説明

織布製マスク

【課題】繰り返し使用でき、経済的かつ衛生的で着用性に優れたマスクを提供する。
【解決手段】洗濯に耐え清潔感のある強い材質の生地でマスク本体を縫製し、立体的構造を保つため、ひだ状の折り目を配しこれにステッチを入れたマスク本体に簡単につけられる口当てシートを貼り付けることを特徴とする立体型マスクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場などのように連日かつ長時間マスクを着用する必要がある場合に適した、洗濯することにより繰り返し使用できる、経済的かつ衛生的で着用性に優れたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場などでは衛生面から作業服、帽子、マスクの着用がかかせない。これらは連日かつ長時間にわたり身に着けるものであるから、実質的に衛生的であるだけでなく、着心地、付け心地も重要で、かつ、経済的にもコストがかからないものが望まれる。また、見た目にも白色などの汚れがすぐにわかり清潔な印象を与えるものが好ましい。
これらのうち、マスクは従来のガーゼのマスクから、不織布の加工技術がすすみ、洗濯が不要の使い捨てタイプが主流になってきている。
しかし近年アレルギー患者の増加に伴いマスク利用者が増加しており、さらにインフルエンザ対策としてマスクの使用が奨励される中で使い捨てマスクを確保することさえ困難な状況が出現している。このようにマスクの利用が激増する一方で、毎日使い捨てマスクを使用することは環境上も経済的にも好ましくない。
【0003】
布マスク本体の内側に不織布シートを配したマスクとして特許文献1には、「耳かけ部分を有し、かつ、織編物を縫製して構成されたマスク本体の内側に不織布シートを口当て布として配したことを特徴とするもの」が記載されている。特許文献2には、「鼻及び口を覆う顔面に対し前方に膨らむドーム形とすることが可能な鼻及び口を含む顔面の対象部を覆うマスク本体部と、このマスク本体部の左右側部に設けられた耳に係止するための耳掛け部と、を備えるマスクであって、前記マスク本体部が展開されてドーム形に膨らむのに伴って折り曲げられることによって該マスク本体部に沿ってドーム形に形成される口当てシートを、前記マスク本体部の鼻及び口を含む顔面の対象部と当接する側に取り外し可能に付設したことを特徴とするマスク。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−192248号
【特許文献2】特開2008−302144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、繰り返し使用でき、経済的かつ衛生的で着用性に優れたマスクを提供することを課題とする。そのために、繰り返し洗濯できるマスク本体と簡単に取替え可能なシートを有するマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、洗濯に耐え清潔感のある強い材質の生地でマスク本体を縫製し、立体的構造を保つために、ひだ状の折り目を配しこれにステッチを入れ、マスク本体にずれたりヨレたりせずに簡単につけられる簡単に取替可能なシートを貼り付けることで本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(5)のマスクを要旨とする。
(1)ヒトの鼻口部を覆うマスク本体とマスク本体の左右両側部に設けられた耳掛け部を備えるマスクであって、綿と化学繊維の混紡の織布を縫製して構成され、広げればドーム状の立体的構造を保ち、閉じれば平面状に戻るように少なくとも2本のひだ状の折り目を有し、マスク本体の内側に着脱可能な口当てシートを配したことを特徴とするマスク。
(2)ひだ状の折り目の各折り山には、折り山を固定するためのステッチが施されていることを特徴とする(1)のマスク。
(3)折り山のステッチが折り山の端から1〜3mmの距離にあることを特徴とする(2)のマスク。
(4)マスク本体の織布が、綿とポリエステルの混紡の15番手から20番手の糸が使用されたツイル(T/C)布であって、綿とポリエステルの比率が35%:65%〜20%:80%のものであることを特徴とする(1)ないし(3)いずれかのマスク。
(5)マスク本体の織布が、白色の染色が施された織布であることを特徴とする(4)のマスク。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、繰り返し洗濯しても型崩れせず、口鼻部をドーム状の立体的構造で持続するマスク本体に簡単に取替え可能なシートをマスク内側に貼り付けることで、環境問題に配慮し大量のごみを出さず繰り返し使用できる経済的かつ衛生的で着用性に優れたマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はマスク折りたたみ時の正面図である。
【図2】図2はマスクのヒダとステッチの構成を示す模式図である。
【図3】図3はマスク折りたたみ時の口に当たる側を示す裏面図である。
【図4】図4はマスク折りたたみ時に口当てシートを装着した図である。
【図5】図5はマスクを立体的に開いた表面の写真である。
【図6】図6はマスクを立体的に開いた口に当たる裏面の写真である。
【図7】図7はマスクの装着用ゴムを後頭部にまわす別の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ヒトの鼻口部を覆うマスク本体とマスク本体の左右両側部に設けられた耳掛け部を備えるマスクであって、綿と化学繊維の混紡の織布を縫製して構成され、広げればドーム状の立体的構造を保ち、閉じれば平面状に戻るように少なくとも2本のひだ状の折り目を有し、マスク本体の内側に着脱可能な口当てシートを配したことを特徴とするマスクである。
本発明においてマスク本体は、織布で構成されており、生地は綿、絹、羊毛、ポリエステル、レーヨン、アセテートなど特に限定されない。しかし洗濯に耐える強度、ハリのあるものが好ましく、ツイル(T/C)布で15番手から30番手の織布でポリエステル65%綿35%からポリエステル80%綿20%の混紡の布が好ましい。この布は無染色では生成り色であるが、食品工場などでの使用においては、衛生上清潔感のある白色に染色したものを用いるのが好ましい。
【0011】
本発明で用いる口当てシートとしての不織布は、特に限定されない。例えば東海加工紙株式会社製の商品名 エアレイド、スパンレース、スパンンボンド などを使用することができる。口当てシートには紙質の堅いもの柔らかいもの分厚いもの薄いもの各種あるが使用感がさまざまであることから、数種類のシートをマスク本体に当ててその使用感を比較した。その比較例を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
本発明で用いるマスクの装着用ゴムは特に限定されない。好ましくは直径0.8mmの紐状生ゴム4本を20番手のポリエステル糸でゴム1本ずつに編み込んでゴム4本を帯状にしたものを用いる。このゴム紐は抗菌加工を施し洗濯しても抗菌効果は持続するようになっている。特徴としては、肌触りがやさしく長時間マスクをはめていても耳が痛くなりにくい。弾力、強度、耐久性に優れ繰り返し洗濯して使用することが出来る。肌荒れしやすい人でも抗菌効果により肌荒れしにくい。伸び率250%と収縮性に富み顔の大きい人も楽々はめることが出来る。
【0014】
本発明のマスクの特徴である、広げればドーム状の立体的構造を保ち、閉じれば平面状に戻るように少なくとも2本のひだ状の折り目を有する構成について、図を用いて説明する。
一つ目の態様は図1〜4で示されるマスクであり、3本のひだ状の折り目を有する態様である。顔にフィットすれば何本でも良いが、3〜4本が適当である。図1に示すように、折り目3を有し、この折り目が固定されるように折り目の上からステッチ2で縫い押さえることを特徴とする。マスクの口に当たる側の上部には、口当てシート6を固定するための面ファスナー5が固定されており、口当てシート6を面ファスナー5に貼り付けて固定することができる(図4)。面ファスナーにはクラレ(株)製のマジックテープ(登録商標)などを用いることができる。このマスク本体1の折り目3を広げることにより口鼻部をドーム状の立体的構造を保ったまま装着用ゴム部4で固定する。マスク本体の幅は14cm〜20cm、縦幅は8cm〜12cmが口鼻部をスッポリと包み込み好ましい。口当てシートの大きさはマスク本体を折りたたんだときにはみ出さないサイズが好ましい。マスク本体を着用したときには本体のひだ状折り目が広がり延びるが、下半分はあごを包むような状態になるので、折りたたんだときのサイズに合わせたサイズの口当てシートで、口を十分覆うことができる。面ファスナーは縫い付けるのが丈夫で好ましいが、接着剤などで固定してもよい。
【0015】
マスク本体1は鼻から口の方向にひだ状の折り目3を有している。折り目は図2に示す通り口に当たる面(裏面)が下向きの袋状になるようにヒダを折る。マスクをドーム状に開いて装着した時に、この折り目が袋状の受け皿の役目を果たし、顔面に付着している小さなほこりや体毛などを受け止めることができる。折り目間の幅(図1においては、折り目の山と山の距離及び谷と谷の距離)は1cmから2cmがよく、特に1.5cmが立体的安定を保ち好ましい。折り目が固定されるように、端から1mm〜5mm上をステッチ2でおさえる。図1のごとくマスクの表の面はマスク右端から左端までしっかりとステッチを施し、図3のごとくマスク裏面は右端部左端部の1cm〜2cmはステッチを施さずに残すとより好ましい。これによりさらにドーム状にマスクが開いた時の安定性を増すことができる。このステッチにかえて織布にプリーツ加工を施すこともできる。
【0016】
本発明のマスクには面ファスナー5の上部にワイヤを縫い込んで使用することができる。マスク本体を口鼻部に装着する際に、鼻部に隙間ができないようにワイヤを鼻の形に添わせることでよりマスク本体の密着感や装着感が増す。ワイヤに使用する素材としては針金、プラスチック樹脂、形状記憶合金などが使用される。
マスクを顔に固定するゴムあるいは紐は、通常のマスクと同様にいかなる形でつけてもよい。マスク本体の両端にゴムを固定し耳にかけるタイプか、マスク本体の上端同士、下端同士をゴムでつなぎ、頭にかけるタイプが普通である。目的によっては紐で縛る形にしてもよい。
【0017】
このようにして出来上がった発明品は図5のようにドーム状をなし、立体的に開いたまま安定する。本体が無理なく立体的形状を維持するので、長時間使用しても使用者の顔にかかる負担が少なく使用感がよい。マスク本体が洗濯可能で何度洗濯しても型崩れせず使用時には立体的に安定し、マスク左右端を両側にひっぱると平坦な形状に復元する。平坦な形状になるので、洗濯後、アイロンをかけるのも簡単である。このように利便性に優れ、経済的かつ衛生的である。
【0018】
発明品の口に当たる裏面は図6のようにドーム状の凹面に口当てシートがマスク本体に吸着し使用中にずれたりはみ出したりしない。今後予想されるインフルエンザの大流行により使い捨てマスクが入手できなくなったときに、本発明品は口当てシートのみを取り替えることで繰り返し使用することができる。また口当てシートが不足するような事態においても、キッチンペーパー、ティッシュペーパー、洋裁用不織布、衛生用品などを口当てシートの代用として使用し緊急事態に対処することができる。
【0019】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
図1から図6は装着用ゴム部4を耳に掛ける形状にしたマスクである。
マスク本体は横幅18cm縦幅9.5cmで3本のヒダを有し、それぞれのヒダには押さえのステッチが施されている。マスク表面のステッチは端から端まで付し、マスク裏面のステッチは両端部2.5cmはステッチをかけずに残す。口鼻部に接触するマスク裏面には上端から8mmの中央部に10.5cmの面ファスナーが縫い付けられている。また袋状になったマスク上端部の内部には鼻部の形状を安定させるためにワイヤが内蔵されている。マスクの両端には耳掛けできるように装着用ゴムが縫い付けられている。
マスク本体の織布はポリエステル65%綿35%のツイル(T/C)布、糸16番手、衛生上一番清潔感のある白色の染色を施したものを使用することで生地のハリを出し、洗濯、アイロンにも耐える強度を保つことができ、衛生上好ましい清潔感を持続することができる。
マスク裏面にのせる不織布にはスパンレースを使用することで、肌触りのよさ、マスク本体にふんわりとなじむほどよい硬さ、ホコリやつばを遮断する坪量45g/mの衛生的な口当てシートを得た。口当てシートは16cm×9cmの長方形型である。
【実施例2】
【0021】
図7は長時間マスクを着用する場合に、装着用ゴム部4を耳掛けではなく、後頭部とそのやや下の部分にまわすような形状にしたマスクである。長時間マスクを着用する時、耳掛けの場合、耳の周辺が痛くなり苦痛を伴うことがある。長時間装着するような場合はこの形状が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、環境問題に配慮し大量のごみを出さず繰り返し使用できる経済的かつ衛生的で着用性に優れたマスクを提供することができる。特に工場など毎日長時間使用し衛生的に配慮し頻繁に取り替えなければならない現場では必需品である。また使い捨てマスクが入手できないような事態が生じた時には、代替品として幅広い現場で活用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 マスク本体
2 ステッチ
3 折り目
4 装着用ゴム
5 面ファスナー
6 口当てシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの鼻口部を覆うマスク本体とマスク本体の左右両側部に設けられた耳掛け部を備えるマスクであって、綿と化学繊維の混紡の織布を縫製して構成され、広げればドーム状の立体的構造を保ち、閉じれば平面状に戻るように少なくとも2本のひだ状の折り目を有し、マスク本体の内側に着脱可能な口当てシートを配したことを特徴とするマスク。
【請求項2】
ひだ状の折り目の各折り山には、折り山を固定するためのステッチが施されていることを特徴とする請求項1のマスク。
【請求項3】
折り山のステッチが折り山の端から1〜3mmの距離にあることを特徴とする請求項2のマスク。
【請求項4】
マスク本体の織布が、綿とポリエステルの混紡の15番手から20番手の糸が使用されたツイル(T/C)布であって、綿とポリエステルの比率が35%:65%〜20%:80%のものであることを特徴とする請求項1ないし3いずれかのマスク。
【請求項5】
マスク本体の織布が、白色の染色が施された織布であることを特徴とする請求項4のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−273910(P2009−273910A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−186429(P2009−186429)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】