説明

羅漢果エキスを含有する創傷治癒促進組成物と適用方法

【課題】創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷の治癒に関わる生体の再生能を積極的に促進し、損傷完治までの時間の短縮を達成し、且つ副作用の危険が有意に低減された安全性の高い組成物を提供する。
【解決手段】羅漢果由来の成分を含む、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための間接投与用医薬組成物、および羅漢果由来の成分を含む、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための食品組成物を提供する。一つの実施形態において、上記間接投与は、上記処置されるべき部位以外の部位に投与することによって達成される。一つの実施形態において、上記成分は、羅漢果抽出物である。代表的には、上記羅漢果抽出物は少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む。この羅漢果配糖体は、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羅漢果由来の成分を含む、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための間接投与用医薬組成物に関する。本発明はまた、羅漢果由来の成分を含む、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷に対し、主に、抗生物質の経口投与又は外傷への直接的な塗布による細菌感染症の予防、抗炎症剤の投与による炎症の低減、鎮痛剤投与による疼痛の軽減などの治療が行われている。しかしながらこれらの治療は、細菌感染、炎症、疼痛などの2次的な障害を低減しようとする治療でしかなく、皮膚症状の治癒は生体の皮膚再生能力に頼ることが多いため、生体に備わる皮膚の上皮組織における損傷の治癒効果を積極的に促進する薬物の開発が望まれている。
【0003】
現在、そのような生体に備わる皮膚の上皮組織における損傷の治癒能を積極的に促進する皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を有するものの一つとして、羅漢果抽出物を含む局所塗布用の組成物が知られている(特許文献1および特許文献2を参照のこと)。羅漢果は、中国広西省の桂林周辺に生育する、ウリ科、ツルレイシ属の植物の果実である。羅漢果の乾燥果実から得られる羅漢果エキスは、強い甘味質を有する薬用の甘味料として知られている。また、特許文献3、特許文献4および特許文献5は、肌荒れ等の防止または改善のための、羅漢果抽出物を含む化粧料を開示している。
【0004】
しかしながら、このような局所塗布用の組成物においては、細菌などの夾雑物または不純物の混入の副作用の危険性が非常に大きい。そのため、直接的な局所塗布ではない投与形態によって投与可能な、皮膚の上皮組織における損傷の治癒の促進のための組成物が望まれている。
【0005】
上述のように、羅漢果抽出物については、副作用の危険の大きい局所塗布によって皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を奏することが知られているものの、局所塗布以外の投与形態によって皮膚の上皮組織における損傷の治癒が促進されるということは、報告されていない。羅漢果抽出物は、甘味料として経口的に利用されているが、この利用はあくまで甘味料としてのものであり、皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進については何ら意図されていない。
【0006】
局所塗布によってある標的部位に対して効果を奏する成分が経口投与によっても同じ効果を奏するためには、その成分が代謝されずにその標的部位に達することが必要である。しかしながら、消化管における分解を受ける可能性、その後、吸収され血中に輸送されたとしても肝臓等における代謝を受ける可能性が高く、当然かなりの割合の有効成分が代謝され、そのまま標的部位に達することはない。そのため、経口投与では、局所塗布と同等のレベルの効果を望むことは困難であり、局所塗布によって効果を奏する成分が経口投与によって同等の効果を奏することは、極めて稀有である。例えば特許文献1は、羅漢果抽出物含有組成物を経口投与することを記載してはいるが、経口投与による効果については何ら実証されていない。
【特許文献1】特開2001−26547号公報
【特許文献2】特開平10−182406号公報
【特許文献3】特開2007−106733号公報
【特許文献4】特開平10−130137号公報
【特許文献5】特開2001−322939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚の上皮組織における損傷の治癒に関わる生体の再生能を積極的に促進し、皮膚の上皮組織における損傷の完治までの時間の短縮を達成し、且つ副作用の危険が有意に低減された安全性の高い組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鑑みて鋭意研究を重ねた結果、羅漢果(Siraitia grosvenonii C.Jeffrey ex A. M. Lu & Zhi Y.Zhang (Momordica grosvenori Swingle))由来の成分を間接投与することにより、皮膚の上皮組織における損傷の治癒が飛躍的に促進され、かつ副作用も生じないことを見出し、上記課題を解決した。本発明の組成物は、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷の治癒過程の初期段階である炎症期(マクロファージの活性化、タンパク分解から、壊死組織の除去などが起こる)を速やかかつ効率的に経過させることにより、創傷治癒までの時間を顕著に短縮し得る。本発明は、皮膚の上皮組織における損傷の治癒に関わる生体の再生能を積極的に促進し、皮膚の上皮組織における損傷の完治までの時間の短縮を達成し、且つ副作用の危険が有意に低減された安全性の高い組成物を提供する。予想外にも、本発明の組成物は、局所塗布用組成物と同等の皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を、間接投与によって達成することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下を提供する。
【0010】
一つの局面において、本発明は、羅漢果由来の成分を含む、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための間接投与用医薬組成物を提供する。
【0011】
一つの実施形態において、上記間接投与は、上記処置されるべき部位以外の部位に投与することによって達成される。
【0012】
一つの実施形態において、上記間接投与は、経口投与、経鼻投与、経管投与または経腸投与である。
【0013】
一つの実施形態において、上記間接投与は経口投与である。
【0014】
一つの実施形態において、上記処置されるべき部位は、創傷または潰瘍である。
【0015】
一つの実施形態において、上記成分は、羅漢果抽出物である。
【0016】
一つの実施形態において、上記羅漢果抽出物は少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む。
【0017】
一つの実施形態において、上記羅漢果配糖体は、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される。
【0018】
一つの局面において、本発明は、羅漢果由来の成分を含む、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための食品組成物を提供する。
【0019】
一つの実施形態において、上記処置されるべき部位は、創傷である。
【0020】
一つの実施形態において、上記成分は羅漢果抽出物である。
【0021】
一つの実施形態において、上記羅漢果抽出物は少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む。
【0022】
一つの実施形態において、上記羅漢果配糖体は、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される。
【0023】
本発明の組成物は、経口投与のような間接投与によって投与されて創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷の治癒を促進する。本発明の組成物は局所塗布によって投与されるものではないため、細菌などの夾雑物または不純物の混入の副作用の危険性が顕著に低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷の治癒に関わる生体の再生能を積極的に促進し、皮膚の上皮組織における損傷の完治までの時間の短縮を達成し、且つ副作用の危険が有意に低減された安全性の高い組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本発明を以下に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0026】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきではない。本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは、当業者に明らかである。
【0027】
本発明者らは、羅漢果由来の成分を含有する組成物を、皮膚の上皮組織における損傷を有する被験体に適用することにより、種々の皮膚の上皮組織における損傷の治癒が促進され、かつ副作用も生じないことを見出し、本発明を完成した。本発明の組成物は、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷の治癒過程の初期段階である炎症期(マクロファージの活性化、タンパク分解から、壊死組織の除去などが起こる)を速やかに、かつ効率的に経過させることにより、その損傷の治癒までの時間を顕著に短縮し得る。本発明は、皮膚の上皮組織における損傷の完治までの時間の短縮を達成し、且つ安全性の極めて高い組成物を提供する。
【0028】
羅漢果(学名:Momordicae Grosvenori)は、ウリ科の多年生草本の薬用植物であり、古代より中国の民間薬として広く利用されており、現在でも中国広西省チアン族自治区の桂林周辺の高冷地で栽培される特産品の一つである。羅漢果の果実の有する薬効は、のどの荒れおよび痛みの緩和、咳止め、去痰、気管支炎の緩和、扁桃腺炎の緩和、解熱、胃腸の機能促進、ストレス解消、利尿、便秘解消など多数にのぼる。近年ではさらに、羅漢果の果実には、高血圧症、糖尿病などを防止する作用、老化防止作用、フリーラジカル消去作用および抗過酸化効果などを有する成分が含まれていることが明らかになっている(「基礎と臨床」27(8)、3159−3166(1993))。
【0029】
本明細書中で使用される場合「羅漢果由来の成分」とは、羅漢果に由来する任意の成分をいう。この成分は、羅漢果から抽出・単離等を行っていない成分(例えば、羅漢果の粉末)であってもよいし、羅漢果から抽出・単離された成分(例えば、羅漢果抽出エキス)であってもよい。代表的には、羅漢果由来の成分は、羅漢果抽出物である。本発明において羅漢果抽出物を得る方法としては、水蒸気蒸留法、圧搾法、アルコール等の溶剤による溶剤抽出法、超臨界抽出法等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい羅漢果抽出物としては、熱抽出物が挙げられ、60℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは90℃〜100℃の温度の加温水で抽出し、濃縮したものである。この水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、好ましくはイオン交換水または蒸留水が用いられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「皮膚の上皮組織における損傷」とは、皮膚の上皮組織に生じる任意の損傷をいい、例えば創傷または潰瘍が含まれる。本明細書中で「創傷」とは、外的、内的要因によって起こる体表組織の物理的な損傷を意味し、その形状及び受傷機転により、切創、裂創、刺創、咬創、銃創、挫創、挫傷等が挙げられる。本明細書中で「潰瘍」とは、生体表面における連続性が離断した任意の状態をいい、主に皮膚または粘膜に欠損が生じた状態をいう。本発明における皮膚症状は、代表的には創傷である。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「間接投与」とは、皮膚の上皮組織における損傷患部への直接的な局所塗布以外の、処置されるべき部位以外の部位への任意の投与をいう。患部への直接的な局所塗布ではなく、かつ細菌等の夾雑による副作用が局所塗布と比較して低減されるような投与形態は全て、本発明の「間接投与」に含まれる。本発明における間接投与とは、例えば、経口投与、経鼻投与、経管投与または経腸投与であるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、代表的には、経口投与によって投与される。
【0032】
本発明の組成物は、投与開始から1日後に、滅菌精製水を投与した被験体(コントロール)の場合と比較して、創部面積の減少率を有意に増大させ得る。創部面積は、例えば以下のように測定し得る。まず創部にパラフィルムをあて、写し取った創部の境界線に沿ってパラフィルムを切り取り、その重量を測定する。次いで、面積既知のパラフィルムの重量を基準に、その創部の面積を算出する。
【0033】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、間接投与された場合に、コントロールと比較して、投与開始から1日後、2日後、3日後、4日後または5日後に、創部面積の減少率を少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%、あるいはそれ以上増大させ得る。
【0034】
本発明において、被験体とは、本発明の組成物の投与を目的とする任意の生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))をいう。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)が被験体であり得る。最も好ましくはヒトが被験体であり得る。
【0035】
(羅漢果抽出物)
本発明において、羅漢果由来の成分は、代表的には羅漢果抽出物である。本発明において、羅漢果抽出物は、少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む。羅漢果配糖体は、一般には黄色〜黄褐色粉末の形状である。羅漢果配糖体は、例えば、羅漢果の果実を洗浄し、粉砕した後、水で抽出して得られた抽出液について濾過、カラム吸収、カラム分離、回収、濃縮、乾燥などの工程を行なうことにより製造される。羅漢果配糖体は、日本国内で市販品として入手可能である。
【0036】
本明細書中で、羅漢果配糖体とは、羅漢果に含まれる任意の配糖体を意味し、モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV、シアメノサイドIなどの高甘味度を有する配糖体を包含する。本明細書において「配糖体」との用語は配糖体の混合物をも包含する。
【0037】
モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドVおよびシアメノサイドIは、以下の一般式で示される。
【0038】
【化1】

【0039】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、医薬品、食品、または飼料のいずれかであり得る。好ましい実施態様では、本発明の組成物は食品であって、上記の羅漢果配糖体を添加する組成物を包含する。
【0040】
羅漢果配糖体は、天然の羅漢果植物体から抽出および単離してもよいし、合成してもよい。羅漢果配糖体は、当業者に公知の抽出および分離方法を用いて製造され得る。具体的には、例えば、羅漢果配糖体は、以下の方法により得ることができる。羅漢果の果実をメタノール抽出してメタノールエキスを得る。メタノールエキスを水と混合し、N−ヘキサンで脱脂する。脱脂後のメタノールエキスをカラムクロマトグラフィーにかけて80%メタノール、100%メタノール、およびアセトンで順次溶出し、粗配糖体画分である80%メタノール画分を得る。得られた粗配糖体画分をメタノールに溶解した後、シリカゲルと混合し、乾燥し、次いでこのシリカゲルをクロロホルム−メタノールの混合溶媒で溶出することにより、配糖体画分を得る。得られた配糖体画分を液体クロマトグラフィーにかけることにより、さらに高純度の配糖体画分を入手し得る。本発明の組成物には、単独種または複数種の羅漢果配糖体が含有され得る。本発明の組成物は、医薬品、食品のいずれかであり得る。
【0041】
本発明の好ましい実施態様では、羅漢果の果実を収穫後に乾燥することなく、配糖体の抽出工程を行う。本発明に用いられる羅漢果の果実の水分含量は、代表的には約30%、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上である。1つの好ましい実施態様では、羅漢果の果実の水分含量は、約70%〜80%である。完熟した羅漢果の果実を原料とすることが好ましい。当業者は、羅漢果が完熟していることを、果実の色合い、果実の形状などから経験的に判断し得る。本発明の羅漢果エキスは、当業者に公知の抽出および分離方法を用いて製造され得る。
【0042】
具体的には、例えば、本発明の羅漢果エキスは、以下の方法により得られ得る。羅漢果の果実をメタノール抽出してメタノールエキスを得る。メタノールエキスを水と混合し、N−ヘキサンで脱脂する。脱脂後のメタノールエキスをカラムクロマトグラフィーにかけて80%メタノール、100%メタノール、およびアセトンで順次溶出し、粗配糖体画分である80%メタノール画分を得る。得られた粗配糖体画分をメタノールに溶解した後、シリカゲルと混合し、乾燥し、次いでこのシリカゲルをクロロホルム−メタノールの混合溶媒で溶出することにより、配糖体画分を得る。得られた配糖体画分を液体クロマトグラフィーにかけることにより、さらに高純度の配糖体画分を入手し得る。
【0043】
(医薬組成物)
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される原材料をさらに含み得る。例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などが挙げられる。本発明の医薬組成物は、これらの原材料を単独種または複数種含み得る。
【0044】
本発明の医薬組成物は、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、甘味剤および香味剤など、ならびに水溶性ビタミン類および油溶性ビタミン類などを含む他の成分の1種以上を含み得る。
【0045】
本発明の医薬組成物は、当該分野で周知の方法によって製造される。例えば、純粋な羅漢果配糖体を添加する工程を包含する方法によって製造してもよいし、羅漢果配糖体を含有する組成物を添加する工程を包含する方法によって製造してもよい。
【0046】
本発明の医薬組成物の形態は、特に限定されない。本発明の医薬組成物の形態の例としては、錠剤、丸剤、粉剤、シロップ剤、乳濁剤、液剤、懸濁剤、ゼラチンカプセル剤などの形態;スプレー剤などの形態を挙げることができる。スプレー剤などの形態の医薬組成物は、鼻内などの経路によっても投与し得る。
【0047】
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。
【0048】
本発明の、羅漢果由来成分含有組成物は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、経口的に投与することもできるし、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、安定化剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には、羅漢果由来の成分以外の物質を配合することも可能である。
【0049】
賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
【0050】
吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0051】
安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0052】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0053】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0054】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0055】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0056】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0057】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0058】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0059】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0060】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液または他の目的とする注入部位における媒体と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0061】
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
【0062】
別の実施形態において、本発明において、注入は静脈内または皮下で行われ得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。
【0063】
本発明の方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0064】
本発明において、羅漢果由来成分含有組成物の投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、約5.0mg〜約1gなどであり得る。
【0065】
本発明の医薬組成物に用いられる羅漢果配糖体は、広い用量範囲にわたって有効である。従って、羅漢果配糖体の一日あたりの用量の下限は、3.0mg、4.0mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mgまたは10.0mg、20.0mg、30.0mg、40.0mg、50.0mgである。羅漢果配糖体の一日あたりの用量の上限は、5.0g、10.0g、11.0g、12.0g、13.0g、14.0g、15.0g、16.0g、17.0g、18.0gまたは19.0gである。本発明において、羅漢果配糖体の一日当たりの用量の上限および下限は、上述の値の任意の組み合わせである。しかしながら、皮膚症状の治癒を促進する限り、この用量には限定されない。この用量を、1回または数回に分けて投与する。実際の用量は、処置を受ける対象の年齢、体重および症状の重篤度、ならびに選択した投与経路などを配慮した上で決定される。
【0066】
本発明の組成物が医薬組成物(医薬品)である場合、当該組成物のうち、当該作用を有する羅漢果配糖体の乾燥重量は、代表的には、下限は0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.01重量%。0.05重量%または0.1重量%であり、上限は10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%または100重量%であり得る。本発明において、羅漢果配糖体の乾燥重量の上限および下限は、上述の値の任意の組み合わせである。しかしながら、皮膚症状の治癒を促進する限り、この用量には限定されない。好ましくは0.002重量%〜1重量%である。
【0067】
本発明の医薬組成物は、単独または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。組み合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。例えば、本発明の医薬組成物は、公知の局所塗布用の皮膚症状治癒促進剤と組み合わせて投与され得る。
【0068】
本発明の医薬組成物による処置の終了は、処置の対象である皮膚症状に特徴的な臨床症状の消滅によって判断され得る。
【0069】
(食品組成物)
本発明の組成物は、甘味および創傷治癒促進作用を有する食品そのもの、または調味料のような添加物として利用され得る(このような組成物を食品組成物という)。本発明の食品組成物は、健康食品、栄養補助食品、および特別用途食品(特定保健用食品)として利用され得る。
【0070】
本発明の組成物が食品である場合、当該組成物のうち、作用を有する羅漢果配糖体の乾燥重量は、代表的には、下限は0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.01重量%。0.05重量%または0.1重量%であり、上限は10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%または100重量%であり得る。本発明において、羅漢果配糖体の乾燥重量の上限および下限は、上述の値の任意の組み合わせである。しかしながら、皮膚症状の治癒を促進する限り、この用量には限定されない。
【0071】
本発明の食品組成物は、当該分野で通常使用される食品原料をさらに含み得る。食品原料の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、多糖類、穀物、野菜、果菜、果物、肉、卵、乳製品、海藻などおよびそれらの加工品が挙げられる。本発明の組成物は、これらの食品原料を単独種または複数種含み得る。
【0072】
本発明の食品組成物は、上記の医薬品の場合と同様に、上記の食品原料に加えて、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、甘味剤および香味剤などの成分の1種以上をさらに含み得る。また、水溶性ビタミン類および油溶性ビタミン類などを含む他の成分をさらに含んでいてもよい。当業者は、羅漢果配糖体の作用を妨げることのない適切な成分を容易に選択し得る。
【0073】
本発明の食品組成物は、当該分野で周知の方法によって製造される。例えば、作用を有する純粋な羅漢果配糖体を添加する工程を包含する方法によって製造してもよいし、作用を有する羅漢果配糖体を含有する組成物を添加する工程を包含する方法によって製造してもよい。
【0074】
本発明の食品組成物の形態は特に限定されない。本発明の食品組成物の形態の例としては、顆粒、錠菓、ゼリー、飴、飲料などが挙げられる。
【0075】
本発明の食品組成物は、必要に応じて摂取され、薬膳などのように毎日毎食摂取してもよいし、1日1回、1週間に1回、1ヶ月に1回のようなさらに長期の間隔をおいて摂取してもよい。好ましくは、1日3食摂取される。
【0076】
本発明の食品組成物に用いられる羅漢果配糖体は、広い用量範囲にわたって有効である。従って、羅漢果配糖体の一日あたりの用量の下限は、3.0mg、4.0mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mgまたは10.0mg、20.0mg、30.0mg、40.0mg、50.0mgである。羅漢果配糖体の一日あたりの用量の上限は、5.0g、10.0g、11.0g、12.0g、13.0g、14.0g、15.0g、16.0g、17.0g、18.0gまたは19.0gである。本発明において、羅漢果配糖体の一日当たりの用量の上限および下限は、上述の値の任意の組み合わせである。しかしながら、皮膚症状の治癒を促進する限り、この用量には限定されない。この用量を、1回または数回に分けて服用するのが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。実際の用量は、食品を摂取する対象の年齢、体重および症状の重篤度などを配慮した上で決定される。
【0077】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0078】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
(調製実施例:羅漢果抽出物の調製)
羅漢果の未乾燥果実をメタノールで抽出し、メタノールエキスを得た。メタノールエキスを水と混合し、N−ヘキサンで脱脂した。脱脂されたメタノールエキスを、多孔性樹脂(DIAION HP−20カラムクロマト、三菱化学製)にかけ、80%メタノール、100%メタノール、およびアセトンの順に溶出させ、粗配糖体画分である80%メタノール画分を得た。
【0081】
(比較例1:滅菌精製水を経口摂取させたときの創傷治癒過程)
4週齢のICRマウス(雄性)に、背部に直径6mm大の円形の開放創を作成した。その創部にパラフィルムをあて、写し取った創部の境界線に沿ってパラフィルムを切り取り、その重量を測定した。面積既知のパラフィルムの重量を基準に、その創部の面積を算出した。これを、0日目の創部面積とした。
【0082】
開放創作製後に、滅菌精製水の経口投与を開始した。1日あたり0.2mL、5日間投与を行った。その間、創部面積を上述の方法で毎日測定した。結果を以下の表1に示す。
【0083】
比較例1の創部面積の測定結果を、表1に示す。
【0084】
【表1】

(実施例1:羅漢果抽出エキスの創傷治癒促進作用)
4週齢のICRマウス(雄性)に、背部に直径6mm大の円形の開放創を作成した。これを、0日目の創部面積とした。
【0085】
開放創作成後に、羅漢果抽出物(羅漢果抽出エキス)の経口投与を開始した。羅漢果抽出エキスとして、羅漢果配糖体濃度として70重量%の羅漢果配糖体粉末試料を1日あたり9mg、又は4.5mgとなるように0.2mLの滅菌精製水に溶解させた。これを5日間経口投与した。その間、創部の面積を毎日測定した。
【0086】
創部面積の測定結果を、表2に示す。
【0087】
【表2】

表2の結果から、いずれの濃度の羅漢果抽出エキス量を使用した場合でも、比較例1のコントロールと比較して有意に創傷治癒が促進されること、および羅漢果抽出エキス量は増加させるほど創傷治癒促進の効果が大きくなることが示された。
【0088】
比較例1(表1)の結果と実施例1(表2)の結果を、図1および図2にまとめた。対照群と比較すると羅漢果抽出エキスを経口投与したラットの創部面積は1日目で飛躍的に縮小し、統計学的な有意差も認められた(有意水準1%)。この結果から、本発明の組成物の投与により、創傷または潰瘍などの、皮膚の上皮組織における損傷における治癒過程の初期段階である炎症期(マクロファージの活性化、タンパク分解から、壊死組織の除去などが起こる)が速やかに、かつ効率的に経過したことが示唆された。この効果は2日目以降も持続され、創傷治癒が明らかに促進されていることが示された。また、4.5mg/dayの投与量においても同様の創傷治癒促進の傾向が認められた。5日目にも統計学的な有意差が認められた(有意水準5%)。
【0089】
(実施例2:種々の羅漢果抽出物の効果確認例)
本発明の羅漢果由来成分含有組成物は、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む。この配糖体の種類および組み合わせのパターンを変えることによって、種々の羅漢果抽出物を調製する。
【0090】
本実施例ではまた、羅漢果配糖体として、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、または11−オキソ−モグロサイドVのうち1種のみを含む組成物、羅漢果配糖体として、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、または11−オキソ−モグロサイドVのうち2種を含む組成物、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、または11−オキソ−モグロサイドVのうち3種を含む組成物、あるいはモグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、または11−オキソ−モグロサイドVの4種全てを含む組成物を調製し、それらについて実施例1と同様の実験を行って、その皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を測定する。
【0091】
本実施例ではまた、羅漢果果実から熱水抽出しただけの粗抽出ペーストエキス(羅漢果配糖体重量%として2%〜5%)、およびこのペーストエキスから羅漢果配糖体画分を濃縮したエキス粉末(羅漢果配糖体重量%として30%)を調製し、それらについて実施例1と同様の実験を行って、その皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を測定する。
【0092】
(実施例3:種々の量の羅漢果抽出物の効果確認例)
本実施例では、種々の量の羅漢果抽出物について、実施例1と同様の実験を行い、その創傷治癒促進効果を測定する。
【0093】
羅漢果抽出エキスとして、羅漢果配糖体濃度として70重量%の羅漢果配糖体粉末試料を、実施例1において実験した量よりも多い量(すなわち、1日あたり9mgよりも多い量、例えば、13.5mg、18mgなど)、または実施例1において実験した量よりも少ない量(すなわち、1日あたり4.5mgよりも少ない量、例えば、1mg、3mgなど)となるように0.2mLの滅菌精製水に溶解させた。これらの組成物を用いて、実施例1と同様の実験を行って、その皮膚の上皮組織における損傷の治癒促進効果を測定する。
【0094】
(実施例4:他の間接投与<経鼻投与、経管投与または経腸投与>例)
本実施例では、経口投与以外の間接投与による、本発明の組成物の創傷の治癒促進効果を測定する。
【0095】
羅漢果抽出エキスとして、羅漢果配糖体濃度として70重量%の羅漢果配糖体粉末試料を1日あたり9mg、又は4.5mgとなるように0.2mLの滅菌精製水に溶解する。これを5日間経鼻投与、経管投与または経腸投与する。その間、創部の面積を毎日測定し、実施例1において得られたデータと比較する。
【0096】
(実施例5:羅漢果抽出物の製剤例)
本発明の医薬組成物の形態は、特に限定されない。本発明の医薬組成物の形態の例としては、錠剤、丸剤、粉剤、シロップ剤、乳濁剤、液剤、懸濁剤、ゼラチンカプセル剤などの形態;スプレー剤などの形態を挙げることができる。本実施例では、これらの製剤化の例を示す。
【0097】
処方例1
医薬品錠剤 (質量%)
1.羅漢果抽出物(羅漢果配糖体30%含有) 1.0%
2.乳 糖 78.0%
3.コーンスターチ 20.0%
4.グアーガム 1.0%

医薬品カプセル剤 (質量%)
1.羅漢果配糖体(羅漢果配糖体30%含有) 6.7%
2.α化澱粉 93.3%
上記成分を十分混合後、カプセル(150mg/カプセル)に充填する。
【0098】
(実施例6:羅漢果抽出物の食品製造例)
本発明の食品組成物の形態は特に限定されない。本発明の食品組成物の形態の例としては、顆粒、錠菓、ゼリー、飴、飲料などが挙げられる。本実施例では、これらの食品の製造例を示す。
【0099】
処方例1
酸乳飲料 重量%
1.ブドウ糖液糖 10.0%
2.発酵乳 10.0%
3.羅漢果抽出物(羅漢果配糖体30%含有) 0.1%
4.50%乳酸 0.1%
5.カラメル色素 適量
6.香料 適量
7.水にて 100%
調合液を均質化(150kg/cm)した後、90℃、10分間殺菌し、ホットパック充填する。
【0100】

処方例2
グレープゼリー 重量%
1.グラニュー糖 10.0%
2.ゼリー用ゲル化剤 1.0%
3.羅漢果抽出物(羅漢果配糖体30%含有) 0.2%
4.クエン酸三ナトリウム 0.1%
5.乳酸カルシウム 0.05%
6.濃縮グレープ果汁 2.5%
7.クエン酸 0.2%
8.香料 適量
水を攪拌しながら1〜4の粉体混合物を添加し、80℃10分間攪拌溶解する。5(乳酸カルシウム)は、予め熱湯溶解したのちに添加し、引き続き6〜8を添加する。全量補正し、容器に充填する。85℃で30分間殺菌する。
【0101】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明により、皮膚症状治癒に関わる生体の再生能を積極的に促進し、皮膚症状完治までの時間の短縮を達成し、且つ副作用の危険が有意に低減された安全性の高い組成物が提供され、医薬品製造、食品製造業において、利用価値が高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、背部に直径6mm大の円形の開放創を有する4週齢のICRマウス(雄性)に滅菌精製水を投与した場合(control)、1日当たり4.5mgの羅漢果抽出物を経口投与した場合(4.5mg/day)および1日当たり9mgの羅漢果抽出物を経口投与した場合(9mg/day)の、0日目、1日目、3日目、5日目および10日目の創部の写真である。
【図2】図2は、背部に直径6mm大の円形の開放創を有する4週齢のICRマウス(雄性)に滅菌精製水を投与した場合(control;◆)、1日当たり4.5mgの羅漢果抽出物を経口投与した場合(4.5mg/day;■)および1日当たり9mgの羅漢果抽出物を経口投与した場合(9mg/day;▲)の、創部面積の変化を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羅漢果由来の成分を含む、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための間接投与用医薬組成物。
【請求項2】
前記間接投与は、前記処置されるべき部位以外の部位に投与することによって達成される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記間接投与は、経口投与、経鼻投与、経管投与または経腸投与である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記間接投与は経口投与である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記処置されるべき部位が、創傷または潰瘍である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記成分が、羅漢果抽出物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記羅漢果抽出物が少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記羅漢果配糖体が、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
羅漢果由来の成分を含む、皮膚の上皮組織における損傷を処置するための食品組成物。
【請求項10】
前記処置されるべき部位が、創傷または潰瘍である、請求項9に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記成分が羅漢果抽出物である、請求項9に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記羅漢果抽出物が少なくとも1種の羅漢果配糖体を含む、請求項11に記載の食品組成物。
【請求項13】
前記羅漢果配糖体が、モグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、および11−オキソ−モグロサイドVからなる群より選択される、請求項12に記載の食品組成物。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−57336(P2009−57336A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227157(P2007−227157)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:日本薬学会、「日本薬学会第127年会要旨集」 平成19年3月5日、表紙、目次、奥付、50頁、206頁
【出願人】(505232346)学校法人星薬科大学 (5)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】