説明

繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造及び繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包方法

【課題】 繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物を長期に渡り保管しておいても、また遠方へ海上輸送しても繊維質基材樹脂含浸積層板の撓みがなく反りが極めて小さいものとする。
【解決手段】 繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50を梱包する方法において、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板5及び最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板5の外側に、合成樹脂気泡緩衝シート3を配し、更に合成樹脂気泡緩衝シート3の外側に板材1を配する。繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50の側面は合成樹脂フィルム7で巻く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造及び繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでより、繊維質基材樹脂含浸積層板として、紙、ガラス繊維布などの繊維質基材にエポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの表面に、銅箔の如き金属箔を張り合わせた金属張り積層板や、メラミン樹脂含浸パターン紙とフェノール樹脂含浸紙を積層し、熱圧成形して得られるメラミン化粧板が知られている。
【0003】
これらの繊維質基材樹脂含浸積層板はその使用原料からわかるように、繊維質基材と合成樹脂の複合体であり、保管に当たっては湿度の影響を受けないように配慮することが求められ、例えばシュリンクフィルムを用いて梱包する技術が開示されている。(特許文献1参照)。また、繊維質基材樹脂含浸積層板に関わるものではないが水現像型版材梱包体の梱包技術として発泡シートを用いる技術が開示されている。(特許文献2参照)更に、化粧板業界においては、化粧板を数百枚と大量に出荷する際には、最上層の化粧板及び最下層の化粧板の外側に、段ボールや不良品の化粧板、或いはフェノール樹脂積層板を配して梱包するのが通例であった。
【0004】
【特許文献1】特開平4−142271号公報
【特許文献2】国際公開第99/10253号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、依然としてこれらの繊維質基材樹脂含浸積層板は、繊維質部分に起因すると思われる吸・放湿の影響から保管状態によっては撓む、反るという問題があった。
【0006】
特に数百枚〜数千枚を海上輸送する場合は、保管期間も数ヶ月と長期に渡り、保管条件も低温から高温、低湿から多湿へと生産地から目的地へ到着するまでは繊維質基材樹脂含浸積層板にとっては過酷な環境条件に見舞われることがあり、目的地に到着し梱包を解いた際、繊維質基材樹脂含浸積層板が反っていては見栄えが悪いばかりでなく、切削加工、接着加工もしづらいということがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造において、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板及び最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板の外側に、合成樹脂気泡緩衝シートが配されていることを特徴とする繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれは、繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物を長期間に渡って保管しておいても、また遠方へ海上輸送しても繊維質基材樹脂含浸積層板の撓みや反りが極めて小さいものとなる。更に、合成樹脂気泡緩衝シートは軽量で取り扱いやすく、再利用でき、梱包費用も安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50の梱包構造を示す模式断面図である。積層板5は紙、織布、不織布などの繊維質基材に熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含浸し、乾燥したコア材と、金属箔や化粧層とを積層し、熱圧成形したものである。積層板5の具体例は、厚み16mmのメラミン化粧板である。積層物50では、積層板5が30枚積層されている。最上層のメラミン化粧板の直上、及び最下層のメラミン化粧板の直下には合成樹脂気泡緩衝シート3が、平坦な面4がメラミン化粧板に当接するように載置されている。
【0010】
合成樹脂気泡緩衝シート3としては緩衝性のあるものであれば特に制約はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、フェノール樹脂などからなり、気泡が連続した合成樹脂連続気泡緩衝シートや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂からなり、多数の独立した空気室が形成された合成樹脂独立気泡緩衝シートが挙げられる。
合成樹脂独立気泡緩衝シートは外力を気体の体積変化によりシートの引張応力に変換して緩衝機能を発現するもので、繊維質基材樹脂含浸積層板5の温度、湿度による収縮に対しては合成樹脂連続気泡緩衝シートよりも追従しやすく特に好ましい。市販品としてはプチプチ(登録商標、商標権者川上産業株式会社)、エアキャップ(登録商標、商標権者宇部興産株式会社)、ミナパック(登録商標、酒井化学工業株式会社)等が知られ、ガラス、陶器、電子精密機器等の保管や輸送時の梱包材として使用されている。気泡を構成する部分の形状は円柱状、正六角柱など特に制限は無い。
【0011】
合成樹脂気泡緩衝シート3の外側に配置された板材1は、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板5、最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板5の破損防止としての役目の他、合成樹脂気泡緩衝シート3を押さえ、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板5、最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板5と密着する役目を果たす。板材1には、プラスチック板、木質板などが適し、本発明では梱包費用を削減するため、厚み1.2mmの商品価値のないメラミン化粧板、つまり不良品が用いられている。
【0012】
図2は繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50の側面に合成樹脂フィルム7が3周巻かれた構造を示す模式断面図である。合成樹脂フィルム7としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ストレッチフィルムなどが挙げられる。これらの中でもストレッチフィルムは青果物、鮮魚、鮮肉、惣菜等の食品を包装するもので市販品も多く入手しやすい。しかも安価である。ストレッチフィルムは伸縮性のある材料から形成されたフィルムで、伸展性、柔軟性、粘着性に優れ、繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50にしっかりと密着し、繊維質基材樹脂含浸積層板5の木口の湿気の出入りは、ストレッチフィルムで防止でき、撓み、反りが生じないものとなっており、特に推奨されるフィルムである。
【0013】
ストレッチフィルムの材質は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−ブテン−1共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂等のエチレン系樹脂など特に制約はない。
【0014】
図3は、繊維質基材樹脂含浸積層板5の積層物50を出荷する際の模式断面図であり、積層物50の下側に配置された合成樹脂気泡緩衝シート3と、積層物50と、積層物50の上方に配置された板材1がプラスチックフィルム10で包装され、パレット15に載せられている。
【0015】
図5は、繊維質基材樹脂含浸積層板5の表面に擦り傷が発生するのを抑制するため保護材料6で被覆した際の模式断面図である。保護材料6としては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、塩化ビニルフィルムなどの非吸湿性合成樹脂フィルムの片面にアクリル系やゴム系の粘着剤が塗布された粘着剤付き保護フィルムや、アルミニウム箔の如き金属箔、紙、或いはアルムニム箔と紙との複合シートなどが適用できる。保護材料は、繊維質基材樹脂含浸積層板5の厚み、重量による取り扱い性により適宜選択して用いる。
【0016】
図6は、合成樹脂気泡緩衝シート3の平面図であり、図7は、本発明の実施例で使用した2層タイプの合成樹脂気泡緩衝シート3の気泡を簡易的に示した断面図である。
【0017】
コスト的には割高になるが、図8の気泡を簡易的に示した断面図に示されるように、3層タイプの合成樹脂気泡緩衝シート3´も使用可能である。
【実施例1】
【0018】
下から順に、板材1として厚み1.2mm、幅1235mm、長さ2455mmの商品価値のないメラミン化粧板を2枚パレットに載置し、次いでその上に包装用プラスチックフィルム10として厚み90μmのポリエチレンフィルムを包装に必要な分だけ裁断して広げた。しかる後、合成樹脂気泡緩衝シートとして合成樹脂独立気泡緩衝シート(プチプチ、登録商標、商標権者川上産業株式会社、材質はポリエチレン、2層タイプ)を平坦な面を上にして1枚おき、その上に商品である厚み16mm、幅1235mm、長さ2455mmのメラミン化粧板を30枚積層し、このメラミン化粧板30枚の側面を厚み10μmのポリエチレン系のストレッチフィルムで3周巻回した。次いで合成樹脂独立気泡緩衝シートとしてプチプチ(登録商標、商標権者川上産業株式会社、材質はポリエチレン、2層タイプ)を平坦な面を下にして1枚おき、その上に板材1として厚み1.2mm、幅1235mm、長さ2455mmの商品価値のないメラミン化粧板を2枚積層し、ポリエチレンフィルムで包装し(図3)、PP(ポリプロピレン)バンド20で荷崩れしないようパレットと共に締め付けた(図4)。その後インドネシアから日本へ約30日かけて海上輸送し、開梱したところ撓みもなく四隅の反りも0〜2mmであった。
【実施例2】
【0019】
実施例1において、図5に示すようにメラミン化粧板の表裏を、保護材料6として、アクリル系粘着剤が10μmの厚さで塗布された厚さ60μmの粘着剤付きポリエチレンフィルムで被覆した以外は同様に実施した。
【0020】
比較例1
図9に示すように、実施例1において合成樹脂独立気泡シート(プチプチ、登録商標)及びストレッチフィルムを用いず、厚み1.2mm、幅1235mm、長さ2455mmの商品価値のないメラミン化粧板の代わりに、厚み6mm、幅1235mm、長さ2455mmのフェノール樹脂積層板を用いた以外は同様に実施した。その後実施例1と同様に海上輸送した所、クレームとはなりにくいものもメラミン化粧板30枚の内2枚で周囲に撓みがあり、反りも3〜5mmと実施例1に比べると大きかった。
【0021】
比較例2
比較例1において、厚み6mm、幅1235mm、長さ2455mmのフェノール樹脂積層板の代わりに、厚み3mm、幅1235mm、長さ2455mmのフェノール樹脂積層板を用いた以外は同様に実施したが、結果は比較例1と同程度の撓みで、反りは9〜11mmと大きかった。
【0022】
比較例3
比較例1において、厚み6mm、幅1235mm、長さ2455mmのフェノール樹脂積層板の代わりに、厚み1.2mm、幅1235mm、長さ2455mmの商品価値のないメラミン化粧板を用いた以外は同様に実施したが、結果は比較例1と同程度の撓みで、反りは9〜11mmと大きかった。
【0023】
【表1】

Phe板:フェノール樹脂積層板
Me板:メラミン化粧板
【0024】
撓み:30枚の化粧板の周辺を目視にて確認した。
反り:四隅の反りの程度を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の梱包構造を示す模式断面図。
【図2】合成樹脂フィルムを巻回した構造を示す模式断面図。
【図3】本発明の構造の梱包形態を示す模式断面図。
【図4】本発明の構造の出荷形態を示す模式断面図。
【図5】本発明の他の実施例の出荷形態を示す模式断面図。
【図6】合成樹脂気泡緩衝シート3の平面図。
【図7】合成樹脂気泡緩衝シート3の気泡の断面図。
【図8】3層タイプの合成樹脂気泡緩衝シート3´の気泡の断面図。
【図9】比較例1の梱包構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 板材
3 合成樹脂気泡緩衝シート
3´ 合成樹脂気泡緩衝シート
4 平坦面
5 繊維質基材樹脂含浸積層板
50 積層物
6 保護材料
7 合成樹脂フィルム
9 フェノール樹脂積層板
10 プラスチックフィルム
15 パレット
20 PP(ポリプロピレン)バンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造において、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板及び最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板の外側に、合成樹脂気泡緩衝シートが配されていることを特徴とする繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造。
【請求項2】
前記合成樹脂気泡緩衝シートの外側に板材が配されていることを特徴とする請求項1記載の繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造。
【請求項3】
前記繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の側面が合成樹脂フィルムで巻回されていることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包構造。
【請求項4】
繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物を梱包する方法において、最上層の繊維質基材樹脂含浸積層板及び最下層の繊維質基材樹脂含浸積層板の外側に、合成樹脂気泡緩衝シートを配する工程を含むことを特徴とする繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包方法。
【請求項5】
前記合成樹脂気泡緩衝シートの外側に板材を配する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包方法。
【請求項6】
前記繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の側面を合成樹脂フィルムで巻回する工程を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の繊維質基材樹脂含浸積層板の積層物の梱包方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−131570(P2012−131570A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258412(P2011−258412)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】