説明

耐火目地材及び外壁目地の耐火防水構造

【課題】 十分な防水性を確保できるシーリング材4をバックアップでき、且つ、十分な耐火・遮炎性を発揮できる耐火目地材1、及びこの耐火目地材1を用いた外壁目地の耐火防水構造2を提供する。
【解決手段】 耐火目地材1は、屋外側から外壁パネル3間の目地奥に圧入されて、当該目地に充填されるシーリング材4をバックアップする耐火目地材1であって、前記目地の目地幅よりも幅狭の帯状に形成され、前記シーリング材4が当接するバックアップ部11と、該バックアップ部11の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部12と、該連結部12の屋内側に固定され、前記目地の目地幅よりも幅広に形成され、弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部が前記バックアップ部11の端縁と外壁パネル3の小口面3aとに挟まれて固定される内部に熱膨張性耐火材16が収納された耐火部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル間の縦目地から屋内側に水が侵入することを防ぐとともに、耐火・遮炎機能を有する耐火目地材及びこの耐火目地材を用いた外壁目地の耐火防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾式の目地材の中には、防水機能のみならず防火、遮炎機能を備え、火災等の際に目地から建物内部に炎が侵入し燃え広がることを防止するものが提案されている。例えば、図6に示すように、外壁パネル200間に形成される目地201に、建物内部への水の侵入を防止し遮炎するため嵌込まれるゴムまたはゴム様弾性体より成る目地材202であって、中央柱部203の両側から各々シールリップ204が外壁の端面に向けて上下に複数段突設され、かつ室内側の最下段を除く室外側の上方のシールリップのうち少なくとも一カ所の段のシールリップ204に、遮炎性を有する板状の防火材料205が目地材の幅方向及び長手方向に略全面に亘り埋設された目地材202が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この目地材202によると、防火材料205がシールリップ204の目地材202の幅方向に略全面に亘り埋設されているので、例えば屋外側から目地に向かって炎が当っても、目地には防火材料205が略全面に亘って配置されているので、炎が目地の屋内側に侵入する虞が無い。
【0004】
ところで、外壁の目地を防水する目地材としては、上述のような乾式の目地材のほかに、従来より目地奥に挿入されるバックアップ材と、このバックアップ材の屋外側にシーリング材を注入充填する湿式の目地シーリング構造が用いられることがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−324397号公報
【特許文献2】特開平6−2405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シーリング材を防水上十分な厚さで目地内に充填させるためには、バックアップ材としての目地材は、目地の最も屋内側に薄く配置することが好ましく、上述の特許文献1のようなシールリップを外壁パネルの端面に向けて上下に複数段設置した目地材では、目地材の厚みによってシーリング材を十分に目地内に充填できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、十分な防水性を確保できるシーリング材をバックアップでき、且つ、十分な耐火・遮炎性を発揮できる耐火目地材、及びこの耐火目地材を用いた外壁目地の耐火防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の耐火目地材は、屋外側から外壁パネル間の目地奥に圧入されて、当該目地に充填されるシーリング材をバックアップする耐火目地材であって、前記目地の目地幅よりも幅狭の帯状に形成され、前記シーリング材が当接するバックアップ部と、該バックアップ部の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部と、該連結部の屋内側に固定され、前記目地の目地幅よりも幅広に形成され、弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部が前記バックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定される内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の耐火目地材は、前記耐火部の屋内側に前記目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の外壁目地の耐火防水構造は、屋外側から外壁パネル間の目地奥に圧入される耐火目地材と、該耐火目地材の屋外側の前記目地に充填されるシーリング材と、を備える外壁目地の耐火防水構造であって、前記耐火目地材は、前記目地の目地幅よりも幅狭の帯状に形成され、前記シーリング材が当接するバックアップ部と、該バックアップ部の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部と、該連結部の屋内側に固定され、前記目地の目地幅よりも幅広に形成され、弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部が前記バックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定される内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の外壁目地の耐火防水構造は、前記耐火目地材は、前記耐火部の屋内側に前記目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の耐火目地材によると、バックアップ部が目地幅よりも幅狭の帯状に形成されており、このバックアップ部の屋内側に設けられる内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部が、目地幅よりも幅広で弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部がバックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定されているので、耐火目地材を目地の最も屋内側に配置することができ、シーリング材を充填するスペースを確保し易い。しかも、内部に熱膨張性耐火材を備えた耐火部は目地よりも幅広に形成されているので、例えば外壁パネルの施工上の誤差で多少目地幅が広がった場合でも確実に目地幅の全域に亘って熱膨張性耐火材を配置することができ、確実に、耐火・遮炎することができる。
【0013】
請求項2に記載の耐火目地材によると、耐火部の屋内側に目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えるので、耐火目地材を目地に挿入する際に、この姿勢制御部が外壁パネルの小口面に当接してガイドされるので、耐火目地材を適切な位置に挿入しやすい。
【0014】
請求項3に記載の外壁目地の耐火防水構造によると、耐火目地材のバックアップ部が目地幅よりも幅狭の帯状に形成されており、このバックアップ部の屋内側に設けられる内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部が、目地幅よりも幅広で弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部がバックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定されているので、耐火目地材を目地の最も屋内側に配置することができ、シーリング材を防水上十分に充填することができる。しかも、内部に熱膨張性耐火材を備えた耐火部は目地よりも幅広に形成されているので、例えば外壁パネルの施工上の誤差で多少目地幅が広がった場合でも確実に目地幅の全域に亘って熱膨張性耐火材を配置することができ、確実に、耐火・遮炎することができる。
【0015】
請求項4に記載の外壁目地の耐火防水構造によると、耐火目地材には、耐火部の屋内側に目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えるので、耐火目地材を目地に挿入する際に、この姿勢制御部が外壁パネルの小口面に当接してガイドされるので、耐火目地材を適切な位置に挿入しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】耐火目地材の構成を示す断面図。
【図2】耐火目地材の外観構成を示す一部省略斜視図。
【図3】耐火目地材を外壁パネル間の目地に挿入し始めた状態を説明する一部省略断面図及び拡大図。
【図4】耐火目地材を外壁パネル間の目地奥まで挿入した状態を説明する一部省略断面図及び拡大図。
【図5】外壁目地の耐火防水構造の全体構成を示す断面図。
【図6】従来の乾式の耐火目地材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の耐火目地材1及び外壁目地の耐火防水構造2の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。外壁目地の耐火防水構造2は、図5に示すように、屋外側から外壁パネル3間の目地奥に圧入される耐火目地材1と、この耐火目地材1にバックアップされてこの耐火目地材1の屋外側の目地に充填されるシーリング材4と、により構成されている。
【0018】
耐火目地材1は、外壁パネル3間の縦目地及び水平目地に挿入される目地材であって、図1及び図2に示すように、断面形状が王の字状に形成されており、目地の目地幅よりも幅狭に形成されたバックアップ部11と、このバックアップ部11の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部12と、この連結部12の屋内側に固定された耐火部13と、この耐火部13の幅方向の中央に沿って屋内側に突設される支持部14と、この支持部14から両側に延びる姿勢制御部15とにより構成されている。
【0019】
バックアップ部11は、弾性を有する樹脂により扁平な帯状に形成されている。また、耐火部13は、連結部12を介してこのバックアップ部11に固定されており、目地幅よりも幅が広い帯状に形成されている。この耐火部13は、弾性を有し、端部がヒレ状に形成されており、その内部に熱膨張性耐火材16が収納されている。図5に表されるように、この耐火部13は目地内で湾曲してその先端がバックアップ部11の先端と外壁パネル3の小口面3aとに挟まれて固定される。姿勢制御部15は、目地の屋内側に広がって弾性を有する樹脂によりヒレ状に形成されており、目地幅よりも幅広に形成されており、先端が屋外方向に湾曲している。
【0020】
シーリング材4は例えば、ポリウレタン系、シリコン系、ポリサルファイド系などの湿式のシーリング材4であり、耐火目地材1を挿入した目地に充填されて、目地の防水性を確保する。
【0021】
外壁目地の耐火防水構造2を施工するときには、まず、建物の軸組5に外壁パネル取付用金具6を用いて、外壁パネル3を取り付ける。この外壁パネル3を軸組5に固定する外壁パネル取付用金具6は、軸組5に固定され、軸組5から屋外方向に突出する基部61と、基部61を軸として回転可能に固定されており、外壁パネル3の周縁に目地側を開口するU字状に形成された金属枠3bを軸組5との間に挟持するパネル固定部62と、このパネル固定部62を回転動作させる操作部63とを備える。外壁パネル3を固定する際には、軸組5に外壁パネル3の金属枠3bを押し当てて、外壁パネル取付用金具6の操作部63を操作してパネル固定部62を回転させ、パネル固定部62と軸組5とで外壁パネル3の金属枠3bを挟持して固定する。このとき、操作部63は、外壁パネル3間の縦目地の奥に位置するように構成されている。したがって、屋外側から目地内に図示しないドライバーなどの工具を挿入しつつ操作することにより、外壁パネル3を屋外側から取り付けることができ、また、リフォームなどの際にも外壁パネル3を屋外側から取り外すことができる。
【0022】
次に互いに隣接する外壁パネル3間の間の目地に耐火目地材1を圧入する。このとき、図3に示すように、まず、耐火目地材1の姿勢制御部15が目地内に挿入される。姿勢制御部15は目地幅よりも幅広な弾性体で形成されているので、目地内に圧入されるときに、姿勢制御部15は外壁パネル3の小口面3aに当接して弾性変形しつつ、目地内に圧入される。このように姿勢制御部15が外壁パネル3の小口面3aに当接しつつ圧入されることで、耐火目地材1を目地内に適切な姿勢を保って挿入することができる。そして、耐火目地材1をさらに圧入すると、耐火部13の先端も外壁パネル3に当接して湾曲した状態に弾性変形する。
【0023】
耐火目地材1を外壁パネル3間の目地奥まで挿入すると、図4に示すように、姿勢制御部15が目地から屋内側の空間に飛び出して、その弾性復元力により目地の屋内側で広がる。そして、耐火部13は、湾曲した状態でその端部が目地の屋内側の縁でバックアップ部11と外壁パネル3の小口面3aとに挟まれて固定される。そして、屋外側からシーリング材4を目地内に充填して、その後養生して、外壁目地の耐火防水構造2を完成させる。
【0024】
以上のように、耐火目地材1は、目地幅よりも幅広に形成された耐火部13が、当該目地内で湾曲してその端部がバックアップ部11の端縁と外壁パネル3の小口面3aとに挟まれて固定されているので、この耐火目地材1を目地の最も屋内側に配置することができ、例えば外壁パネル3が薄い場合でもシーリング材4を充填するスペースを確保し易い。しかも、内部に熱膨張性耐火材16を備えた耐火部13が目地よりも幅広に形成されることで、外壁パネル3の施工上の誤差で多少目地幅が広がった場合でも確実に目地幅の全域に亘って熱膨張性耐火材16を配置することができ、確実に、耐火・遮炎することができる。また、耐火部13の屋内側に目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部15を備えるので、耐火目地材1を目地に挿入する際に、この姿勢制御部15が外壁パネル3の小口面3aに当接してガイドされるので、耐火目地材1を適切な位置に挿入しやすい。
【0025】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。例えば、注入充填する湿式のシーリング材4の替わりに、本願耐火目地材1と類似する乾式の目地材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る耐火目地材1及び耐火防水構造2は、住宅等の外壁パネル3間の縦目地に圧入される目地材及び目地構造として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 耐火目地構造
2 外壁目地の耐火防水構造
3 外壁パネル
4 シーリング材
11 バックアップ部
12 連結部
13 耐火部
15 姿勢制御部
16 熱膨張性耐火材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側から外壁パネル間の目地奥に圧入されて、当該目地に充填されるシーリング材をバックアップする耐火目地材であって、
前記目地の目地幅よりも幅狭の帯状に形成され、前記シーリング材が当接するバックアップ部と、
該バックアップ部の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部と、
該連結部の屋内側に固定され、前記目地の目地幅よりも幅広に形成され、弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部が前記バックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定される内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部と、
を備えることを特徴とする耐火目地材。
【請求項2】
前記耐火部の屋内側に前記目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の耐火目地材。
【請求項3】
屋外側から外壁パネル間の目地奥に圧入される耐火目地材と、
該耐火目地材の屋外側の前記目地に充填されるシーリング材と、
を備える外壁目地の耐火防水構造であって、
前記耐火目地材は、前記目地の目地幅よりも幅狭の帯状に形成され、前記シーリング材が当接するバックアップ部と、該バックアップ部の幅方向の中央に沿って屋内方向に突設される連結部と、該連結部の屋内側に固定され、前記目地の目地幅よりも幅広に形成され、弾性を有し、当該目地内で湾曲してその端部が前記バックアップ部の端縁と外壁パネルの小口面とに挟まれて固定される内部に熱膨張性耐火材が収納された耐火部と、を備えることを特徴とする外壁目地の耐火防水構造。
【請求項4】
前記耐火目地材は、前記耐火部の屋内側に前記目地幅よりも幅広な帯状に形成され、且つ弾性を有する姿勢制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の外壁目地の耐火防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169083(P2011−169083A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36465(P2010−36465)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】