説明

美白剤

【課題】安全性が高い、美白剤、メラニン生成抑制剤及びドーパオキシダーゼ活性抑制剤を提供すること。
【解決手段】ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とするドーパオキシダーゼ活性抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤、メラニン生成抑制剤又はドーパオキシダーゼ活性抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
美容上、色素沈着や、シミ、ソバカスの少ない白い肌が好まれる傾向にあることから、長期間使用しても安全性の高い美白作用を有する物質が望まれている。
この色素沈着やシミ、ソバカス等は、一般に皮膚の紫外線暴露による刺激やホルモンの異常又は遺伝的要素等によって皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)が活性化されメラニン生成が亢進した結果生じるものと考えられている。このメラニン生成亢進のメカニズムは複雑であるが、メラニンは酵素チロシナーゼの作用により生合成され、チロシナーゼのドーパオキシダーゼ活性はメラニン生成のメカニズムに深く関与していることが知られている(非特許文献1)。
このメラニン生成のメカニズムを標的とした美白剤が開発されている。例えば、酵素チロシナーゼの活性を抑制してメラニン産生を抑制する作用を有する皮膚美白剤として、アスコルビン酸、アルブチン、コウジ酸等が報告されている(非特許文献2)。
【0003】
ドーパオキシダーゼ活性を抑制し、美白作用を有する植物エキスが報告されている。例えば、トウセンダン(Melia toosendan Sieb. et Zucc.)、ソウカ(Amomum tsao-ka Crevost et Lemaire)、セネシオ グラシリス(Senecio gracilis)及びコクリロ(Veratrum nigrum L.)(特許文献1)、セイヨウトウキ(Angelica archangelica)、ハナミズキ(Benthamidia florida)、カンスイ(Euphorbia kansui Liou)、ヌルデ(Rhus chinensis Mill.)、オカゼリ(Cnidium monnieri(L.)Cuss.)、キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb.)、ロウロ(Diuranthera minor(C.H.Wright)Hemsl.)及びセイヨウメギ(Berberis aristata)(特許文献2)、イヌカラマツ、タイワンコマツナギ及びチョウセンアサガオ(特許文献3)、ならびにザクロ(Punica granatum)花(特許文献4)が知られている。
【0004】
マンサク科植物のロロツウ(Liquidambar formosana)は、漢方で補血又は活血作用を有する生薬として知られている(特許文献5〜7)。しかし、この植物が美白作用、メラニン生成抑制作用又はドーパオキシダーゼ活性抑制作用を有していることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−195732号公報
【特許文献2】特開2010−195731号公報
【特許文献3】特開2010−159221号公報
【特許文献4】特開2006−225286号公報
【特許文献5】特開2000−103718号公報
【特許文献6】特開平08−040922号公報
【特許文献7】特開平08−040921号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biochimica et Biophysica Acta 1247, 1-11(1995)
【非特許文献2】美白戦略(南江堂)IV.,美白剤の薬理と臨床,p95-116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性が高く、ドーパオキシダーゼ活性を抑制することができ、化粧料や医薬等として有用な美白剤、メラニン生成抑制剤及びドーパオキシダーゼ活性抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、美白作用やメラニン生成抑制作用等を有する天然由来の物質を探索したところ、ロロツウがドーパオキシダーゼ活性抑制作用を有し、メラニン過剰生成に伴う皮膚の褐色化やシミ・ソバカス等の予防、改善、治療等の効果を発揮する医薬、化粧料、皮膚外用剤及び美白用組成物等の素材として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供する。
1)ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とするドーパオキシダーゼ活性抑制剤。
2)ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
3)ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とする美白剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドーパオキシダーゼ活性抑制剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、又は皮膚外用剤を用いれば、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け等の色素沈着、シミ、ソバカスの予防、改善又は治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ロロツウ抽出物によるドーパオキシダーゼ活性抑制。エラーバー=±S.D.。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
【0013】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0014】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
【0015】
本発明におけるロロツウとは、マンサク科植物フウ(Piscidia erythrina)を意味する。
ロロツウとしては、その植物の全草、葉(葉身、葉柄等)、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、茎、根茎、根、塊根等を、そのまま、切断、破砕、粉砕、搾取して用いるか、又はこれら処理されたものを乾燥若しくは粉末化して用いることができる。用いる部位としては、果実が好ましく、成熟果実がより好ましい。
ロロツウの抽出物としては、特に限定されない限り、上記部位のいずれかからの抽出物であればよいが、果実抽出物が好ましく、成熟果実抽出物がより好ましい。抽出物は、上記植物の部位から直接抽出されたものでもよいが、当該植物の部位を切断、破砕、粉砕若しくは搾取、及び/又は乾燥若しくは粉末化してから抽出されたものでもよい。
【0016】
ロロツウ抽出物を調製するために用いられる抽出溶剤としては、有機溶剤が好ましく、極性有機溶剤、非極性有機溶剤の何れも使用することができる。
当該有機溶剤としては、1価、2価又は多価のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;飽和又は不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル類等が挙げられ、このうち、薬理活性の点で、アルコール類及び飽和炭化水素類が好ましい。
【0017】
上記アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の1価アルコール類;1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール類;グリセリン等の3価以上のアルコール類等が挙げられ、このうち、薬理活性の点で、1価アルコール類及び2価アルコール類が好ましい。
【0018】
上記アルコール類としては、炭素数1〜10、より炭素数1〜4が好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられ、取り扱いが容易な点から、エタノール及び1,3−ブチレングリコールが好ましい。
【0019】
また、上記飽和炭化水素類としては、直鎖、分岐鎖又は環状の飽和炭化水素が挙げられ、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の直鎖飽和炭化水素;2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等の分岐鎖飽和炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の環状飽和炭化水素等が挙げられ、このうち、薬理活性の点で、直鎖飽和炭化水素が好ましい。
【0020】
上記飽和炭化水素類としては、炭素数1〜10、より炭素数5〜10、更に炭素数5〜8が好ましい。具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、取り扱いが容易な点から、n−ヘキサンが好ましい。
【0021】
上記有機溶剤は、単独で又は2種以上混合して混合液として使用することができる。
【0022】
本発明に用いる有機溶剤は含水のものでもよい。
上記含水有機溶剤に使用される有機溶剤としては、親水性有機溶剤が好ましい。
ここで、親水性有機溶剤としては、特に限定されないが、上述した、アルコール類、酢酸、ピリジン類等のプロトン性親水性有機溶剤及びケトン類、アセトニトリル、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性親水性有機溶剤が挙げられ、このうちプロトン性親水性有機溶剤が好ましい。このプロトン性親水性有機溶剤のうち、取り扱いが容易な点から、上記アルコール類、より上記1価及び2価のアルコール類、更に炭素数1〜4のアルコール類、より更にエタノール及び1,3−ブチレングリコールが好ましい。
尚、これらを単独で又は2種以上混合して混合液として使用することができる。
【0023】
上記含水有機溶剤中の含水量は、特に限定されないが、薬理活性の点から70容量%以下、好ましくは50容量%以下、さらに好ましくは25容量%以下とすることができる。
例えば、含水有機溶剤中の親水性有機溶剤の濃度としては、少なくとも親水性有機溶剤30容量%以上、より好ましくは50〜100容量%、さらに好ましくは75〜100容量%、なお好ましくは75〜99.9容量%とするのが、薬理活性の点で、好ましい。
【0024】
本発明における抽出の手段としては、特に限定されないが、例えば、液液抽出、固液抽出、浸漬、浸出、煎出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、遠心抽出等が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このとき、バッチ式抽出器やソックスレー抽出器等を用いてもよい。
【0025】
抽出条件としては、特に限定されないが、抽出温度は、0〜100℃、より4〜80℃、更に4〜40℃であるのが好ましく、抽出期間は、1分〜50日間、より1時間〜50日間、更に1〜30日間であるのが好ましい。
また、上記溶剤の使用量は、植物1質量部(乾燥物換算)に対して、1〜100質量部、さらに1〜50質量部、より5〜40質量部であるのが好ましい。
【0026】
抽出の一例として、植物1質量部(乾燥物換算)に対して、上記溶剤濃度50〜95容量%含有の1価若しくは2価のアルコール水溶液(好ましくは炭素数1〜3の1価アルコール類又は炭素数3〜5の2価アルコール類)及び/又は飽和炭化水素類(好ましくは炭素数5〜10の飽和炭化水素)を1〜50質量部用いて、10〜40℃(好ましくは20〜40℃)で、1時間〜30日間(好ましくは5〜20日間)抽出するのが好ましい。
また、抽出は、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、非酸化的雰囲気下で行ってもよい。
【0027】
上述のようにして得られたロロツウ抽出物は、そのまま用いることもできるが、さらに希釈、濃縮又は凍結乾燥等し、及び/又は液状、粉末状又はペースト状に調製して用いることもできる。
【0028】
また、ロロツウを上記溶剤、好ましくは上記親水性有機溶剤で抽出した後に、水洗や液液分液、固液抽出等の抽出手段を用いることが、水溶性の夾雑物等を除去でき、薬理活性の点で、有利である。
具体的には、ロロツウの抽出物、好ましくは親水性有機溶剤抽出物に、水及び/又は疎水性有機溶媒等の溶媒を添加し、混合、撹拌、振とう、遠心分離等の物理的手段を行ったのち、薬理活性成分が主として含まれる画分(層)の回収を行う。適宜この操作を1〜3回繰り返し行ってもよい。回収後は濃縮し、得られた固形物をアルコール水溶液等に溶解させても良い。
【0029】
上記有機溶剤抽出物に添加する溶媒(以下、「添加溶媒」とする。)としては、水、疎水性有機溶媒又は水−疎水性有機溶媒混合液を用いればよい。
【0030】
ここで、疎水性有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、上述した、飽和又は不飽和の炭化水素類;芳香族炭化水素類;ハロゲン化炭化水素類;鎖状若しくは環状のエーテル類又はポリエーテル類;オイル等が挙げられる。このうち、薬理活性の点から、飽和又は不飽和の炭化水素類が好ましく、飽和炭化水素類がより好ましい。飽和炭化水素類のうち、炭素数5〜10の飽和炭化水素が好ましく、炭素数5〜8の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素がより好ましく、n−ヘキサンがさらに好ましい。
尚、これら各疎水性有機溶剤を単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0031】
上記添加溶媒として、水−疎水性有機溶媒混合液を用いるのが、水洗と疎水性有機溶剤抽出とが同時に行え、作業効率がよい点で、有利である。尚、水と疎水性有機溶剤とを同時又は別々に、上述の溶剤抽出物に添加してもよい。
水−疎水性有機溶媒混合液を用いて抽出、特に液液分液(分配)を行う場合には、分層性を改善するため、あるいは、抽出物中に混在する酸性成分や塩基性成分を除去する目的で、アルコール類や無機塩等をさらに加えても良い。
上記水−疎水性有機溶媒混合液中の水と疎水性有機溶媒との混合割合は、特に限定されないが、水(v):疎水性有機溶媒(v)=1:0.1〜1:10、より1:0.1〜1:5とするのが好ましい。
【0032】
上記添加溶媒に、水溶性夾雑物の除去を容易にするため、上記アルコール類を含有させてもよく、この場合、当該溶媒中、アルコール類の含有量は、1〜50容量%とするのが好ましい。
【0033】
上記添加溶媒に、水溶性夾雑物の除去を容易にするため、適宜、水溶性無機塩類を含有させてもよく、当該水溶性無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;炭酸ナトリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩等;リン酸ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
また、水中の水溶性無機塩類の含有量は、0.5〜10%(m/v)とするのが好ましい。
【0034】
上記添加溶媒の使用量は、特に限定されないが、乾固物1gに対して、10〜100mLであるのが好ましい。また、抽出温度は、4〜80℃であるのが好ましく、10〜40℃、さらに10〜30℃であるのがより好ましい。
【0035】
上述のようにして得られたロロツウの有機溶剤抽出物は、そのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥等して、液状、粉末状又はペースト状に調製して用いることもできる。
なお、必要に応じて、上記ロロツウの有機溶剤抽出物を、活性炭処理、液体クロマトグラフィー、液々分配、ゲルろ過、精密蒸留等の分離精製技術に供して、不活性な夾雑物等を除去し、更に精製してもよい。
【0036】
後記実施例に示すように、ロロツウの有機溶剤抽出物は、ドーパオキシダーゼ活性を強く抑制すると云う優れたドーパ−オキシダーゼ活性抑制作用を有し、細胞毒性も低いことから、長期間使用しても安全性の高い美白作用を有している。
ここで、ドーパオキシダーゼ活性はメラニン生成のメカニズムに深く関与すること(非特許文献1)から、ドーパオキシダーゼ活性を抑制すれば、メラニン生成抑制効果、及び美白作用や紫外線被爆等による皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状を予防、改善又は治療する効果を得ることができる。
【0037】
すなわち、ロロツウ又はその有機溶媒抽出物は、ドーパ−オキシダーゼ活性抑制のため、メラニン生成抑制のため、美白のため、又は皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状を予防、改善、若しくは治療するために使用することができる。
これらの使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する組織、器官、細胞における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。
【0038】
従って、本発明は、ロロツウ又はその有機溶媒抽出物を有効成分とするドーパオキシダーゼ活性抑制剤を提供する。
また本発明は、ロロツウ又はその有機溶媒抽出物を有効成分とするメラニン生成抑制剤を提供する。
また本発明は、ロロツウ又はその有機溶媒抽出物を有効成分とする美白剤を提供する。
上記剤は、ロロツウ又はその有機溶媒抽出物から本質的に構成されていてもよい。
【0039】
上記ロロツウ又はその抽出物は、ドーパオキシダーゼ活性抑制のため、メラニン生成抑制のため、美白のため、皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状を予防、改善、若しくは治療するための組成物、医薬、医薬部外品、外用剤、化粧料、飲食品、飼料、又は飲食品若しくは飼料の原料等に素材として配合することができ、あるいはそれらの製造のために使用することができる。当該組成物、医薬、医薬部外品、外用剤、化粧料、飲食品、飼料、又は飲食品若しくは飼料の原料等もまた、本発明の範囲内である。
【0040】
上記組成物、医薬、医薬部外品、外用剤、化粧料、飲食品、飼料、又は飲食品若しくは飼料の原料等は、ヒト又は非ヒト動物用として製造され、又は使用され得る。上記ロロツウ又はその抽出物は、当該組成物、医薬、医薬部外品、外用剤、化粧料、飲食品、飼料、又は飲食品若しくは飼料の原料等に配合され、ドーパオキシダーゼ活性抑制のため、メラニン生成抑制のため、美白のため、あるいは皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状を予防、改善、若しくは治療するための有効成分であり得る。
【0041】
上記医薬又は医薬部外品は、上記ロロツウ又はその抽出物を有効成分として含有する。当該医薬又は医薬部外品は、任意の投与形態で投与され得る。投与は経口でも非経口でもよい。経口投与のための剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、ならびにエリキシロール、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態が挙げられ、非経口投与のための剤型としては、注射、輸液、局所、外用剤、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス、貼布剤等が挙げられる。
好ましくは、当該医薬又は医薬部外品は、皮膚外用剤の形態であり得る。
【0042】
上記医薬又は医薬部外品は、上記ロロツウ又はその抽出物を単独若しくは組み合わせて含有していてもよく、又は薬学的に許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、滑沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、当該医薬や医薬部外品は、上記ロロツウ又はその抽出物のドーパオキシダーゼ活性抑制作用が失われない限り、他の有効成分や薬理成分を含有していてもよい。
【0043】
上記化粧料は、上記ロロツウ又はその抽出物を有効成分として含有する。当該化粧料は、上記ロロツウ又はその抽出物を単独若しくは組み合わせて含有していてもよく、又は化粧料として許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、滑沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
また、当該化粧料は、上記ロロツウ又はその抽出物のドーパオキシダーゼ活性抑制作用作用が失われない限り、他の有効成分や化粧成分、例えば、保湿剤、美白剤、紫外線保護剤、細胞賦活剤、洗浄剤、角質溶解剤、メークアップ成分(例えば、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、チーク、口紅、アイメーク、アイブロウ、マスカラ、その他)等を含有していてもよい。
化粧料とする場合の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧料に使用され得る任意の形態が挙げられる。
好ましくは、上記化粧料は美白用化粧料であり、また好ましくは、皮膚外用化粧料であり得る。より好ましくは、上記化粧料は美白用の皮膚外用化粧料である。
【0044】
上記医薬、医薬部外品又は化粧料は、上記ロロツウ又はその抽出物から、あるいは必要に応じて上記担体及び/又は他の有効成分や、化粧成分、薬理成分を組みあわせて、常法により製造することができる。
例えば、上述した皮膚外用剤である医薬若しくは医薬部外品又は皮膚外用化粧料は、上記ロロツウ又はその抽出物を、単独で、又は外用剤、外用医薬品、医薬部外品若しくは皮膚化粧料に通常配合される、油又は油状物質(油脂類、ロウ類、高級脂肪酸類、精油類、シリコーン油類等)、保湿剤(グリセロール、ソルビトール、ゼラチン、ポリエチレングリコール等)、粉体(チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム等)、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬効成分、香料、樹脂、防菌防黴剤、他の植物抽出物(生薬、漢方薬、ハーブ類)、アルコール類、多価アルコール類、無機酸(重炭酸塩、炭酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等)、有機酸(コハク酸、グルタル酸、フマル酸、グルタミン酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンE類、ビタミンB類、ビタミンC、葉酸等)、水溶性高分子、アニオン性界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等)、カチオン性界面活性剤(アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等)、両性界面活性剤(アルキル基を有するイミダゾリン系、カルボベタイン系等)等と組み合わせることにより調製することができる。
【0045】
当該医薬、医薬部外品又は化粧料における上記ロロツウ又はその抽出物の含有量は、皮膚外用剤である医薬又は医薬部外品の場合、乾燥重量として、0.00001〜20質量%が好ましく、0.0001〜10質量%がより好ましく、また化粧料とする場合、乾燥重量として、0.0001〜20質量%が好ましく、0.0001〜10質量%がより好ましい。
【0046】
上記飲食品や飼料は、ドーパオキシダーゼ活性抑制、メラニン生成抑制、美白、又は皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状の予防、改善若しくは治療等の機能を得ることを企図し、当該機能を必要に応じて表示した食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、ペットフード等であり得る。
【0047】
上記飲食品の種類は特に限定されない。飲料としては、例えば、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、コーヒー飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等、あらゆる飲料が挙げられる。食品の形態は、固形、半固形、液状等の任意の形態であってもよく、また錠剤形態、丸剤形態、タブレット、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等であってもよい。例えば、食品としては、パン類、麺類、パスタ、ゼリー状食品、各種スナック類、ケーキ類、菓子類、アイスクリーム類、スープ類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、その他加工食品、調味料、サプリメント等が挙げられる。上記飼料の種類も特に限定されず、任意の動物のための飼料であってよく、その形態も上記食品の場合と同様に任意の形態であり得る。
【0048】
上記飲食品、飼料、又はそれらの原料は、上記ロロツウ又はその抽出物を単独で含有していてもよく、又は他の食材や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等の添加剤を組み合わせて含有していてもよい。当該飲食品若しくは飼料中の上記ロロツウ又はその抽出物の含有量は、乾燥重量として、0.0001〜10質量%が好ましく、0.0001〜5質量%がより好ましく、0.001〜1質量%がさらに好ましい。
【0049】
また本発明は、細胞のドーパオキシダーゼ活性を抑制する方法を提供する。当該方法は、ドーパオキシダーゼ発現能を有し且つドーパオキシダーゼ活性を抑制したい細胞に、上記ロロツウ又はその抽出物を添加する工程を含む。
また本発明は、細胞のメラニン生成を抑制する方法を提供する。当該方法は、メラニン生成能を有し且つメラニン生成を抑制したい細胞に、上記ロロツウ又はその抽出物を添加する工程を含む。
【0050】
本発明においてドーパオキシダーゼ活性又はメラニン生成を抑制する「細胞」は、天然又は遺伝子工学的に改変されたドーパオキシダーゼ発現能又はメラニン生成能を有する細胞であれば特に限定されない。細胞としては、好ましくは色素細胞(メラノサイト、網膜色素上皮細胞等)が挙げられ、より好ましくはメラノサイトが挙げられる。
あるいは、当該「細胞」は、上記で挙げた細胞の細胞片または細胞分画物であってもよく、あるいは上記で挙げた細胞を含む組織又は上記で挙げた細胞に由来する培養物であってもよい。細胞が細胞培養物の場合、好ましくは、当該細胞は、上記ロロツウ又はその抽出物の存在下で培養される。
添加される上記ロロツウ又はその抽出物の濃度は、細胞が細胞培養物の場合、培養物中での最終濃度として、乾燥重量換算で、0.0001〜2%(w/v)であり、好ましくは0.0002〜0.5%(w/v)であり、より好ましくは0.0001〜0.1%(w/v)である。
【0051】
また本発明において、上記ロロツウ又はその抽出物は、ドーパオキシダーゼ活性抑制のため、メラニン生成抑制のため、美白のため、あるいは皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状を予防、改善、若しくは治療するために、それらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取され得る。当該投与又は摂取は、健康増進又は美容目的により非治療的に行われてもよい。
投与又は摂取の対象としては、ドーパオキシダーゼ活性の抑制を必要とする動物が挙げられる。あるいは、投与又は摂取の対象としては、メラニン生成抑制や美白を所望する動物、又は皮膚の色素沈着、シミ、ソバカス等の症状の予防、改善、若しくは治療することを所望する動物が挙げられる。動物は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0052】
好ましい投与又は摂取量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与又は摂取の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得る。例えば、ヒトの皮膚に局所投与する場合、投与量は、上記ロロツウ又はその抽出物の乾燥重量換算で、成人(60kg)1人当たり、0.001〜1000mg/日とすることが好ましく、0.01〜100mg/日がより好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
製造例 ロロツウ抽出物の調製
(製造例1)ロロツウ水抽出物の調製
ロロツウ(ウチダ和漢薬社製)50gに、水500mLを加え、60℃で5時間抽出後、濾過して粗抽出液を得た後、凍結乾燥して抽出固形分5.57gを得た。この抽出固形分を蒸発残分1.0w/v%となるよう10%エタノールに溶解し、ロロツウ水抽出物を調製した。
【0055】
(製造例2)ロロツウ50%エタノール抽出物の調製
ロロツウ(ウチダ和漢薬社製)50gに、50%エタノール500mLを加え、室温5日間抽出後、濾過して粗抽出液を得た後、濃縮乾固して抽出固形分1.37gを得た。この抽出固形分を蒸発残分1.0w/v%となるよう50%エタノールに溶解し、ロロツウ50%エタノール抽出物を調製した。
【0056】
(製造例3)ロロツウ95%エタノール抽出物の調製
ロロツウ(ウチダ和漢薬社製)50gに、95%エタノール500mLを加え、室温5日間抽出後、濾過して粗抽出液を得た後、濃縮乾固して抽出固形分1.38gを得た。この抽出固形分を蒸発残分1.0w/v%となるよう95%エタノールに溶解し、ハグロソウ95%エタノール抽出物を調製した。
【0057】
実施例1 ロロツウ抽出物によるドーパオキシダーゼ活性抑制
(1)細胞培養
正常ヒト新生児表皮由来メラノサイト(NHEMs;クラボウ社)を96ウェルプレートに1×104細胞/ウェル(100μL/ウェル)の細胞密度で播種し、37℃、5%CO2下にて培養した。培地には、PMA(−)の増殖用添加剤(HMGS)を含むMedium 254を用いた。
3日間培養した後、それぞれ培地中終濃度で1nMになるように調整したEndothelin−1(ET−1)、SCF、α−MSH、Histamine、PGE2とともに、上記製造例1〜3に従って調製した蒸発残分1.0w/v%のロロツウ抽出物(水抽出物、50%エタノール抽出物又は95%エタノール抽出物)を表1に記載の終濃度となるように添加し、37℃、5%CO2の条件下で3日間培養を行った。コントロールとしては、同量のエタノール水溶液(10%、50%又は95%)を添加した。
【0058】
(2)ドーパオキシダーゼ活性の測定
培養終了後、アラマーブルー(インビトロジェン社)試薬を20μL/ウェルで添加し、2〜3時間インキュベートした後、培地の蛍光強度を測定して細胞呼吸活性を測定した。その後、細胞をPBSで洗浄し、抽出バッファー(0.1M Tris−HCL(pH7.2)、1% NP−40、0.01%SDS、100μM PMSF、1μg/mアプロチニン)を20μL/ウェル、Assay Buffer(4%ジメチルホルムアミド、100mM Sodium phosphate−buffered(pH7.1))を20μL/ウェル添加し、4℃、3時間で細胞を可溶化し、ドーパオキシダーゼ活性の測定を行った。ドーパオキシダーゼ活性測定は、MBTH法(Winder A. et al., 1991, Eur.J. Biochem. 198:317-326)を参考に、以下の方法で行った。
可溶化した細胞溶液の各ウェルに、上記Assay Bufferを80μL、20.7mM MBTH(3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン)溶液を60μL、基質として5mM L−ドーパ(L−ジヒドロキシフェニルアラニン)溶液を40μL、それぞれ加え、37℃で30〜60分反応させた後、その呈色反応を490nmの吸光度で測定した(N=3)。測定値をコントロールの結果に対する相対値として表した。
【0059】
(3)結果
結果を表1及び図1に示す。ロロツウの50%エタノール抽出物及び95%エタノール抽出物によってドーパオキシダーゼ活性が濃度依存的に抑制された。アラマーブルー法による細胞呼吸活性の測定から、表1に示す濃度のロロツウ抽出物の添加が細胞増殖に影響を及ぼさないことが確認された。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とするドーパオキシダーゼ活性抑制剤。
【請求項2】
ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
【請求項3】
ロロツウ又はその有機溶剤抽出物を有効成分とする美白剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149022(P2012−149022A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10605(P2011−10605)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】