説明

繊維複合材料、ならびに、木質繊維マットをベースとする繊維複合材料製の滑走板心材、特にスキーまたはスノーボード用の前記滑走板心材

当該発明は、特にスキー又はスノーボードにおける取り付けのための、繊維複合物材料に関係する。前記の繊維複合物材料は、最大の可能性のある百分率の木質繊維で作られたものであるが、それらは、繊維の好適な配向有りの又は無しのマットの形態において各々他のものとの間で架橋されたものが存在するものであると共に、それらにおいて熱硬化性の又はエラストマーのプラスチックが導入されたものである。マットの定義可能に高い及び特に均一な木質繊維の密度のおかげで、均一な機械的な性質を有するものである均質な材料は、達成されたものであるが、しかしながら、それは、また、コアにおける様々な場所において目標にされた様式で変更されたものであることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維複合材料に関する。
【0002】
本発明はさらに、繊維複合材料製の滑走板に関するものであり、この繊維複合材料は、特にスキーまたはスノーボード中に組み込まれることに適しているものである。
【0003】
本発明はさらに滑走板に関する。
【0004】
本発明はそれだけでなく、繊維複合材料特に滑走板心材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
滑走板心材用の新素材と取り組んで、すでに多くの開発が行われているにもかかわらず、木材は今日なお、心材全体またはその一部の製造に当然のこととして予定されている材料である。なぜならば木材は、そのかさ密度が比較的小さいわりには機械特性に優れていて、それは、典型的には、細孔状の空胞を持ちながら主として長く延びる繊維細胞の微細構造が、元々最適であることに原因を求められる。専門家は、木材を心材とするスキーおよびスノーボードの利点をつねに強調し、この製品をいつも高価な商品分類に列している。
【0006】
木材は、質量が比較的小さいのに、高い引張強度と曲げ強度、良好な振動減衰、高い破壊靭性を持つ。そして、クリープ強度においても、交番荷重変形を多数回加えた場合でも、十分な疲労強度を示す。
【0007】
自然素材として、木材は確かに、同じ種類の木材の間でも、その特性の典型的な広いばらつきを示すが、これは、環境条件や立地条件が時間的、空間的に異なると、成長も異なることによる(木材特性のばらつき)。これは、技術的数値が著しくばらつく原因となる。したがって例えば、かさ密度は、すべての強度数値および弾性数値に対する重要な影響要因であるが、このかさ密度は、同一の材木板の内部でさえ、そして互いに異なる製品ロットの間では、大きな差を持つ。木材はさらに、作用が繊維方向に対して横方向か、縦方向か、そして年輪に対して直径方向か、接線方向かに応じて、異なる特性を持つ(木材特性の異方性)。さらに木材ポリマーは明らかな親水挙動を持つので、慎重に乾燥させて、乾燥した木材を一定の空気条件下で貯蔵する場合でも、含有水分の変動が生じる。
【0008】
木材という元々最適な繊維複合材料の大きな利点を利用するために、しかし、木材特性のばらつきを補償するために、木材はかつても今もブロックまたは単板に分割され、これらブロックまたは単板は、互いにスペース的にオフセット配置され、再び板状に組み立てられて、いわゆるブロックボードまたはベニヤ合板となる。そうすることによってのみ、均一な技術的数値が、工業的に大量生産された個数全体にわたって得られる。この原理の発展形としては、例えば特許、独国特許第3 406 056号明細書(特許文献1)(Franz Hess & Co、1985年)によって、木材薄板と硬質フォームからなる構造が公知である。その他の発展形は、心材の中に溝やスロットを研削することによる重量軽減に取り組む。ここで最後に挙げる特許、欧州特許第1 493 468号明細書(特許文献2)(Schwabe & Baer、2005年)は、その竹製の合板構造が、重量が小さいのに、引張、曲げ、ねじりの応力を良好に吸収することを強調する。
【0009】
しかしこれらの製品すべては、大きな製造技術上の手間をかけて、多数の作業工程によって生まれ、その際、末端に向かって先細になるという心材の典型的輪郭を得るためには、最終的にはつねに3次元的研削加工が必然的に続く。さらには、得られる木材素材に均一な特性を得るための上記の労苦にもかかわらず、プラスチックを上回るばらつきが避けられないことにも、言及しなければならない。
【0010】
この他の諸開発は、無機繊維とプラスチックをベースとする人工的な繊維複合材料に関するものである。この材料は、すでに製造時に滑走板の形状を与えられ、工業的ライン生産による大量の個数が、全く同一の構造を示す。ここでは、特許、英国特許第804861号明細書(特許文献3)(Richard Joseph Thornton、1958年)によって、無機繊維で強化されたポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂が公知であり、この場合特に、質量で割った強度として良好な商が必要であることが強調されている。
【0011】
この典型的な木質繊維特性こそが、高密度の無機繊維によっては従来得られなかったものである。したがってすでに当時から、面倒な製造法による中空部が必要だった。すなわちこれらの繊維は、質量に関しては、その出発物質の高い数値が根底にある。したがって炭素繊維は約1.8g/cm、ガラス繊維の出発製品であるEガラスにいたっては2.6g/cmの密度をそれぞれ持つ。それに対して木材は、確かにいわゆる正味密度(その特性的な繊維中空部、すなわち細孔を除いて求められた密度)は平均1.5g/cmであるが、細胞壁が中空の内部スペースを囲むという細胞の解剖像においては、繊維複合材料のかさ密度は大きく減少し、例えばトウヒの場合は0.47g/cmである。
【0012】
滑走板の弾性特性をバランスの取れたものとすると同時に、重量をできるだけ小さく抑えることは、滑走板の走行特性を決定するものであり、今日までこの分野における開発の重要な目標である。
【0013】
この場合重量軽減のもう1つの方法として、特許、独国特許第1 809 011号明細書(特許文献4)(Volkl Franz OHG、1970年)では、中空パターンに発泡性熱硬化プラスチックを充填することによって、心材を製造するという方法が公知である。しかし同出願書では、このような発泡構造の曲げおよびねじり強度の不十分さを、ガラス繊維または金属ワイヤといった無機繊維部品の被覆で、解決しなければならないことが強調されている。
【0014】
熱硬化プラスチック特にポリウレタンによるフォームの技術的数値では、上記の問題は明らかである。高強度RIMフォーム(「Reactive Injection Moulding」)は、確かに80MPa前後という曲げ強度を示すが、密度は1.1g/cmとなる。しかしかさ密度0.4〜0.6g/cmの硬質インテグラルフォームは、曲げ強度わずかに20〜35MPa、曲げ弾性率700〜1,100MPaが得られるだけである。これに比べるとトウヒ材は、通常の基準湿度12%時に密度が約0.47g/cm、応力が繊維に平行にかかるときの平均値として、曲げ強度が70MPa、曲げ弾性率が10,000MPaである。プラスチックのもう1つの知られている欠点は、木材と比較して材料疲労が早いことと、振動減衰が不十分なことである。
【0015】
その他の構造では、繊維強化された上面材および下面材またはハニカム構造を持つ心材をともなう発泡心材という、ラミネート構造が中心となる。このハニカム構造は、中空のままの場合もあるし、充填されている場合もある。この開発路線の延長として、ストリング状かつ心材長手方向に向けられた繊維ストリングを、熱硬化プラスチック中に埋め込むことになる。これは、特許、仏国特許第2 881 962号明細書(特許文献5)(Skis Rossignol SA、2006年)から公知である。この繊維ストリングは、同特許が言及するように、無機素材から人工的に製造される。木質繊維は、ストリングまたは粗糸につむぐことができないからである。
【0016】
ここでは、滑走板心材との関連で、無機繊維のもう1つの欠点に立ち入って論じなければならない。ガラス繊維、炭素繊維、またはアラミド繊維は、確かに例えば引張強度は高いけれども、付随する弾性率も同様に高い。ここでガラス繊維は引張強度が少なくとも70,000MPa、炭素繊維は引張強度が250,000〜380,000MPaである。この数値は、例えばトウヒの繊維細胞の数値の7〜30倍である。トウヒの数値としては、引張弾性率が約11,000MPaと見積もられている。弾性率が高くなるほど、材料はそれだけ剛性を増す。すなわちこの無機繊維は非常に剛性が高いので、プラスチック中の繊維割合が高くなるほど、複合材料全体は曲げ弾性が小さくなる。ここで木質繊維の利点が明らかになる。なぜならば木質繊維は、複合材料への供給量が大きい場合でも重量軽減に貢献し、木材の上記の有利な曲げ弾性特性をもたらすからである。また木質繊維は、質量に関して無機繊維やプラスチックよりもはるかに有利なので、コスト上の利点も得られる。
【0017】
上記に言及した熱硬化性プラスチックとならんで使用される熱可塑性プラスチックは、クリープ挙動、可塑変形性、温度に依存する可変性、および高い密度のため、滑走板心材としては一連のよく知られた欠点を示す。これらの欠点は、繊維を含む複合材料でも維持され、繊維成分によっては回避できない。
【0018】
独国特許第744347号明細書(特許文献6)は1つのスキー、特にプラスチック製のスキーを開示するが、この場合、アウトソールとスキー上面との間にある1つまたは複数のインサートが、軽量構造プレートからできている。このようなスキーは、スキーバッケン(ビンディング先端のスキー靴を固定する金具)の箇所に、木製のもう1つのインサートを持ち、このインサートによって、ビンディング部品のネジ止めが可能となる。
【0019】
英国特許第833721号明細書(特許文献7)は、ある1つのスキーにおける、スキーのための改善を開示するが、このスキーは、長く延びる心材を持つラミネート構造として作られ、接着された複数のラミネート層を持つ。
【0020】
欧州特許第1,319,503号明細書(特許文献8)は、心材層と、心材層の両面に配置されたポリウレタン樹脂含浸繊維層と、一方の繊維層上に配置された表面クオリティがクラスAのカバー層と、場合によってはもう1つの繊維層上の化粧層とからなる、複合材料部品を開示する。
【0021】
刊行物「BAYPREG FPUR PLUS Natur im Automobil,Verbundwerkstoffe aus Polyurethan(非特許文献1)(自動車におけるBAYPREG FPUR PLUS Natur、ポリウレタンからなる複合材料)」(注文番号:PU:52250、バージョン3.00、Bayer社)は、自動車構造のための複合材料を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】独国特許第3406056号明細書
【特許文献2】欧州特許第1493468号明細書
【特許文献3】英国特許第804861号明細書
【特許文献4】独国特許第1809011号明細書
【特許文献5】仏国特許第2881962号明細書
【特許文献6】独国特許第744347号明細書
【特許文献7】英国特許第833721号明細書
【特許文献8】欧州特許第1,319,503号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】BAYPREG FPUR PLUS Natur im Automobil,Verbundwerkstoffe aus Polyurethan
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、有利な材料特性を持ちながらも、容認できる費用で製造可能な繊維複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題は、独立請求項に記載の内容を持つ繊維複合材料、滑走板心材、滑走板、繊維複合材料を製造する方法によって、解決される。
【0026】
本発明の1つの実施例によって、次のような繊維複合材料が得られる。すなわち、フェルト化された木質繊維からなる木質繊維マットをベースに製造され、この木質繊維マットに熱硬化性および/またはエラストマープラスチックが取り込まれている、繊維複合材料である。
【0027】
本発明のもう1つの実施例によって、上記の内容を持つ繊維複合材料からなる滑走板心材が得られる。
【0028】
本発明のさらにもう1つの実施例によって、上記の内容を持つ滑走板心材を含む滑走板、特にスキーまたはスノーボードが得られる。
【0029】
本発明のさらにもう1つの実施例によって、繊維複合材料を製造する方法が得られる。この方法の場合、繊維複合材料は、フェルト化された木質繊維からなる木質繊維マットをベースに形成され、この木質繊維マットに、熱硬化性プラスチックおよび/またはエラストマープラスチックが取り込まれる。
【0030】
デュロマーとも呼ばれる熱硬化性プラスチックと見なされるのは、硬化後は変形不可能なプラスチックである。
【0031】
エラストマーと見なされるのは、特に形状安定しているが弾性変形可能なプラスチックである。このプラスチックは、引張負荷または圧縮負荷によって変形可能であるが、その後再び当初の変形前の形状に戻る。
【0032】
木材と見なされるのは、特に樹木のシュート軸(幹、枝、分枝)の固形または硬質の組織である。樹木は特に、細胞壁にリジンを含む材料と見なすことができる。したがって木質化(木化)した植物組織もまた、木材ということができる。
【0033】
滑走板と見なされるのは、特に、固体または液体の下面上を滑走するため、または流体(例えば気体、液体)中を滑走するために使用できるボディ構造である。
【0034】
本発明によれば、木材というもともと最適な繊維複合材料の優れた特性と、1工程で希望の形状に製造できるというプラスチックの利点とを、組み合わせることができる。そして木材の不均一性と、プラスチックの他より劣る機械特性とに関する、上記に挙げた欠点を排除することができる。この場合、繊維複合材料の機械特性は、木材の機械特性にできるだけ近づけ、かつ目的に合わせて調節でき、しかし重量はできるだけ小さく抑えるものとする。
【0035】
本発明の1つの実施例によれば、滑走板心材を、特にスキーまたはスノーボードに組み込むのに適している繊維複合材料から作る。この繊維複合材料は、次のような木質繊維を十分に高い割合で含む。すなわちこれら木質繊維は、互いに架橋結合しながら、繊維の選択配向性を持つ、あるいは持たない、マットの形状で存在する。このマットには、熱硬化性またはエラストマープラスチックが取り込まれる。マットの木質繊維密度は指定可能であって、この密度が高く特に均一であることにより、均一な機械特性を持つ均質な材料が得られる。この機械特性は、心材中のさまざまな箇所で、目的に合わせて調節できる。
【0036】
本発明によれば、滑走板心材が、繊維複合材料を含み、または繊維複合材料からなり、この繊維複合材料は、選択配向を持つものとして、または持たないものとして、フェルト化された木質繊維からなる木質繊維マットをベースに製造され、この木質繊維マットに、熱硬化性またはエラストマープラスチックが取り込まれる。このプラスチックポリマーが、形状付与的なバインダーの機能を遂行する。
【0037】
本発明では、上記のマットの木質繊維密度が、目的に合わせて指定可能かつ均一であるという利点を持ち、これによって、心材の希望のゾーン部分にわたって、木質繊維をできるだけ高い割合で取り込むことができる。これにより、心材の機械特性は、曲げ弾性、振動減衰、クリープ強度の点で、木材の機械特性に可能な限り近づく。そして特に長辺末端に向かって薄くなる箇所において、射出成形の計量供給上の問題が回避される。
【0038】
本発明では、心材のさまざまな箇所の要請に応じて、機械特性を目的に合わせて調節することができる。この調節は例えば、心材中心および心材末端で必要である。これは、マットを局部的に集積したり、マット構造を圧縮し、あるいは圧縮緩和したりすることによって、密度や剛性が高い箇所と低い箇所を作ることによって、または、マットに繊維の選択配向を持たせることによって、達成することができる。その際複数のこのようなマットを互いにクロスさせて挿入することができる。
【0039】
この関連で特に有利なのは、細胞壁と空胞からなるという、前記に言及した木質繊維の解剖学的構造である。なぜならば、重い無機人工繊維より重量を軽減するという目標は、繊維割合が高い場合でも維持できるからである。
【0040】
プラスチック成分としては、あらゆる熱硬化性またはエラストマープラスチックが考慮される。この場合、木質繊維に取り込まれるポリマーとして、硬化の過程で発泡して、木質繊維の細孔構造がプラスチックマトリックスに伝達されるようなポリマーが用いられれば、特に有利である。このマットは、指定された均質な繊維構造が、発泡性の中間スペースを生じ、こうして、均一な大きさの細孔が均一に配分される発泡を保証する。
【0041】
本発明ではその他、次のことも可能となる。すなわち、純粋な射出成形法と同様に、ビンディングネジを受けるためのインサートの挿入が、または前もって金型に挿入されて上面板、下面板などとなるラミネートとの接着固定結合が、木質繊維マットを挿入すると同時に1工程で可能である。
【0042】
前記の木質繊維は、例えばサーモメカニカルなパルプ化によって得られる。これはファイバーボードの業界でここ何十年か行われて来たものである。この木質繊維は、安価、容易で、かつ安定供給されるものを利用できる。木質繊維マットは、この木質繊維が目的に合わせて指定可能な密度を持ち、耐久性あるフェルト化を受けたもの、かつ人工繊維で強化されたもの、またはされないもの、かつ人工樹脂に含浸されたもの、またはされないものから、製造することができる。
【0043】
木質繊維マットは、完成した滑走板心材のジオメトリーに対応する金型においてカットされ、そこに挿入される。その際、熱硬化性またはエラストマープラスチック成分による含浸は、金型への挿入の前でも、挿入後でも行うことができる。
【0044】
本出願書に開示する繊維複合材料の形状は、滑走板心材、滑走板、および方法にも適用される。本出願書に開示する滑走板心材の形状は、繊維複合材料、滑走板、および方法にも適用される。
【0045】
木質繊維マット中の木質繊維の位置は、選択配向性のない、すなわち等方性のものとすることができる。したがってこの木質繊維は、繊維複合材料中の配向の点で静的な分布を持ち、その結果、機械特性は全方向に均質となる。
【0046】
上記と別な方法として、木質繊維マット中の木質繊維の位置は、選択配向性を持つ、すなわち異方性のものとすることができる。したがってこの木質繊維は、繊維複合材料中の配向の点で優先付けされた分布を持ち、その結果、方向が異なれば、機械特性も異なる。
【0047】
本発明の1つの実施例は、木質繊維マットと、発泡された(または発泡性の)エラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマーとをベースとする複合材料を、そしてまたこの複合材料を製造する方法を提供する。本発明の各実施例は、次のようなマットをベースに成形される複合材料に関する。すなわち、このマットは、木質化植物の幹から/サーモメカニカルなパルプ化により得た木質繊維を含み、このマットに、発泡可能な(または発泡する)エラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマーが取り込まれているものである。また本発明の各実施例は、この複合材料を製造する方法に関する。
【0048】
したがって本発明の1つの実施例からは、次のような複合材料を製造する方法が得られる。この複合材料は、木質化植物の幹から/サーモメカニカルなパルプ化によって得られた木質繊維と、発泡されたエラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマーとを用いて、成形されるものである。この場合、密度数値として、工業利用可能な針葉樹または広葉樹の密度数値が目標とされる。そして木質繊維の割合をできるだけ高くしたい(例えば少なくとも30重量%、または少なくとも50重量%)。この木質繊維は、事前指定可能な均一な分布状態で、ポリマーの発泡構造と結合する。本発明によって、発泡性のエラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマー、例えばポリウレタンを、前もって準備された木質繊維マットに取り込むことができる。複合材料中の木質繊維の割合をできるだけ高く保ち、そしてさらに木質繊維を、事前指定可能な均一な分布状態で、プラスチックマトリックスに埋め込みたい場合、前記の理由から、木質繊維マットにポリマーを取り込むという、適切な方法を見出すことができる。
【0049】
上記のような材料を製造する特定の方法に限らず、ここでは、特にサーモメカニカルなリファイナー処理法による木質繊維を使用できることを指摘したい。
【0050】
まず丸太材を粉砕し、次にパルプ化プロセス、例えばサーモメカニカルなリファイナー処理に導くことができる。その木質繊維を乾燥する。木質繊維はつねに絡み合って、ばらばらにすることができないので、これをニードルパンチ法によって3次元的にフェルト化された構造とする。その際、多くの場合まだ重量割合の少ない合成繊維が、マット構造の補強のために取り込まれる。この形状でマットを、問題なく操作し、金型内で切断し、ストックし、輸送、および中間貯蔵することができる。
【0051】
ポリマーとして、自動発泡性のポリウレタンを使用することができる。このことには、木材との組み合わせにおける長い経験を利用できる利点がある。さらには、遊離ヒドロキシ基に対するセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分子の化学的親和力も、良好に働く。
【0052】
繊維マットは、例えば厚さが2〜30mm(あるいはもっと厚い場合50mm以上)のものを意図することができる。これにより、その後のプラスチックマトリックスのため、決められたスペースが予定され、そこにプラスチックマトリックスが侵入できる。
【0053】
本発明の1つの実施例によれば、天然/木質繊維、および発泡されたエラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマーから、1つの複合材料を供給することができる。このような複合材料は、木質繊維を少なくとも40%含む。ある1つの複合材料は、厚さ/太さがさまざまに異なるマットの1つの組み合わせを含むことができる。このような複合材料のために、自動発泡するポリウレタンを用いることができる。
【0054】
複合材料を製造する上記の方法は、連続的方法として構成することができる。複合材料を製造する上記の方法のもう1つは、不連続的な方法として構成することができる。
【0055】
一連の本発明は繊維強化プラスチックに関するものであるが、公知の方法はいずれも、木質化植物の幹から/サーモメカニカルなパルプ化によって得た木質繊維と、発泡したエラストマーポリマーまたは熱硬化性ポリマーとを用いて形成されたマットをベースに、複合材料を製造することはできない。この場合、密度数値として、工業利用可能な針葉樹または広葉樹の密度数値を目標とし、木質繊維をできるだけ高い割合で含むべきである。この木質繊維は、事前指定可能な均一な分布状態にあって、ポリマーの発泡構造と結合するものである。
【0056】
繊維ポリマーコンポジットを製造する既存の方法による場合、木質繊維に適性が乏しい理由は、その木質繊維をその他の木質繊維から区別するその特別な特性にある。下記ではまず、分離された、すなわち細胞結合から遊離した木質繊維のこれら諸特性に立ち入って論じる。この諸特性が、細胞壁の化学作用、細胞結合の解剖学的構造、およびこの細胞結合から木質繊維を遊離させる方法、いわゆるパルプ化の基盤をなすものである。下記では、繊維、天然繊維、木質繊維、またはリファイナー処理された(木質)繊維と呼ぶとき、それは工業的に得られた繊維であり、他方で繊維細胞という概念は、当初の細胞結合における解剖学上の個別細胞に関する。
【0057】
基本的に、すべての陸上植物の繊維細胞は支持組織と師部組織であり、したがってこの繊維細胞は長く延びて、比較的厚い細胞壁を持つ。しかし木質化する植物の幹における繊維細胞の細胞壁は、1年生ないし数年生のその他の繊維植物の細胞壁とは、次の点で明らかに異なる。すなわち、分子レベルでは、長く延びたひも状の巨大分子としての多糖類の間に、したがってセルロースとヘミセルロースの間に、それらとは全く異なる非晶質のリグニン、すなわち「木質化物質または木質物質」が、約20〜30重量%以上という高い割合で存在する点である。そしてこのリグニンは、セルロース質のフィブリンが含まれているマトリックスを形成する、という状態で存在する。しかしその他の天然繊維の場合、リグニンの割合は、1桁パーセントの範囲で変化し、例えば麻の場合約2〜5重量%である。非晶質リグニンの割合が高いため、パルプ化すなわち分離された木質繊維は、その他の木質化しない、あるいは少ししか木質化しない繊維植物の繊維よりも非常にもろい。後者繊維食物の細胞壁はほとんど、ひも状のセルロース組織物質だけから構成されている。
【0058】
しかしリファイナー処理された木質繊維の決定的利点は、そのクオリティが均質なことである。それは次の事情に原因を求められる。すなわち、丸太材の繊維細胞は、十年単位の期間で活動する被覆形成層から、つねに同じ形状の細胞分裂によって形成される、という事情である。木質化する植物の繊維細胞は、厚さを増すとともに、程度の差はあれ同じようなまたは類似する細胞からなる大規模な結合体の中に拘束、固定される。この場合、針葉樹の長く伸びる繊維細胞は、互いに非常に類似し、典型的な長さは5mm以下である。これに対して、輪伐期が1年または数年という木質化しない植物の場合、その繊維のクオリティは、該当する生育期間における成長条件に強く依存する。木材の繊維細胞とは異なり、木質化しない植物の繊維細胞の典型的な解剖学的特徴として、それら繊維細胞は、一部分が何百という個別細胞からなる長く延びる繊維束にまとめられ、しかもその他の非繊維質の細胞結合とは容易に分離できる状態で生じる。例えば亜麻、麻、デカンヘンプ、ジュート、およびラミーの場合、繊維束は、靭皮すなわち樹皮の柔らかい部分に、したがってシュートの周辺に生じる(「靭靱繊維」)。他方でサイザル繊維の繊維束は、壁の薄い多くの場合は柔組織の細胞からなる組織に埋め込まれた状態で、葉の中に存在する(「葉繊維」)。
【0059】
しかし、木質繊維とその他の天然繊維との、すなわちその全体が、1年生ないし数年生の木質化しない、あるいはわずかしか木質化しない植物から得られる天然繊維との、もう1つの大きな相違点が、繊維細胞自体の化学的および解剖学的構造だけでなく、繊維獲得の方法にもあることは重要である。木材中の繊維細胞は、同種の細胞からなる大規模な結合体中に拘束、固定され、こうして直径および高さが知られている丸太材を形成する。他方で上記の靭靱繊維または葉繊維は、容易に分離できる繊維束という形で生じる。したがって、パルプ化のための工業的方法と特に繊維生成物とが、両者間で全く異なる。
【0060】
1年生ないし数年生の繊維植物のためのパルプ化法によれば、これら長い繊維束は、植物から容易に遊離できるため、ほとんど完全にその自然の長さのまま分離できる。したがってこの天然繊維は、その種類に応じて、平均長さ約30〜60cmで処理される。そして、容易に粗糸に束ねられ、糸またはロープに撚られ、あるいはさらに織布または不織布に加工され、また希望されれば、再び切断され、より短い断片に分割されることが可能である。
【0061】
しかし丸太材のパルプ化には、別な方法が必要である。サーモメカニカルなリファイナー処理技術の場合、丸太材はまず粉砕され、続いてチップは蒸気と圧力が加えられて煮沸される。ここでペクチン、すなわち個別細胞を互いに結合する「繊維接着剤」が遊離されて、非晶質リグニンが可塑化されるので、材料はディスクリファイナー、すなわち叩解機に導かれ、そこで細胞結合体は、その他の繊維植物のパルプ化とは異なって、解剖学的個別細胞に分解されるが、この個別細胞自体をそれ以上粉砕することはない。それだけではなく、繊維束がある程度の割合で維持される。繊維束は、上記の寸法より小さいが、自然のままの比較的大きな寸法を持つ。こうして得られた木質繊維材料は、TMP(サーモメカニカルパルプ)またはリファイナー処理繊維と呼ばれ、したがってその繊維成分の長さは、少なくとも1/10mmから35mm以上という広い範囲にわたる。しかしこの場合、平均値は、個別繊維の自然の長さを若干下回る範囲、例えば2mm〜4mmの範囲にある。同様の規模で広がるガウス分布が、その直径に当てはまる。したがって、樹木の丸太材から分離された木質繊維は、その長さが、他の天然繊維の繊維束の長さより明らかに小さい。
【0062】
このリファイナー処理繊維のもう1つの典型的な特徴として、この繊維には、互いに絡み合ってフェルト化し、綿状のパッドとなる傾向がある。したがってこの材料は、自らばら撒かれたり、脱落したりする能力はなく、単純な手段によっては、テープ上または金型中に均一に置いたり、散布したりすることはできない。しかし後の時点でプラスチックマトリックスに繊維を均一に配分することは、重要な目標である。なぜならばコンポジット材料の利点の1つは、まさに天然材料の特性の不均一を回避することだからである。さらには、木質繊維は長さが短くてもろいため、糸、ロープなどに撚ることや、さらに織り加工することは不可能である。
【0063】
本発明の1つの実施例による繊維複合材料または滑走板心材は、スキー(例えばアルペンレース用スキー、クロスカントリー用スキー、またはモノスキー)、スノーボード、サーフボード、自動車内張り、航空機内張り、家具部品、壁板、ならびにその他屋内、および屋外の化粧板部品などのベースに予定することができる。その他の応用分野も可能である。
【0064】
下記では、本発明をさらに説明してよりよい理解を得るため、添付の図面を引用しながら各実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の1つの実施例による、スキーのビンディング領域のためのボルトを後に受けるためインサートを挿入された滑走板心材を示す。
【図2】図2は、本発明の1つの実施例による、局部的に圧縮された領域を持つ滑走板心材を示す。
【図3】図3から図7までは、本発明の諸実施例による、厚さが同じまたはそれぞれ異なる複数の木質繊維マットのさまざまな組み合わせを示す。
【図4】図3から図7までは、本発明の諸実施例による、厚さが同じまたはそれぞれ異なる複数の木質繊維マットのさまざまな組み合わせを示す。
【図5】図3から図7までは、本発明の諸実施例による、厚さが同じまたはそれぞれ異なる複数の木質繊維マットのさまざまな組み合わせを示す。
【図6】図3から図7までは、本発明の諸実施例による、厚さが同じまたはそれぞれ異なる複数の木質繊維マットのさまざまな組み合わせを示す。
【図7】図3から図7までは、本発明の諸実施例による、厚さが同じまたはそれぞれ異なる複数の木質繊維マットのさまざまな組み合わせを示す。
【図8】図8及び図9は、本発明の諸実施例による滑走板心材をベースとする例として、未処理木質繊維マットの図を示す。
【図9】図8及び図9は、本発明の諸実施例による滑走板心材をベースとする例として、未処理木質繊維マットの図を示す。
【図10】図10は、本発明の1つの実施例により、繊維複合材料に挿入されているインサートを示す。
【図11】図11から図13までは、本発明の1つの実施例による、特に滑走板心材に適する繊維複合材料を示す。
【図12】図11から図13までは、本発明の1つの実施例による、特に滑走板心材に適する繊維複合材料を示す。
【図13】図11から図13までは、本発明の1つの実施例による、特に滑走板心材に適する繊維複合材料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
同一または類似の部材は、異なる図におけるものであっても、同じ番号を付した。
【0067】
図示は模式的なものであり、縮尺に忠実ではない。
【0068】
図1は、本発明の1つの実施例による滑走板心材100の断面である。
【0069】
滑走板心材100は繊維複合材料から製造され、この繊維複合材料は、フェルト化された木質繊維102からなる木質繊維マットをベースに形成され、この木質繊維マットには、熱硬化性またはエラストマープラスチックが取り込まれている。このプラスチックは、番号104に示すように、フェルト化された木質繊維102の間の中間スペースにある。
【0070】
滑走板心材100は、スキーのベースに予定することができる。そして、フェルト化された木質繊維102が選択配向を持つ点で、すなわち、図1では、滑走板心材100の水平方向の寸法に平行、またはほぼ平行に選択配向を持つ点で、優れている。
【0071】
滑走板100にはボルト受けネジ山を持つインサート106が形成されている。このインサートは、ネジまたはその他の固定部品を用いて、例えばスキービンディング、またはその他の接続されるべき部品と、固定結合することができる。
【0072】
図2は、本発明のもう1つの実施例による滑走板150の断面を示す。
【0073】
滑走板心材150は、局部的な圧縮により木質繊維マットに相応の加工を施した結果として、滑走板心材の異なるゾーンに、異なる密度と木質繊維割合を持たせている。より正確にいうと、滑走板心材150の領域152は、その密度が、滑走板心材150の密度がより高い領域154よりも小さい。これは、例えば滑走板心材150の領域154に圧力を加えることによって得られる。
【0074】
したがって図2が示す滑走板心材150の場合、当初均質かつ密度一定な木質繊維マットに対し、滑走板150の局部的に圧縮することにより、密度の異なるゾーン152、154が得られる。このような滑走板心材は、例えば滑走板末端が上を向く形の先端部を含む典型的な3次元的形状を得るのに必要である。すなわち、ボードにおける各密度ゾーンの仕様の重要なポイントは、当初均質だった木質繊維マットを用いる場合でも、当初密度一定だったゾーン152、154に、次のような場合、異なる密度が生じるようにすることである。それは、滑走板心材150の典型的3次元形状が、ボード末端に対する圧縮のみによって得られる場合である(ボード中心では厚さ8mm、末端ではわずか3mm)。
【0075】
したがって図2は、当初密度一定で均質な木質繊維マットを局部的に圧縮することによって、例えば滑走板心材150の末端に向かう長手方向において、密度の異なるゾーン152、154が得られることを示す。これは、滑走板心材150が、先端に向かって先細となり、そのような3次元形状を形成することによっても得られる。図2は、滑走板先端で上を向く心材形状を示す(長さに対する厚さの比は誇張して示す)。
【0076】
図3〜図7は、さまざまな密度の木質繊維マットの可能性があるさまざまな組み合わせであって、プラスチックを含むものを示す。このプラスチックは、例えば本発明の各実施例による繊維複合材料のために用いることができるものである。
【0077】
図3は、木質繊維マットをベースとする繊維複合材料200を示し、この繊維複合材料の場合、フェルト化された木質繊維102が、プラスチックのマトリックス104に埋め込まれている。この木質繊維マットは、密度が例えば0.05g/cm〜0.15g/cmと比較的小さい(この場合、プラスチック104は計算に入れない)。
【0078】
図4は、本発明のもう1つの実施例による、木質繊維マットをベースとする繊維複合材料300を示す。ここでも、フェルト化された木質繊維102が設けられ、この木質繊維はプラスチックマトリックス104に埋め込まれている。しかし図3の実施例の木質繊維マットは、図2に示すものより密度が大きく、例えば約0.20g/cm3である。
【0079】
図5は、本発明の1つの実施例による、木質繊維マットをベースとする繊維複合材料400を示す。この繊維複合材料は、次のようにして成形される。すなわち、積層モデルの方法により、等しい密度の木質繊維マットをベースとする繊維複合材料プレート200を2枚上下に重ね、互いに結合例えば接着する。1つには、両者の繊維複合材料プレート200を、それぞれのプラスチック104が硬化した後に、互いに結合、例えば接着またはネジ止めすることができる。2つには、等しい密度の木質繊維マットを2枚互いに密着させ、併せて1枚の繊維複合材料に加工する。そのためには、密着させた後、プラスチック104を両者の木質繊維マットに取り込み、硬化させて、それにより繊維複合材料プレート200を形成し、同時に互いに結合する。図6は、本発明の1つの実施例による繊維複合材料500を示す。この繊維複合材料の場合、一方の繊維複合材料プレート200は、第1の密度の木質繊維マットをベースとし、他方の繊維複合材料プレート300は、第2の密度(これは第1の密度よりも大きい)の木質繊維マットをベースとし、両者のプレートが互いに結合されている。したがって図5の実施例に対して、異なる密度のマットタイプの組み合わせを、積層モデルの方法に従って用いれば、繊維複合材料500を成形することができる。繊維複合材料500のそれぞれ異なる領域で、木質繊維マット密度を異なるものとすることにより、例えば、安定性および/または弾性に対する要請が場所に応じて異なっていてもそれを満足することができる。1つには、両者の繊維複合材料プレート200、300を、それぞれのプラスチック104が硬化した後に、互いに結合、例えば接着またはネジ止めすることができる。2つには、異なる密度の木質繊維マットを2枚互いに密着させ、併せて1枚の繊維複合材料に加工する。そのためには、密着させた後に、プラスチック104を両者の木質繊維マットに取り込み、硬化させて、それにより繊維複合材料プレート200、300を形成し、同時に互いに結合する。
【0080】
図7は、本発明の1つの実施例による繊維複合材料600を示す。この繊維複合材料の場合、一方の繊維複合材料プレート200は、第1の密度の木質繊維マットをベースとし、他方の繊維複合材料プレート300は、第2の密度(これは第1の密度よりも大きい)の木質繊維マットをベースとし、両者のプレートが互いに横から結合されている。換言すれば、繊維複合材料プレート200と繊維複合材料プレート300とは、互いにその横に、または隣り合って配置され、狭い方の面/側面を互いに接着されているので、繊維複合材料プレート200、300の広い方の面/主要面には手を付けない。繊維複合材料600のそれぞれ異なる領域で、木質繊維マット密度を異なるものとすることにより、例えば、安定性および/または弾性に対する要請が異なっていてもそれを満足することができる。1つには、両者の繊維複合材料プレート200、300を、それぞれのプラスチック104が硬化した後に、互いに結合、例えば接着またはネジ止めすることができる。2つには、異なる密度の木質繊維マットを2枚互いに密着させ、併せて1枚の繊維複合材料に加工する。そのためには、密着させた後に、プラスチック104を両者の木質繊維マットに取り込み、硬化させて、それにより繊維複合材料プレート200、300を形成し、同時に互いに結合する。
【0081】
図7の実施例の場合、繊維複合材料600の長手方向において密度が異なるマットタイプを、組み合わせることができる。これは、例えば先端ゾーンに生じる密度と剛性を高くするためである。
【0082】
図8は、本発明の1つの実施例として、滑走板心材のベースである木質繊維マットを上から見た写真700を示す。
【0083】
図9は、図8の木質繊維マットのもう1つの写真800を示す。
【0084】
図10は、インサート部品(例えば、繊維複合材料を結合相手の部品と結合する結合装置)が木質繊維マットに挿入されている状態の図900を示す。このインサート部品は、1つの方法として、木質繊維マットの中に封入されるが、この場合、インサート部品を加えた後、木質繊維マットを、組み込まれたインサート部品とともに、プラスチックを用いてポッティングする。あるいは別な方法として、このインサート部品は、プラスチック中に埋め込まれ、硬化した後、そこに生じる繊維複合材料プレートの木質繊維マット中に形成される。この場合、例えばインサート部品は、繊維複合材料プレートの穴に差し込まれて、このプレートと結合される(例えば接着される)。
【0085】
図11は、本発明の1つの実施例による繊維複合材料1000を示す。この繊維複合材料中には、前もってマット中に押し込まれて発泡されたインサートが形成されている。
【0086】
図12は、本発明による実施例によるもう1つの繊維複合材料1100を示す。
【0087】
図13は、本発明の1つの実施例による繊維複合材料プレート1200の断面を示す。
【0088】
下記では、本発明の1つの実施例による繊維マット発泡の方法を説明する。
【0089】
例えば滑走板心材のため繊維複合素材を形成するには、例えばメーカーFaurecia社の繊維マット(針葉樹リファイナー処理繊維製のマット。面積あたり重量1,200〜1,800g/m、厚さ8mmにおける密度0.15〜0.22g/cm)と、メーカーBO−Systems社の繊維マット(針葉樹リファイナー処理繊維製のマット。面積あたり重量1,800g/m)を用いる。
【0090】
インサートとしては、雌ネジつきの金属スリーブを用いることができる。この場合、この金属スリーブを円形または六角形に広げてベースに取り付け、プラスチック被覆を施すことができる。
【0091】
これにより、全体的な密度が広葉樹または針葉樹より軽い(例えば0.40〜0.45g/cm)コンポジットを製造できる。より軽い、例えば密度0.35g/cmのコンポジット材料を製造することも可能である。このコンポジットは、例えばポプラ、桐(東アジア原産の桐、非常に軽い木材)、ブナなどから製造できる全木質心材、積層断面全体にわたって密度を例えば約0.43g/cmとすることができる全木質心材に、技術的に匹敵する。密度約0.64g/cmのPUR心材(ポリウレタン)が、もう1つの比較の基準となる。
【0092】
この心材は、それによって作られる滑走板心材のボード特性に影響を及ぼす。したがって材料特性には、特に希望の曲げ剛性と希望の曲げ弾性を得られるようにしたいという要請が課されている。挿入されたインサートは、後日ビンディングネジを受けることができるものであるが、このインサートの引き抜き強さを滑走板の特定の要求事項に適合させることも可能である。例えばこのような滑走板に対して、規格の要求は4,500ニュートンとなる可能性がある。同様にして製造されたスノーボードを、疲れ試験、スラップ試験、破断試験またはエッジ破損試験でテストすることもできる。
【0093】
木質繊維マットの利点として、インサートを発泡前にマットに押し込んで、PURが作用するとき(ポリウレタン発泡)、発泡体で包み固定することができる。これによりインサートに良好な引き抜き強度が得られ、4,500ニュートンという規格の基準に十分到達し、あるいはこれを超えることさえできる。
【0094】
下記では1つの製造方法を詳細に説明する。
【0095】
最初の段階では、例えばModipur 541を用いることができる。
【0096】
このためには、例えばHexcel Composites社のModipur US 541/22を、FCKWを含まないポリウレタンシステム(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート+ポリアルコール+活性剤としてのアミンを小量%)として用いることができる。混合されたシステムの粘度は、2,000mPa.s以下に抑えることができる。適用分野としてはスキー産業、特に射出成形方法で製造されるPUR心材のための当分野が挙げられる。発泡開始までのオープン時間は約30秒であり、この場合、セッティング時間は約1分とすることができる。
【0097】
第2の段階では、金型を用いずに繊維マット発泡を行うことができる。この繊維マットは、その両面に特定量のPURを施すことができ、流出したか、またはマット表面に発泡が食み出したPURは、再び除去することができる。
【0098】
第3の段階では、繊維マット発泡を金型内で行うことができる。
【0099】
専用の金型を作ることができる。全体的密度の基準が約0.40g/cmであって、うちマット部分の密度が約0.20g/cmのとき、残りの量はPURを混和することができる。そのうち一部分(例えば半分)をまず金型に充填し、次にマットを挿入することができる。もう1つの部分(例えば残りの半分)をマットに塗布することができる。金型は、機械的に、または油圧、気圧によって閉じることができる。
【0100】
上記の金型は、工業的な製造プロセスにおいては、滑走板心材の上面と下面に密着する上面材および下面材(例えばガラス強化不職布製のもの)を収めるために用いることもできる。これら上面材、下面材は、PUR混入の過程で、同時に滑走板心材に接着、固定することができる。そして上記金型は、滑走板心材の典型的に3次元的な形状を指定することができる。
【0101】
PURの適用量は、木質繊維マットを完全に透過するに十分であることが、保証されるべきである。対応する装置における全体的密度は、約0.40〜0.45g/cmとしたい。
【0102】
発泡は比較的迅速に行われる。したがってPURを正確に塗布するための時間は短いので、このプロセス段階は十分迅速に行われるべきである。
【0103】
第4の段階では、PURシステム全体にわたって最適化を行うことができる。
【0104】
この場合、よりよい含浸を得るため粘度を小さくすること、オープン時間が十分に長いことと、管理が十分良好であることといった要求事項を、遵守しなければならない。
【0105】
システムとして、Hexcel Composites社のModipur US 23を用いることができる。これは純粋なイソシアナート−プレポリマーである(4,4’ジフェニルメタンジイソシアナートを主成分とし、これに高官能性イソシアナートをある特定の割合で含むもの)。粘度は約200mPa.sとすることができる。硬化は、例えば空気中または木材中の水分で行うことができる。したがって硬化プロセスを加速しなくても、比較的長いオープン時間、例えば12時間以上を予定することができる。加熱によって、硬化を大きく加速することができる。
【0106】
Modipur US 23(イソシアナート)に、Modipur US 566 mod.5(ポリアルコール)を加えて用い、US 566の重量割合を100とし、US 23の重量割合を135として、混合することができる。このPURシステムは、より長いオープン時間で用いることができる。
【0107】
上記のプロセスを行うことによって、含浸の管理を著しく改善できる。
【0108】
粘度を小さくするには、成分「ポリアルコールModipur US 541またはModipur US 566 mod.5」を、30〜35℃に加熱する。混合されたシステムの粘性は、この方法で相応に小さくなるが(流動性が大きくなるが)、発泡開始までの諸成分混合に必要なスタート時間、タイムウィンドウは、それほど小さくならない。したがって良好な管理が得られなくなることはない。例えば木質繊維マット(厚さ約8mm、密度約0.20g/cm)の重量割合1に対して、混和されるPURの重量割合1という決められた割合による木質繊維マットの含浸を、さらに改善することができる。これは、2つの成分(イソシアナートとポリアルコール)を加熱するよりも有利であることがわかっている。後者の場合、確かに粘度は小さくなるが、スタート時間が好ましくない値になる傾向がある。
【0109】
1つの実施例では圧力を加えることを意図する。圧力を高くすることによって、マット中心へのPURの搬送を改善することができる。圧縮されていないマット、すなわち、面積あたり重量は同じ1,800g/mであり、厚さは例えば35mm、したがって密度はわずか約0.05g/cmのマットを用いることもできる。両者の場合とも、PURを加えた後、マットが希望の最終厚さ以下に圧縮されるまで、そしてPURがマット中心まで一様に搬送されるまで、マットに押圧を加えることができる。それに続いて発泡開始前に、圧力を再び除いて、求められる最終厚さまで形状を戻す。これにより、マットは再び圧力を解除され、発泡の過程で、内部からの発泡圧力によって最終厚さに戻される。
【0110】
滑走板の寸法の1つの例は、厚さが長手方向に滑走板中心から先端にいくにつれて約8mmから約3mmに減少し、幅約24〜約29cm、長さ約155cmである。
【0111】
コンポジット総重量中の木質繊維割合は、例えば50%以上、あるいは30%以上である。木質繊維の重量割合として適切な範囲は、20〜70%、特には40〜60%である。
【0112】
密度の適切な範囲は、滑走板心材の場合、約0.35〜0.45g/cmである。より高度に圧縮された領域では、密度約0.65g/cm以上も可能である。高い安定性だけでなく、軽い重量もまた追求の価値がある。その結果として、好ましい値の範囲は、0.30〜0.65g/cm、特には0.35〜0.45g/cmである。
【0113】
木質繊維マットは、その他の天然繊維マットと比較すると、本発明にとって大きな利点がある。1年生ないし数年生の天然繊維のクオリティが、収穫年によって著しく変動するのと比べて、前記の生物学関連の理由により木質繊維のクオリティが一定であることが、その利点の1つに数えられる。木質繊維の方が、供給安定性がはるかに高いことは、もう1つの重要な利点である。なぜならば、地球上で持続的に管理される木材ストックだけでも、経済分野で利用されるその他の天然繊維植物のストックよりはるかに大きいからである。木質繊維の決定的利点は、世界的にその供給が安定していることであって、この安定性は、シーズンごとに栽培される繊維植物に典型的な収穫の変動なしに、利用可能である。その他、木材産業や林業の廃棄物を繊維に分解して利用できる。また木材とは異なる天然繊維には、木材と比較すると、独特の臭いという欠点がある。本発明は明らかに新たな木質材料を提供する。
【0114】
本発明の実現は、好ましい実施形態として図面に示したものに限定されない。むしろ、図示の解決法や本発明の原理を、基本的にそれと異なる種類の実施形態に利用する、多数のバリエーションが考えられる。
【0115】
上記を補足して指摘しておきたいが、「備える」というとき、それはその他の要素や段階を排除するものではなく、また「1つの」というとき、それは複数を排除するものではない。その他、上記実施例の1つの参照を指示した特徴または段階は、その他の上記実施例の特徴および段階と組み合わせても用いることができることを、指摘しておく。請求項中の参照番号は、何らかの限定と見なされるべきではない。
【0116】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、オーストリア国特許出願A214/2007(2007年2月9日提出)の優先権を主張するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルト化された木質繊維による木質繊維マット、かつ熱硬化性プラスチックおよび/またはエラストマープラスチックが取り込まれている前記木質繊維マットをベースに製造されている、繊維複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維複合材料を含む、滑走板心材。
【請求項3】
前記繊維複合材料からなる、請求項2に記載の滑走板心材。
【請求項4】
前記木質繊維マット中における木質繊維の位置が選択配向を、特には心材の長手方向寸法に平行な選択配向を持つ、請求項2または3に記載の滑走板心材。
【請求項5】
前記木質繊維マット中における木質繊維の位置が選択配向を持たない、請求項2または3に記載の滑走板心材。
【請求項6】
前記木質繊維の選択配向を持つ2枚または複数枚の木質繊維マットが積層配置され、前記各繊維マットは、木質繊維の選択配向がそれぞれ異なる角度で、特には直角90°で交差する、請求項2〜4のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項7】
前記木質繊維マットの切断または切削によって、ならびに2枚または複数枚の木質繊維マットを積層モデルの形に積層することによって、3次元形状の付与が得られる、請求項2〜6のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項8】
前記木質繊維マットの全幅および全長にわたって、木質繊維マットの均一な密度を利用することにより、滑走板心材全体における木質繊維割合の均一な配分が得られる、請求項2〜7のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項9】
前記滑走板心材が、木質繊維マットの加工、例えば圧縮または圧縮緩和により、滑走板心材のさまざまな範囲において、さまざまに異なる密度と木質繊維割合を持つ、請求項8に記載の滑走板心材。
【請求項10】
前記木質繊維マットが、液体の熱硬化性またはエラストマープラスチックに含浸され、前記プラスチックは、硬化の過程で発泡され、木質繊維マットの決められた均質な構造によって、繊維中間スペースを均一に塗りこめる、請求項2〜9のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項11】
木質繊維をできるだけ高い割合で取り込むことにより、特には木質繊維割合を少なくとも40%とすることにより、自然の細胞空胞によって、複合材料の質量の軽減が得られる、請求項2〜10のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項12】
前記木質繊維マットの切断または切削によって形成される3次元形状を持つ、請求項2〜11のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項13】
2枚または複数枚の前記木質繊維マットを積層モデルの形状に積層することによって形成される3次元形状を持つ、請求項2〜12のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項14】
前記木質繊維マットを切断または切削し、続いて、前記前もって切断または切削された2枚または複数枚の木質繊維マットを、積層モデルの形状に積層することによって形成される3次元形状を持つ、請求項2〜13のいずれかに記載の滑走板心材。
【請求項15】
前記各請求項のいずれかに記載の滑走板心材を持つ滑走板、特にスキーまたはスノーボード。
【請求項16】
前記方法の際に、繊維複合材料が、フェルト化された木質繊維性の木質繊維マットをベースに製造され、前記木質繊維マットに、熱硬化性プラスチックおよび/またはエラストマープラスチックが取り込まれる、繊維複合材料を製造する方法。
【請求項17】
前記繊維複合材料から滑走板心材が製造される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−518203(P2010−518203A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548628(P2009−548628)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000982
【国際公開番号】WO2008/095725
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509222327)テーウルル レイムホルツバウ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】