説明

耐力面材及びその製造方法

【課題】比重が1.0以下と低く、壁倍率が2.5以上であって、強度、防火性、作業性、寸法安定性、耐凍性、耐水性や耐震性に優れた耐力面材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】セメント系水硬性材料と、繊維補強材と、軽量骨材とを、水に分散させたスラリーとなし、更に該スラリーに飽和カルボン酸を添加、混合した後、該スラリーを抄造、脱水、プレス、硬化養生して得た耐力面材とその製造方法。セメント系水硬性材料は総固形分対比で20質量%以上60質量%以下であり、繊維補強材は総固形分対比で6質量%以上20重量%以下であり、軽量骨材は総固形分対比で3質量%以上18質量%以下であり、飽和カルボン酸は総固形分対比で0.1質量%以上2.0質量%以下である。繊維補強材は、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とから成り、飽和カルボン酸は、ステアリン酸系又はコハク酸系である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度、防火性、作業性、寸法安定性、耐凍性や耐水性に優れた耐力面材と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅は、地震や風等により外力を受けるとともに、長期にわたって変形が生じるので、一般に住宅の構造壁等の建築材料には、地震や風等による外力や長期にわたる変形に抵抗するために、筋かいや木ずりが使用されてきた。しかし、最近では、筋かいや木ずりに代わり、耐力面材が使用されている。耐力面材は、柱と、土台や梁等の横架材とによって構成される軸組に対し、その軸組に形成された開口部を塞ぐように配置されている。この状態で、耐力面材の周縁が釘打ちされることにより、該耐力面材は軸組に対して固定されており、住宅の耐震力を向上させている。
【0003】
平成7年の阪神淡路大震災を経験して以来、耐震性と防火性の重要が再認識され、耐力面材の需要は高まっている。
更に近年では、都市部において木造3階建て住宅が急激に増加する傾向にあり、該住宅の耐震性を向上させる手段として、住宅を構成する壁に耐力面材が使用されている。
【0004】
耐力面材を用いた壁の強度は、構成する耐力面材の種類、厚さ、留め付け方法等によって決まり、壁倍率という指標で表されている。一般的に使用される耐力面材については壁倍率が定められており、壁倍率が大きいほど強度は高い。
【0005】
耐力面材には、構造用合板、パーティクルボード、ハードボード、フレキシブル板、石綿パーライト板、石綿けい酸カルシウム板、硬質木片セメント板、パルプセメント板、石膏ボードなど数多くの種類があるが、木材を多層に接着させた構造用合板が広く用いられている。構造用合板は、強度的な面では優れており、壁倍率は1.5〜2.5と認定されている。しかし、可燃性であるので防火性に劣り、耐久性が良くない。透湿性や通気性も乏しく、寒冷期において、耐力壁内側、つまり断熱層で結露が多く発生するので、それが長期にわたることにより材料の腐食に繋がっている。また、原料が木材なので、森林伐採による環境破壊にもなり、更に、製造に用いられる接着剤に目の痛みや頭痛を誘発する揮発性物質が含まれており、住環境上の問題も発生している。
パーティクルボード、ハードボード等も可燃性であり、防火性、耐久性、透湿性や通気性に劣る。
フレキシブル板、石綿パーライト板、石綿けい酸カルシウム板は、石綿を含んでおり、その安全性に大きな問題がある。
石膏ボードは、防火性、経済性に優れているが、強度が弱く、材質が脆いので、釘打ち性が悪く、釘の保持力も低い。また、壁倍率は1.0〜1.5と小さく、耐湿性や耐水性に劣る。
【0006】
そのため、防火性、防腐食性、経済性に優れ、強度、耐凍性、耐湿性や耐水性がある硬質木片セメント板、パルプセメント板等のセメント系板材の需要が伸びている。一般的なセメント系板材の壁倍率は、1.5〜2.5と定められている。
しかし、セメント系板材は、比重が1.0以上あるので非常に重く、二人の作業員が必要となり、作業性が悪い。また、硬いため、釘打ち、ビス留め等の際に不測の亀裂が入り、それが原因で板材が剥落する懸念がある。予め先に孔を設けて施工する必要があるが、多数の釘を打たなければならない耐力面材では、非常に手間がかかり、更に作業性が悪化する。
また、セメント系板材は、原料にセメントや繊維補強材を含むので、カルシウム水和物や補強繊維材により寸法変化が発生する。
更に、セメント系板材は、内部に多数の細孔を有するので、細孔内に水が存在すると、空気中の二酸化炭素が水に溶解して炭酸を生成し、該炭酸が窯業系建材内のカルシウム水和生成物と反応して、炭酸化収縮と呼ばれる寸法収縮を起こす。
更に、壁倍率、耐凍性や耐水性等の性能の向上も望まれている。
【0007】
この改善策として、潜在水硬性物質、混練調整材、硬化刺激剤及び水を混練して得られた混練物であって、石綿を全く含まない混練物を押出成形して出来る耐力面材がある(特許文献1)。
【0008】
また、セメント、補強繊維、及びケイ酸カルシウム水和物を含有する配合物を湿式成形して得られ、かさ密度0.5〜1.2、曲げ強度10〜30N/mm2
及び壁倍率2.5以上である無機質耐力面材であって、該ケイ酸カルシウム水和物として、塩化バリウム及び/又は塩化アルミニウムの存在下、石灰質原料及びケイ酸質原料を主原料として水熱反応によって製造されるケイ酸カルシウム水和物スラリーを用いることを特徴とする無機質耐力面材及び該無機質耐力面材の製造方法がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−336833号公報
【特許文献2】特開2003−095727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された耐力面材は、依然として比重が高いので、作業性が十分改善されたとはいえない。また、耐力面材の寸法変化、耐凍性や耐水性については改善されていない。
【0010】
また、特許文献2に開示された耐力面材は、寸法変化、耐凍性や耐水性が改善されていない。
【0011】
本発明は、上記耐力面材の有する問題点を解決し、比重が1.0以下と低く、壁倍率が2.5以上であって、強度、防火性、作業性、寸法安定性、耐凍性、耐水性や耐震性に優れた耐力面材と、その製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本請求項1に記載の発明は、セメント系水硬性材料と、繊維補強材と、軽量骨材と、飽和カルボン酸とから成ることを特徴とする耐力面材である。
セメント系水硬性材料としては、ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント、低発熱セメント、アルミナセメント等のセメントが使用できる。
繊維補強材としては、故紙、木質パルプ、木質繊維束、木質繊維、木片、木毛、木粉等の木質繊維や、ガラス繊維、炭素繊維等の無機質繊維や、ポリアミド繊維、ワラストナイト、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維等の有機繊維が使用できるが、木質パルプを使用することが好ましく、特に、針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)や針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等を使用することが好ましく、NUKP、NBKPの針葉樹のパルプを用いることがより好ましい。
軽量骨材としては、パーライト、シリカフューム等が使用できる。
飽和カルボン酸としては、ラウリル酸系、カプロン酸系、プロピオン酸系、ステアリン酸系、コハク酸系等が使用できる。
【0013】
本請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耐力面材であって、前記セメント系水硬性材料が、総固形分対比で20質量%以上60質量%以下であり、前記繊維補強材が総固形分対比で6質量%以上20重量%以下であり、前記軽量骨材が総固形分対比で3質量%以上18質量%以下であり、前記飽和カルボン酸が総固形分対比で0.1質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする。
セメント系水硬性材料を総固形分対比で20質量%以上60質量%以下含むことで得られる耐力面材は、強度に優れる。セメント系水硬性材料が総固形分対比で20質量%より少ないと強度不足になり、60質量%を超えると脆性破壊性状を呈し、壁倍率の向上が望めず、かつ、釘打ち、ビス留め等の際に不測の亀裂が入る問題が解決されない。
繊維補強材を総固形分対比で6質量%以上20重量%以下含むことで得られる耐力面材は、強度、たわみに優れる。繊維補強材が総固形分対比で6質量%未満では、得られる耐力面材の比重が高くなり、かつ、たわみが無いので施工性に劣り、繊維補強材が総固形分対比で20重量%を超えるとセメント系水硬性材料の割合が少ない、繊維補強材から溶出する硬化阻害成分が多くなる等の原因により、得られる耐力面材の強度が低下する。また、有機分の割合が増えることになり、得られる耐力面材の防火性も低下する。
軽量骨材を総固形分対比で3質量%以上18質量%以下含むことで得られる耐力面材は、比重が低くなり、作業性に優れる。軽量骨材が総固形分対比で3質量%未満では、得られる耐力面材の比重が高くなり、かつ、釘打ち性に劣り、軽量骨材が総固形分対比で18質量%を超えると、セメント系水硬性材料や繊維補強材の割合が少なくなり、得られる耐力面材の強度が低下する。
更に、飽和カルボン酸を全固形分に対し0.1質量%以上2.0質量%以下含むことで、耐力面材は、耐吸水性、寸法安定性や耐凍害性にも優れる。飽和カルボン酸が全固形分に対し0.1質量%未満では、耐吸水性、寸法安定性や耐凍害性が十分ではなく、2.0質量%を超えるとセメント系水硬性材料の硬化を阻害し、得られる耐力面材の強度が低下する。費用と効果を考慮すると、全固形分に対し飽和カルボン酸を0.3質量%以上1.0質量%以下とすることが好ましい。
【0014】
本請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の耐力面材であって、前記繊維補強材が、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とから成ることを特徴とする。
叩解について特に制限はないが、ディスクリファイナー等の叩解機で叩解してフリーネス650ml以下にすることにより、表面がフィブリル化して、物を吸着し、捕捉しやすい形状になる。
なお、フリーネスとは、カナダ標準測定法による値(カナディアンスタンダードフリーネス)である。
未叩解の繊維とは、ディスクリファイナー等の叩解機で叩解していない繊維である。
叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と未叩解の繊維とを組み合わせて使用することで、叩解された繊維がセメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料を捕捉して、更に、未叩解の繊維が繊維間のネットワークを構成するので、脱水工程において、セメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料が脱水と共に流出することが抑えられて、かつ、脱水シートの目詰まりも抑えられる。そのため、スラリーの脱水が改善されて、生産効率が良くなる。また、得られる窯業系建材は、強度、たわみの両面に優れるので、壁倍率が2.5以上になる。更に、未叩解の繊維はエネルギーコストが安く、生産性が良いので、コストダウンと生産効率の改善にもなる。
費用と効果を考慮すると、総固形分対比で、叩解した繊維を1〜6質量%、叩解していない繊維を5〜14質量%とすることが好ましい。
【0015】
本請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の耐力面材であって、前記飽和カルボン酸が、ステアリン酸系又はコハク酸系であることを特徴とする。
飽和カルボン酸は、ラウリル酸系、カプロン酸系、プロピオン酸系等多数有るが、ステアリン酸系又はコハク酸系は効果が高く、使用に適している。
【0016】
本請求項5に記載の発明は、セメント系水硬性材料と、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維と、軽量骨材とを、水に分散させてスラリーとなし、更に該スラリーにステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合した後、該スラリーを抄造、脱水、プレス、硬化養生してなることを特徴とする耐力面材の製造方法である。
セメント系水硬性材料と、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維と、軽量骨材とを、水に分散させたスラリーに、ステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合することで、製造過程における撥水剤の浮き上がりや泡立ち等のトラブルが発生せず、飽和カルボン酸が均一に分散して、カルシウム水和物と繊維補強材とをコーティングし、かつ、繊維補強材により飽和カルボン酸でコーティングされたカルシウム水和物と飽和カルボン酸とが補足されるので、脱水工程において、脱水と共に飽和カルボン酸が流出することが抑制されて、耐力面材内に飽和カルボン酸がカルシウム水和物と繊維補強材とをコーティングした状態で存在することが可能となる。また、得られる耐力面材は、強度やたわみ等が優れるという効果もある。
飽和カルボン酸は、ラウリル酸系、カプロン酸系、プロピオン酸系等多数有るが、ステアリン酸系又はコハク酸系が使用に適しており、少量で効果が高い。
【0017】
本請求項6に記載の発明は、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とを水に分散させてスラリーとなし、該スラリーにステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合した後、更に該スラリーにセメント系水硬性材料と軽量骨材とを混合して攪拌し、その後、抄造、脱水、プレス、硬化養生してなることを特徴とする耐力面材の製造方法である。
叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とを水に分散させたスラリーに、ステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合することで、製造過程における撥水剤の浮き上がりや泡立ち等のトラブルが発生せず、飽和カルボン酸が均一に分散して、繊維補強材に補足される。そのため、脱水工程において、脱水と共に飽和カルボン酸が流出することが抑制されて、耐力面材内に飽和カルボン酸がカルシウム水和物と繊維補強材とをコーティングした状態で存在することが可能となる。また、得られる耐力面材は、強度やたわみ等が優れるという効果もある。
飽和カルボン酸は、ラウリル酸系、カプロン酸系、プロピオン酸系等多数有るが、ステアリン酸系又はコハク酸系が使用に適しており、少量で効果が高い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、得られた耐力面材は、防火性を維持しながらも比重が1.0以下と低く、強度、たわみ、釘打ち性に優れるので、作業性が改善される。また、壁倍率は2.5以上であり、耐震性は高い。
【0019】
更に、本発明では、得られた耐力面材のカルシウム水和物や繊維補強材は、飽和カルボン酸によりコーティングされるので、吸水、寸法変化や炭酸化収縮が抑えられて、耐力面材の耐水性、寸法安定性や耐凍性は長期に渡って確保される。
【0020】
更に、本発明では、飽和カルボン酸が叩解した繊維補強材に捕捉されるため、撥水剤の浮き上がりや泡立ちなどのトラブルを発生せず、かつ、少量の飽和カルボン酸でもって効果を発揮するという効果も奏する。
【0021】
本発明は抄造法のほか、押出成形法やスラリーを型に込めて成型する鋳込法等にも幅広く応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る耐力面材と、その製造方法について説明する。
【0023】
まず、セメント系水硬性材料であるポルトランドセメントを20質量%以上60質量%以下、叩解した繊維補強材であるフリーネス650ml以下の木質パルプを4質量%、叩解していない繊維補強材である木質パルプと故紙を14質量%、軽量骨材であるパーライトを10質量%、更に必要に応じて、ケイ砂、ケイ石粉、シラスバルーン、バーミキュライト、高炉スラグ、膨張頁岩、膨張粘土、焼成ケイ藻土、石膏粉、マイカ、フライアッシュ、石炭ガラ、汚泥焼却灰等を配合した原料を水に分散させる。
【0024】
フリーネス650ml以下に叩解した木質パルプを用いる理由としては、叩解されてフリーネスが650ml以下となった木質パルプは、スラリー中に均一に分散されやすく、かつ、物を吸着し、捕捉しやすい形状であることがあげられる。パルプなどの繊維補強材は、フィブリル(小繊維)が多数集まった束であり、通常、フィブリルは水素結合や分子間力により集束されているが、湿潤状態で叩解されるとフィブリル間の空気溝に沿って裂けるので、繊維補強材はより細かくなり、スラリー中に均一に分散される。また、叩解による摩擦作用で、内部にあるフィブリルが表面に現れるので、繊維補強材の表面は毛羽立ち、ささくれる。特に湿潤状態ではフィブリルがヒゲのように現れるので、比表面積が増え、かつ、物を吸着し、捕捉しやすい形状になり、セメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料を捕捉する。そのため、脱水工程において、セメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料は、脱水と共に流出することが抑えられる。フリーネス500ml以下に叩解した木質パルプであれば、更に物を吸着し、補足しやすい形状になるので、より好ましい。なお、木質パルプをフリーネス650ml以下に叩解することで、繊維の強度は高くなり、得られる窯業系建材の強度が向上するという効果もある。
また、叩解していない木質パルプと故紙を用いる理由としては、繊維間でネットワークを構成しやすいので、得られる窯業系建材のたわみが向上し、施工の際に作業性が改善されることがあげられる。更に、叩解していない木質パルプと故紙は、叩解した木質パルプよりも生産にかかるエネルギーコストが安く、生産性が良い。
叩解した木質パルプと叩解していない木質パルプとを組み合わせて使用することで、叩解していない木質パルプが構成した繊維間のネットワークに、セメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料を捕捉した叩解した木質パルプが補足されるので、脱水工程において、セメント系水硬性材料や飽和カルボン酸等の原料が脱水と共に流出することがより抑えられて、かつ、脱水シートの目詰まりも抑えられるので、スラリーの脱水が改善されて、生産効率が良くなる。また、得られる窯業系建材は、強度、たわみの両面に優れるので、壁倍率が2.5以上になる。更に、叩解していない木質パルプはエネルギーコストが安く、生産性が良いので、コストダウンと生産効率の改善にもなる。
【0025】
次に、上記スラリーに対し、飽和カルボン酸であるステアリン酸系又はコハク酸系のエマルジョン溶液を、固形分が上記スラリーの総固形分に対し1質量%以下となるよう添加し、混合した後、該スラリーを脱水フェルト上に流下せしめて脱水しながら抄造シートを賦形し、該抄造シートをメイキングロールで6〜15層積層して積層マットとし、該積層マットを1.5MPa〜10MPaで高圧プレスした後、60℃〜90℃で5〜10時間の一次養生し、そして所望なれば該一次養生に続いて蒸気養生あるいはオートクレーブ養生を行う。蒸気養生の条件は水蒸気を充満した雰囲気内で50℃〜80℃の温度内で15〜24時間、オートクレーブ養生の条件は120℃〜200℃の温度で7〜15時間である。養生後は乾燥し、そして所望なれば、表面、裏面と木口に塗装を施し、製品とする。
【0026】
ステアリン酸系又はコハク酸系のエマルジョン溶液を用いる理由としては、撥水効果があり、水への分散が良く、カルシウム水和物と叩解した繊維補強材をコーティングすることがあげられる。ステアリン酸系又はコハク酸系のエマルジョン溶液がスラリーに均一に分散し、セメント系水硬性材料のカルシウム水和物と叩解した繊維補強材をコーティングして、耐力面材のカルシウム水和物の吸水と炭酸化、及び、叩解した繊維補強材の吸水を抑えるので、耐力面材の耐吸水性、寸法安定性や耐凍害性が改善される。更に、コーティングされたカルシウム水和物は、叩解した繊維補強材に補足されるので、脱水工程において、脱水と共に流出することが無く、耐力面材の耐吸水性、寸法安定性や耐凍害性が長期に渡り優れる。
【実施例1】
【0027】
以下にあげる各製造条件にて、実施例1〜8、ならびに比較例1〜8に示す各耐力面材を製造した。
実施例1は、ポルトランドセメントを30質量%、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%、未叩解の故紙を8質量%、パーライトを10質量%、高炉スラグ、フライアッシュを42質量%組成した原料を水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加し、混合させた後、該スラリーを脱水フェルト上に流下せしめて脱水しながら抄造シートを賦形し、該抄造シートをメイキングロールで6層積層して積層マットを得た。
上記積層マットにプレス圧2.5MPa、プレス時間7秒の高圧プレスを施し、その後、70℃で蒸気養生し、乾燥させて耐力面材を得た。
実施例2は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
実施例3は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
実施例4は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
実施例5は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
実施例6は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
実施例7は、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプと、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプと、故紙とを水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を添加し、混合させた後、ポルトランドセメント、パーライト、高炉スラグ、フライアッシュを混合して均一に分散するよう攪拌し、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。なお、各原料の組成は実施例3と全く同じであり、ステアリン酸のエマルジョン溶液の添加方法が異なるだけである。
実施例8は、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプと、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプと、故紙とを水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を添加し、混合させた後、ポルトランドセメント、パーライト、高炉スラグ、フライアッシュを混合して均一に分散するよう攪拌し、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。なお、各原料の組成は実施例6と全く同じであり、ステアリン酸のエマルジョン溶液の添加方法が異なるだけである。
比較例1は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、飽和カルボン酸のエマルジョン溶液を添加せず、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
比較例2は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し3.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
比較例3は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し3.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
比較例4は、実施例1と同じ原料組成を水に分散させたスラリーに、パラフィン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加し、混合させた後、以後は実施例1と同じ抄造方法、脱水方法、プレス方法、硬化養生方法により耐力面材を得た。
比較例5は、実施例1の条件において、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%から0質量%に、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%から10質量%に変更し、それ以外は実施例1と同条件により耐力面材を得た。
比較例6は、実施例4の条件において、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%から0質量%に、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%から10質量%に変更し、それ以外は実施例4と同条件により耐力面材を得た。
比較例7は、実施例1の条件において、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%から7質量%に変更し、それ以外は実施例1と同条件により耐力面材を得た。
比較例8は、実施例4の条件において、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%から7質量%に変更し、それ以外は実施例4と同条件により耐力面材を得た。
【0028】
得られた実施例1〜8、ならびに比較例1〜8の各耐力面材について、厚み、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、表面吸水量、吸水伸び率、放湿収縮率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率、釘打ち性、防火性を確認した。その結果を表1に示す。
曲げ強度、曲げヤング率、曲げ最大たわみ量は、JIS A 1408に準じ試験体500×400mmで測定した。
表面吸水量は、枠置き法による測定で、24時間測定後の耐力面材の重量変化を数1により算出した値である。
吸水伸び率は、60℃で3日間調湿後、水中浸漬8日間の条件で吸水させたときの吸水前後での伸び率である。
放湿収縮率は、20℃、60%RHで10日間調湿後、80℃乾燥10日間の条件で放湿させた時の放湿前後の収縮率である。
炭酸化収縮率は、5%COで7日間調整後、120℃乾燥10日間の条件で乾燥させた時の収縮率である。
耐凍結融解は、10cm×25cmの大きさの試験片の長手方向の一端部を、水を入れた容器内に浸漬した状態で12時間凍結、その後、12時間室温で融解を1サイクルとしたときの、30サイクル後の厚み膨潤率である。
壁倍率は、JIS A 1414の面内剪断試験に準じて測定を行い、求めた。
釘打ち性は壁倍率測定の際に、釘打ちによる試験体の状況を目視で観察し、亀裂や破損等が無い場合を○、亀裂や破損等が発生した場合は×と評価した。
防火性はISO 5660に準じコーンカロリーメーターで測定し、加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、かつ、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、裏面まで貫通する亀裂及び穴が無い場合を○、それ以外の場合を×とした。
【0029】
【表1】

【数1】

【0030】
実施例1の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例2の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例3の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例4の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例5の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例6の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率が若干低いが、放湿収縮率、釘打ち性、防火性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例7の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプと、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプと、未叩解の故紙とを水に分散させたスラリーに、ステアリン酸のエマルジョン溶液を添加し、混合させた後、ポルトランドセメント、パーライト、高炉スラグ、フライアッシュを混合して均一に分散するよう攪拌しているが、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
また、脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
実施例8の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプと、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプと、未叩解の故紙とを水に分散させたスラリーに、コハク酸のエマルジョン溶液を添加し、混合させた後、ポルトランドセメント、パーライト、高炉スラグ、フライアッシュを混合して均一に分散するよう攪拌しているが、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し2.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の諸物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性に優れている。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べたが、殆ど確認されなかった。
比較例1の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプと、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプと、未叩解の故紙とを使用したが、飽和カルボン酸のエマルジョン溶液を添加していないので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性等の物性に問題が無く、壁倍率に優れるが、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解の物性が悪い。
比較例2の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し3.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、釘打ち性、防火性の物性に問題が無く、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、壁倍率の物性に優れるが、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、耐凍結融解の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べところ、ステアリン酸の存在が確認された。
比較例3の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し3.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、壁倍率、釘打ち性、防火性等の物性に問題が無く、表面吸水量、炭酸化収縮率の物性に優れるが、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、吸水伸び率、放湿収縮率、耐凍結融解の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べところ、コハク酸の存在が確認された。
比較例4の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを4質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、パラフィン溶液を該スラリーの総固形分に対し1.0質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、釘打ち性、防火性に問題が無く、表面吸水量に優れるが、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、吸水伸び率、放湿収縮率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるパラフィンを調べところ、パラフィンの存在が確認された。
比較例5の耐力面材は、製造条件として、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを10質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げヤング率、最大たわみ量、釘打ち性、防火性に問題が無く、壁倍率に優れるが、曲げ強度が若干低く、表面吸水量、吸水伸び率、放湿収縮率、炭酸化収縮率、耐凍結融解の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べところ、ステアリン酸の存在が確認された。
比較例6の耐力面材は、製造条件として、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを10質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、放湿収縮率、釘打ち性、防火性に問題が無く、壁倍率に優れるが、表面吸水量、吸水伸び率、炭酸化収縮率、耐凍結融解の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べところ、コハク酸の存在が確認された。
比較例7の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを7質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、ステアリン酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、表面吸水量、吸水伸び率、放湿収縮率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率、防火性の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるステアリン酸を調べところ、ステアリン酸の存在は殆ど確認されなかった。
比較例8の耐力面材は、製造条件として、叩解機で叩解したフリーネス500mlの木質パルプを7質量%と、未叩解でフリーネス780mlの木質パルプを6質量%と、未叩解の故紙を8質量%とを使用しており、更に、コハク酸のエマルジョン溶液を該スラリーの総固形分に対し0.5質量%となるよう添加しているので、表1に示すように、比重、含水率、曲げ強度、曲げヤング率、最大たわみ量、表面吸水量、吸水伸び率、放湿収縮率、炭酸化収縮率、耐凍結融解、壁倍率、防火性の物性が悪い。
また、脱水時に、脱水に含まれるコハク酸を調べところ、コハク酸の存在は殆ど確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る製造方法によって得られた耐力面材は、防火性を維持しながらも比重が1.0以下と低く、強度、たわみ、釘打ち性に優れるので、作業性が良い。また、壁倍率は2.5以上であり、耐震性も高い。
更に、本発明に係る製造方法によって得られた耐力面材のカルシウム水和物や繊維補強材が、飽和カルボン酸でコーティングされることにより、吸水、寸法変化や炭酸化収縮が抑えられるので、耐力面材の耐水性、寸法安定性や耐凍性は長期に渡って確保される。
更に、本発明に係る製造方法では、生産上のトラブルが無く、かつ、少量の飽和カルボン酸で効果を発揮するという効果も奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系水硬性材料と、繊維補強材と、軽量骨材と、飽和カルボン酸とから成ることを特徴とする耐力面材。
【請求項2】
前記セメント系水硬性材料が、総固形分対比で20質量%以上60質量%以下であり、前記繊維補強材が、総固形分対比で6質量%以上20重量%以下であり、前記軽量骨材が、総固形分対比で3質量%以上18質量%以下であり、前記飽和カルボン酸が、総固形分対比で0.1質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐力面材。
【請求項3】
前記繊維補強材が、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とから成ることを特徴とする請求項2に記載の耐力面材。
【請求項4】
前記飽和カルボン酸が、ステアリン酸系又はコハク酸系であることを特徴とする請求項3に記載の耐力面材。
【請求項5】
セメント系水硬性材料と、叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維と、軽量骨材とを、水に分散させてスラリーとなし、更に該スラリーにステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合した後、該スラリーを抄造、脱水、プレス、硬化養生してなることを特徴とする耐力面材の製造方法。
【請求項6】
叩解されてフリーネス650ml以下の繊維と、未叩解の繊維とを水に分散させてスラリーとなし、該スラリーにステアリン酸系又はコハク酸系の飽和カルボン酸を添加、混合した後、更に該スラリーにセメント系水硬性材料と軽量骨材とを混合して攪拌し、その後、抄造、脱水、プレス、硬化養生してなることを特徴とする耐力面材の製造方法。

【公開番号】特開2008−169083(P2008−169083A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4212(P2007−4212)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】