説明

美白剤、抗老化剤及び皮膚化粧料

【課題】安全性の高い天然物の中から美白作用又は抗老化作用を有するものを見出し、それを有効成分とする美白剤及び抗老化剤、並びにこれらを配合した皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の美白剤又は抗老化剤の有効成分として、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし及び九条ねぎからなる群より選択される1種又は2種以上の植物からの抽出物を含有させる。また、皮膚化粧料に、本発明の美白剤及び/又は抗老化剤を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤、抗老化剤及び皮膚化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善するためには、メラニンの産生を抑制することが考えられる。
【0003】
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療又は改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがあるため、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれている。このような観点から、メラニン産生抑制作用を有するものとしては、例えば、トウゴマ根部からの抽出物(特許文献1参照)、サウスウレア(Saussurea)属に属する植物からの抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
【0004】
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、各種酵素のSH供与体としての機能を果たすものであり、抗酸化成分としても知られている。その作用発現は、システイン残基に由来すると考えられている。しかしながら、皮膚中のグルタチオン量は、加齢により低下することが報告されており、このことが皮膚における酸化防御能を低下させ、細胞のDNA及びタンパク質等の構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
【0005】
そのため、皮膚においてグルタチオンの産生を促進することは、加齢により衰える酸化ストレスの防御を高め、かつ紫外線による酸化ストレスに対する障害を抑制することにつながり、皮膚の老化の予防・治療、又はシミ等の色素沈着に対する改善が期待できると考えられる。このような考えに基づき、グルタチオン産生促進作用を有するものとして、テンニンカからの抽出物(特許文献3参照)、クチナシ属に属する植物からの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
【0006】
皮膚は、表皮、基底膜及び真皮から構成されている。真皮は、線維芽細胞と該細胞から分泌されるコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸等の細胞外マトリックスとにより構成されている。若い皮膚においてはこれらの皮膚組織が恒常性を維持することにより水分保持力、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0007】
ところが、皮膚が紫外線、著しい空気の乾燥、過度の皮膚洗浄、ストレス、喫煙等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸等の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が起こり、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等が生じる。
【0008】
このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワの形成、張りの消失、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸等の細胞外マトリックス成分の減少、変性が関与している。近年、皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、過酸化水素や紫外線等によって生じる細胞障害が挙げられており、皮膚のしわ形成等の大きな要因と考えられる。
【0009】
したがって、コラーゲン、エラスチン若しくはヒアルロン酸の産生を促進すること、又は過酸化水素による細胞障害を抑制することは、皮膚の老化を防止又は改善する上で重要である。
【0010】
従来、コラーゲン産生促進作用を有するものとしては、例えば、五斂子の葉部からの抽出物(特許文献5)、クスノハガシワからの抽出物(特許文献6)等が知られている。また、エラスチン産生促進作用を有するものとして、例えば、グミ科ヒッポファエ属に属する植物からの抽出物が知られている(特許文献7参照)。
【0011】
ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、クスノハガシワからの抽出物(特許文献6参照)、スターフルーツ(五斂子)の果実部からの抽出物(特許文献8参照)等が知られている。過酸化水素細胞障害の抑制作用を有するものとして、五斂子の花部からの抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
【0012】
表皮は、外部刺激を緩和し、水分等の体内成分の逸失を制御する働きをしており、最下層である基底層から始まって、有棘層、顆粒層、角質層へと連なる4層構造から構成されている。各層に存在する大部分の細胞は、基底層から分化した角化細胞である。基底層で分裂、増殖した角化細胞は、有棘層、顆粒層を通過しながら分化し角質細胞となって、強固な架橋結合をもったケラチン蛋白線維で構成された角質層を構成し、最終的には垢として角質層から脱落する。
【0013】
角質層は皮膚の最外殻に存在しており、外界からの刺激に対する物理的なバリアとしての役割を果たしている。皮膚ではこのバリア機能を持たせるため、角化細胞が基底層で産生されてから垢となって剥がれ落ちるまでのサイクル(角化)を通常4週間の周期で繰り返し、表皮の新陳代謝を行っている。しかしながら、この角質層も加齢によって新陳代謝機能が衰え、こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れ等の皮膚トラブルを発生することになる。そのため、角化細胞の増殖を促進し、肌の新陳代謝機能を回復させることにより、こじわ、くすみ、色素沈着等の皮膚の老化を改善できるものと考えられる。このような考えに基づき、表皮角化細胞増殖促進作用を有するものとして、タイソウからの抽出物(特許文献10参照)、土貝母からの抽出物(特許文献11参照)等が知られている。
【0014】
また、顆粒層では、細胞膜が肥厚して肥厚細胞膜を形成するとともに、トランスグルタミナーゼ−1の作用により、蛋白分子間がグルタミル−リジン架橋され、強靭なケラチン蛋白線維が形成される。さらに、その一部にセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで、細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角質バリア機能の基礎が形成される。
【0015】
しかし、加齢とともに表皮におけるトランスグルタミナーゼ−1の産生量が減少すると、角質バリア機能及び皮膚の保湿機能が低下するため、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状を呈したり、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)を発症したりするようになる。そのため、表皮におけるトランスグルタミナーゼ−1の産生を促進することにより、皮膚の老化症状や乾燥性皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができると考えられる。このようなトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有するものとして、フロリジン及び/又はフロレチン(特許文献12参照)、ニガリ又はその構成成分である塩化カルシウム(特許文献13参照)等が知られている。
【0016】
セラミドは、表皮細胞の角化の過程においてセリンとパルミトイル−CoAとを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)をはじめとする酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚最外層を覆う角質細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来が持つ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。
【0017】
角質層の構造は、レンガとモルタルとに例えられ、15層ほどに積み重なった角質細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角質細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分とが交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
【0018】
様々な内的・外的要因による皮膚のバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感等を惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。また、皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢により、又はバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者において、角質セラミド成分(いわゆる細胞間脂質)の減少や組成変化が報告されており(非特許文献1参照)、皮膚のバリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く知られるようになっている。このような考え方に基づいて、皮膚のバリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(非特許文献2参照)や皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(非特許文献参照)等が知られている。
【0019】
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。
【0020】
ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0〜AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
【0021】
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されているため、AQP3の発現を促進することにより、加齢による水分保持能やバリア機能等を制御することが可能であると考えられる(非特許文献4参照)。このような考えに基づき、AQP3発現促進作用を有するものとして、例えば、トコフェリルレチノエート(特許文献14参照)、ノウゼンハレン科植物より得られる抽出物(特許文献15参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2001−213757号公報
【特許文献2】特開2002−201122号公報
【特許文献3】特開2008−285422号公報
【特許文献4】特開2006−347934号公報
【特許文献5】特開2002−226323号公報
【特許文献6】特開2003−146837号公報
【特許文献7】特開2005−22993号公報
【特許文献8】特開2003−300893号公報
【特許文献9】特開2006−8571号公報
【特許文献10】特開2006−316028号公報
【特許文献11】特開2006−56854号公報
【特許文献12】特開2004−51596号公報
【特許文献13】特開2007−106712号公報
【特許文献14】特開2006−290873号公報
【特許文献15】特開2004−168732号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Akimoto K et al.,"J. Dermatol.",1993,Vol.20,p.1-6
【非特許文献2】"フレグランスジャーナル",2004,Vol.32,No.11,p.23-32
【非特許文献3】Tanno O et al.,"Br. J. Dermatol.",2000,Vol.143,p.524-531
【非特許文献4】"フレグランスジャーナル",2006,Vol.34,No.10,p.19-23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は安全性の高い天然物の中から美白作用又は抗老化作用を有するものを見出し、それを有効成分とする美白剤及び抗老化剤、並びにこれらを配合した皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の美白剤又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし及び九条ねぎからなる群より選択される1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。また、本発明の皮膚化粧料は、前記美白剤及び/又は抗老化剤を配合したことを特徴とする。
【0026】
前記美白剤に有効成分として含有させる前記抽出物は、メラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用を有することが好ましい。また、前記抗老化剤に有効成分として含有させる前記抽出物は、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、優れた美白作用を有しかつ安全性の高い美白剤、及び優れた抗老化作用を有しかつ安全性の高い抗老化剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、美白作用又は抗老化作用に優れた皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔美白剤,抗老化剤〕
本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし及び九条ねぎからなる群より選択される1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するものである。
【0029】
ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0030】
本実施形態において使用する抽出原料は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎである。
【0031】
京水菜は、アブラナ科アブラナ属の越年草であるミズナ(Brassica rapa var. nipposinica)の一品種であって、古くから京都地方で栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る京水菜の構成部位としては、例えば、全草のほか、葉部、茎部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0032】
京壬生菜は、アブラナ科アブラナ属の越年草であるミズナ(Brassica rapa var. nipposinica)の一品種であって、古くから京都市壬生地域で栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る京壬生菜の構成部位としては、例えば、全草のほか、葉部、茎部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0033】
伏見とうがらしは、ナス科トウガラシ属の多年草(日本などの温帯では一年草)であるトウガラシ(Capsicum annum)の一品種であって、古くから京都市伏見地域で栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る伏見とうがらしの構成部位としては、例えば、全草のほか、葉部、茎部、花部、果実部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
【0034】
万願寺とうがらしは、ナス科トウガラシ属の多年草(日本などの温帯では一年草)であるトウガラシ(Capsicum annum)の一品種であって、京都府舞鶴市の万願寺地域等で栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る万願寺とうがらしの構成部位としては、例えば、全草のほか、葉部、茎部、花部、果実部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
【0035】
九条ねぎは、ネギ科ネギ属に属するネギ(Allium fistulosum)の一品種であって、古くから京都市南区九条地域で栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る九条ねぎの構成部位としては、例えば、全草のほか、葉部、茎部、葉鞘部、花部などの地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0036】
上記植物からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0037】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0038】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0039】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0040】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0041】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0042】
なお、上述のようにして得られた抽出液はそのままでも美白剤又は抗老化剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0043】
また、上記植物からの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0044】
以上のようにして得られる京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物は、優れた美白作用又は抗老化作用を有しているため、それぞれの作用を利用して美白剤又は抗老化剤の有効成分として用いることができる。
【0045】
ここで、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有する美白作用は、例えば、メラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用に基づいて発揮される。ただし、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有する美白作用は、上記作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。
【0046】
また、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
【0047】
なお、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物は、抽出物が有するメラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用又はアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用を利用して、メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、I型コラーゲン産生促進剤、エラスチン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、過酸化水素細胞障害抑制剤、表皮角化細胞増殖促進剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤又はアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤の有効成分として使用してもよい。
【0048】
本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物のうちのいずれか一つを上記有効成分として用いてもよいし、これらの2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有する美白作用又は抗老化作用の程度等により適宜調整すればよい。
【0049】
本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物のみからなるものでもよいし、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
【0050】
本実施形態の美白剤又は抗老化剤を製剤化する場合は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0051】
本実施形態の美白剤又は抗老化剤を製剤化する場合、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0052】
なお、本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、必要に応じて、美白作用又は抗老化作用を有する他の天然抽出物等を、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0053】
本実施形態の美白剤又は抗老化剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0054】
また、本実施形態の美白剤又は抗老化剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0055】
本実施形態の美白剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有するメラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することができる。ただし、本実施形態の美白剤は、これらの用途以外にもメラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0056】
本実施形態の抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし又は九条ねぎからの抽出物が有するI型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態の抗老化剤は、上記の用途以外にもI型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0057】
また、本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、それぞれ優れた美白作用又は抗老化作用を有するため、例えば、皮膚外用剤又は飲食品に配合するのに好適である。この場合に、皮膚外用剤又は飲食品に配合される美白剤及び/又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物のみからなるものでもよいし、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
【0058】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、後述する皮膚化粧料のほか、経皮的に使用される医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0059】
飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0060】
また、本実施形態の美白剤又は抗老化剤は、それぞれ優れた美白剤作用又は抗老化作用を有するので、美白又は老化現象に関連する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0061】
〔皮膚化粧料〕
上記美白剤又は抗老化剤は、それぞれ優れた美白作用又は抗老化作用を有しているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。この場合に、皮膚化粧料に配合される美白剤及び/又は抗老化剤は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物のみからなるものでもよいし、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物を製剤化したものでもよい。上記美白剤及び/又は抗老化剤を皮膚化粧料に配合することによって、皮膚化粧料に美白作用及び/又は抗老化作用を付与することができる。
【0062】
上記美白剤及び/又は抗老化剤を配合し得る皮膚化粧料としては、特に限定されるものではなく、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0063】
上記美白剤及び/又は抗老化剤を皮膚化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、上記美白剤又は抗老化剤に含まれる京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物の質量に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は約0.001〜1質量%である。
【0064】
本実施形態の皮膚化粧料は、京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし若しくは九条ねぎからの抽出物又はこれらの混合物が有するメラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用又はアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0065】
本実施形態の皮膚化粧料は、メラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することができる。また、本実施形態の皮膚化粧料は、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができる。
【0066】
なお、本実施形態の美白剤、抗老化剤及び皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例】
【0067】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0068】
〔製造例1〕京水菜抽出物の製造
乾燥した京水菜の地上部の粉砕物20gに50容量%エタノール水溶液200mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥して京水菜50%エタノール抽出物5.0gを得た(試料1)。
【0069】
〔製造例2〕京壬生菜抽出物の製造
乾燥した京壬生菜の地上部の粉砕物20gに50容量%エタノール水溶液200mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥して京壬生菜50%エタノール抽出物6.0gを得た(試料2)。
【0070】
〔製造例3〕伏見とうがらし抽出物の製造
乾燥した伏見とうがらしの果実部の粉砕物20gに50容量%エタノール水溶液200mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥して伏見とうがらし50%エタノール抽出物7.9gを得た(試料3)。
【0071】
〔製造例4〕万願寺とうがらし抽出物の製造
乾燥した万願寺とうがらしの果実部の粉砕物20gに50容量%エタノール水溶液200mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥して万願寺とうがらし50%エタノール抽出物7.1gを得た(試料4)。
【0072】
〔製造例5〕九条ねぎ抽出物の製造
乾燥した九条ねぎの地上部の粉砕物20gに50容量%エタノール水溶液200mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥して九条ねぎ50%エタノール抽出物6.1gを得た(試料5)。
【0073】
〔試験例1〕B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験
製造例1〜5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
【0074】
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を24.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
【0075】
培養終了後、被験試料(試料1〜5,試料濃度は下記表1を参照)を添加した10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地又は使用無添加の10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を取り除き、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕機により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定してメラニン産生量とした。
【0076】
また、単位細胞あたりのメラニン産生抑制作用を評価するために、上記と同様にして培養した後、培地を除去し400μLのPBS緩衝液で洗浄して、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
【0077】
さらに、空試験として、試料を添加せずに上記と同様にして培養した細胞について、波長475nmにおける吸光度及び540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により単位細胞あたりのメラニン産生抑制率(%)を算出した。
【0078】
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
上記式において、Aは「試料無添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Bは「被験試料添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料無添加時の540nmにおける吸光度」を表し、Dは「被験試料添加時の540nmにおける吸光度」を表す。
結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、いずれも優れたメラニン産生抑制作用を有することが確認された。
【0081】
〔試験例2〕グルタチオン産生促進作用試験
製造例4により得られた万願寺とうがらし抽出物(試料4)について、以下のようにしてグルタチオン産生促進作用を試験した。
【0082】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
【0083】
培養後、被験試料(試料4,試料濃度は下記表2を参照)を添加した1%FBS含有ダルベッコMEM培地又は試料無添加の1%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
【0084】
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mリン酸緩衝液50μL、2mM NADPH25μL及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え37℃で10分間加温した後、10mM 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
【0085】
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
上記式において、Aは「試料無添加時の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)」を表し、Bは「被験試料添加時の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量」を表す。
結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示すように、万願寺とうがらし抽出物(試料4)は優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
【0088】
〔試験例3〕I型コラーゲン産生促進作用試験
製造例2及び5により得られた京壬生菜抽出物(試料2)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにしてI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0089】
ヒト正常線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0090】
培養終了後、培地を抜き、被験試料(試料2及び試料5,試料濃度は下記表3を参照)を添加した0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地又は試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに150μLずつ添加し、3日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりI型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
【0091】
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のI型コラーゲン量」を表し、Bは「試料無添加時のI型コラーゲン量」を表す。
結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示すように、京壬生菜抽出物(試料2)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、優れたI型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
【0094】
〔試験例4〕エラスチン産生促進作用試験
製造例4により得られた万願寺とうがらし抽出物(試料4)について、以下のようにしてエラスチン産生促進作用を試験した。
【0095】
ヒト正常線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0096】
培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料4、試料濃度は下記表4を参照)を添加した0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地又は試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに150μL添加し、2日間培養した。培養終了後、上清を回収し、以下のようにして培養上清に遊離したエラスチン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりエラスチン産生促進率(%)を算出した。
【0097】
エラスチン産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のエラスチン量」を表し、Bは「試料無添加時のエラスチン量」を表す。
結果を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
表4に示すように、万願寺とうがらし抽出物(試料4)は優れたエラスチン産生促進作用を示した。
【0100】
〔試験例5〕ヒアルロン酸産生促進作用試験
製造例1〜5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにしてヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
【0101】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、24時間培養した。
【0102】
培養終了後、被験試料(試料1〜5,試料濃度は下記表5を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに100μLずつ添加し、7日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。測定結果から、下記式によりヒアルロン酸産生促進率(%)を算出した。
【0103】
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のヒアルロン酸量」を表し、Bは「試料無添加時のヒアルロン酸量」を表す。
結果を表5に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
表5に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、いずれも優れたヒアルロン酸産生促進作用を示した。特に九条ねぎ抽出物(試料5)は、低濃度においても優れたヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認された。
【0106】
〔試験例6〕過酸化水素に対する細胞障害抑制作用試験
製造例1〜5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、下記の試験方法により過酸化水素に対する細胞障害抑制作用を試験した。
【0107】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.5×10cells/mLの細胞密度になるように5%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルのマイクロプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
【0108】
培養後、培地を除去し、被験試料(試料1〜5,試料濃度は下記表6を参照)を添加した1%FBS含有α−MEM培地又は試料無添加の1%FBS含有α−MEM培地を各ウェルに200μLずつ添加し、24時間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を抜き、400μLのPBS緩衝液で洗浄し、過酸化水素を溶解したHank’s緩衝液(過酸化水素最終濃度:1mM)を200μL添加し、2時間培養した。
【0109】
また、過酸化水素を溶解していないHank’s緩衝液を200μL添加し、同様の条件で培養した。さらに、試料溶液を添加せずに培養し、培養後、過酸化水素を溶解したHank’s緩衝液を200μL添加し、同様の条件で培養した。
【0110】
培養後、400μLのPBS緩衝液で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで1%FBS含有α−MEM培地に溶解したニュートラルレッド溶液を200μLずつ添加し、2.5時間培養した。この後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)300μLを各ウェルに加え、色素を抽出した。その後、マイクロプレートリーダーを用い540nmでの吸光度を測定し、過酸化水素障害抑制率(%)を求めた。なお、過酸化水素障害抑制率は、下記の計算式により算出した。
【0111】
過酸化水素障害抑制率(%)={1−(C−A)}/(C−B)}×100
上記式において、Aは「被験試料添加・過酸化水素処理時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加・過酸化水素処理時の吸光度」を表し、Cは「試料無添加・過酸化水素無処理時の吸光度」を表す。
上記試験の結果を表6に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
表6に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、過酸化水素障害抑制率を有することが確認された。特に伏見とうがらし抽出物(試料3)は、優れた過酸化水素障害抑制率を有していた。
【0114】
〔試験例7〕表皮角化細胞増殖促進作用試験
製造例1〜5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにして表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
【0115】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(Epilife-KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理にて細胞を回収した。回収した細胞を3.0×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、被験試料(試料1〜5,試料濃度は下記表7を参照)を添加したEpiLife-KG2培地又は試料無添加のEpiLife-KG2培地を各ウェルに100μL添加し、3日間培養した。
【0116】
表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。培養終了後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLでPBS緩衝液に溶解したMTTを各ウェル100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。得られた結果から、下記式により表皮角化細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0117】
表皮角化細胞増殖促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のブルーホルマザン生成量」を表し、Bは「試料無添加のブルーホルマザン生成量」を表す。
上記試験の結果を表7に示す。
【0118】
【表7】

【0119】
表7に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有することが確認された。特に京壬生菜抽出物(試料2)及び万願寺とうがらし抽出物(試料4)は、優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有していた。
【0120】
〔試験例8〕トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験
製造例1〜3及び5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにしてトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を試験した。
【0121】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト新生児表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、2日間培養した。
【0122】
培養終了後、被験試料(試料1〜3及び5,試料濃度は下記表8を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を除去し、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量を、モノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体(Biomedical Technologies Inc.社製)を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりトランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)を算出した。
【0123】
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の吸光度」を表す。
試験結果を表8に示す。
【0124】
【表8】

【0125】
表8に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有することが確認された。特に、京水菜抽出物(試料1)は、低濃度(0.78μg/mL)においても優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有していた。
【0126】
〔試験例9〕セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用試験
製造例1〜5により得られた京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)について、以下のようにしてSPT mRNA発現促進作用を試験した。
【0127】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用い、37℃、5%CO−95%airの条件下にて前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。回収した細胞を20×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×10cells/シャーレ)、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。
【0128】
培養後に培地を除去し、被験試料(試料1〜5,試料濃度は下記表9を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下にて24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0129】
この総RNAを鋳型とし、SPT及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。SPTの発現量は、「試料無添加」及び「試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに「試料無添加」の補正値を100としたときの「試料添加」の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりSPT mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0130】
SPT mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
結果を表9に示す。
【0131】
【表9】

【0132】
表9に示すように、京水菜抽出物(試料1)、京壬生菜抽出物(試料2)、伏見とうがらし抽出物(試料3)、万願寺とうがらし抽出物(試料4)及び九条ねぎ抽出物(試料5)は、優れたSPT mRNA発現促進作用を有することが確認された。特に京水菜抽出物(試料1)及び京壬生菜抽出物(試料2)は、低濃度(3.13μg/mL)においても優れたSPT mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0133】
〔試験例10〕アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験
製造例2及び3により得られた京壬生菜抽出物(試料2)及び伏見とうがらし抽出物(試料3)について、以下のようにしてAQP3 mRNA発現促進作用を試験した。
【0134】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用い、37℃、5%CO−95%airの条件下にて前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。回収した細胞を20×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×10cells/シャーレ)、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。
【0135】
培養後に培地を除去し、被験試料(試料2及び3,試料濃度は下記表10を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下にて24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0136】
この総RNAを鋳型とし、AQP3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。AQP3の発現量は、「試料無添加」及び「試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに「試料無添加」の補正値を100としたときの「試料添加」の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりAQP3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0137】
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
結果を表10に示す。
【0138】
【表10】

【0139】
表10に示すように、京壬生菜抽出物(試料2)及び伏見とうがらし抽出物(試料3)は、優れたAQP3 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0140】
〔配合例1〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
京水菜抽出物(製造例1) 0.01g
万願寺とうがらし抽出物(製造例4) 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0141】
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
伏見とうがらし抽出物(製造例3) 0.05g
九条ねぎ抽出物(製造例5) 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0142】
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
京水菜抽出物(製造例1) 0.01g
京壬生菜抽出物(製造例2) 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の美白剤、抗老化剤及び皮膚化粧料は、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防・改善;皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状の予防、治療又は改善に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし及び九条ねぎからなる群より選択される1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項2】
前記抽出物が、メラニン産生抑制作用及び/又はグルタチオン産生促進作用を有することを特徴とする請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
京水菜、京壬生菜、伏見とうがらし、万願寺とうがらし及び九条ねぎからなる群より選択される1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項4】
前記抽出物が、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、過酸化水素細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項3に記載の抗老化剤。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の美白剤及び/又は請求項3若しくは4に記載の抗老化剤を配合したことを特徴とする皮膚化粧料。

【公開番号】特開2012−162487(P2012−162487A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24026(P2011−24026)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】