説明

耐熱剛性に優れる自動車内装用部品

【課題】衝撃強度や耐薬品性、寸法安定性に優れるだけでなく、耐熱剛性に優れた繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形することで得られる、本革が貼付された自動車内装用部品の提供。
【解決手段】
グラフト共重合体(A)40〜70重量部、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)10〜20重量部、共重合体(C)10〜50重量部からなるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)40〜60重量部と、ポリアミド樹脂(E)40〜60重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、式(1)、を満たし、かつ式(2)を満足する繊維状充填材を含有する繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形することで得られる、本革が貼付された自動車内装用部品。
式(1) P=n/(n+k) ただし0.5<P≦0.8
式(2) 0.25≦w/(w+100×P)≦0.50
k:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部(重量部)
n:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるポリアミド樹脂(E)の含有量(重量部)
w:熱可塑性樹脂組成物100重量部に対する繊維状充填材の配合量(重量部)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃強度や耐薬品性、寸法安定性に優れるだけでなく、耐熱剛性に優れた繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、本革が貼付された自動車内装用部品に関するものである。詳しくは、特定のゴム強化ビニル系樹脂組成物と特定のポリアミド樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物に対し、特定量の繊維状充填材を含有する繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、本革が貼付された自動車内装用部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車内装部品には、その機械特性と経済性の点から、PP(ポリプロピレン樹脂)系樹脂が、使用されてきた。一方、自動車内装の高級化に伴い、これら部品に本革が貼付されてきている。しかしながら、従来のPP系樹脂では、高温時の剛性が不足するために、本革の収縮により、基材の変形などの問題が生じる場合があった。
この問題に対して、PP系樹脂よりも耐熱特性が高いエンジニアリングプラスチックの使用が考えられる。
【0003】
6−ナイロンに代表されるポリアミド樹脂は、優れた成形性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、耐磨耗性などを有する反面、乾燥状態での衝撃強度の低下、吸湿による寸法変化や抗張力の低下といった問題を有している。また、ABS樹脂に代表されるゴム強化ビニル系樹脂も優れた耐衝撃性、成形性、光沢などを有するが、耐薬品性や耐熱剛性に劣ると言った問題がある。
【0004】
ポリアミド樹脂とゴム強化スチレン系樹脂の特長を残しながら、ポリアミド樹脂の欠点である吸湿時の寸法変化やゴム強化スチレン系樹脂の欠点である耐薬品性の向上を図るために、不飽和カルボン酸変性共重合体を相溶化剤として配合してなるポリマーアロイや、ガラス繊維を配合した樹脂組成物が提案されている(特許文献1:特開平1−158号公報、特許文献2:特開平10−158508号公報、特許文献3:特開2000−17170号公報)。
しかしながら、従来技術をもってしても、流動性や吸湿時の寸法安定性の向上が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−158号公報
【0006】
【特許文献2】特開平10−158508号公報
【0007】
【特許文献3】特開2000−17170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ゴム強化ビニル系樹脂/ポリアミド樹脂アロイの特長を有するとともに、流動性、衝撃強度、耐薬品性、寸法安定性に優れ、かつ耐熱剛性に優れる繊維含有熱可塑性樹脂を成形して得られる、本革が貼付された自動車内装用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、ゴム質重合体20〜80重量%に、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜70重量%をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)40〜70重量部(グラフト共重合体(A)を基準(100重量%)とする。)、不飽和カルボン酸系単量体0.5〜20重量%、芳香族ビニル系単量体50〜89.5重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜49.5重量%を重合してなる不飽和カルボン酸変性共重合体(B)10〜20重量部(不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を基準(100重量%)とする。)、芳香族ビニル系単量体30〜90重量%およびこれと共重合可能な他の単量体(ただし、不飽和カルボン酸系単量体を除く)10〜70重量%を重合してなる共重合体(C)10〜50重量部(共重合体(C)を基準(100重量%)とする。)、からなるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)40〜60重量部((A)、(B)および(C)の合計は100重量部である。)と、ポリアミド610、ポリアミド1010、およびポリアミド11を一種又は二種以上用いたポリアミド樹脂(E)40〜60重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物(ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)とポリアミド樹脂(E)の合計は100重量部である。)であって、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に占める、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部とポリアミド樹脂(E)の含有量が下記式(1)を満たし、かつ、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、下記式(2)を満足する繊維状充填材を含有する繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、本革が貼付された自動車内装用部品である。
式(1) P=n/(n+k) ただし0.5<P≦0.8
式(2) 0.25≦w/(w+100×P)≦0.50
k:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部(重量部)
n:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるポリアミド樹脂(E)の含有量(重量部)
w:熱可塑性樹脂組成物100重量部に対する繊維状充填材の配合量(重量部)
【発明の効果】
【0010】
本発明は、流動性、衝撃強度、耐薬品性、寸法安定性に優れ、かつ耐熱剛性に優れる本革が貼付された自動車内装用部品を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の本革が貼付された自動車内装用部品につき詳細に説明する。
本発明において用いることのできるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)は、ゴム質重合体20〜80重量%に、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜70重量%をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)40〜70重量部(グラフト共重合体(A)を基準(100重量%)とする。)、不飽和カルボン酸系単量体0.5〜20重量%、芳香族ビニル系単量体50〜89.5重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜49.5重量%を重合してなる不飽和カルボン酸変性共重合体(B)10〜20重量部(不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を基準(100重量%)とする。)、芳香族ビニル系単量体30〜90重量%およびこれと共重合可能な他の単量体(ただし、不飽和カルボン酸系単量体を除く)10〜70重量%を重合してなる共重合体(C)10〜50重量部(共重合体(C)を基準(100重量%)とする。)、からなる樹脂組成物((A)、(B)および(C)の合計は100重量部である。)であり、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)100重量部に対してアセトン可溶部が10〜50重量部であることが好ましい。
【0012】
グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体等のジエン系(共)重合体、さらにはこれらジエン系(共)重合体の水素添加ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体、アクリルゴム等が挙げられ、1種または2種以上使用できる。これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、アクリルゴムが好ましく、特にポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体が好ましい。
【0013】
ゴム質重合体の重量平均粒子径については特に制限はないが、0.05〜2.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.10〜1.0μmである。当該粒子径を有するゴム質重合体は、乳化重合ゴム(ラテックス)、または短時間の乳化重合による小粒子径ゴムラテックスを機械的・化学的に処理して肥大化したゴム(ラテックス)でもよい。さらには、ドライゴムを裁断後、単量体または溶剤にて溶解することにより得た溶解ゴムでも可能である。
【0014】
グラフト共重合体(A)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレン等が挙げられ、1種または2種以上使用できるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0015】
また、共重合可能な他の単量体としては、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、マレイミド系単量体の群から選ばれた少なくとも1種の単量体が挙げられる。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられるが、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましい。マレイミド系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられるが、特にN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0016】
グラフト共重合体(A)におけるグラフト率については特に制限はないが、好ましくは20〜150%である。なお、グラフト率とは、グラフト重合で得られたグラフト共重合体をアセトンにて溶解し、可溶分と不溶分に分離した後、次式により求めたものである。
グラフト率(%)=[アセトン不溶分重量−グラフト共重合体中のゴム質重合体重量]/[グラフト共重合体中のゴム質重合体重量]×100
グラフト率は、グラフト重合時のゴム質重合体と単量体との比率、単量体の添加速度などの重合条件の変更により適宜調整することができる。またグラフト共重合体(A)の製造方法については特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、乳化重合など通常の公知の方法が用いられる。グラフト率の面より、乳化重合が好ましい。
【0017】
本発明において用いることのできる不飽和カルボン酸変性共重合体(B)とは、不飽和カルボン酸系単量体0.5〜20重量%、芳香族ビニル系単量体50〜89.5重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜49.5重量%を重合してなる共重合体(不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を基準(100重量%)とする。)である。
【0018】
不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、1種または2種以上使用できるが、特にメタクリル酸が好ましい。
芳香族ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単量体としては、グラフト共重合体(A)の項で例示したものと同様のものを使用することができる。
共重合可能な他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルなどが好ましい。
【0019】
上記不飽和カルボン酸変性共重合体(B)の製造においては公知の乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法を採用することができる。
不飽和カルボン酸変性共重合体(B)の還元粘度については特に制限はないが、0.2〜1.2dl/gであることが好ましい。なお、還元粘度は、重合温度、単量体の添加方法、使用する開始剤および例えばt−ドデシルメルカプタン等の重合連鎖移動剤の種類および量により適宜調整することができる。
【0020】
本発明において用いることのできる共重合体(C)とは、芳香族ビニル系単量体30〜90重量%およびこれと共重合可能な他の単量体(ただし、不飽和カルボン酸系単量体を除く)10〜70重量%を重合してなる共重合体(共重合体(C)を基準(100重量%)とする。)である。共重合体(C)を構成する芳香族ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単量体としては、グラフト共重合体(A)の項で例示したものと同様のものを使用することができる。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。他の共重合可能な単量としてはアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミドが好ましい。
【0021】
上記共重合体(C)の製造においては、公知の乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法を採用することができる。共重合体(C)の還元粘度について、何ら限定はないが、0.3〜1.2dl/gの範囲であることが好ましい。なお、還元粘度は、重合温度、単量体の添加方法、使用する開始剤および例えばt−ドデシルメルカプタン等の重合連鎖移動剤の種類および量により適宜調整することができる。
【0022】
本発明において用いることのできるポリアミド樹脂(E)は、ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド11を一種又は二種以上用いたポリアミド樹脂である必要がある。ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド66/6T、ポリアミドMXD6ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリアミド11T、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド等は寸法安定性に劣るため好ましくない。なお、上記”I”はイソフタル酸成分、”T”はテレフタル酸成分を示す。
【0023】
本発明において用いることのできる繊維状充填材は、何ら制限されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維などが挙げられる。特にガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
【0024】
本発明で用いられるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)におけるグラフト共重合体(A)、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)および共重合体(C)の配合割合は、(A):40〜70重量部、(B):10〜20重量部、(C):10〜50重量部((A)、(B)および(C)の合計は100重量部である。)である。
【0025】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂組成物とはゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)およびポリアミド樹脂(E)を含有する樹脂組成物であり、配合割合はゴム強化ビニル系樹脂組成物(D):40〜60重量部、ポリアミド樹脂(E):40〜60重量部(ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)とポリアミド樹脂(E)の合計は100重量部である。)である。さらには、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に占める、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部とポリアミド樹脂(E)の含有量が下記式(1)を満たし、かつ、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、下記式(2)を満足する繊維状充填材を含有していることが必要である。アセトン可溶部とは、2gのゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)を60mlのアセトンにて溶解し、遠心分離により分離した上澄み液を、エバポレータを用いて濃縮し、濃縮液を適量のメタノールに滴下して沈殿した樹脂成分の元重量に占める割合のことである。
アセトン可溶部=(メタノール沈殿物の乾燥重量)/元重量×100(重量%)
式(1) P=n/(n+k)、 ただし0.5<P≦0.8
式(2) 0.25≦w/(w+100×P)≦0.50
k:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部(重量部)
n:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるポリアミド樹脂(E)の含有量(重量部)
w:熱可塑性樹脂組成物100重量部に対する繊維状充填材の配合量(重量部)
【0026】
式(1)の値が0.5よりも小さくなると、連続相に占めるポリアミド成分比率が少なくなり、耐薬品性が低下するうえに、耐熱剛性を得るために多量の繊維状充填材を配合する必要があり、成形時に必要な流動性が低下するため好ましくない。また、式(1)の値が0.8を超えて大きくなると、連続相に占めるポリアミド成分比率が大きくなりすぎ、結晶化による成型品のヒケや吸湿による寸法変化が大きくなるため好ましくない。
式(1)を満たす熱可塑性樹脂組成物であっても、式(2)の値が0.25よりも小さくなると、十分な耐熱剛性が得られなくなり、また、式(2)の値が0.50よりも大きくなると、流動性が低下するため好ましくない。
【0027】
グラフト共重合体(A)、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)、共重合体(C)、ポリアミド樹脂(E)および繊維状充填材の混合順序ならびにその状態には何ら制限はなく、グラフト共重合体(A)、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)、共重合体(C)、ポリアミド樹脂(E)および繊維状充填材の一括同時混合、特定の二成分を予備混合した後、残る成分を混合する方法が例示される。これらの溶融混合に際してはバンバリーミキサー、ロール、押出機等を用いることができる。
【0028】
混合に際し、必要に応じてポリ乳酸などに代表される植物由来の熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどの他樹脂、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤等の公知の添加剤、補強材、充填材等を配合することができる。
【0029】
本発明の本革が貼付された自動車内装用部品は上記の繊維含有熱可塑性樹脂組成物を自動車内装部品の形状を形成した金型で構成されるキャビティ内に射出して得られた成形物に、本革を接着剤により接着することにより貼付して得ることができる。自動車内装部品としては、インストルメントパネル、ピラー、ドアトリム、コンソール、グローブボックス、アームレスト等が挙げられる。本革は、動物の種類や部位について特に限定されず、接着剤はウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などが用いられる。また、クッション性をあげるために、成形品と本革の間に、クッション性のある発泡成形体や繊維状成形体を挿入しても良い。
【実施例】
【0030】
以下に本発明について詳細に説明する。尚、本発明はこれにより何ら制限を受けるものでは無い。また、部および%は何れも重量基準で示した。
【0031】
<グラフト共重合体(A)−1>(乳化重合法)
窒素置換したガラスリアクターに、重量平均粒子径が0.4μmであるポリブタジエンラテックスを固形分換算で60重量部と脱イオン水140重量部、ラクトース0.06重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.025重量部および硫酸第一鉄0.001重量部を溶解した水溶液を添加した後、65℃に昇温した。その後、アクリロニトリル10重量部、スチレン30重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.3重量部の混合液および脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部、クメンハイドロパーオキサイド1重量部を溶解した乳化剤水溶液を5時間に亘り連続添加した。連続添加後、70℃に昇温し、重合を2時間継続して重合を終了し、塩析、脱水、乾燥し、グラフト共重合体(A)−1を得た。グラフト共重合体(A)−1のグラフト率を測定したところ、40%であった。
【0032】
<不飽和カルボン酸変性共重合体(B)>
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水100重量部を添加した後、昇温を行い、60℃に達した時点で過硫酸カリウム0.3部、メタクリル酸5部、スチレン70部、アクリロニトリル25部、ターシャリードデシルメルカプタン1.6部からなるモノマー混合溶液の6%およびドデシルベンゼンスルホン酸Na1部を脱イオン水20部に溶解させた乳化剤水溶液10%を添加した。その後65℃まで昇温し残りのモノマー混合液および乳化剤水溶液を連続添加した。その後70℃に昇温し重合を完了した。塩化カルシウムを用いて塩析したのち脱水、乾燥し、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を得た。
【0033】
<共重合体(C)>
(C)−1:公知のバルク重合法により、スチレン70部およびアクリロニトリル30部からなる共重合体(C)−1を得た。
(C)−2:公知の乳化重合法により、α−メチルスチレン70重量部およびアクリロニトリル30重量部からなる共重合体(C)−2を得た。
(C)−3:スチレン・N−フェニルマレイミド・無水マレイン酸共重合体
(電気化学工業(株)製 デンカIP MS−NC(商品名))
【0034】
<ポリアミド11(E−1)>
アルケマ株式会社製 「リルサンBMN O」
<ポリアミド610(E−2)>
エムスケミー・ジャパン株式会社製 「Grilamid XE4019」
<ポリアミド1010(E−3)>
エムスケミー・ジャパン株式会社製 「Grilon XE1306」
<ポリアミド6(E−4)>
ユニチカ株式会社製 「ユニチカナイロン A1030BRL」
<ポリアミド66(E−5)>
旭化成ケミカルズ株式会社製 「レオナ 1300S」
【0035】
<繊維状充填材>
ガラス繊維
日東紡績社製 チョップドストランド CSF 3PE−332S
【0036】
〔実施例および比較例〕
表1に示す組成比率に基づき、上記のグラフト共重合体(A)、不飽和カルボン酸変性共重合体(B)、共重合体(C)を混合し、押出機にて溶融混練することにより、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)を得た。得られたゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)のアセトン可溶部の測定結果を表1に示す。得られたアセトン可溶部と熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)の割合から、熱可塑性樹脂組成物100重量%に占める、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部を求めた。次に、表2及び表3に示す組成比率に基づき、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)とポリアミド樹脂(E)を混合したものを2軸押出機(TEX−44S、設定温度280℃)のホッパーから供給し、繊維状充填材をサイドフィードにより混錬しペレット化して各種組成物を得た。
【0037】
得られた各種組成物を、射出成形機(設定温度235℃、金型温度60℃)にて各種試験片を作成し、物性を評価した結果を表2及び表3に示す。なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
【0038】
(1)衝撃強度:ISO 179に準拠し、4mm厚みで、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定。単位:kJ/m
(2)耐熱剛性:ISO 527に準拠し、4mm厚みで、110℃に1時間保持した後、引張弾性率を測定。単位:MPa
(3)寸法安定性:150mm×90mm×3mmtの寸法の平板作成用金型にて射出成形し、得られた平板を成形後23℃、50%RH恒温室内に24時間放置した後の長辺(150mm方向)の長さをL0とし、同平板を60℃、90%RHの条件下で72時間吸湿させ、23℃、50%RHにて24時間状態調整した後の長辺の長さをL1とした場合、次式で表される値により、次の3段階の基準により評価を行った。
(L1−L0)/L0×100
○:0〜0.7
△:0.7〜1.2
×:1.2<
(4)耐薬品性:150mm×90mm×3mmtの寸法の平板作成用金型にて射出成形した平板から巾40mmの短冊状に切り出し、室温にて1/4インチ楕円法による臨界歪みを測定し、次の3段階の基準により評価を行った。
臨界歪み
○:0.7以上またはクラックなし
△:0.3以上、0.7未満
×:0.3未満
(5)流動性:ISO1133に準拠して240℃、荷重10kgfのメルトボリュームレイトを測定した。単位;g/10分
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
上記の結果より、耐薬品性、寸法安定性、耐熱性に優れていることから、実寸大の射出成形品においても、本革の収縮による基材の変形が生じることなく、美しい成形品が得られると推測できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、衝撃強度、耐薬品性、寸法安定性に優れ、かつ耐熱剛性に優れているため、本革が貼付された自動車内装用部品として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム質重合体20〜80重量%に、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜70重量%をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)40〜70重量部(グラフト共重合体(A)を基準(100重量%)とする。)、不飽和カルボン酸系単量体0.5〜20重量%、芳香族ビニル系単量体50〜89.5重量%およびこれと共重合可能な他の単量体10〜49.5重量%を重合してなる不飽和カルボン酸変性共重合体(B)10〜20重量部(不飽和カルボン酸変性共重合体(B)を基準(100重量%)とする。)、芳香族ビニル系単量体30〜90重量%およびこれと共重合可能な他の単量体(ただし、不飽和カルボン酸系単量体を除く)10〜70重量%を重合してなる共重合体(C)10〜50重量部(共重合体(C)を基準(100重量%)とする。)、からなるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)40〜60重量部((A)、(B)および(C)の合計は100重量部である。)と、ポリアミド610、ポリアミド1010、およびポリアミド11を一種又は二種以上用いたポリアミド樹脂(E)40〜60重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物(ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)とポリアミド樹脂(E)の合計は100重量部である。)であって、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に占める、ゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部とポリアミド樹脂(E)の含有量が下記式(1)を満たし、かつ、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、下記式(2)を満足する繊維状充填材を含有する繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、本革が貼付された自動車内装用部品。
式(1) P=n/(n+k) ただし0.5<P≦0.8
式(2) 0.25≦w/(w+100×P)≦0.50
k:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるゴム強化ビニル系樹脂組成物(D)由来のアセトン可溶部(重量部)
n:熱可塑性樹脂組成物100重量部に占めるポリアミド樹脂(E)の含有量(重量部)
w:熱可塑性樹脂組成物100重量部に対する繊維状充填材の配合量(重量部)
【請求項2】
自動車内装用部品がインストルメントパネルである請求項1記載の本革が貼付された自動車内装用部品。

【公開番号】特開2012−92159(P2012−92159A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238186(P2010−238186)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】