説明

缶飲料類の加温装置

【課題】缶飲料類を家庭などでも、ごく簡単に加温できるようにする。
【解決手段】缶飲料類を飲用に適した温度に加温する加温装置として、周囲をほぼ密閉した中空構造を有し、加温する缶飲料類12を立てて挿入し、加温し、事後取り出すために開口14を少なくとも1か所上面に形成した筐体11、開口から挿入した缶飲料類の底部を乗せて缶飲料類を立てた状態で支え、加温するために筐体内部に配置したヒータープレート15、上部にて筐体の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に上記ヒータープレートを取り付けるための複数個の支持体16を具備し、ヒータープレートと支持体とをねじ結合を用いて、筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶飲料類を飲用に適した温度に加温する、乾熱式の加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーや紅茶、緑茶或いはジュースなどの液体飲料を缶に充填した缶飲料は手軽に入手でき、何時でも、また、何処ででも好みのものを飲用することができるので、様々な状況において便利に利用されている。ジュース類は別として、お茶類は温かいものを飲用したい希望が多く、店頭では加温棚装置によってあらかじめ加温されているものもあるが、個人の家庭などで加温するには湯煎する必要があり、かえって手間がかかることになる。
【0003】
これに対し、特開2006-137356号は飲料缶用ホルダー内の底部にヒーターを設置して飲料缶を加温する車載用の加温器を開示している。しかし、この加温器において缶飲料は低いホルダーで囲まれているだけなので保温性に問題があると考えられ、また、缶飲料を1個ずつヒーターで加温するので、複数個加温するには時間もかかる。なお、ここでは缶飲料について述べたが、ビン入りの飲料も同様の状況であるから、本発明においてはビン入りの飲料を含めて缶飲料類と総称するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006-137356号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、缶飲料類を家庭などでも、ごく簡単に加温することができる乾熱式の加温装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、缶飲料類を飲用に適した温度に加温する加温装置として、周囲をほぼ密閉した中空構造を有し、加温する缶飲料類を立てて挿入し、加温し、事後取り出すために開口を少なくとも1か所上面に形成した筐体と、開口から挿入した缶飲料類の底部を乗せて缶飲料類を立てた状態で支えるとともに、加温するために筐体内部に配置したヒータープレートと、上部にて筐体の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に上記ヒータープレートを取り付けるための複数個の支持体を具備し、ヒータープレートと支持体とをねじ結合を用いて、筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能に設けるという手段を講じたものである。
【0007】
本発明の装置は、開口をその上面に形成した筐体を備えており、缶飲料類の挿入と取り出しの容易化を図っている。缶飲料類の底部を乗せて立てて支えるために筐体内部に配置するヒータープレートを備えており、これ上部を筐体の上面側に取り付けて吊り下げる構成を一つの特徴としている。筐体はヒータープレートの取り付け構造の一部であり、構造の簡略化に寄与する。
【0008】
ヒータープレートを支持体によって筐体に吊り下げ、ヒータープレートと支持体とをねじ結合を用いて、筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能に設ける。このために、上部にて筐体の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に雄ねじ部を有するボルト軸状の支持体と、この支持体をヒータープレートの取り付け部に通すとともに、上記雄ねじ部に下方からねじ込んでヒータープレートを支えるナットとを組み合わせ、上記ナットのねじ込みねじ戻しによってヒータープレートを上下動可能に構成している。
【0009】
また、ヒータープレートの下面には熱反射板を設けることが望ましい。筐体は周囲がほぼ密閉された構造を有しており、従って、密閉空間内部の缶飲料類を取り囲む空気層によって得られる保温性能を備えているが、ヒータープレートの下面など、要所に熱反射板を設けることで、限られた熱源の加温能力が有効に利用される。
【0010】
本発明の缶飲料類における加温装置では、加温中に缶飲料類の上部を覆うカバー板を有するものとし、上記カバー板をヒンジによって、缶飲料類の上部を開放可能に筐体の上部に取り付けることが望ましい。缶飲料類の飲み口のある面をカバー板で覆うことで衛生的になり、かつまた、加温中に熱が逃げることも防止できるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、家庭などでも、任意個数の缶飲料類をごく簡単に乾熱式に加温することができ、ヒータープレートは缶飲料類を加温するだけでなく、筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能なように缶飲料類を支えているので、缶飲料類の高さに応じた寸法に調節可能であり、簡潔な構造にもかかわらず複数の種類の缶飲料類に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。各図は本発明に係る缶飲料類の加温装置10の一例を示すもので、缶飲料類を空気中にて乾熱加温する電熱式の装置である。11は筐体であって、周囲をほぼ密閉した中空構造を有している。図示のものは、加工した金属板を組み合わせて直方体状に形成した筐体11であり、6面全面がほぼ密閉されている。
【0013】
上記の筐体11は、加温の対象とした缶飲料類12の大きさと本数に適合した内容量を有する形態に形成されるもので、図示の例では、7個の缶飲料類12を加温することができるように設けられている。従って、筐体11の上面13には加温する缶飲料類12を立てて挿入し、加温し、事後取り出すために7か所の開口14が最密的な配置で形成されている。
【0014】
上記の開口14から挿入した缶飲料類12の底部を乗せて、缶飲料類12を立てた状態で支えるとともに、加温するためにヒータープレート15が筐体内部に配置されている。ヒータープレート15は筐体11を構造体として取り付けられており、そのために、上部にて筐体11の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に上記ヒータープレート15を取り付けるための複数個の支持体16を具備している。
【0015】
支持体16は、上部にて筐体11の上面側に吊り下げ式に取り付けられるもので、上部と下部に雄ねじ部を有するボルト軸状の部材によって形成されている。より具体的には、ボルト軸状部材の上端の雄ねじ部16aにねじ込まれた袋ナット18にて筐体11の上面に固定され、下部の雄ねじ部17にねじ込むナット19でヒータープレート15を支えている構造である。
【0016】
このため、ナット19のねじ込みねじ戻しによってヒータープレート15の上下動が可能であり、雄ねじ部17の範囲においてヒータープレート15を上下させ、筐体11の上面13とヒータープレート15の上面との間隔Hを、缶飲料類12の高さに合わせて調節することなどが可能である。なお、19′は止めナットであり、ヒータープレート15を上から押えて浮動しないように固定している。
【0017】
各図において、20は乾熱加温のためのヒーターであって、ヒータープレート15の下側に取り付けられており、また、ヒーター20の下部にはわずかな隙間gを設けて電熱を缶飲料方向へ反射する熱反射板21が設けられている。これらのヒーター20及び熱反射板21は、ボルトから成る取付け部材22によって、下方からヒータープレート15の下面に取り付けられている。23は脚片を示しており、筐体11の下面に部材を介して取り付けられている。
【0018】
さらに、本発明の装置10は、加温中に缶飲料類12の上部を覆うカバー板25を有しており、上記カバー板25はヒンジ24によって、缶飲料類12の上部を開放可能に筐体11の上部に取り付けられている。図示のカバー板25は透明のプラスチックシートから成り、缶飲料類12の上部を十分に覆い得る大きさを有しており、開閉端部に取り付けたつまみ26の操作によって開閉するように設けられている。27は持ち運び用の取っ手を示す。
【0019】
図4は本発明の装置10の回路図であり、28は電源スイッチ、29はヒューズ、30は電源表示灯、31、32、33はサーモスタット、34は低温用スイッチであり、サーモスタット32と並列に組み込まれている。35は昇温表示灯で、ヒーター20と並列に配線されており、家庭用交流電源AC100Vに接続して使用する。ヒーター20としてはニクロム線を使用する従来のものの他、アルミ箔ヒーターと呼ばれているシリコンゴムコードで被覆したヒーターをアルミ箔等でサンドイッチした構造のもの、或いは赤外線ヒーター等、任意の電気ヒーターの類を使用することができる。
【0020】
従って、電源スイッチ28の投入によってヒーター20に電流が流れると同時に電源表示灯30が点灯し、スイッチ34がオンになっていれば低温用サーモスイッチ32が作動するまでヒーター20による加温が続く。低温、高温の設定は任意に行えることであり、例えば前者を45℃、後者を60℃のように設定する。
【0021】
サーモスタット32、33が作動して、缶飲料12を設定温度に加温するまでに要する時間は、ヒーター20の発熱量による。常時通電による消費電力を考慮すると余り高出力のヒーター20は使うべきではないが、図示のように200ccの缶飲料12を7個程度室内において加温する場合、300W/hrのヒーター20では数十分程度で目標温度に到達することが望ましいと思われる。しかし、より早く昇温させるにはヒーター熱量もより大きくしなければならず、また、加温の度合いや時間は任意に設定することができるものである。
【0022】
このような本発明の装置は、図示した缶飲料類12を数本程度加温する比較的小型のものから、数十本程度またはそれ以上の本数を加温可能な大型のものまで、需要に応じて製作することができ、媒体に水を用いる湿熱式ではないので構造が簡単で安全性も高くメインテナンスもほとんど不要である。そして、熱源を取り付けたヒータープレート15を缶飲料類12の高さに応じて上下動できることは既に説明したが、缶飲料類12の太さに応じられるように、筐体上面の開口14の直径を大きいものに合わせて形成することも可能である。この場合、小さい方の缶飲料類12に合わせた開口径のカバーを作って、大き過ぎる開口径によって生じる隙間をふさげば良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る缶飲料類の加温装置の一例を示す平面説明図である。
【図2】同上の装置の正面説明図である。
【図3】図1のIII- III線断面図である。
【図4】同じく本発明の装置の配線図である。
【符号の説明】
【0024】
10 缶飲料類の加温装置
11 筐体
12 缶飲料類
13 上面
14 開口
15 ヒータープレート
16 支持体
17 雄ねじ部
18 袋ナット
19、19′ ナット
20 ヒーター
21 熱反射板
22 取付け部材
23 脚片
24 ヒンジ
25 カバー板
26 つまみ
27 取っ手
28 電源スイッチ
29 ヒューズ
30 電源表示灯
31 安全用サーモスタット
32 低温用サーモスタット
33 高温用サーモスタット
34 低温用スイッチ
35 昇温表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶飲料類を飲用に適した温度に加温する加温装置であって、
周囲をほぼ密閉した中空構造を有し、加温する缶飲料類を立てて挿入し、加温し、事後取り出すために開口を少なくとも1か所上面に形成した筐体と、
開口から挿入した缶飲料類の底部を乗せて缶飲料類を立てた状態で支えるとともに、加温するために筐体内部に配置したヒータープレートと、
上部にて筐体の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に上記ヒータープレートを取り付けるための複数個の支持体を具備し、
ヒータープレートと支持体とをねじ結合を用いて、筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能に設けたことを特徴とする缶飲料類の加温装置。
【請求項2】
筐体の上面とヒータープレートの上面との間隔を変更可能に設けるために、上部にて筐体の上面側に吊り下げ式に取り付けられ、下部に雄ねじ部を有するボルト軸状の支持体と、この支持体をヒータープレートの取り付け部に通すとともに、上記雄ねじ部に下方からねじ込んでヒータープレートを支えるナットとを組み合わせ、上記ナットのねじ込みねじ戻しによってヒータープレートを上下動可能に構成し、かつまた、ヒータープレートの下面に熱反射板を設けた請求項1記載の缶飲料類の加温装置。
【請求項3】
加温中に缶飲料類の上部を覆うカバー板を有し、上記カバー板はヒンジによって、缶飲料類の上部を開放可能に筐体の上部に取り付けられている請求項1記載の缶飲料類の加温装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−104205(P2011−104205A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264010(P2009−264010)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(508048894)
【Fターム(参考)】