説明

置き敷き用タイルユニット

【課題】日光の熱による接着劣化が防止された置き敷き用タイルユニットを提供する。
【解決手段】樹脂マット10にアルミニウム板30を介してタイル40を接着してなる置き敷き用タイルユニット50。アルミニウム板30に開口32が設けられ、樹脂マット10のリング部18に注入された接着剤28がタイル40の裏面に直に接している。リング部18内の梁状部20が接着剤28内に埋没することにより、タイル40と樹脂マット10とが強固に一体化される。タイル40の熱はアルミニウム板30を介して放散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂マットの上面側にタイルを一体化してなる置き敷き用タイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バルコニー、プールサイドなどに置き敷きされる置き敷き用タイルユニットとして、樹脂マットの上面に磁器タイルを接着したものが広く用いられている。
【0003】
第8図は、従来の置き敷き用タイルユニット10の代表的な一例(実用新案登録第2551990号)を示す縦断面図、第9図はその樹脂マットの平面図である。
【0004】
樹脂マット1は、タイル2を敷設するための基台となるものであり、該タイル2の平面形状に合わせた正方形状のタイル取付部3が縦3列、横3列に配置されている。各タイル取付部3には、複数の縦桟4及び横桟5が格子状に渡され、碁盤目状に複数個の通孔6が形成されている。樹脂マット1の隣接する2辺には、隣合う樹脂マット1を連結するための連結用の係止片7が形成されている。複数の樹脂マット1を連結する際には、該係止片7を連結すべき樹脂マット1の縦桟4又は横桟5等に係止させる。
【0005】
樹脂マット1の裏面側には、前記縦桟4及び横桟5が交差する格子部分に、円柱形状の脚片8が形成され、この脚片8によって、置き敷き用タイルユニット9の下側に排水空間8aが形成される。タイル2は、各タイル取付部3の上面に接着剤によって接着されている。この接着剤としてはエポキシ系接着剤、変性シリコン系接着剤などが用いられている。
【0006】
同様のタイルユニットは、特許第2783127号などにも記載され、また、各種のものが市販されている。
【特許文献1】実用新案登録第2551990号公報
【特許文献2】特許第2783127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
置き敷き用タイルユニット9を日当りの良い箇所に置き敷きした場合、特に夏季などにあっては、直射日光によりタイル2が熱くなり、その熱でタイル2と樹脂マット1とを接着している接着剤が劣化するおそれがある。
【0008】
本発明はかかる直射日光の熱による接着剤の劣化が防止(抑制を包含する。)される置き敷き用タイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の置き敷き用タイルユニットは、樹脂マットの上面側にタイルを一体化してなる置き敷き用タイルユニットにおいて、該樹脂マットとタイルとの間にタイルよりも熱伝導率の高い高熱伝導率材を介在させたことを特徴とするものである。
【0010】
この高熱伝導率材としては金属板特にアルミニウム板が好ましい。
【0011】
この高熱伝導率材は、タイル間の目地に沿って延在するスリットを有することが好ましい。
【0012】
本発明では、樹脂マットは、上下方向に貫通する通孔を有しており、前記高熱伝導率材は、該通孔を通って下方に延出した垂下片を有する構成としてもよい。この場合、樹脂マットの下端と前記垂下片の下端とが面一状となっている構成としてもよい。
【0013】
本発明では、タイルの少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の置き敷き用タイルユニットは、樹脂マットとタイルの間に高熱伝導率材を介在させているので、タイルが日光照射等によって昇温しようとすると、この熱が高熱伝導率材を伝わって放散されるようになるので、タイルの昇温が抑制される。これにより、タイルを樹脂マットと一体化させるための接着剤の劣化が防止される。
【0015】
なお、樹脂マットに通孔が設けられていると、高熱伝導率材の熱がこの通孔を介して放散されるので、タイルの昇温がより十分に抑制される。
【0016】
高熱伝導率材として金属板を用いると、タイルを補強することができ、タイルの割れが防止される。
【0017】
金属板としてアルミニウム板を用いると、熱伝導率が高いので、タイルの昇温をより十分に抑制することができるとともに、錆びにくいので好適である。金属板としては、鉄、銅などがあるが、錆が発生することがあるので、アルミニウムが最も好ましい。
【0018】
なお、高熱伝導率材から下方に垂下片を延設すると、この垂下片が放熱板として機能し、タイルの昇温をより十分に抑制することができる。
【0019】
垂下片の下端を樹脂マットの下端と面一にすると、置き敷き用タイルユニットを敷設したときに垂下片の下端も下地面に当接する。このため、高熱伝導率材の熱が下地面に伝達するようになり、タイルの昇温がより十分に抑制される。
【0020】
高熱伝導率材に、タイル目地に沿うスリットを設けると、該スリットを介して、タイル上面から水を樹脂マットの下側に流し落すことができる。
【0021】
本発明では、タイルの少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっている構成としてもよい。この場合、タイルが日光の照射を受けても、タイル上面の熱がタイルの下面側へ伝わることが抑制される。これにより、タイルを接着している接着剤の劣化が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
第1図は実施の形態に係る置き敷き用タイルユニット50の一部破断平面図、第2図はこの置き敷き用タイルユニット50の分解斜視図、第3図は樹脂マットの一部の斜視図、第4図は置き敷き用タイルユニット50の一部の縦断面図、第5図はアルミニウム板の斜視図である。
【0023】
この置き敷き用タイルユニット50に用いられている樹脂マット10は、多数の縦桟12及び横桟14から成る格子状の部材であって、各縦桟12,横桟14の交差部に脚16が裏面側(図では上側)に突出形成されている。なお、この樹脂マット10は、9枚(3×3=9枚)のタイルを敷設する大きさのものとなっている。
【0024】
各縦桟12,横桟14の交差部であって且つ脚16が形成されていない部位にはリング部18が形成されている。リング部18は一定寸法だけ裏面側に突出されている。
【0025】
リング部18の内部は、タイルと樹脂マット10との固着のための接着剤を注入して溜めるための接着剤溜め部である。この接着剤溜め部は、第3図に明瞭に図示の通り樹脂マット10を厚み方向に貫通する開口として設けられている。硬化した接着剤と樹脂マット10との結合強度を増大させるために、リング部18内には、硬化した接着剤の係止部として、桟12,14を延長した形状の十字形上の梁状部20が設けられている。
【0026】
後述の通り、リング部18内に充填されて固化し、塊となった接着剤は、梁状部20に対して係合状態となり、この機械的な係合作用によって樹脂マット10に対ししっかり保持される。
【0027】
尚、リング部18はタイル1枚分のスペースに対して4個所設けられている。
【0028】
この樹脂マット10に対して、第4図の如くアルミニウム板30を介してタイル40を接合することにより置き敷き用タイルユニット50が製造される。
【0029】
このアルミニウム板30には、各リング部18と重なるようにリング部18の内径と同径の開口32が設けられている。
【0030】
アルミニウム板30を介してタイル40を樹脂マット10に接着するには、規定枚数(この場合は9枚)のタイル40を裏返しにした状態で整列する。このタイル22の裏面上に、アルミニウム板30を重ね、さらにその上に樹脂マット10を裏返し状態で重ねる。次に、接着剤28をリング部18及び開口32内に注入する。この接着剤28は、開口32を通ってタイル40の裏面に直に接触する。この接着剤28を硬化させることにより、タイル40が樹脂マット10に強固に接合される。即ち、この接着剤28はタイル40に対しなじみの良いものであり、強力に付着している。また、接着剤28の硬化物は、梁状部20によって樹脂マット10に強固に一体化されている。従って、タイル40は樹脂マット10に対し極めてしっかり結合される。
【0031】
樹脂マット10には、隣接する置き敷き用タイルユニット50同士を連結するためのフック部29が設けられている。このフック部29は、樹脂マット10の隣り合う2辺から延出した鉤状のものである。
【0032】
なお、この実施の形態では、アルミニウム板30にはタイル40,40間の目地に沿って延在するスリット33が設けられている。このスリット33は、目地に入り込んできた水や粒状物などを置き敷き用タイルユニット50の下側へ落し込むためのものである。
【0033】
このように構成された置き敷き用タイルユニット50にあっては、タイル40と樹脂マット10との間にアルミニウム板30が介在しているので、タイル40が直射日光等によって昇温しようとした場合、タイル40の熱がアルミニウム板30に伝わって逃げるので、タイル40の昇温が抑制される。特に、この実施の形態ではアルミニウム板30の下面の多くの部分が通孔26に対面し、大気に露呈している。このため、アルミニウム板30から通孔26を介して熱が大気中に放散され易い。また、アルミニウム板30に垂下片31が設けられているので、この垂下片31からも熱が大気中に放散され易い。
【0034】
このようなことから、タイル40やアルミニウム板30の昇温が十分に抑制され、タイル40やアルミニウム板30を接着している接着剤の劣化が十分に防止される。
【0035】
第6図(a)は別の実施の形態に係る置き敷き用タイルユニットの一部の縦断面図、第6図(b)はこの置き敷き用タイルユニットに用いられているアルミニウム板30Aの下方からの斜視図である。
【0036】
この実施の形態では、アルミニウム板30Aには、切り起し等によって垂下片35が下方に突設されている。この垂下片35は、樹脂マット10の縦桟12と横桟14とが囲まれる通孔26を通って下方に延設されている。第6図(a)の通り、この垂下片35の下端は、樹脂マット10の脚16の下端と面一となっている。
【0037】
第6図の置き敷き用タイルユニットのその他の構成は上記置き敷き用タイルユニットと同様である。
【0038】
この実施の形態によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、この第6図の実施の形態では、垂下片35が下地面(例えば、バルコニーのコンクリート面)に当接するので、垂下片35を介してアルミニウム板30の熱が下地面に伝熱する。このようなことから、タイル40やアルミニウム板30の昇温がさらに十分に抑制され、タイル40やアルミニウム板30を接着している接着剤の劣化が十分に防止される。
【0039】
上記実施の形態では、アルミニウム板30,30Aは樹脂マット10と同一大きさとなっているが、本発明では第7図に示すように、タイル40と略同一大きさのアルミニウム板30Bをタイル40と同数枚用いてもよい。各アルミニウム板30Bには、樹脂マット10のリング部18と重なり合うように開口32が設けられている。
【0040】
本発明では、タイルとして少なくとも上面部が微細気孔を有し、それ故に熱伝導性が低いものとなっているタイルを用いてもよい。このタイルとしては、好ましくは、タイル全体が微細気孔を有し、タイル全体として多孔状の低熱伝導性となっているものが好ましい。
【0041】
タイルとしては、比重が1.3〜1.8特に1.35〜1.65のものが好ましい。比重が1.8以下であると、タイルの熱伝導性が十分に低いものとなる。ただし、比重が1.3よりも小さくなると、タイルの強度が不足し、タイルが割れ易くなる。
【0042】
なお、比重が小さいタイルは、割れ易いが、アルミニウム板30などの金属板に接着することにより、割れが防止される。
【0043】
タイルをこのように低比重の多孔状にするには、タイル製造時に原料にSiCなどの発泡剤を添加して焼成時に発泡させたり、セラミックよりなる中空バルーン(例えば、アルミナバルーン)を配合する方法などを採用することができる。
【0044】
このタイルは、釉薬層を有した施釉タイルであってもよく、釉薬層を有しない無釉タイルであってもよい。ただし、施釉タイルであれば、くつ下やストッキングが引掛って破れることが十分に防止される。
【0045】
このように釉薬層を有するタイルの場合、釉薬層内に微細粒子を分散含有させるか、釉薬層とタイル素地との間に微細粒子を存在させることにより、釉薬層表面を凹凸面としてもよい。
【0046】
釉薬層表面が凹凸面となっていると、タイルユニットに散水した場合、タイル表面に水膜が形成され、十分な打ち水効果が得られる。また、釉薬層表面が凹凸面となっていると、足裏とタイルとの接触面積が小さくなり、足裏で感取される熱さ又は冷たさが緩和される。
【0047】
このような微細粒子としては、長石、ガラス粒子、シリカ、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸化合物などが例示される。微細粒子の平均粒径(JIS篩による。)は、10〜50μm程度が好適である。釉薬層内に微細粒子を分散含有させる場合、微細粒子の配合量は5〜30重量%程度が好適である。
【0048】
微細粒子を釉薬層とタイル素地との間に介在させて釉薬層表面を凹凸面とする場合も、微細粒子の材料は上記と同様である。平均粒径は1〜200μm程度が好ましい。この微細粒子は、釉掛け前にタイル素地上に散布等により供給され、その後、釉掛けされ、焼成される。この場合、微細粒子は、タイル素地表面100cm当り、0.1〜1g程度存在させるのが好ましい。釉薬層表面の凹凸面の表面粗さの好適範囲は上記と同様である。
【0049】
本発明では、釉薬層に銀、酸化チタンなどの抗菌材を配合してもよい。これにより、釉薬層にカビが付くことが防止される。酸化チタンを配合した場合には、光触媒作用による汚れ付着防止効果も奏される。
【0050】
タイルやアルミニウム板を接着するための接着剤としては、エポキシ系接着剤、変成シリコーン系接着剤などを用いることができる。樹脂マットの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)などの合成樹脂マットが好適である。
【0051】
上記実施の形態では複数枚のタイルをアルミニウム板に接着しているが、第10図の如く、アルミニウム板と略同一の大きさの1枚のタイル60をアルミニウム板30に接着してもよい。また、接着剤の接着強度によっては、梁状部20を設けなくてもよい。
なお、参考のために各種材料の熱伝導率を次の表1に示す。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態に係る置き敷き用タイルユニットを示す平面図である。
【図2】図1の置き敷き用タイルユニットの分解図である。
【図3】樹脂マットの一部の断面図である。
【図4】図1の置き敷き用タイルユニットの一部の断面図である。
【図5】アルミニウム板30の斜視図である。
【図6】別の実施の形態の説明図である。
【図7】アルミニウム板30Bの斜視図である。
【図8】従来のタイルユニットの樹脂マットの平面図である。
【図9】従来のタイルユニットの断面図である。
【図10】異なる実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂マット
2 タイル
3 タイル取付部
9 タイルユニット
10 樹脂マット
30,30A,30B アルミニウム板
40,60 タイル
50 置き敷き用タイルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂マットの上面側にタイルを一体化してなる置き敷き用タイルユニットにおいて、
該樹脂マットとタイルとの間にタイルよりも熱伝導率の高い高熱伝導率材を介在させたことを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項2】
請求項1において、該高熱伝導率材は金属板であることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項3】
請求項2において、該金属板はアルミニウム板であることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記高熱伝導率材は、タイル間の目地に沿って延在するスリットを有することを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項5】
請求項4において、前記樹脂マットは、上下方向に貫通する通孔を有しており、前記高熱伝導率材は、該通孔を通って下方に延出した垂下片を有することを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項6】
請求項5において、前記樹脂マットの下端と前記垂下片の下端とが面一状となっていることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、該タイルの少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっていることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−38447(P2008−38447A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213537(P2006−213537)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】