説明

耐火構築物

【課題】 2000〜3000℃といった超高温ごみ焼却炉に使用できる超高温に耐えられる耐熱パネルを提供する。
【解決手段】 火山岩塊からブロックパネルを切出し形成し,その背面にコンクリートパネルを一体化し,ブロックパネルによって超高温用の表面耐熱層1を,コンクリートパネルによって構造強度を確保するバックアップ層4を形成する。コンクリートパネルには火山礫乃至火山灰を骨材として45〜80L%含有して断熱性を確保して,バックアップ層4外側の高温化を防止する。耐熱複層一体パネルAの表面耐熱層1奥行方向に合决り段差部3を形成し,該合决り段差部3によって壁面形成時に空隙を遮断することによって超高温ごみ焼却炉を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えばごみ焼却炉やジェット機用カタパルトの耐火パネル等の耐火構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
この種ごみ焼却炉は,例えば焼却炉の内壁を耐火レンガ等として形成し,その耐熱性を確保して,一般に800℃程度の焼却温度でごみを焼却するものとされており,このとき合成樹脂などの石油化学製品の焼却は高温を発生するために内壁の劣化が激しく,頻繁な張替えが必要となるために焼却するごみの分別が求められることになる。また内壁の保護の目的で焼却炉内にエアカーテンを設置することによって,例えば1300℃程度の焼却を可能とする提案や,内壁を黄土,磨き砂,雲母等を混合した耐熱性セラミック層とし,その外側に保湿断熱材を配置することによって,例えば1000℃程度の焼却を可能とする提案等もなされている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−9547号公報
【特許文献2】特開2002−195531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら,1000℃乃至1300℃程度の焼却温度によって,石油化学製品等を含めて多種多様な物質が混合しているごみを完全に燃焼するように焼却することは困難であり,ごみの焼却灰を可及的に減少し且つダイオキシン等有害物質の排出を防止するように焼却するには,例えば2000℃〜3000℃といった超高温による焼却が好ましい。この点,耐火レンガの内壁は800℃程度,エアカーテンを設置したものは1000℃,耐熱性セラミック層の内壁は1300℃程度であるから,これらによって超高温の焼却を行なうことは不可能であり,例えばごみ分別の煩雑さ等を考慮するとごみ焼却の超高温化のために焼却炉の改良が望まれるとともに,例えば同様に耐火レンガ等を用いているジェット機用カタパルトの火炎受けの如くに,焼却炉の内壁以外にも超高温に対する耐火性と耐久性を有する耐火構築物の出現が望まれる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,超高温に対する耐火性と耐久性を備えた耐火構築物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に沿って本発明は,火山噴出物は数千度のマグマが冷却され,冷却時に独立気泡を形成した多孔質のものであるために,該火山岩塊(直径数10cm程度以上の噴石をいう)から切出し形成した火山岩塊の100%ブロックパネルとすれば,それ自体超高温に耐えられるとともにその独立気泡によって断熱性を確保し得るものとなる一方,該火山岩塊は上記独立気泡を有する多孔質であることによって一般に脆弱であり,該ブロックパネルによって構築物の構造強度を確保することには危険が残る。そこで本発明は上記火山岩塊のブロックパネルによって耐火性を確保する一方,該パネルにコンクリートのバックアップ層を形成してその構造強度を確保するようにし,このとき更にコンクリートの骨材を同様に火山噴出の火山礫(直径6.5cm程度以下の噴石をいう)乃至火山灰(直径数mm程度以下の火山降灰をいう)とすることによってコンクリートの構造強度を損うことなく高度な断熱性を付与することによって,耐火構築物に使用してその近傍の環境を可及的に確保し得るようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,火山岩塊から切出し形成したブロックパネルによる表面耐熱層と,火山礫乃至火山灰を骨材として形成し上記耐熱層の背面に一体に配置したコンクリートパネルによる断熱バックアップ層とを一体に形成した耐熱複層一体パネルを用いて構築してなることを特徴とする耐火構築物としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記複層一体パネルの構築に際して接合面からの熱伝導を可及的に防止するとともに構築の安定性を確保し得るように,これを,上記耐熱複層一体パネルを,その表面耐熱層の奥行方向に合决り段差部を形成し,該合决り段差部を相互に合决り接合して面方向に連結配置してなることを特徴とする請求項1に記載の耐火構築物としたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記断熱バックアップ層のコンクリートパネルにおける火山礫乃至火山灰の骨材比率を好適としてその断熱性及び構造強度を良好に確保し得るものとするように,これを,上記コンクリートパネルの火山礫乃至火山灰の骨材配合比率を45〜80L%としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火構築物としたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記耐熱複層一体パネルを用いた耐火構築物の好ましい形態を示すように,これを,上記耐火構築物を,超高温ごみ焼却炉としてなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の耐火構築物としたものである。
【0010】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,火山岩塊のブロックパネルによって耐火性を確保する一方,該パネルにコンクリートのバックアップ層を形成してその構造強度を確保するようにし,このとき更にコンクリートの骨材を同様に火山礫乃至火山灰とすることによってコンクリートの構造強度を損うことなく高度な断熱性を付与することによって,耐火構築物に使用してその近傍の環境を可及的に確保し得るようにして,超高温に対する耐火性と耐久性を備えた耐火構築物を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記複層一体パネルの構築に際して接合面からの熱伝導を可及的に防止するとともに構築の安定性を確保したものとすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記断熱バックアップ層のコンクリートパネルにおける火山礫乃至火山灰の骨材配合比率を好適としてその断熱性及び構造強度を良好に確保し得るものとすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記耐熱複層一体パネルを用いた耐火構築物の好ましい形態のものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは耐熱複層一体パネルであり,該耐熱複層一体パネルAは,表面耐熱層1と断熱バックアップ層4とを一体に形成したものとしてあり,このとき上記表面耐熱層1は,火山岩塊から切出し形成したブロックパネルによるものとし,また断熱バックアップ層4は,火山礫乃至火山灰を骨材として形成し上記表面耐熱層1の背面に一体に配置したコンクリートパネルによるものとしてある。
【0016】
即ち表面耐熱層1は,例えば1辺を数10cm〜1m程度とし,厚さを数10cm程度とした,例えば方形乃至矩形のブロックパネルによって形成し,該ブロックパネルは,例えば火山の噴火によって火山周辺地域に落下した直径が数10cm程度以上の比較的大きな火山噴出物である噴石の火山岩塊を切出し形成したものとしてある。該ブロックパネルの切出し形成は,例えば火山岩塊を工場に搬送し,カッター,超高圧水等適宜の手段によってこれを行うようにすればよく,このとき噴石はマグマが発泡状態で噴出されるために独立気泡の多孔質であることによって軽量にして搬送が容易であるとともに切出し形成のための切断が比較的容易になし得る。例えば玄武岩等の溶岩は組織が緻密であり,噴出時に流下することによって気泡を持つものではないので,該溶岩を使用することは表面耐熱層として不適である。
【0017】
本例にあって該表面耐熱層1は,その奥行方向に合决り段差部3を形成したものとしてあり,本例においては,例えば重合した2枚のうちの一方の板の中心を対角線方向に変位した形態をなすように,表面耐熱層1,即ちブロックパネルの外周に表面及び背面に辺の位置を違えてそれぞれ2辺をL字状に連続するように側面を切削することによって該合决り段差部3としてあり,従って耐熱複層一体パネルAは,その表面耐熱層1を,その一方の表面に形成した合决り段差部3を他方の背面に形成した合决り段差部3と対接するように配列接合することによって,表面耐熱層1同士は相互に合决り接合して該表面耐熱層1間は奥行方向に遮断されて,耐熱複層一体パネルAの配列は表面耐熱層1間に僅かな空隙も形成されることなくなし得るようにしてある。
【0018】
このとき合决り段差部1は,例えば5〜10cm程度の幅にして表面耐熱層1,即ちブロックパネルの肉厚の1/2程度とするのがよいが,表面耐熱層1の面積を大きくしたとき,そのL字状一方又は双方の幅を20cm程度の幅とするように拡大し,合决り接合を広面積で行ない,表面耐熱層1間の遮断性を更に向上したものとすることができる。
【0019】
表面耐熱層1背面の断熱バックアップ層4は,例えば上記ブロックパネルを型枠に装着し,該型枠にコンクリートを打設することによって,表面耐熱層1と一体化して形成したものとしてあり,このとき該ブロックパネルの型枠への装着を,ブロックパネルの背面を上面とするように行い,常法に従ってコンクリートを流し込むことによってその打設を行うようにすればよく,コンクリートの硬化後に型枠から脱型することによって耐熱複層一体パネルAとすればよい。このとき表面耐熱層1のブロックパネルはそのコンクリートを打設する面が多孔質であることによってこれらブロックパネルの表面耐熱層1とコンクリートパネルの断熱バックアップ層4にはアンカー効果が作用して強固な密着性を呈して一体化したものとなる。
【0020】
コンクリートは,その骨材として,上記火山岩塊と大きさを異にして噴出されることによって同じく独立気泡の多孔質にして,直径が6.5cm程度以下の比較的小さな火山噴出物である噴石の火山礫をそのまま粗骨材又は粉砕して細骨材として使用し,また直径が数mm程度以下の微細な火山噴出物の降灰である火山灰を細骨材として使用したものとしてあり,これによってコンクリートパネルの断熱性と構造強度を確保したものとしてある。
【0021】
このとき本例にあって上記断熱コンクリートパネルの火山礫乃至火山灰の骨材配合比率は,これを45〜80L%程度としてある。コンクリートパネルは,該火山礫乃至火山灰の他に,例えば砕石,砂等一般に使用される骨材を使用することが可能であるが,一般骨材を使用すると高熱を受けたとき骨材が熱膨張してコンクリートに爆裂を招く可能性が残るために,これら一般骨材を使用することなく,上記45〜80L%程度のセメントに対するリッター比又はカサ比重で火山礫乃至火山灰を単独で使用するのが好ましい。このとき一般に多孔質骨材は,建築物の構造躯体等に使用するのは,その強度不足の可能性があるために不適当とされるが,本例のように耐火構築物の上記大きさの耐熱複層一体パネルAにおける断熱バックアップ層4のコンクリートパネルとして使用するについては構造強度を必要且つ充分に確保することができる。
【0022】
火山礫乃至火山灰のカサ比重又はリッター比が45L%程度を下回ると,これら骨材が不足することによってコンクリートパネルの断熱性及び構造強度が低下し,また80L%程度を上回ると,これら骨材が過剰となることによってコンクリートパネルの構造強度が低下するに至るので,単独でこれら骨材を使用するについては該配合比率とする必要がある。コンクリートパネルにはその成形時に硬化促進剤,防凍剤,消泡剤等の混和剤を適宜に使用することは差支えない。
【0023】
このとき上記ブロックパネルによる表面耐熱層1は,そのコンクリートを打設する背面に,更に適宜形状の突出面や凹凸面を配置することによってコンクリートパネルとの接触面積を拡大して面積拡大による密着性を確保して,上記多孔質であることによるアンカー効果の密着性に加えて,耐熱複層一体パネルとしての一体性を高度化することができる。本例にあっては該表面耐熱層1のブロックパネルは,その背面を錐形乃至裁頭錐形の突出面2として上記接触面積を拡大するとともにとともに表面耐熱層1の耐熱性を向上し得るようにしてあり,本例の背面は,例えば背面に角錐形をなして突出した角錐形の突出面2を形成したものとしてあり,このとき該突出面2はブロックパネルの上記火山岩塊からの切出し形成に際して該形状をなすようにすればよい。
【0024】
このように形成した耐熱複層一体パネルAは,超高温に耐える高度な耐熱性を備えたものとなるので,例えば2000℃〜3000℃程度の超高温によって焼却を行なう超高温ごみ焼却炉の内壁やジェット機の発進時にそのジェット火炎を受けるジェット機用カタパルトの耐火パネル等各種の超高温用の耐火構築物を構成するように使用するものとしてあり,このとき本例の上記合决り段差部3を備えた耐熱複層一体パネルAにあっては耐火構築物の構築に際して,上記合决り段差部3を相互に合决り接合して面方向に連結配置することによって空隙を遮断して更に高度にして好ましい耐熱性を示すものとなる。
【0025】
耐熱複層一体パネルAにおける上記火山岩塊による表面耐熱層1,即ちブロックパネルは,上記多孔質であることによって煤を内部に吸収するため,該耐熱複層一体パネルAを上記超高温ごみ焼却炉に使用することによって該焼却炉の内壁に煤の付着が少なくなり,超高温の焼却による焼却灰の減量化とともに炉内清掃の頻度を減少し,焼却炉としての管理を容易化することができる。
【0026】
図示した例は以上のとおりとしたが,本発明の実施に当って,耐火構築物,耐熱複層一体パネル,そのブロックパネルによる表面耐熱層,コンクリートパネルによる断熱バックアップ層,必要に応じて用いる合决り段差部等の各具体的形状,構造,材質,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々の形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】耐熱複層一体パネルの斜視図である。
【図2】耐熱複層一体パネルの縦断面図である。
【図3】耐熱複層一体パネルによる壁面の正面図である。
【図4】耐熱複層一体パネルによる壁面の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
A 耐熱複層一体パネル
1 表面耐熱層
2 突出面
3 合决り段差部
4 断熱バックアップ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山岩塊から切出し形成したブロックパネルによる表面耐熱層と,火山礫乃至火山灰を骨材として形成し上記表面耐熱層の背面に一体に配置したコンクリートパネルによる断熱バックアップ層とを一体に形成した耐熱複層一体パネルを用いて構築してなることを特徴とする耐火構築物。
【請求項2】
上記耐熱複層一体パネルを,その表面耐熱層の奥行方向に合决り段差部を形成し,該合决り段差部を相互に合决り接合して面方向に連結配置してなることを特徴とする請求項1に記載の耐火構築物。
【請求項3】
上記コンクリートパネルの火山礫乃至火山灰の骨材配合比率を45〜80L%としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火構築物。
【請求項4】
上記耐火構築物を,超高温ごみ焼却炉としてなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の耐火構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−76814(P2006−76814A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260789(P2004−260789)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(301036870)
【出願人】(504342365)
【Fターム(参考)】