の周面から螺合されてガイドパイプ31の周面に当接する止めネジ52の締め付けによって連結筒50に固定されている。ガイドパイプ31のガイド孔311は、Z軸方向に延びており、ガイド孔311の中心軸線L1〔図6(b)にも図示〕と、導入パイプ34の導入孔341の中心軸線L2〔図6(b)にも図示〕とは、一致している。つまり、直線形状のガイドパイプ31と導入パイプ34とは、連結筒50を介して直列に連結されている。
【0045】
導入パイプ34の先端342とガイドパイプ31の基端312とは、連結筒50の両端の中間で離されており、連結筒50の外周面には環状スリット501が連結筒50の両端の中間で周方向に一周するように形成されている。環状スリット501は、導入パイプ34の先端342とガイドパイプ31の基端312との間の間隙を包囲するように設けられている。環状スリット501は、導入パイプ34に嵌合する嵌合部502と、ガイドパイプ31に嵌合する嵌合部503とに連結筒50を区分する。ガイドパイプ31に対して横方向の異常な荷重が加わると、連結筒50が環状スリット501の位置で嵌合部502と嵌合部503とに分離し、嵌合部503が嵌合部502から脱落する。環状スリット501は、連結筒50の分離位置を規定する。連結筒50及び止めネジ51,52は、2つに分離可能な連結手段49Aを構成する。
【0046】
嵌合部503の外周面にはリング部としてのフランジ504一体形成されている。支持枠28の下壁281には反射式の光電センサ46が取り付けられている。光電センサ46の検出領域は、連結手段49Aが分離していないときのフランジ504の位置に設定されており、連結筒50が分離していない状態では、光電センサ46から投射された光は、フランジ504から反射して光電センサ46に受光される。連結筒50が分離している状態では、光電センサ46から投射された光が光電センサ46に受光されることはない。
【0047】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1),(2),(4)〜(6)項と同様の効果が得られる。
次に、図7(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0048】
図7(a)に示すように、下壁281の下方に突出する導入パイプ34の突出端部には筒53が嵌合されている。導入パイプ34の突出端部は、筒53の筒内に嵌入されており、筒53は、その周面から螺合されて導入パイプ34の周面に当接する止めネジ54の締め付けによって導入パイプ34に固定されている。筒53の外周面には環状の掛け止め突条531が筒53を一周するように形成されている。筒53には合成樹脂製の筒55が連結されている。
【0049】
図7(b)に示すように、筒55には複数の掛け止め突起551が一体形成されている。複数の掛け止め突起551は、筒55の周方向に等間隔に配列されている。複数の掛け止め突起551が掛け止め突条531に掛け止められることによって筒55が筒53に連結されている。
【0050】
図7(a)に示すように、複数の掛け止め突起551が掛け止め突条531に掛け止められた状態では、筒53の端面と筒55の端面とが接合している。筒55の筒内にはガイドパイプ31の基端部が嵌入されている。ガイドパイプ31は、筒55の周面から螺合されてガイドパイプ31の周面に当接する止めネジ56の締め付けによって筒55に固定されている。ガイドパイプ31のガイド孔311は、Z軸方向に延びており、ガイド孔311の中心軸線L1と、導入パイプ34の導入孔341の中心軸線L2とは、一致している。つまり、直線形状のガイドパイプ31と導入パイプ34とは、筒53,55を介して直列に連結されている。
【0051】
ガイドパイプ31に対して横方向の異常な荷重が加わると、掛け止め突条531と掛け止め突起551との掛け止め状態が解除され、筒55が筒53から脱落する。筒53,55及び止めネジ54,56は、2つに分離可能な連結手段57を構成する。
【0052】
筒55の外周面にはフランジ552一体形成されている。支持枠28の下壁281には反射式の光電センサ46が取り付けられている。連結手段57が分離していない状態では、光電センサ46から投射された光は、フランジ552から反射して光電センサ46に受光される。連結手段57が分離している状態では、光電センサ46から投射された光が光電センサ46に受光されることはない。
【0053】
第3の実施形態では、第1の実施形態における(1),(2),(4)〜(6)項と同様の効果が得られる。又、連結手段57が分離した場合にも、掛け止め突条531に掛け止め突起551を掛け止めるように筒53に筒55を連結することができ、ガイドパイプ31を交換することなく繊維束の配列を再開することができる。掛け止め突条531と掛け止め突起551との掛け止めを利用した連結手段57は、分離しても何度でも再使用することができる。
【0054】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1の実施形態において、円板42を磁性体で形成し、永久磁石43を筒40に固着(例えば接着剤を用いて接着して固定)すると共に、円板42に永久磁石43を磁力で連結させるようにしてもよい。
【0055】
○第1の実施形態において、円板42の外周にリング45を設け、円板42を磁性体で形成し、永久磁石43を筒40に磁力で連結させると共に、円板42に永久磁石43を磁力で連結させるようにしてもよい。
【0056】
○第2の実施形態において、連結筒50を金属(例えばアルミニウム)製としてもよい。
○第1の実施形態において、筒40と円板42とを引っ張りバネのバネ力によって結合させた構成も可能である。
【0057】
○分離有無確認センサとしては、光電センサ46以外に、近接センサ(磁気型センサ、静電容量型センサ等)、リミットスイッチ、あるいは通電センサを用いることができる。
○導入パイプ34が回転しない構成の繊維束配列装置に本発明を適用してもよい。
【0058】
○ガイドパイプ31のガイド孔311は、偏平でなくてもよい。
○連結手段49,49A,57は、ガイドパイプ31または導入パイプ34に対して、止めネジ41,44,51,52,54,56により固定されているが、接着など他の手段で固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)は、繊維束配列装置10の側面図。(b)は、部分拡大断面図。
【図2】(a)は、繊維束配列装置10の一部省略平断面図。(b)は、図1(b)のA−A線断面図。
【図3】部分拡大側断面図。
【図4】分解斜視図。
【図5】(a)は、繊維束Fの配列を示す斜視図。(b)は、ガイドパイプの部分拡大斜視図。
【図6】第2の実施形態を示し、(a)は、部分拡大断面図。(b)は、分解斜視図。
【図7】第3の実施形態を示し、(a)は、部分拡大断面図。(b)は、図7(a)のB−B線断面図。
【符号の説明】
【0060】
10…繊維束配列装置。12,13,14…移動手段を構成するリニアスライダ。28…被動部としての支持枠。31…ガイドパイプ。311…ガイド孔。34…被動部としての導入パイプ。37…回転駆動機構を構成するモータ。36,38…回転駆動機構を構成するタイミングプーリ。39…タイミングベルト。401…連結面としての先端面。43…永久磁石。45…リング部としてのリング。46…分離有無確認センサとしての光電センサ。49,49A…連結手段。50…連結筒。501…環状スリット。504…リング部としてのフランジ。F…繊維束。L1,L2…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を通されるガイド孔を有するガイドパイプと、前記ガイドパイプを移動させる移動手段とを備え、前記移動手段によって前記ガイドパイプを移動させることによって前記ガイドパイプのガイド孔内から前記繊維束を引き出しながら配列する繊維束配列装置において、
前記ガイドパイプは、分離可能な連結手段を介して前記移動手段によって移動される被動部に連結されている繊維束配列装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記被動部と前記ガイドパイプとの一方に固定された磁石と、前記被動部側と前記ガイドパイプ側との他方に固定されて前記磁石に磁力で連結された磁性体とを備えている請求項1に記載の繊維束配列装置。
【請求項3】
前記ガイドパイプは、直線形状であり、前記移動手段は、前記ガイドパイプを平行移動し、前記ガイドパイプの長さ方向は、前記ガイドパイプの平行移動方向に対して垂直な方向であり、前記磁石と前記磁性体との連結面は、前記ガイドパイプの軸線を包囲する環状形状であって、前記ガイドパイプの長さ方向に対して垂直な平面である請求項2に記載の繊維束配列装置。
【請求項4】
前記連結手段は、筒形状の連結筒であり、前記連結筒は、分離位置を規定するように前記連結筒の両端の中間で周方向に一周する環状スリットを有し、前記連結筒の一端が前記被動部に離脱不能に連結されており、前記連結筒の他端が前記ガイドパイプ側に離脱不能に連結されている請求項1に記載の繊維束配列装置。
【請求項5】
前記連結手段の分離状態と、前記連結手段が分離していない連結状態とを区別する分離有無確認センサが備えられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の繊維束配列装置。
【請求項6】
前記ガイドパイプへ前記繊維束を誘導する導入パイプが前記被動部として設けられており、前記ガイドパイプは、前記連結手段を介して前記導入パイプに連結されており、前記ガイドパイプと前記導入パイプとは、直線形状であって直列に連結されており、前記導入パイプは、その軸線の周りに回転可能に前記被動部に支持されており、前記ガイドパイプのガイド孔の横断面形状は、前記繊維束を偏平な形状で繰り出し可能な偏平形状であり、前記導入パイプは、回転駆動機構によって回転される請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の繊維束配列装置。
【請求項7】
前記連結手段の分離状態と、前記連結手段が分離していない連結状態とを区別する分離有無確認センサが備えられており、前記ガイドパイプが前記導入パイプから分離されたときには前記導入パイプから分離されるリング部が前記ガイドパイプに設けられており、前記リング部は、前記導入パイプの回転軸線に対して垂直となるように前記回転軸線を包囲しており、前記分離有無確認センサの検出領域は、前記連結手段が分離していないときの前記リング部の位置に設定されている請求項6に記載の繊維束配列装置。
【請求項8】
前記導入パイプのガイド孔の横断面形状は、円形であり、前記導入パイプのガイド孔の径は、前記ガイドパイプのガイド孔の径よりも大きい請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の繊維束配列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−280644(P2008−280644A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126453(P2007−126453)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】