説明

置換ポリアセチレン及びその製造方法、置換ポリアセチレン自立膜及びその製造方法、二酸化炭素分離膜、伸縮により可逆的に色変化を呈する膜

【課題】自己支持膜性を有し、二酸化炭素分離膜をはじめ様々な利用が可能な、新規の置換ポリアセチレンの合成及び膜の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)〜(3)
【化1】


(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される置換ポリアセチレン。好ましくは、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかである。自己支持膜性を有し、二酸化炭素分離膜の材料として利用可能である。伸縮により可逆的に色変化を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体構造を有する、新規の置換ポリアセチレン及びその製造方法、置換ポリアセチレン自立膜及びその製造方法、気体分離膜、伸縮により可逆的に色変化を呈する膜に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体は、イオンのみからなる液体であり、難揮発性や高い熱安定性などの特徴を持つ。このため、電解質、溶媒、分離・抽出などのさまざまな分野への応用が研究されている。
【0003】
近年、二酸化炭素がイオン液体中に溶解することが見出された(非特許文献1)。また、イオン液体にアミノ基を導入することにより二酸化炭素を溶解する性能が向上された(非特許文献2)。このような性質を有するイオン液体は、二酸化炭素分離膜に有望な材料として期待される。イオン液体を高分子化し、丈夫な自己支持膜を得ることができれば気体分離などさまざまな機能が期待できる。しかし、従来の技術では丈夫な膜ができていない。
【0004】
一方、置換ポリアセチレンは、優れた自己支持膜性を持ち、大きな気体透過性を示すことが知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−127438号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L.A.Blanchard, D.Hancu, E.J.Beckman, J.F.Brennecke, Nature, 399, 28 (1999)
【非特許文献2】E.D.Bates, R.D.Mayton, I.Ntai, J.H.Davis,Jr., J.Am.Chem.Soc., 6, 926 (2002)
【非特許文献3】T.Masuda, Y.Iguchi, B.Z.Tang, T.Higashimura, Polymer, 29, 2041 (1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、自己支持膜性を有し、二酸化炭素分離膜をはじめさまざまな利用が可能な、新規の置換ポリアセチレン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の置換ポリアセチレンは、一般式(1)〜(3)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される。
【0011】
本発明の請求項2に記載の置換ポリアセチレンは、請求項1において、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかである。
【0012】
本発明の請求項3に記載の置換ポリアセチレン自立膜は、請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の二酸化炭素分離膜は、請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる。
【0014】
本発明の請求項5に記載の伸縮により可逆的に色変化を呈する膜は、請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる。
【0015】
本発明の請求項6に記載の置換ポリアセチレンの製造方法は、一般式(4)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは炭化水素基)で表される置換アセチレンを重合して一般式(5)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)で表される置換ポリアセチレンを得る重合工程と、この置換ポリアセチレンをアニオン交換して一般式(1)〜(3)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される置換ポリアセチレンを得るアニオン交換工程と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項7に記載の置換ポリアセチレン製造方法は、請求項6において、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかである。
【0023】
本発明の請求項8に記載の置換ポリアセチレンの製造方法は、請求項6又は7において、前記重合工程において、触媒として[Ru(nbd)Cl]とトリエチルアミンを用い、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いる。
【0024】
本発明の請求項9に記載の置換ポリアセチレンの製造方法は、請求項6〜8のいずれかにおいて、前記アニオン交換工程において、溶媒として水あるいはメタノールを用いる。
【0025】
本発明の請求項10に記載の置換ポリアセチレン自立膜の製造方法は、請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンを製膜して自立膜を得る製膜工程を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項11に記載の置換ポリアセチレン自立膜の製造方法は、請求項10において、前記製膜工程において、溶媒としてメタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドのいずれかを用いる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、自己支持膜性を有し、二酸化炭素分離膜の材料として利用可能な、新規の置換ポリアセチレン及びその製造方法を提供することができる。さらに、本発明の置換ポリアセチレンにより、新規の置換ポリアセチレン自立膜及びその製造方法、気体分離膜、伸縮により可逆的に色変化を呈する膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例3におけるH−NMR測定(溶媒:DMSO)の結果を示すチャートである。
【図2】実施例6における膜の熱安定性の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例9における伸縮と色の変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の請求項1記載の置換ポリアセチレンは、イミダゾリル基とイオン液体構造を有し、一般式(1)〜(3)
【0030】
【化5】

【0031】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される。ここで、Rは、任意の炭化水素基であって特定のものに限定されないが、製造の容易さを考慮すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかが好ましい。また、nは、任意の自然数であって特定のものに限定されないが、本発明の置換ポリアセチレンからなる自立膜の強度等を考慮すると、10以上が好ましく、さらには15以上が好ましい。なお、R及びnについては、以下の記載においても同様である。
【0032】
本発明の置換ポリアセチレンを製造するには、はじめの重合工程において、一般式(4)
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、Rは炭化水素基)で表される置換アセチレンを重合して一般式(5)
【0035】
【化7】

【0036】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)で表される置換ポリアセチレンを得る。この重合工程において用いられる触媒と溶媒は、置換アセチレンを重合することのできるものであれば特定のものに限定されないが、反応効率等を考慮すると、触媒として[Ru(nbd)Cl](nbd=ノルボルナジエン)とトリエチルアミン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドが好適に用いられる。
【0037】
つぎのアニオン交換工程において、重合工程で得られた置換ポリアセチレンをアニオン交換して一般式(1)〜(3)
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される置換ポリアセチレンを得る。すなわち、BrアニオンをBFアニオン、PFアニオン、又は(CFSONアニオン(TfNアニオン)に交換する。ここでの溶媒は水が好適に用いられ、アニオン交換が終了した置換ポリアセチレンは沈殿物として得られる。
【0040】
本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、本発明の置換ポリアセチレンからなる。そして、本発明の置換ポリアセチレン自立膜を製造するには、製膜工程において、本発明の置換ポリアセチレンを溶媒に溶解して、キャスト法などにより製膜する。溶媒は、置換ポリアセチレンを溶解できるものであればよく、置換ポリアセチレンの種類に応じて、例えば、メタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドを用いることができる。
【0041】
本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、高い疎水性を有するフレキシブルな自立膜であり、イオン液体と同様に極めて高い熱安定性を示す。また、本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、二酸化炭素に対する高い溶解選択性を示し、高性能な二酸化炭素分離膜として作用する。
【0042】
さらに、本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、伸縮により可逆的に色変化を呈する。この色変化は瞬間的である。このように、本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、印加した張力に応じて色が瞬間的・可逆的に変化するため、力学的な力を色の変化で見えるようにすることができ、釣り糸や梱包、建築物などの構造体のストレスを検知するセンサーとしての応用が期待される。
【0043】
このほか、本発明の置換ポリアセチレン自立膜は、気体分離膜、有機化合物分離膜、異性体分離膜、印刷工程での帯電防止コーティング剤としての応用が期待される。また、リチウム電池、太陽電池、アクチュエータなどに用いられるポリマー電解質としての用途が考えられる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0045】
以下、より具体的に、本発明の置換ポリアセチレン及びその製造方法、置換ポリアセチレン自立膜及びその製造方法、二酸化炭素分離膜、伸縮により可逆的に色変化を呈する膜について説明する。
【実施例1】
【0046】
EBBuImBrモノマーの合成
【0047】
【化9】

【0048】
上記のスキーム1にしたがって合成を行った。三方コックフラスコに入れたNaH(0.13mol,オイル含有)をヘキサンにより洗浄し、窒素置換後、0℃でイミダゾール(7g,0.1mol)のDMF溶液(50ml)をシリンジでゆっくり入れ、生成したHを開放した。1時間反応させた後、ブロモベンジルブロマイド(25g,0.1mol)のDMF溶液(40ml)を入れ、60℃で一晩反応させた。反応溶液を濃縮し、DMFを除去した後ジクロロメタンを加えた。塩をろ別した後、水により洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、シリカカラムクロマトグラフィ及びジクロロメタン/酢酸エチル混合溶媒中での再結晶化により生成した。生成物として、N−(4−ブロモベンジル)イミダゾール(化合物1)を得た。
化合物1:
外観:白色固体
Rf:0.38(クロロホルム:MeOH=8:1)
収量:18.3g,収率:76%
H NMR(CDCl,270MHz,ppm):7.53(s,1H,N−CH=N),7.49−7.46(d,2H,Ar−H),7.09(s,1H,N−CH=CH−N),6.87(s,1H,N−CH=CH−N),7.03−7.00(d,2H,Ar−H)
【0049】
【化10】

【0050】
つぎに、上記のスキーム2にしたがって合成を行った。N−(4−ブロモベンジル)イミダゾール(化合物1)(18g,0.08mol)と触媒(Pd(PPhCl 0.1mol%,PPh 0.4mol%,CuI 0.3mol%)を2方コックフラスコに入れ、窒素置換後、トリエチルアミン(50ml)を入れた。原料が完全に溶解するまでDMFを加え、1時間攪拌してからトリメチルシリルフェニルアセチレン(13.2ml,0.09mol)を入れて60℃で24時間反応させた。溶媒を除去した後、酢酸エチルを加えて溶解させた。不溶物をろ別した後、飽和食塩水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムにより水分を取り除いた。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、N−(4−トリメチルシリルエチニルベンジル)イミダゾール(化合物2)を白色固体として得た(収率68%)。得られた化合物2とKCO(5倍モル)をメタノールに溶解させ、室温で一晩反応させた。溶媒を除去した後、酢酸エチルを加えて溶解させた。不溶物(塩)をろ別してから飽和食塩水溶液により洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去した後、濃縮した。得られたN−(4−エチニルベンジル)イミダゾール(化合物3)をシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、さらにメタノール中で再結晶化を行い、結晶を得た。
化合物3:
収率93%,収量8.2g
Rf:0.5(クロロホルム:メタノール=8:1)
H NMR(CDCl,270MHz,ppm):7.55(s,1H,N−CH=N),7.49−7.46(d,2H,Ar−H),7.11(s,1H,N−CH=CH−N),7.08−7.10(d,2H,Ar−H),6.89(s,1H,N−CH=CH−N),5.12(s,2H,C−CH−N),3.09(s,1H,C≡H)
【0051】
【化11】

【0052】
つぎに、上記のスキーム3にしたがって合成を行った。反応後の溶媒を濃縮した後、過剰のエーテルに滴下し、沈殿を得た。沈殿物を再びエーテルで2回洗い、遠心分離により回収した。1−(4−エチニルベンジル)−3−ブチルイミダゾリウムブロミド(EBBuImBr)モノマー(化合物4)は白色固体として得られた。
化合物4:
収率:62%
H NMR(CDCl,270MHz,ppm):10.75(s,1H,N−CH=N),7.49(s,4H,Ar−H),7.35(s,1H,N−CH=CH−N),7.29(s,1H,N−CH=CH−N),5.69(s,2H,C−CH−N),4.31−4.25(t,N−CH−CH−),3.13(s,1H,C≡H),1.95−1.84(m,2H,N−CH−CH−),1.44−1.30(m,2H,CH−CH−CH),0.98−0.92(t,3H,CH−CH−CH
【実施例2】
【0053】
EBBuImBrモノマーの重合
【0054】
【化12】

【0055】
上記のスキーム4にしたがってEBBuImBrモノマー(化合物4)の重合を行った。触媒として[Ru(nbd)Cl](nbd=ノルボルナジエン)とトリエチルアミン(TEA)を用いた。24時間反応させた後反応溶液を過剰のアセトンに滴下し、沈澱させた。遠心分離によりポリマーを回収し、乾燥させた。ポリ(1−(4−エチニルベンジル)−3−ブチルイミダゾリウムブロミド)(ポリ(EBBuImBr))は黄色ポリマーとして得られた。
【0056】
【表1】

【実施例3】
【0057】
ポリ(EBBuImBr)のアニオン交換反応
下記のスキーム5にしたがって、一晩、ポリマーのアニオン交換を行った。すなわち、BrアニオンをBFアニオン又は(CFSONアニオン(TfNアニオン)に交換した。時間の経過に伴い沈澱が観測され、アニオン交換が進行していると考えられた。沈殿は、すべて黄色のものであった。アニオン交換反応前とアニオン交換反応後の重量変化により、アニオン交換率が95以上であることがわかった。
【0058】
【化13】

【0059】
ポリ(EBBuImBr)とアニオン交換反応による得られたポリ(EBBuImTfN)のH−NMR測定を行った(図1)。最も低磁のピークはイミダゾリウム環の−N−CH−N−のプロトンに由来し、このピークがシフトしたことからアニオンが交換されたことが示唆された。この結果と生成したポリマーの量の変化から、アニオンがほぼ完全に交換されたと考えられた。
【0060】
ポリ(EBBuImBr)については、イミダゾリウム環のN−CH−Nに基づくピークが9.30から10.00にシフトし、またアセチレンのプロトンに基づくピーク(4.27)が消えたことから重合が進行したことが確認された。
ポリ(EBBuImBr):
H−NMR(DMSO,270MHz):10.00(1H),7.85(2H),7.47(4H),5.50(3H),4.20(2H),1.77(2H),1.23(2H),0.86(3H)
ポリ(EBBuImBF)については、イミダゾリウム環のプロトンが(特にN−CH−Nに基づくピークが10.00から9.15に)完全にシフトしたことからほぼ完全にアニオン交換されたと考えられた。
ポリ(EBBuImBF):
H−NMR(DMSO,270MHz):9.15(1H),7.68(1H),7.20(2H),7.05(2H),6.68(1H),5.50(1H),5.02(1H),4.13(2H),1.80(2H),1.23(2H),0.84(3H)
ポリ(EBBuImTfN)については、イミダゾリウム環のプロトンが(特にN−CH−Nに基づくピークが10.00から9.15に)完全にシフトしたことからほぼ完全にアニオン交換されたと考えられた。
ポリ(EBBuImTfN):
H−NMR(DMSO,270MHz):9.15(1H),7.68(1H),7.14(2H),7.00(2H),6.70(1H),5.50(1H),5.02(1H),4.13(2H),1.80(2H),1.23(2H),0.84(3H)
【実施例4】
【0061】
ポリマーの溶解性
ポリマーの溶解性を以下の表2に示す。ポリ(EBBuImBF)とポリ(EBBuImTfN)は水に不溶であった。これは、BFアニオンとTfNアニオンが水に不溶であるためと考えられる。また、ポリ(EBBuImTfN)はアセトンとTHFに溶解した。この結果から、アニオン交換により溶解性の制御が可能となることが分かった。
【0062】
【表2】

【実施例5】
【0063】
ポリ(EBBuImBr)、ポリ(EBBuImTfN)とポリ(EBBuImBF)の製膜
【0064】
【化14】

【0065】
ポリ(EBBuImBr)、ポリ(EBBuImTfN)はメタノールに、ポリ(EBBuImBF)はアセトニトリルに溶解してから濾過し、テフロン(登録商標)シート上にキャスト法で製膜し、ゆっくり乾燥させた後、真空乾燥した。ポリ(EBBuImBr)は製膜性が悪く、膜を得ることができなかったが、ポリ(EBBuImTfN)とポリ(EBBuImBF)はフレキシブルな自立膜として得られた。特にポリ(EBBuImTfN)は最も優れた強度とフレキシビリティを示した。このことから大きなアニオンに交換することで製膜性が向上することがわかった。
【実施例6】
【0066】
膜の熱安定性
【0067】
【化15】

【0068】
イオン液体構造を有する置換ポリアセチレンであるポリ(EBBuImBF)とポリ(EBBuImTfN)膜の熱安定性(熱重量測定(TGA測定))を検討した。その結果、イオン液体と同様に高い熱安定性を示し、ポリ(EBBuImBF)の場合は300℃まで、ポリ(EBBuImTfN)の場合は350℃まで、熱分解による重量の減少はほとんど見られなかった。図2は、TGA測定結果を示している。
【実施例7】
【0069】
ポリ(EBBuImTfN)の気体透過性
【0070】
【化16】

【0071】
ポリ(EBBuImTfN)膜に対し、CO/N気体透過性を検討した。ポリ(EBBuImTfN)膜の気体透過を測定し(膜厚θ80μm、25℃における)、その結果を表3に示す。α(PCO2/PN2)は24.8と高い値であり、二酸化炭素分離膜として作用することが分かった。溶解選択性も非常に高かった。これまでの気体透過性ポリマーで最も高い溶解選択性であった。イオン液体構造はポリマーとCOの親和性の向上に有効であることがわかった。
【0072】
【表3】

【実施例8】
【0073】
ポリ(EBBuImBr)のアニオン交換反応(2)
下記のスキーム6にしたがってポリ(EBBuImBr)とKPFの反応によるアニオン交換を行った。反応に伴いポリマーの沈澱が観測され、アニオン交換が進行したと考えられた。
【0074】
【化17】

【実施例9】
【0075】
膜の伸び、伸縮と色の変化
ポリ(EBBuImTfN)にメタノールを少しずつ加え、粘性溶液になるまで溶解させた後、テフロン(登録商標)シート上でキャスト法により製膜し、ゆっくり乾燥させた。その後、真空乾燥により完全に溶媒を除去した。得られた膜を用い、破断伸び率、伸縮と色の変化を検討した。その結果、膜の破断伸び率が200%(2倍伸びることができる)であった。また、両手で膜を軽く伸ばすと、図3に示すように、膜の色が黄色から赤色に瞬間的に変化した。収縮すると色は黄色に戻り、伸縮を繰り返しても可逆的に色変化を呈することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)〜(3)
【化1】

(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される置換ポリアセチレン。
【請求項2】
Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかである請求項1記載の置換ポリアセチレン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる置換ポリアセチレン自立膜。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる二酸化炭素分離膜。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンからなる伸縮により可逆的に色変化を呈する膜。
【請求項6】
一般式(4)
【化2】

(式中、Rは炭化水素基)で表される置換アセチレンを重合して一般式(5)
【化3】

(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)で表される置換ポリアセチレンを得る重合工程と、この置換ポリアセチレンをアニオン交換して一般式(1)〜(3)
【化4】

(式中、Rは炭化水素基、nは自然数)のいずれかで表される置換ポリアセチレンを得るアニオン交換工程と、を備えたことを特徴とする置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項7】
Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基のいずれかである請求項6に記載の置換ポリアセチレン製造方法。
【請求項8】
前記重合工程において、触媒として[Ru(nbd)Cl]とトリエチルアミンを用い、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いる請求項6又は7に記載の置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項9】
前記アニオン交換工程において、溶媒として水あるいはメタノールを用いる請求項6〜8のいずれかに記載の置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の置換ポリアセチレンを製膜して自立膜を得る製膜工程を備えたことを特徴とする置換ポリアセチレン自立膜の製造方法。
【請求項11】
前記製膜工程において、溶媒としてメタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドのいずれかを用いる請求項10に記載の置換ポリアセチレン自立膜の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−163561(P2010−163561A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7964(P2009−7964)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 高分子学会予稿集 57巻2号 平成20年9月9日 社団法人高分子学会発行
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】