説明

置き去り又は持ち去り検知システム及び置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法

【課題】置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、置き去り又は持ち去りの行為者特定のための参考情報を迅速に提供する。
【解決手段】監視エリアを撮影するカメラ20と、撮影した画像を保存するデータ記憶媒体34と、置き去り持ち去り判断部52と、置き去り又は持ち去りの発生時刻を演算する発生時刻演算部54と、データ記憶媒体34から前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像を取得する画像取得処理部42と、前記取得された撮影画像から、置き去り又は持ち去りの対象である異物から所定の距離範囲内にいる周辺人物の画像を抽出する周辺人物抽出部43と、置き去り又は持ち去りの対象である前記異物の画像と前記周辺人物の画像とをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成するログデータ作成部45と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置き去り又は持ち去り検知システム及び置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法に関し、特に、監視エリア内で発生する置き去り又は持ち去りを検知すると共に、その行為者を特定するための参考情報を提供する置き去り又は持ち去り検知システム及び置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、置き去り物等のない監視エリアの画像(背景画像)を撮像装置により予め取得しておき、現在の監視エリアの画像(監視画像)と上記背景画像との輝度の差分画像から、監視エリア内における物体の置き去りや持ち去りを検知する置き去り又は持ち去り検知システムが知られている。
【0003】
上記従来の置き去り又は持ち去り検知システムの一例として、監視画像において放置物体の一部が他の物体により見えなくなった場合にも、監視画像に写っている当該放置物体の部分画像からその放置物体の存在を検知し、所定時間経過後に、その放置物体を置き去り物として表示画面上に強調表示する映像監視装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記従来の置き去り又は持ち去り検知システムの他の例として、監視エリア内に異物が出現してから、当該異物を置き去り物として検知するまでの所定時間が経過するまでに撮影された各監視画像に基づき、当該置き去り物と重なったすべての人物の画像を当該置き去りの行為者候補として表示すると共に、各行為者候補が当該置き去り物を所持していた可能性を、置き去り物の画像と各行為者候補の画像との一致度(部分一致の程度)により表示する置き去り監視装置も知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された映像監視装置にあっては、置き去さられ又は持ち去られた物体の画像やその位置は特定できるが、当該置き去り又は持ち去りの行為者の特定につながる情報を得ることはできない。また、特許文献2に記載された置き去り監視装置にあっては、置き去り行為者についての情報を得ることはできるものの、異物の出現から当該異物を置き去り物として検知するまでの間に撮影された、全ての監視画像を対象として画像処理を行わなければならず、画像処理量が膨大となる。このため、画像処理量を低減し、行為者候補等についての情報をユーザに対しより迅速に提供することが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−104130号公報
【特許文献2】特開2011−49646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、置き去り又は持ち去り検知を行う際の画像処理量を低減し、行為者特定のための参考情報を迅速に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、監視エリアを撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、置き去り又は持ち去りの発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有し、監視エリアの撮影画像に基づき置き去り又は持ち去りに係る人物を特定するための処理を行う置き去り又は持ち去り検知システムであって、前記保存手段から、前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像を取得する画像取得処理部と、前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像から、置き去り又は持ち去りの対象である異物から所定の距離範囲内にいる周辺人物の画像を抽出する周辺人物抽出部と、置き去り又は持ち去りの対象である前記異物の画像と前記周辺人物の画像とをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成するログデータ生成部と、を有する置き去り又は持ち去り検知システムである。
また、本発明は、監視エリアを撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、置き去り又は持ち去りの発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有し、監視エリアの撮影画像に基づき置き去り又は持ち去りに係る人物を特定するための処理を行う置き去り又は持ち去り検知システムにおける置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法であって、前記保存手段から、前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像を取得する工程と、前記取得する工程において取得された撮影画像から、置き去り又は持ち去りの対象である異物から所定の距離範囲内にいる周辺人物の画像を抽出する工程と、置き去り又は持ち去りの対象である前記異物の画像と、前記抽出する工程において抽出された前記周辺人物の画像とをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成する工程と、を有する置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、置き去り又は持ち去り検知を行う際の画像処理量を低減でき、かつ、当該置き去り又は持ち去りの行為者を特定するための参考情報を、迅速に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成する処理手順を示すフロー図である。
【図3】本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去り又は持ち去り発生時刻の監視画像の一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータの一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを表示する処理手順を示すフロー図である。
【図6】本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータの表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の置き去り又は持ち去り検知システム(以下、単に本検知システムという)の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る本検知システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
本検知システムは、制御部100と、制御部100の入力側インターフェース(I/F)である入力部16に接続された外部装置である監視エリアを撮影するカメラ20と、制御部100への指示等を入力するためのキーボード等の入力装置22と、制御部100の出力側インターフェース(I/F)である出力部15に接続された外部装置である静止画や動画を表示する表示装置(モニタ)30を有している。
【0013】
また、本検知システムは、入力部16を介してカメラ20から取り込んだ監視エリアの映像を、映像フレーム毎に撮影時間を付して保存する、例えばハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)などの保存手段を備えたデータ記憶媒体34を有している。ここで、データ記憶媒体34が記憶する監視エリアの映像は、その映像フレームの1枚1枚が、それぞれ、一定時間間隔で撮影された監視エリアの静止画像であり、本実施形態では、これら各映像フレームの画像を監視画像として、画像処理を行う。以下、本実施形態において監視画像というときは、監視エリアを撮影した映像を構成する各映像フレームを言うものとする。
【0014】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)10と、プログラム等が書き込まれたROM(Read Only Memory)(不図示)と、RAM14a、14bとで構成されるコンピュータと、既に述べた入力部16と出力部15と、上記各部を接続するデータバス26と、を備えている。
【0015】
RAM14aは、プログラムの実行に必要な各種設定として、周辺人物抽出部43(後述)が、監視画像上において置き去り物又は持ち去り物の周辺人物の画像を抽出する際の、抽出対象範囲(周辺エリア)に関する情報や、関係度合い算出部44(後述)が、各周辺人物と置き去り物又は持ち去り物との係わり合いの程度を示す数値(関係度合い)を算出する際に用いる距離比重、重なり比重、及び人の向き比重等の情報を記憶する。
【0016】
RAM14bは、画像を記憶する記憶手段であり、記憶する画像の種類により、入力用エリア、表示用エリア、及び保持用エリアの、3つの記憶領域を持つ。この入力用エリアは、入力部16を介してカメラ20にから取得した監視エリアの画像(監視画像)の一時記憶等を行なう領域である。また、保持用エリアは、背景画像を記憶したり、画像処理の際に、監視画像をデータ記憶媒体34から読み込んで記憶する領域であり、表示用エリアは、モニタ30に表示する表示画像の画像データを記憶する領域である。
【0017】
制御部100は、本検知システム全体を制御すると共に、CPU10がプログラムを実行することによって実現する機能実現手段として、置き去り持ち去り検知部50と、画像取得処理部42と、周辺人物抽出部43と、関係度合い算出部44と、ログデータ作成部45と、ログデータ照合部46を備えている。なお、コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。
【0018】
置き去り持ち去り検知部50は、置き去り持ち去り判断部52と発生時刻演算部54とを備える。
置き去り持ち去り判断部52は、カメラ20から入力された現在の監視画像と背景画像との輝度の差分画像を生成し、生成した差分画像に基づいて監視エリア内における異物の出現又は消失を検知したときに、タイマー(不図示)により時間の計測を開始し、その検知状態が所定時間継続したか否かにより、物体の置き去り又は持ち去りがあったか否かを判断する。
【0019】
また、発生時刻演算部54は、置き去り持ち去り判断部52が、置き去り又は持ち去りが発生したものと判断したときに、その判断を行った時刻から、上記所定時間を減算して、当該置き去り又は持ち去りの発生時刻(異物の出現又は消失の時刻)を算出する。
【0020】
画像取得処理部42は、発生時刻演算部54が算出した置き去り又は持ち去りの発生時刻における監視画像、又は、当該発生時刻に算出誤差を含むときは当該発生時刻を挟む一定時間内(例えば、上記算出誤差内)に連続して撮影された所定数の監視画像を、データ記憶媒体34から読み出して、RAM14bの保持用エリアに記憶する。ここで、上記所定数は、発生時刻演算部54が算出する置き去り又は持ち去りの発生時刻の算出誤差に応じて、数枚程度とすることができる。
【0021】
なお、上記所定数の監視画像は、例えば、データ記憶媒体34として所定時間分の映像を連続して録画する映像録画サーバを用い、録画された映像の中から指定した時刻以降の映像を指定した時間分だけ抽出する、いわゆる「さかのぼり録画機能」を利用して取得することもできる。
また、本実施形態のように、データ記憶媒体34に記憶された監視画像をRAM14bの保持用エリアに読み出すのではなく、置き去り持ち去り判断部52が異物を検知して上記タイマーの時間計測を開始した時に、カメラ20が撮影した映像の保存先を、データ記憶媒体34からRAM14bに切り換え、RAM14bの保持用エリアに直接記憶させることもできる。
【0022】
周辺人物抽出部43は、RAM14bの保持用エリアに記憶した置き去り又は持ち去りの発生時刻における監視画像、又は、当該発生時刻を挟む一定時間内に撮影された所定数の監視画像から、置き去り物又は持ち去り物の周辺人物の画像を抽出する。
【0023】
ここで、上記発生時刻における監視画像から上記周辺人物の画像を抽出する場合、当該監視画像に置き去り物又は持ち去り物の画像が写っていないときは、当該監視画像の撮影時刻に最も近い時刻の監視画像であって当該置き去り物又は持ち去り物が写っている監視画像を、データ記憶媒体34から読み込んで、上記周辺人物の画像を抽出するものとする。
また、上記所定数の監視画像から周辺人物の画像を抽出するときは、当該フレームのうち、置き去り物が写っている最も過去のフレーム、又は、持ち去り物が写っている最も新しいフレームの映像から、当該置き去り物又は持ち去り物の周辺人物の画像を抽出するものとする。
【0024】
ところで、周辺人物抽出部43が周辺人物を抽出する範囲(周辺エリア)は、置き去り物又は持ち去り物を中心とした一定の範囲であることが望ましい。
しかしながら、監視画像上では、カメラ20から遠い物体は小さく、近い物体は大きく写ることから、監視画像上における周辺人物の抽出範囲、例えば画素の範囲(画素エリア)を一定とすると、カメラ20から遠い位置の画像(例えば監視画像の上端に近い画像)に対しては周辺エリアが大きく、カメラ20に近い位置の画像(例えば監視画像の下端に近い画像)に対しては周辺エリアが小さくなる。
【0025】
このため、本実施形態では、カメラ20から対象物までの距離に応じて、周辺人物を抽出する画素エリアの大きさを定めた周辺エリア情報を作成し、予めRAM14aに記憶させている。
この周辺エリア情報は、例えば、画面下端から置き去り物画像又は持ち去り物画像の中心画素までの画素数に応じ、画面上部へ行くに従って徐々に画素エリアが小さくなるように、当該中心画素を中心とする円形エリアの半径を画素数で表した情報とすることができる。
【0026】
関係度合い算出部44は、周辺人物と置き去り物又は持ち去り物との関わり合いの程度を示す関連度情報を生成する情報生成手段であり、周辺人物抽出部43が抽出した各周辺人物について、上記関連度情報である数値(関係度合い)を、後述する所定の方法により決定する。この関係度合いは、例えば、上記発生時刻における監視画像から、周辺人物と置き去り物又は持ち去り物までの距離L、周辺人物と置き去り物又は持ち去り物との重なり面積S、所定の方向を基準とする周辺人物の向きθを算出し、これらの距離L、面積S、又は向きθから、後記する所定の方法により決定する。
【0027】
なお、本実施形態では、関連度情報を数値(関係度合い)として算出するものとしたが、これに限らず、例えば、上記の距離L、面積S、又は向きθの値に応じて決定されるランク(Aランク、Bランク等)を関連度情報とすることもできる。
【0028】
ログデータ作成部45は、置き去り物の画像、置き去り物の周辺人物の画像、及び周辺人物毎の関係度合いを、置き去り物毎に記録した置き去りログデータ、及び、持ち去り物の画像、持ち去り物の周辺人物の画像、及び周辺人物毎の関係度合いを、持ち去り物毎に記録した持ち去りログデータを生成して、データ記憶媒体34に記憶する。
【0029】
ログデータ照合部46は、データ記憶媒体34が記憶する置き去りログデータ及び持ち去りログデータに含まれた置き去り物の画像と持ち去り物の画像とを照合し、同一物をそれぞれ置き去り物及び持ち去り物とする置き去りログデータ及び持ち去りログデータを特定する。また、上記特定した置き去りログデータ及び持ち去りログデータにそれぞれ記録されている周辺人物同士を照合し、当該置き去りログデータ及び持ち去りログデータの両方に周辺人物として記録されている同一人物を特定する。
【0030】
本検知システムは上記の構成を備え、ユーザによる電源投入の後、カメラ20が撮影した監視エリアの映像を、入力部16を介してデータ記憶媒体34に記憶する。
このとき、置き去り持ち去り判断部52は、監視画像毎に背景画像との輝度の差分画像を生成し、当該差分画像に基づいて異物の出現又は消失を検知する。そして、当該検知から所定時間経過後に、当該異物について置き去り又は持ち去りが発生したものと判断する。
【0031】
次に、発生時刻演算部54は、その置き去り又は持ち去りの発生時刻(異物の出現又は消失を検知した時刻をいう)を算出し、画像取得処理部42は、当該発生時刻における監視画像又は当該発生時刻を挟む一定時間内(例えば、発生時刻の算出誤差内)に連続して撮影された数枚の監視画像を、データ記憶媒体34から読み出して、RAM14bの保持用エリアに記憶する。
【0032】
続いて、周辺人物抽出部43は、RAM14bの保持用エリアに記憶された上記監視画像から、置き去り物又は持ち去り物(置き去り又は持ち去りの対象である異物をいう)の周辺人物の画像を抽出する。また、関係度合い算出部44が、周辺人物毎に、置き去り物又は持ち去り物との関わり合いの程度を示す数値(関係度合い)を、後述の方法により決定する。
【0033】
そして、その置き去り物又は持ち去り物の画像、上記抽出された周辺人物の画像、及び、当該周辺人物毎の関係度合いをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成し、データ記憶媒体34に記憶する。
【0034】
すなわち、本検知システムでは、置き去り又は持ち去りの発生時刻における監視画像又は当該発生時刻前後における数枚の監視画像のみから、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成することができるため、従来の置き去り監視装置のように膨大な量の画像処理を要しない。その結果、本検知システムは、置き去り物又は持ち去り物の周辺人物の画像と関係度合いとを、置き去り又は持ち去りの行為者特定のための参考情報として、ユーザに対し迅速に提供することができる。
【0035】
生成された置き去りログデータ及び持ち去りログデータは、入力装置22等によるユーザからの指示により、データ記憶媒体34から読み出され、モニタ30に表示される。その際、ログデータ照合部46は、置き去りログデータ及び持ち去りログデータに記録されている置き去り物と持ち去り物との照合や、周辺人物同士の照合を行う。そして、同一物についての置き去りログデータと持ち去りログデータとが関連付けられて、モニタ30に表示される。
【0036】
次に、本検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成する処理手順を、図2のフロー図にしたがって説明する。ここで、監視エリアの背景画像は、予めカメラ20により撮影されて、RAM14bの保持用エリアに記憶されているものとする。
【0037】
まず、制御部100のCPU10は、カメラ20が撮影した監視エリアの映像(すなわち、監視画像)を、入力部16を介して入力する(S101)。ここで、CPU10は、入力した映像を、各映像フレーム毎に撮影時刻を付してデータ記憶媒体34に記憶する。
【0038】
また、置き去り持ち去り判断部52は、入力された各監視画像について、RAM14bの保持用エリアに記憶された背景画像との輝度の差分画像を生成し、生成した差分画像に基づいて、異物の出現又は消失を検知する(S102)。このとき、置き去り持ち去り判断部52は、タイマー(不図示)を起動し、当該異物の検知状態の継続時間を計測する。
【0039】
次に、置き去り持ち去り判断部52は、当該検知状態の継続時間が所定時間を経過したか否かにより、置き去り又は持ち去りが発生していたのか否かを判断する(S103)。
そして、置き去り又は持ち去りが発生していたと判断したときは(S103、Yes)、発生時刻演算部54は、置き去り又は持ち去りが発生していたと判断した時刻から上記所定時間を減算して、当該置き去り又は持ち去りの発生時刻(すなわち、異物の出現又は消失を検知した時刻)を算出する(S104)。
一方、置き去り又は持ち去りが発生していないときは(S103、No)、ステップS101の画像入力に戻る。
【0040】
次に、画像取得処理部42は、データ記憶媒体34から、上記発生時刻における監視画像、又は、上記発生時刻を挟む一定時間内に連続して撮影された所定数の監視画像を読み出し(S105)、周辺人物抽出部43は、読み出された監視画像から、置き去り物又は持ち去り物の周辺の人物(周辺人物)の画像を抽出する(S106)。なお、周辺人物の抽出に際し、周辺人物抽出部43は、上記監視画像において周辺人物を抽出する範囲を、RAM14aが記憶する周辺エリア情報に基づいて決定する。
【0041】
続いて、関係度合い算出部44は、各周辺人物の、置き去り物又は持ち去り物との関係度合いを算出し(S107)、ログデータ作成部45は、上記読み出した監視画像から置き去り物又は持ち去り物の画像を抽出して、置き去り物の画像と、置き去り物の周辺人物の画像と、各周辺人物の関係度合いとを含む置き去りログデータ、又は、持ち去り物の画像と、持ち去り物の周辺人物の画像と、各周辺人物の関係度合いとを含む持ち去りログデータを生成して、データ記憶媒体34に記憶した後(S108)、ステップS101の画像入力に戻る。
【0042】
ここで、ステップS107において算出する関係度合いrは、各周辺人物の、置き去り物又は持ち去り物との距離L、置き去り物又は持ち去り物との重なり面積S(例えば、当該人物と置き去り物又は持ち去り物との、重なりの画素数)、及び、当該人物の向きθ(例えば、当該発生時刻を挟む一定時間の監視画像を記憶しているので、記憶されている数枚の監視画像から推定される当該人物の進行方向に対する当該人物から見た置き去り物又は持ち去り物の方向の角度、若しくは、当該人物の顔又は視線の方向に対する当該人物から見た置き去り物又は持ち去り物の方向の角度)から、次のように決定することができる。
【0043】
すなわち、置き去り物又は持ち去り物の周辺エリアに存在する周辺人物をn(1〜N)とし、各周辺人物nの関係度hを、置き去り物又は持ち去り物までの距離L、置き去り物又は持ち去り物との重なり面積S、人物の向きを表す角度θから、次式により算出する。
【0044】
【数1】

【0045】
ここで、α、α、αθは、それぞれ、距離L、重なり面積S、人の向きθの重み係数である。次に、全ての周辺人物に対して関係度hを算出した後、各周辺人物nの関係度合いrを、次式により算出する。
【0046】
【数2】

【0047】
なお、上記の重み付け係数は、「距離比重α」、「重なり比重α」、及び「人の向き比重αθ」として、予めその値を、例えば実験により決定し、RAM14aに記憶させておくことができる。例えば、閑散としているエリアでは、当該人物が少ないと考えるため、距離比重を小さくすればよいし、逆に、混雑しているエリアでは、当該人物が多くなると考えるため、距離比重を大きくすればよい。
【0048】
また、周辺人物の行動パターン、例えば手の動きや身体の向きの移動等を解析し、手や身体の移動方向と、当該周辺人物から見た置き去り物又は持ち去り物の方向との為す角度φを、関係度合いrの算出に反映するものとしてもよい。これにより、関係度合いrの算出精度を高めることができる。
【0049】
次に、本検知システムにより作成される置き去りログデータ及び持ち去りログデータの例について説明する。
図3は、本検知システムにおける、置き去り又は持ち去り発生時刻の監視画像の一例を示す図である。
図3中央の右上部分に置き去り物であるカバン60があり、周辺人物を抽出する範囲である周辺エリア62が、当該カバンを中心とする点線の円により示されている。この周辺エリア62内には、3人の人物64a、64b、64cが写り込んでおり、これらの人物64a、64b、64cが周辺人物として特定される。そして、当該監視画像から、人物64a、64b、64cの画像が周辺人物の画像として抽出される。
【0050】
図4は、本検知システムにおける置き去りログデータ及び持ち去りログデータの一例を示す図である。なお、図4Aは置き去りログデータの一例を、図4Bは持ち去りログデータの一例を示している。
【0051】
置き去りログデータ(図4A)は、例えば、表形式で構成されており、各置き去り物についての情報が行毎に記録されている。各行の最左列には置き去り物の画像が記録されており、その右側に、周辺人物の画像と関係度合いとが上下に記録されている。
なお、図4Aの置き去りログデータの最上行(タイトル行除く)は、図3に示した監視画像に基づいて作成された置き去りログデータであり、図3の周辺エリアから抽出された3人の人物64a、64b、64cの画像が、周辺人物の画像として記録されている。
【0052】
また、持ち去りログデータ(図4B)は、図4Aに示す置き去りログデータと同様の構成を有しており、最左列には、置き去り物の画像に代わって持ち去り物の画像が記録されている。
【0053】
次に、置き去りログデータ又は持ち去りログデータをモニタ30に表示する処理手順を、図5に示すフロー図にしたがって説明する。
処理を開始すると、制御部100のCPU10は、データ記憶媒体34が記憶する置き去りログデータ及び持ち去りログデータに記録されている置き去り物画像及び持ち去り物画像を、モニタ30に表示する(S201)。
【0054】
モニタ30に表示された置き去り物画像及び持ち去り物画像に対し、ユーザは、入力装置22を用いて、詳細情報を表示させたい置き去り物又は持ち去り物を選択することができる。
【0055】
ユーザが、置き去り物又は持ち去り物を選択すると、ログデータ照合部46は、ユーザが選択した置き去り物又は持ち去り物(ユーザ選択物)の画像と、置き去りログデータに記録されている置き去り物画像及び持ち去りログデータに記録されている持ち去り物画像とを照合し、当該ユーザ選択物についての置き去りログデータ及び/又は持ち去りログデータを特定する(S202)。
【0056】
次に、上記ユーザ選択物をそれぞれ置き去り物及び持ち去り物とする置き去りログデータ及び持ち去りログデータがあるか否か(ユーザ選択物に係る置き去りログデータ及び持ち去りログデータがあるか否か)を判断し(S203)、そのような置き去りログデータ及び持ち去りログデータがあるときは(S203、Yes)、当該置き去りログデータに記録されている周辺人物と当該置き去りログデータに記録されている周辺人物を照合し(S204)、当該置き去りログデータ及び持ち去りログデータの内容と周辺人物の照合結果とを、モニタ30に表示して(S205)、処理を終了する。
【0057】
これにより、ユーザは、表示された置き去りログデータ及び持ち去りログデータにそれぞれ含まれた周辺人物の画像から、例えば、手荷物を忘れた人がその手荷物を取りに来た(置き去り行為者と持ち去り行為者が同じ)のか、それとも全く関係のない人物がその手荷物を持っていってしまった(置き去り行為者と持ち去り行為者が異なる)のかを判断して、犯罪検知の参考情報とすることができる。また、この判断には、モニタ30に表示された各周辺人物の関係度合いを利用することができるので、置き去り行為者と持ち去り行為者との一致・不一致を精度良く判断することができる。
【0058】
一方、ステップS203において、上記ユーザ選択物をそれぞれ置き去り物及び持ち去り物とする置き去りログデータ及び持ち去りログデータがないときは(S203、No)、ステップS202において特定された、ユーザ選択物についての置き去りログデータ又は持ち去りログデータの内容を、モニタ30に表示して(S206)、処理を終了する。
【0059】
これにより、ユーザは、例えば、落し物をした人がその落し物を引き取りに来た時に、当該落し物についての置き去りログデータを表示し、表示される周辺人物(置き去り行為者の候補)の画像やその関係度合いを、落し物を返却する際の参考情報とすることができる。
【0060】
図6は、本検知システムにおける、置き去りログデータ又は持ち去りログデータの表示画面の一例を示す図である。
図6Aは、モニタ30に表示される置き去り物画像及び持ち去り物画像の例であり、図6Bは、選択された置き去り物又は持ち去り物についての、置き去りログデータ及び持ち去りログデータの表示例である。
【0061】
上述の表示処理を開始すると、図5のステップS201により、例えば図4A及び図4Bに示した置き去りログデータ及び持ち去りログデータに基づいて、これらのログデータに含まれる置き去り物画像及び持ち去り物画像が、図6Aのように、モニタ30に並べて表示される。
【0062】
この表示画面に対し、例えば、ユーザが入力装置22により図示点線の円で囲んだ置き去り物又は持ち去り物を選択すると、そのユーザ選択物についての置き去りログデータ又は持ち去りログデータがモニタ30に表示される(図6B)。ここで、図6Aにおいて点線の円で囲ったユーザ選択物については、当該ユーザ選択物を置き去り物とする置き去りログデータが図4Aの最下行に記録されており、当該ユーザ選択物を持ち去り物とする持ち去りログデータが図4Bの最上行(タイトル行除く)に記録されている。
【0063】
このため、ログデータ照合部46は、図5のステップS203においてユーザ選択物の画像と置き去り物及び持ち去り物の画像とを照合し、ユーザ選択物をそれぞれ置き去り物及び持ち去り物とする置き去りログデータ及び持ち去りログデータとして、上記図4A最下行の置き去りログデータと図4B最上行の持ち去りログデータとを特定する。その結果、これらのログデータが関連付けられ、モニタ30に並べて表示される(図6B)。
【0064】
なお、図5のステップS204における周辺人物の照合結果は、例えば、図6Bに示す表示画面において、置き去りログデータの周辺人物と、当該周辺人物に対応する持ち去りログデータの周辺人物とを線(不図示)で結ぶことにより表示することができる。この場合、図6Bの例では、置き去りログデータにおける関係度合い80%の周辺人物と、持ち去りログデータにおける関係度合い100%の人物とが、線により結ばれて表示されることとなる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、異物の出現又は消失が検知された時刻における監視画像又はその前後に撮影された数枚程度の監視画像のみから、置き去り物又は持ち去り物の周辺人物の画像を抽出して記憶すると共に、各周辺人物の当該置き去り物又は持ち去り物との関わり合いの程度を示す数値(関係度合い)を算出して記憶する。このため、本検知システムは、従来のように膨大な量の画像処理を行うことなく、置き去り行為者又は持ち去り行為者を特定するための参考情報(即ち、周辺人物画像及び関係度合い)を、ユーザに対し迅速に提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
10・・・CPU、14a、14b・・・RAM、15・・・出力部、16・・・入力部、20・・・カメラ、22・・・入力装置、26・・・データバス、30・・・モニタ、34・・・データ記憶媒体、42・・・画像取得処理部、43・・・周辺人物抽出部、44・・・関係度合い算出部、45・・・ログデータ作成部、46・・・ログデータ照合部、50・・・置き去り持ち去り検知部、52・・・置き去り持ち去り判断部、54・・・発生時刻演算部、100・・・制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアを撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、置き去り又は持ち去りの発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有し、監視エリアの撮影画像に基づき置き去り又は持ち去りに係る人物を特定するための処理を行う置き去り又は持ち去り検知システムであって、
前記保存手段から、前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像を取得する画像取得処理部と、
前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像から、置き去り又は持ち去りの対象である異物から所定の距離範囲内にいる周辺人物の画像を抽出する周辺人物抽出部と、
置き去り又は持ち去りの対象である前記異物の画像と前記周辺人物の画像とをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成するログデータ生成部と、
を有する置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像における、前記周辺人物から前記異物までの距離、前記周辺人物と前記異物との重なり面積、又は、前記周辺人物の向きを表す角度を算出し、前記距離、面積、又は角度から、前記周辺人物と前記異物との関わり合いの程度を示す関連度情報を生成する情報生成手段を有し、
前記置き去りログデータ又は持ち去りログデータは、更に、前記周辺人物の前記関連度情報を含む置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記置き去りログデータに含まれている前記異物の画像と、前記持ち去りログデータに含まれている前記異物の画像とを照合するログデータ照合部を有し、
前記照合の結果に基づき、同一物の画像をそれぞれ置き去り及び持ち去りに係る異物の画像として含む前記置き去りログデータと持ち去りログデータとを、関連付けて表示手段に表示する置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記ログデータ照合部は、同一物の画像をそれぞれ置き去り及び持ち去りに係る異物の画像として含む前記置き去りログデータ及び持ち去りログデータについて、当該置き去りログデータに含まれている周辺人物の画像と当該持ち去りログデータに含まれている周辺人物の画像とを照合し、
当該照合の結果に基づき、同一人物である周辺人物を関連付けて表示手段に表示する置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項5】
監視エリアを撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、置き去り又は持ち去りの発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有し、監視エリアの撮影画像に基づき置き去り又は持ち去りに係る人物を特定するための処理を行う置き去り又は持ち去り検知システムにおける置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法であって、
前記保存手段から、前記発生時刻に撮影された監視エリアの撮影画像を取得する工程と、
前記取得する工程において取得された撮影画像から、置き去り又は持ち去りの対象である異物から所定の距離範囲内にいる周辺人物の画像を抽出する工程と、
置き去り又は持ち去りの対象である前記異物の画像と、前記抽出する工程において抽出された前記周辺人物の画像とをそれぞれ含む、置き去りログデータ又は持ち去りログデータを生成する工程と、
を有する置き去り又は持ち去り検知記録の生成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−235300(P2012−235300A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102218(P2011−102218)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】