説明

耐火性鉄部材の製造方法

【課題】構造が簡単でかつ耐火性、耐水性、耐食性、耐候性に優れ施工が容易な耐火性鉄部材の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄部材の表面を素地調整する素地調整工程と、素地調整された鉄部材の表面に当該鉄部材の酸化を防止する防食下地材を塗装する防食下地材塗装工程と、塗装された防食下地材の上に鉄部材側への腐食性物質の浸入を防止する下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程と、塗装された下塗り材の上に耐火塗料を塗装する耐火塗料塗装工程と、溶剤の含有率が30%以下であって、耐火塗料側への水の浸入を防止する変性エポキシ樹脂塗料を、塗装された耐火塗料の上に塗装する変性エポキシ樹脂塗料塗装工程と、塗装された変性エポキシ樹脂塗料の上に、フッ素樹脂を含有する耐候材を塗装する耐候材塗装工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を備え、外部に露出して用いられる耐火性鉄部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性が要求される鉄部材としての例えば外部鉄骨には、大臣認定を取得した耐火被覆材を施工する必要がある。しかしながら、耐火被覆材として高い耐水性を有するものはないため、外部鉄骨に耐火被覆材を施工する際には、施した耐火被覆材を防水モルタル等にて保護している。また、意匠性を考慮して防水モルタルの上にアルミ板を巻き付け、巻き付けたアルミ板の端部同士の接合部をシーリング材にて止水している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した鉄部材のように、耐火被覆材を施工するために、その外周を防水モルタル等にて保護し、アルミ板を巻き付けてシーリング材にて止水すると、構造が複雑になるばかりでなく、施工が煩雑であるという課題がある。
また、耐火被覆材の上に水の浸入を防止する保護材を塗装し、保護材の上に耐候性を向上させるフッ素樹脂を含む耐候材を塗装する場合があるが、保護材自体の溶剤が耐火塗料へ悪影響を及ぼして、塗膜に割れや膨れが発生する場合がある。また、保護材の樹脂固形分量が少ない場合や膜厚が薄い場合に、その上に塗装するフッ素樹脂を含む耐候材に含有する溶剤が保護材を通して耐火塗料へ侵入し、耐火塗料に膨れや割れが生じる虞があるという課題がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造が簡単でかつ耐火性、耐水性、耐食性、耐候性に優れ施工が容易な耐火性鉄部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の耐火性鉄部材の製造方法は、外部に露出して用いられる鉄部材が耐火性を備えた耐火性鉄部材の製造方法であって、前記鉄部材の表面を素地調整する素地調整工程と、素地調整された前記鉄部材の表面に当該鉄部材の酸化を防止する防食下地材を塗装する防食下地材塗装工程と、塗装された前記防食下地材の上に前記鉄部材側への腐食性物質の浸入を防止する下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程と、塗装された前記下塗り材の上に耐火塗料を塗装する耐火塗料塗装工程と、溶剤の含有率が30%以下であって、前記耐火塗料側への水の浸入を防止する変性エポキシ樹脂塗料を、塗装された前記耐火塗料の上に塗装する変性エポキシ樹脂塗料塗装工程と、塗装された前記変性エポキシ樹脂塗料の上に、フッ素樹脂を含有する耐候材を塗装する耐候材塗装工程と、を有することを特徴とする耐火性鉄部材の製造方法である。
【0006】
このような耐火性鉄部材の製造方法によれば、防食下地材の上に防食下地材及び鉄部材側への水の浸入を防止する下塗り材が塗装されるので、鉄部材側への水の浸入を抑えることが可能である。また、たとえ水が浸入したとしても下塗り材の下に防食下地材が塗装されているので、より効果的に鉄部材の酸化を防止することが可能である。
【0007】
また、耐火塗料の上には耐火塗料側への水の浸入を防止する保護材をなす変性エポキシ樹脂塗料が塗装されるので、耐火塗料側への水の浸入を抑えることが可能である。また、変性エポキシ樹脂塗料は溶剤の含有率が30%以下で従来よりも緻密な膜を形成できるため、当該変性エポキシ樹脂塗料の上に耐候材が塗装されたとしても、耐候材に含有する溶剤が保護材を浸透して耐火塗料へ侵入することもなく、また、耐候材に含有する溶剤によって膨潤や軟化等の影響を受けないため、耐火塗料、変性エポキシ樹脂塗料及び耐候材へ割れや膨れ等の発生を抑えることが可能である。このため、耐火塗料及び鉄部材を、より確実に保護することが可能である。
【0008】
さらに、上記防食下地材塗装工程、下塗り材塗装工程、耐火塗料塗装工程、変性エポキシ樹脂塗料塗装工程、耐候材塗装工程は、いずれも塗装により施工できるので施工が容易であり施工された部材の構成も簡単である。
このため構造が簡単でかつ耐火性、耐水性、耐食性、耐候性に優れ施工が容易な耐火性鉄部材の製造方法を提供することが可能である。
【0009】
かかる耐火性鉄部材の製造方法であって、前記変性エポキシ樹脂塗料は、溶剤を含有しないことが望ましい。
このような耐火性鉄部材の製造方法によれば、耐火塗料に保護材を塗装し、さらに耐候材を塗装しても、保護材に含有する溶剤、または、耐候材に含有する溶剤が保護材を通して、耐火塗料へ悪影響を及ぼすこともなく、耐火塗料、変性エポキシ樹脂塗料及び耐候材に割れや膨れ等が生じることはなく、耐火塗料及び鉄部材をより確実に保護することが可能である。
【0010】
かかる耐火性鉄部材の製造方法であって、前記防食下地材には、亜鉛が含有されていることが望ましい。
このような耐火性鉄部材の製造方法によれば、耐火塗料の外側の変性エポキシ樹脂塗料にて水の進入が防止され、さらに、耐火塗料の内側の下塗り材によっても水の進入が防止されたうえに、下塗り材の内側に塗装された防食下地材に含有された亜鉛の犠牲防食により鉄部材を錆から保護することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造が簡単でかつ耐火性、耐水性、耐食性、耐候性に優れ施工が容易な耐火性鉄部材の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る耐火性鉄部材の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】従来の耐火性鉄部材の構成と本願の耐火性鉄部材の製造方法にて製造された耐火性鉄部材の構成との比較を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る耐火性鉄部材の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態においては、耐火処理の対象となる鉄部材として外部に露出して用いられる鉄部材としての外部鉄骨を例に挙げて、外部鉄骨に耐火塗料を塗装して製造する耐火性鉄部材の製造方法について説明する。
【0014】
外部鉄骨は、大臣認定を取得した耐火被覆材を施工する必要があるが、外部に露出するため耐水性及び耐食性も要求される。従来、鉄骨の耐火被覆として有効とされている塗料は、耐水性が低いため外部鉄骨に使用するためには防水処理が必要であった。本実施形態においては、耐水性及び耐食性とともに耐火性を備えた鉄骨を製造するための耐火性鉄骨の製造方法について説明する。ここで、外部鉄骨として使用に耐え得る耐食性の基準として、「鋼道路橋梁塗装・防食便覧」(日本道路協会 発刊)に示されているC−5塗装系と同等の耐食性を備えることとする。
【0015】
本実施形態の耐火性鉄部材の製造方法は、図1、図2に示すように、耐火処理を施す対象となる鉄骨の表面を素地調整する素地調整工程S1と、素地調整された鉄骨の表面に当該鉄骨の酸化を防止する防食下地材を塗装する防食下地材塗装工程S2と、塗装された防食下地材の上に鉄骨側への水、酸素、塩分、亜硫酸ガス等の腐食性物質の浸入を防止する下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程S3と、塗装された下塗り材の上に耐火塗料を塗装する耐火塗料塗装工程S4と、溶剤が含有されておらず、耐火塗料側への水の浸入を防止する変性エポキシ樹脂塗料を、塗装された耐火塗料の上に塗装する変性エポキシ樹脂塗料塗装工程S5と、塗装された変性エポキシ樹脂塗料の上にフッ素樹脂を含有する耐候材を塗装する耐候材塗装工程S6と、を有する。
【0016】
素地調整工程S1は、耐火塗料を塗装する鉄骨の表面に付着している油脂、錆、汚れなどを取り除くなど素地調整する目的で、例えばブラスト処理を行う。このとき、工場にて製造した鉄骨を保存しておく際に鉄骨がさびないように、鉄骨の表面に防錆剤が塗装されている場合には、素地調整工程S1のブラスト処理により取り除かれる。
【0017】
防食下地材塗装工程S2は、防食下地材として例えば有機質ジンクリッチペイントを使用する。有機質ジンクリッチペイントは、大部分の亜鉛末とバインダーとしての例えばエポキシ樹脂から構成されており、バインダーにより鉄骨の表面に付着されている。そして、有機質ジンクリッチペイントに含有されている、鉄より酸化しやすい亜鉛末が表面側から浸入する水により酸化することにより、鉄骨の酸化を防止する。このとき、ジンクリッチプライマーではなくジンクリッチペイントを使用することにより、約75μmの膜厚を確保することが可能である。このため、塗膜厚が厚い分だけ、より多くの亜鉛末が鉄骨の表面に備えられるので、より耐食性が高められる。
【0018】
下塗り材塗装工程S3では、防食下地材塗装工程S2にて塗装された防食下地材の上に、鉄骨側への水の浸入を防止するために下塗り材としてのエポキシ樹脂塗料を塗装する。エポキシ樹脂塗料は、有機質ジンクリッチペイント側に浸入する水を防止することにより、有機質ジンクリッチペイントの酸化される亜鉛末量を抑え、結果として鉄骨の酸化を効果的に防止する。
【0019】
耐火塗料塗装工程S4では、塗装されたエポキシ樹脂塗料の上に耐火塗料を塗装する。耐火塗料は、例えば、疎水性無機酸化物微粒子で被覆したポリリン酸アンモニウム粒子を添加した発泡性耐火塗料であり、バインダーとして例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂が用いられている。この耐火塗料は、従来、外部に露出しない内部鉄骨などに用いられる耐火塗料と同じである。耐火塗料の膜厚は適宜設定することができるが、例えば0.2〜5mm、特に好ましくは0.75〜2mmの厚さにて使用する。この耐火塗料は、例えば250℃以上にて発泡する。
【0020】
変性エポキシ樹脂塗料塗装工程S5では、耐火塗料側への水の浸入を防止するために、既に塗装されている耐火塗料上に変性エポキシ樹脂塗料を塗装する。
【0021】
変性エポキシ樹脂塗料には、塗料に色を付けたり塗膜に厚みを持たせるために使用される体質顔料及び顔料などの無機物と、塗膜を形作る主体となる樹脂と、塗料、塗膜を安定させるために使用される有機質添加剤と、樹脂を溶解し流動性を与える溶剤とが含まれている。
【0022】
本発明の耐火性鉄骨の製造方法にて使用する本願の変性エポキシ樹脂塗料は、従来、外部に露出しない内部鉄骨などの鉄部材の耐火塗料の上に塗装されている従来の変性エポキシ樹脂塗料より、含有されるエポキシ樹脂固形分量の割合が大きく、溶剤は含有されていない。
【0023】
表1は、内部鉄骨に使用されている従来の変性エポキシ樹脂塗料と外部鉄骨に使用する本実施形態の一変性エポキシ樹脂塗料の成分の比較を示している。

【0024】
本実施形態にて使用している外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料は表1に示したように、樹脂量が内部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料の21.5%に対し44%と大きく、溶剤は含まれていない。このように、外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料は、樹脂量を内部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料より大きくすることにより、膜厚を薄くしても高い耐水性を備えることが可能である。
【0025】
たとえば、内部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料にて膜厚を100μmとした場合の耐水性を外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料では約30μmで備えることが可能であり、要求される耐水性に応じて膜厚を厚くすることにより、より高い耐水性を備えることが可能である。また、本外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料は溶剤を含有しないこととしたのは、変性エポキシ樹脂塗料の樹脂固形分量を上げてより緻密化し、変性エポキシ樹脂塗料の上に塗装されるフッ素樹脂を含有する耐候材の溶剤の影響を受けて変性エポキシ樹脂塗膜が軟化や膨潤を起こしたり、耐候材に含有する溶剤が耐火塗料へ侵入することを避けるためである。溶剤の影響については、後述する。
【0026】
耐候材塗装工程S6では、塗装された変性エポキシ樹脂塗料の上にフッ素樹脂を含有する耐候材を塗装する。本実施形態にて使用する耐候材は、従来、内部鉄骨などの鉄部材の変性エポキシ樹脂塗料の上に塗装されている従来の耐候材と同じフッ素樹脂が含有されており、フッ素樹脂の固形分量は従来の耐候材より多く高い粘性を有している。
【0027】
フッ素樹脂は溶剤に溶解されている。溶剤の種類には、強溶剤、弱溶剤があるが、特に強溶剤を含む耐侯材を従来の変性エポキシ樹脂塗料の上に直接塗装すると、従来の変性エポキシ樹脂塗料が軟化して変性エポキシ樹脂塗料への付着性が低下したり、耐火塗料へ溶剤が浸透したりして、耐火塗料や変性エポキシ樹脂塗料や耐候材に割れや膨れが発生する。このような変性エポキシ樹脂塗料への影響を防止するために、従来、耐候材を塗装する場合には、変性エポキシ樹脂塗料の上に中塗り材としてエポキシ樹脂を塗装し、その上に耐侯材を塗装していた。
【0028】
本願発明の耐火性鉄部材の製造方法では、溶剤を含まない変性エポキシ樹脂塗料を使用するので、本外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料の上に直接耐候材を塗装することが可能である。すなわち、従来、中塗り材を塗装した上に耐候材を塗装していたが、中塗り材を塗装することなく直接耐候材を塗装して1工程にて行っている。また、本実施形態にて使用している耐候材は、樹脂量を多くして粘性を高めているので、膜厚を厚くすることが可能であるため、従来のような中塗り材と耐候材との2層分の厚みを耐候材1回塗りのみで形成することが可能である。すなわち、2層分の厚みを有するフッ素樹脂層を備えることになるためより耐候性が高められている。
【0029】
上記実施形態の耐火性鉄骨の製造方法にて製造された耐火性鉄骨は、最も外側に耐候材が塗装されているので、鉄骨及び鉄骨と耐候材との間に塗装された部材を紫外線や日照等による熱から守ることが可能である。
【0030】
また、鉄骨の外側には、防食下地材を保護する下塗り材と、耐火塗料を保護するための変性エポキシ樹脂が塗装されているので、下塗り材及び変性エポキシ樹脂より内側への水の侵入を抑えることが可能であり、耐火塗料及び鉄骨側へ水等の腐食性物質が浸入することを防止することが可能である。
【0031】
更に、鉄骨の表面には防食下地材が塗装されているので、たとえ水等の腐食性物質が浸入したとしても防食下地材に含まれている亜鉛末により、効果的に鉄部材の酸化を防止することが可能である。すなわち、耐火塗料の外側の変性エポキシ樹脂塗料にて水等の腐食性物質の進入が防止され、さらに、耐火塗料の内側の下塗り材によっても水の進入が防止されたうえに、その内側に塗装された防食下地に含有された亜鉛末の犠牲防食により鉄部材を錆から保護することが可能である。このため、耐火塗料として、従来内部鉄骨に用いられている耐火塗料と同じ塗料を外部鉄骨に使用することが可能である。
【0032】
また、耐火塗料の上に塗装される変性エポキシ樹脂塗料は、溶剤が含有されていないので、変性エポキシ樹脂塗料の上に耐候材を塗装しても、耐候材の溶剤が変性エポキシ樹脂塗料に影響を及ぼさない。このため、耐火塗料、変性エポキシ樹脂塗料及び耐候材に割れや膨れ等が生じることはなく、耐火塗料及び鉄部材をより確実に保護することが可能である。
【0033】
本実施形態では、溶剤を含まない変性エポキシ樹脂塗料を耐火塗料上に塗装する例について説明したが、これに限るものではない。すなわち、変性エポキシ樹脂塗料に含まれる溶剤の割合を、従来の変性エポキシ樹脂塗料に含まれる溶剤の割合である30.4%より小さくし、変性エポキシ樹脂塗料の溶剤と耐候材の溶剤の影響を少しでも抑えることにより、従来の変性エポキシ樹脂塗料より高い耐水性を確保することが可能である。このため、発明者は、変性エポキシ樹脂塗料に含まれる溶剤の割合を30%以下が望ましいとした。
【0034】
すなわち、変性エポキシ樹脂塗料は溶剤の含有率が30%以下であれば、当該変性エポキシ樹脂塗料の上に耐候材が塗装されたとしても、変性エポキシ樹脂塗料の溶剤と耐候材の溶剤による影響が少ないので、耐火塗料、変性エポキシ樹脂塗料及び耐候材に割れや膨れ等が生じ難く、耐火塗料及び鉄部材を保護することが可能である。
【0035】
さらに、防食下地材塗装工程S2、下塗り材塗装工程S3、耐火塗料塗装工程S4、変性エポキシ樹脂塗料塗装工程S5、及び、耐候材塗装工程S6は、いずれも塗装により施工できるので製造が容易であり、また、製造された部材も簡単な構成にて耐火性、耐水性、耐食性、耐候性を備えることが可能である。
【0036】
すなわち、構造が簡単でかつ耐火性、耐水性、耐食性、耐候性に優れ施工が容易な耐火性鉄部材の製造方法を提供することが可能である。
【0037】
上記実施形態においては、外部鉄骨用変性エポキシ樹脂塗料の上に直接耐候材を塗装する例について説明したが、図2において、「C−5塗装系を基本とした場合の発明技術」として示した耐火性鉄部材のように、エポキシ樹脂の中塗りを施した後に耐候材を塗装しても良い。あるいは、フッ素樹脂を含む耐候材を2回塗りしても良い。
【0038】
また、防食下地材塗装工程にて有機質ジンクリッチペイントを使用する例について説明したが、無機質ジンクリッチペイントを使用しても良く、この場合には、塗膜が多孔質で表面に凹凸が形成されるので、無機質ジンクリッチペイントの凹凸をエポキシ樹脂塗料にて平滑化するミストコートを施すことが望ましい。
【0039】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出して用いられる鉄部材が耐火性を備えた耐火性鉄部材の製造方法であって、
前記鉄部材の表面を素地調整する素地調整工程と、
素地調整された前記鉄部材の表面に当該鉄部材の酸化を防止する防食下地材を塗装する防食下地材塗装工程と、
塗装された前記防食下地材の上に前記鉄部材側への腐食性物質の浸入を防止する下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程と、
塗装された前記下塗り材の上に耐火塗料を塗装する耐火塗料塗装工程と、
溶剤の含有率が30%以下であって、前記耐火塗料側への水の浸入を防止する変性エポキシ樹脂塗料を、塗装された前記耐火塗料の上に塗装する変性エポキシ樹脂塗料塗装工程と、
塗装された前記変性エポキシ樹脂塗料の上に、フッ素樹脂を含有する耐候材を塗装する耐候材塗装工程と、を有することを特徴とする耐火性鉄部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火性鉄部材の製造方法であって、
前記変性エポキシ樹脂塗料は、溶剤を含有しないことを特徴とする耐火性鉄部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄部材の耐火性鉄部材の製造方法であって、
前記防食下地材には、亜鉛が含有されていることを特徴とする耐火性鉄部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−156762(P2011−156762A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20560(P2010−20560)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】