説明

羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材、及びその光天井システム

【課題】可撓性を有し、強度が高く、可視光透過率が高く、適度な光の拡散性を有し、更に走光性羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止することが可能である光天井用膜材と、それを用いた光天井システムの提供。
【解決手段】本発明の光天井用膜材は、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含む光拡散透過性シートにおいて、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層上に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層を設け、かつ、前記可撓性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むようにする。本発明の光天井システムは、少なくとも前記光天井用膜材の羽虫死骸分解層を蛍光灯に対面して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光天井用膜材、及びその光天井システムに関するものであり、更に詳しくは、可撓性を有し、可視光透過率が高く適度な光の拡散性を有し、特に羽虫陰影痕防止性を有する光拡散透過性シートであり、ホテルのエントランス・ラウンジ・パーテイ会場、オフィスビル大会議室、冠婚葬祭式場、ステーションビル・空港内施設、地下街通路、大型商業施設、各種公共施設、エレベータかご内、鉄道車両内などの光天井照明シェ−ドに用いる積層体と、その光天井システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商業施設、オフィスビル、校舎などにおける照明は、多数の蛍光灯ユニットを天井の縦横に過密配置することによって、室内の明るさと照度の均一性とを保つのが一般的である。しかし、この方法では蛍光灯ユニットの存在が目立ってしまい、施設空間デザインの自在性の障害となっている。そのため蛍光灯ユニットを乳白色のアクリル樹脂製の照明カバーで覆い隠したり(例えば特許文献1参照)、天井全体を白色を基調とする装飾として保護色化するなどの配慮がなされているものの、依然として蛍光灯ユニット自体の存在を目立たなくすることは困難な課題であった。
【0003】
特に高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などでは、照明設備自体を極力露出しない照明デザインが採用されているが、最近の新築施設では、より空間の洗練性と明るさを追求した照明手段として、天井のほぼ全面を照明シェード化して天井全体を発光させる光天井照明の導入が進んでいる。光天井としては、繊維織物を基材とする長尺膜材を、蛍光灯ユニットが配置された天井に対し、全面、かつ一定間隔の平行空間を設けて被覆施工してなるものが、特に建築物の耐久性と施工性とに融通し、しかも照明シェードとして優れた光拡散効果と蛍光灯隠蔽効果とを兼備している。光天井に用いる長尺膜材としては例えば、フッ素樹脂シートとガラス繊維シートとの複合成形体が挙げられる。(特許文献2、3参照)しかし、これらの光天井システムでは、繊維織物を含むことによる光透過効果の減衰や繊維織物の陰影が問題となり、そのため多くの蛍光灯ユニットを配置する必要があった。
【0004】
特に大規模施設では、通年での稼働日や営業日も少なくなく、そのためこれらの施設における光天井システムはノーメンテナンス主体である。そのため経時的に光天井システムの空間内部に、ユスリ蚊や羽虫類などの小型走光性羽虫が入り込んで、その死骸が光天井膜材上に落下して、その死骸が蛍光灯照明の影となり光天井外観の異物痕として散在することで見栄えや印象を悪くする問題がある。特に光天井システムでは多くの蛍光灯ユニットを配置することで、光天井の内部空間は高照度、30℃近い環境であるため、熱を放出するための通風孔を随所に有していることから、外部からの走光性羽虫の誘引迷込は不可避である。特に繁華街のビルや大規模施設では多くの飲食店をテナント・誘致しているため、これらの厨房の換気孔が外部との開放系であることもビル内への羽虫誘引の原因となっている。
【0005】
これらの大規模施設の光天井においては高所作業で大掛かりとなる、羽虫の死骸除去のメンテナンスは困難である。そのため、光源と光天井膜材(照明シェード)の間に羽虫の死骸受けの網やメッシュシートを全面配置することで、羽虫の死骸が直接光天井膜材(照明シェード)に触れないようにし、これにより羽虫の死骸の影による焦点を広角としてぼやけさせる方法が提案されている。しかし、この方法では網やメッシュシートの2重構造となってコスト高となり、しかも光源からの光量を減衰させるという難点を有している。このような光源と照明シェード間に羽虫の死骸受けを配置する考案は、エレベータかご内における天井照明においても提案がなされている。(例えば特許文献4および5参照)
【0006】
また一方で、これらの大規模施設における光天井の設計には、タバコのヤニ汚れの除去性や汚れ防止性が要求される事例も少なくない。その設計の1例として、光触媒層付きシートを用いた照明装置が提案されている。(例えば特許文献6参照)
【0007】
また、上記の光天井膜材は建築基準法に適合する不燃性を有することが火災対策上好ましいので、光天井システム用膜材には例えば特許文献2、3のようなフッ素樹脂シートとガラス繊維シートとの複合成形体や、ガラス繊維織物に熱硬化性樹脂を含浸被覆した複合シートが適切である。しかし、これらの複合成形体やシートを光天井膜材に用いた場合、光天井システムの空間内部に迷込んだ走光性羽虫の死骸による異物影が問題となる。これに羽虫の死骸受けの網やフィルムを導入する2重構造はコスト高となるだけでなく、蛍光灯交換などの定期的メンテナンス作業を阻害するため大変な不自由を強いられることになる。従って、光天井に用いる膜材で、可視光透過性が高く且つ、適度な光拡散性を有し、特に光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止することが可能である光天井用膜材及び、光天井システムで、しかも不燃性を有するものは現在までに存在していなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−172019号公報
【特許文献2】特開平08−290528号公報
【特許文献3】特開2006−212820号公報
【特許文献4】特開2002−087739号公報
【特許文献5】特開2008−150187号公報
【特許文献6】特開2006−198466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光天井に用いる可撓性繊維複合膜材で、可視光透過性が高く且つ、適度な光拡散性を有し、特に複雑な構成や装置等を用いずに、光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止することが可能である光天井用膜材及び、その光天井システムを提供しようとするものであり、更に火災対策上、不燃性を有する光天井用膜材と、その光天井システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートにおいて
1.光拡散透過性シートの少なくとも一層上に、可視光応答型の光触媒性物質を含む層
を設けることによって羽虫死骸分解効果が得られること
2.可撓性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むこと
3.上記1と2の組合わせによって、光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸
による異物陰影の問題を羽虫死骸分解効果によって解決し、特に走光性羽虫の死骸の
分解が100%に満たなくても、可撓性樹脂層の海島構造による特異な光学特性によ
って走光性羽虫の死骸の陰影痕を著しく緩和する効果を見出して本発明を完成するに
至った。
【0011】
すなわち本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートであって、前記光拡散透過性シートの少なくとも一層上に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられ、かつ、前記可撓性樹脂層が合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むことが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、前記着色剤が、少なくとも無機化合物からなる白色微粒子を含むことが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、前記光拡散透過性シートにおいて、前記羽虫死骸分解層形成面が表面粗さRz値(JIS−B0601)が10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmであることが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0<|n1−na|≦0.2 式1
|n1−nb|≦0.2 式2
本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材は、前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えない不燃特性を有することが好ましい。
本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートを光天井膜材として用い、前記光拡散透過性シートの背面に、蛍光灯を配置してなる光天井構造物であって、少なくとも前記蛍光灯に対面する前記光拡散透過性シート面側に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられ、かつ、前記可撓性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むことが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、前記着色剤が、少なくとも無機化合物からなる白色微粒子を含むことが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、前記光拡散透過性シートにおいて、前記羽虫死骸分解層形成面が表面粗さRz値(JIS−B0601)が10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmであることが好ましい。本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0<|n1−na|≦0.2 式1
|n1−nb|≦0.2 式2
本発明の羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システムは、前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えない不燃特性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光天井用途に適して用いることができる可撓性繊維複合膜材で、可視光透過性が高く且つ、適度な光拡散性を有し、特に光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止することが可能である光天井用膜材及び、その光天井システムを提供することができる。本発明の光天井用膜材と、その光天井システムは光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸の分解が100%に満たなくても、可撓性繊維複合膜材の特異な光学特性によって走光性羽虫の死骸の陰影痕を著しく緩和する効果を有しているため、ホテルのエントランス・ラウンジ・パーテイ会場、オフィスビル大会議室、冠婚葬祭式場、ステーションビル・空港内施設、地下街通路、大型商業施設、各種公共施設、エレベータかご内、鉄道車両内などの光天井照明シェ−ドに広く用いることができる。更に本発明おいて、火災対策上、不燃性を有する光天井用膜材と、その光天井システムを提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】延伸フィラメントの延伸方向と延伸垂直方向示す図 (a)延伸方向a (b)延伸垂直方向b
【図2】本発明の光拡散透過性シートの一例を示す図
【図3】本発明の光天井システムの一例を示す図
【図4】実施例・比較例において光天井としての機能を評価した際の構成を示す図
【図5】実施例・比較例において羽虫の分解性を評価した際の構成を示す図
【図6】可撓性樹脂層の海島構造を示し、島成分が着色剤を含む状態を示す図
【図7】可撓性樹脂層の海島構造を示し、海成分が着色剤を含む状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光天井用膜材は、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートであって、この光拡散透過性シートの少なくとも一層上に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられ、かつ、可撓性樹脂層が合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むものである。また、本発明の光天井用膜材システムは、上記膜材を光天井膜材として用い、蛍光灯ユニットが配置された天井に対し、全面、かつ一定間隔の平行空間を設けて被覆施工してなるもので、少なくとも蛍光灯に対面する光拡散透過性シート面側に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられているものである。
【0015】
本発明の光天井用膜材において、編織布に使用する延伸フィラメントとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維による長繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維による長繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維による長繊維などであり、これらは単独使用または混用、混紡であってもよい。また、延伸フィラメントは、マルチフィラメント糸条、もしくはモノフィラメント糸条が好ましく、本発明においてはフィラメント数3〜300本、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、特に277〜1112dtexのマルチフィラメント糸条が好ましい。延伸フィラメントは、溶融紡糸した未延伸の長繊維紡糸原糸を加熱延伸、または常温近傍の冷延伸によって3.0〜5.0倍に延伸し、繊維のミクロ構造を配列、結晶化させたものである。これらの延伸フィラメントは、図1(a)の様に延伸方向aを有し、図1(b)の様に延伸方向に対する延伸垂直方向bを有する。ここで、延伸フィラメントとして、合成繊維、半合成繊維、再生繊維の場合には延伸により高分子の結晶構造を任意配向させることで、延伸方向aの屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbを適宜調整することができる。またガラス繊維の様に非晶質の無機材料を用いる場合には、naとnbは等しくなる。
【0016】
本発明に使用する編織布には織布、または編布が用いられ、織布として、平織、綾織、繻子織、模紗織など公知の織布が挙げられるが、中でも特に平織織布が、得られる光天井用膜材の経緯物性バランスに優れて好ましい。編布としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、糸間間隙を均等において平行に多数配置した経糸、及び糸間間隙を均等において平行に多数配置した緯糸を含んで構成された粗目状の編織物(空隙率5〜50%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。中でも、補強効果、光拡散効果などの点から、経緯糸条の交絡間に形成される空隙率が0〜5%の高密度編織物が特に好ましく用いられる。前記編織布には、付着する油剤や糊剤を除くために、精練や熱処理を施しても良く、可撓性樹脂加工液に濡れやすくし可撓性脂層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、シランカップリング剤処理などを行っても良い。
【0017】
本発明の光天井用膜材において可撓性樹脂層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステルなどの熱可塑性樹脂、及びビニルエステル樹脂などである。
【0018】
本発明において可撓性樹脂層は、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなるもので、非相溶であれば合成樹脂の組合せに制限はない。非相溶の組合せ例としては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とポリスチレン、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、ポリスチレンとポリエチレン、ポリスチレンとポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とポリスチレン、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとポリスチレン、ポリアミドとポリプロピレンなど2種類の合成樹脂のブレンドが好ましい。これらの非相溶の熱可塑性樹脂対に対して、さらに別種の熱可塑性樹脂を含有することもできる。
【0019】
これらの非相溶混合物は相分離構造を示す白濁概観の海島構造であることが好ましい。この海島構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bからなる非相溶混合物において、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの比率設定により、海成分を熱可塑性樹脂Aで構成し、島成分を熱可塑性樹脂Bで構成することができ、また海成分を熱可塑性樹脂Bで構成し、島成分を熱可塑性樹脂Aで構成することもできる。島成分を構成する樹脂の比率は、海成分を構成する樹脂の体積に対して10〜70体積%(好ましくは20〜50体積%)、可撓性樹脂層全体に対する島成分含有率は9〜41.1体積%(好ましくは16.6〜33.3体積%)である。また非相溶の熱可塑性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の熱可塑性樹脂Cを含有する場合、海島構造において島成分が熱可塑性樹脂Bによる島成分と熱可塑性樹脂Cによる島成分で構成されてもよく、同様に島成分が熱可塑性樹脂Aによる島成分と熱可塑性樹脂Cによる島成分で構成されてもよい。
【0020】
また島成分の形状は球状、歪んだ球状、碁石状、ラグビーボール状などである。島成分の平均粒径は0.1〜50μmであり、特に0.1〜30μmが好ましい。島成分のサイズを0.1μmより大きくすることによって可撓性樹脂層に全光線透過率を維持しながら良好な光拡散効果を得ることができる。本発明において可撓性樹脂層は、海成分を構成する合成樹脂の屈折率と島成分を構成する合成樹脂の屈折率差を有することが好ましい。屈折率が同一であると海成分と島成分との界面における屈折散乱現象が起こらず、十分な光拡散効果が得られない。良好な光拡散性を得るための屈折率差は、0.01以上、より好ましくは0.05以上であり、屈折率差を構成する条件は海成分と島成分の、何れの側の屈折率が高くても構わない。屈折率はD線を光源とするアッベ屈折率計により求めることができる。
【0021】
本発明において可撓性樹脂層は、2種類の合成樹脂の非相溶混合物からなる海島構造を有しており、かつ、海島構造において海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含んでいる。海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含んで着色するには、非相溶混合物を構成する2種類の合成樹脂のいずれか一方をあらかじめ着色し、非着色合成樹脂と着色合成樹脂との溶融混合によって、着色海成分と非着色島成分による構成、または非着色海成分と着色島成分による構成を得ることができる。本発明の混合物では着色合成樹脂成分は非相溶対の非着色合成樹脂成分と交じり合うことは無いから、非着色合成樹脂成分が着色合成樹脂成分に含まれる着色剤によって着色されることはない。本発明において海島構造は、海成分と島成分が各々異なる着色剤により着色されていてもよい。海成分または島成分を着色する着色剤は蛍光灯の光を拡散させ、羽虫死骸(羽虫死骸分解層による分解途中の状態を包含する)の散在の痕跡を目立たなくする作用を有する。本発明の光天井用膜材において可撓性樹脂層は島成分が着色されていることが好ましい。また本発明の光天井用膜材において可撓性樹脂層は、海成分または島成分のいずれか一方が着色されていることで、蛍光灯などの光源の光拡散効果を向上させると同時に、良好な光線透過性を確保することができるので、より輝度が高く、色鮮やかな天井照明を可能とする。
【0022】
海成分または島成分の着色に用いる着色剤は、少なくとも無機化合物による白色微粒子を含むことが羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止するために効果的である。白色微粒子としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属複合酸化物、金属複合水酸化物などが挙げられ、これらは具体的に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ケイ素(シリカ)などの金属酸化物、及びホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、ジルコニウム−アンチモンなどの金属複合酸化物などが挙げられる。また水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの金属水酸化物、及びドロマイト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化スズの水和物、ホウ砂などの金属複合水酸化物が挙げられ、その他白色微粒子としては硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、モンモリロナイト、ベントナイトなどが挙げられる。これらの白色微粒子の粒子径は0.25〜10μmであることが好ましい。
【0023】
本発明の光天井用シートにおいて、可撓性樹脂層には必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0024】
本発明において可撓性樹脂層は、全体の厚さが均一で、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。海成分及び島成分に含む着色剤含有率は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。添加量が0.1質量%未満では光拡散効果が不十分となって、羽虫死骸(羽虫死骸分解層による分解途中の状態を包含する)の散在の痕跡が目だってしまうことがある。また添加量が30質量部を超えると可視光透過率が低下して、光天井として十分な照度が得られなくなることがある。また特に島成分に着色剤を含有する場合、島成分の比率は、海成分に対して10〜70体積%(好ましくは20〜50体積%)、可撓性樹脂層全体に対する島成分含有率は9〜41.1体積%(好ましくは16.6〜33.3体積%)である。
【0025】
本発明において可撓性樹脂層を編織布に設ける方法としては、例えば、有機溶剤に分散させた樹脂非相溶混合物、樹脂エマルジョン(ラテックス)非相溶混合物、樹脂ディスパージョン非相溶混合物、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を主体とするペーストゾル非相溶混合物、熱硬化性樹脂を主体とする非相溶混合物などを用いて、公知の塗工方法、例えばディッピング(編織布への両面加工)、コーティング(繊維布帛への片面加工、または両面加工)などの塗工が例示できる。また編織布にカレンダー成型、Tダイス押出法により成形した、非相溶熱可塑性混合物からなる0.05〜1.0mmのフィルム又はシートを、接着剤を介して、あるいは熱ラミネートにより積層する方法、及びこれらの塗工と積層の組み合わせが例示できる。このとき、少なくとも編織布に直接積層した可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が0<|n1−na|≦0.2を満たし、かつ、可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が|n1−nb|≦0.2を満たす様に、可撓性樹脂と延伸フィラメントを適宜選択することが好ましい。
【0026】
本発明の光天井用膜材において、光拡散透過性シートの少なくとも一層上には、可視光応答型光触媒を含む羽虫死骸分解層が1〜10μm、好ましくは1〜5μmの層厚で設けられる。即ち編織布の片面に可撓性樹脂層を設けた複合基材の場合の羽虫死骸分解層は、i).可撓性樹脂層上、ii).編織布上、iii).可撓性樹脂層上、及び編織布上、の何れかの形態に形成され、また編織布の両面に可撓性樹脂層を設けた複合基材の場合の羽虫死骸分解層は、iv).一方の可撓性樹脂層上のみ、v).両面の可撓性樹脂層上、の何れかの形態に形成され、本発明の光天井システムにおいては、蛍光灯に対面する面は羽虫死骸分解層形成面である。これらの光拡散透過性シートにおいて羽虫死骸分解層形成面は、表面粗さRz値(JIS−B0601)10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmを満たすことにより、羽虫死骸分解層の単位面積あたりの表面積が増大し、これによって羽虫死骸分解層に含む可視光応答型光触媒の有効量も増大することで、羽虫死骸分解効率が向上する。また同時に表面粗さRz値(JIS−B0601)10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmを満たす表面粗さによって羽虫死骸と羽虫死骸分解層との間に微小な空間を設けることによって羽虫死骸分解効率を向上することができる。このような表面粗さ凹凸は公知のエンボス法によって設けることができる。また上記ii)の場合には編織布の織り構造が有する凹凸をそのまま利用することができる。
【0027】
本発明における羽虫死骸分解層により、体長が1〜15mm程度の羽虫類、羽蟻類などの走光性羽虫の死骸を光触媒作用によって、1年以内に死骸質量に対して、少なくとも50質量%以上分解することが可能であることが好ましい。羽虫死骸の分解除去率が50質量%以上であれば、羽虫類、羽蟻類などの羽が残留した場合でも、本発明の光拡散透過性シートの有する光学特性、更には羽虫死骸分解層に設けた表面粗さRz値(JIS−B0601)10〜200μmの凹凸、凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmの効果によって羽虫死骸の陰影痕を緩和して目立たなくすることが十分可能となる。
【0028】
可視光応答型光触媒としては、波長400nmから800nmの可視光を吸収して活性を示す光触媒性物質であれば特に限定無く用いることができる。可視光を吸収して活性を示す光触媒性物質としては、(1).従来公知の酸化チタン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化ビスマス、鉄−タングステン酸化物等の金属酸化物に、銀、プラチナ、金、銅、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの金属およびそれらの金属の化合物を助触媒として添加(担持)した助触媒添加(担持)型光触媒が、可視光に対する活性が高く、より好ましく用いられる。また、(2).上述の光触媒性金属酸化物に窒素、炭素、硫黄、リン、ホウ素、フッ素等をドープしたアニオンドープ型光触媒、(3).上述の光触媒性金属酸化物にクロム、ニオブ、マンガン、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル等の遷移金属イオンをドープしたカチオンドープ型光触媒、(4).アニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、(5).白金、パラジウム、ロジウムなど貴金属のハロゲン化物を担持させた金属ハロゲン化物担持型光触媒、(6).光触媒性金属酸化物から部分的に酸素を引き抜いた酸素欠損型光触媒、等を好ましく用いることができる。可視光応答型光触媒は、上記から1種、または2種以上を組み合わせて選択して用いることができる。
【0029】
羽虫死骸分解層の形成方法としては、例えば可視光応答型光触媒の粒子またはゾルと結着剤とを含む塗布剤を塗布して光触媒を含有する羽虫死骸分解層を形成する方法、光触媒性物質の溶液からゾルゲル法により光触媒を含有する羽虫死骸分解層を形成する方法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などにより光触媒を含有する羽虫死骸分解層を形成する方法、等従来公知の方法で形成することができる。このような結着剤としては、光触媒によって分解され難く、かつ皮膜形成能を有する、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリルフッ素共重合樹脂、アクリルシリコーン共重合樹脂、などの有機系バインダー、例えば、ポリシラザン、有機シリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)の何れか1種以上によるケイ素化合物縮合層であることが好ましく、これらに更にシリカゾル、アルミナゾル、チタンゾルの何れか1種以上を含むことが好ましい。羽虫死骸分解層には可視光応答型光触媒の粒子またはゾルを10〜70質量%、特に20〜60質量%含有することが好ましい。
【0030】
可撓性樹脂層と羽虫死骸分解層との間には、必要に応じて、可撓性樹脂層と羽虫死骸分解層の接着性を付与するための接着層、光触媒による樹脂の分解を妨げるための保護層、可撓性樹脂層に含まれる添加剤が羽虫死骸分解層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等を形成してもよい。また、羽虫死骸分解層が形成された面とは反対の面には、膜材表面の傷つきを防ぐための傷つき防止層、表面の汚れを防ぐための防汚層、光天井用膜材をロール状に巻き取って保管している間に、反対面側の可撓性樹脂層に含まれる添加剤が羽虫死骸分解層上に移行して光触媒性が低下するのを防ぐための添加剤移行防止層、意匠性を付与するための印刷層、等を従来公知の方法で形成しても良い。
【0031】
本発明の光天井用膜材は40〜90%の可視光透過率(JIS−Z8722)を有する光拡散透過性シートであることが好ましく、特に40〜70%が好ましい。可視光透過率が40%未満であると光天井に用いた場合、照明として十分な照度が得られなくなることがあり、また90%を超えると光源の存在が目立つようになるだけでなく、羽虫死骸(羽虫死骸分解層による分解途中の状態を包含する)の散在の痕跡が目だってしまうことがある。
【0032】
本発明の光天井システムは、上述の可視光透過率を有する光拡散透過性シートを光天井用膜材として用い、その背面に、蛍光灯などの光源を配置してなる光天井構造物であり、光拡散透過性シートにおいて、少なくとも蛍光灯に対面する面に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられていることで、光天井構造物内部に入り込んだ虫の死骸を分解して、更に光拡散透過性シートの有する光学特性によって羽虫死骸の陰影痕を緩和して目立たなくすることが可能となる。これによりメンテナンスの負担を大幅に軽減することができる。
【0033】
本発明の光天井用膜材に関して、図2の光拡散透過性シートを一例として説明する。図2の光拡散透過性シートは、編織布(1)として平織り織布を用い、樹脂加工液をディップ加工することにより、可撓性樹脂層(2)が編織布の両面に形成され、更にその片面上に可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層(3)が設けられている。
【0034】
図3は本発明の光天井システムの一例を示すものである。光天井用膜材としては、建築基準法に規定される難燃性、または不燃性を有することが好ましく、具体的には、輻射電気ヒーターを用いて50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、かつ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないことを満足する不燃性を有する光拡散透過性シートであることが好ましい。このような不燃性の光拡散透過性シート(4)は、ガラス繊維織布(目付質量200〜300g/m 、空隙率1%以下の非目抜け平織)を基材として、この1面以上に可撓性樹脂層を設けることで得られ、特に高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける大面積の天井に適して用いることが可能で、更にはエレベーターかご内の天井や鉄道車両の天井などにも用いることができる。光天井用膜材は天井の全面に用いても良いし、所望の一部分だけに用いても良い。光拡散透過性シート(4)の背面には蛍光灯(5)が配置されている。蛍光灯は400nmから800nmの波長の光を放射する照明用蛍光灯であれば特に限定は無く、LED使用の蛍光灯を用いることもできる。照明用蛍光灯は、三波長形蛍光灯、高演色形蛍光灯、一般型蛍光灯のいずれの形式も使用でき、これらの色温度は、昼光色(5700K〜7100K)、昼白色(4600K〜5400K)、白色(3900K〜4500K)、温白色(3200K〜3700K)、電球色(2600K〜3150K)など、いずれのタイプを用いてもよい。天井の形状としては、図3の様な平面状に限らず、アーチ型やドーム型など曲面状の天井であっても良い。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、編織布として下記の基布を用いた。基布の寸法は全てたて(経糸方向)150cm×よこ(緯糸方向)150cmとした。
(基布1)
溶融延伸フィラメント直径9μm/750dtexのガラス繊維(naおよびnb:
1.556)を用いたガラス繊維平織り布
織密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
(基布2)
延伸ナイロン333dtexマルチフィラメント(na:1.578、
nb:1.522)を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布3)
延伸ポリプロピレン278dtexマルチフィラメント
(na:1.530、nb:1.496)を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布4)
溶融延伸フィラメント直径9μm/750dtexで基布1とは屈折率の異なるガラス
繊維(naおよびnb:1.524)を用いたガラス繊維平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0036】
実施例及び比較例で作成した光天井用膜材(光拡散透過性シート)について図4の様な光天井モデルを作製し、蛍光灯の視認性、照度、延伸フィラメントの陰影について下記の通り評価を行った。光天井に用いた光拡散透過性シート(4)のサイズはたて150cm×よこ150cmであり、光拡散透過性シート(4)の羽虫死骸分解層(3)側を蛍光灯に対面させて取り付け、光拡散透過性シート(4)の面が床面から3mの高さになる様に平面施工し、背面に36ワット40型の直管3波長形昼白色蛍光灯(5)を6本並行に25cm間隔で均等に配置し、点灯した状態で評価した。なお、図4において、光拡散透過性シートと蛍光灯以外の要素(蛍光灯器具、ハウジング、電源、配線など)の表現は省略した。
【0037】
<背面の蛍光灯の視認性>
下方から、光拡散透過性シートの面に対して垂直の角度で1m離れた位置から観察し、
以下の基準で評価した。
1:光拡散透過性シート全面がほぼ均一に光り、蛍光灯がほとんど視認できず、位置
もわからない
2:蛍光灯は視認できないが、光拡散透過性シート表面の明るさにややムラがあり、
蛍光灯の位置も概ね見当をつけられる
3:光拡散透過性シートを通して蛍光灯が視認できる
<照度>
光拡散透過性シートの中心直下2mの位置で、照度計IM−2D(入江(株)製)を使
用し照度を測定した。
<延伸フィラメントの陰影>
下方から、シートの面に対して垂直の角度で1m離れた位置で観察し、延伸フィラメン
トによる陰影の有無を以下の様に評価した。
1:延伸フィラメントの陰影がほとんど視認できない
2:延伸フィラメントの陰影により基布の存在が目立つ
<シートの表面粗さRz値:JIS−B0601>
光拡散透過性シートの断面の粗さ曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最
高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との
差の値を求めた。
<シートの表面凹凸の平均間隔Sm値:JIS−B0601>
光拡散透過性シートの断面の粗さ曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、1
つの山およびそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を平均値で求めた。
<羽虫死骸分解性および羽虫陰影痕防止性>
内側のサイズが幅50cm×高さ20cm×奥行き20cmの透明なアクリル製の箱の
底面に、羽虫死骸分解層(3)側を上に向けて光拡散透過性シート(4)を敷き、その
中心に胴体長5mmのユスリ蚊の死骸(8)を10cm間隔で3体置き、図5の様に光
拡散透過性シートから10cmの位置に15ワット15型の直管3波長形昼白色蛍光灯
を1本配置した。蛍光灯を1日あたり16時間点灯して、30日経過後及び60日経過
後に状態を確認し、以下の様に評価した。
1:ユスリ蚊の死骸の痕跡が確認できない程度まで分解されていた
2:ユスリ蚊の死骸の分解は完全ではないが50質量%以上が分解されていた
3:ユスリ蚊の死骸の分解はまだ不完全であり、50質量%以上が残存していた
4:ユスリ蚊の死骸の分解は不完全であり、体躯の朽壊のみであった
5:ユスリ蚊の死骸は分解されず原型を留めていた
また、試験開始直後、30日経過後及び60日経過後に、蛍光灯を点灯した状態で、下
方からシートの面に対して垂直の角度で上記箱の底面側真下の1m離れた位置から、ユ
スリ蚊の陰影痕が視認できるかどうか観察し、以下の様に評価した。
1:陰影痕は視認できない、もしくは目立たなかった
2:陰影痕がはっきりと視認された
なお、箱にはフィルターを通してファンで空気を送り込むことで内部の圧力を外部より
も高く保ち、蛍光灯の配線のための穴や、箱の隙間などから他の虫が侵入しない様にす
るとともに、箱内部の温度上昇を抑えた。また、図5において、配線、蛍光灯器具、フ
ァン、箱、などに関しては表現を省略した。
<可視光透過率>
光拡散透過性シートの可視光透過率を、分光側色計CM−3600d(コニカミノルタ(株)製)を使用し、JIS−Z8722に従って測定した。
<燃焼試験>(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/mの輻射熱を光天井用膜材に20分間照射し、こ
の発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観を
観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/mを超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
【0038】
[実施例1]
下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合2の黒着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、黒着色ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液1を得た。この樹脂混合物液1を充満させた浴槽に基布1を浸漬し、基布1に樹脂混合物液1を完全に含浸させた。次いで、ドクターブレードで基布1両面の余分な樹脂混合物液1を掻き落とし、180℃×5分間電気炉加熱して、基布1の両面に可撓性樹脂を被覆したシートを得た。次にPETフィルムの1面上に樹脂混合物液1を0.12mm厚でコートし、これを先に作成したシートの片面に重ね、電気炉で180℃×5分間加熱して樹脂混合物液1を固化させて、からPETフィルムを除去して平滑な可撓性樹脂層(施工外観側)を形成した。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。次いで可撓性樹脂層に下記配合3の接着・保護層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層をシートの両面に形成し、さらにその上に下記配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの羽虫死骸分解層が両面に形成された可視光透過率66%の光天井用膜材を得た。このシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合1>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部

<配合2>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
着色剤(炭酸カルシウム:平均粒子径1μm) 10質量部

<配合3>接着・保護層
シリコーン含有量3mol%のアクリルシリコーン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株))の
20%エタノール溶液(ポリシロキサン) 8質量部
γ−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
(シランカップリング剤) 1質量部

<配合4>羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)
スノーテックスO(コロイダルシリカ:日産化学工業(株)製) 67質量部
メチルトリメトキシシラン 33質量部
酸化タングステン(WO)微粒子 27質量部
酸化銅(CuO)微粒子 3質量部
希釈溶剤(メチルアルコール) 50質量部
【0039】
[実施例2]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合5の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、白着色ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液2を得た。この樹脂混合物液2を充満させた浴槽に基布2を浸漬し、基布2に樹脂混合物液2を完全に含浸させた。次いで、ドクターブレードで基布2両面の余分な樹脂混合物液2を掻き落とし、180℃×5分間電気炉加熱して、基布2の両面に可撓性樹脂を被覆したシートを得た。次にPETフィルムの1面上に樹脂混合物液1を0.12mm厚でコートし、これを先に作成したシートの片面に重ね、電気炉で180℃×5分間加熱して樹脂混合物液2を固化させて、からPETフィルムを除去して平滑な可撓性樹脂層(施工外観側)を形成した。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。次いで可撓性樹脂層に配合3の接着・保護層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を両面に形成し、さらにその上に配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの羽虫死骸分解層が両面に形成された可視光透過率65%の光天井用膜材を得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合5>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径0.4μm) 5質量部

【0040】
[実施例3]
基布3を用いた以外は実施例2と同様にして羽虫死骸分解層付き光天井用膜材を作成した。このシートの可視光透過率は67%であった。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
実施例1の配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、下記配合6の白着色シリコーン樹脂に置き換え、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、白着色シリコーン樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液3を得た。この樹脂混合物液3を充満させた浴槽に基布4を浸漬し、基布4に樹脂混合物液3を完全に含浸させた。次いで、ドクターブレードで基布4両面の余分な樹脂混合物液3を掻き落とし、180℃×5分間電気炉加熱して、基布4の両面に可撓性樹脂を被覆したシートを得た。次にPETフィルムの1面上に樹脂混合物液3を0.12mm厚でコートし、これを先に作成したシートの片面に重ね、電気炉で180℃×5分間加熱して樹脂混合物液3を固化させて、からPETフィルムを除去して平滑な可撓性樹脂層(施工外観側)を形成した。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、シリコーン樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。次に、実施例1と同様にして可撓性樹脂層に配合3の接着・保護層を1.5g/mに両面形成し、さらにその上に配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)が1.5g/mで両面に形成された可視光透過率69%の光天井用膜材を得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合6>
商標:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部
商標:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部
着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径0.4μm) 5質量部
【0042】
[実施例5]
実施例4において配合4の白着色シリコーン樹脂を、下記配合7の白着色シリコーン樹脂に置き換え、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、白着色シリコーン樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液4を得た。それ以外は実施例4と同様にして、光触媒層を両面に設けた可視光透過率54%のシートを得た。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合7>
商標:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部
商標:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部
着色剤(炭酸カルシウム:平均粒子径1μm) 10質量部
【0043】
[実施例6]
下記配合8のシリコーン樹脂の攪拌混合物に、下記配合9の白着色塩化ビニル樹脂攪拌混合物を、シリコーン樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、白着色塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液5を得た。この樹脂混合物液5を充満させた浴槽に基布1を浸漬し、基布1に樹脂混合物液5を完全に含浸させた。次いで、ドクターブレードで基布1両面の余分な樹脂混合物液5を掻き落とし、180℃×10分間電気炉加熱して、基布1の両面に可撓性樹脂を被覆したシートを得た。次にPETフィルムの1面上に樹脂混合物液1を0.12mm厚でコートし、これを先に作成したシートの片面に重ね、電気炉で180℃×10分間加熱して樹脂混合物液5を固化させてからPETフィルムを除去して平滑な可撓性樹脂層(施工外観側)を形成した。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、塩化ビニル樹脂が白色の島成分を構成しており、シリコーン樹脂が無色の海成分を構成していた。次に、実施例1と同様にして可撓性樹脂層に配合3の接着・保護層を1.5g/mに両面形成し、さらにその上に配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)が1.5g/mで両面に形成された可視光透過率54%の光天井用膜材を得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合8>
商標:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部
商標:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:ダウコーニングアジア社製)
50質量部

<配合9>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
着色剤(炭酸カルシウム:平均粒子径1μm) 10質量部
得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例7]
下記配合10の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合11の白着色ポリエチレン樹脂の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色ポリエチレン樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物6を得た。この樹脂混合物6を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.12mmのフィルムに成型した。このフィルムを可撓性樹脂層として基布1の両面に積層して産業資材シートを得た。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、ポリエチレン樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。次に、実施例1と同様にして可撓性樹脂層に、配合3の接着・保護層を1.5g/mに両面形成し、さらにその上に配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)が1.5g/mで両面形成された可視光透過率63%の光天井用膜材を得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合10>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部

<配合11>
低密度ポリエチレン樹脂(密度0.945) 100質量部
着色剤(炭酸カルシウム:平均粒子径1μm) 10質量部
【0045】
[実施例8]
下記配合12の軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物に、下記配合13の白着色塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を軟質フッ素樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物7を得た。この樹脂混合物7を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.12mmのフィルムに成型した。このフィルムを可撓性樹脂層として基布1の両面に積層してシートを得た。この可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、塩化ビニル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質フッ素樹脂が無色の海成分を構成していた。次に、実施例1と同様にして可撓性樹脂層に配合3の接着・保護層を1.5g/mに両面形成し、さらにその上に配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)が1.5g/mで両面に形成された可視光透過率58%の光天井用膜材を得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合12>
軟質フッ素樹脂
(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン三元共重合体樹脂)
100質量部

<配合13>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径0.4μm) 5質量部
【0046】
実施例1〜8の光天井用膜材は、いずれも可視光透過率が高く、光天井用膜材として充分な強度を有するものであった。これら光天井用膜材を用いた光天井システムは、背後に配置された蛍光灯の存在がほとんど視認できず、また光天井用膜材に含む基布の延伸フィラメントの陰影もほとんど視認できないにもかかわらず極めて高い照度が得られるものであった。更に、ユスリ蚊などの飛翔羽虫類の分解性と光天井用膜材の拡散効果を有することにより、光天井システムにユスリ蚊が迷込んだ場合、ユスリ蚊の死骸は30日後にはその陰影痕として目立たない存在となっていた。これら実施例の羽虫死骸分解層の表面は、いずれもRz値10〜200μm、Sm値0.1〜3mmを満たしていることで、30日後にはユスリ蚊の分解が効果的に進み、僅かな残骸痕跡とすることで陰影痕の存在は皆無の状態であった。また実施例1、4〜8の光天井用膜材は、いずれも不燃性の規格に適合するものであった。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物の併用を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0048】
[比較例2]
実施例1において、配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物から白の着色剤を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
[比較例3]
実施例1において、配合4の羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)の形成を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
比較例1のシートは光拡散効果が不足して蛍光灯の存在が目立ち、ユスリ蚊の死骸の残骸が陰影痕として視認された。比較例2のシートは、光拡散効果は満足でき、背面の蛍光灯の存在が目立たないレベルであったが、ユスリ蚊の死骸の残骸が陰影痕として視認された。比較例3のシートは60日経過後でもユスリ蚊の死骸がほぼ原型を留めており、陰影痕として視認された。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、光天井用途に適して用いることができる可撓性繊維複合膜材で、可視光透過性が高く且つ、適度な光拡散性を有し、特に光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸による異物陰影を緩和したり、防止することが可能である光天井用膜材及び、その光天井システムを提供することができる。本発明の光天井用膜材と、その光天井システムは光天井システム内に侵入した走光性羽虫の死骸の分解が100%に満たなくても、可撓性繊維複合膜材の光学特性によって走光性羽虫の死骸の陰影痕を著しく緩和する効果を有しているため、ホテルのエントランス・ラウンジ・パーテイ会場、オフィスビル大会議室、冠婚葬祭式場、ステーションビル・空港内施設、地下街通路、大型商業施設、各種公共施設、エレベータかご内、鉄道車両内などの光天井照明シェ−ドに広く用いることができる。更に本発明おいて、火災対策上、不燃性を有する光天井用膜材と、その光天井システムを提供することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:編織布
2:可撓性樹脂層(海島構造)
3:羽虫死骸分解層(可視光応答型光触媒含有層)
4:光天井用膜材(光拡散透過性シート)
5:光源(蛍光灯)
6:吊り具
7:枠
8:ユスリ蚊
9:海成分
9−1:着色剤を含む海成分
9−2:着色剤を含まない海成分
10:島成分
10−1:着色剤を含む島成分
10−2:着色剤を含まない島成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートであって、前記光拡散透過性シートの少なくとも一層上に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられ、かつ、前記可撓性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むことを特徴とする羽虫陰影痕防止性に優れた光天井用膜材。
【請求項2】
前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上である請求項1に記載の光天井用膜材。
【請求項3】
前記着色剤が、少なくとも無機化合物からなる白色微粒子を含む、請求項1または2に記載の光天井用膜材。
【請求項4】
前記光拡散透過性シートにおいて、前記羽虫死骸分解層形成面が表面粗さRz値(JIS−B0601)が10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の光天井用膜材。
【請求項5】
前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の光天井用膜材。
0<|n1−na|≦0.2 式1
|n1−nb|≦0.2 式2
【請求項6】
前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えない不燃特性を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の光天井用膜材。
【請求項7】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を設けてなる複合基材を含む光拡散透過性シートを光天井膜材として用い、前記光拡散透過性シートの背面に、蛍光灯を配置してなる光天井構造物であって、少なくとも前記蛍光灯に対面する前記光拡散透過性シート面側に、可視光応答型の光触媒性物質を含む羽虫死骸分解層が設けられ、かつ、前記可撓性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が着色剤を含むことを特徴とする羽虫陰影痕防止性に優れた光天井システム。
【請求項8】
前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上である請求項7に記載の光天井システム。
【請求項9】
前記着色剤が、少なくとも無機化合物からなる白色微粒子を含む、請求項7または8に記載の光天井システム。
【請求項10】
前記光拡散透過性シートにおいて、前記羽虫死骸分解層形成面が表面粗さRz値(JIS−B0601)が10〜200μmの凹凸を有し、かつ凹凸の平均間隔Sm値(JIS−B0601)0.1〜3mmである、請求項7から9のいずれか1項に記載の光天井システム。
【請求項11】
前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、請求項7から10の何れか1項に記載の光天井システム。
0<|n1−na|≦0.2 式1
|n1−nb|≦0.2 式2
【請求項12】
前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えない不燃特性を有することを特徴とする、請求項7から11のいずれか1項に記載の光天井システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−12408(P2011−12408A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155437(P2009−155437)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】