説明

美白剤、メラニン産生抑制剤、及び美白用皮膚外用剤

【課題】安全性が良好で、高い美白作用を示す美白剤及び皮膚外用剤の提供。
【解決手段】カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする美白剤、並びに美白用皮膚外用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地衣類の培養物からの抽出物を有効成分とする美白剤、メラニン産生抑制剤、及び美白用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料等の皮膚外用剤の有効成分として、安全性の観点から、種々の天然物由来の成分が利用されている。例えば、地衣類の抽出物又は地衣類の培養物からの抽出物を、化粧料等の皮膚外用剤の有効成分として利用することが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。一方、市場においては、より高い性能を示す化粧料等の皮膚外用剤の提供が期待されている。
【特許文献1】特開4−282320号公報
【特許文献2】特開4−282321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、安全性が良好であるとともに、高い美白作用を示す美白剤及び美白用皮膚外用剤、ならびに高いメラニン産生抑制作用を示すメラニン産生抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記課題を解決するため、カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする美白剤、メラニン産生抑制剤、ならびに美白用皮膚外用剤を提供する。
これらの地衣類の培養物及びその抽出物には、メラニン産生抑制能による高い美白作用があるので、皮膚外用剤の有効成分として有用である。
なお、本明細書において、「地衣類の培養物」は、培養後の地衣菌と培養後の培地の双方を示すものとする。具体的には培養後の地衣菌及び培地のいずれか一方、又は地衣菌及び培地の混合物を示すものとする。
一方、「地衣類の培養物からの抽出物」とは上記「地衣類の培養物」から溶媒を用いて抽出して得られる物を示すものとする。具体的には、培養後の地衣菌からの抽出物、培養後の培地からの抽出物、培養後の地衣菌と培地の混合物からの抽出物のいずれも示すものとする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、安全性が良好であるとともに、高い美白作用を示す美白剤及び皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明は、所定の地衣類の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする美白剤に関する。地衣類は、菌類と藻類が共生関係を結んでできた複合体である。一般的には、蘚苔(センタイ)類(コケ植物)などとともに「こけ」と認識されていることが多いが、蘚苔類とは区別されるものである。分類学(国際植物命名規約)上は、その複合体を構成する菌類(共生菌)のことを地衣類とみなし、学名が付与されている。和名が存在しないものもあるため、本発明では、学名をもって使用する地衣類を特定し、和名が存在するものについてはそれを付記している。
なお、地衣類の学名は、従前は、地衣類の体全体、つまり菌と藻の複合体に付けられていたこともあり、本発明で用いる地衣類には、他の学名が存在する場合もあるが、他の学名で呼称されていても、当該地衣類の培養物の抽出物を美白剤として利用している限り、本発明の美白剤の範囲に含まれることは勿論である。
【0007】
本発明の美白剤は、カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする。上記した通り、地衣類は、藻類と菌類との複合体であるが、双方が融合しているわけではないので、それぞれ独立に培養することも不可能ではない。従って、本発明で用いる前記地衣類の培養物は、地衣菌細胞の培養物であってもよいし、また地衣菌細胞及び藻細胞の共培養物であってもよい。培養は、地衣類の培養に関する「地衣体を用いた地衣類の培養(地衣組織培養)山本好和 2002.Lichenology1:57−65等に記載の培養方法を参考にして行うことができる。
【0008】
培養方法の好ましい例は、以下の通りである。
液体培地(Glucose Peptone Broth)100mLに対し、地衣菌1gを用意する。培地としては、高圧蒸気滅菌し、室温まで冷却したものを用意し、地衣菌は乳鉢などで粉砕したものを培養に用いる。培養条件の一例は、培養温度:20℃、培養期間:4週間、光条件:暗所、及び振とう速度:100rpmである。
【0009】
本発明では、前記地衣類の培養物をそのまま用いてもよいし、その抽出物を用いてもよい。また双方の混合物を用いることもできる。該抽出物は、一般的な方法で調製することができる。例えば、前記地衣類の菌細胞等を培養した培地を、溶媒に浸漬することにより調製することができる。抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級一価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン等のケトン類;エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ヘキサン等の一種又は二種以上を用いることができる。抽出は、前記培養物を室温又は加温下で溶媒中に所定の時間浸漬することによって実施できる。また、抽出前に、得られた培養物を凍結乾燥等により乾燥処理してもよいし、当該乾燥物を粉砕等する前処理を行ってもよい。
【0010】
前記抽出物は、調製後、そのまま美白剤として用いることができる。また、所望により、適宜の期間そのまま放置し熟成させた後に、美白剤として用いることもできる。必要ならば、本発明の効果に影響のない範囲で、更に、濾過又はイオン交換樹脂等により、脱臭、脱色等の精製処理を施して用いることもできる。又、液体クロマトグラフィー等の分離手段を用い、活性の高い画分を取り出して用いることもできる。
【0011】
前記抽出物の好ましい調製方法の例は、以下の通りである。
前記所定の地衣類の培養後の培地に、酢酸エチルを加え、24〜27℃程度で激しく振とうし、酢酸エチルへの着色が減退するまで抽出処理を行う。その後、酢酸エチルを留去し、抽出物を得ることができる。
【0012】
前記培養物及びその抽出物は、液状、ペースト状、ゲル状等いずれの形態であってもよい。例えば、抽出溶媒を含む液状の抽出物や培養後の液体培地等を、減圧乾燥、又は凍結乾燥などにより乾固させて固体状とした後に用いることもできる。また、スプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。
【0013】
本発明は、前記所定の地衣類から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分として含有する美白用皮膚外用剤にも関する。前記所定の地衣類の培養物及びその抽出物は、いずれも高いメラニン産生抑制能を示す。中でも、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)の培養物及びその抽出物は、少量であっても高いメラニン産生抑制能を示すので、美白剤として特に優れている。本発明の皮膚外用剤は、これらの培養物及びその抽出物が示す高いメラニン産生抑制作用により、皮膚に適用することにより皮膚を白くする又は皮膚の黒化を予防もしくは改善する作用を示す、美白用皮膚外用剤として有用である。前記所定の地衣類の培養物及びその抽出物の皮膚外用剤における含有量(双方の混合物である態様では、その総含有量)は、乾燥固形分に換算して、好ましくは0.00001〜0.05質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.0001〜0.01%である。この範囲内であれば、前記成分を安定に配合することができ、かつ高い美白効果を発揮することができる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤は、本発明の美白剤とともに、他の美白剤を含有していてもよい。他の美白剤の例には、アスコルビン酸又はその誘導体、アルブチン、リノール酸、ビタミンE及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物等が含まれる。中でも、他の美白剤としては、アスコルビン酸又はその誘導体、及びアルブチンから選ばれる一種以上が好ましい。これらの美白剤は、高い美白効果を奏するが、一方、高濃度配合が経時安定性及び使用感の点で困難である。本発明の美白剤と併用することで、経時安定性及び使用感を損なうことなく、従来の美白用皮膚外用剤の美白効果以上の美白効果を得ることができる。前記他の美白剤と本発明の美白剤との配合比(他の美白剤/本発明の美白剤)は、質量比で1〜100であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましい。
【0015】
また、本発明の皮膚外用剤を調製するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で他の有効成分、例えば、老化防止効果、又は紫外線暴露によるシワ形成抑効果等を奏する他の有効成分、を配合してもよい。より具体的には、紫外線防御剤、抗菌剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、保湿剤などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0016】
紫外線防御剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0017】
抗菌剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0018】
抗炎症剤は日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する作用を有しており、例えば、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる。
【0019】
細胞賦活剤は肌荒れの改善等の目的で用いられ、例えば、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等が挙げられる。
【0020】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の作用を有しており、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミンおよびその誘導体、リボフラビンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、ニコチン酸およびその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0021】
保湿剤としては、例えば、エラスチン、ケラチン等のタンパク質またはそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖およびその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の皮膚外用剤には、本発明の美白剤以外の任意の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、脂質、糖、ホルモン、酵素、核酸などの生理活性物質等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料や医薬部外品、皮膚外用剤等の製造に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、活性酸素除去剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、他のビタミン類等を必要に応じて用いることができる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品のみならず、医薬部外品の態様も包含するものである。本発明の皮膚外用剤は、パウダー、パウダーファンデーション等の粉体;石けん、リップスティック等の固体;クリーム、乳液、クリームファンデーション等の乳化物;化粧水、美容液等の液体;など、種々の形態の化粧料組成物であるのが好ましい。但し、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[例1:カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum)の培養物からの抽出物(抽出物1)の調製]
カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum)を、以下の通り培養した。
液体培地(Glucose Peptone Broth)100mLに対し、地衣菌1gを用意した。培地は高圧蒸気滅菌し、室温まで冷却したものを用意し、地衣菌は乳鉢などで粉砕したものを培養に用いた。培養条件は、培養温度:20℃、培養期間:4週間、光条件:暗所、及び振とう速度:100rpmとした。
次に、得られた培養物に、酢酸エチルを加え、24〜27℃で激しく振とうし、酢酸エチルへの着色が減退するまで抽出処理を行った。その後、酢酸エチルを留去し、抽出物を2mg得た。これを抽出物1として、以下の試験等に用いた。
【0025】
[例2:ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)の培養物からの抽出物(抽出物2)の調製]
ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)を、以下の通り培養した。
液体培地(Glucose Peptone Broth)100mLに対し、地衣菌1gを用意した。培地は高圧蒸気滅菌し、室温まで冷却したものを用意し、地衣菌は乳鉢などで粉砕したものを培養に用いた。培養条件は、培養温度:20℃、培養期間:4週間、光条件:暗所、振とう速度:100rpmとした。
次に、得られた培養物に、酢酸エチルを加え、24〜27℃で激しく振とうし、酢酸エチルへの着色が減退するまで抽出処理を行った。その後、酢酸エチルを留去し、抽出物を8mg得た。これを抽出物2として、以下の試験等に用いた。
【0026】
[例3:ウスネア ロセオラ(Usnea roseola)の培養物からの抽出物(抽出物3)の調製]
ウスネア ロセオラ(Usnea roseola)を、以下の通り培養した。
液体培地(Glucose Peptone Broth)100mLに対し、地衣菌1gを用意した。培地は高圧蒸気滅菌し、室温まで冷却したものを用意し、地衣菌は乳鉢などで粉砕したものを培養に用いた。培養条件は、培養温度:20℃、培養期間:4週間、光条件:暗所、振とう速度:100rpmとした。
次に、得られた培養物に、酢酸エチルを加え、24〜27℃で激しく振とうし、酢酸エチルへの着色が減退するまで抽出処理を行った。その後、酢酸エチルを留去し、抽出物を20mg得た。これを抽出物3として、以下の試験等に用いた。
【0027】
[比較用抽出物の調製]
地衣類オオイワブスマ(Lasallia pensylvanica)、及び地衣類ヤマヒコノリ(Evernia esorediosa)についても、例1〜3と同様にして、培養を行い、それぞれの培地を酢酸エチルに浸漬して、例1〜3と同様にして、抽出物をそれぞれ調製した。これらの比較例用抽出物4、5として、以下の試験に用いた。
【0028】
[例4:細胞培養によるメラニン生成抑制効果試験(美白作用の試験)]
上記で調製した抽出物1〜3及び比較例用抽出物4〜5をそれぞれ、99.5%エタノールに溶解して試料液1〜3及び比較例用試料液4〜5をそれぞれ調製し、これらを以下の試験に用いた。
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用して、上記抽出物1〜3及び比較例用抽出物4〜6について、メラニン生成抑制効果及び細胞生存率を調べた。
具体的には、2枚の6穴プレートに10%FBS含有MEN培地を適量取り、B16メラノーマ細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%中にて静置した。翌日、各試料液の最終濃度が0(対照)、0.3、1,3、10及び30μg/mLとなるように各試料液を添加し混和した。培養5日目に培地を交換し、再度、各試料液を添加した。翌日、培地を除き、1枚のプレートについて、細胞をリン酸緩衝液にて洗浄した後回収し、B16メラノーマ培養細胞の白色化度を以下の基準にて評価した。
又、参考例としてメラニン生成抑制作用のあることが知られているコウジ酸についても同様の試験を、最終濃度12.5、25、50、100及び200μg/mLになるように行った。
【0029】
(判定基準)
+++:コウジ酸200μg/mLと同等またはそれ以上の白色である。
++:コウジ酸100μg/mLと同等の白色である。
+:コウジ酸50μg/mLと同等の白色である。
−:コウジ酸50μg/mL以下の白色である。
また残りの1枚のプレートについて、細胞をホルマリン固定後、1%クリスタルバイオレット溶液に添加し染色した。各試料液濃度に対する生存細胞率をモノセレーター(オリンパス社製)で測定し、生存率70%未満の濃度については評価対象外とした。
結果を、下記表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
上記表に示した結果から、地衣類カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、地衣類ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及び地衣類ウスネア ロセオラ(Usnea roseola)の培養物からの抽出物はいずれも、高いメラニン産生抑制能を示し、その効果は、比較例用抽出物4、5と比較して、優れていることが理解できる。
なお、比較用抽出物4の地衣類オオイワブスマ(Lasallia pensylvanica)は、本発明で利用する地衣類と種類の異なる地衣類である。また、比較用抽出物5の地衣類ヤマヒコノリ(Evernia esorediosa)については、それぞれ上記特許文献2及び特許文献1の試験に試料として用いられている地衣類である。
【0032】
[例5:化粧水]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.下記成分(9)〜(14)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、化粧水を得る。
【0033】
(成分) (質量%)
(1)メドウホーム油 0.1
(2)ホホバ油 0.05
(3)香料 適量
(4)防腐剤 適量
(5)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(6)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化
ヒマシ油(50E.O.) 1.0
(7)エタノール 8.0
(8)酢酸トコフェロール 0.05
(9)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(10)グリセリン 5.0
(11)1,3−ブチレングリコール 5.0
(12)ポリエチレングリコール1500 0.1
(13)カリシウム ジャポニカ培養抽出物(*) 0.001
(14)精製水 残量
(*)例1により調製されたもの
【0034】
[例6:化粧水]
(製法)
A.下記成分(1)〜(5)を混合溶解する。
B.下記成分(6)〜(13)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
【0035】
(成分) (質量%)
(1)クエン酸 0.05
(2)クエン酸ナトリウム 0.2
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液 0.5
(4)グリセリン 3.0
(5)1,3−ブチレングリコール 8.0
(6)精製水 残量
(7)エタノール 10.0
(8)カテキン 0.0001
(9)アスコルビン酸グルコシド 0.3
(10)ウスネア ルベセンス培養抽出物(*2) 0.001
(11)香料 適量
(12)防腐剤 適量
(13)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(*2)例2により調製されたもの
【0036】
[例7:乳液]
(製法)
A. 下記成分(10)を加熱し、70℃に保つ。
B. 下記成分(1)〜(9)および(11)を加熱混合し、70℃に保つ。
C. BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D. Cを冷却後、下記成分(12)〜(16)を加え、均一に混合して乳液を得た。
【0037】
(成分) (質量%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0
モノステアレート
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5
テトラオレエート
(3)グリセリルモノステアレート 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 8.0
(7)エタノール 5.0
(8)パルミチン酸レチノール 0.1
(9)グリチルリチン酸ステアリル 0.1
(10)精製水 残量
(11)防腐剤 適量
(12)カルボキシビニルポリマー 0.2
(13)水酸化ナトリウム 0.1
(14)ヒアルロン酸 0.1
(15)ウスネア ロセオラの培養抽出物(*3) 0.0003
(16)香料 適量
(*2)例3により調製されたもの
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、安全性が良好であるとともに、高い美白作用を示す美白剤及び美白用皮膚外用剤、ならびに高いメラニン産生抑制作用を示すメラニン産生抑制剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする美白剤。
【請求項2】
カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【請求項3】
カリシウム ジャポニカム(Calicium japonicum;和名オオピンゴケ)、ウスネア ルベスセンス(Usnea rubescens)、及びウスネア ロセオラ(Usnea roseola)からなる地衣類の群から選択される1種又は2種以上の培養物及び/又はその抽出物を有効成分とする美白用皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−150173(P2010−150173A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329154(P2008−329154)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(503201335)株式会社スカイライト・バイオテック (4)
【Fターム(参考)】