説明

耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法

【課題】水中または高湿環境下においても使用可能な高外観な耐湿性軽量成形体の製造方法を提供する。
【手段】本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法は、二段圧縮スクリュを有する射出成形機を用いて、熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程と、該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を該射出成形機のシリンダ途中から供給する工程と、射出発泡成形する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に取り付けた金型キャビティ内に、少なくとも2種の発泡剤を用いて熱可塑性樹脂組成物を射出することにより、耐湿性軽量樹脂成形体を製造する方法に関する。さらに詳しくは、水中または多湿環境下においても外観が悪化しない外装用の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、複雑な形状の高精度な製品を一工程で成形でき、しかも短いサイクルで連続的に生産できる非常に生産性の高い成形方法であり、自動車、電子・電気機器、精密機械、事務機、建材、日用品などの広範な分野で利用されている、優れた成形方法のひとつである。
【0003】
上記射出成形において、熱可塑性樹脂に発泡剤を混錬・溶解した発泡性の熱可塑性樹脂組成物を、(1)金型キャビティ内にキャビティ容積よりも少なく充填し発泡力で成形体を成形する方法、(2)金型キャビティ内に充填後、内部の熱可塑性樹脂組成物を排出し発泡させる方法、(3)金型キャビティ内に充填後、冷却により体積収縮分発泡させるヒケ防止の方法、(4)金型キャビティ内に充填後、金型キャビティを移動させることにより発泡させる方法など、種々の射出発泡成形方法が知られている。これらの射出発泡成形は射出発泡成形体のヒケ防止や保温断熱、軽量化の有効な手段であり、肘掛やグリップ類、食器類、事務機器、家電部品などに使用されている。
【0004】
ところで近年、射出発泡成形体は、自動車業界における二酸化炭素排出抑制ニーズや燃費向上ニーズを背景とした軽量化要請によって自動車内装部品、たとえばドアトリムやバックサイドトリムにも使われ始めている(たとえば、特許文献1〜6参照)。
【0005】
しかしながら、自動車関連分野におけるプロピレン系樹脂の射出発泡成形体は、内装部品として使用されることがほとんどであり、バンパーおよびモールなどの外装部品にはほとんど使用されていない。また、過去の公知文献においても、具体的に実施例に開示された外装用のプロピレン系樹脂の射出発泡成形体は見当たらない。
【0006】
その理由は、自動車内装部品を製造する方法と同じ射出発泡成形方法で自動車外装部品を製造した場合には、塗装をしない成形体はもちろんのこと、塗装を実施した成形体においても表面に曇りなどのスワールマークが発生する場合があるからである。
【0007】
また、発泡剤として有機系化学発泡剤を用いた場合は、元来スワールマークが大量に発生する性質を持つ。さらには、十分な発泡を得るために多量の有機系化学発泡剤を添加すると金型のキャビティ面が腐蝕したり、発泡剤残渣がキャビティ面に付着する。結果として腐食または残渣が付着したキャビティ表面が成形体に転写されることにより外観が悪化することがある。加えて、有機系化学発泡剤を、成形体が十分に発泡する量を添加すると、成形を行う時に発生するガスの異臭により成形環境の悪化も懸念されている。
【0008】
一方、発泡剤として無機系化学発泡剤を用いた場合は、金型への汚染が少なく、スワールマーク自体も有機系化学発泡剤に比べ少なく外観的には有利である。しかしながら、十分な発泡を得るためには、やはり無機系化学発泡剤を多量に用いなければならない。このため、スワールマークの発生を無視できないばかりか、水中または高湿環境下ではブリスタ(膨れ)が発生するという問題がある。すなわち、塗装をしない成形体はもちろんのこと、塗装を実施した成形体においても塗装面を浮き上がらせるほどのブリスタが発生し、
成形体の表面外観を著しく損なうという問題がある。この問題を回避するため無機系化学発泡剤の量を減じた場合は、発泡性が悪くなってしまい、所定の発泡倍率だけでなく希望する成形体の形状に成形すること自体が困難であった。
【0009】
このような化学発泡剤に対して、化学発泡剤を使用せず物理発泡剤のみを使用して発泡成形を行う方法がある。しかしながら、この方法では、発泡セルが肥大化する傾向にあり、その結果、成形体表面に凹凸が生じ成形体の外観が悪化するという問題があった。また、発泡倍率も十分に上げることができなかった。この問題に対しては、超臨界状態の物理発泡剤を熱可塑性樹脂組成物に含有させ発泡成形することで発泡セルを小さくする方法もあるが、この方法を用いると、成形体表面に多量のスワールマークやディンプル、凹みなどが発生し、一般的に外観が悪化する傾向にあった。このため、良好な外観が求められる成形体の成形方法としては使用することができなかった。
【0010】
また、特許文献4および特許文献5には、射出発泡成形方法において、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用して外観良好な発泡性製品を得ることが提案されており、化学発泡剤として、クエン酸などのポリカルボン酸からなる有機系発泡剤と炭酸水素ナトリウムなどの無機系発泡剤とを併用することが好ましいと記載されている。
【0011】
しかしながら、化学発泡剤として、有機系発泡剤と無機系発泡剤とを併用した場合は、得られる発泡体を高湿度下に置いておくと成形体の表面にブリスタが生じることが判った。このように、従来、水中または高湿環境下で高外観を必要とする発泡成形体を得ることは非常に困難であった。
【0012】
また、軽量化にともない、成形品の厚みは薄肉化傾向が強くなり、成形時の樹脂温度としては220℃以上が要求される。このような場合、有機系発泡剤が分解してしまい、有機系発泡剤のみでは、成形時に発泡不良などが生じることがあった。
【特許文献1】特開平04−073142号公報
【特許文献2】特開平11−335414号公報
【特許文献3】特開2000−226478号公報
【特許文献4】特開2002−079545号公報
【特許文献5】特開2004−189911号公報
【特許文献6】特開2004−195897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、水中または高湿環境下においても使用可能な高外観な耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、熱可塑性樹脂組成物に、水中または高湿環境化において水分とほとんど反応しない有機系発泡剤の必要最低量を無機系発泡核剤とともに含有させ、かつ物理発泡剤を併用し,射出成形することにより上記課題を解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の耐湿性軽量樹脂製形態の製造方法は、二段圧縮スクリュを有する射出成形機を用いて、熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程と、該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を該射出成形機のシリンダ途中から供給する工程と、射出発泡成形する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
前記無機系発泡核剤はシリカであることが好ましい。前記物理発泡剤は、気体状態の物理発泡剤であることが好ましい。前記有機系発泡剤は、アゾジカルボンアミドであることが好ましい。
【0017】
前記物理発泡剤は、前記熱可塑性樹脂組成物に対して0.1〜2.0重量%の量で供給することが好ましい。
前記耐湿性軽量樹脂成形体は、密度が0.4〜0.8g/cm3の範囲にある耐湿性軽
量ポリプロピレン樹脂成形体であることが好ましい。
【0018】
前記耐湿軽量樹脂製形体が自動車外装材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法により得られる耐湿性軽量樹脂成形体は、スキン層が平滑であり、かつ水中または多湿環境下においても外観が悪化しない発泡成形体であり、外装部品、たとえば屋外で使用される機会のある自動車外装材への展開が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法について具体的に説明する。
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法は、二段圧縮スクリュを有する射出成形機を用いた耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程と、該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を射出成形機のシリンダ途中から供給する工程と、射出発泡成形する工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
なお本発明においては、耐湿性軽量樹脂成形体とは、成形体比重を成形体原料(すなわち熱可塑性樹脂組成物)本来の比重に比べ約10〜50%軽くした成形体であり、加えて高湿環境下や水中に長時間おいた場合に表面にブリスタを生じない成形体として定義される。
【0022】
以下、本発明で原料として用いられる熱可塑性樹脂組成物について説明した後、本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法について詳細に説明する。
【0023】
<熱可塑性樹脂>
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法に用いる熱可塑性樹脂は、通常の射出成形が可能な熱可塑性樹脂であれば特に制限されず、種々公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、たとえば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン・2,6−ナフタレート、ポリカーボネートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド樹脂;ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテル類;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン、ABS、AESなどのスチレン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、アイオノマー共重合体などのエチレン・不飽和カルボン酸(エステル)共重合体などが挙げられる。
【0024】
これら熱可塑性樹脂の中ではポリオレフィン樹脂が好ましく、コストパフォーマンス、機械的強度、成形性の観点からポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂がさらに好ましく、ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
【0025】
ポリエチレン樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)のいずれも好ましく使用できる。
【0026】
また、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量のエチレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンの単独重合体またはランダム共重合体と、非晶性または低結晶性のエチレン・プロピレン共重合体(製造条件によっては少量のポリエチレンを含有)とからなるブロック共重合体のいずれも好ましく使用できる。特に、ポリプロピレン樹脂を原料として用いて発泡成形することにより、外観がより良好で、かつ良好な発泡セルを有し、しかも軽量で剛性により優れたポリプロピレン樹脂成形体からなる耐湿性軽量樹脂成形体を容易に効率よく製造することができる。
【0027】
<化学発泡剤>
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法に用いる化学発泡剤は、有機系発泡剤のみからなる。
【0028】
本発明で使用される有機系発泡剤は、特に限定されないが、以下のものを挙げることができる。
(a)N−ニトロソ化合物:N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、
(b)アゾ化合物:アゾジカルボンアミド(H2NOCN=NCONH2)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート、
(c)スルフォニルヒドラジド化合物:ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド、
(d)アジド化合物:カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド、
(e)ポリカルボン酸:シュウ酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサン1,2ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ酸。
【0029】
これら有機系発泡剤の中では、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)やクエン酸を使用することが好ましい。また、これら有機系発泡剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
すなわち、本発明においては、化学発泡剤として、無機系発泡剤を用いることなく、有機系発泡剤のみで用いる。その結果得られる耐湿性軽量樹脂成形体は、水中または高湿環境下でブリスタが発生するという問題はほとんど生じない。その理由として本発明者らは、化学発泡剤として水分と反応し易い無機系発泡剤を用いないため、成形体表面にスワールマークが発生することが抑制されているためであると考えている。
【0031】
上記有機系発泡剤は、得られる耐湿性軽量樹脂成形体が内包するセル径を均一化する機能を果たす。すなわち、物理発泡剤のみを用いる発泡成形方法においては、熱可塑性樹脂に溶解した物理発泡剤はミクロ的に不均一な部分が発生するセル生成核となり易いが、物理発泡剤を用いる前に予め熱可塑性樹脂に有機系発泡剤を使用すると、発泡成形体が内包するセル径を均一化することができる。すなわち有機系発泡剤は発泡核剤として作用している。
【0032】
上記有機系発泡剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.5重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部用いられる。有機系発泡剤の量が前記範囲にあると、得られる耐湿性軽量樹脂成形体の発泡セルの気泡形成を著しく向上させることができ、異臭の発生や金型汚染等の問題が生じることがない。
【0033】
<無機系発泡核剤>
本発明で使用される無機系発泡核剤は、発泡成形体が内包するセル径を均一化することができる。
【0034】
無機系発泡核剤としてはシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、クレー、ワラスナイト、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、マグネシア、カーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。これら無機系発泡核剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
無機系発泡核剤としてはシリカが好ましく用いられる。
【0035】
上記無機系発泡核剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜1.0重量部、好ましくは0.1〜0.7重量部用いられる。無機系発泡核剤の量が、前記範囲内であると、比重が大きくなることがなく、またコストアップになることもなく、発泡成形体が内包するセル径を均一化することができる。
【0036】
上記無機系発泡核剤の平均粒径としては0.5μ〜10μmのものが好ましい。また、上記無機系発泡核剤を疎水性に表面処理したものは更に樹脂中への分散性に優れているため、好ましい。
【0037】
<その他添加剤など>
本発明で使用される熱可塑性樹脂組成物には、上記成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、耐湿性軽量樹脂成形体の用途に応じて、予め種々公知のゴム・エラストマー、無機充填剤、添加剤などを加えていてもよい。
【0038】
ゴム・エラストマーとしては、具体的には、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、天然ゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。
【0039】
無機充填剤としては、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ワラスナイト、ケイ酸カルシウム繊維、炭素繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、チタン酸カリウム繊維、酸化チタン、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、硫酸カルシウムなどが挙げられる。これら無機充填剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0040】
添加剤としては、結晶化核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックスなどの公知の添加剤が挙げられる。
【0041】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂と、前記有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤と、前記無機系発泡核剤と、これらの成分に必要に応じて、前記その他の添加剤とを含み、シリンダー導入前に上記有機系発泡剤を含む全ての成分が予め混合している態様と、シリンダー導入前には、上記有機系発泡剤以外の成分が混合されており、上記有機系発泡剤のみをシリンダの途中から注入する態様がある。シリンダー導入前の前記各成分の混合は、公知の混合装置を使用して行うことができる。混合装置としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが挙げられる。有機系発泡剤をシリンダの途中から注入する場合は、シリンダの圧縮領域で、有機系発泡剤とその他の成分を溶融混合する。
【0042】
前記有機系発泡剤は、発泡助剤などと予め配合して、溶融温度の低いエラストマーやポリエチレンなどの材料と混ぜ合わせてマスターバッチを製造し、これを熱可塑性樹脂に配合してもよい。
【0043】
前記無機系発泡核剤は、発泡核剤量が5〜50重量%の樹脂、ワックス、ゴムを基材としたマスターバッチに加工してこれを熱可塑性樹脂に配合してもよい。マスターバッチに加工すると、成形機のホッパーの汚染、成形表面への粉の付着、スクリューの摩耗を減じることができる。
【0044】
≪耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法≫
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法は、二段圧縮スクリュを有する射出成形機を用いた耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法であって、
(i)熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程と、
(ii)該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を該射出成形機のシリンダ途中から供給する工程と、
(iii)射出発泡成形する工程とを含む。
【0045】
<二段圧縮スクリュを有する射出成形機>
本発明で使用される二段圧縮スクリュを有する射出成形機は、前記熱可塑性樹脂組成物を供給するホッパーと、該熱可塑性樹脂組成物を溶融状態にするシリンダとを備えた可塑化手段と、射出成形機のシリンダ途中に物理発泡剤を供給するガス供給口を備えた、物理発泡剤を該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に混練および溶解させる物理発泡剤供給および溶解手段と、得られた溶融状態の発泡ガス溶解樹脂組成物から発泡成形体を得るための金型を備えた射出成形手段とからなり、シリンダ中にはスクリュを備える。前記ガス供給口は、物理発泡剤供給管を介して物理発泡剤収納手段と通じている。また、有機系発泡剤をシリンダ途中で加えて熱可塑性樹脂組成物を製造する態様においては、シリンダ途中に有機系発泡剤供給口を有する。
【0046】
以下、二段圧縮スクリュの構成について一例を挙げて説明する。前記スクリュは第一段目および第二段目の各段において供給・圧縮・計量の領域を持つ。スクリュの溝は、第一段目の圧縮領域では、深く、第一段目の前方にかけて徐々に浅くなり、第二段目の供給部で急に深くなり、第二段目の前方にかけて徐々に浅くなる。第一段目のスクリュがこのような形状であるのは、ペレットを前方に送るとともに、樹脂組成物中の空気を抜くためであり、第二段目の供給部で急に溝が深くなり、断面積が大きくなるのは、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の圧力を物理発泡剤供給圧力より低下させ、溶融樹脂組成物を飢餓状態に近くすることにより、容易に物理発泡剤を供給することができ、かつ溶融樹脂の他に気体が注入可能な空間を作るためである。
【0047】
シリンダには、物理発泡剤導入のためのガス供給口を二段圧縮スクリュの第二段目の供給部に相当するの位置に設けることが好ましく、任意の有機系発泡剤供給口を二段圧縮スクリュの第一段目の供給部に相当する位置に設けることが好ましい。
【0048】
上記射出成形機は、高速射出が可能な成形機が好ましく、射出率としては、通常400cc/秒以上、好ましくは600cc/秒以上、さらに好ましくは800cc/秒以上で射出可能な成形機を用いる。なお射出率とは、射出成形機が射出可能な能力を示す指標として一般的に用いられる指標であり、1秒間に成形機が射出可能な容積(cc/秒)で表される。この射出率を用いると射出成形機の大きさや種類が異なっても、成形機が金型内に射出する樹脂の流速を規定することができる。
【0049】
上記射出成形機へ物理発泡剤を供給するためのシリンダ途中に設けられたガス供給口には、樹脂逆流防止機構が設けられていることが好ましい。前記樹脂逆流防止機構としては、物理発泡剤の供給口を開閉閉止する機構、焼結ベントのような微細口を有する機構、金属粉末を押し固めたり金属網を重ねて焼結した焼結金属などを有する機構を使用することができる。
【0050】
物理発泡剤収納手段の例としては、ボンベ、タンクが挙げられる。
また、物理発泡剤の供給配管には保温機構が設けられていることが好ましい。保温機構を設けることによって、周辺環境(特に環境温度)が変化しても常に物理発泡剤を安定的に供給することが可能となり、発泡ムラを防止することができ、特に量産時にその威力を発揮する。また、これにより、季節や時間による生産の安定性が悪化することを防ぐこともできる。さらに、この保温機構はガス供給口に設けられた発泡ガスの逆流防止機構の固化を防ぐ機能も併せ持つ。この保温機構は、射出成形機バレルの廃熱を利用することが好ましい。
【0051】
<(i)熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程>
先ず、熱可塑性樹脂組成物をホッパーから供給し、射出成形機のシリンダ内にて該熱可塑性樹脂組成物を可塑化・混錬して溶融状態(以下、「溶融樹脂」ともいう。)にする。
【0052】
ホッパーから供給される前記熱可塑性樹脂組成物が、予め前記有機系発泡剤を含んでいない場合、前記有機系発泡剤は、シリンダー途中、好ましくは第一段目のスクリュの供給領域で、熱可塑性樹脂、無機系発泡核剤および任意のその他添加剤の混合物に加えてもよい。
【0053】
具体例としては、第一段目のスクリュの供給領域でホッパーより熱可塑性樹脂組成物を供給し、圧縮領域で熱可塑性樹脂組成物を溶融、混錬および/または可塑化を行い、その下流の計量領域でさらに熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂と有機系発泡剤との分散を均一化するための混錬を行う。
【0054】
<(ii)該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を該射出成形機のシリンダ途中から供給する工程>
有機系発泡剤から発生した発泡ガスを含有する溶融樹脂に、前記ガス供給口から物理発泡剤を供給し、混練および溶解させる。この物理発泡剤は、第二段目のスクリュの供給領域で供給されることが好ましい。ここで、第一段目のスクリュの計量領域に比べて第二段目の供給領域の溝を深くすることにより、樹脂圧を急激に低下させることが好ましい。この減圧により、溶融樹脂は飢餓状態に近くなり、容易に物理発泡剤を供給することができる。また、第二段目のスクリュの供給領域から圧縮領域、計量領域と下流方向に圧力を上
昇させることにより、供給された物理発泡剤と溶融樹脂との混練および溶解を促進することができる。
【0055】
具体例としてはスクリュの第二段目の供給部で溝の断面積を拡大することにより溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の圧力を物理発泡剤供給圧力より低下させた後、ガス供給部から物理発泡剤を供給し、さらにその下流方向に圧力を上昇させながら供給された物理発泡剤と溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を混練および溶解させ、さらにその下流の計量領域で溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に対する物理発泡剤の分散性を向上させる。
【0056】
<物理発泡剤>
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法に用いる物理発泡剤としては、通常の物理発泡剤であれば特に制限されず、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの不活性ガスが挙げられる。これらの中で、安価で、環境汚染、火災の危険性が極めて少ない二酸化炭素、窒素、アルゴンがもっとも優れている。また、物理発泡剤は、液体状態、超臨界状態、および気体状態のいずれも使用可能であるが、気体状態で使用することが取り扱いおよび安全性の観点から好ましい。
【0057】
また、本発明における物理発泡剤の供給量は、得られる耐湿性軽量樹脂成形体の要求物性に応じて、好ましい発泡倍率などを考慮して選択されるが、上記有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物に対して、通常0.1〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%、さらに好ましくは0.1〜0.7重量%の範囲にある。物理発泡剤の供給量が前記範囲を超えると、得られる成形体の発泡倍率自体は上がるが、スワールマークやディンプルが大量に発生することがある。このため、無塗装成形体はもちろんのこと、たとえ塗装をしても場所による光沢ムラが発生したり、成形体に曇りが発生し、外観が悪くなり実際の商品として使用することができない場合がある。
なお、物理発泡剤の供給量は、単位樹脂あたりの物理発泡剤消費量をボンベの重量測定によって算出する。
【0058】
<(iii)射出発泡成形する工程>
物理発泡剤を溶解させた溶融樹脂を、射出成形機に取り付けた型締状態の金型キャビティ内に射出後、発泡させる。
【0059】
上記発泡方法としては、キャビティ容積を変化させないショートショット発泡やヒケ防止発泡などの発泡方法でもよいが、キャビティ容積を増大させて発泡させる発泡方法(コアバック)が発泡倍率の高い射出発泡成形体が得られるため好ましい。
【0060】
上記キャビティ容積を増大させて発泡させる方法(コアバック)においては、金型キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、適度な時間を置き、キャビティ容積を増大させることが好ましい。キャビティ容積を増大させる好適な方法としては、金型キャビティの壁を構成する金属板を油圧シリンダもしくは空圧シリンダ、またはモータなどを使用した機構を用い移動させる方法や、射出成形機の可動側金型取り付け盤自体を型開方向に微小移動する方法などが挙げられる。
【0061】
なお、射出開始時のキャビティの空間厚み(T0)が、好ましくは1.0〜3.0mm
、より好ましくは1.0〜2.5mm、さらに好ましくは1.0〜2.0mmの範囲にあると、成形体の外観が良好となる。また、射出開始時のキャビティの空間厚み(T0)と
可動型後退後のキャビティの空間厚み(T1)との比(T1/T0)は、好ましくは1.2
〜3.0、より好ましくは1.2〜2.5、さらに好ましくは1.3〜2.0の範囲にある。
【0062】
また、上記のように金型キャビティ内に一度に溶融樹脂を射出することにより、金型と接する溶融樹脂表面は内部に比べ早く固化し、成形体表面に未発泡のスキン層を形成することができる。これにより、固い製品形状を形成および維持することができ、内部の発泡状態が均一で、高剛性の成形体を得ることができる。前記スキン層の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。
【0063】
上記スキン層を形成するためのコアバック開始のタイミングは、熱可塑性樹脂の種類、有機系発泡剤および物理発泡剤の種類、金型温度ならびに溶融樹脂温度により異なるが、たとえば物理発泡剤として二酸化炭素を用い、熱可塑性樹脂として通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合には、射出完了後から0.5〜4秒程度が好ましい。射出完了後からコアバック開始までの時間が短すぎると、溶融樹脂の先端はまだ流動しており、流動先端にスワールマークが発現し、外観の悪化の原因となったり、十分な厚みのスキン層が形成されないことがある。また、射出完了後からコアバック開始までの時間が長すぎると溶融樹脂の固化が進行して、コアバックしても十分な発泡倍率が得られない。ただし、通常の射出成形機においては、射出完了後からコアバック開始までの時間をたとえ0秒に設定しても、射出時の型締め圧力が低下する時間が0.5〜1秒程度存在するため、設定上は射出完了と同時に型開きを行ってもショートショットやスワールマーク発生の問題はほとんど起こらない。
【0064】
コアバック時のコア移動速度も、成形体厚み、熱可塑性樹脂の種類、有機系発泡剤および物理発泡剤の種類、金型温度ならびに溶融樹脂温度により異なるが、たとえば物理発泡剤として二酸化炭素を用い、熱可塑性樹脂として通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合、0.01〜50mm/秒程度が好ましい。コア移動の速度が遅過ぎると、コアバックの途中で溶融樹脂が固化し、十分な発泡倍率が得られない。また、コア移動の速度が速すぎると発泡セルの発生および成長がコアの移動に追随せず、発泡セルが破壊し良好な成形体が得られない。
【0065】
また、コアバックは、数段階に分けて行うことも可能であり、これにより高発泡、微細発泡セルを有する成形体が得られる。
金型温度は、使用する熱可塑性樹脂の成形に通常用いられる金型温度で成形するが、厚みが薄い成形体や、発泡倍率が高い成形体を得る場合は、通常の金型温度より高めに設定するとよい。たとえば、物理発泡剤として二酸化炭素を用い、熱可塑性樹脂として通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合、金型温度は好ましくは10〜80℃程度、より好ましくは20〜60℃程度の範囲にある。
【0066】
また、金型温度に関しては、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を使用する場合、射出する時の金型キャビティの表面温度を、該結晶性樹脂の結晶化温度から溶融温度の間にすると、成形体の表面にスワールマークが発現しない高外観で高発泡の成形体を得ることができる。また、熱可塑性樹脂として非結晶性樹脂を使用する場合においても、同様に、該非結晶性樹脂の軟化点から溶融温度の間がスワールマーク抑制の温度となる。ただし金型キャビティの表面温度を高くすると冷却が阻害され、金型キャビティの表面に接する溶融樹脂の表面温度を結晶化温度または軟化点以下に低下させないと成形体として金型から取り出すことが困難となる。このため成形サイクルが長くなったり、金型温度を成形サイクル中に昇降させる温度制御装置を必要とするという問題がある。なお、このような金型温度を昇降させる機構を備え付けた金型も、本発明の成形体の製造方法に用いることができる。
【0067】
他方、金型温度を昇降させるかわりに、金型キャビティ周囲を円形状、板状、チューブ、ホース状、矩形または台形など各種形状の断面を持つゴムシールにてシールして、金型キャビティ内にエア、二酸化炭素または窒素などのガスを注入して圧力を掛けた状態で射出を行う、カウンタプレッシャ法を用いて成形を行う方法も、本発明の耐湿性軽量樹脂成
形体の製造方法に適用することができる。
【0068】
冷却時間は、成形体取り出し後、内部ガス圧で生じる成形体の膨れを抑制するため、および成形体表面を固化するために設ける時間であり一般的に5〜40秒程度である。
また、本発明では、通常の射出成形で用いられるホットランナ、シャットオフノズルまたはバルブゲートなどを利用することもできる。ホットランナ、シャットオフノズルまたはバルブゲートは、ランナなど廃樹脂の発生を押さえるだけでなく、発泡剤を含有する熱可塑性樹脂組成物がランナからキャビティに漏れ出し次サイクルの発泡成形体の外観不良,発泡不良を防止する効果がある。
【0069】
<耐湿性軽量樹脂成形体>
本発明の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法によれば、成形体内部のセル形状、セル密度および/または発泡倍率に多少の分布が発生しても、スキン層の平滑性、剛性、耐湿性、軽量性および外観に優れた耐湿性軽量樹脂成形体が得られる。
【0070】
本発明の製造方法では、発泡倍率および外観性能は、上述の射出される溶融樹脂の温度、射出速度、射出終了からコアバック開始までの待ち時間、コアバック量、コアバック速度および/またはコアバック終了後の冷却時間などによって適宜制御することができる。
【0071】
上記耐湿性軽量樹脂成形体が独立気泡を有する製品の場合は、平均セル径は、0.1〜1.0mm程度である。また、製品形状や製品の用途によっては、平均セル径が数mmでありそのセルの一部が連通したものが一部存在しても、成形体表面に内部セルのサイズまたは連通化による凹凸が生じなく、かつ成形体をある程度湾曲した時に成形体の表面と裏面との厚み変化がほとんど無ければ、成形体として問題は生じない。
【0072】
高発泡製品の場合、発泡セルは共に会合・連通化し、発泡製品は一種の中空に近い状態になるが、空洞化した中に柱として樹脂の延伸された支柱が存在するため、高度に軽量化され、強固な剛性を有する製品を製造することが可能である。これら高発泡製品はダンボールなどの代替え品などに最適である。
【0073】
本発明の製造方法で得られる耐湿性軽量樹脂成形体の密度は、通常0.4〜0.8g/cm3の範囲、好ましくは0.5〜0.8g/cm3の範囲にある。本発明の製造方法で得られる耐湿性軽量樹脂成形体の密度は通常前記範囲にあるため、軽量であり、自動車などの外装部品に好適に用いることができる。
【0074】
本発明の製造方法で得られる耐湿性軽量樹脂成形体は、水中または多湿環境下においても外観が悪化しない耐湿性軽量樹脂成形体であり、たとえばバンパー、モール、アンダーカバーなどの自動車外装材への適用、またパレット、コンテナなどの産業用用途への適用、その他にキッチン、トイレ、浴室などの水周り製品、たとえば洗濯機の洗濯槽や蓋、浴室の椅子などへの適用も可能となる。また、印刷、塗装または加飾加工が加えられた自動車外装材としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明の製造方法により得られる耐湿性軽量樹脂成形体の評価方法などは以下の通りである。
【0076】
〔耐湿性軽量樹脂成形体の密度測定方法〕
耐湿性軽量樹脂成形体の密度は、JIS K7222Aに準拠して測定した。発泡不良
で板厚に大きなバラツキを生じるものは、密度にもバラツキを生じるため評価不能とした。
【0077】
〔外観評価方法〕
耐湿性軽量樹脂成形体の表面を目視で観察し、次の基準で判定した。
【0078】
<板厚>
ノギスにて耐湿性軽量樹脂成形体の板厚を三箇所測定し平均して求めた。発泡不良で板厚に大きなバラツキを生じるものは評価不能とした。
【0079】
<セル状態>
○:良好、△:セルはやや大きいが外観への影響無し、×:セルが大きく耐湿性軽量樹脂成形体表面に凹凸発生またはセル連通化、評価不能:発泡不良で発泡状態バラツキ大
【0080】
<表面凹凸ディンプル>
○:無し、△:裏面に発生、×:表面・裏面ともに発生(発泡不良による変形を含む)
【0081】
<スワールマーク>
○:ほとんど確認できず、△:やや多め、×:多い
【0082】
<耐湿性軽量樹脂成形体形状>
○:良好(無し)、×:変形有り(凹み、シワ、厚みムラ)
【0083】
<熱間耐水試験後外観>
耐湿性軽量樹脂成形体を5cm×5cmに切り出し、80℃×24時間および40℃×240時間の条件下で、水中に浸漬した後に外観評価を行い、表面のブリスタの発生を確認した。
○:良好、×:不良、評価不能:外観不良(試験片変形大またはスワールマーク過多)で評価不能
【0084】
〔実施例1〕
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製、商品名:プライムポリプロTSOP−GP6B)100重量部に、有機系発泡剤マスターバッチ(永和化成(株)社製 EE206E ADCA)を有機系発泡剤の量として0.06重量部、無機系(シリカ)発泡核剤マスターバッチ(商品名:プライムポリプロ MB401(粒径:2μm)をシリカとして0.3重量部となるように加えてドライブレンドし、熱可塑性樹脂組成物ペレットを調製した。
【0085】
宇部興産機械(株)製の射出成形機(商品名:MD850S−III)のホッパーに上記樹脂組成物ペレットを供給して溶融し、溶融状態の樹脂組成物(溶融樹脂)に、シリンダ途中から物理発泡剤としてCO2を0.2重量%供給し、溶解・混錬した。
【0086】
CO2が混錬溶解した230℃の溶融樹脂を、金型キャビティの空間厚み(T0)が1.8mm、表面温度が40℃の金型に、0.8秒間で射出して金型キャビティ内に充填した。なお、射出時間は射出開始から溶融樹脂の全量を射出し終わるまでの時間とした。
【0087】
上記溶融樹脂の射出完了から0.5秒後にコアバックを開始し、コア移動速度を20mm/秒で金型キャビティの空間厚み(T1)を2.8mmへとし、縦50cm、横80c
mの耐湿性軽量樹脂成形体を得た。冷却時間は30秒とした。得られた耐湿性軽量樹脂成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0088】
〔実施例2〕
実施例1において、シリカの量を0.5重量部とする以外は実施例1と同様に実施した。得られた耐湿性軽量樹脂成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0089】
〔実施例3〕
実施例1において、有機系発泡剤(ADCA)の量を0.1重量部、シリカの量を0.5重量部とする以外は実施例1と同様に実施した。得られた耐湿性軽量樹脂成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0090】
〔比較例1〕
実施例3において、無機系発泡核剤の量を0にした以外は実施例3と同様に実施した。得られた発泡成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0091】
〔比較例2〕
実施例3において、無機系発泡核剤の量を0.01にした以外は実施例3と同様に実施した。得られた発泡成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0092】
〔比較例3〕
実施例3において、無機系発泡核剤の量を0、化学発泡剤として有機系発泡剤(ADCA)に変えて炭酸水素ナトリウム(重曹)からなる無機系発泡剤とクエン酸からなる有機系発泡剤とからなる混合発泡剤を用い、その量を0.1重量部にした以外は実施例3と同様に実施した。得られた発泡成形体の板厚および密度の実測値と外観の観察結果とを表1に示す。
【0093】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二段圧縮スクリュを有する射出成形機を用いた耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂100重量部と、有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤0.001〜0.5重量部と、無機系発泡核剤0.1〜1.0重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程と、
該溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に物理発泡剤を該射出成形機のシリンダ途中から供給する工程と、
射出発泡成形する工程とを含むことを特徴とする耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記無機系発泡核剤がシリカであることを特徴とする請求項1に記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記物理発泡剤が、気体状態の物理発泡剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記有機系発泡剤が、アゾジカルボンアミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記物理発泡剤を、前記熱可塑性樹脂組成物に対して0.1〜2.0重量%の量で供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記耐湿性軽量樹脂成形体が、密度が0.4〜0.8g/cm3の範囲にある耐湿性軽
量ポリプロピレン樹脂成形体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記耐湿軽量樹脂製形体が自動車外装材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐湿性軽量樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−120335(P2010−120335A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297987(P2008−297987)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】