説明

置換試薬としてのイオン性の組成物の使用、フッ素化試薬を構成する組成物およびそれを用いる方法

【課題】芳香族求核置換(SNAr)および求核二次置換(SN2)タイプの、求核置換をもたらす新規方法を提供する。一層特定的には、フッ化物誘導体の合成に使用することができる、少なくとも4個の炭素原子を含むイオン性液体または融解塩の、フッ素化反応媒体としての使用に関する。
【解決手段】例示的には、ブチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート等を溶媒とし、フッ化カリウム試剤により、芳香族等の塩素化誘導体を、有利にフッ素化することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、求核置換反応における反応媒体としてのまたは溶媒としてのイオン性化合物の使用に関する。本発明は、一層特に、フルオロ誘導体の製造、またはフッ素による脱離基特にハロゲンもしくは擬ハロゲンの置換に向けられる。
【背景技術】
【0002】
この置換反応は、置換が芳香族核に関して起こるとき芳香族求核置換(SNAR)と称され、そして置換が脂肪族鎖に関して起こるときかつ反応速度論が二次であるすなわち速度が置換試薬の濃度および基質の濃度の両方に依存するとき二次求核置換(SN2)と称される。
【0003】
本発明の興味ある側面の一つは、マイゼンハイマー反応と称される芳香族求核置換反応を改善することに向けられる。
【0004】
式中、マイゼンハイマー反応に関していくつかの基本的事実を思い起こすことは役立ち得る。
【0005】
芳香族求核置換反応は、一般に、次の反応スキームを伴う。すなわち、
− マイゼンハイマー中間体(求核試薬がアニオンであるとき)または等価体と称される中間化合物を形成するように、脱離基を担持する炭素において、求核試薬と芳香族基質の間の結合の生成を伴っての、求核試薬による芳香族基質の攻撃、次いで
− 該脱離基の離脱。
【0006】
SNAR中間体の例が下記に与えられ、しかして
・Rは、あり得る基を表し、
・nは、置換基の数を表し、
・EWGは、電子吸引性基を表し、
・lgは、脱離基または一層特に当該脱離基を表す。
【0007】
【化1】

【0008】
(マイゼンハイマー中間体の例、Nuはアニオン性求核試薬である)
【0009】
【化2】

【0010】
(マイゼンハイマー中間等価体の例、NuHは中性求核試薬である)
このタイプの反応は、ハロゲン化芳香族誘導体を得るために特に有利であり、そして特に一方ではフッ素と他方では芳香族基質に関しての1個またはそれ以上のより高位のハロゲンまたは擬ハロゲンとの間の交換をもたらすために用いられる。
【0011】
それ故、脱離基は、ニトロ基、有利には擬ハロゲンまたは好ましくはハロゲン原子(とりわけ、フッ素の原子番号より大きい原子番号を有する)であり得る。
【0012】
擬ハロゲンは、その離脱によってカルコゲン化アニオン、最も頻繁には酸素化アニオン(アニオン電荷はカルコゲン原子により担持される)を生じる基であって、その酸性度は酢酸の酸性度に、有利には硫酸の第2酸性度に、好ましくはトリフルオロ酢酸の酸性度に少なくとも等しい基であると理解される。酸性度尺度における位置を知るためには、カルボン酸からトリフルオロ酢酸までにわたる中ないし強酸性度についてpKaを参照し、そしてトリフルオロ酢酸(定数1)から始まるハメット定数尺度(図1)、更には本明細書において与えられた酸性度尺度における位置を知ることが適切である。
【0013】
このタイプの擬ハロゲンを例示するために、特に、硫黄担持炭素に関して過ハロゲン化されたスルフィン酸およびスルホン酸並びにカルボキシル官能基に対してαにて過フッ素化されたカルボン酸が挙げられ得る。
【0014】
脱離基がニトロ基であるとき、それは一般に塩素またはフッ素原子により置換される。しかしながら、これらの反応体の大多数は非常に高い温度における操作を必要とし、またメカニズムは必ずしも求核置換であるとは判明しない。更に、ニトロ基の離脱は、窒素の酸素化およびハロゲン化誘導体の形成に通じ、しかしてかかる誘導体は基質に対して特に攻撃性であり、更には爆発性でさえある。
【0015】
芳香族核上に存在するハロゲン原子の別のハロゲン原子による置換を伴う変型に関する限り、それは一般に該核の少なくとも一部分の失活を必要とする。この目的のために、転換されるアリール基は、好ましくは、貧電子であり、そしてベンゼンの電子密度より大きくなくてクロロベンゼン好ましくはジクロロベンゼンの電子密度に非常に近い電子密度を有する。
【0016】
この貧状態は、たとえばピリジンにおいておよびキノリンにおいてのような、芳香族環中のヘテロ原子の存在に因り得る(この場合における貧状態は、6員環を要件とする)。この特定の場合において、貧状態は、置換反応が非常に容易でありそして特別な補助活性化を必要としない程十分に大きい。電子貧状態はまた、この芳香族環上に存在する電子吸引性置換基により誘起され得る。これらの置換基は、好ましくは、M.J.Marchの有機化学参考著作物「Advanced Organic Chemistry」,第3版,Willey出版,1985(特に、第17頁および第238頁参照)に定められているような、誘起効果によりまたはメソメリー効果により電子を吸引する基から選択される。これらの電子吸引性基を例示するために、特に、基NO2、第4級アンモニウム、Rfおよび特にCF3、CHO、CN、COY(式中、Yは塩素、臭素もしくはフッ素原子またはアルキルオキシ基であり得る)が挙げられ得る。
【0017】
上記に述べられたSNAR反応、特にハロゲン−ハロゲン交換のものは、実際、フッ素化芳香族誘導体を得るための主要な合成経路を構成する。
【0018】
SNAR反応はまた、エステル(Nu-はこの場合特にAc−S-またはAc−O-であり、Acはアシル[有利には、1ないし25個の炭素原子を有する]である)、エーテル(Nu-はこの場合特にR−O-であり、Rはアルキルまたはアリール[有利には、1ないし25個の炭素原子を有する]である)、チオエーテル(Nu-はこの場合特にR−S-であり、Rはアルキルまたはアリール[有利には、1ないし25個の炭素原子を有する]である)およびニトリル(Nu-は、CN-である)を製造するために特に興味があり得る。
【0019】
従って、フルオロ誘導体を製造するために最も広く用いられている技法の一つは、ハロゲン化一般に塩素化芳香族誘導体を、そのハロゲンまたは諸ハロゲンを交換するために、1個またはそれ以上の無機源フッ素と反応させることに存する。一般に、たとえばフッ化ナトリウム並びにとりわけカリウム、セシウムおよび/またはルビジウムのフッ化物のような、アルカリ金属フッ化物最もしばしば高原子量のものが用いられる。オニウムフッ化物もまた、使用することができる。
【0020】
一般的に言えば、用いられるフッ化物は、満足な経済的妥協を成すフッ化カリウムである。
【0021】
これらの状況下で、アリールフッ化物、電子吸引性基がグラフトされているアリールまたはそうでなれば自然的に貧電子のアリール(たとえば、ピリジン核のような)を得るために、たとえば仏国追加特許証明書第2,353,516号においておよびChem. Ind. (1978)-56の記事において記載されているもののような数多くの方法が提案されそして工業的に用いられている。
【0022】
しかしながら、基質がこのタイプの合成に特に適応される場合以外は、この技法は不利な点を有し、しかしてそれらの不利な点の中で最も重要なものは、下記において分析されるものである。
【0023】
反応が遅く、また高い滞留時間に因りかなりの投資を必要とする。この技法は、既に挙げられたように、とりわけ低レベルの電子貧状態を有する核の処理のために、一般に250℃、更には300℃の領域、換言すれば最も安定な有機溶媒が分解し始める帯域に達し得る高温にて用いられる。
【0024】
収率は、原子質量がカリウムの原子質量より大きいアルカリ金属のフッ化物のような、特に高価な試薬が用いられなければ、比較的並みのままである。
【0025】
最後に、これらのアルカリ金属の価格に鑑みて、それらの工業的利用は、高い付加価値製品について並びに収率および反応速度論の改善がそれを正当化するとき(そういう場合はまれであるが)のみ正当化され得る。
【0026】
これらの難点を解決または克服するために、数多くの改善が提案されている。かくして、新たな触媒が提案され、そして特に、テトラジアルキルアミノホスホニウム化合物特に独国会社Hoechstおよびその承継人Clariant and Aventisの名称で出願された特許出願(たとえば、USP6,114,589、USP6,103,659、等)に並びに会社Albemarleの名称で出願された特許出願に記載されたものが挙げられ得る。
【0027】
これらの新たな触媒は、認められているように、通常触媒に対していくらかの利点を示すが、しかしそれらの価格および複雑性の割には利点を与えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、本発明の目的の一つは、SNAR反応の反応速度論の実質的改善を可能にする試薬および操作条件を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、SNARの発生場所である核が低レベルの電子貧状態しか有していないときでさえ、SNAR反応の特に改善された反応速度論を可能にする試薬を提供するおよび操作条件を与えることである。
【0030】
本発明の別の目的は、イオン性求核試薬の改善溶解度を可能にするところの求核置換用反応媒体を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、少なくとも150℃、有利には200℃、更には250℃の高分解温度を示すところの求核置換用反応媒体を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、Ar−Ξ(式中、Arは、置換基のハメット定数σpの和が0.5を越えないフェニルである)に関してのSNARについて、200℃を実質的に越える必要なしに良好な収率が得られることを可能にするところの求核置換用反応媒体を提供することである。
【0033】
本発明の別の側面は、求核置換反応、特に二次求核置換であると考えられるものを容易にすることである。
【0034】
このタイプの反応の実質的問題は、ハロゲンとフッ素の間の交換反応に関するものによってよく例示され、何故なら当該脂肪族炭素は、誘起効果により電子を吸引するおよび/または脱離基を構成することが可能である別の置換基を含むからである。
【0035】
該問題は、該炭素が交換されるべきハロゲンまたは諸ハロゲンに加えて、電子吸引性である(特に、誘起熱効果により)原子または基を含むとき悪化される。
【0036】
特に、フッ素とハロゲンの間の交換であって、ハロゲン担持炭素が
・少なくとも1個の他のハロゲン、
・またはカルコゲンにより該炭素に連結された基、
・または芳香族、
・または上記の置換基の一つまたはそれ以上
も担持する該ハロゲン担持炭素により該ハロゲンが担持されている交換が挙げられ得る。
【0037】
下記の所見は、とりわけ、多ハロゲン化炭素一般に二塩素化または多塩素化炭素を担持する基質に関しての塩素−フッ素交換に当てはまる。このタイプの交換は、求核試薬がアニオン性であるSN2交換において遭遇される問題およびかかる問題の解決策のパラダイム(すなわち、例による教示)と考えられ得る。
【0038】
フッ素化化合物は、一般に、得ることが困難である。フッ素の反応性は、フッ素化誘導体を直接的に得ることが不可能でないとしても困難であるような反応性である。
【0039】
フッ素化誘導体を製造するために最も広く用いられている技法の一つは、ハロゲン化誘導体一般に塩素化誘導体を、そのハロゲンを交換するために、無機フッ素一般にアルカリ金属フッ化物一般に高原子量のものと反応させることに存する。
【0040】
一般的に言えば、用いられるフッ化物は、満足な経済的妥協を成すフッ化カリウムである。
【0041】
基質がこのタイプの合成に特に適応される場合以外は、この技法は不利な点を有し、しかしてそれらの不利な点の中で主要なものは、下記において分析されるものである。
【0042】
この反応は、アルカリ金属フッ化物たとえばフッ化カリウムのような反応体を必要とし、しかしてそれらは、このタイプの合成のために適合するために満たすことが必要とされる諸規定に因り、比較的高価になる。すなわち、それらは、非常に純粋で、乾燥状態でかつ適切な物理的形態一般に微粒化形態になければならない。
【0043】
更に、この反応は、あるクラスの物質全部について、特にハロゲン担持炭素(すなわち、フッ素と交換することが意図されているハロゲンまたは諸ハロゲンを担持する炭素)上に担持するものについてうまくいかない。
【0044】
液体形態のまたは双極性非プロトン性溶媒で希釈されたフッ化水素酸のような試薬も用いられる。しかしながら、フッ化水素酸は、あまりにも強力な試薬であり、そしてしばしば不所望な重合反応にまたはタールに通じる。
【0045】
この場合において、特に、電子吸引性基の存在に因り貧電子であるところのアルキル(アラルキルを含めて)タイプの炭素に関してフッ素化される誘導体が所望されるとき、当業者は、ほとんどその気にさせない条件の選択に直面する。すなわち、非常に過酷な条件が選択されそして生成物が主としてタールであるか、あるいは反応条件が温和でありそして最良の場合の予想でも回収基質は未変化であるかのどちらか。最後に、或る著者が、重元素、特に無機カチオンの形態(この記載において、重元素は、遷移元素並びに第3周期より大きい周期に属するIIIB族、IVB族およびVB族の元素であると考えられる)、酸化物またはフッ化物の形態のものの存在下で、試薬としてフッ化水素酸の塩を用いることにより交換を行うことを提案している、ということが指摘されるべきである。用いられる重元素の中で、ヒ素、アンチモン、および銀またはクイックシルバー(水銀)のような重金属を挙げることが適切である。
【0046】
別の問題は、反応の選択性にある。すなわち、ただ一つのsp3炭素に関して交換されるべきハロゲンが2個またはそれ以上あるとき、それらのうちのあるもののみを交換することはしばしば困難である。
【0047】
従って、本発明の別の目的は、一方では塩素のような重ハロゲンと他方ではフッ素との間の交換を、反応の特異性を有意的に改善することにより遂行することが可能である方法を提供することである。
【0048】
本発明の別の目的は、一方では塩素のような重ハロゲンと他方ではフッ素との間の交換を、温和な反応条件を用いて遂行することが可能である方法を提供することである。
【0049】
本発明の別の目的は、形態学が比較的重要でないフッ素源を用いることを可能にする方法を提供することである。
【0050】
本発明の別の目的は、ハロゲン原子(特に、塩素)が2個(特に、2個の塩素)のうちまたは3個のあり得る原子(特に、3個の塩素)のうち1個のみ交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0051】
本発明の別の目的は、ハロゲン原子が3個のあり得る原子のうち2個のみ交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0052】
本発明の別の目的は、ただ一つのsp3炭素に関して、ハロゲン原子(特に、塩素)が2個(特に、2個の塩素)のうちまたは3個のあり得る原子(特に、3個の塩素)のうち1個のみ交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0053】
本発明の別の目的は、ただ一つのsp3炭素に関して、ハロゲン原子が3個のあり得る原子のうち2個のみ交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0054】
本発明の別の目的は、1個のみのフッ素原子を1または2個の他の非フッ素ハロゲンと一緒に担持する炭素原子を得ることを可能にするように交換する限りにおいてのみ、分子または原子が交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0055】
本発明の別の目的は、2個のみのフッ素原子を1個の他の非フッ素ハロゲンと一緒に担持する炭素原子を得ることを可能にするように交換する限りにおいてのみ、分子または原子が交換されることを可能にする方法を提供することである。
【0056】
本発明の別の目的は、水銀および/または銀のような高価または有毒であると考えられる金属の高量の使用を避ける方法を提供することである。
【0057】
本発明の別の目的は、水銀および/または銀のような、重元素特に高価または有毒であると考えられるものの量を、かかる金属と、ハロゲン原子が交換されることになっている基質との間のモル比が0.5より、有利には0.2より、好ましくは0.1より大きくないように減じることを可能にする方法を提供することである。
【0058】
本発明の別の目的は、水銀および/または銀のような、特に高価または有毒であると考えられる元素特に重金属の使用を、該元素のいずれもが反応混合物に添加されないように、換言すれば該金属の各々の濃度が10-3M、有利には10-4M、好ましくは10-5Mの値を越えないように、完全に避ける方法を提供することである。
【0059】
一層一般的に、本発明は、求核置換反応特に芳香族求核置換および/または二次求核置換反応であって、かかる反応が比較的弱い求核試薬でもって行われることを可能にする反応を行うことを目的とする。
【0060】
本発明の別の目的は、中性またはアニオン性求核試薬であってしかもその関連酸が5より大きくない好ましくは4より大きくないpKa(pKaは、水性相にて測定される)を有する求核試薬でもって、求核置換反応が行われることを可能にする技法を提供することである。
【0061】
本発明の別の目的は、フッ素より重いハロゲンがフッ素により置換されるのを可能にするSNARまたはSN2反応が行われることを可能にする方法を提供することである。
【0062】
本発明の別の目的は、フッ素による擬ハロゲンの置換を可能にする方法を提供することである。
【0063】
本発明の別の目的は、フッ素で交換される少なくとも1個の他の、フッ素より重いハロゲンを担持する脂肪族炭素(すなわち、sp3混成を有するもの)に関して、塩素−フッ素交換が行われることを可能にする方法を提供することである。
【0064】
特に、本発明の別の目的は、基質に関してハロゲン−フッ素特に塩素−フッ素交換が行われることを可能にする方法を提供することであり、あるいは該ハロゲンは、ハロゲン担持炭素が
・少なくとも1個の他のハロゲン、
・またはカルコゲンにより該炭素に連結された基、
・または芳香族、
・または上記の置換基の一つまたはそれ以上
も担持する該ハロゲン担持炭素により担持されている。
【課題を解決するための手段】
【0065】
これらの目的および引き続いて現れる他の目的は、イオン性化合物であってしかもそのカチオンが一般式G
【0066】
【化3】

【0067】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり、そして一価炭化水素基から選択され、
nは、0および1から選択され、
Aは、VB族(窒素族)からの半金属原子であり(本明細書において用いられる元素周期分類は、Bulletin de la Societe Chimique de France,1966年1月,No.1の追録のものである)、
Eは、二価の基であって、E=A二重結合と共役された二重結合を少なくとも1個担持する、および/または、E=A二重結合と直接的にもしくは間接的に共役される二重項を少なくとも1個担持する別の半金属原子、有利には二重項が二重結合E=Aと直接的にもしくは間接的に共役されるVB族の半金属を担持する、二価の基である〕
を有するイオン性化合物を含む反応媒体により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明の一つの具体的態様によれば、nは1である。これは、この場合におけるAが、有利にはリンであることを意味する。また、それ故、一般式Gの化合物は非常に好ましくはホスホニウム化合物であることを意味する。この場合において、最も有利な結果がSNARについて得られる。
【0069】
nが0である場合、試薬または反応媒体を構成する組成物は、より大きい価数の多価であるが、その利点はとりわけ、少なくとも0.1のハメット定数σpを有する電気吸引性の基(a radical or a group)を直接担持するsp3ハロゲン担持炭素を担持する基質からの、脂肪族フルオロ誘導体の合成について現れる。
【0070】
本発明(nは0または1である)は、上記の脱離基の一つについてのかつアニオン性求核試薬特に上記に挙げられたものでもってのSNARについて有利である。本発明は、脱離基として1個またはそれ以上のハロゲンまたは擬ハロゲンについて特に有利である。ハロゲン特に塩素が、脱離基として好ましい。少なくとも1個の、フッ素より重いハロゲン、特に少なくとも1個の塩素の置換は、本発明の特定の対象である。アリールおよびアルキルの好ましい概念および意味は、両変型において同じである。
【0071】
本発明によれば、式Gによるカチオンの濃度が少なくともリットル当たり2モルまたはより正確にはリットル当たり2カチオン当量好ましくはリットル当たり3当量および4当量になるように、カチオンおよびカチオンの量を選択することが有利である。この濃度が高ければ高いほど、収率は一層良好であるが、しかし選択性は必ずしもそうでない。
【0072】
nが0である式Gの化合物について、カチオンの分子質量は、300より、有利には250より、一層好ましくは200より大きくないことが望ましい。カチオンが多価である(すなわち、2個またはそれ以上の正電荷を担持する)とき、これらの値は、単位電荷当たり取られねばならない。換言すれば、二価カチオンは、上記の質量の2倍より大きい分子質量を有することが可能である。
【0073】
過度の結晶化度を防止するためにおよび融点を下げるために、本発明による式Gの化合物は、少なくとも100の分子質量を有することが好ましい。
【0074】
主としてイオン性溶媒で組成された反応媒体は、できる限り乾燥していることが好ましい。しかしながら、本発明によるカチオンの高吸湿性に因り、これらの反応媒体が使用前に脱水されることを確実にすることが適切である。使用前の反応媒体は、有利には、カチオンが式Gに相当する塩と水の間の質量比が200ppmより、好ましくは100ppmより大きくないようなものである(この比率において、分数の分子は、無論、水により構成される)。脱水する一つの有効手段は、真空下で2h好ましくは真空下で8h、70℃にて加熱することに存する(該真空は、滑り羽根回転ピストンポンプの真空または10-2mmの水銀である)。
【0075】
該反応媒体は、有利には、非プロトン性でかつ無水である。特に、無水は、媒体中に存在する最も強い酸が基質を考慮に入れないで少なくとものpKaを有するようなものであることが望ましい。
【0076】
pKaが20より、有利には25より、好ましくは30より小さい酸から得られたプロトンは、「レイビル水素」(「不安定水素」)と考えられる。
【0077】
媒体が非プロトン性であればあるほど、すなわち、試薬中の放出性プロトンの、媒体中の量が低ければ低いほど、副反応の危険性は一層低くそして収率は一層良好である。
【0078】
かくして、試薬としてまたは反応媒体として働く本発明による組成物において、不安定水素原子の量は、不安定水素の量(当量数にて)(分数の分子)と式Gのカチオンの量(当量数で表して)との間の比率が1%より、有利には1,000当たり1より、好ましくは1000ppmより大きくないような量であることが好ましい(モル数、または当該種が多官能性であるときは当量数にて)。
【0079】
nが1である変型に関して、本発明によるイオン性化合物は、有利には、少なくとも4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のホスホニウム塩である。かくして、求核置換反応、有利には芳香族求核置換反応における反応媒体として、少なくとも炭素原子を含有する少なくとも1種の(第4級)ホスホニウム塩が用いられる。
【0080】
本発明による媒体は、極性溶媒として知られた化合物のある割合を含み得る塩である溶融有機塩であると考えられ得る。しかしながら、かかる溶媒の存在は、該媒体の有益効果を下げる傾向を有する。
【0081】
実際、本発明につながった研究中に、低濃度において該ホスホニウム化合物の効果は相間移動剤の効果に制限されること、並びに濃度が増加しそしてホスホニウムが単なる相間移動剤でなくなって質量で主要な要素になる(基質、試薬または転換基質を考慮に入れないで)時点が達せられるやいなや、その効果の性質は変化しそして濃度の増加の単純効果に帰せられ得ない転換の度合いおよび反応速度論に通じることが分かった。
【0082】
それ故、該反応媒体は、1より、有利には1/2より、好ましくは1/5より大きくないところの、極性溶媒の合計量とホスホニウム塩の合計量との間の質量比([S.P.]/[P+])を有することが望ましい。
【0083】
該ホスホニウム化合物は、有利には、式(I)
【0084】
【化4】

【0085】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり、そして炭化水素基から選択され、また互いに連結され得る〕
に相当する。
【0086】
本発明の一つの好ましい具体的態様によれば、本発明による媒体を構成するホスホニウム化合物または諸ホスホニウム化合物は、該炭化水素基R1、R2、R3およびR4が下記のリスト(好ましさの順に与えられている)のものから選択されるようなものである。すなわち、
1. アルキル、
2. 随意に置換されたアリール、
3. アミノおよびイミノ基、有利にはPに結合された窒素が水素を担持しないもの、
4. ヒドロカルビルオキシ基。
【0087】
ホスホニウムにより担持された炭素鎖の少なくとも一つはアルキルタイプでありそして従って性質上脂肪族であること、すなわち、リン原子との結合を与える炭素はsp3混成であることが勧められ得る。
【0088】
これについて(そしてこれは驚くべき教示の一つである)の理由は、一方では、ホスホニウム化合物の脂肪族性が大きければ大きいほど、結果は一層良好である故であり、他方では、使用条件下で、ホスホニウム化合物は、不安定であって組成物により自然的にアルケンを生じるという評判を有するにもかかわらず、非常に安定であることが分かった故である。それにもかかわらず、非常に過酷な条件を用いることを企てるとき(少なくとも250℃、更には200℃;特にアニオンが比較的塩基性である[関連酸のpKaが2より大きい]ならば)、リンが第3級、更には第2級炭素(これら自体、ベータ位における除去可能な水素を担持する)を担持する結合を避けることが、疑いなく適切である。
【0089】
ホスホニウムにより担持された炭素鎖の少なくとも二つ、有利には三つが性質上脂肪族であること、更にはホスホニウムにより担持された四つの炭素鎖が性質上脂肪族であることが望ましい、ということになる。
【0090】
求核置換特にSNARタイプのもののために高度に適合する媒体を構成するために、式Iのホスホニウム化合物の総炭素数は、50より、有利には35より、好ましくは25より大きくない。ホスホニウム化合物の混合物の場合、リン原子数に対する平均炭素数に換算して考えることが必要である。この場合において、炭素原子数は、端数になり得る。
【0091】
脂肪族ホスホニウム化合物について、ホスホニウム化合物または諸ホスホニウム化合物の分子質量を更に一層制限することが好ましい。従って、それが(それらが)少なくとも部分的に脂肪族であるとき、式Iのホスホニウム化合物は、30より、有利には25より、好ましくは20より大きくない総炭素数を有する。
【0092】
この好ましさはまた、ホスホニウム化合物または諸ホスホニウム化合物の置換基の平均質量がホスホニウム形態のリン原子当たり好ましくは700、有利には500を越えないことを指摘することにより表され得る。最小の勧められ得る値は、56、有利には80、好ましくは100である。
【0093】
一層精密には、ホスホニウムにより担持された炭素鎖の少なくとも二つ、有利には三つが性質上脂肪族であるとき、準最適総炭素数は、25より、好ましくは20より大きくない値に定められる。
【0094】
用語アルキルは、OH官能基が除去されたアルコールの残基という語源的意味で解される。それ故、それは、特に、遊離結合がsp3混成炭素原子により担持されている基(該炭素は、炭素または水素にのみ連結されている)を包含する。本発明に関して、アルキルの中で、式Cn2n+1の基に加えて、原子および/または官能基による置換によりそれらから誘導されたもの(用途に従って、副反応を避けるために、本発明が実施される条件下で不活性である官能基を選択することが好ましい)、特に、1個またはそれ以上のエーテル官能基、特にアルケンエポキシド(特に、エチレンエポキシド)から得られたモノ、オリゴまたはポリエトキシ鎖序列を担持するものを挙げることが適切である。
【0095】
該アルキルはまた、第4級アンモニウムまたはホスホニウム官能基を担持し得る。その場合において、ホスホニウム化合物は、ポリカチオン性である。排除されないけれども、それらは好ましい化合物の中にない。
【0096】
1、R2、R3およびR4基は、有利には、20個より多くない炭素原子そして合計で50個より多くない炭素原子を有する。
【0097】
合成の容易性の理由のために、R1、R2、R3およびR4の少なくとも三つが同一であることが好ましい。
【0098】
環のヒズミの拘束を受けるが、R1、R2、R3およびR4基は互いに連結されて環を形成し得るけれども、これは最も好ましい化合物を構成しない。それらはまた、別のホスホニウム化合物たとえばジホスファビシクロオクタンの四級化から生じる化合物と環を形成し得る。
【0099】
1、R2およびR3は、互いに連結されて環を形成し得る。
【0100】
中性形態において、ホスホニウム塩は、有利には、式(II)
【0101】
【化5】

【0102】
〔式中、X-は電気的中性を請け合うアニオン(またはアニオンの混合物)を表す〕
に相当する。有利には、アニオンまたは諸アニオンX-は、単荷電アニオンを表す。
【0103】
本発明の一つの好ましい具体的態様によれば、X-は、XHの酸性度が酢酸の酸性度と同等以上、有利には硫酸の第2酸性度と同等であるようなアニオンである。
【0104】
これらの対イオンは、有利には、比較的非求核性のアニオンおよびアニオン混合物X-から選択され、すなわち、それらが単一であるとき、XHが3より、有利には2より、好ましくは1より、一層好ましくは0より大きくないpKaを有するようなものであり、そしてそれらがアニオンの混合物から成るとき、アニオンの少なくとも一つは比較的非求核性である。かくして、本発明の一つの好ましい具体的態様によれば、X-は、X-が求核試薬とせいぜい同じくらい、有利には求核試薬より小さい、更には求核試薬よりかなり小さい求核性であるように(換言すれば、XHのpKaが求核試薬と関連した酸のpKaより1だけ、有利には2だけ、好ましくは3だけ小さいように)選択される。
【0105】
本発明の別の好ましい具体的態様によれば、求核試薬がアニオン性であるとき、X-またはそれが表すアニオンの一つは、該求核置換の求核試薬または求核試薬の一つである。
【0106】
-は、ハロゲン、擬ハロゲン、およびこれらのハロゲンまたは擬ハロゲンの混合物、有利にはフッ素の周期より大きい周期からのハロゲン(フッ化物が可溶性求核試薬であるときを除いて)およびハロゲン化物の混合物から選択される。
【0107】
本発明によれば、臭化物および塩化物が、好ましい共アニオンX-であることが示された。特に、臭化物イオンと塩化物イオンの合計量が、式Gのカチオンの量の1/2倍に、有利には3/4倍に少なくとも等しい(当量数で表して)ことを確実にすることが勧められる。
【0108】
塩化物が、SNARには好ましい。塩化物イオンが、式Gのカチオンの量の1/2倍に、有利には3/4倍に少なくとも等しい量(当量数で表して)にあることも有利である。
【0109】
本発明の別の目的は、上記に記載された使用を実施するための反応体として使用することができる組成物を提供することである。
【0110】
この目的および引き続いて現れる他の目的は、求核置換試薬として有用な組成物であって、基質の他に、液相中に、順次または一度に添加される成分として、
(a)少なくとも4個の炭素原子を含有する式Gの少なくとも1種の化合物、有利には第4級ホスホニウム化合物または第4級ホスホニウム化合物の混合物、
(b)共アニオン、
(c)随意に塩形態の、求核置換基、
(d)更なる成分
を含み、しかも(d)が随意の極性溶媒を含むとき、後者は、極性溶媒の合計量と式Gの化合物の塩の合計量との間の質量比、有利にはホスホニウム化合物の塩の合計量との間の質量比([S.P.]/[P+])、すなわち[S.P.]/(a+b)が、1/2より、有利には1/3より、好ましくは1/4より、一層好ましくは1/5より大きくないような量にて存在し、そして(a)+(b)+(c)+(d)の合計量が該液相の100%を成す組成物により達成される。
【0111】
(d)の下に纏められた更なる成分の量は、有利には低い。かくして、基質は別として、一方では成分(d)と他方では成分(a)+(b)+(c)との間の質量比は、1より、有利には1/2より、好ましくは1/3より大きくないことが望ましい。
【0112】
本発明の一つの好ましい具体的態様によれば、求核試薬がイオン性であるとき、共アニオンの少なくとも一部は、該求核試薬により形成される。換言すれば、求試薬以外のアニオンの合計量(無論、当量数で表して)は、式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物および該求核試薬の対イオンの量(無論、当量数で表して)より少なく、有利には、式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物単独での量より少ない。
【0113】
求核試薬がイオン性である(すなわち、塩形態である)とき、当量数で表して成分(c)のカチオン[すなわち、アニオン性求核試薬の対イオンを形成するカチオン]と、式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物の当量数で表して成分(a)との間のモル比は、0.01より、有利には0.02より大きい。この場合において、液相に対する式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物の効果は比較的小さいので、該比の上方値は2/3、有利には1/2、好ましくは1/3を越えないことが望ましい。
【0114】
求核試薬がアニオン性であるとき、求核試薬を、式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物の共アニオン(電気的中性を保証する)として、および、求核試薬としての両方として用いることが有利であり得る。この場合において、一価アニオンの当量数で表した場合の成分(c)と、式Gの化合物、有利にはホスホニウム化合物の当量数で表した場合の成分(a)との間のモル比(成分が多官能性であるときは当量数比)は、少なくとも0.5、有利には少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7である。
【0115】
該組成物は、更に、1つ(またはそれ以上)の固相を上記の液相との動力学的または熱力学的平衡にて含み得る。
【0116】
一般に、かかる固相またはかかる諸固相は、無機カチオンから並びに該求核試薬におよび/または該求核置換の脱離基に相当するアニオンから形成された少なくとも1種の塩を含む。
【0117】
該求核置換基が少なくとも部分的に液相において無機カチオンとの塩の形態にて存在するとき、溶解形態の該無機カチオン(MC)と成分(a)との間のモル比(または当量数比)([MC]/P+)は、有利には少なくとも1/100、好ましくは少なくとも1/20、一層好ましくは少なくとも1/10である。
【0118】
固相の使用は、交換がフッ化物(求核試薬)と塩素(脱離基)の間であるとき非常に有用である。この場合において、求核試薬は、フッ化物イオン(有利には、アルカリ金属塩一般にカリウム塩またはセシウム塩の形態にある)である。
【0119】
nが0であるときの具体的態様に関して、一群のイオン性化合物が得られ、しかしてそれらのいくつかは、イオン性溶媒としての使用に適する(一般に、塩の融点が100℃より大でないとき)。
【0120】
これらのイオン性化合物であって、それらのカチオンが丁度詳述された化合物は、いくつかの場合において、当業者に既に知られている。かくして、Journal of Fluorine Chemistry(1999)1−3の記事が挙げられ得る。Angewandde ChemieにおいてPeter WasserscheidおよびWielm Keimにより、イオン性液体−「遷移金属触媒反応用の新しい溶液」という題目で公表された概説,Angew. Chem. Int. Int.編,2000,39,3772〜3789も参照され得る。
【0121】
本発明によれば、共アニオンまたは諸共アニオンは、有利には、次のものから選択される。すなわち、
・アニオン性求核試薬(求核置換において求核試薬の役割を果たす)から、
・アニオン、有利には一価アニオン(かかるアニオンについての関連酸は、トリフルオロ酢酸の酸性度に少なくとも等しい酸性度を有する)から、および
・アニオン性求核試薬と、アニオン、有利には一価アニオン(かかるアニオンについての関連酸は、トリフルオロ酢酸の酸性度に少なくとも等しい酸性度を有する)との混合物から。
【0122】
本発明につながった研究中に、これらのイオン性液体は、それらが慣用溶媒の条件と同じ条件下で(換言すれば、特に時間、温度、圧力および水の不存在について同じ範囲内で)用いられるとき、慣用溶媒と少なくとも同じくらい効率的であることを可能にすること、並びに或る条件下で、それらは特に有利な結果を得ることを可能にすることが分かった。
【0123】
普通の時間にて非イオン性溶媒中において行うことが非常に困難である反応を行うことを可能にするという事実のほかに、これらのイオン性溶媒または溶融塩はまた、極めて高い選択係数でもっての交換選択性を可能にする。下記において見られ得るように、或る反応を他の反応よりも促進させるために、カチオンの親油性および分子質量を変動することが可能である。
【0124】
更に、驚くべきことに、塩素−フッ素交換において、好ましい共アニオンは、通常好ましいところのものではない。
【0125】
特に、これらの二つの交換において最良結果を与えるアニオンは、錯アニオンでも、非常に広範に非局在化した電荷を有するアニオンでもない。かくして、PF6-、BF4-、トリフル酸(triflic)(トリフルオロメタンスルホン酸)およびトリフルイミド(triflimide)アニオンタイプのアニオンは、良好な結果を与えるけれども、最良結果を与えるものではない。
【0126】
好ましいアニオンは、いかなる完全に満足なメカニズム的説明も与えることは可能でないが、ハロゲン化物アニオンである。
【0127】
nが0であるホスホニウム化合物が、現実または仮定のマイゼンハイマー中間体を伴うSNARタイプの反応について特に有利である結果を与えるけれども、その他のカチオン特にnが0であるものは、少なくとも一般に、より大きい多価であり、またより低い温度において液状であるという利点を有する。
【0128】
nが0であるとき、式Gの化合物は、有利には、Aが窒素であるようなものである。それがリンであることは可能であるけれども、これは、かかる化合物の酸化可能性およびそれらの相対的不安定性に因り、媒体の使用を制限する。
【0129】
nが0であるとき、二価基Eは、同等の基D−A''を表して式(IIa)
【0130】
【化6】

【0131】
〔式中、A''は、VB族からの原子、またはそうでなければ水素を担持するかもしくは炭化水素基R5により置換されている炭素原子であり、
基Dは、
− 一価R6基により単置換されたカルコゲン(この場合において、カルゴゲンは、該二重項担持半金属を構成する)、
− VB族からの半金属、特に窒素またはリン(この場合において、V族からの半金属は、該二重項担持半金属を構成する)、好ましくは窒素、しかも
・官能基もしくは二価基R7により一置換されて式−A’=R7の基Dを形成しているか、または
・2個の一価炭化水素基R6およびR’6により置換されて式−A’(R6)(R’6)の基Dを形成している
かのどちらか、
および
− 官能基または二価基R7により置換されたしかも水素を担持するかまたは随意に炭素基R6により置換されているsp2混成炭素原子
から選択される〕
の化合物を形成するようなものであることが望ましい。
【0132】
nが0であるこの式において、VB族からの半金属は、A''についてであろうがA’についてであろうが、好ましくは窒素である、ということが思い起こされるべきである。
【0133】
A''がVB族からの原子特に窒素であるとき、Dは、官能基によりまたは二価基R7により置換されたしかも水素を担持するかまたは随意に炭素基R6により置換されて下記に特記されたDの式を与えるsp2炭素原子から選択されることが好ましい。該炭素が水素を担持するとき、その水素はR6の代わりに存在する。
【0134】
【化7】

【0135】
前記に記載されたように、nが0である式Gのカチオンは半金属原子(飽和であるすなわち二重結合を担持しない)を含むことが望ましく、しかして該半金属原子は、二つの原子を連結するπ結合との共鳴を特徴とし、しかもこれらの二つの原子の少なくとも一方は二置換された正荷電のVB族からの原子、有利にはVB族(メンデレーエフの表における窒素族)からの三価原子、有利には窒素を含む有機カチオンであり、その原子の二重項は直接的にまたは間接的にπ結合に対して共役され、このπ結合は二つの原子を連結しかつこれらの二つの原子の少なくとも一方はVB族からの原子(すなわち、A)である。
【0136】
ある結合(一般に、π結合と共役された二重項)との共鳴(直接的に、または1個またはそれ以上の二重結合、有利には炭素−炭素結合を介して間接的に)を示す半金属原子は、有利には、強いメソメリードナー効果を有するもの、換言すれば、あり得る置換基と一緒に有意的に負のR係数(共鳴寄与;特に「March」,第3版,第248頁の表6参照)、一層特定的には−0.4より大きくない、有利には−0.6より大きくない、好ましくは−1.5より大きくない、一層好ましくは−2より大きくないR係数を有するものから選択される。上記の共鳴性質を有する半金属原子が2個またはそれ以上あるとき、その場合は該R係数を合算することが可能であり、しかしてその場合における和は、有利には−0.5より大きくない好ましくは−0.8より大きくない一層好ましくは−2より大きくない。
【0137】
π結合との共鳴を示す飽和半金属原子を含有する該有機カチオンは、有利には、該半金属原子が芳香族もしくは脂肪族基により置換されたカルコゲンまたは好ましくはVB族からの三価原子(好ましくは、第3級塩基を形成する三置換原子である)であるようなものである。該有機カチオンは、π結合との共鳴を示す飽和半金属原子を2個またはそれ以上含有し得る。これは、正電荷のより良好な非局在化という利点を有する。
【0138】
本発明の一つの特に有利な具体的態様によれば、二つの原子を連結する該π結合は、イミニウム官能基(>C=N±<)のπ結合である。
【0139】
このイミニウム官能基は、次のように書かれ得る。
【0140】
【化8】

【0141】
式中、A''は、炭素を表し、
Dは、
− 一価基R6により一置換されたカルコゲン、
− VB族からの半金属、特に窒素またはリン、好ましくは窒素、しかも
・官能基もしくは二価基R7により一置換される
【0142】
【化9】

【0143】
・または、2個の一価基R6およびR’6により置換される
かのどちらか、
および
− 官能基または二価基R7により置換されたしかも水素(随意に、炭素基R6により置換される)を担持するsp2炭素原子
から選択され、
5は、水素、Dの意味、並びに炭化水素基、有利にはアリールおよびとりわけアルキルから選択される。
【0144】
基Dおよびそのイミニウム官能基は、窒素原子と該半金属の原子ができる限り遠くに離れるように、換言すればおよびたとえば、イミニウム官能基の窒素がV族からの三価原子から最も遠いπ結合により結合された二つの原子のうちの一つであるように配置されることが好ましい。π結合が炭素原子とV族からの原子とを含有する場合、イミニウム官能基に関して丁度言われたことは、一般に、π結合により連結されるVB族からのすべての原子について有効である。
【0145】
本発明によれば、二重項がπ結合に対して共役されるVB族からの三価原子を含有する有機カチオンは、鎖序列、またはむしろ式>N−[C=C]v−C=N±<(式中、vは、0、または1から4、有利には1から3、好ましくは1から2の閉範囲(すなわち、端点を含む範囲)から選択された整数である)の骨格を有することが好ましい。上記の鎖序列は、好ましくは、式
Q−[C(R8)=C(R6)]vC(R5)=N(R1)(R2
に相当し、しかしてここで
Qは、脂肪族もしくは芳香族基R9により置換されたカルコゲン、または一層好ましくは、2個の同一もしくは異なる脂肪族もしくは芳香族基R9およびR10により二置換された窒素すなわち(R10)(R9)N−を表し、
vは、0、または1から4、有利には1から3、好ましくは1から2の閉範囲(すなわち、端点を含む範囲)から選択された整数であり、そして
1、R2、R3は、同一または異なり、そして4個より多くない炭素原子および水素の炭化水素誘導体好ましくはアルキル誘導体から選択される。
【0146】
有利には、本発明によれば、VB族からの該三価原子は、第3級アミンを形成または構成する。
【0147】
一層特定的には、二重項がπ結合に対して共役されるVB族からの三価原子を含有する該有機塩基は、次の式の分子を構成することが望ましい。すなわち、
(R10)(R9)N−[C(R8)=C(R6)]v−C(R5)=N+−(R1)(R2
ここで
vは、0、または1から4、有利には1から3、好ましくは1から2の閉範囲(すなわち、端点を含む範囲)から選択された整数であり、そして
1、R2、R5、R6およびR8は、同一または異なり、そして炭化水素基、有利には4個より多くない炭素原子および水素のアルキル基から選択され、そして
10およびR9は、同一または異なり、そして炭化水素基、有利には4個より多くない炭素原子のアルキル基から選択され、
しかも置換基R1、R2、R5、R8、R9およびR10の一つまたは二つは、他の残りの置換基に連結されて1つまたは2つもしくはそれ以上の環、特に芳香族環を形成することが可能である。下記参照。
【0148】
非局在化効果は、二つの原子を連結する該π結合が環内にある(またはメソメリー形態が環内にある)とき、特にそれが芳香族環における環内にあるとき、特に顕著である。
【0149】
これは、たとえば下記のもののような、ピリジン環、ジアジン環(好ましくは、メタ−ジアジン環;下記の式参照)、およびそれらから誘導される環(キノリンまたはイソキノリンのような)について特に言える[下記に与えられた式において、環の三つの位置は置換され得るが、しかしそれらの置換基(アルキルまたはアリール、そしてそれらの炭素数は、無論、炭素の総数のカウントの一部を成す)は、特徴とされておらず、望ましくさえもない]。すなわち、
【0150】
【化10】

【0151】
従って、ピリジン環、特に1個またはそれ以上の半金属原子の存在により富化されたものは、特にR係数(上記参照)の和が−1.5より、有利には−2より大きくないとき、特に満足なカチオンを構成する。
【0152】
一層特定的には、π結合との共鳴を示す飽和半金属原子を含有する有機塩基は、有利には、ジアルキルアミノピリジニウム、特にパラまたはオルト位(すなわち、ピリジンの2位または4位;上記の式参照)のものから選択され得る。DBU(ジアザビシクロウンデセン)もまた、有利なカチオンを与える。
【0153】
5員環は、それらが2または3個のヘテロ原子を有するとき、特に有利である。たとえば、イミダゾール、オキサゾールもしくは環状グアニジンタイプの構造、更にはインドールタイプの構造が挙げられる。
【0154】
【化11】

【0155】
6’およびR6''は、R6と同じ意味を有する。
【0156】
自由アリール位置(芳香族の一部を形成する)または脂肪族位置(それらの結合点は、sp3炭素である)は、置換されることが可能である。しかしながら、これは大きい利点を与えず、またカチオンをより重くするという欠点を有する。
【0157】
トリアゾール構造もまた、想定され得る。
【0158】
【化12】

【0159】
ピラゾール構造もまた可能であるが、しかし比較的低い共鳴に因り満足さが劣る。
【0160】
非環状構造の中で、グアニジニウム構造を用いる際に或る利点があり得ることも挙げられるべきであり、しかしてグアニジニウム構造は、グアニジンから容易に誘導されるおよび高共鳴式
【0161】
【化13】

【0162】
〔式中、R6'''およびR6''''は、R6と同じ意味から選択される;それらは、その他の基R6と並びにR1およびR2基と同一または異なり得る〕
を呈するという特徴を有する。低融点を有する化合物が所望される場合、その分子は非対称であることが好ましい。R6'''およびR6''''は、互いに連結されて環、有利には芳香族環を形成し得る。
【0163】
特にカチオンがその構造中に7個より少ない炭素原子を有するとき、結晶化を容易にすることが可能であるいかなる対称も避けることが有利である。従って、窒素の(一層一般的には、原子AおよびA’、またはA''さえの)置換基は、好ましくは、大きさについて異なる。
【0164】
基R1ないしR10は、次の条件付きで、窒素族からの原子のいずれもおよびカルコゲンのいずれもが水素を担持しないように選択される。すなわち、基R1ないしR10は、独立して同一または異なり得、そして有利にはアルキルおよびアリールから選択される。更に、R5およびR8は、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、2個のアルキルにより、2個のアリールによりまたは1個のアルキルと1個のアリールにより置換されたアミノ基であり得る。R6はまた、炭素により担持されるとき、ジメチルアミノ、アリールオキシまたはアルキルオキシであり得る。
【0165】
かくして、R5は、水素、Dの意味、並びに炭化水素基、有利にはアリールおよび特にアルキルから選択され得る。
【0166】
それらがカルコゲンまたはVB族からの原子により担持されないという条件付きで、それらはまた、R5、R6およびR8と同様に水素であり得る。
【0167】
式Gにおいてnが0であるときの炭素の総数は、有利には30より大きくなく、好ましくは20より大きくなく、一層好ましくは15より大きくない。炭化水素基R1、R2、R5、R6、R8、R9およびR10(それらがかかるものであるとき)の二つより多くないもの、一層好ましくはただ一つより多くないものが、6より大きい炭素数を有することが望ましい。
【0168】
反応混合物の処理を容易にするために、式Gのカチオンが、水の存在下で安定でありそしてその中にいかなる割合にても混和しないことが好ましい。
【0169】
用語アルキルは、OH官能基が除去されたアルコールの残基という語源的意味で解される。それ故、それは、特に、遊離結合がsp3混成炭素原子により担持されている基(該炭素は、炭素または水素にのみ連結されている)を包含する。本発明に関して、アルキルの中で、式Cn2n+1の基に加えて、原子および/または官能基による置換によりそれらから誘導されたもの(本発明が実施される条件下で不活性である官能基を選択することにより、副反応を避けることが好ましい)、特に、1個またはそれ以上のエーテル官能基特にアルケンエポキシド(特に、エチレンエポキシド)から得られたモノ、オリゴまたはポリエトキシ鎖序列を担持するものを挙げることが適切である。最後に、上記に見られたように、基R1ないしR10は、互いに連結されて環特に芳香族複素環を形成し得る。
【0170】
イミダゾリニウムは、特にsp3混成炭素についての塩素・フッ素交換に関して、特に有利な結果を与える。最良結果を与えたイミダゾリニウムは、R5が水素でありそしてR1およびR6が同じ鎖長を有さないアルキルであるものである。好ましいおよび最も活性な鎖長は、R1がメチルでありそしてR6がメチルとブチルの間にあるときのようなものである。R6の鎖長が8個の炭素原子である実験は効率が劣るが、しかし高い選択性を示す。
【0171】
好ましいイミダゾリニウムは、12個より多くない好ましくは10個より多くない炭素原子を有するものである。
【0172】
基質に関する限り、脂肪族炭素に関しての交換のための基質は、有利には、少なくとも2個のハロゲンを担持するsp3混成ハロゲン担持炭素を含む基質であり、しかもハロゲンの少なくとも一つは、フッ素の原子番号より大きい原子番号を有するハロゲンであり、該炭素におけるその他の二つの置換基は、二つのアルキル、二重項を担持する一つのカルコゲン原子もしくは一つの他のハロゲン原子、またはそうでなければ一つのアリールと一つのアルキル、またはそうでなければ二つのアリールであることが可能である。しかしながら、第1に該ハロゲン担持炭素が水素を担持しないとき、第2にそれが、適正な条件下で二重項を供給することが可能なカルコゲン、換言すればマイナス2の酸化状態のカルコゲン、一般にエーテルもしくはエステル、または酸素が硫黄により置き換えられるそれらの等価体のいずれかを担持するとき、反応はより良好に進行する、ということが分かった。
【0173】
良好な結果を与える別の系列の化合物は、ハロゲン担持炭素が少なくとも1個の、不飽和を担持する低混成原子に連結されている場合である。不飽和を担持する該低混成原子が炭素−炭素原子結合(アセチレン型結合、好ましくはエチレン型結合、このエチレン型結合は有利には芳香族環の一部を形成する)に関与する場合は別として、有利には、不飽和を担持する該低混成原子は次の二重結合の一つに関与する原子であるということを、例による教示により指摘することが可能である[*Cは、ハロゲン担持炭素である]。
【0174】
【表1】

【0175】
従って、基質の一般式は、次のように書かれ得る。すなわち、
R−CX’X'''−X''
式中、Rは、炭化水素残基(すなわち、炭素および水素を含有する残基、特にアリールまたはアルキル)、ハロゲン、電子吸引性(好ましくは、誘起効果により)基から選択され、
X’は、ハロゲン、好ましくは塩素から選択され、
X'''は、ハロゲン、好ましくは塩素から選択され、
但し、無論、R、XおよびX’は同時にフッ素であり得ないこと並びにそれらのうちの一つは、フッ素と交換されるべき少なくとも1個の、フッ素より重いハロゲン好ましくは塩素を表すことを条件とし、
X''は、アリール、ハロゲン、アルキルオキシ、チオアルキルオキシ、アシルアルキルオキシ、チオアシルアルキルオキシ、アリールおよびアルキルから選択され、また次の式
−Z(R12r=Z’(R11s−(R15t
の基により式
R−CX'''X’−Z(R12r=Z’(R11s−(R15t (I)
の基質を形成し、
Zは、三価半金属(rは0である)または四価半金属(rは1である)(それぞれ、リン、有利には一方では窒素および他方では炭素、好ましくは炭素)から選択され、そして
Z’は、半金属、有利にはカルコゲン(sおよびtは0である)、窒素およびリン(sは0である)および炭素(sおよびtは1である)から選択され、
r、sおよびtは、ZおよびZ’の意味に依存して、値0または1を取り得る。
【0176】
驚くべきことに、特に化合物が式2を有する場合、好ましくはArが同素環式であるとき、Rは水素であり得、そして容易な交換を生じ得る。
【0177】
Rはまた、対称分子またはそうでない分子を与えるべく、Ar(R11sタイプを含めて、−Z(R10r=Z’(R11s−(R5tタイプであり得る。
【0178】
15は、水素またはいずれかの基、有利には炭化水素基(すなわち、炭素および水素を含有する基)であり得る。
【0179】
12は、独立して、R15と同じ意味を取り得る。
【0180】
11は、独立して、R15と同じ意味を取り得る。
【0181】
しかしながら、本発明によれば、R12およびR15は、有利には、連結されて芳香族環を形成し、それによりX''が芳香族である場合をもたらす。
【0182】
本発明によれば、R、X’およびX'''は、それらの間で、それらが少なくとも2個の、フッ素以外のハロゲンを有しかつそれらが少なくとも1個の、塩素であるハロゲンを有するようなものであることが好ましい。
【0183】
RおよびX''は、これらの二つのうち一方が芳香族、ハロゲン(有利には、フッ素以外)、カルコゲンによりハロゲン担持炭素(すなわち、X'''およびX’を担持する炭素)に連結された基、または該ハロゲン担持炭素が適所にあるように二重結合を担持する基であるようなものであることも好ましい。
【0184】
上記に示されたように、ハロゲン−フッ素交換反応、好ましくはおよび最も頻繁には塩素−フッ素交換反応は、一般式においてnが1であるとき特に選択性である。選択性を得るために、択一的に、求核試薬一般にフッ化物の量を制限することまたは温度を制限することまたは継続時間を制限することで十分である。実施例において見られるように、交換のこの選択性は、特に印象的である。求核試薬は、本明細書の本論において既に挙げられたもの、特に、関連酸についてのpKaが4より大きくないアニオン性、更には中性の求核試薬であり、求核試薬がフッ化物であるとき、フッ化物は、アルカリ金属フッ化物の形態にて、好ましくは、アルカリ金属フッ化物であってしかもそのアルカリ金属がナトリウムのそれより優れているかまたは等しく、好ましくはカリウムのそれに少なくとも等しいアルカリ金属フッ化物の形態にて導入され得る。フッ化物イオンはまた、式Gの化合物の共アニオンの形態にて導入され得、または最後に、アンモニウムもしくはホスホニウムの形態にて導入され得る。
【0185】
上記に見られたように、共アニオンは、好ましくは、非常に強い酸に相当する共アニオン、特にハメット定数がトリフルオロ酢酸のハメット定数より大きいかまたは等しいものである。
【0186】
しかしながら、既に挙げられたように、一方では共アニオンとして、基質に作用することになっているアニオン性求核試薬を用いることは可能である。
【0187】
しかしながら、既に挙げられたように、イオン性液体について最も普通の共アニオン、すなわち、BF4-およびPF6-のような錯アニオンは、良好であるけれども最良でない結果を与えることが示された。同じことが、ペルフルオロアルカンスルホン酸タイプおよびトリフルイミドのような対応するイミドのアニオンについて言える。
【0188】
ペルフルオロアルカンスルホン酸タイプの酸として、二フッ素化炭素を担持するスルホン酸(その分子の残部は、反応しないことを条件として任意である)を挙げることが適切である。
【0189】
好ましいアニオンは、重ハロゲン化物(ヨウ化物、塩化物および臭化物)、一層特に塩化物および臭化物に相当するアニオンである。少なくとも2個のハロゲンを担持ししかもそれらのうちの少なくとも一つが塩素であるsp3炭素に関してのSN2による交換について、臭化物が好ましい。
【0190】
脂肪族炭素(すなわち、sp3混成を有する炭素)に関しての塩素−フッ素交換の場合において、求核試薬および共アニオンの両方の役割を果たすフッ化物を除いて、臭化物が、最良結果を与えたものである。
【0191】
いずれの場合においても、脂肪族炭素に関しての交換における臭化物イオンの存在は、顕著に有益である。その役割は、臭化物と式Gのカチオンの間のそのモル比が少なくとも5%好ましくは10%であるとき現れ始めそして有意になる。
【0192】
操作条件は、スルホランのような慣用の極性非プロトン溶媒を用いる操作条件と実質的に同じである。しかしながら、本発明による反応媒体の高反応性の故に、温度をわずかに下げることは可能である。
【0193】
式G1のクラスの化合物の中で、水といかなる割合にても混和しないものを用いることが好ましく、しかしてそれにより式G1のこれらの化合物(原則的に蒸留可能でないということが思い起こされる)の精製は容易にされる、ということに留意することは有利である。
【0194】
ハロゲン担持炭素を担持する脂肪族基質に関しての塩素−フッ素交換についてのSN2反応の場合において、nが0である式Gの化合物の使用は、上記に特記されなかった限りにおいて、有利には、下記に記載される芳香族基質に関してのSNAr置換と同じ条件下で用いられる。
【0195】
本発明の別の目的は、本発明を用いる求核置換、有利には芳香族求核置換のための方法を提供することである。
【0196】
この目的および引き続いて現れる他の目的は、求核置換方法において、一般式(III)
Ar−Ξ (III)
〔式中、
◆Arは、芳香族基であり、しかもΞを担持する核は、それがその環(6員芳香族環)中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有する故に、または、当該Ξを除くその置換基のσpの和が、少なくとも0.2、有利には0.4、好ましくは0.5である故のどちらかの故に貧電子であり、そして
◆Ξは、有利にはアニオンΞ-の形態の、脱離基である〕
の基質を組成物と接触させ、しかも該組成物は、基質の他に、液相中に、順次または一度に添加される成分として、
(a)少なくとも4個の炭素原子を含有する式Gの少なくとも1種の化合物、有利には第4級ホスホニウム化合物または第4級ホスホニウム化合物の混合物、
(b)共アニオン、
(c)随意に塩形態の、求核置換基、
(d)更なる成分
を含み、式Gの化合物または諸化合物、有利には(a)ホスホニウム化合物と、基質との間のモル比([P+]/[sub(基質)])は、少なくとも1/4、有利には1/3、好ましくは1/2、一層好ましくは2/3であることを特徴とする方法により達成される。(a)+(b)+(c)+(d)の合計量は、該液相の100%を成す。
【0197】
いかなる溶媒も、特に極性溶媒は、式Gの該少なくとも1種の化合物、有利には1種またはそれ以上のホスホニウム化合物を過度に希釈しないことが好ましい。かくして、(d)が溶媒を含むとき、この溶媒は、極性溶媒の合計量と式Gの少なくとも1種の化合物の塩の合計量との間の質量比、有利にはホスホニウム化合物の塩の合計量との間の質量比([S.P.]/[P+])、すなわち[S.P.]/(a+b)が1より、有利には1/2より、好ましくは1/5より大きくないような量にて存在する。上記の制限は、随意溶媒(極性または非極性)のすべてに適用されることが好ましい。
【0198】
Ξは反応を書き表すたやすさのため以外は個別化されていないこと、並びにArは少なくとも1個の、Ξ以外の脱離基を担持し得、しかもこれらの脱離基はΞと同一または異なることが可能であることが説明されるべきである。従って、多塩素化芳香族において、塩素の一つは脱離基の役割を果たし得る一方、その他のものは電子吸引性基の役割を果たす。交換が行われた後、別の塩素が脱離基であり得る、等である。
【0199】
かくして、ハロゲン交換において、特にポリクロロベンゼンまたはポリクロロピリジンにおけるハロゲン交換において、塩素のすべてがフッ素により順次に置換され得るが、しかしそれらの塩素がフッ素により置換されるにつれて、交換はますます困難になり、何故ならフッ素のσp(シグマp)(0.15)は塩素のそれ(0.25)より有意的に小さいからである。
【0200】
本発明は、Ξを除いてArの置換基のσp(ハメット定数)の和が1より、有利には0.8より、好ましくは0.6より大きくないような低レベルの貧状態を有するピリジン核を処理するために特に適切である。
【0201】
本発明がその他の場合より良好な処理を可能にする場合の一つは、Arが、Ξを担持する芳香族核が6員核でありしかもその電子吸引性基が誘起効果かつメソメリーでない効果により電子を吸引する基であるようなものである場合である。
【0202】
かくして、本発明の方法は、Arが、Ξを担持する芳香族核が6員核であり、しかもその電子吸引性基の大部分、更には全てが、ハロゲン、有利には塩素およびフッ素であるようなものである場合において、高度に適合する。
【0203】
本発明による方法は、Arが、Ξを担持する芳香族核が6員核であり、しかもその電子吸引性基または電子吸引性基の少なくとも一つがΞに対してメタに位置し、かつ有利には塩素および/またはフッ素であるようなものである場合における処理を可能にする。
【0204】
有利には、Ξは、それが交換される求核試薬より求核性でない。求核性尺度は用いるのが困難であるので、当業者は、ΞHが有利なことにプロトン化形態の求核試薬より酸性であるという経験則を用いることが可能である。Ξは、ニトロまたは第4級アンモニウム基であり得る。しかしながら、それが擬ハロゲン基、または好ましくは塩素、臭素およびヨウ素から選択されたハロゲン原子のどちらかであることが好ましい。
【0205】
擬ハロゲンにより、離脱が酸素化アニオン(アニオン電荷はカルコゲン原子により担持される)に通じる基であって、しかもその酸性度(ハメット定数で表して)が酢酸の酸性度に、有利には硫酸の第2酸性度に、好ましくはトリフルオロ酢酸の酸性度に少なくとも等しい基が意味される。
【0206】
このタイプの擬ハロゲンを例示するために、特に、スルフィン酸およびスルホン酸(有利には、硫黄担持炭素に関して過ハロゲン化されている)並びにまたカルボキシル官能基に対してαにおいて過フッ素化されたカルボン酸に相当するアニオンが挙げられ得る。
【0207】
求核置換反応はΞがヨウ素原子を表すとき比較的容易にされるので、特許請求の範囲に記載される方法は、Ξが塩素もしくは臭素原子または擬ハロゲンを表すとき一層格別な利益がある。
【0208】
時には「基R」と示される置換基または諸置換基Arに関する限り、それは(それらは)芳香族核上に存在する。基質が活性化されるのをおよびマイゼンハイマー錯体が安定化されるのを可能にするのに十分である該核における電子貧状態を総合的に誘起するように、それは(それらは)選択される(上記に与えられた指摘参照)。
【0209】
このように置換された芳香族基質は、フェニルの電子密度にせいぜい等しい電子密度、有利にはクロロフェニル、好ましくはジフルオロフェニルの電子密度により近い電子密度を有する。
【0210】
この貧状態はまた、たとえばピリジン、キノリンにおけるような、芳香族環中のヘテロ原子の存在に因り得る。このタイプの貧状態は、Arが6員環を有する化合物を表しそしてヘテロ原子が1966年1月にBulletin de la Societe Chimique de Franceの追録において公表された元素周期分類表に定められたようなV族に属する(本質的に、窒素またはリン)ときのみ観察される、ということを強調することが重要である。
【0211】
最も頻繁には、基R、または基Rの少なくとも一つは、電子吸引性の非脱離置換基であり、そして一層好ましくは炭酸構成成分でない。
【0212】
置換基または諸置換基Rは、それが(それらが)吸引効果を有するとき、ハロゲン原子および次の基
− NO2
− SO2AlkおよびSO3Alk
− Rf、好ましくはCF3
− CN
− CHO
− COAlk
− COΞ’(式中、Ξ’は、Ξと同じ好ましさを持った同じ意味から選択される)
− COOAlk
− ホスホニルおよびホスホネート
〔記号Alkは、水素、有利には、線状または分岐状の好ましくはC1ないしC4の、アルキル基を表す〕
から選択され得る。
【0213】
好ましい基Rの例として、一層特に、ハロゲン原子およびニトロ基が挙げられ得る。
【0214】
電子吸引性置換基または諸置換基Rは、一層好ましくは、脱離基Ξに対してオルトおよび/またはパラに位置する。
【0215】
芳香族基質について脱離基Xを置換するよう意図される求核試薬に関して、それは、照射反応中その場で発生され得る。
【0216】
本発明に従って使用することができる求核試薬として、特に、次のものが挙げられ得る。すなわち、
− ホスフィン、アルシン、アンモニア、
− ホスフィン類、アルシン類、アミンおよびそれらのアニオン、
− 水およびそのアニオン、
− アルコールおよびアルコキシド、
− ヒドラジン類およびセミカルバジド類、
− カルボン酸塩、チオール酸塩、チオール、炭酸塩のような、弱酸の塩、
− シアン化物およびその塩、
− マロン酸誘導体、並びに
− イミン。
【0217】
窒素求核試薬誘導体は、特許請求の範囲に記載された方法に関して、非常に特に興味がある。
【0218】
求核性官能基がアニオンである求核試薬は、良好な結果を与える。
【0219】
本発明の別の目的は、特に、フッ素と芳香族基質に存在するより高い原子番号を有するハロゲンとの間の交換反応特にフッ素と塩素の間の交換反応を行うために有用である方法を提供することである。
【0220】
逆交換反応、換言すれば、より高位のハロゲンによるあるハロゲンの置換は、同様に可能である。しかしながら、このタイプの反応は比較的小さい興味を与え、またその上行うのが比較的困難である。にもかかわらず、本方法の教示を利用して他の交換反応および特にこれらの逆交換反応を行うことは、当業者の能力内にある。
【0221】
フッ素とより高い原子番号のハロゲンとの間の交換反応の場合において、求核試薬としてフッ化物を用いることが好ましい。
【0222】
フッ化物は、有利には、ナトリウムの原子番号に少なくとも等しい原子番号を有するアルカリ金属のフッ化物、好ましくはフッ化カリウムである。
【0223】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物は、少なくとも部分的に、固相の形態にて存在する。
【0224】
一般に言えば、反応は、慣用条件下で行われる反応についての温度より低い温度にて行われる。
【0225】
好ましいのではないけれども、反応は、溶媒の存在下で行われ得る。
【0226】
形成される場合の比較的揮発性の化合物を連続的に回収することも可能である。この回収は、たとえば蒸留により行われ得る。
【0227】
あり得る具体的態様の一つによれば、加熱は、部分的にまたはすべて本発明のマイクロ波により行われる。この場合において、マイクロ波は短期間(10秒から15分)放射されて、冷却段階と交替することが好ましい。マイクロ波放射期間および冷却期間のそれぞれの継続時間は、各マイクロ波照射期間の終わりにおける温度が固定初期温度(一般に、反応混合物の諸成分の耐性温度未満である)より低いままにあるように選択される。
【0228】
反応混合物が同時にマイクロ波と冷却に付される手法に従ってかかる加熱を行うことが、同様に可能である。この変型によれば、マイクロ波により放射されるパワーは、固定初期温度一般に操作温度について、該パワーが冷却システムによって除去されるエネルギーに等価である(除去されるエネルギーはまた、反応により放出または吸収される熱量におおよそ等価である)ように選択される。
【0229】
この種の化学線加熱法は、更に、連続操作態様との適合性があるという利点を有する。この使用態様は、有利なことに、マイクロ波が放射される反応器を開放および閉鎖する操作中に起こり得る熱交換問題を避けることを可能にする。
【0230】
この操作態様によれば、活性化されるべき物質は、それらがマイクロ波による活性化を受ける反応器内に入口オリフィスを経て連続的に導入され、そして活性化された生成物は、該反応器から出口オリフィスを経て連続的に排出される。
【0231】
マイクロ波による化学線加熱の場合において、芳香族基質のミリ当量当たり1と50ワットの間のマイクロ波により放射されるパワーを用いることが推奨される。マイクロ波により放射されるパワーが反応混合物のグラム当たり2と100ワットの間にあるという制限に従うことが、同様に望ましい。
【0232】
本発明による媒体は、相間移動触媒であると知られた触媒と共存して使用することができる(特に、該触媒がカチオン性触媒であるとき)。それは、特に、たとえばアルカリ金属を捕捉するクラウンエーテルにより、捕捉されているカチオンを含み得る。
【0233】
これらの相間移動触媒は、セシウムおよびルビジウムのような特に重いアルカリ金属カチオン(それ故、高原子位を有する)の存在または不存在下で、好ましくは存在下で使用することができる。
【0234】
アルカリ金属カチオンの量は、それが促進剤として用いられるとき、用いられる求核試薬のモル数に関して、有利には1と5%の間好ましくは2と3%の間にある。これらの範囲は、閉範囲である。すなわち、それらは、それらの境界を含む。
【0235】
試薬は、促進剤として、オニウム化合物(名称がオニウムで終わる有機カチオン)である相間移動剤を含み得る。オニウム化合物は、芳香族基質のモル数に関して、一般に1から10%好ましくは2から5%を成す。対イオンは任意であるが、しかし最もしばしばハロゲンを含有する。
【0236】
本明細書において、オニウム化合物は、1966年1月にBulletin de la Societe Chimique de Franceの追録において公表された元素周期分類表に定められたようなVB族およびVIB族により形成されかつそれぞれ4つ(VB族)および(VIB族)または3つの炭化水素鎖を有するカチオンの群から選択された化合物であると定義される。これらの相間移動剤は、反応混合物が少なくとも2つの凝縮相(「凝縮相」は液相および固相を包含するということが思い起こされる)を含むとき慣用的に用いられるが、本発明において、これらの試薬の興味ははるかに小さく、何故なら多数のホスホニウム化合物が相間移動剤であると考えられるからである。
【0237】
オニウム化合物の中で、4ないし28個の炭素原子好ましくは4ないし16個の炭素原子のテトラアルキルアンモニウムが好ましい。テトラアルキルアンモニウムは、一般に、テトラメチルアンモニウムである。しかしながら、本発明による媒体中におけるかかる化合物の利点の興味は、慣用技術においてよりはるかに小さい、ということが留意されるべきである。
【0238】
本発明によれば、極性非プロトン性溶媒は、有利には、有意な双極子モーメントおよび比較的高いドナー数を有するものである。かくして、その比誘電率イプシロンは有利にはおおよそ10に少なくとも等しく、しかしてイプシロンは好ましくは100より小さいかまたは等しくかつ25より大きいかまたは等しく、またそのドナー指数は10と50の間にあり、しかして該ドナー指数は、該双極性非プロトン性溶媒と五塩化アンチモンとの結合の、キロカロリーにて表したΔH(エンタルピー変化)である。本発明によれば、これらの溶媒は更なる溶媒として役割を果たすが、しかしそれらの存在は反応の反応速度論に有害であり、そしてそれらの割合は上記に特記された値に制限されねばならない。
【0239】
一般に、微粒度分布が反応速度論に影響を及ぼす、ということが知られている。従って、懸濁状態の該固体は、そのd90(該固体の90質量%を通過させるメッシュサイズと定義される)が100μmより大きくない、有利には50μmより大きくない、好ましくは200μmより大きくないような粒度分布を有することが望ましい。下限は、有利には、懸濁状態の該固体のd10が少なくとも0.1μm好ましくは少なくとも1μmであることにおいて特徴づけられる。
【0240】
該求核試薬好ましくはアルカリ金属フッ化物と該基質との間の比率は、交換の化学量論と関連して、一般に1と1.5の間好ましくは約5/4である。
【0241】
反応媒体中に存在する固体の質量分率は、有利には、少なくとも1/5、有利には1/4、好ましくは1/3である。
【0242】
撹拌は、有利には、固体の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%が撹拌により懸濁状態に維持されるように行われる。
【0243】
本発明によれば、反応は、有利には、おおよそ150からおおよそ250℃の範囲の温度にて行われる。本明細書において、用語「おおよそ」は、それに後続する値が数学的に丸められた値に相当し、そして特に、小数点の不存在において、数の右側に向かって最も進んだ桁または諸桁が0であるとき、これらの0は位取りの0であり、有効数字ではない(無論、別段特記されているのでなければ)、という事実を強調するために用いられる。
【0244】
しかしながら、温度が増加するとき、反応速度論は増加するが、しかし選択性は低下する、ということが強調されるべきである。
【実施例】
【0245】
次の例は、本発明を例示する。
I.SNAr交換
車輪型凝縮器が上に置かれた5ml丸底フラスコに、イオン性溶媒(すなわち、メチルブチルイミダゾリニウム、またはR1がメチルでありおよび/またはR6がブチルである)中のKF3当量およびテトラメチルアンモニウムクロライド0.4当量を装填する。共アニオンは、PF6-である。フラスコの内容物を、100℃にて羽根ポンプ真空(10-2mmの水銀)下でかつ磁気撹拌状態で3h乾燥する。基質1当量を添加し、そしてこの混合物を150℃にて24h加熱する。これを引き続いて周囲温度に冷却し、そして次いでこの反応混合物をエチルエーテル3mlで3回抽出する。反応の生成物を同定するために、この溶液をガスクロマトグラフィーにより検定し、そして次いでフッ素の同位体19を用いてNMRにより確認を行う。
例1
パラ−クロロニトロベンゼン基質
一方では商業用フッ化カリウムおよび他方ではフッ化カリウム水溶液を300℃より大にて噴霧することにより得られた超乾燥KFについて、操作を行った。商業用フッ化物の場合において、これは60%のフッ素化生成物および40%の出発物を与え、噴霧化フッ化カリウムの同じ使用において、それらの結果はわずかに改善する。
例2
トリクロロニトロベンゼンに対する作用
KFの量およびテトラメチルアンモニウムクロライドの量を装填して、一般的手順を繰り返す。すなわち、ここでは、KF2当量およびテトラメチルアンモニウムクロライド1当量を用い、そして18%の出発物、35%の一オルト置換生成物、6%の一パラ置換生成物および31%の二フッ素化生成物が回収される。相間移動剤の割合を下げることを含む比較により、それは重要性が比較的小さいことが示される。
例3:種々のイオン性溶媒間の比較
比較を、次の間で行う。すなわち、
・PF6-を共アニオンとして、ブチルメチルイミダゾリニウム(以後、Bmimと表される)、
・BF4-を共アニオンとして、線状C8N−オクチルメチルイミダゾリニウム(このカチオンは、以下において、C8mimと表される)、
・BF4-を共アニオンとして、ブチルジメチルイミダゾリニウム(以後、Bdimと表される)、
・臭化物形態の、エチルメチルイミダゾリニウム(以後、Emimと表される)、
・および先行技術を代表するスルホラン。
【0246】
イミダゾールに関して2個の置換基があるとき、これらの二つの置換基は、窒素の各々上にある、ということが留意されるべきである。第3の置換基があるとき、それは二つの窒素間にある炭素上にあり、そして本明細書の命名法においてR5に相当する。
【0247】
【化14】

【0248】
m.p.79〜81℃;水に可溶、CH2Cl2に可溶、Et2Oに不溶。
【0249】
【表2】

【0250】
EmimBr溶媒中におけるはるかに一層高い反応性は、次の比較により示されると更に一層よい。
【0251】
【表3】

【0252】
例4
一フッ素化化合物への選択性
ここでの目的は、反応速度論的観点からより有効な溶媒が、特に減少量のフッ化カリウムを用いて、一フッ素化化合物を得るために良好な選択性を可能にするかどうかを知ることであった。
【0253】
【表4】

【0254】
BmimPF6溶媒中においてのように、1当量のKFの場合、反応は遮断される。
【0255】
EmimBrについて、最大値は20分後達成され、6hの反応後、トリクロロトルエンの消費量はほとんど変化しなかったことが観察される。BmimPF6溶媒と関連して、出発物の消費量は顕著に一層高いことが観察される。
− 温度の効果
【0256】
【表5】

【0257】
例5
二フッ素化化合物の合成
【0258】
【表6】

【0259】
これらの結果に照らして、一フッ素化および二フッ素化化合物を選択的に得ることが可能であると理解される。三フッ素化化合物を入手する機会もまた可能である。
【0260】
研究下のフッ素化反応について、この段階において3タイプの溶媒を決定することが可能であると理解される。すなわち、
− 高反応性溶媒: EmimBr
− 反応性溶媒: EmimPF6>BmimPF6,BmimBF4>C8mimPF6,C8mimBF4
− わずかに反応性の劣る溶媒: BmimCl,BmimTf2
アニオン、およびアルキル鎖の長さは、結果に影響を及ぼす。
【0261】
アルキル鎖を長くする(疎水性を増大する)ことにより、反応性は低減される。
例6
試験された種々のイミダゾリニウム化合物の性質
【0262】
【表7】

【0263】
例7
フェニルクロロホルムの一フッ素化における種々のイオン性溶媒の研究
【0264】
【化15】

【0265】
例7a
イオン性溶媒の製造
イオン性溶媒の合成のために、様々な手法が文献に記載されている。イミダゾールカチオンを有するイオン性溶媒に関して、合成は、イミダゾールと相当するハロアルカンとの縮合でもって、ハロゲン化物の形成で始まる(スキーム2)。
【0266】
【化16】

【0267】
合成の第二部は、塩化物イオンを所望アニオンと交換することを伴う。三つの方法が、文献に記載されている。すなわち、
− 相当する酸(たとえば、HPF6)との反応による;
問題: 最終のイオン性溶媒中における酸の存在。
− 相当するナトリウム塩(たとえば、NaBF4)との反応による;
問題: 反応はしばしば不完全であり、またCnmimClはCnmimA中に混和し得る。
− 相当する銀塩(たとえば、AgBF4)との反応による;
問題: この方法は、用いられる銀塩の価格に因り制限される(たとえば、AgBF45g/514フラン,Aldrich)。
【0268】
酸性溶液を利用する方法は、完全反応であるという利点を有し、また形成されたイオン性溶媒をpHが中性になるまで水で洗浄するよう気をつけるならば、微量の酸は除去され得る。該溶媒が長期間貯蔵される場合、使用前にそれを再び水で洗浄することが有用である。
【0269】
シリカゲル上における濾過および炭酸ナトリウムでの洗浄は、特にアニオン交換反応がナトリウム塩を用いて行われた場合、より良好な純度が達成されるのを可能にする、ということが示された。
【0270】
我々の研究のために、我々は、下記に記載されるように、HPF6またはHBF4の酸性溶液によるアニオン交換を用いて、我々の溶媒を合成した。
BmimPF6(1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート)についての手順
1−メチル−1H−イミダゾール(15mol,0.18mmol)および1−クロロブタン(19ml,0.18mmol)を、70℃における還流にて72h撹拌した。生じた液体を周囲温度に冷却し、そして次いでエチルアセテート(3×50ml)で洗浄した。エチルアセテートの残留する微量を吸引により真空下で除去し、そして次いでこの粘稠な液体を水(100ml)中に希釈した。生じた乳濁液に、ヘキサフルオロリン酸(水中60%溶液30ml,0.2mol)を、激しい熱放出を避けるために注意深く添加し、そして次いでこの混合物を一晩撹拌した。この二相を分離し、そしてイオン性液体を、洗浄水がもはや酸性でなくなるまでアリコート(「分取量」)の水(30ml)で洗浄した。次いで、この混合物を、微量の水を除去してイオン性液体BmimPF6をもたらすために、真空下で70℃にて加熱した(47g,92%収率)。最後に、ジクロロメタン(50ml)中に溶解したこのイオン性液体BmimPF6をシリカゲルに通し、その後シリカゲルをジクロロメタンで数回(5×20ml)洗浄して、無色のBmimPF6がもたらされた(39g,76%収率)。
【0271】
その他のイオン性溶媒C8mimBF4およびBdimPF6を、相当する出発物を用いて、この方法に従って製造した。それらのすべてを、フッ素NMR、プロトンNMR、炭素NMRおよびリンNMR(PF6アニオンについて)により分析した。
例7b
様々なイオン性溶媒の反応性
− BmimPF6中において
【0272】
【化17】

【0273】
− フッ素化反応は、2当量のフッ化カリウムを用いて、150℃にて6h後完全である。反応の開始時において、イオン性溶媒は赤色を呈し(水およびエーテルでの洗浄後でさえ持続する)、しかしプロトンNMRは、この溶媒がクリーンである(「不純物が混じっていない」)ことを指摘する。
− 触媒の効果
この反応を触媒するために、テトラメチルアンモニウムクロライドを、予備研究において用いた。しかしながら、ここに記載された条件下で、一フッ化反応について、この触媒は、次のプロット(グラフ1)を比較することにより分かり得るように、該反応の反応速度論に対して効果を有さない。
【0274】
【表8】

【0275】
− KFの量
1.5当量のKFrhの場合、反応は遅くなる。すなわち、70%のPhCFCl2および30%のPhCCl3(グラフ2)。
【0276】
【表9】

【0277】
同じ条件下で、1当量のKFrhの場合、反応は遅くなる。すなわち、34%のPhCFCl2および66%のPhCCl3(グラフ3)。
【0278】
【表10】

【0279】
例8
BmimPF6溶媒の再循環
各反応について用いられた手順は、次のとおりである。
【0280】
ブチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート2ml中のフッ化カリウム116mg(2mmol)の懸濁液を、0.1mmの水銀の真空下で、100℃にて1h撹拌した。
【0281】
真空状態を窒素により置き換えた後、この混合物を150℃にし、そして次いでフェニルクロロホルム142μl(1mmol)を導入し、この添加後反応混合物を150℃にて6h加熱した。有機物質を、ジエチルエーテル3mlで3回抽出した。このイオン性液体を、冷水3mlで3回洗浄した。次いで、このイオン性液体を再び真空下で100℃にて1h加熱した後、前記のように再使用した。
例9:反応の進行に対する溶融性塩の量の効果についての比較試験
手順
次のものを、60ml管中に導入する。すなわち、
− 1,3,5−トリクロロベンゼン: 0.5g(2.8mmol)
− スルホラン: 0.2g
− KF(噴霧化された): 0.51g(3.1モル当量/TCB)
− Bu4PBr: 試験に依存する可変量(表参照)。
【0282】
管をセプタムおよびスクリューストッパーで閉鎖し、次いで撹拌状態で230℃にて3時間加熱する。周囲温度に戻して、これらの有機化合物をジクロロメタン中に溶解し、そしてGCにより分析する。
【0283】
【表11】

【0284】
ジフルオロへのおよび特にトリフルオロへの高い転換度についての値は、これらの化合物の揮発性(一方では形成された生成物の損失および他方では揮発物の比較的低い滞留時間に通じる)に因り、過小評価されている。これらの要素は、Bu4PBrの非線形効果を更に一層議論の余地のないものにする。
【0285】
【表12】

【0286】
この非線形効果はまた、測定値が次のように示されるとき顕著に明白である。
【0287】
【表13】

【0288】
【表14】

【0289】
上記の曲線のS字形は、ホスホニウム化合物の効果が線形でないこと並びに高比率におけるホスホニウム化合物の効果は低比率の効果に低減され得ないことを示している。1/4特に三分の一の程度の比率から始まって、転換の増加はかなりになる。
例10: 理想的撹拌状態の反応器中における試験
500ml反応器に、
・TCB61.5g(0.34mol)
・KF65.1g(0.36mol,3.3eq/TCB)
・Bu4PBr154.4g(0.166mol,1.34eq/TCB)
を装填する。
【0290】
この混合物を120℃に加熱し、撹拌下に置き(均質懸濁)、そして次いで190〜210℃にて4時間加熱する。反応中形成された揮発性化合物を、連続的に蒸留除去する。次いで、加熱のスイッチを切り、そしてTCBおよびFDCBを蒸留除去するように反応器を部分真空(150〜200mbar)下に置く。回収蒸留物の合計量:m=48.4g。
芳香族有機物質のバランス,GC分析:
【0291】
【表15】

【0292】
例11: 1,3−ジクロロベンゼンの反応
【0293】
【化18】

【0294】
手順:
温度計および蒸留装置を備えた理想的撹拌状態の200mL反応器中に、次のものをこの順に導入する。すなわち、
− KF:12.50g(2.11当量/1,3−ジクロロベンゼン)
− Bu4PCl:90.07g(3.00当量/1,3−ジクロロベンゼン)
− 1,3−ジクロロベンゼン:14.99g
反応混合物を、210〜220℃にてわずかな還流下で、おおよそ3時間加熱する。大気圧下で、第1留分(1)を蒸留除去し、そして次いで蒸留を部分真空下で(反応物において220℃、33mbarまで)行って、留分(2)をもたらす。留分1および2を一緒にし、そしてHPLCにより分析する。
結果:
DCBの転換度=74.7%
CFBの収率=55.3%
DFBの収率=5.7%
例12: 1,2,4−トリクロロベンゼンの反応
【0295】
【化19】

【0296】
手順:
温度計および蒸留装置を備えた理想的撹拌状態の200mL反応器中に、次のものをこの順に導入する。すなわち、
− KF: 13.8g(1.5当量/124TCB)
− Bu4PCl: 47g(1当量/124TCB)
− 1,2,4−トリクロロベンゼン: 29.8g
反応混合物を、205〜215℃にてわずかな還流下で、おおよそ3時間加熱する。大気圧下で、第1留分(1)を蒸留除去し、そして次いで蒸留を部分真空下で(反応物において220℃、280mbarまで)行って、留分(2)をもたらす。留分1および2を一緒にし、そしてHPLCにより分析する。
結果:
124TCBの転換度=80.4%
DCFBの収率=45.2%
CDFBの収率=5.5%
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】酸性度尺度(ハメット定数尺度)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体として有用な組成物において、該組成物が少なくとも1種のイオン性化合物を含んでなり、しかも該イオン性化合物のカチオンが一般式G
【化1】

〔式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり、一価炭化水素基から選択され、
nは、0および1から選択され、
Aは、VB族(窒素族)からの半金属原子であり(本明細書において用いられる元素周期分類は、Bulletin de la Societe Chimique de France,1966年1月,No.1の追録のものである)、
Eは、二価の基であって、E=A二重結合と共役された二重結合を少なくとも1個担持する、および/または、E=A二重結合と直接的にもしくは間接的に共役される二重項を少なくとも1個担持する別の半金属原子、有利には二重項が二重結合E=Aと直接的にもしくは間接的に共役されるVB族の半金属を担持する、二価の基である〕
を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
共アニオンとして、ハロゲン化物およびそれらの混合物から選択されたアニオンを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アニオン性求核試薬であって、その関連酸のpKaが5より、有利には4より大きくないアニオン性求核試薬を更に含んでなることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
フッ化物イオンを含んでなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
臭化物イオンと塩化物イオンとの合計量が、式Gのカチオンの量の1/2に少なくとも等しい(当量数として表して)ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
水と、カチオンが式Gに相当する塩との間の質量比が、200ppmより、好ましくは100ppmより大きくないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、基質の他に、液相中に、順次または一度に添加される成分として、
a)少なくとも4個の炭素原子を含有するイオン性化合物であって、そのカチオンが一般式Gを有するイオン性化合物、有利には第4級ホスホニウム化合物または第4級ホスホニウム化合物の混合物、
b)共アニオン、
c)随意に塩形態の、求核置換基、
d)更なる成分
を含んでなり、
(d)が随意の極性溶媒を含む場合、後者は、極性溶媒の合計量とホスホニウム塩の合計量との間の質量比([S.P.]/[P+])、すなわち[S.P.]/(a+b)、が1より、有利には1/2より、好ましくは1/5より大きくないような量にて存在し、
そして、(a)+(b)+(c)+(d)の合計量が、該液相の100%をなすことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
基質を除いて、成分(d)と、成分(a)+(b)+(c)との間の質量比が、1より、有利には1/2より、好ましくは1/3より大きくないことを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
求核試薬がイオン性である場合に、成分(c)と成分(a)との間のモル比が、0.01より、有利には0.02より大きいことを特徴とする、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
求核試薬がイオン性である場合、共アニオンの少なくとも一部が該求核試薬から形成されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
求核試薬がイオン性であり、そして成分(c)と成分(a)との間のモル比(または成分が多官能性である場合は当量数比)が、0.5より、有利には0.7より大きいことを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、固相を更に含んでなることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
固相が、無機カチオンおよび求核試薬に相当するアニオンから、並びに/または、求核置換の脱離基から形成された、少なくとも1種の塩を含むことを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
求核置換基が、液相中で、無機カチオンとの塩の形態にて存在し、しかもこの溶解無機カチオンと成分(a)との間のモル比(または当量数比)(MC/[P+])が、少なくとも1/100、有利には少なくとも1/20であることを特徴とする、請求項7から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
求核試薬が、有利にはアルカリ金属塩の形態の、フッ化物イオンであることを特徴とする、請求項7から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、SN2またはSNAr反応を行うためであることを特徴とする使用。
【請求項17】
求核試薬がアニオンであって、その関連酸のpKaが5より、有利には4より大きくない、SN2反応を行うための請求項16に記載の使用。
【請求項18】
基質がsp3炭素原子を担持する分子であり、該sp3炭素原子が2個のハロゲンを直接担持し、2個のハロゲンのうち少なくとも一方が脱離基を構成することを特徴とする、請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
求核試薬が、フッ化物であることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
少なくとも4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のホスホニウム塩を、求核置換反応において、有利には芳香族求核置換反応において、反応媒体として用いることを特徴とする、請求項16から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
反応媒体が示す、極性溶媒の合計量とホスホニウム塩の合計量との間の質量比([S.P.]/[P+])が、1より、有利には1/2より、好ましくは1/5より大きくないことを特徴とする、請求項16から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
ホスホニウム化合物が、式(I)
【化2】

〔式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり、炭化水素基から選択される〕
に相当することを特徴とする、請求項16から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
炭化水素基R1、R2、R3およびR4が、
◆アルキル、
◆随意に置換された、アリール、
◆アミノおよびイミノ基、有利には、リンに結合された窒素が水素を担持しないもの、
◆ヒドロカルビルオキシ
から選択されることを特徴とする、請求項16から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
ホスホニウムにより担持された炭素鎖のうち少なくとも一つが性質上脂肪族である、換言すれば、リン原子との結合を与える炭素がsp3混成にあることを特徴とする、請求項16から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
ホスホニウムにより担持された炭素鎖のうち少なくとも二つ、有利には三つが、脂肪族であることを特徴とする、請求項16から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
ホスホニウムにより担持された四つの炭素鎖が、脂肪族であることを特徴とする、請求項16から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
式Iのホスホニウム化合物の総炭素数が、50より、有利には35より、好ましくは25より大きくないことを特徴とする、請求項16から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
式Iのホスホニウム化合物が少なくとも部分的に脂肪族である場合、当該ホスホニウム化合物の総炭素数が、30より、有利には25より、好ましくは20より大きくないことを特徴とする、請求項16から27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
ホスホニウムにより担持された炭素鎖のうち少なくとも二つ、有利には三つが、脂肪族であるとともに、式Iのホスホニウム化合物の総炭素数が、25より、好ましくは20より大きくないことを特徴とする、請求項16から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
ホスホニウム塩が、式I’
【化3】

〔式中、X-は、電気的中性を保証するアニオン(またはアニオン混合物)、有利には一価のアニオンを表す〕
に相当することを特徴とする、請求項16から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
求核試薬がアニオン性である場合に、X-が、またはX-が表すアニオンの一つが、求核置換の求核試薬である、または求核試薬の一つであることを特徴とする、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
-の求核性が、求核試薬と同等以下、有利には同等未満であることを特徴とする、請求項30に記載の使用。
【請求項33】
-は、XHの酸性度が酢酸と同等以上、有利には硫酸の第2酸性度と同等であるようなアニオンであることを特徴とする、請求項30から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
-が、ハロゲンから選択されることを特徴とする、請求項30から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
求核置換方法において、一般式(III)
Ar−Ξ (III)
〔式中、
◆Arは芳香族基であって、Ξを担持する核は、その環中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有する故に、或いは、当該Ξを除く置換基のσpの和が少なくとも0.2、有利には0.4、好ましくは0.5である故に、貧電子であり、且つ、
◆Ξは、有利にはアニオンΞ-の形態の、脱離基である〕
の基質を、請求項1から34のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項36】
Arが、Ξ以外の脱離基を少なくとも1つ担持することを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
Ξを除く置換基Arのσp(ハメット定数)の和が、1より、有利には0.8より、好ましくは0.6より大きくないことを特徴とする、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
Arにおいて、Ξを担持する芳香族核が6員核であり、且つ、その電子吸引性基がメソメリー効果でない誘起効果により電子を吸引する基であることを特徴とする、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
Arにおいて、Ξを担持する芳香族核が6員核であり、且つ、その電子吸引性基がハロゲン、有利には塩素およびフッ素であることを特徴とする、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
Arにおいて、Ξを担持する芳香族核が6員核であり、且つ、その電子吸引性基が、または電子吸引基の少なくとも一つが、Ξに対してメタに位置し、有利には塩素および/またはフッ素であることを特徴とする、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
Ξが、擬ハロゲン、塩素または臭素であり、有利には塩素であることを特徴とする、請求項35から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
求核試薬が、フッ化物イオンであることを特徴とする、請求項35から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
SN2求核置換の方法において、一般式
R−CX’X'''−X''
〔式中、
Rは、炭化水素基、特にアリール又はアルキル、ハロゲン、電子吸引性基から選択され、
X’は、ハロゲンから選択され、好ましくは塩素であり、
X'''は、ハロゲンから選択され、好ましくは塩素であり、
但し、R、XおよびX’は、同時にフッ素であることはなく、且つ、それらのうちの一つは、フッ素と交換されるべき、フッ素より重い少なくとも1個のハロゲン、好ましくは塩素を表わし、
X''は、炭化水素基の中から選択される〕
の基質を、請求項1から34のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44944(P2008−44944A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−213656(P2007−213656)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願2002−589491(P2002−589491)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】