説明

耐火建材とその製造方法、及び耐火扉

【課題】芯板の表裏両側それぞれにマイカの層を設けて耐火機能を持たせると共に、重量及び厚みの低減を図った耐火建材とその製造方法、及び耐火扉を提供する。
【解決手段】耐火建材1は、芯板110と、芯板110の表裏両面に配置された中間板120a,120bと、各中間板120a,120bの表側に配置されたマイカ板130a,130bと、マイカ板130a,130bの表側に配置された化粧板140a,140bからなる積層構造である。マイカ板130a,130bは、厚みは0.2mmの板状体であって、表裏両面が防湿部材により被覆してある。該防湿部材としては紙基材を含んだ防湿シート131が使用されており、防湿シート131は各マイカ板130a,130bの表裏両面を被覆及びプレス接着し、一体として形成している。上記各層を構成する部材は、それぞれ耐熱性を有する接着剤により接着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火建材とその製造方法、及び耐火扉に関する。更に詳しくは、芯板の表裏両側それぞれにマイカの層又は板状物を設けて耐火機能を持たせると共に、重量及び厚みの低減を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会社や施設の建物あるいは一般住宅や集合住宅において火災が起きた際に延焼を遅らせるために、炎や煙を遮断することができる耐火建材及び耐火扉が使用されている。
平成2年には、甲種防火扉及び乙種防火扉の試験方法が改正され、一定条件を満たせば木材を利用したものであっても特定防火設備として認可されることになったため、近年は金属製の防火建材及び防火扉のみならず、構成材の一部又は全部として木材を使用した耐火建材(以下「木質耐火建材」という。)及び耐火扉(以下「木質耐火扉」という。)も多く流通している。
特に、木質耐火扉は、鉄製防火扉と比べて、火災時において炎の接する面と反対側の面に熱が伝わりにくいという特性があるため、救助活動や避難の際に救助者又は避難者が扉へ接触しても熱傷を負いにくいという長所がある。
【0003】
このような木質耐火建材及び木質耐火扉は、木製化粧板等の表面板の内側に不燃板或いは耐熱材を配置した多重積層構造のものがあり、その一例として、下記特許文献1に示すようなものが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−158754号
【0005】
特許文献1では、木質系防火ドアの発明が開示されている。この木質系防火ドアは、芯板の表裏両面に不燃性無機質板を積層しており、不燃性無機質板として珪酸カルシウム板(以下「ケイカル板」という。)または石膏ボードが挙げられている。この木質系防火ドアは、積層された不燃性無機質板が炎を遮るので、芯板及びドアの反対側積層部が直接炎に晒されず、耐火性を備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記防火ドアは、比較的重量が嵩むケイカル板又は石膏ボードを使用しているために全体として重量が増し、この結果、扉の円滑な開閉に支障が生じる課題がある。また、上記防火ドアは、法定の基準により所定の厚みが必要とされるケイカル板又は石膏ボードを使用しているため、ドアの厚みが増し、一般住宅の建築規格に適合しにくいという課題もあった。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を重ね、不燃性無機質材であるマイカ(雲母)に着目し、このマイカを板状に形成したものをドアの不燃材に使用すれば、ドアの重さが低減されると共にドアの厚みも薄くできることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(発明の目的)
本発明の目的は、芯板の表裏両側それぞれにマイカの層又は板状物を設けて耐火機能を持たせると共に、重量及び厚みの低減を図った耐火建材とその製造方法、及び耐火扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、
耐火層を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯材の表裏両面のそれぞれに、耐火層及び表面層が設けられており、
上記表面層及び芯材は可燃性材料により形成され、上記耐火層はマイカを含むものである、
耐火建材である。
【0010】
また、本発明は、
耐火層又は耐火板を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯板の表裏両面のそれぞれに、耐火層又は耐火板、及び表面板がこの順序で設けてあり、
上記耐火層又は耐火板は、マイカを含むものであり、
上記芯板と耐火層若しくは耐火板の間、又は、耐火層若しくは耐火板と上記表面板の間には、一又は二以上の防湿層又は防湿部材が設けられている、
耐火建材である。
【0011】
更に、本発明は、
耐火板を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯板の表裏両面のそれぞれに、耐火板及び表面板がこの順序で設けてあり、
上記耐火板は、マイカを含むシート又は板状体であって、表裏両面が防湿層又は防湿部材で被覆されたものである、
耐火建材である。
【0012】
上記耐火建材における耐火板は、可撓性又は準剛性を備えているものであってもよい。
【0013】
上記耐火建材における防湿部材は、紙基材を含む防湿シートであってもよい。
【0014】
また、上記耐火建材は、その周縁の一部又は全部に加熱発泡材が取着されたものであってもよい。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかの耐火建材により形成された、耐火扉である。
【0016】
本発明は、
マイカの耐火性を利用した積層構造の耐火建材の製造方法であって、芯板と表面板との間にマイカを含むシート又は板状体を配置する工程を含む、耐火建材の製造方法である。
【0017】
本明細書において、可燃性材料とは、金属等の不燃性材料を除いたものであって、一般的な可燃性を有する材料の意味の他に、難燃性材料や可燃性材料に難燃処理を施したものを含む意味で使用している。
【0018】
本明細書において、耐火の用語は、一般的な耐火の意味の他に、防火を含む意味で使用している。
【0019】
耐火板は、板状のもののほか、例えばシート状であって可撓性又は準剛性を備えたものであってもよい。
防湿層は、防湿性を備えた合成樹脂の塗剤等により形成してもよい。
【0020】
耐火層又は耐火板として使用されるマイカは、例えば、マイカ原鉱を粉砕し、必要な粒度に調整した後、紙状に抄いた集成マイカとし、この集成マイカに適量の耐熱性接着剤を含浸させ、適当な乾燥を行った後、加熱圧縮して板状又はシート状に成形されたものであって、可撓性又は準剛性を有するものが挙げられる。なお、マイカの板状体又はシートは、上記製法によるものに限定されず、マイカ原鉱を0.01〜0.03mmの厚さに剥がしたマイカを耐熱性接着剤で貼り合わせて加工したものでもよい。
また、マイカ層は、例えば、マイカを含む塗剤を芯材又は芯板(以下「芯板等」という)に塗布して形成する等してもよい。
【0021】
マイカ層、マイカの板状体又はシート(以下、「マイカ板等」という)の厚みは、0.03mm以上3mm以下が好ましく、更に好ましくは0.07〜0.15mmである。
例えば、芯板等がフラッシュ構造等の場合は内部強度が劣るので火災時に芯材等が歪んで割れることがあるが、マイカ板等の厚さが0.03mm未満であると、その割れた鋭利な箇所がマイカ板等を裂き、その裂け目から炎が進入することもあるので好ましくない。
【0022】
また、マイカ板等の厚さが3mmを越えるものについては、基準の耐熱性能を満たすものの、厚さが増すことによる目立った効果は生じず、むしろ防火建材の重量及びコストが増大するため好ましくない。
【0023】
更に、マイカ板等の厚みが0.07〜0.15mmであれば、強度と重量のバランスが取れて、より好ましい。
【0024】
マイカ板等と木製の板材との接着性は必ずしも良好ということはできないが、マイカ板等と紙、木製の板と紙との接着性はよいので、マイカ板等と木製の板材との間に、紙を介在させると、全体として接着性がよくなる。
【0025】
なお、石膏ボードを構成する石膏の比重は2.96であり、また、ケイカル板を構成する珪酸カルシウムの比重は2.9であるのに対し、マイカの比重2.8〜3.0であって、これらの比重自体は大きく相違するものではない。
しかし、上記各素材についてそれぞれ同じ厚みにおける強度を比較した場合、石膏ボード及びケイカル板は割れやすいため、従来の木質系耐火又は防火ドアにおいて不燃性無機質板として使用される石膏ボードについては3〜12mm、ケイカル板については9.5mm〜12.5mmの厚みが必要とされていた。
【0026】
これに対して、本発明において使用するマイカ板等は、石膏ボードやケイカル板と比べると可撓性を有するため割れにくく、しかも0.03mm以上3mm以下の厚みであれば、法定の防火性の基準を満たす。
更に、前述の集成マイカを板状又はシート状に成形したものは、比重が1.7〜1.8であり、石膏等よりも比重が軽い。
上記事情を勘案すると、マイカを含む耐火層又は耐火板を使用した木製防火建材は、石膏ボードやケイカル板を使用した木製耐火建材と同等の耐火性を有しながらも、これらの建材より、軽く且つ薄いものを提供できる。
【0027】
防湿層は、防湿性を備えた合成樹脂の塗剤等を塗布して形成する等してもよい。
【0028】
防湿部材としては、例えば、板状又はシート状、フィルム状に形成されたものが挙げられ、ポリエチレンフィルム(特に高密度ポリエチレンフィルムが好適である)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等の合成樹脂、天然樹脂、アルミニウム等の金属箔、またはこれらを組み合わせた板材、シート、フィルム等であってもよい。
また、防湿部材としては、紙基材を含む防湿シートが接着性の面から好適であり、その態様としては、例えば、紙基材の片面又は両面に、上述のフィルム又は防湿性を備える塗剤を、積層又は被覆したものが挙げられる。
なお、多層構造の防湿素材のみならず、例えば、合成樹脂等のバインダーに紙等の繊維を混合してなる防湿部材等も使用できる。
【0029】
表面層又は表面板(以下「表面板等」という)は、耐火建材の表面に配された可燃性材料の板材であって、例えば、合板または桐等の木材の無垢一枚板が挙げられるが、これに限定するものではなく、木質材、紙質材、合成樹脂材等の単一層板、または、木質材、合成樹脂材等を組み合わせた複層板であってもよい。
上記複層板の態様としては、例えば、木製薄板を表面に貼り付けた合板又は合成樹脂板、メラミン等の合成樹脂塗剤を表面に塗布した合板又は紙質繊維板などが挙げられる。
木質材は、パーティクルボードや集成材、または、積層材等であってもよい。更に、表面板には、必要に応じて燃焼遅延剤を含浸させる等してもよい。
【0030】
芯板等は、積層構造の耐火建材の中心に配された可燃性材料の基材である。芯板等は、例えば、それ自体が優れた耐火性能を発揮し軽量である桐材の三層集成材が挙げられるが、当該部材に限定するものではなく、例えば、桐の無垢一枚板であってもよい。
また、芯板等は、耐火性能の点で問題がなければ、他の木材を利用してもよく、例えば、杉、唐松、及び栂等の木材を用いることができる。特に、扉の強度を高める点では、杉材及び唐松等を用いるのが好ましく、コストを安価にするには、杉及び唐松等の間伐材を使用するのが好ましい。
なお、自然木を芯板等にする場合には、無垢の一枚ものを使用してもよいし、集成材や積層材を使用してもよい。積層材の場合は、奇数枚積層させたものを使用するのが好ましく、更に、木繊維の方向が各層で交差するようにして、例えば三層構造(三層クロス張り構造)とした積層材が特に好ましい。
【0031】
更に、芯板等は、上記自然木素材に限定するものではなく、合板、MDF(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板。木質繊維を原料とする成型板の一種。)、パーティクルボード、インシュレーションボード、ダンボール等、あるいはこれらを組み合わせたものでも良く、また、フラッシュ構造によるもの(内部にハニカムコアを備えたものを含む)も挙げられる。また、合成樹脂材等の単一層板、または、木質材、合成樹脂材等を組み合わせた複層板であってもよい。
【0032】
積層構造は、例えば、各構成部材をそれぞれ接着剤で接着してなる積層構造が好適であるが、これに限定するものではなく、積層した各構成部材または全構成部材間を釘、鋲、鎹、ボルト、木ねじ等またはこれらを組み合わせて固定したものであってもよい。なお、接着剤は合成樹脂製の耐熱性を備えるものが好適であるが、これに限定するものではなく、公知の接着剤であってもよい。
また、各構成部材を積層したものの周縁に補強用の枠体を設け、該枠体により構成部材を挟持又は固定したものであってもよく、この場合、吸湿時又は燃焼時における耐火建材全体の捩れを防止しうる。
【0033】
耐火建材は、屋外及び屋内において利用されるものであって、例えば扉が挙げられるが、これに限定するものではなく、壁材等として使用してもよい。
【0034】
加熱発泡材は、耐火性能、防煙性能を考慮すれば、耐火建材の周縁部のうち両側部(縦方向)、上下部(横方向)の全てに設けるのが好ましいが、例えば下部に設けない等、一部の設置を省略することもできる。また、加熱発泡材の形態は、耐火建材に連続して接着またはその他の方法により取り付けることができるものであれば特に限定されず、例えば、帯テープ状、シート状、チューブ状、角棒状、丸棒状等である。なお、加熱発泡材は、一条のみ設けてもよいし、二条以上(複数条)を所要間隔で並設してもよい。
【0035】
(作 用)
本発明に係る耐火建材の作用を説明する。
耐火建材は、芯板等と、芯板等の表裏両面に配置された耐火層又は耐火板であるマイカ板等と、マイカ板等の表側に配置された表面板等がこの順序で設けてある積層構造である。
上記耐火建材は、少なくとも、芯板等の表裏両面にマイカ板等を設ける工程、マイカ板等の表側に表面板等を設ける工程、を含む方法によって積層して形成している。
【0036】
本発明に係る耐火建材は、建物の壁や扉(特に室内用)として利用され、設置される。特に木製耐火扉としては、薄く且つ軽くすることができるため、屋内用として特に好適であり、例えば施工時の持ち運びや設置の際の作業者の労力が軽減する。また、使用時においては、ドアの開閉音が低減する。
【0037】
火災時における上記耐火建材について説明する。
本発明に係る耐火建材が火災の炎に晒された場合、表面板等は燃焼するものの、マイカ板等が炎を遮断し、熱の伝達を弱める。また、マイカ板等自体は燃えず、また、熱で割れるなど破損しない。
この結果、マイカ板等の次の層(芯板又は中間板、芯板及び中間板)は、炎によって発火せず、基本的に炭化するので、耐火建材全体が炎上しないまたは炎上しにくい。
また、加熱発泡材が設けられているものについては、火災時の熱により周縁に配された加熱発泡材が溶け、溶けた加熱発泡材が周縁を覆う。この結果、周縁からの熱又は空気の流入が遮断される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)耐火建材に関する各種基準を満たすものであって、従来の石膏ボードやケイカル板等が使用された耐火建材及び耐火扉と同様に法定の耐火基準を満たすものでありながら、より薄く且つ軽い耐火建材及び該建材を使用した耐火扉を提供できる。
また、上記耐火扉であれば、薄く且つ軽いという特徴によって、屋内用耐火扉として特に好適である。例えば施工時の持ち運びや設置の際の作業者の労力が軽減され、使用時にはドアの開閉音が低減される。
(2)マイカ板等の表裏両面に防湿部材を配置することにより、マイカ板等の持つ特性(湿度・水分に弱い)が改善された耐火建材を提供できる。また、上記防湿部材の配置により、MDFやダンボール等吸湿性を有する部材を芯板として利用することができる。更に、防湿部材として紙基材を含む防湿シートを配置することにより、マイカ板等と木質の芯板等・表面板等を直接接着したときよりも、マイカ板等と芯板等・表面板等との接着性が向上する。
(3)また、上記耐火建材等の周縁の一部又は全部に加熱発泡材が取着されたものにあっては、火災時に当該加熱発泡材が周縁部を覆うように断熱層を形成する。この結果、周縁部から芯板等の耐火建材へ直接炎が接することが無く、また、当該部分から酸素が流入しない。この結果、芯板等の内部部材は発火せずに炭化するので、ドア全体は発火しない又は発火しにくい。
(4)マイカ板等を耐火層又は耐火板として使用した場合、石膏ボード等と比較して耐火建材に使用する分量が少なくて済む(板厚が薄くて済む)。この結果、建物の取り壊し時に発生する不燃性廃材の減量化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る耐火建材の断面拡大説明図である。
【0040】
まず図1に示す耐火建材1について説明する。
耐火建材1は、芯板110と、芯板110の表裏両面に配置された中間板120a,120bと、各中間板120a,120bの表側に配置されたマイカ板130a,130bと、マイカ板130a,130bの表側に配置された化粧板140a,140bからなる積層構造である。なお、本実施の形態では、表面板等として化粧板140a,140bを使用している。
【0041】
マイカ板130a,130bは、厚みは0.2mmの板状体であって、表裏両面が防湿部材により被覆してある。該防湿部材としては紙基材を含んだ防湿シート131が使用されており、防湿シート131は各マイカ板130a,130bの表裏両面を被覆及びプレス接着し、一体として形成している。
上記各層を構成する部材は、それぞれ耐熱性を有する接着剤により接着している。
【0042】
なお、本実施の形態において、図1に示す耐火建材1の厚みは45mmであり、芯板110の厚みは35.0mmであり、防湿シート131で被覆された各マイカ板130a,130bの厚みは0.2mmであり、各中間板の厚みは2.3mmであり、各化粧板140a,140bの厚みは2.5mmである。
【0043】
本実施の形態においては、マイカ板の表裏両面を被覆する防湿シート131としては、ポリエチレンシートの表裏両面に、紙間強化紙が接着してあるものを使用している。なお、他の公知素材及び構造を使用してもよい。
【0044】
本実施の形態においては、芯板110は、桐材を三層クロス張りした構造の集成材を利用している。なお、他の公知素材及び構造を使用してもよい。
【0045】
本実施の形態においては、中間板120a,120bとしては合板材が使用されている。なお、無垢材その他の公知材料であってもよい。
【0046】
本実施の形態においては、マイカ板130a,130bは、表裏両面に防湿シート131を被覆及びプレス接着し一体として成型してあるが、当該形態に限定するものではなく、例えばマイカ板と防湿シートはそれぞれ別々の部材として使用されるものであってもよい。また、本実施の形態においては、マイカ板は表裏に1枚ずつ設けられているが、当該枚数に限定するものではなく、表裏にそれぞれ2以上のマイカ板を配置しても良い。
【0047】
本実施の形態においては、化粧板140a,140bは、2.5mmに満たない厚みのMDF基材又は合板基材に、天然突板又は樹脂シートを貼ったものが使用され、約2.5mm厚の化粧板に形成されているが、無垢材その他の公知材料を除外するものではない。
また、上記芯板、中間板、化粧板は、それぞれ上記の厚みに限定するものではなく適宜状況に応じて好適な厚みの板材を使用しても良い。
【0048】
(作 用)
耐火建材1の作用を説明する。
耐火建材1は、芯板110の表裏両面にそれぞれ、中間板120a,120b、マイカ板130a,130b、化粧板140a,140bの順序に接着等して積層構造と成す。
【0049】
なお、本来、純粋なマイカ板と木材との接着性は良くないが、紙材を含む防湿シート131により被覆された上記マイカ板130a,130bを使用することにより、木質積層建材を生産する時に通常使用される接着剤を使用したとしても、マイカ板と中間板又は化粧板との接着性が良くなり、接着後もそれぞれが剥離しにくい。
また、当該防湿シート131の配置により、マイカ板の持つ特性(湿度・水分に弱い)が改善され、更に、MDFやダンボール等湿度に弱い部材を芯板として利用することができる。
【0050】
[燃焼試験]
図2乃至図8に示す写真は、耐火建材1の耐火試験の様子である。なお、試験は出願人による簡易試験であり、国土交通省の定める試験規格とは異なる(試験に用いるガスバーナーの温度は、国土交通省の規格では945℃であるのに対し、出願人は1,000℃にて試験を行った。但し、出願人による自社試験においては、過熱点が一点であり、圧力差はなかった。)。
【0051】
図2で示すものは、本実施の形態に係る耐火建材の燃焼試験における試験前の状態の写真、図3は同耐火建材の燃焼試験開始直後の状態の写真、図4は同耐火建材の燃焼試験開始3分後の状態の写真、図5は同耐火建材の燃焼試験開始15分後の状態の写真、図6は同耐火建材の燃焼試験開始45分後の状態の写真、図7は同耐火建材の燃焼試験開始65分後の状態の写真、図8は同耐火建材の燃焼試験終了後の芯板の状態を写した写真である。
図2乃至図8を参照して、耐火建材1の耐熱性を説明する。
【0052】
(試験開始前)
図2を参照する。この後、60分にわたって耐火建材1にガスバーナーの炎(約1,000℃)を当て、耐火性の試験を行う。
【0053】
(試験開始直後)
図3を参照する。耐火建材1は、ガスバーナーの炎により表面側の化粧板140aが炎を上げて燃えている。
【0054】
(試験開始後3分)
図4を参照する。耐火建材1は、ガスバーナーの炎によって、表面側の化粧板140aが燃えて無くなっており、マイカ板130aが露出している。
【0055】
(試験開始後15分)
図5を参照する。耐火建材1は、ガスバーナーの炎により、表面側の化粧板140aの燃焼面積が拡大しているが、露出したマイカ板130aにより延焼が止まっている。マイカ板130aの次の層である中間板120aの炭化が始まりつつあり、マイカ板130aとの間に隙間が生じつつある。
【0056】
(試験開始後45分)
図6を参照する。耐火建材1は、マイカ板130aと中間板120aの間に生じた隙間数カ所から上方へ向かって炎が出てきており、中間板120aが延焼している様子が見て取れる。
【0057】
(試験開始後65分)
図7を参照する。試験が終了した直後の写真である。ガスバーナーを当てていた側の化粧板140aはすっかり焼けており、マイカ板130aが露出している。マイカ板130aは破損しておらず、マイカ板130aにて延焼が止まり、芯板110は露出していない。
【0058】
(試験終了後)
図8を参照する。耐火建材1は、露出したマイカ板130aにより延焼が止まっており、芯板110は露出していない。マイカ板130aを剥がしてみたところ、芯板110は炭化していた。
また、芯板110を挟んで反対側の化粧板140b及び中間板120bを確認したが、炭化は確認されなかった。
【0059】
上記試験により、建築基準法第2条第9号の2ロ、同法第64条に基づく耐火性の基準である60分の耐火時間を満たすことが判明した。
また、上記結果は、建築基準法に基づく簡易的な耐火性扉の基準(20分の耐火時間)を満たすので、MDFやダンボール、フラッシュ構造等の耐火性の劣る部材であっても、芯板として利用することができる。
【0060】
また、今回の試験中にマイカ板の次の層から発火したが、耐火建材1の周縁の一部又は全部に加熱発泡材が取着したものであれば、火災時に当該加熱発泡材が周縁部を覆うように断熱層を形成し、中間板及び芯板へ直接炎が接しない及び酸素が供給されない。この結果、耐火建材1の芯板等は発火せずに炭化するのみであって、発火しない又は発火しにくいものとなる。
【0061】
更に、燃焼により接着剤が燃焼又は溶けて脱落することを防止するために、マイカ板を中間板にタッカー打ちしてもよい。この場合、金属針を通じて芯板に熱が伝わらないように、金属針の先端が中間板の層に留まるようタッカー打ちを行い、芯板に金属針が届かないようにすることが好ましい。
【0062】
また、上記耐火建材1は、耐火扉の基材として好適である。耐火扉として利用する場合、上記耐火建材の厚みは、室内用は30〜40mm、マンションやホテルなどの廊下側の扉は50〜60mmであることが好ましい。該耐火扉は建築基準法に規定する防火基準を満たす優れた耐火性を備える。
また、上記耐火扉であれば、薄く且つ軽くすることができるため、例えば施工時の持ち運びや設置の際の作業者の労力が軽減し、使用時にはドアの開閉音が低減する。
【0063】
更に、マイカ板を耐火層又は耐火板として使用した場合、石膏ボード等と比較して耐火建材に使用する分量が少なくて済む(板厚が薄くて済む)。この結果、建物の取り壊し時に発生する不燃性廃材の減量化に貢献し、不燃性廃材の処理場所が少なくて済む。
【0064】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る耐火建材の断面拡大説明図。
【図2】実施例に係る耐火建材の燃焼試験における試験前の状態の写真。
【図3】同耐火建材の燃焼試験開始直後の状態の写真。
【図4】同耐火建材の燃焼試験開始3分後の状態の写真。
【図5】同耐火建材の燃焼試験開始15分後の状態の写真。
【図6】同耐火建材の燃焼試験開始45分後の状態の写真。
【図7】同耐火建材の燃焼試験開始65分後の状態の写真。
【図8】同耐火建材の燃焼試験終了後の芯板の状態を写した写真。
【符号の説明】
【0066】
1 耐火建材
110 芯板
120a,120b 中間板
130a,130b マイカ板
131 防湿シート
140a,140b 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火層を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯材の表裏両面のそれぞれに、耐火層及び表面層が設けられており、
上記表面層及び芯材は可燃性材料により形成され、上記耐火層はマイカを含むものである、
耐火建材。
【請求項2】
耐火層又は耐火板を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯板の表裏両面のそれぞれに、耐火層又は耐火板、及び表面板がこの順序で設けてあり、
上記耐火層又は耐火板は、マイカを含むものであり、
上記芯板と耐火層若しくは耐火板の間、又は、耐火層若しくは耐火板と上記表面板の間には、一又は二以上の防湿層又は防湿部材が設けられている、
耐火建材。
【請求項3】
耐火板を備えた積層構造の耐火建材であって、
上記耐火建材は、芯板の表裏両面のそれぞれに、耐火板及び表面板がこの順序で設けてあり、
上記耐火板は、マイカを含むシート又は板状体であって、表裏両面が防湿層又は防湿部材で被覆されたものである、
耐火建材。
【請求項4】
耐火板は、可撓性又は準剛性を備えている、
請求項2または3記載の耐火建材。
【請求項5】
防湿部材は、紙基材を含む防湿シートである、
請求項2または3記載の耐火建材。
【請求項6】
耐火建材の周縁の一部又は全部に、加熱発泡材が取着されている、
請求項1,2または3記載の耐火建材。
【請求項7】
請求項1乃至3記載のいずれかの耐火建材により形成された、
耐火扉。
【請求項8】
マイカの耐火性を利用した積層構造の耐火建材の製造方法であって、芯板と表面板との間にマイカを含むシート又は板状体を配置する工程を含む、耐火建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−41199(P2009−41199A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204563(P2007−204563)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(593159637)株式会社オークマ (14)
【出願人】(591230549)株式会社岡部マイカ工業所 (15)
【Fターム(参考)】