説明

置換1,3−ジオキサンおよびそれらの使用

本発明は、1,3−ジオキサン部分を含有する化合物、それらの医薬組成物、ならびにトロンボキサンA2またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の調節のための前記化合物および組成物の使用に関する。前記化合物、類似体、およびそれらの医薬的に許容される塩、ならびに医薬組成物は、癌の治療および予防の際に使用することができる。一つの実施形態において、本発明の化合物は、トロンボキサンA2阻害活性および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体活性化活性を有し、従って、本発明の化合物は、抗腫瘍薬として治療に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,805号、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,806号、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,808号、および2007年1月18日に出願されたPCT出願番号PCT/US07/60724号の利益を請求し、これらの全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、1,3−ジオキサン部分を含有する化合物、該化合物を含む組成物、ならびにトロンボキサンA2および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の調節のための前記化合物および組成物の使用方法に関する。前記化合物および組成物は、トロンボキサンA2および/もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体が関与し得る疾病、そのような疾病の症状、またはトロンボキサンA2および/もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体によって媒介される他の生理事象の作用を治療または調節するために有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核ホルモン受容体である。PPAR受容体は、レチノイドX受容体(RXRとして公知)とのヘテロ二量体の形で、ペルオキシソーム増殖因子応答要素(PPRE)として公知のDNA配列の要素に結合することによって転写を活性化する。ヒトPPARの3つのサブタイプが同定されており、以下に記載される:PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよびPPAR−デルタ(またはNUCI)。PPAR−アルファは、主として肝臓において発現されるが、PPAR−デルタは至るところに存在する。PPARガンマは、脂肪細胞分化の調整に関係し、脂肪組織において大いに発現される。それはまた、全身の脂質の恒常性に関しても重要な役割を果たす。糖尿病の治療に利用されているチアゾリジンジオンを含めて、PPARの活性を調節する多数の化合物が同定されている。
【0004】
PPAR−ガンマサブタイプのDNA配列は、非特許文献1に記載されている。フィブラートおよび脂肪酸をはじめとするペルオキシソーム増殖因子は、PPARの転写活性を活性化する。
【0005】
PPARが、これらの核受容体を発現する細胞に関連した多彩な疾病または病的状態に密接に関係していることを例証する非常に多くの例が文献に提供されている。より具体的には、PPARは、血糖、コレステロールおよびトリグリセリドレベルを低下させるための方法において薬物ターゲットとして有用であり、従って、肥満およびアテローム性動脈硬化症(非特許文献2)をはじめとするX症候群(「メタボリックシンドローム」とも呼ばれる)(特許文献1、特許文献2、特許文献3;非特許文献3も参照)に関連したインスリン抵抗性、異常脂質血症および他の疾患、冠動脈疾患および一定の他の心血管疾患の治療および/または予防のために調査されている。さらに、PPARは、一定の炎症性疾患、例えば、皮膚疾患(非特許文献4)、胃腸病(特許文献4)または腎臓病(腎炎、腎硬化症、ネフローゼ症候群および高血圧性腎硬化症を含む)の治療のための潜在的なターゲットであることが明らかになった。同様に、PPARは、神経疾患(非特許文献5)もしくは痴呆において認知機能を改善するために、乾癬、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)を治療するために、または骨量減少、例えば骨粗しょう症(例えば、特許文献5もしくは特許文献6参照)を予防および治療するために有用である。
【0006】
従って、PPARは、治療用化合物の開発のための刺激的なターゲットである。疾病または病的状態を治療および/または予防するための様々な方法に関連して観察される反応は、期待の持てるものである。例えば、チアゾリジンジオン、TZD、薬物のクラス(例えば、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾン)は、2型糖尿病を有する患者におけるインスリン感受性の改善に重要な役割を明白に果たす(非特許文献6参照)が、それらは、非常に多数の望ましくない副作用(例えば、体重増加、高血圧、心肥大症、血液希釈、肝毒性および浮腫;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11および非特許文献12参照)の発生のため、十分に満足のいく治療薬でない。それ故、PPAR核受容体を発現する細胞タイプに関連した疾病または病的状態の治療および/または予防が可能である新規の改善された生成物および/または新規の方法を特定することが望ましい。より具体的には、TZD誘導体で観察される副作用の大部分は、前記化合物の完全アゴニスト特性に起因し、従って、必ずしも完全アゴニストでない新規化合物を特定することが望ましい。
【0007】
トロンボキサン受容体は、血小板凝集に関係しており、血管収縮ならびに気管支および気管平滑筋収縮に関与している。特許文献7;特許文献8および特許文献9は、一定の4−フェニル−1,3−ジオキサン−5−イルアルケン酸誘導体の名を挙げ、トロンボキサン受容体アンタゴニストとしてのそれらの潜在的有用性を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第97/25042号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/10813号パンフレット
【特許文献3】国際公開第97/28149号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/43081号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,981,586号明細書
【特許文献6】米国特許第6,291,496号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第94239号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0266980号明細書
【特許文献9】米国特許第4,895,962号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Elbrechtら、BBRC 224;431−437(1996)
【非特許文献2】Duezら,2001,J.Cardiovasc.Risk,8,185−186
【非特許文献3】Kaplanら,2001,J Cardiovasc Risk,8,211−7
【非特許文献4】Smithら、2001,J.Cutan.Med.Surg.,5,231−43
【非特許文献5】Landreth and Heneka,2001,Neurobiol Aging,22,937−44
【非特許文献6】Cheng lai and Levine,2000,Heart Dis.,2,326−333
【非特許文献7】Haskinsら,2001,Arch Toxicol.,75,425−438
【非特許文献8】Yamamotoら,2001,Life Sci.,70,471−482
【非特許文献9】Scheen,2001,Diabetes Metab.,27,305−313
【非特許文献10】Gale,2001,Lancet,357,1870−1875
【非特許文献11】Formanら,2000,Ann.Intern.Med.,132,118−121
【非特許文献12】Al Salmanら,2000,Ann.Intern.Med.,132,121−124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
トロンボキサンA2および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の、それらの異常活性に起因する疾病の病状および/または症状を阻止することができる選択的モジュレータの開発は、大きな関心をもたらした。しかし、トロンボキサンA2および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を調節し、そしてそれらに関連した疾病を治療および予防するための、さらなる化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、1,3−ジオキサン部分を有する化合物、該化合物を含む組成物、前記化合物の合成に有用な方法および中間体、ならびにトロンボキサンA2および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)によって媒介される疾病の治療および/または予防をはじめとする、前記化合物の使用方法を提供する。
【0012】
本発明の化合物は、一般に、1つ以上のフェノールまたはカルボキシル基の酸素原子がプロ基(progroup)Rで置換されている生物活性1,3−ジオキサン化合物を含む。このプロ基としては、一般に、使用条件下で代謝されて活性1,3−ジオキサン薬を生じさせる基または部分が挙げられる。
【0013】
本発明の化合物は、トロンボキサンA2および/またはPPARの効力あるモジュレータである。従って、さらにもう1つの態様において、本発明は、調節に有効な本発明の化合物または組成物の有効量と受容体を接触させることを含む、PPARアゴニスト、トロンボキサンA2(TP)受容体アンタゴニスト、トロンボキサンシンターゼ(TS)阻害剤のうちのいずれかとして本化合物を使用する方法を提供する。前記方法は、インビトロででも、インビボででも実施することができ、ならびに疾病の治療および/または予防、例えば、癌を含む新生物および転移の治療への治療的アプローチとして、ならびにトロンボキサンA2および/またはPPARに関連した他の疾病の治療および予防において使用することができる。
【0014】
本発明の化合物は、癌および関連疾患の予防または治療(しかし、これらに限定されない)に有用である。本発明の化合物は、トロンボキサンA2阻害活性および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体活性化活性を有し、従って、本発明の化合物は、抗腫瘍薬として治療に有用であり得る。本発明の化合物は、肥満、糖尿病、ならびに通常随伴する疾患、例えば心血管疾患および肝臓病の管理の処置に有用であり得る。
【0015】
本発明の化合物は、トロンボキサンA2の阻害剤および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の活性化として作用することができ、それ故、これらの受容体に関連した疾病の治療に有効であり得る。これらの化合物は、例えば、メタボリックシンドローム、肥満、インスリン抵抗性、前糖尿病、糖尿病、異常脂質血症、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、乾癬、アトピー性皮膚炎、喘息および潰瘍性大腸炎、癌、例えば脂肪肉腫、神経芽腫、膀胱癌、乳癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌および前立腺癌;炎症、感染、AIDSおよび創傷治癒から成る群より選択される臨床状態の治療または予防において有用であり得る。
【0016】
加えて、これらの化合物は、例えば、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、過形成、ステント誘発過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される臨床状態の治療および予防に有用であり得る。
【0017】
1つの態様において、本発明は、1,3−ジオキサン部分を含有する化合物、該化合物を含む組成物を提供する。前記化合物は、下に示す一般構造:
【0018】
【化1】

を有し、式中、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、アラルコキシル、アルキルカルバミド、アリールカルバミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、スルホ、アルキルスルホニルアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルまたはヘテロアリールであるように独立して選択され得る。
【0019】
本発明のもう1つの態様において、新規化合物は、式(II)の構造:
【0020】
【化2】

を有し、式中、R、RおよびRは、上で説明したように独立して選択され得る。好ましくは、前記アリール基は、フェニル、フェノール、アニソール、アニリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、チオフェン、フラン、イミダゾール、ベンズイミダゾールまたはピラゾールである。好ましくは、Ar基は、フェニル、フェノール、またはo−、m−、p−メトキシフェニルである。
【0021】
もう1つの態様において、本発明は、式(IV):
【0022】
【化3】

の化合物を提供し、式中、Xは、直接結合、O、S、NR、(CR10、O(CR10、または(CR10Oであり、ここで、R、RおよびR10は、H、OH、低級アルキル、フェニル、アリール、ヘテロアリールから独立して選択することができ、または一緒になってオキソを形成することがあり;nは、0、1、2、3、4または5であり得;mは、0と10の間の整数であり得;ならびにRは、H、OH、ハロゲン、アルコキシルまたはアルキルであり得;ならびにRは、直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル、アルキニル、アリル、シクロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから成る群より選択することができ、これらのそれぞれは、任意に、置換基で一または多置換され得る。前記化合物および組成物は、トロンボキサンA2の阻害および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体を活性化するための方法に使用され得る。
【0023】
もう1つの態様において、本発明は、癌を治療および/または予防する方法を提供する。前記方法は、一般に、癌を有する対象または癌を発現するリスクがある対象に、疾病を治療または予防するために有効な量の本発明の化合物または組成物を投与することを含む。前記方法は、動物においてまたはヒトにおいて実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
別段述べていない限り、本明細書および特許請求の範囲を含む本出願において用いる以下の用語は、下で与える定義を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確に別段指示していない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg(1992)「Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.」Vols.A and B,Plenum Press,New Yorkをはじめとする参考出版物において見つけることができる。本発明の実施は、別の指示がない限り、当該技術分野の技術の範囲内の質量分析、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を利用することとなる。
【0025】
本明細書において用いる場合、以下の用語は、以下の意味を有すると解釈する:
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルキル」は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された飽和または不飽和、分岐、直鎖または環状一価炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基としては、メチル;エチル類、例えば、エタニル、エテニル、エチニル;プロピル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;ブチル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなど;およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
用語「アルキル」は、具体的には、任意の飽和の程度またはレベルを有する基、すなわち、排他的に炭素−炭素単結合を有する基、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する基、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する基、および炭素単結合、二重結合および三重結合の混合物を有する基を包含すると解釈する。特定の飽和レベルを意図する場合には、「アルカニル」、「アルケニル」および「アルキニル」という表現を用いる。好ましくは、アルキル基は、1から15個の炭素原子を含み(C〜C15アルキル)、さらに好ましくは1から10個の炭素原子を含み(C〜C10アルキル)、およびさらにいっそう好ましくは1から6個の炭素原子を含む(C〜Cアルキルまたは低級アルキル)。
【0027】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルカニル」は、親アルカンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された飽和分岐、直鎖または環状アルキルラジカルを指す。典型的なアルカニル基としては、メタニル;エタニル;プロパニル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど;ブタニル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(s−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イル;ペンタニル類、例えば、ペント−1−イル、ペント−2−イル、ペント−3−イル、シクロペント−1−イル;ヘキサニル類、例えば、ヘキサン−1−イル、ヘキサン−3−イル、シクロヘキサン−1−イルなど;ヘプタニル類、例えば、ヘプタン−1−イル、ヘプタン−2−イル、シクロヘプタン−1−イルなど;およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルケニル」は、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和分岐、直鎖または環状アルキルラジカルを指す。この基は、二重結合についてシス配座である場合もあり、またはトランス配座である場合もある。典型的なアルケニル基としては、エテニル;プロペニル類、例えば、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル;ブテニル類、例えば、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなど;およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルキニル」は、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和分岐、直鎖または環状アルキルラジカルを指す。典型的なアルキニル基としては、エチニル;プロピニル類、例えば、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;ブチニル類、例えば、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなど;およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルキルジイル」は、親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2つの異なる炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって、または親アルカン、アルケンもしくはアルキンの単一炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導された、飽和または不飽和分岐、直鎖または環状二価炭化水素基を指す。2つの一価ラジカル中心、または二価ラジカル中心のそれぞれの原子価が同じ原子を用いて結合を形成する場合もあり、または異なる原子を用いて結合を形成する場合もある。典型的なアルキルジイル基としては、メタンジイル;エチルジイル類、例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル;プロピルジイル類、例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−エン−1,2−ジイル、プロパ−2−エン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロパ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−イン−1,3−ジイルなど;ブチルジイル類、例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,1−ジイル、ブタ−1−エン−1,2−ジイル、ブタ−1−エン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロパ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,3−ジイル、シクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなど;およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルを意図する場合には、アルカニルジイル、アルケニルジイルおよび/またはアルキニルジイルという学術用語を用いる。2つの原子価が同じ炭素原子上にあることを特に意図する場合、学術用語「アルキリデン」を用いる。好ましい実施形態において、アルキルジイル基は、1から6個の炭素原子を含む(C1〜C6アルキルジイル)。ラジカル中心が末端炭素にある飽和非環状アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ);およびその他同種類のもの(アルキレノ(下で定義する)とも呼ばれる)も好ましい。
【0031】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アルコキシ」は、式−ORのラジカルを指し、この式中のRは、本明細書において定義するとおりのアルキルまたはシクロアルキル基である。アルコキシの代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシおよびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アリール」は、本明細書において定義するとおり、親芳香族環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデセン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンおよびその他同種類のものから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アリール基は、6から20個の炭素原子を含み(C〜C20アリール)、さらに好ましくは6から15個の炭素原子を含み(C〜C15アリール)、およびさらにいっそう好ましくは6から10個の炭素原子を含む(C〜C10アリール)。
【0033】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アリールオキシ」は、式−O−アリールのラジカルを指し、この式中のアリールは、本明細書において定義するとおりである。
【0034】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「アリールオキシカルボニル」は、式−C(O)−O−アリールのラジカルを指し、この式中のアリールは、本明細書において定義するとおりである。
【0035】
「本発明の化合物」は、本明細書において開示する様々な説明および構造式によって包含される化合物を指す。本発明の化合物は、それらの化学構造および/または化学名のいずれかによって同定することができる。化学構造と化学名が相反するとき、化学構造が、その化合物の正体を決める。本発明の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含有することがあり、従って、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、回転異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在することがある。従って、一方のエナンチオマーのみが明記されているときにその構造が他方のエナンチオマーも包含することを除き、キラル中心での立体化学が明記されていないとき、本明細書において図示する化学構造は、立体異性体的に純粋な形(例えば、幾何異性体的に純粋な、エナンチオマー的に純粋なまたはジアステレオマー的に純粋な形)ならびにエナンチオマー混合物および立体異性体混合物を含めてそれらのキラル中心でのすべての可能な立体配置を包含する。エナンチオマー混合物および立体異性体混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を用いてそれらの成分エナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。本発明の化合物は、エノール形、ケト形およびそれらの混合物をはじめとする幾つかの互変異性体形で存在することもある。従って、本明細書において図示する化学構造は、図解されている化合物のすべての可能な互変異性体形を包含する。本発明の化合物は、1個以上の原子が、天然で通常見出される原子質量とは異なる原子質量を有する、同位体標識化合物も含むことがある。本発明の化合物に組み込むことができる同位元素の例としては、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、水和形を含む溶媒和形はもちろん非溶媒和形で存在することがあり、N−オキシドとして存在することもある。一般に、水和、溶媒和およびN−オキシド形は、本発明の範囲内である。本発明の一定の化合物は、多数の結晶または非晶形で存在することがある。一般に、すべての物理的形態は、本発明により考えられる使用には等価であり、本発明の範囲内であると解釈する。
【0036】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「シクロアルキル」は、本明細書において定義するとおりの、飽和または不飽和環状アルキルラジカルを指す。特定の飽和レベルを意図する場合には、「シクロアルカニル」または「シクロアルケニル」という学術用語を用いる。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびその他同種類のものから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、シクロアルキル基は、3から10個の環原子を含み(C〜C10シクロアルキル)およびさらに好ましくは3から7個の環原子を含む(C〜Cシクロアルキル)。
【0037】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「シクロヘテロアルキル」は、1個以上の炭素原子(および必要に応じて任意の結合水素原子)が同じまたは異なるヘテロ原子で独立して置換されている、飽和または不飽和環状アルキルラジカルを指す。炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子としては、N、P、O、S、Siなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルを意図する場合には、「シクロヘテロアルカニル」または「シクロヘテロアルケニル」という学術用語を用いる。典型的なシクロヘテロアルキル基としては、エポキシド類、アジリン類、チイラン類、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリドン、キヌクリジン、およびその他同種類のものから誘導されるが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、シクロヘテロアルキル基は、3から10個の環原子を含み(3〜10員シクロヘテロアルキル)およびさらに好ましくは5から7個の環原子を含む(5〜7員シクロヘテロアルキル)。
【0038】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよび/またはヨードラジカルを指す。
【0039】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「ハロアルキル」は、水素原子のうちの1個以上がハロ基で置換されている、本明細書において定義されるとおりのアルキル基を指す。用語「ハロアルキル」は、具体的には、ペルハロアルキルまでの、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどを包含するものとする。ハロアルキルを置換するハロ基は、同じであることもあり、または異なることもある。例えば、「(C〜C)ハロアルキル」という表現は、1−フルオロメチル、1−フルオロ−2−クロロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、ペルフルオロエチルなどを含む。
【0040】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「ハロアルキルオキシ」は、式−O−ハロアルキルの基を指し、式中、ハロアルキルは、本明細書において定義したとおりである。
【0041】
単独でのまたは別の置換基の一部としての「ヘテロアリール」は、本明細書において定義するとおり、親へテロ芳香族環構造の単一の原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価へテロ芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基としては、アクリジン、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン、およびその他同種類のものから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ヘテロアリール基は、5から20個の環原子を含み(5〜20員ヘテロアリール)、さらに好ましくは5から10個の環原子を含む(5〜10員ヘテロアリール)。好ましいヘテロアリール基は、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、インドール、ピリジン、ピラゾール、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾールおよびピラジンから誘導されるものである。
【0042】
「医薬的に許容される塩」は、製薬使用に一般に許容されると当該技術分野において理解されている対イオンとで作られ、且つ、親化合物の望ましい薬理活性を有する、本発明の化合物の塩を指す。そのような塩としては、(1)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)を用いて形成される、または有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、樟脳スルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸など)を用いて形成される、酸付加塩、;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアルミニウムイオン)によって置換される場合;または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)と配位結合する場合に形成される塩が挙げられる。アミノ酸(例えば、アルギネート)の塩、ならびに有機酸(例えば、グルクロン酸(glucurmic acid)もしくはガラクツロン酸)の塩なども挙げられる(例えば、Bergeら,1977,J.Pharm.Sci.66:1-19参照)。
【0043】
「医薬的に許容されるビヒクル」は、本発明の化合物を投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。
【0044】
「保護基」は、分子中の反応性官能基に結合すると、その官能基の反応性をマスクするか、減少させるかまたは防止する原子群を指す。一般に、保護基は、所望される場合、合成過程の間に選択的に除去することができる。保護基の例は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,3rd Ed.,1999,John Wiley & Sons,NY、およびHarrisonら,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1−8,1971−1996,John Wiley & Sons,NYにおいて見つけることができる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、t−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)ならびにその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基としては、ヒドロキシル基が、アシル化されるもの(例えば、メチルおよびエチルエステル、アセテートもしくはプロピオネート基またはグリコールエステル)、またはアルキル化されるもの(例えば、ベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSもしくはTIPPS基)およびアリルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「プロドラッグ」は、体内などの使用条件下で変換されて活性薬物を放出する、活性化合物(薬物)の誘導体を指す。プロドラッグは、必須ではないが、多くの場合、活性薬物に変換されるまで薬理学的に不活性である。一般に、プロドラッグは、活性のために部分的に必要であると考えられる薬物中の官能基をプロ基(下で定義する)でマスクして、特定の使用条件下で分解などの変換を受けてその官能基および従って活性薬物を放出するプロ部分または「プロ基」を形成することによって得られる。プロ部分の分解は、自然発生的に、例えば、加水分解反応により進行する場合もあり、あるいは別の薬剤により、例えば、酵素により、光により、酸により、または温度変化などの物理的もしくは環境的パラメータの変化もしくはパラメータへの暴露あるいはそれらの組み合わせにより、触媒または誘導される場合もある。前記薬剤は、そのプロドラッグが投与される細胞中に存在する酵素などの使用条件または胃の酸性条件に内因的である場合もあり、または外因的に供給される場合もある。
【0046】
プロドラッグを生じさせるための活性化合物中の官能基のマスキングに適する多種多様なプロ基が当該技術分野において周知である。例えば、ヒドロキシル官能基は、インビトロで加水分解されてヒドロキシル基をもたらすことができるスルホネート、エステルまたはカーボネートプロ部分としてマスクすることができる。アミノ官能基は、インビボで加水分解されてアミノ基をもたらすことができるアミド、イミン、ホスフィニル、ホスホニル、ホスホリルまたはスルフェニルプロ部分としてマスクすることができる。カルボキシル基は、インビボで加水分解されてカルボキシル基をもたらすエステル(シリルエステルおよびチオエステルを含む)、アミドまたはヒドラジドプロ部分としてマスクすることができる。適するプロ基およびそれらのそれぞれのプロ部分の他の特定の例は、当業者には明らかであろう。
【0047】
「置換されている」は、特定の基またはラジカルを改変するために用いるとき、その特定の基またはラジカルの1個以上の水素原子が、それぞれ、互いに独立して、同じまたは異なる置換基で置換されていることを意味する。特定の基またはラジカル中の飽和炭素原子を置換するために有用な置換基としては、−R、ハロ、−O、=O、−OR、−SR、−S、=S、NR、=NR、=N−OR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)、−(CH0〜4S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)Rおよび−NRC(NR)NRが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから成る群より選択され;それぞれのRは、独立して、水素またはRであり;そして、それぞれのRは、独立して、Rであるか、あるいは2つのRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5員、6員または7員シクロヘテロアルキル(これは、O、NおよびSから成る群より選択される1から4個の同じまたは異なる追加のヘテロ原子を任意に含むことがある)を形成する。具体的な例として、−NRは、−NH、−NH−アルキル、N−ピロリジニルおよびN−モルホリニルを含むものとする。
【0048】
本明細書において用いる場合、用語「対象」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、哺乳類のメンバー:ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー)ならびに他の類人猿およびサル種;農場動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家畜、例えばウサギ、イヌおよびネコ;実験動物(齧歯動物、例えばラット、マウスおよびモルモットを含む)ならびにその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例としては、鳥類、魚類およびその他同種類のものが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。
【0049】
本明細書において用いる場合、用語「治療する(treat)」または「治療(treatment)」は、交換可能に用いられ、疾病の発現の延期、および/または発現するであろうもしくは発現が予想されるような症状の重症度の低減を示し、ここでこの疾病は、トロンボキサンA2またはPPAR受容体の機能化に関連する。この用語は、既存の症状の改善、さらなる症状の予防、および症状の基礎にある代謝的原因の改善または予防をさらに含む。
【0050】
本発明の化合物を使用して、トロンボキサンA2および/またはPPARの活性を調節することができる。本化合物は、PPARアゴニスト、TP受容体アンタゴニスト、またはTS阻害剤である。これらの文脈において、前記受容体の活性の阻害および低減は、細胞または対象を試験化合物で治療しない対照実験に比べて低い測定活性レベルを指す。特定の態様において、前記測定活性に関する阻害または低減は、少なくとも10%の低減または阻害である。少なくとも20%、50%、75%、90%もしくは100%、またはその間の任意の数値の測定活性の低減または阻害が、特定の用途には好ましいことがあることは、当業者には理解されるであろう。同様に、少なくとも約10%、20%、25%、30%もしくは50%またはそれより高い活性の増加である活性化は、特定の用途に好ましいことがある。
【0051】
化合物
前記概要において説明したように、本開示は、1,3−ジオキサン部分含有化合物、例えば、2007年1月18日に出願された国際出願出願番号PCT/US07/60724に記載されている様々な1,3−ジオキサン化合物を提供する。
【0052】
本発明は、1,3−ジオキサン部分を含有する新規化合物、およびそれらの化合物を含む組成物を提供する。1つの態様において、本発明の化合物は、式(I):
【0053】
【化4】

を有し、この式中、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、アラルコキシル、アルキルカルバミド、アリールカルバミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、スルホ、アルキルスルホニルアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルまたはヘテロアリールであるように独立して選択され得る。
【0054】
本発明のもう1つの態様において、本新規化合物は、式(II)の構造:
【0055】
【化5】

を有し、この式中、R、RおよびRは、上に記載したように独立して選択され得る。好ましくは、アリール基は、フェニル、フェノール、アニソール、アニリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、チオフェン、フラン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、またはピラゾールである。好ましくは、Ar基は、フェニル、フェノール、またはo−、m−、p−メトキシフェニルである。
【0056】
本発明のもう1つの態様において、本新規化合物は、式(III)の構造:
【0057】
【化6】

を有し、この式中、RおよびRは、上に記載したように独立して選択され得る。Rは、H、OH、アルコキシ、アルキルまたはハロゲンであり、およびRは、好ましくは、1から15個の炭素原子を含有し、且つ、ハロ、シアノ、ニトロ、アルコキシ、エステル、カルボン酸、第一級アミン、第二級アミンまたはアミドから選択される1個以上の置換基を任意に末端に有する、アルキルまたはアルキニル基である。前記芳香族環は、H、OH、シアノ、ニトロまたはアルコキシであり得るRで一または多置換されていることがある。
【0058】
もう1つの態様において、本発明は、式(IV)の化合物:
【0059】
【化7】

を提供し、この式中、Xは、直接結合、O、S、NR、(CR10、O(CR10、または(CR10Oであり、ここで、R、RおよびR10は、H、OH、低級アルキル、フェニル、アリール、ヘテロアリールから独立して選択することができ、または一緒になってオキソを形成することがあり;nは、0、1、2、3、4または5であり得;mは、0と10の間の整数であり得;Rは、H、OH、ハロゲン、アルコキシルまたはアルキルであり得;ならびにRは、直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル、アルキニル、アリル、シクロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリール(これらのそれぞれは、任意に、置換基で一または多置換されていることがある)から成る群より選択され得る。前記置換基は、H、−R、ハロ、−O、=O、−OR、−SR、−S、=S、NR、=NR、=N−OR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)、−(CH0〜4S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)Rおよび−NRC(NR)NRであり得、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから成る群より選択され;それぞれのRは、独立して、水素またはRであり;ならびにそれぞれのRは、独立して、Rであるか、あるいは2つのRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5員、6員または7員シクロヘテロアルキル(これは、O、NおよびSから成る群より選択される1から4個の同じまたは異なる追加のヘテロ原子を任意に含むことがある)を形成する。これらの化合物は、両方のエナンチオマーを含む。従って、例えば、式(IV)は、下に示す両方のエナンチオマーを含む:
【0060】
【化8】

(これらの式中、Xは、2−クロロ、3−クロロ、2−シアノ、4−シアノ、3−ニトロおよび4−ニトロから選択される)。
【0061】
例示的化合物を実施例および表1に記載する。
【0062】
【表1−1】

【0063】
【表1−2】

本明細書に記載する本発明の化合物が、プロ基でマスクされてプロドラッグを作ることができる官能基を含むことがあることは、当業者には理解されるであろう。そのようなプロドラッグは、通常、それらの活性薬物形態に転化されるまで薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。本発明のプロドラッグの場合、任意の利用可能な官能性部分をプロ基でマスクしてプロドラッグを生じさせることができる。所望の使用条件下で分解され得るプロ部分を生じさせるためのそのような官能基のマスキングに適する無数のプロ基が当該技術分野において公知である。
【0064】
誘導体化することができる官能基、例えば、フェノール系官能基、カルボン酸官能基、チオール官能基およびその他同種類のものを有する本発明の化合物を、プロドラッグの合成に用いることができる。本発明の化合物の例示的プロドラッグとしては、次のものが挙げられる:
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

このようにして、選択される投与方式に特に合わせて作られたプロドラッグを得ることができる。例えば改善された受動的腸吸収、改善された輸送媒介腸吸収、急速な代謝に対する保護(徐放性プロドラッグ)、組織選択的送達、ターゲット組織での受動的濃縮、特定の輸送体へのターゲッティングなどのような他の特性をプロドラッグに付与するように、プロドラッグを設計することもできる。
【0067】
これらの特性をプロドラッグに付与することができる基は周知であり、例えば、Ettmayerら(2004)J.Med.Chem.47:2393−2404に記載されている。これらの参考文献に記載されている様々な基のすべてを、本明細書に記載するプロドラッグに利用することができる。例えば、本発明の化合物が、カルボン酸官能基を含有するとき、プロドラッグは、例えば、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4から9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5から10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3から6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4から7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5から8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3から9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4から10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、ガンマ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキルおよびピペリジノ−、ピロリジノ−またはモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基をはじめとする(しかし、これらに限定されない)基で酸性基の水素原子を置換することによって形成されたエステルを含むことができる。プロドラッグは、−COOH基が糖類と反応してエステルを形成した化合物である場合もあり、糖類は、好ましくは単糖類または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグルコースである。特に、フェノール基は、下に図示するように、リン酸エステル、アルキルエステルに変換させることができ、またはポリエチレングリコール(PEG)、アルキルオキシカルボニルオキシメチル(AOCOM)を使用して、もしくは立体障害アルコキシカルボニルメチルとして誘導体化することができる。
【0068】
【数1】

合成方法
本発明の化合物は、上で説明したように、1,3−ジオキサン部分を含む。本発明の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4thEd.,(Wiley 1992);Carey and Sundberg,ADVANCED ORGANIC CHEMISTY 3rdEd.,Vols.A and B(Plenum 1992);およびGreen and Wuts,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2ndEd.(Wiley 1991)に記載されているものなどの、当業者に公知の技術および材料を用いて合成することができる。本発明の化合物およびそれらの中間体の調製に有用な出発原料は、市販されており(例えば、Aldrich Chemical Co.(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)、もしくはMaybridge(イングランド、コーンウォール))、または周知の合成法(例えば、Harrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」、Vols.1−8(John Wiley and Sons,1971−1996);「Beilstein Handbook of Organic Chemistry」、Beilstein Institute of Organic Chemistry,Frankfurt,Germany;Feiserら、「Reagents for Organic Synthesis」、Volumes 1−21,Wiley Interscience;Trostら、「Comprehensive Organic Synthesis」、Pergamon Press,1991;「Theilheimer’s Synthetic Methods of Organic Chemistry」、Volumes 1−45,Karger,1991;March、「Advanced Organic Chemistry」、Wiley Interscience,1991;Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、VCH Publishers,1989;Paquette、「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」、3d Edition,John Wiley & Sons,1995参照)によって調製することができる。本明細書に記載する化合物および/または出発原料の他の合成方法は、当該技術分野において説明されているか、または当業者には容易に明らかとなろう。試薬および/または保護基の選択肢は、上に提供した参考文献において、および当業者に周知の他の概説書において見つけることができる。適する保護基を選択するためのガイドは、例えば、Greene & Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Wiley Interscience,1999において見つけることができる。従って、本明細書において提示する合成方法および戦略は、包括的なものではなく例証的なものである。
【0069】
本明細書に記載する化合物および中間体は、市販の出発原料、および/または従来の合成方法によって調製された出発原料を使用して、様々な異なる合成経路によって合成することができる。活性1,3−ジオキサン化合物の合成に常用することができるおよび/または適応させることができる適当な例示的方法は、米国特許第4,895,962号および2007年1月18日に出願された国際出願出願番号PCT/US07/60724において見つけることができる。さらに、前記1,3−ジオキサン化合物を出発原料として使用してプロドラッグを合成することもできる。
【0070】
従って、例えば、本化合物は、下のスキーム1に示す反応を用いて合成することができる:
【0071】
【化11】

加えて、本明細書において説明する合成手順は、様々な精製、例えば、カラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、再結晶、蒸留、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)およびその他同種類のものを含む場合がある。また、化学反応生成物の同定および定量のための化学技術分野において周知の様々な技術、例えば、プロトンおよびカーボン−13核磁気共鳴(Hおよび13C NMR)、赤外および紫外分光学分析法(IRおよびUV)、X線結晶学、元素分析(EA)、HPLCおよび質量分光分析法(MS)も用いることができる。保護および脱保護、精製および同定および定量の方法は、化学技術分野において周知である。
【0072】
本発明の化合物は、スキーム2の合成方法を用いて作製することもできる:
【0073】
【化12】

本化合物の合成は、それらの化合物の1つ以上の異性体を生じさせることがある。異性体の構成は、例えばHPLCおよびH NMRなどの代表的な分析機器を使用して検出することができる。
【0074】
異性体を分離し、特性付けすることができる。任意に、DCM中の0.5当量の樟脳スルホン酸を使用して、アルデヒドとイソプロピリデン化合物のカップリングを触媒することができる。スキーム2に示されている残りの段階は、示されているとおり行うことができ、この合成方法の最後に得られる生成物混合物を重炭酸ナトリウムで洗浄してもよい。DCM中の樟脳スルホン酸および重炭酸ナトリウム洗浄手順を用いることにより、合成される望ましくない異性体は5%未満となる。従って、樟脳スルホン酸は、アルデヒドとイソプロピリデン化合物のカップリングの際に形成される望ましくない異性体の量を減少させることができる。
【0075】
適応症
本発明の化合物は、癌および関連疾患の予防または治療(しかし、これらに限定されない)に有用である。本発明の化合物は、トロンボキサンA2および/またはPPAR調節活性を有する。本発明の化合物は、肥満、糖尿病、癌、炎症、AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症、ならびに通常随伴する疾患、例えば心血管疾患および肝臓病因子のための療法に有用である。
【0076】
本発明の化合物は、PPARによって媒介される疾病または状態である臨床状態を、治療または予防の必要がある個体において治療または予防するために有用である。前記臨床状態は、糖尿病、癌、炎症、AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症であり得る。
【0077】
前記組成物は、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移であり得る、トロンボキサンに関連した臨床状態の治療に使用することができる。
【0078】
本発明の好ましい化合物は、PPARモジュレータ、詳細にはPPARガンマ選択的モジュレータ(完全または部分アゴニストもしくはアンタゴニスト、好ましくはアゴニスト)、TP受容体アンタゴニストもしくはTS阻害剤、またはこれらの特性のうちの2つ以上を示す化合物である、本明細書において上で説明した化合物のいずれかである。理論による拘束を望まないが、本発明者らは、TP受容体アンタゴニストであり、且つ、TS阻害剤である化合物が特に望ましいと考えている。これは、血小板凝集を阻害し、効力ある血管拡張剤として作用するPGI2のレベルを上昇させるからである。
【0079】
アゴニストおよびアンタゴニストは、効力/EC50/IC50値を左右するそれらの結合親和性によって、および化合物の飽和レベルの存在下で達成される活性のレベル、すなわち有効度によって特徴づけられる。部分アゴニスト/部分アンタゴニストも、その結合親和性および有効度によって特徴づけられる。従って、PPARの部分アゴニスト/アンタゴニストは、コグネイトPPARを完全に活性化することはできず、競合的に受容体から完全アゴニストをはずし、それによってトランス活性化レベルを減少させることができる。さらに、PPARの完全および部分アゴニストは、補因子の異なる補体を補充することができ、ならびに所与のPPARサブタイプに補充される補因子の性質は、所与のアゴニストによって活性化される遺伝子のパターンに大きな影響を及ぼし得る。
【0080】
PPARのリガンド結合ポケットは、他の核受容体と比較して大きく、これにより、PPARに結合することができ、PPARを活性化することができる化合物が非常に多様であることを、一部、説明することができる。3つのPPARサブタイプ間のリガンド認識には相当な重複部分があり、厳密に言えば、いずれのサブタイプ特異的リガンドもまだ同定されていない。しかし、幾つかの天然および合成リガンドは、大きな選択度を示し、今日、大部分の選択的リガンドは、個々のPPARサブタイプを活性化するために必要な濃度に関して3桁より大きく異なる。ステロイド核受容体についてのアゴニストに類似して、選択的PPARモジュレータ(SPPARM)という用語が導入された(本明細書では、「部分アゴニストまたはアンタゴニスト」とも呼ぶ)。このクラスのリガンドは、PPAR(単数または複数)に結合すると、異なる配座を取り入れて、異なるコアクチベータセットの補充をもたらす、部分アゴニスト/アンタゴニストを含む。原則として、SPPARMは、PPARターゲット遺伝子のサブセットだけを活性化することができ、それにより、望ましい遺伝子セットの特異的発現をことによると促進するであろう。本発明の化合物は、部分PPARアゴニストである。
【0081】
PPAR調節活性は、当該技術分野において公知の任意の多数の方法またはそれらの改作によって容易に判定することができる。例えば、PPAR調節活性は、例えば、PPARガンマ調節活性を判定するためのトランス活性化アッセイの使用によるなど、当該技術分野において公知のインビトロトランス活性化アッセイによって、判定することができる。任意の多数の可能な構築物を使用することができること、例えば、転写または異なるレポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、もしくはその種の他のもの)を活性化するための異なるDNA結合ドメインの使用は当業者には明らかであろう。判定が望まれるPPAR活性次第で、その構築物が前記PPARまたはそのリガンド結合ドメインを好ましくコードすることも、当業者には明らかであろう。PPARの活性化に基づいて(すなわち、PPARアゴニストまたは部分アゴニストの存在下で)、PPARは、任意に定量的に、レポーター構築物をトランス活性化する。
【0082】
PPARモジュレータは、少なくとも1つのPPREを含む第二の核酸の制御下で作動可能に第一の核酸を含むレポーター遺伝子を使用して同定することもできる。前記第一の核酸は、好ましくは、レポータータンパク質、例えば蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはその種の他のものをコードする。前記レポーター構築物を、1つ以上のPPAR、例えばPPARガンマおよび/またはデルタを発現する細胞に挿入すべきである。このようにして、PPARアゴニストを、第一の核酸の転写を活性化することができる化合物として同定することができる。
【0083】
好ましい実施形態によると、本発明の化合物および組成物は、PPARおよび/またはPPAR LBD部分アゴニストであり、さらに特に、本発明の化合物および組成物は、PPARガンマおよび/またはPPARガンマLBD部分アゴニストである。用語「PPAR LBD」は、PPARのリガンド結合ドメインを指す。可能な最大作用(すなわち、完全アゴニストまたは基準分子が生ずる最大作用)より小さい作用を生じさせる薬物を部分アゴニストと呼ぶ。
【0084】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、PPARの活性に対して選択的であることが好ましい。そのような実施形態では、本化合物が、RxRおよび/またはRxR LBDトランス活性化を有意に活性化しないことが好ましく、好ましくは、RxR転写は、バックグラウンドレベルの2倍未満、例えば、バックグラウンドレベルの1.5倍未満、例えば、バックグラウンドレベルとほぼ等しいか、それより小さい。RxRトランス活性化は、RxRトランス活性化アッセイによって判定することができる。バックグラウンドレベルは、付加リガンド不在の状態でのトランス活性化である。
【0085】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、10から100mg/kgの範囲、例えば、30から70mg/kgの範囲、例えば、50から60mg/kgの範囲、例えば53mg/kgの投薬量での個体への前記PPARモジュレータの投与が、個体において次の生物学的エンティティーのうちの1つ以上、好ましくは少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば4つすべてを有意に増加させる結果とならないPPARモジュレータである:ヘマトクリット、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルカリホスファターゼ(ALP)。「有意な増加」は、30%より大きい、例えば20%より大きい、例えば10%より大きい、例えば5%より大きい増加を意味する。
【0086】
このセクションにおいて上で述べたすべての個体は、任意の個体、例えば、PPARモジュレータの投与が必要な個体、例えば、本明細書中の他の箇所で述べるPPAR関連臨床状態のうちの1つ以上に罹患しているヒトであり得る。しかし、前記個体は、検体検査用動物、例えばマウスであってもよい。このセクションにおいて上で述べたすべての減少および増加は、一般に、前記PPARモジュレータを投与していない同様の個体で得られる値に関連して判定される。
【0087】
望ましくない副作用(例えば血液希釈、浮腫、脂肪細胞分化または肥満)のインビボでの発生は、例えばEP1267171に記載されている方法を用いて、前記化合物の補因子補充プロフィールによる影響を受け得る。従って、本発明の1つの実施形態において、好ましい化合物は、望ましくない副作用のインビボでの発生が少ないと予測される化合物である。
【0088】
本発明の1つの実施形態において、本発明の好ましい化合物は、トロンボキサン受容体(TP)に結合することができる、例えば、ヒト組換えHEK−293細胞におけるトロンボキサン受容体に結合することができる。特に、本発明の化合物は、トロンボキサン受容体に100nM未満、さらに好ましくは50nM未満、さらにいっそう好ましくは30nM、例えば20nM未満、例えば10nM未満、例えば5nM未満、例えば1nM未満のIC50で結合することができ、好ましい。加えて、100nM未満、さらに好ましくは50nM未満、さらにいっそう好ましくは20nM未満、例えば10nM未満、例えば5nM未満、例えば1nM未満のKiでトロンボキサン受容体に結合することができる本発明の化合物が好ましい。好ましくは、上述のIC50およびKiは、当該技術分野において公知の方法によって決定される。
【0089】
好ましいTP受容体モジュレータは、TP受容体アンタゴニストである。TP受容体の生理機能としては、血小板凝集、血管収縮および気管支収縮の制御である(The IUPHAR compendium of receptor characterization and classification 1998,239頁、およびThe Sigma−RBI Handbook 5th edition,Prostanoid receptors,2006,138−140頁を参照のこと)。従って、TP受容体のアンタゴニストである、本発明の好ましいPPAR/TPモジュレータは、血小板凝集増加、血管収縮増加および気管支収縮増加、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、IgA腎症、肝腎症候群、糖尿病性腎症、網膜症、糖尿病性網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄ならびにステント誘発過形成のうちの1つ以上によって特徴づけられる臨床状態の治療に有用である。
【0090】
さらなる実施形態において、本発明の化合物は、トロンボキサンシンターゼ(TS)活性の阻害剤である(すなわち減少させる)。トロンボキサンは、血小板凝集、血管収縮および気管支収縮の制御に関与し、従って、トロンボキサンシンターゼの阻害は、血小板凝集増加、血管収縮増加および気管支収縮増加のうちの1つ以上によって特徴づけられる臨床状態の治療にも有用である。トロンボキサンシンターゼ活性は、当業者に公知の任意の有用な方法によって判定することができる。本発明の非常に好ましい化合物は、ヒト血小板トロンボキサンシンターゼアッセイを用いると、10μMの濃度でトロンボキサンシンターゼを少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも50%阻害することができる。従って、本発明の化合物の有効量を投与することによる、トロンボキサンシンターゼの阻害方法も提供する。
【0091】
本発明の好ましい化合物は、血小板凝集を阻害することができる。特に、0.01から100μMの範囲、好ましくは1から30μMの範囲、例えばおよそ1μM、例えばおよそ8μM、例えばおよそ16μM、例えばおよそ30μM、例えば、約1μM、例えば8μM、例えば16μMまたは例えば30μMの濃度で、血小板凝集を少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらにいっそう好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、例えばおよそ100%、例えば100%阻害することができる(すなわち、血小板凝集が増加した状態でその化合物が血小板凝集を正規化するであろう)化合物。
【0092】
ヒトの治療に有用であることに加えて、これらの化合物は、哺乳動物、齧歯動物およびその他同種類のものを含む、愛玩動物、外来動物および農場動物の獣医学的治療にも有用である。さらに好ましい動物としては、ウマ、イヌおよびネコが挙げられる。本明細書において用いる場合、本発明の化合物は、それらの医薬的に許容される誘導体を含む。
【0093】
臨床状態
本発明は、上述の化合物、好ましくは、上述のPPARアゴニスト、TP受容体アンタゴニスト、TS阻害剤のいずれかの投与を含む臨床状態の治療方法、ならびに臨床状態の治療のための薬剤を調製するための前記化合物の使用に関する。
【0094】
本明細書において上で説明したPPARモジュレータは、体重管理に利用することができる。従って、前記臨床状態は、1つの実施形態において、摂食障害、例えば神経性食欲不振(本明細書では「食欲不振」と略記する)または過食症である場合がある。
【0095】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、本明細書において上で説明した化合物のいずれかを投与することによる、インスリン抵抗性を治療するための方法に関する。本発明は、インスリン抵抗性の治療のための薬剤を調製するための、前記化合物のいずれかの使用にも関する。加えて、本発明は、前記化合物の投与によるインスリン感受性を増加させるための方法、ならびにインスリン感受性を増加させるための薬剤を調製するための前記化合物の使用に関する。インスリン感受性の急性および一過性疾患、例えば、外傷、外科手術または心筋梗塞後に発生し得るものは、本明細書において教示するように治療することができる。
【0096】
インスリン抵抗性は、多くの臨床状態に関与する。インスリン抵抗性は、広範な濃度にわたってその生物学的作用を発揮するインスリンの能力の低下によって顕示される。インスリン抵抗性の初期段階の間、身体は、この欠陥を補うために異常に高いインスリン量を分泌する。たとえ血中インスリンレベルが慢性的に高かったとしても、インスリンに対する活性筋細胞の代謝応答障害のために、それらはグルコースを有効に吸収することができない。インスリン抵抗性および結果として生ずる高インスリン血症は、幾つかの臨床状態、例えば、メタボリックシンドローム(X症候群とも呼ばれる)の一因となり得る。メタボリックシンドロームは、高インスリン血症、異常脂質血症および耐糖能低下を引き起こす第一インスリン抵抗性段階によって特徴づけられる。メタボリックシンドロームを有する患者は、心血管疾患および/またはII型糖尿病を発現するリスクが高いことが証明されており、本発明の化合物で治療することができる。
【0097】
インスリン抵抗性は、脂質生産に対して負の影響も及ぼし、血流中のVLDL(超低密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)およびトリグリセリドレベルの増加、ならびにHDL(高密度リポタンパク質)低下の一因となる。これは、動脈内の脂肪性プラーク蓄積を招くことがあり、時が経つにつれてそれがアテローム性動脈硬化症につながることがある。従って、本発明の臨床状態は、高脂血症、例えば家族性高脂血症である場合がある。好ましくは、高脂血症は、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症によって特徴づけられる。前記臨床状態は、異常脂質血症および糖尿病性異常脂質血症も包含し得る。ここに含まれる化合物は、血清トリグリセリドレベルを低下させるために、またはHDLの血漿中レベルを上昇させるために利用することもできる。
【0098】
インスリン抵抗性は、血液中の過剰なインスリンおよびグルコースレベルをもたらすことがある。過剰なインスリンは、腎臓によるナトリウム貯留を増加させることがあり、それ故、本発明の方法は、腎臓によるナトリウム貯留を減少させるために利用することができる。高いグルコースレベルは、血管および腎臓を損傷させることがある。それ故、本発明の化合物は、血管および腎臓への傷害を予防するために利用することができる。
【0099】
本発明のもう1つの実施形態において、臨床状態は、PPARガンマによって媒介される炎症性疾患である。用語「PPARガンマによって媒介される」は、PPARガンマがその状態の発現に関してある役割を果たすと理解すべきである。例えば、PPARガンマは、急性炎症などの好中球活性化に関連した炎症に関しては役割を果たさないと考えられる。理論による拘束を望まないが、PPARガンマのアゴニストは、NFκB媒介転写に直接関係し、それを阻害する、および従って、様々な炎症反応、例えば、誘導性亜酸化窒素シンターゼ(NOS)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の酵素経路などを調節することにより、有効な抗炎症薬である場合がある(Pineda−Torra,I.ら,1999,Curr.Opinion in Lipidology,10,151−9)。
【0100】
例えば眼の炎症(J Biol Chem.2000 Jan 28;275(4):2837−44)またはドライアイ疾患(J Ocul Pharmacol Ther.2003 Dec;19(6):579−87)などの炎症性疾患は、急性である場合もあり、または慢性である場合もある。慢性炎症性疾患の実例となる例としては、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、またはクローン病が挙げられる。慢性炎症性疾患は、関節炎、特に関節リウマチおよび多発性関節炎である場合もある。慢性炎症性疾患は、炎症性皮膚疾患、特に尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、バリア機能不全を伴う皮膚疾患、加齢または乾癬、特に乾癬の皮膚作用である場合もある。慢性炎症性疾患は、炎症性神経変性疾患、例えば、多発性硬化症またはアルツハイマー病である場合もある。前記臨床状態は、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎炎症候群、および高血圧性腎硬化症をはじめとする、胃腸疾患および腎疾患である場合もある。
【0101】
本発明のもう1つの実施形態において、前記臨床状態は、PPARガンマの活性化に反応する癌である。従って、前記臨床状態は、例えば、PPAR反応性細胞の異常細胞成長によって特徴づけられる疾患、例えば、脂肪組織において発生する増殖性または腫瘍性疾患、例えば、脂肪細胞腫瘍、例えば脂肪腫、線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫、および/または脂肪肉腫である場合がある。さらに、前立腺、胃、肺および膵臓の一定の癌は、PPARガンマアゴニストでの治療に反応することが立証された。特に、一定の脂肪肉腫、前立腺癌、多発性骨髄腫および膵臓癌が、PPARガンマの活性化に反応することは証明されており、これに対して、少なくとも一部の結腸直腸癌および乳癌は、反応しない(Rumiら,2004,Curr.Med.Chem.Anti−Canc Agents,4:465−77)。神経芽腫および膀胱癌はもちろん、他の乳癌および大腸癌がPPARアゴニストに反応することが、他の研究によって立証された。癌の治療のためのPPARリガンドの使用は、Levy Kopelovich,2002,Molecular Cancer Therapeutics,357によって概説されている。
【0102】
しかし、たとえ癌の一定のタイプがPPARガンマでの活性化に反応することができたとしても、所与のタイプのすべての癌が反応するとは言えない。特に、癌ではPPARガンマの機能欠失型突然変異が発生することが多く、そのような癌は、一般に、反応しない。それ故、癌が機能性PPARガンマを発現することは好ましいことである。
【0103】
前記臨床状態は、感染、例えば、ウイルス感染、特にAIDSまたはHIVによる感染もしくはC型肝炎ウイルスによる感染である場合もある。加えて、本発明のPPARリガンドは、神経疾患におけるもしくは痴呆症における認知機能の改善に、または多嚢胞性卵巣症候群の治療に、または骨量減少、例えば骨粗しょう症の予防もしくは治療に有用であり得る。
【0104】
前記臨床状態は、C型肝炎ウイルスに関係があろうと、なかろうと、しかし、好ましくはPPAR調節に反応する、肝疾患、特にC型肝炎ウイルスによる感染、または脂肪肝、肝臓の炎症、肝臓障害、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎、または肝後性癌である場合もある。前記臨床状態は、マルファン症候群である場合もある。
【0105】
説明の多くがPPARガンマに関係しているが、本発明の化合物および方法は、PPARガンマの調節に限定されない。実際、他のPPARサブタイプが疾病において重要な役割を果たすことは、当業者には明らかであろう。加えて、トロンボキサン受容体がPPAR関連疾患において重要な役割を果たすことも当業者には明らかであろう。例えば、PPARデルタは、脂質代謝障害および創傷治癒、特に表皮創傷治癒に関連付けられている(Soon Tanら,2004,Expert Opinion in Molecular Targets,39)。それ故、前記臨床状態は、上皮創傷治癒をはじめとする創傷治癒である場合もある。
【0106】
本発明は、肥満と糖尿病の同時治療および/または予防のための薬剤を調製するための本発明の化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか)の使用にも関する。この実施形態の中で、糖尿病は、好ましくはII型糖尿病、または糖尿病になるリスクがある個体は、例えば、本明細書において上で説明したメタボリックシンドロームに罹患している個体である。前記肥満になるリスクがある個体は、例えば、体重増加の副作用を有する抗糖尿病化合物での治療を受けている個体である場合もある。
【0107】
本発明は、治療または予防を必要とする個体におけるトロンボキサンに関連した臨床状態の治療または予防、好ましくは治療のための薬剤を調製するための、上で説明した化合物のいずれか、および本明細書に引用する好ましい化合物の使用にも関する。前記臨床状態は、血小板凝集、血管収縮および/または気管収縮の増加によって特徴づけられる臨床状態である場合がある。前記臨床状態は、例えば、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄、ステント誘発過形成、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、家族性高コレステロール血症、川崎病、心室中隔欠損症、IgA腎症、肝腎症候群、肝線維症、糖尿病性腎症、網膜症、糖尿病性網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択することができる。トロンボキサン(TP)に関連した臨床状態は、心筋梗塞、アンギナ、不安定狭心症、卒中、一過性脳血管虚血、片頭痛、アテローム性動脈硬化症、細小血管障害、高血圧、血液凝固障害、ワルファリン節減状態(例えば、外科手術前)、肺塞栓症、気管支喘息、気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、呼吸困難および肺気腫から成る群より選択することもできる。1つの好ましい実施形態において、前記臨床状態は、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、腎障害の遅延(特に、糖尿病患者における)、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移からなる群より、好ましくは、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成および過形成から成る群より選択される。異なるメカニズムによって作用するアスピリン、クロピドロゲル、ワルファリンおよび他の類似の薬剤に耐性の個体は、本明細書において説明する化合物での治療による恩恵を特に受ける。さらに、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがある任意の個体である場合があり、好ましくは、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがあるヒトであり、さらにいっそう好ましくは、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがあることに加えて糖尿病に罹患している個体である。
【0108】
1つの実施形態において、本発明は、血栓症を既に有する、1つ以上の血栓性事象に罹患した、または1つ以上の血栓性事象に罹患している個体における血栓症の治療に関し、前記方法は、上で説明した化合物のいずれかの前記個体への投与を含む。
【0109】
本発明は、臨床状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、上で説明した特定の化合物のうちのいずれかの使用にも関する。前記臨床状態は、メタボリックシンドローム、異常脂質血症、肥満、真性糖尿病、インスリン抵抗性または上で説明したインスリン抵抗性に関連した状態のいずれか、高血圧、心血管疾患、冠動脈再狭窄、自己免疫疾患(例えば、喘息、多発性硬化症、乾癬、局所皮膚炎、および潰瘍性大腸炎)、癌、炎症、創傷治癒、脂質代謝障害、肝疾患(例えば、C型肝炎ウイルスによる感染、またはC型肝炎ウイルスに関係があろうと、なかろうと、脂肪肝、肝臓の炎症、肝臓障害、肝硬変または肝後性癌)、胃腸または腎疾患(例えば、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎炎症候群、または高血圧性腎硬化症)、感染(特に、ウイルス感染)、認知機能障害(例えば、神経障害または痴呆)、多嚢胞性卵巣症候群、骨量減少(例えば、骨粗しょう症)およびAIDSから成る群より選択することができる。
【0110】
癌は、任意の癌、例えば、次のうちのいずれであってもよい:癌腫、肉腫、骨肉腫、白血病およびリンパ腫;腫瘍血管新生および転移;骨格形成異常;肝疾患;ならびに造血性および/または骨髄増殖性疾患。例示的疾患としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星上細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または網膜芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記癌は、PPARガンマの活性化に反応する上述の癌のうちの1つである。
【0111】
心血管疾患は、例えば、アテローム発生、アテローム性動脈硬化症またはアテローム硬化性疾患、血管再狭窄、心筋症もしくは心筋線維症、または上述の心血管疾患のいずれかであり得る。
【0112】
炎症は、例えば、慢性炎症、好ましくは、本明細書において上で述べた慢性炎症のいずれかであり得る。
【0113】
真性糖尿病は、多数の原因因子に由来する疾病プロセスを指し、高い血糖レベル、すなわち高血糖によって特徴付けられる。管理されていない高血糖は、罹患率および死亡率増加ならびに時期尚早の罹患率および死亡率を随伴する。少なくとも2つのタイプの真性糖尿病が特定されている:(i)インスリン(正常生理条件下でグルコース利用を調節するホルモン)の完全欠如の結果である、I型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)、および(ii)II型糖尿病、またはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)。NIDDMは、多数の原因因子に由来する複合疾患であり、任意に循環インスリンレベルを増加させることによりこれに対処することができる。
【0114】
使用および投与
本発明の化合物および/またはそれらの組成物は、トロンボキサンA2および/またはPPARによって引き起こされる動物およびヒトにおける疾病の治療および/または予防に特に使用することができる。これに関連して使用する場合、本化合物をそれ自体で投与することができるが、一般には調合し、医薬組成物の形態で投与する。適格な組成物は、数ある中でも投与方法に依存するであろうし、当業者には明らかであろう。多種多様な適する医薬組成物が、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20thed.,2001に記載されている。
【0115】
本明細書において用いる場合、医薬的に許容される担体は、対象に投与したときに無害な生理反応を有する1つ以上の相溶性固体または液体送達系を意味する。一部の例としては、デンプン、糖、セルロースおよびその誘導体、粉末トラガカントゴム、麦芽、ゼラチン、コラーゲン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、寒天、アルギン酸、発熱物質不含の水、等張食塩水、リン酸緩衝液、および医薬の調合に用いられる他の適する非毒性物質が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤、例えば、湿潤剤および滑沢剤、錠剤形成剤、安定剤、抗酸化物質、および保存薬も考えられる。
【0116】
医薬組成物は、例えば、局所投与、経眼投与、経口投与、口腔内投与、全身投与、経鼻投与、注射、経皮投与、直腸内投与、経膣投与などをはじめとする、事実上、任意の投与方式に適する形態、または吸入もしくは通気による投与に適する形態をとることができる。
【0117】
経口投与に適する調合物は、(a)溶液(例えば、水、食塩水またはPEG 400などの希釈剤に懸濁させた有効量の活性化合物);(b)カプセル、サッシェまたは錠剤(それぞれが、所定量の活性成分を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含有する);(c)適切な液体中の懸濁液;および(d)適するエマルジョンから成り得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色剤、フィラー、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存薬、着香剤、染料、崩壊剤、および医薬適合性の担体のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ形態は、芳香薬、例えばスクロース、中の活性成分、ならびに不活性基剤中の活性成分を含む香錠、例えば、活性成分に加えて当該技術分野において公知の担体を含有するゼラチンとグリセリンまたはスクロースとアラビアゴムのエマルジョン、ゲルおよびその他同種類のものを含むことができる。
【0118】
適切に選ばれた化合物を、単独でまたは他の適する成分との組み合わせで、吸入により投与されるエーロゾル調合物にすることができる(すなわち、それらを「霧状にする」ことができる)。エーロゾル調合物は、加圧された許容される噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素およびその他同種類のものに入れることができる。
【0119】
直腸内投与に適する調合物としては、例えば、坐剤基剤と共にパッケージされた核酸から成る坐剤が挙げられる。適する坐剤基剤としは、天然もしくは合成トリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が挙げられる。加えて、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコールおよびパラフィン炭化水素をはじめとする基剤と適切に選ばれた化合物との組み合わせから成る、ゼラチンレクタルカプセルを使用することもできる。
【0120】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路によるような非経口投与に適する調合物としては、水性および非水性、等張性滅菌注射溶液(抗酸化物質、緩衝液、静菌薬、およびその調合物を所期の受容者の血液と等張にする溶質を含有することがある)、ならびに水性および非水性滅菌懸濁液(懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存薬を含むことがある)が挙げられる。本発明の実施の際、組成物は、例えば、静脈内注入により、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内にまたはクモ膜下に投与することができる。局所投与、経口投与、皮下投与および静脈内投与が好ましい投与方法である。適する溶液調合物の特定の例は、水中の約0.5〜100mg/mLの化合物および約1000mg/mLのプロピレングリコールを含むことができる。適する溶液調合物のもう1つの特定の例は、水中の約0.5〜100mg/mLの化合物および約800〜1000mg/mLのポリエチレングリコール400(PEG400)を含むことができる。
【0121】
適する懸濁液調合物の特定の例は、水中の、約0.5〜30mg/mLの化合物と、約200mg/mLのエタノール、約1000mg/mLの植物油(例えば、トウモロコシ油)、約600〜1000mg/mLのフルーツジュース(例えば、グレープフルーツジュース)、約400〜800mg/mLのミルク、約0.1mg/mLのカルボキシメチルセルロース(または微結晶性セルロース)、約0.5mg/mLのベンジルアルコール(またはベンジルアルコールと塩化ベンズアルコニウムの組み合わせ)および約40〜50mMの緩衝液、pH7(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液またはクエン酸緩衝液か、あるいは緩衝液の代わりに5%デキストロースを使用してもよい)から成る群より選択される1つ以上の賦形剤とを含むことができる。
【0122】
適するリポソーム懸濁調合物の特定の例は、水中の約0.5〜30mg/mLの化合物、約100〜200mg/mLのレシチン(または他のリン脂質もしくはリン脂質の混合物)および任意に約5mg/mLのコレステロールを含むことができる。
【0123】
化合物の調合物は、単回容量または多回容量用密封容器、例えばアンプルおよびバイアルの中に入れて提供することができる。注射溶液および懸濁液は、以前に説明した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0124】
医薬製剤は、好ましくは、単位剤形である。そうした剤形の場合、適切な量の活性成分を含有する単位用量に製剤を細分する。前記単位剤形は、パッケージ製剤である場合があり、このパッケージは、個別量の製剤、例えば、包装錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末を収容している。また、前記単位剤形は、カプセル、タブレット、サッシェもしくはロゼンジそれ自体である場合があり、またはパッケージ形態のこれらのうちのいずれかの適切な数である場合もある。本組成物は、所望される場合、下でさらに詳細に論じる他の相溶性治療薬も含有する。
【0125】
治療用途の場合、本発明の製薬方法に用いられる化合物は、治療的恩恵の獲得に適する投薬レベルで患者に投与される。治療的恩恵は、化合物の投与が、経時的に患者に有益な効果をもたらすことを意味する。
【0126】
ヒトへの投与に適する初期投薬量は、インビトロアッセイまたは動物モデルから決定することができる。例えば、インビトロアッセイで測定して、投与された特定の化合物のIC50を含む血清濃度を達成するように、初期投薬量を調合してもよい。あるいは、ヒトのための初期投薬量は、その疾病の動物モデルにおいて有効であることが判明した投薬量に基づく場合もある。一例として、初期投薬量は、約0.01mg/kg/日から約200mg/kg/日、もしくは約0.01mg/kg/日から約100mg/kg/日、もしくは約0.1mg/kg/日から約50mg/kg/日の範囲内であり得、または約1mg/kg/日から約25mg/kg/日を用いることもできる。しかし、投薬量は、患者の要件、治療する状態の重症度、および利用する化合物に依存して変えることができる。その用量のサイズは、特定の患者における特定の化合物の投与に随伴する任意の有害副作用の存在、性質および程度によっても決まるであろう。特定の状況に適当な投薬量の決定は、現場の人間の技術の範囲内である。一般に、治療は、その化合物の至適用量未満である、より少ない投薬量で開始する。その後、状況下で至適効果に達するまで、その投薬量を少しずつ増やしていく。便宜上、所望される場合には全日用量を分割し、その日中に少しずつ投与してもよい。
【0127】
併用療法
本発明の一定の実施形態において、本発明の化合物および/またはそれらの組成物は、少なくとも1つの他の治療薬との併用療法で使用することができる。本発明の化合物および/またはそれらの組成物と前記治療薬は、相加的に、またはさらに好ましくは相乗的に作用し得る。
【0128】
本発明の化合物は、単独の活性薬剤として投与することができるが、本発明の1つ以上の化合物または他の薬剤と併用することもできる。併用物として投与するとき、それらの治療薬を、同時に、もしくは異なる時に逐次的に投与する別個の組成物として調合することができ、またはそれらの治療薬を単一の組成物として与えることもできる。
【0129】
本発明の化合物と別の医薬製剤との共同投与は、併用薬の有益な効果をもたらすであろうレジメンでの逐次的なそれぞれの薬剤の投与を包含すると解釈し、ならびにこれらの薬剤を実質的に同時に、例えば、これらの活性薬剤の固定比を有する単一のカプセルで、またはそれぞれの薬剤の多数の別個のカプセルで、共同投与することも包含すると解釈する。
【0130】
併用療法は、本発明の化合物と1つ以上の追加の活性薬剤とを含有する単一の医薬投薬組成物の投与、ならびに本発明の化合物とそれぞれの活性薬剤のその固有の独立した医薬投薬量での投与を含む。例えば、本発明の化合物およびインスリン分泌促進物質、例えばスルホニルウレア、チアゾリジンジオン、ビグアニド、メグリチニド、インスリンまたはβ−グルコシダーゼ阻害剤を一緒に、単一の経口投薬組成物、例えばカプセルもしくは錠剤で投与することができ、またはそれぞれの薬剤を別個の経口投薬量で投与することができる。別個の投薬量を用いる場合、本発明の化合物および1つ以上の追加の活性薬剤は、本質的に同じ時に、すなわち同時に投与することができ、または別々に時間をずらして、すなわち逐次的に投与することができる。併用療法は、これらすべてのレジメンを含むと解釈する。
【0131】
あるいは、本化合物は、他の抗腫瘍薬、例えば、p38阻害剤およびCDK阻害剤、TNF阻害剤、メタロマトリックスプロテアーゼ阻害剤(MMP)、EGFR阻害剤(例えば、Iressa)、KDR阻害剤、COX−2阻害剤(クレコキシブ、レフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブおよびエトリコキシブを含む)、NSAID、SOD模倣薬またはαvβ3阻害剤をはじめとするキナーゼ阻害剤との共同療法で使用することもできる。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、単に例証として提供するものであり、限定として提供するものではない。本質的に同様の結果を生じさせるように変化または変更することができる様々な重要でないパラメータは、当業者には容易にわかるであろう。
【0133】
本実施例は、例証のみを目的として提供するものであり、いかなる点においても本発明の範囲を限定するためのものではない。使用する数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期するように努力したが、勿論、多少の実験誤差および偏差を見込むべきである。
【0134】
実施例1
本化合物の一般合成
本化合物の一般合成スキームを下に示す:
【0135】
【化13】

メトキシ−パラコン酸のエステル化
193gのメトキシ−パラコン酸を600mLのTHFに溶解し、その後、室温で10分間かけてCDI(145g、899mmol、1.1当量)を添加した。無水エタノール 65mL(または、メチルエステルを作るためにメタノール)を添加し、その反応混合物を約120分間、攪拌して、188gの化合物23を得た(収率87%)。
【0136】
ラセミメトキシ−パラコン酸・エチルエステルの還元
105gの化合物23(397mmol)を5℃で700mLのトルエンに溶解した。3当量のDIBAL−H(1.19mol、1.19L 1M溶液)を添加し、その反応混合物を60分間、室温で攪拌し、メタノールでクエンチした。生成物化合物24がクロロホルム/へキサンから油性残留物として再結晶した。収量:53g(237mmol、59%)
ラセミラクトールを用いるウィッティヒ反応−ラセミジオールの合成
191gの臭化カルボキシプロピルトリフェニルホスホニウム、無水トルエン 1000mL、および100gのカリウムt−ブトキシドを80℃で30分間混合した。その混合物を室温に冷却し、無水THF 180mLに予め溶解した精製ラセミラクトール24(25g、114.5mmol)を添加した。その混合物を60分間攪拌して、生成物25を得た。収量:26g(88.3mmol、79%)。
【0137】
ラセミジオールのラセミアセトニドへの転化
ジオール25 26g(88mmol)を260mLのジメトキシプロパンに溶解し、26mgのp−TsOHを添加した。その混合物を周囲温度で一晩、攪拌させておいた。ヘキサンとの攪拌によって、生成物アセトニド26を精製した。収量:25g(75mmol)、85%。
【0138】
ラセミアセトニドの脱メチル化
375mLのDMPU中の21.5gのNaHの混合物に、エタンチオール 16.7gを添加した。その混合物を80℃に加熱し、放置して周囲温度に冷却した。その後、75mLのDMPUに溶解したラセミアセトニド(26、15g)を、EtSH/NaHの懸濁液に添加した。その混合物を130℃で2時間加熱した。その後、その反応混合物を氷水に注入し、DCMで抽出した。収量:16.5g(粗製)。
【0139】
ラセミ生成物の調製
脱メチル化ラセミアセトニド27 8.97g、28mmolを15mLの2−クロロベンズアルデヒド、0.5gのp−TsOHおよび60mLのトルエンと混合し、24時間攪拌し、蒸発させた。収量:6.5g(16.7mmol、59%)
実施例2
化合物1の合成
【0140】
【化14】

表1に示す化合物1を、実施例1の方法を用いて合成した。HPLCは、その化合物が99%より高い純度を有することを示し、質量スペクトルは、化合物1に期待される分子イオンおよび分画パターンと一致した。
【0141】
実施例3
化合物4の合成
【0142】
【化15】

表1に示す化合物4を、実施例1の方法を用いて合成した。HPLCは、その化合物が99%より高い純度を有することを示し、質量スペクトルは、化合物4に期待される分子イオンおよび分画パターンと一致した。
【0143】
実施例4
化合物10の合成
【0144】
【化16】

表1に示す化合物10を、実施例1の方法を用いて合成した。HPLCは、その化合物が97%より高い純度を有することを示し、質量スペクトルは、化合物10に期待される分子イオンおよび分画パターンと一致した。
【0145】
実施例5
トロンボキサン受容体結合
この例証的実施例は、TP受容体への化合物1および10の結合を実証するものである。実施例1、2および4に従って化合物を調製した。以下の条件下でのキラルクロマトグラフィーにより、エナンチオマーを単離した:
カラム:250×4.6mm Chiralpak AD−H 5μm
移動相:80/20/0.1のn−ヘプタン/エタノール/トリフルオロ酢酸
流量:1mL/分
検出:230nmでのUV
温度:25℃
サンプルを80/20のn−ヘプタン/エタノールに溶解した
これらの化合物を、下記に従って、本質的にはHedbergら(1988)J Pharmacol.Exp.Ther.245:786−792およびSaussyら(1986)J.Biol.Chem.261:3025−3029によって説明されているように、トロンボキサン受容体結合について放射性リガンド結合アッセイで試験した:
TP受容体放射性リガンド結合試験:
ヒト組換えHEK−293細胞、
リガンド:5nM[3H]SQ−29548
ビヒクル:1%DMSO
インキュベーション時間、温度:25℃で30分
インキュベーションバッファ:50mM Tris−HCl、pH7.4、154mM NaCl
非特異的リガンド:1μM SQ−29548
KD:9.4nM
Bmax:5.1pmol/mg タンパク質
特異的結合:93%
結果を表2に示す。それらは、化合物1および10がTP受容体に結合することを示している(IC50 それぞれ、1.25nMおよび11nM)。従って、本発明の化合物は、化合物A、すなわち、((Z)−6−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)、効力あるトロンボキサン受容体結合剤(IC50:1,43nM)に非常に類似に挙動する。
【0146】
【表2】

化合物A:(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
【0147】
【化17】

化合物B:(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物C:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物D:(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物E:(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物F:(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物1:(Z)−6−(4−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(2−(4−メトキシフェノキシ)フェニル−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物4:(Z)−6−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物10:(Z)−6−(2−(ビフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
IC50計算:
データを半対数変換し、その後、応答に対するlog(アゴニスト)を用いる4変数用量応答曲線 Y=最低値+(最高値−最低値)/(1+10^((LogEC50−X)ヒルの傾き))への非線形回帰−−GraphPad Prismソフトウェア(http://graphpad.com/help/prism5/prism5help.html?usingnonlinear_regression_step_by_s.htm)の可変傾き関数−−を用いて分析した。
【0148】
実施例6
ヒト血小板トロンボキサンシンターゼアッセイ
この実施例は、化合物3およびそのエナンチオマーならびに化合物1、4および10によるトロンボキサンシンターゼ(TS)の阻害を実証するものである。これらの化合物は、実施例1、2および4に従って調製した。
【0149】
これらの化合物を、下記に従って、本質的にはBorsch−Haubold AG,Pasquet S,Watson SP.(1998)Direct inhibition of cyclooxygenase−1 and −2 by the kinase inhibitors SB 203580 and PD 98059.SB 203580 also inhibits thromboxane synthase.J Biol Chem.273(44):28766−72、およびIizuka K,Akahane K,Momose D,Nakazawa M,Tanouchi T,Kawamura M,Ohyama I,Kajiwara I,Iguchi Y,Okada T,Taniguchi K,Miyamoto T,Hayashi M.(1981)Highly selective inhibitors of thromboxane synthetase.1.Imidazole derivatives.J Med Chem.(10):1139−48によって説明されているように、トロンボキサンシンターゼ阻害について試験した:
基質:10μM PGH
ビヒクル:1%DMSO
プレインキュベーション時間、温度:25℃で15分
インキュベーション時間、温度:25℃で3分
インキュベーションバッファ:10mM Tris−HCl、pH7.4
定量法:TxBのEIA定量
結果を表2に示す。それらは、化合物1、4および10がトロンボキサンシンターゼの阻害剤であることを示している。
【0150】
実施例7
血小板凝集
この実施例は、化合物1、4および10による血小板凝集の阻害を実証するものである。これらの化合物は、実施例1、2および4に従って調製した。
【0151】
これらの化合物を、本質的にはPatscheke,H.,and Stregmeier,K.(1984)Investigations on a selective non−prostanoic thromboxane antagonist,BM13,177,in human platelets.Thrombosis Research 33:277−288によって説明されているように、血小板凝集について試験した。
【0152】
TP受容体血小板凝集−ウサギ:
ニュージーランドウサギ(2.75±0.25kg)血小板リッチ血漿
ビヒクル:0.3%DMSO
アッセイ:1.5μMのU−46619によって誘導した血小板凝集の阻害
インキュベーション時間、温度:37℃で5分
インキュベーションバッファ:クエン酸三ナトリウム(0.13M)で処理した血小板リッチ血漿
浴容量:0.5mL
標定時間:5分
定量法:光学密度変化
TP受容体血小板凝集−ヒト:
ヒト(60±10kg)血小板リッチ血漿
ビヒクル:0.3%DMSO
アッセイ:3μMのU−46619によって誘導した血小板凝集の阻害
インキュベーション時間、温度:37℃で5分
インキュベーションバッファ:クエン酸三ナトリウム(0.13M)で処理した新鮮な血小板リッチ血漿
浴容量:0.5mL
標定時間:5分
定量法:光学密度
結果を表2に示す。それらは、化合物1、4および10が血小板凝集の効力ある阻害剤であることを示している。
【0153】
実施例8
マウスモデルにおける動脈血栓症に対する効果
この実施例は、マウスモデルにおける動脈血栓症に対する化合物1、4、10およびC(化合物Aの活性エナンチオマー)の効果を実証するものである。これらの化合物は、実施例1、2および4に従って調製した。化合物A(ラセミ体)は市販されており、そのそれぞれのエナンチオマーに分離することができる。
【0154】
材料
●ビヒクル(DMSO/PEG 400、5/95)
●ビヒクル中、1、3、10、30、100および300mg/kgの化合物1、化合物4、化合物10または化合物C、すなわち((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の用量
●食塩水
●アスピリン(ビヒクル中、100mgおよび600mg/kgの用量)
●アスピリン(Sanofi SynthelaboからのAspegic;食塩水に溶解したもの)
●クロピドグレル(Sanofi PharmaからのPlavix;HOに溶解したもの)。
【0155】
それらの溶液を食塩水中で3.3倍希釈し、100μL/25gを注射する。化合物の100および300mg/kgの上述の用量は、30および100mg/kgの最終用量に対応する。
【0156】
PEGは非常に吸湿性であること、およびDMSOは非常に低濃度で、エクスビボで血小板凝集に影響を及ぼすことに留意しなければならない。マウスにおける静脈内注射について、この用量は、好ましい溶媒でないようである。
【0157】
実験中、食塩水で希釈した薬物の可溶性塩(化合物Cのカリウム塩)を供給した。この調合物の100μL/25gを尾静脈に静脈内注射した(100mg/kgの用量)。
【0158】
血栓症モデル
溶液(100μL/体重25g)を2分かけて尾静脈に静脈内注射して、30mg/kgおよび100mg/kgのそれぞれの化合物の用量を達成する。200mg/kgのアスピリンを同じように与える。実験前6〜7時間の時点で20mg/kgの用量のクロピドグレルを強制経口栄養によって投与する。それぞれの群に割り付ける動物の体重を合わせる。マウスは、一般に週齢8〜10週の雄であり、100%Swiss遺伝的背景のものである。
【0159】
動脈血栓症モデルは、本質的にはNagaiら(Nagai N,Lijnen HR,Van Hoef B,Hoylaerts MF,Van Vlijmen BJM.Nutritionally induced obesity reduces the arterial thrombotic tendency of Factor V Leiden mice.Thromb. Haemost,(オンラインで発表したもの;doi:10.1160/TH07−04−0306))によって記載されたとおりに行う。簡単に言うと、5%FeCl溶液をいっぱいにしみ込ませたティッシュペーパーの小片をマウスの単独大腿動脈上に2分間置き、その後、食塩水で入念に洗浄する(静脈内注射後約10分の時点で適用を開始する)。走査レーザードップラー流量計を使用して後脚の血流をモニターし、30分間、15秒間間隔でデジタル画像を収集する(FeCl処置を止めた1分後に開始)。それぞれの画像中の流量を反対側でのものに対する百分率として表示し、データを120すべての画像について平均して、総流量を決定する。同じ分析を10分間隔についても行う(これは、曲線下面積と本質的に同じ情報をもたらす)。流量0%を示した最初の画像として閉塞時間を記録する。処置前の流量を100%として記録し、閉塞した動脈におけるものを0%として記録する。実験終了時、血球数の決定のために心臓穿刺により0.01Mのクエン酸塩上に血液を回収する。遠心分離により血漿を準備し、薬物レベルの判定のために−20℃で保管する。
【0160】
二群間の差についての統計解析は、非母数スチューデントt検定によって行う。統計解析のために、閉塞時間>30分を30分に等しいと見なした。p<0.05で有意と設定する。
【0161】
結果
合計60匹のマウスをこの試験で使用し、これらのうち4匹を、投薬スキームを至適化するための予備実験で使用した。
【0162】
閉塞時間
●200mg/kgのアスピリンは、閉塞時間に対して効果を有さない;ビヒクルと比較して多少短い閉塞時間は、ビヒクル群において閉塞が遅れる2つの実験に起因する(これらなしで、平均±SEM=7’18’’±0’33’’)。
【0163】
●クロピドグレルは、6/7実験において30分以内に閉塞を完全に防止する。1つの実験では、急速な閉塞が観察される。
【0164】
●ビヒクル中30mg/kgの用量での化合物C((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、アスピリンと比較して閉塞時間をわずかに延長する(p=0.024)が、ビヒクルと比較すると効果がない。
【0165】
●ビヒクル中100mg/kgの用量での化合物C((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、アスピリンに対して閉塞時間を延長する(p=0.0002)が、ビヒクルのみに対してはしない(p=0.095)。1つの実験は、間欠的閉塞およびリフローを示した。最初の閉塞時間を統計解析に使用した。
【0166】
●化合物1、4および10のそれぞれが、閉塞時間を延長する。
【0167】
血流
●200mg/kgでのアスピリンは、全血流量に対して有意な効果を有さない(ビヒクルに対してp=0.53)。
【0168】
●クロピドグレルは、全血流量を有意に改善した(実験B130を含めて、ビヒクルに対して、p=0.0087)。
【0169】
●ビヒクル中30mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、全血流量に対して効果を有さない(ビヒクルに対してp=0.84、およびアスピリンに対してp=0.65)。
【0170】
●ビヒクル中100mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、アスピリンと比較して全血流量をわずかに改善した(p=0.055)が、ビヒクルと比較するとしなかった(p=0.45)。
【0171】
●化合物1、4および10のそれぞれが、全血流量を改善する。
【0172】
●すべての群において、時間に伴う血流量の進展は、一般に、観察された閉塞時間に適合する。0〜10分の時間枠では、投与したビヒクル中100mg/kgの(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、アスピリンと比較して有意に高い流量を随伴する(p=0.0002)が、ビヒクルのみと比較するとしない(p=0.11)。同じ傾向が、もっと遅い時間点で観察される。
【0173】
実施例9
PPARガンマ結合アッセイ
この実施例は、本明細書に記載する化合物の特性を例証するために化合物1および4がヒト組換えPPARガンマに結合することを実証するものである。
【0174】
化合物は、実施例1および2に従って調製した。化合物A(ラセミ体)は市販されており、実施例5に従ってそのそれぞれのエナンチオマーに分離することができる。
【0175】
ヒト組換え(大腸菌(E.coli)PPARガンマ)(h)結合アッセイ:
リガンド濃度:[3H]−ロシグリタゾン 10nM
非特異的結合:ロシグリタゾン(10μM)
インキュベーション:4℃で120分。
【0176】
試験化合物の存在下で得られた対照特異的結合のパーセント((測定された特異的結合/対照特異的結合)×100)として結果を表示する。IC50値(対照特異的結合の最大阻害の半分を生じさせる濃度)およびヒル係数(nH)は、Hillの式の曲線への当てはめ(Y=D+[(A−D)/(1+(C/C50)nH]、この式中、Y=特異的結合、D=最小特異的結合、A=最大特異的結合、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾き係数)を用いて平均反復値で生成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定した。Cerepで開発されたソフトウェア(Hill software)を用いてこの分析を行い、市販のソフトウェア Windows(登録商標)用SigmaPlot(登録商標)4.0((著作権)SPSS Inc.により1997)によって生成したデータとの比較により確認した。阻害定数(Ki)は、Cheng Prusoffの式(Ki=IC50/(1+(L/KD))、この式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性)を用いて計算した。
【0177】
【表3】

データは、化合物1および4が、化合物Aと少なくとも同様にPPARガンマに結合することを示している。
【0178】
実施例10
グルコース取込みアッセイ
この実施例は、PPARガンマアゴニストとして同定された化合物が、細胞アッセイにおいてPPARガンマアゴニストの予想される生理作用、すなわち、グルコース取込みに対する作用、も誘導することを例証するものである。グルコース取込みアッセイは、インスリン抵抗性の治療のための化合物の適性を確立するために重要である。
【0179】
簡単に言うと、96ウエルプレートで培養した3T3−L1脂肪細胞においてグルコース取込みを測定する。(MDIプロトコル、上記参照、に従って)分化第6日目に、細胞をビヒクル、陽性対照(Avandia)または試験化合物のいずれかで処理する。48時間後、インスリンに反応してグルコースを取り込む脂肪細胞の能力を判定する。細胞を無血清DMEM+抗生物質で洗浄し、同培地中、37℃で2時間インキュベートする。その後、細胞を洗浄し、その後、Krebs−Ringer−Hepes(KRP)バッファ中で30分間、37℃で洗浄する。その後、それらの細胞にインスリンを10nMの最終濃度まで添加し、その後、細胞を37℃で15分間インキュベートする。10mMの[14C]2−デオキシ−D−グルコースを補足したKRPバッファの添加によって、グルコース取込みを開始させる。37℃での15分間のさらなるインキュベーション後、大過剰の冷グルコースの添加および氷冷PBSの3回の急速洗浄により、グルコース取込みを停止させる。その後、細胞を溶解し、14C放射活性をシンチレーションカウンティングによって判定する。
【0180】
結果を表3に示す。それらは、グルコース取込みアッセイにおいて化合物1および4が化合物Aより良好でないにせよ同様の効果を有することを明示している。
【0181】
実施例11
この実施例は、血清グルコースレベルに対する化合物のインビボ効果を実証するものである。
【0182】
KKAマウス
週齢6週の52匹の雄KKAマウスを商業的に(例えば、Clea Japanから)入手し、到着し次第、高脂肪食を与える。個々のマウスを、環境順化段階と実験段階の両方の間、IVC Type IIケージに収容した。食餌(高脂肪食)と水の両方を無制限に供給する。
【0183】
ケージごとに動物1匹。昼12時間、夜12時間。午前06:00に点灯。温度:21〜25℃。相対湿度目標範囲:55〜60%。
【0184】
マウスをそれらの4時間絶食時血糖に従って治療群に無作為に割り付けた。
【0185】
群:
ビヒクル、化合物3、化合物13、((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(53mg/kg)、ロシグリタゾン(5mg/kg;陽性対照)。
【0186】
治療:
14日の強制経口栄養、1日2回、12時間ごと。
【0187】
完了:
最終投与の4時間後、非絶食状態。
【0188】
高脂肪食
ガンマ線照射高脂肪食は市販されている(例えば、ニュージャージー州、ニューブランズウィックのResearch Diets,Inc.(製品番号D12266BI))。
【0189】
血糖
Glucotrend stick(Roche Diagnostics Art # 28050)を使用して全血中または血清中(下記参照)、いずれかのグルコースを測定する。
【0190】
ヘマトクリット
ヘパリンが入っているガラスキャピラリーに血液を採取し、その後、それを室温で10分間、「Haematokrit 24」遠心分離機(Hettich)において15’200×gで遠心分離してヘマトクリット値を得る。
【0191】
血清パラメータ
以下の血清パラメータを、COBAS INTEGRA 800自動分析装置(スイスのRoche Diagnostics)を用い、供給業者によって提供された試薬およびプロトコルを用いて判定する。
【0192】
【数2】

HbA1c Roche Diagnostick キット(オーダー番号11822039216)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して、Hitachi 917自動分析装置で判定する。
【0193】
以下の血清パラメータは、マイクロタイタープレートフォーマットで測定する
インスリン 1マイクロリットルのサンプルにおいて、ELISA キット(Mercodia,Uppsala、オーダー番号10−1149−01)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して判定する。
フルクトサミン 5マイクロリットルの血清において、Roche Diagnostics キット(オーダー番号11930010216)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して、96ウエルフォーマットで判定する。
FFA NEFA C キット(Wako Chemcals GmbH D−42468 Neuss)をその供給業者のプロトコルに従って使用して、遊離脂肪酸を測定する。
【0194】
第12日に行った食餌摂取量および体重測定を除き、すべての測定を投与第14日目に行う。
【0195】
第12日に、マウスの数は、10匹(ビヒクル)、14匹(化合物3)、14匹(化合物13)、14匹((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、53mg/kg)および10匹(ロシグリタゾン)である。
【0196】
結果
【0197】
【表4】

化合物3および13は、すべてのパラメータに対して(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸と同様の効果を有する。
【0198】
循環グルコースは、実際のレベルを反映するので、糖尿病の診断のために診療所で行われている主な測定の1つである。グルコース低下化合物の主目的は、循環グルコースを低下させることである。
【0199】
結論:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸と陽性対照(ロシグリタゾン)の両方が、高血糖マウスにおいて循環グルコースレベルを低下させた(後者のほうがわずかに大きく低下させた)。これは、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のグルコース低下効果を示している。化合物3および13は、同様の効果を有する。
【0200】
フルクトサミン(グリコシル化血液タンパク質から形成される)およびHbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)は、長期間にわたって組み込まれた循環グルコースレベルを反映する。血液タンパク質は、非酵素的様式で不可逆的にグリコシル化される。赤血球と比較すると血清蛋白質の寿命のほうが短いため、フルクトサミンは、より短い範囲のパラメータであると考えられる。
【0201】
結論:HbA1cレベルは、陽性対照(ロシグリタゾン)によってならびに(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、化合物3および13によって低下され、フルクトサミンレベルは、試験条件下で影響を受けない。PPAR−γアゴニストが、即効性を有さず、開始に多少の時間、ヒトでは2〜3週間、を要し、最大効果に達するためにさらに長い時間を要することは公知である。グルコースレベルは、HbA1cおよびフルクトサミンレベルに対して一様な影響を及ぼすには低い規模のものであり得、十分に長い期間存在できなかった。これは、長期投与によって克服される。
【0202】
インスリンは、循環から組織、例えば筋肉、脂肪組織および脂肪へのグルコース取込みを増加させるホルモンである。KKAマウスは、高インスリン血症モデルであり、すなわち、インスリン不足はない。
【0203】
結論:陽性対照のみがインスリンレベルを低下させた。これは、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸が、至適効果のために、より長い投与を必要とし得ることを示唆している。
【0204】
トリグリセリド(TG)、総コレステロールおよび遊離脂肪酸(FFA)の高い循環レベル、ならびに低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールは、心血管疾患のリスク因子である。
【0205】
結論:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、化合物3および化合物13は、FFAを減少させる。陽性対照(ロシグリタゾン)はHDLを増加させ、トリグリセリドおよびFFAを減少させる。
【0206】
チオグリタゾン(市販のPPARアゴニスト)の副作用の1つは、マウスおよびヒトにおいて体重を増加させることであるので、マウスの体重を測定した。さらに、体重減少は、副作用の指標である。
【0207】
結論:体重は、陽性対照(ロシグリタゾン)によって増加される。(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、化合物3および化合物13は、体重を変えない。
【0208】
心臓重量も測定する:
結論:ロシグリタゾン群では、おそらく最終時点での体重増加を補って、心臓重量が増加される。(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、化合物3または化合物13治療は、心臓重量に影響を及ぼさない。
【0209】
ヘマトクリットの増加は、脱水症、すなわち水分摂取量の減少の傾向を示す。
【0210】
結論:ヘマトクリットに対する影響はいずれの群においても観察されない。これは、脱水症がなかったことを示唆している。
【0211】
一般的な肝機能マーカー酵素であるアルパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルカリホスファターゼ(ALP)を測定して、肝臓に対して副作用がないことを確かめる。
【0212】
結論:血清AST、ALTおよびALPは、増加されない。これは、使用した用量に副作用が全くないことを示唆している。
【0213】
本明細書に引用するすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が参考として援用されると具体的におよび個々に示されているがごとく、本明細書に参考として援用される。
【0214】
明確に理解できるように図表および実施例により多少詳細に上の発明を説明したが、本発明の教示にかんがみて、添付の特許請求の範囲において定義する本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に一定の変更および修正をなすことができることは、当業者には容易に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化18】

(式中、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、アラルコキシル、アルキルカルバミド、アリールカルバミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、スルホ、アルキルスルホニルアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルまたはヘテロアリールであるように独立して選択される)。
【請求項2】
式(II)の化合物:
【化19】

(式中、
、RおよびRは、水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、アラルコキシル、アルキルカルバミド、アリールカルバミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、スルホ、アルキルスルホニルアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルまたはヘテロアリールであるように独立して選択され;そして
Arは、フェニル、フェノール、アニリン、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、またはp−メトキシフェニルである)。
【請求項3】
Arが、フェノールである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Arが、o−メトキシフェニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Arが、m−メトキシフェニルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
式(IV)の化合物:
【化20】

(式中、
Xは、直接結合、O、S、NR、(CR10、O(CR10、または(CR10Oであり、ここで、R、RおよびR10は、H、OH、低級アルキル、フェニル、アリール、ヘテロアリールから独立して選択されるか、または一緒になってオキソを形成し;
nは、0、1、2、3、4または5であり;
mは、0と10の間の整数であり;
は、H、OH、ハロゲン、アルコキシルまたはアルキルであり;ならびに
は、直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル、アリル、シクロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから成る群より選択される)。
【請求項7】
nが、1または2である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、OHまたはOMeである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
が、H、OHまたはOMeである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Xが、O、NH、またはCHOである、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
が、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換ヘテロアリールである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、H、OH、またはアルコキシである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
が、フェニル、メトキシフェニル、フルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、クロロフェニル、またはジクロロフェニルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Xが、Oである、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
が、フェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、クロロメチルフェニル、またはトリフルオロメチルフェニルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Xが、NRである、請求項6に記載の化合物。
【請求項17】
が、H、メチル、またはフェニルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、フェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、クロロメチルフェニル、またはトリフルオロメチルフェニルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
トロンボキサンA2またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体を調節する方法であって、該受容体を、式(I)の化合物:
【化21】

(式中、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、アラルコキシル、アルキルカルバミド、アリールカルバミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、スルホ、アルキルスルホニルアミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニルまたはヘテロアリールであるように独立して選択される)
と接触させることを含む、方法。
【請求項20】
トロンボキサンA2またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に関連した疾患を治療または予防するための方法であって、有効量の請求項1の化合物またはその許容される塩、N−オキシド、水和物もしくは溶媒和物、および医薬的に許容される担体または希釈剤を対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記疾患が、癌である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、家畜である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、ヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
対象におけるPPAR媒介性疾患または状態である臨床状態の治療または予防に有用な医薬組成物を調製するための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項25】
糖尿病、癌、炎症、AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症から成る群より選択される臨床状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、請求項24に記載の化合物の使用。
【請求項26】
PPAR媒介性疾患または状態である臨床状態の治療または予防を必要とする個体において該状態を治療または予防する方法であって、治療有効量の請求項1から18のいずれかに記載の化合物を該個体に投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記臨床状態が、糖尿病、癌、炎症、AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症から成る群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
トロンボキサンに関連した臨床状態を治療または予防する必要がある個体において該状態を治療または予防するための薬剤として使用するための、請求項1から18のいずれかに記載の化合物。
【請求項29】
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記臨床状態が、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、請求項28または29に記載の化合物。
【請求項31】
前記臨床状態が、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成および過形成から成る群より選択される、請求項28から30のいずれかに記載の化合物。
【請求項32】
前記個体が、I型およびII型糖尿病から選択される糖尿病に罹患している、請求項28から31のいずれかに記載の化合物。
【請求項33】
トロンボキサンに関連した臨床状態を治療または予防する必要がある個体において、該状態を治療または予防する方法であって、治療有効量の請求項1から18のいずれかに記載の化合物を該個体に投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から18のいずれかに記載の化合物を活性成分として含む、トロンボキサンに関連した臨床状態を治療または予防する必要がある個体において該状態を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項36】
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1から18のいずれかに記載の化合物の遅延放出、調節放出、持続放出または制御放出のための医薬組成物。
【請求項38】
少なくとも1つの放出速度調節剤を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記放出速度調節剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピレンオキシド、クレモフォール、トウモロコシ油グリセリドおよびプロピレングリコール、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、水素化ヒマシ油、カルナバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、ならびにこれらの混合物から成る群より選択される、請求項38に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−516700(P2010−516700A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546561(P2009−546561)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/051522
【国際公開番号】WO2008/089462
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508217685)
【Fターム(参考)】