説明

缶体の洗浄装置

【課題】従来よりも大がかりな装置を必要とせず、缶体の変形や擦傷を防ぐことができ、さらに制動部材の部品交換の必要性のない缶体の洗浄装置を提供する。
【解決手段】一端に開口部を有する缶体を搬送しながら洗浄する装置であり、搬送下流側に向けて下向き傾斜して缶体の自重によって缶体を搬送する傾斜搬送領域を有し、前記傾斜搬送領域上流側に洗浄水を噴射して缶体を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部の下流側に水切りを行う水切り部を備えた缶体の洗浄装置において、前記搬送領域の両側に、搬送領域両側から缶体搬送方向と反対方向に缶体に向けて流体を噴射する一対又は複数対の流体噴射手段を設け、前記噴射手段より噴射され缶体に衝突する流体の面圧によって缶体の搬送方向への移動を停止可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール、清涼飲料水等の飲料が充填封入される一端に開口部を有する缶体の洗浄装置に関するものであり、特に一端に開口部を有する缶体を搬送しながら洗浄する装置であり、搬送下流側に向けて下向き傾斜して缶体の自重によって缶体を搬送する傾斜搬送領域を有し、前記傾斜搬送領域上流側に洗浄水を噴射して缶体を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部の下流側に水切りを行う水切り部を備えた缶体の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばビール工場、ジュース工場等で一端に開口部を有する缶体にビール、ジュース等の飲料を充填封入する製造工程では、缶体に付着した不純物を洗浄装置で洗浄して除去した後に缶体にビール、ジュース等の飲料を封入している。
【0003】
前記一端に開口部を有する缶体の洗浄装置として、従来より缶体を搬送しながら該缶体に洗浄水を噴射する洗浄部と、前記洗浄部の下流側に缶体を搬送しながら前記洗浄部で缶体に付着した洗浄水を除去する水切り部を備えた洗浄装置が知られており、特に搬送手段として前記缶体の開口部を下側に向け、傾斜搬送領域上を缶体が自重によって搬送されるようにした洗浄装置が知られている。
【0004】
このような洗浄装置においては、例えば缶体に飲料を充填封入する工程等の下流工程で缶が過量となった場合や、缶体を製造する工程等の上流工程で缶が不足となった場合、また例えば上流工程や下流工程で機器トラブル等が発生した場合には缶体の流れを一時的に停止する必要がある。また、特に大型の缶体においては、缶体と缶体が衝突した場合にその衝撃により缶体に変形や擦傷が生じる可能性があるため、変形や擦傷が生じ難いように缶体を減速させる必要がある。
【0005】
そこで特許文献1には大きな傾斜角をもつシュート内を自走する缶体に、洗浄水を噴射することにより多数の缶体を連続的に洗浄する缶体の洗浄装置において、前記自走する缶体の表面に間欠的に作用する制動部材と、それに対応する制動部とを、缶体底部近くの側面を挟んで前記シュート内に配設した缶体の洗浄装置が開示されている。
このような缶体の洗浄装置では、制動部材を缶体に押し付けることによって制動作用が働き、制動部材を缶体より離して非接触状態とすると缶体に加速が発生する。このように缶体に制動作用と加速を繰り返しながら通過させることにより、缶体の加速を適度に抑制して、重い缶体でも変形や擦傷を生じさせずに自走させることができる。また、制動部材を缶体底部近くの側面を挟んでシュート内に配設したことにより、シュートの傾きが急角度でも缶体の減速が缶体に傷つけることなく確実に行うことができるとともに、強度が高い缶体の底部近くを制動部材で挟むため、制動部材による缶体の変形を防止することができる。
【0006】
また、特許文献2には、缶体の洗浄装置に使用することができる缶体ストッパーとして、缶体搬送ラインの少なくとも一方の側に前記搬送ラインの搬送方向に略直角に移動可能に配置されていて缶体の底部側面を押す下押さえ部と、前記下押さえ部を前記搬送ラインに沿って移動する間に向けて押すアクチュエータと、前記下押さえ部と同期して前記缶体に向かって移動可能に且つ前記下押さえ部に対して相対的に上下動可能に配置され、前記上部側面を押す上押さえ部とを備える缶体ストッパーが開示されている。
このような缶体ストッパーでは、強度が高い缶体の上部と底部を押さえるため缶体に変形や擦傷が生じることを防止することができ、また下押さえ部と上押さえ部が同期して移動して缶体を抑えるので缶体を安定して停止させることができる。更に、上押さえ部が下押さえ部に対して相対的に上下動可能となっているため、高さの異なる缶体に対応することができる。
【0007】
【特許文献1】特公平6−20739号公報
【特許文献2】特開2004−91124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2の何れに開示された技術においても、制動部材を缶体に押し付ける際の衝撃によって缶体に変形や擦傷が生じる可能性がある。また缶体同士が衝突する際にもその衝撃によって、缶体に変形や擦傷が生じる可能性があり、特に複数の缶体が集団となって移動する場合にその可能性は高い。また缶体洗浄部で洗浄に必要な量の洗浄水を缶体に噴射するためには缶体は規定時間以上洗浄部に留まる必要があるが、そのための速度制御の機構が複雑なものとなる。
さらに、特許文献1、2の何れに開示された技術においても、缶体の制御部材としてゴム等のブレーキ材やステンレス鋼等の消耗部品を使用して、該消耗部品を缶体に接触させることで缶体の制御を行っているため、缶体との接触によって消耗部品に磨耗が生じ、部品交換の必要性がある。
【0009】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、従来よりも大がかりな装置を必要とせず、缶体の変形や擦傷を防ぐことができ、さらに制動部材の部品交換の必要性のない缶体の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明においては、
一端に開口部を有する缶体を搬送しながら洗浄する装置であり、搬送下流側に向けて下向き傾斜して缶体の自重によって缶体を搬送する傾斜搬送領域を有し、前記傾斜搬送領域上流側に洗浄水を噴射して缶体を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部の下流側に水切りを行う水切り部を備えた缶体の洗浄装置において、前記搬送領域の両側に、搬送領域両側から缶体搬送方向と反対方向に缶体に向けて流体を噴射する一対又は複数対の流体噴射手段を設け、前記噴射手段より噴射され缶体に衝突する流体の面圧によって缶体の搬送方向への移動を停止可能としたことを特徴とする。
【0011】
一対又は複数対の流体噴射手段を設けることで、缶体に搬送方向と反対方向に向かった面圧をかけることができ、また噴射された流体は弾発力を有するため、缶体が流体や後続の缶体と衝突した場合においても強い衝撃的な反力を受けることなく缶体を停止することができる。従って缶体の変形や擦傷を防止することができる。また、缶体を停止するために消耗部品を使用しないため、部品の交換も必要ない。
使用する流体は、流体を噴射することによって、付着した流体を洗浄する必要があるものでなければ何でもよく例えば空気、水等を例示することができるが、特に水が好適である。流体が水であれば、洗浄部で噴射した流体(水)は下流側の水切り部で洗浄水とともに除去することができるとともに、供給用の水を溜めておくタンク等を洗浄水と供用することができるため缶体の洗浄装置の付帯設備の設置スペースを小さくすることができるためである。
【0012】
また、前記流体噴射手段は、流体噴射手段より噴射した流体が洗浄部に到達する位置に前記洗浄部を挟み搬送路両側に平行に配設された流体管と、前記流体管の搬送領域と対面する側に設けた流体吐出口に連結されたスプレーノズルから成り、前記スプレーノズルの先端噴射口が、前記流体管との連結位置よりも搬送領域側の缶体搬送方向上流側に位置するように傾斜させて配設するとともに、前記スプレーノズルを前記流体管に一定間隔で複数個連結させたことを特徴とする。
【0013】
スプレーノズルを用い、スプレーノズルの先端噴射口を流体管との連結位置よりも搬送領域側の缶体搬送方向上流側に位置するように傾斜させて配設するとともに、スプレーノズルを前記流体管に一定間隔で複数個連結させることで、噴射された流体が広い面積に分散されるため、缶体と流体が衝突した際に、缶体が一部で局所的に強い衝撃を受けることがなく、缶体の変形や擦傷をさらに効果的に防止することができる。
【0014】
また、前記流体管に管軸方向に沿ってスプレーノズルを複数対連結させるとともに、前記複数対のスプレーノズルの取り付け間隔が缶体の直径よりも小としたことを特徴とする。
スプレーノズルを複数対連結させることで、缶体が流体や後続の缶体と衝突した場合においても強い衝撃的は反力を受けることなく複数個の缶体を停止することができる。また、スプレーノズルの取り付け間隔を缶体の直径よりも小とすることで、複数の缶体をそれぞれが接触した状態で停止させることができ、停止している缶体の個数が一定数を越えると流体による面力では缶体を止めることができなくなり、停止している缶体のうち最下流に位置する缶体が下流側に搬送される。そのため、流体噴射手段であるスプレーノズルより下流側では缶体が複数個連なって移動することはなく、スプレーノズル下流側での缶体同士の衝突による缶体の変形や擦傷を防止することができる。
【0015】
また、缶体への衝突位置における流体のスプレー幅が缶体の直径よりも小となるように前記一対又は複数対のスプレーノズルのスプレー角度を設定したことを特徴とする。
このことによりスプレーノズルから噴射された流体は全て缶体に衝突するため、必要以上の流体を使用する必要がなく、流体使用量を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、従来よりも大がかりな装置を必要とせず、缶体の変形や擦傷を防ぐことができ、さらに制動部材の部品交換の必要性のない缶体の洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例1に係る缶体の洗浄装置の概略を示す構成図であり、図2は図1におけるA−A断面図、図3は図2におけるB矢視方向の平面図である。
図1、図2及び図3に基づいて、本実施例1に係る缶体の洗浄装置の構成について説明する。
図1に示す本実施例1に係る缶体の洗浄装置は、缶体5を搬送しながら水切り及び洗浄を行うものである。図1において10は缶体の洗浄装置を表し、1は洗浄装置10に缶体5を連続して搬送する供給コンベア、11は搬送下流側に向けて下向き傾斜した搬送レール、12は搬送レール11の途中に設けられ缶体5を搬送しながら洗浄を行う洗浄部、13は該洗浄部12によって洗浄された缶体5をさらに搬送しながら水切りを行う水切り部、2は該水切り部13によって水切りされた缶体5を下流に排出する排出コンベア、4は排出コンベア2の下流側に設けたスクリューフィーダである。
【0019】
次に上記各部について説明する。前記供給コンベア1は上流機器から供給された缶体を洗浄装置10に連続的に供給するコンベアであり、缶体を搬送することができればコンベアの形式は特に制限されるものではない。また缶体5は開口部を上側にした起立状態で供給コンベア1上を搬送される。
【0020】
搬送レール11は、ハウジング14で覆われており、上流側から順にツイストガイド部11a、直線ガイド部11b及びツイストガイド部11cの3つのガイド部から構成されており、始端部を前記供給コンベア1の終端部に、また終端部を前記排出コンベア2の始端部に接続され、例えば25°〜30°程度の比較的強い勾配で傾斜したレールであって、前記供給コンベア1から水平な姿勢で供給される缶体5を傾斜した姿勢でその自重によって滑降させて搬送するものである。
また搬送レール11は図2及び図3に示したように、長方形のフレーム板11eで支持され、缶体5の搬送方向と直交する方向への移動を拘束する複数のガイドバー11dで形成され、缶体を搬送方向に案内している。
【0021】
ツイストガイド部11aは、前記複数のガイドバー11dが捻転して設けられており、下方に位置する前記直線ガイド部11bに向かって缶体5を自重によって滑降させながら該缶体5の姿勢を180°変換する。即ち前記供給コンベア1上を開口部を上側にして搬送された缶体5はツイストガイド部11aでその姿勢を180°変換されて開口部を搬送レール下側にした起立状態で直線ガイド部11bに搬送される。直線ガイド部11bは缶体5を開口部を搬送レール下側にした起立状態のまま滑降させるためのガイド部であり、ツイストガイド部11cは前記ツイストガイド部11aと同様の構造であり、缶体5の姿勢を再度180°変換して開口部を上側にした起立状態とするものである。
【0022】
前記直線ガイド部11bには缶体5の搬送方向上流側から順に洗浄部12、水切り部13が設けられている。
洗浄部12には、直線ガイド部11b下方に直線ガイド部11bに沿って洗浄水噴射管15が設けられるとともに、直線ガイド部11b上方に直線ガイド部11aに沿って前記洗浄水噴射管15と直線ガイド部11bに対して対象な位置にバランス水噴射管16が設けられている。洗浄水噴射管15からは上向きに洗浄水を噴射して缶体5の内部及び外部を洗浄し、バランス水噴射管16からは下向きにバランス水を噴射して前記洗浄水噴射管15から噴射された水圧とバランスをとって缶体5の上下方向への移動を防止するとともに、缶体5の外部を洗浄している。また、缶体の滑降を停止可能な後述する水噴射式ストッパー30が備えられている。
また、前記洗浄部12の搬送方向下流側に設けられた水切り部13では缶体5を直線ガイド部11bを滑降させながら水切りを行う。
なお、ハウジング14の洗浄部12の下流側及び水切り部13の下流側にはそれぞれ洗浄部12及び水切り部13で発生するドレンを外部に排出するドレン管14a及び14bが設けられており、発生したドレンは外部に排出される。
【0023】
排出コンベア2は、前記洗浄部12で洗浄され水切り部13で水切りされた後にツイストガイド部11cで開口部を上側にした起立状態に姿勢を変換された缶体5を連続的に搬送レール11から排出し、スクリューフィーダ4に供給するコンベアであり、缶体を搬送することができればコンベアの形式は特に制限されるものではない。
スクリューフィーダ4は、前記排出コンベア2から連続的に供給される缶体5を所定の間隔に広げて図示しない後流機器に供給するものであり、スクリューフィーダ4の稼動を停止すれば缶体5の移動を停止することができるため、ストッパーとしても使用することもできる。
【0024】
次に本発明の特徴的な構成である水噴射式ストッパー30について図2及び図3を用いて詳細に説明する。水噴射式ストッパー30は、ハウジング14に固設されたブラケット31に固定された2本のストッパー水管32と、該ストッパー水管32の搬送レール11と対面する側に設けた流体吐出口に連結された複数のスプレーノズル32aと、前記ストッパー水管32に水を供給する供給管33で構成されている。ここで、ストッパー水管32は、連結板34によって一体となって前記ブラケット31に固定されており、また供給管33からストッパー水管32へ供給する水は前記洗浄水と同じ水を用いている。
【0025】
ストッパー水管32は、例えば連続する缶体5の4〜5個分に相当する長さを有し、缶胴の高さに対応させて搬送レール11を挟んで搬送レール11両側に平行に配設され、一端はブラインドプラグ35で閉じられ、他端は噴射水の供給管33と連結しており、その位置は前記スプレーノズル32aから噴射された水が洗浄部12に到達するような位置に配設される。
なお、ストッパー水管32の長さは洗浄装置10の能力、洗浄する缶体5の数及び大きさ、洗浄装置10の上流及び下流機器の能力によって決定すればよく特に限定されるものではない。
【0026】
また、スプレーノズル32aは先端の噴射口が前記ストッパー水管32との連結位置よりも搬送レール11側の缶体5搬送方向上流側に位置するように45°の傾斜角で、搬送レール11に対して対象な位置で対になるように一定間隔でストッパー水管32に連結されている。
なお、本実施例1においては傾斜角度を45°としたが傾斜角度はスプレーノズル32aから噴射される水が缶体5に搬送方向下流側から衝突することができる角度であれば特に限定されるものではなく、またスプレーノズル32a間の間隔は搬送する缶体5の直径よりも小さいことが好ましい。また、スプレーノズル32aのスプレー角は噴射された水の缶体への衝突位置におけるスプレー幅が缶体の直径よりも小となるように設定することが好ましい。
【0027】
前記スプレーノズル32から噴射される水の水圧は、缶体5に衝突する水の面圧によって缶体5の自重による搬送を停止できるように調節する。このことで、上流側から搬送された缶体5はスプレーノズル32aから噴射された水(以下噴射水と呼ぶ)に衝突して減速されて押し返され、搬送方向最上流のスプレーノズル32aの噴射水近傍で停止する。次いで後続の缶体5が順次搬送されてくるとその後続の缶体5を含む(缶体複数個分の)自重に押されて先頭の缶体5は順次下流側に移動し、噴射水によって停止されている缶体5が所定数を超えると、噴射水によって溜まった缶体5の全てを停止することができず、先頭の缶体5を放出する。前記所定数は特に限定されないが、噴射水によって停止された複数個の缶体の搬送方向最上流側の缶体が前記ストッパー水管32の上端よりも十分上流側に位置するように設定するとよい。
【0028】
なお、本実施例1においては水噴射式ストッパー30を用いたが、水に代えて他の流体として例えば無菌空気を噴射することでも同様の効果を得ることができ、空気の噴射装置の構造はストッパー水32及びスプレーノズル32aは水噴射式ストッパー30と同様の構成でよい。しかしながら、無菌空気を噴射する場合には、無菌空気の供給源、ブロワ、噴射された無菌空気の排出機構が必要であるため、水噴射式ストッパー30を用いることが好ましい。
【0029】
次に図4に基づいて、本実施例1に係る缶体の洗浄装置10の動作について缶体5の初期供給の例を挙げて説明する。図4は缶体の洗浄装置10への缶体5投入の説明図である。
例えば洗浄装置10の下流機器である飲料充填装置(図示せず)を長期休止した場合、図4(a)に示すように衛生面から缶体5は洗浄装置10から全て排出されており、前記飲料充填装置を再稼動する際には缶体5を洗浄装置10に供給する必要がある。
【0030】
まずスクリューフィーダ4を停止したまま供給コンベア1を稼動するとともに、洗浄水噴射管15、バランス水噴射管16から洗浄水の噴射を開始し、水噴射ストッパー30の噴射水の噴射を開始する。供給コンベア1上の開口部を上側にした起立状態の先頭の缶体5は押し出されて搬送レール11のガイド内に入り、搬送レール11の勾配に沿って傾き、自重によって後続の缶体5から離れて滑降を始める。滑降を始めた缶体5はツイストガイド部11aで180°姿勢を変換して開口部を下に向け洗浄部12に入る。洗浄部12に入った缶体5は前記水噴射式ストッパー30を構成する最上流のスプレーノズル32a近傍で噴射水から受ける面圧によって減速し停止する。このように先頭の缶体が水噴射式ストッパー30によって停止した状態を図4(b)に示している。
【0031】
次いで後続の缶体5が前記先頭の缶体5と同様にして滑降してきて前記先頭の缶体5の搬送方向下流側に当接して先頭の缶体5を押す。さらに後続の缶体5の個数が増えると噴射水から受ける面圧によって缶体5を停止することができなくなり、これらの缶体5は連なって下方に移動して後続の缶体5も噴射水からの面圧によって停止する。以降同様にして噴射水の存在する範囲に連なって停止する缶体の個数が増え、所定の個数分だけ停止することができる。所定の個数を超えた後は、前記供給コンベアから缶体5が1つ供給される毎に、停止している缶体5のうち最下流の缶体5が下流に放出され、搬送レール11の斜面を滑降して水切り部13及びツイストガイド部11cを経て排出コンベア2に搬送されスクリューフィーダ4によって停止される。こうしてスクリューフィーダ4で停止される缶体5の数を順次増やしていく。このように噴射水によって缶体5を停止することができる所定の個数を超えた状態を図4(c)に示している。
【0032】
このようにスクリューフィーダ4で停止される缶体5の個数を増やしていくと最後には図4(d)に示したように供給コンベア1の終端部から排出コンベア2の始端部まで缶体5が連なった状態となる。この時にスクリューフィーダ4を始動すると、缶体5の搬送速度は自動的にスクリューフィーダ4の搬送速度に制御されることとなる。即ち缶体の搬送速度をスクリューフィーダ4のみで簡単に行うことができる。
【0033】
ここで、各缶体5が噴射される洗浄水量は、洗浄部12の洗浄水噴射管15の各位置における単位時間あたりの噴射水量と缶体5の通過時間によって決まり、通過時間は洗浄水噴射管15の長さによって決定することができるため、洗浄水噴射管15の長さ及び単位時間あたりの噴射水量を調整することで缶体5の洗浄に充分な洗浄水量を確保することが可能である。
【0034】
また、水噴射式ストッパー30で停止される缶体5及びその後続の缶体5は噴射水に弾発力があるために衝突時の衝撃が少なく、衝突による衝撃は少なく変形や擦傷の発生が生じ難い。
またスクリューフィーダ4で停止される缶体5は1個づつ水噴射式ストッパー30から放出されて停止されるために複数個が集団で衝突することがないことに加え、ツイストガイド部11cで減速されることと加速される距離が短いため、衝突による衝撃は少なく変形や擦傷の発生が生じ難い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
従来よりも大がかりな装置を必要とせず、缶体の変形や擦傷を防ぐことができ、さらに制動部材の部品交換の必要性のない缶体の洗浄装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係る缶体の洗浄装置の概略を示す構成図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図2におけるB矢視方向の平面図である。
【図4】洗浄装置への缶体投入の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
5 缶体
10 缶体の洗浄装置
11 搬送レール(傾斜搬送領域)
12 洗浄部
13 水切り部
15 洗浄水噴射管
16 バランス水噴射管
30 水噴射式ストッパー
32 ストッパー水管(流体管)
32a スプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する缶体を搬送しながら洗浄する装置であり、搬送下流側に向けて下向き傾斜して缶体の自重によって缶体を搬送する傾斜搬送領域を有し、前記傾斜搬送領域上流側に洗浄水を噴射して缶体を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部の下流側に水切りを行う水切り部を備えた缶体の洗浄装置において、
前記搬送領域の両側に、搬送領域両側から缶体搬送方向と反対方向に缶体に向けて流体を噴射する一対又は複数対の流体噴射手段を設け、前記噴射手段より噴射され缶体に衝突する流体の面圧によって缶体の搬送方向への移動を停止可能としたことを特徴とする缶体の洗浄装置。
【請求項2】
前記流体噴射手段は、流体噴射手段より噴射した流体が洗浄部に到達する位置に前記洗浄部を挟み搬送路両側に平行に配設された流体管と、前記流体管の搬送領域と対面する側に設けた流体吐出口に連結されたスプレーノズルから成り、
前記スプレーノズルの先端噴射口が、前記流体管との連結位置よりも搬送領域側の缶体搬送方向上流側に位置するように傾斜させて配設するとともに、
前記スプレーノズルを前記流体管に一定間隔で複数個連結させたことを特徴とする請求項1記載の缶体の洗浄装置。
【請求項3】
前記流体管に管軸方向に沿ってスプレーノズルを複数対連結させるとともに、
前記複数対のスプレーノズルの取り付け間隔が缶体の直径よりも小としたことを特徴とする請求項2記載の缶体の洗浄装置。
【請求項4】
缶体への衝突位置における流体のスプレー幅が缶体の直径よりも小となるように前記一対又は複数対のスプレーノズルのスプレー角度を設定したことを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の缶体の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−6215(P2009−6215A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168033(P2007−168033)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】